(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058602
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】高安定性・低コスト・高レートの水系ナトリウムイオンキャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 11/06 20130101AFI20240418BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240418BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20240418BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20240418BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20240418BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20240418BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20240418BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20240418BHJP
【FI】
H01G11/06
H01G11/84
H01G11/30
H01G11/62
H01G11/38
H01G11/52
H01G11/60
H01G11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168697
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】202211262834.0
(32)【優先日】2022-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523321589
【氏名又は名称】ゾンケ セノ テクノロジー シーオー.,エルティーディー.
(71)【出願人】
【識別番号】523371872
【氏名又は名称】ベナン エネルギー (シンガポール) ピーティーイー.エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン,シエンシュー
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ジェンホイ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,ウ
(72)【発明者】
【氏名】パン,ヂィンジュン
【テーマコード(参考)】
5E078
【Fターム(参考)】
5E078AB07
5E078BA12
5E078BA37
5E078BA38
5E078BA44
5E078BA52
5E078CA06
5E078CA08
5E078DA01
5E078LA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は高安全性・高比エネルギーの新型水系ナトリウムイオンキャパシタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】高安全性・高比エネルギーの新型水系ナトリウムイオンキャパシタは、正極及び負極がいずれもハイブリッド型電極であり、異なるレート及び電力特性要件に応じて、電極は異なる割合の電池型材料及びキャパシタ型材料からなり、エネルギー密度は45Wh/Kgと高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムイオンキャパシタであって、正極、負極、セパレータ及び電解液を含み、前記正極は正極活物質、導電剤及びバインダーを含み、正極活物質はプルシアンブルー類似体及び多孔質炭素材料であり、前記プルシアンブルー類似体と多孔質炭素材料の割合は(5-70):(95-30)であり、前記負極は負極活物質、導電剤及びバインダーを含み、負極活物質はリン酸塩化合物ナトリウム吸蔵材料及び多孔質炭素材料を含み、前記リン酸塩化合物ナトリウム吸蔵材料と多孔質炭素材料の割合は(10-80):(90-20)であり、前記電解液は脱イオン水、電解質塩及び電解液添加剤を含むことを特徴とするナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項2】
前記正極は、正極活物質、導電材及びバインダーを含み、三者の割合は(80-90):(13-7):(7-3)であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項3】
前記負極は、負極活物質、導電材及びバインダーを含み、三者の割合は(72-85):(21-12):(7-3)であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項4】
前記プルシアンブルー類似体はM1M2Fe(CN)6から選択され、前記M1=Na、K又はZnであり、M2=Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnであることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項5】
前記リン酸塩化合物ナトリウム吸蔵材料はNaTi2(PO4)3、Na3V2(PO4)3、Na4VFe(PO4)3、NaVPO4F、FePO4及びNaFePO4から選択されることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項6】
前記多孔質炭素材料の比表面積は1000-2200m2/g、細孔容積は0.5-1.0ml/g、嵩密度は0.4-0.6g/ml、粒径分布はD90<chos10μmであることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項7】
前記電解質塩は過塩素酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、臭化ナトリウム、エタン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム及び蓚酸ナトリウムのうちの1種又は複数種の混合物から選択され、質量モル濃度は1.0-2.0mol/kgであることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項8】
前記電解液の溶剤は脱イオン水であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項9】
前記電解液添加剤はポリエチレングリコール、グリセロール、リン酸トリメチル、ポリアクリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボーネート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ジメチルスルホン、スルホランであり、重量比は1.0-80%であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項10】
前記負極及び正極は導電材をさらに含み、前記導電材はカーボンブラック、導電性グラファイト、カーボンナノチューブ及びグラフェンから選択されることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項11】
前記正極バインダーはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸から選択されることを特徴とする請求項2に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項12】
前記負極バインダーはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸から選択されることを特徴とする請求項3に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項13】
前記セパレータはセルロースセパレータ、PETセパレータ、PP不織布セパレータ及びPE不織布セパレータから選択されることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオンキャパシタ。
【請求項14】
(1)上記正極活物質と導電剤を割合に応じて均一に混合した後、割合に応じてバインダーと適量の脱イオン水を添加し、均一に撹拌して正極スラリーを得て、次に、正極スラリーを厚さ15μmの炭素被覆ステンレスの両側表面にコーティングし、乾燥、ローラー圧延及び打ち抜きを経て正極を得る正極の製造ステップと、
(2)上記負極活物質と導電剤を割合に応じて均一に混合した後、割合に応じてバインダーと適量の脱イオン水を添加し、均一に撹拌して負極スラリーを得て、次に厚さ15μmの炭素被覆ステンレスの両側表面に均一にコーティングし、乾燥、ローラー圧延及び打ち抜きを経て負極を得る負極の製造ステップと、
(3)セパレータが前記正極と前記負極との間に位置する順序に従って、前記正極、負極及びセパレータを積層し、前記セパレータはZ字形であり、次にタブを半田付けし、アルミラミネートフィルムでパッケージし、乾燥させた後、電解液を注入し、24h静置し、化成及びサイジングを行い、ナトリウムイオンキャパシタを得るナトリウムイオンキャパシタの組み立てステップと、を含む請求項1に記載のナトリウムイオンキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新型金属イオンキャパシタに関する。本発明はさらに水系ナトリウムイオンキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
金属イオンキャパシタ(リチウムイオンキャパシタ又はナトリウムイオンキャパシタ)の構造には2種類があり、第1種類は、電池型負極とキャパシタ型正極とからなり、このようなキャパシタは主に、正極材料としてたとえば活性炭など比表面積の大きな多孔質炭素材料を使用し、負極材料としてイオンを脱インターカレーションした材料を使用する。充電-放電過程では、異なるエネルギー貯蔵メカニズムの組み合わせにより、金属イオンキャパシタのエネルギー密度は従来の電気二重層キャパシタよりも高いとともに、電力密度は金属イオン電池よりも大きい。その高エネルギー密度、高電力密度及び長いサイクル安定性の利点により、電気自動車、医療機器、ステートグリッドでの将来性が期待される。しかしながら、新型イオンキャパシタの電圧ウィンドウを拡張し、電解液の消費を削減するために、負極に対してイオンプレインターカレーション処理を行う必要があり、一般には、ナトリウム源添加剤を使用して還元して負極に堆積させることでイオンプレインターカレーション処理を形成し、たとえば、中国特許CN110335764A及び中国特許公開番号CN113113235Aが挙げられる。その結果、製造プロセスが複雑であり、応用や普及がある程度制限されている。
【0003】
第2種類は、多孔質炭素材料と金属酸化物材料との複合材料を正極とし、リチウム電池の負極炭素材料を負極とする。金属酸化物材料を使用して複合することにより、安全性もその分低下し、また、たとえば三元ニッケルコバルトマンガンなどの一部の金属酸化物材料の構造の不安定性、マンガン酸リチウムのマンガン溶解の問題により、サイクル特性が大幅に損なわれてしまう。従来の金属イオンキャパシタはいずれも有機系を使用し、高安全性を求める応用分野では一定のリスクがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来技術の欠陥に対して、本発明は新型金属イオンキャパシタを提供することを目的とし、正極及び負極はいずれもハイブリッド型電極であり、異なるレート及び電力特性要件に応じて、電極は異なる割合の電池型材料とキャパシタ型材料とからなり、電解液は水系又は混合電解液であり、水系電解液の高イオン伝導率によって、金属イオンキャパシタのレート特性を大幅に向上させることができるとともに、本質安全の特性を持ち、たとえば、航空宇宙、軍事機器など安全性要件が非常に高い分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図2】
図2は長いサイクル30000回後の容量維持率曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、正極、負極、セパレータ及び電解液を含み、正極は正極活物質、導電剤及びバインダーを含み、正極活物質はプルシアンブルー類似体及び多孔質炭素材料を含み、前記プルシアンブルー類似体と多孔質炭素材料の割合は(5~70):(95~30)であり、負極は負極活物質、導電剤及びバインダーを含み、負極活物質はリン酸塩化合物ナトリウム吸蔵材料及び多孔質炭素材料を含み、前記ナトリウム吸蔵材料と多孔質炭素材料の割合は(10~80):(90~20)であり、電解液は脱イオン水、電解質塩及び添加剤を含むことを特徴とするナトリウムイオンキャパシタを提供する。
【0007】
本発明に係る正極材料は正極活物質、導電材及びバインダーを含み、三者の割合は(80-90):(13-7):(7-3)である。
【0008】
本発明に係る負極材料は負極活物質、導電材及びバインダーを含み、三者の割合は(72-85):(21-12):(7-3)である。
【0009】
本発明に係るプルシアンブルー類似体はM1M2Fe(CN)6(M1=Na、K、Znなど、M2=Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなど)を含む。
【0010】
本発明に係るリン酸塩化合物ナトリウム吸蔵材料は、NaTi2(PO4)3、Na3V2(PO4)3、Na4VFe(PO4)3、NaVPO4F、FePO4、NaFePO4などを含む。
【0011】
本発明に係る多孔質炭素材料の比表面積は1000-2200m2/g、細孔容積は0.5-1.0ml/g、嵩密度は0.4-0.6g/ml、粒径分布はD90<10μmである。
【0012】
本発明に係る電解質塩は過塩素酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、臭化ナトリウム、エタン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム及び蓚酸ナトリウムのうちの1種又は複数種の混合物を含み、質量モル濃度は1.0-2.0mol/kgである。
【0013】
本発明に係る電解液添加剤について、前記電解液添加剤はポリエチレングリコール、グリセロール、リン酸トリメチル、ポリアクリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボーネート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ジメチルスルホン、スルホランであり、重量比は1.0-80%である。
【0014】
本発明に係る電解液の溶剤は脱イオン水である。
【0015】
本発明に係る負極及び正極導電材はカーボンブラック、導電性グラファイト、カーボンナノチューブ及びグラフェンのうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0016】
本発明に係るバインダーはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸のうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせである。
【0017】
本発明に係るセパレータはセルロースセパレータ、PETセパレータ、PP不織布セパレータ及びPE不織布セパレータのうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0018】
本特許出願には文献又は発表された文章が引用されている。引用される文献及び発表された文章を共同で本願の参考データとすることで、本発明の関連分野における最新技術をより詳細に説明する。なお、出願の全過程を通じて、「含む」、「含有」又は「特徴は」のような過渡的な用語は同義語であり、包括的又は開放的なものであり、追加の列挙されていない要素又は方法のステップを除外しない。
【0019】
下面の実施例を参照しながら本発明をよりよく理解する。当業者であれば、以下の例は単に本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定しないことを理解できる。本発明の範囲は後述する特許請求の範囲により定められる。
【0020】
実施例
本実施例は高安全性・高比エネルギーの新型水系金属イオンキャパシタを提供し、前記イオンキャパシタは正極、負極、セパレータ及び電解液を含む。正極活物質は所定の割合で混合されたプルシアンブルー及び活性炭を含み、負極活物質は所定の割合で混合されたリン酸塩類化合物及び活性炭を含み、集電体は炭素被覆ステンレスであり、セパレータはPP不織布を選択した。
【0021】
本実施例では、正極材料は正極活物質、導電材及びバインダーからなり、正極活物質中のプルシアンブルーと活性炭の割合は表における配合比率に従い、導電材はグラフェン及び導電性グラファイト(質量比2:5)であり、バインダーはポリテトラフルオロエチレンエマルジョンを選択し、正極活物質、導電剤及びバインダーの割合は87:7:6であった。
【0022】
本実施例では、負極材料は負極活物質、導電材及びバインダーからなり、負極活物質中のリン酸チタンナトリウムと活性炭の割合は表における配合比に従い、導電材は活性炭及びアセチレンブラック(質量比1:1)であり、バインダーはポリカルボキシメチルセルロースナトリウムを選択し、負極活物質、導電剤及びバインダーの割合は80:14:6であった。
【0023】
本実施例では、水系イオンキャパシタの電解液塩は1mol/Kg酢酸ナトリウムであり、溶剤中の脱イオン水とポリエチレングリコールの割合は80:20であった。
【0024】
本実施例では、ナトリウムイオンキャパシタの製造方法は、
(1)上記正極活物質と導電剤を割合に応じて均一に混合した後、割合に応じてバインダーと適量の脱イオン水を添加し、均一に撹拌して正極スラリーを得て、次に、正極スラリーを厚さ15μmの炭素被覆ステンレスの両側表面にコーティングし、乾燥、ローラー圧延及び打ち抜きを経て正極を得る正極の製造ステップと、
(2)上記負極活物質と導電剤を割合に応じて均一に混合した後、割合に応じてバインダーと適量の脱イオン水を添加し、均一に撹拌して負極スラリーを得て、次に厚さ15μmの炭素被覆ステンレスの両側表面に均一にコーティングし、乾燥、ローラー圧延及び打ち抜きを経て負極を得る負極の製造ステップと、
(3)セパレータが前記正極と前記負極との間に位置する順序に従って、前記正極、負極及びセパレータを積層し、前記セパレータはZ字形であり、次にタブを半田付けし、アルミラミネートフィルムでパッケージし、乾燥させた後、電解液を注入し、24h静置し、化成及びサイジングを行い、ナトリウムイオンキャパシタを得るナトリウムイオンキャパシタの組み立てステップと、を含む。
【0025】
異なる正負極活物質の割合に応じた電圧、レート特性、正負極活物質の質量に基づく比エネルギーは以下の通りであった(表1参照)。
【0026】
【0027】
20mA/gの電流密度で充放電を行い、実施例2及び比較例1、2の充放電曲線は
図1に示され、全電池の充放電曲線を観察したところ、完全に異なる電気化学特性を示すことがわかり、実施例2は0.5-1.4Vの範囲では直線の勾配が大きく、その理由は主にキャパシタ型材料の電気二重層容量効果が支配的であることからであり、1.4-1.8Vの範囲では勾配が小さく、その理由は電池型材料にイオンインターカレーション/脱インターカレーション反応が発生することであり、その最大充電電圧は比較例2(電池型材料)とほぼ同じであり、キャパシタ型材料の添加により、容量、エネルギー及びレート特性が大幅に向上し、比較例1(キャパシタ型材料)に比べて、実施例2は電池型材料の添加により、電池の全電圧は1.4Vから1.8Vに向上し、エネルギー密度は大幅に向上できる。
【0028】
実施例3の長いサイクル曲線からわかるように、30000回後の容量維持率は93%よりも大きい(
図2参照)。