(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058631
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】天然繊維及び再生繊維を含む環境に優しい構造体
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20240418BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20240418BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240418BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240418BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240418BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20240418BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240418BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240418BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20240418BHJP
A45D 34/00 20060101ALI20240418BHJP
A45D 40/08 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
A45D34/04 510A
A61K8/894
A61K8/891
A61K8/37
A61K8/25
A61K8/29
A61K8/19
A61K8/34
A61Q1/02
A45D34/00
A45D40/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176136
(22)【出願日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0132484
(32)【優先日】2022-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジョン ソン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB432
4C083AC122
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC532
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083CC11
4C083DD22
4C083DD31
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】本明細書は、天然繊維及び再生繊維を含む環境に優しい構造体、及びそれを含む化粧品に関する。
【解決手段】本開示の一態様による天然繊維及び再生繊維を含む環境に優しい構造体は、特定範囲の天然繊維及び再生繊維の重量比、繊維の平均長さまたは太さを有するため、材料として繊維を含むが、弾力性のある発泡フォーム担体に類似した構造を有しており、前記構造体の内部に化粧料組成物を担持する際に、担持された前記化粧料組成物の一部が集まる繊維トラップ(filament trap)構造を有しているため、化粧料組成物の油相成分が分離せず、製造後の流通・保管期間中もその構造が維持されるといった安定性を奏し、前記構造体を押圧すると、担持された化粧料組成物が微細拡散の形式で排出されるため、優れた化粧効果を発揮すると共に、使用後は自然分解するといった環境に優しい特性も有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維及び再生繊維を含み、
下記(A)~(C)の特性のうちの少なくとも1つを有する、環境に優しい構造体。
(A)前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均長さは、40~80mmである。
(B)前記天然繊維及び再生繊維の重量比は、85:15~20:80である。
(C)前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均太さは、15~25μmである。
【請求項2】
前記天然繊維が、セルロース系繊維及びタンパク質系繊維からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の環境に優しい構造体。
【請求項3】
前記再生繊維が、レーヨン、ポリエステル(polyester;PET)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer;TPE)、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane;TPU)、天然パルプ繊維、ナイロン及びアセテートからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の環境に優しい構造体。
【請求項4】
前記構造体が、前記天然繊維及び再生繊維を撚り合わせた構造である、請求項1に記載の環境に優しい構造体。
【請求項5】
前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの表面の少なくとも一部に、凹凸、突起または撚れが形成されている、請求項1に記載の環境に優しい構造体。
【請求項6】
前記構造体が、前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの断面の最短径に対する最長径の比が1を超える繊維を含む、請求項1に記載の環境に優しい構造体。
【請求項7】
前記構造体の密度が、0.015~0.032g/cm3である、請求項1に記載の環境に優しい構造体。
【請求項8】
前記構造体の厚さが、0.1~10mmである、請求項1に記載の環境に優しい構造体。
【請求項9】
前記構造体が、化粧料組成物担持用である、請求項1に記載の環境に優しい構造体。
【請求項10】
前記構造体が、前記担持された化粧料組成物の一部が集まる複数の保管空間を含む構造を有する、請求項9に記載の環境に優しい構造体。
【請求項11】
前記化粧料組成物が、液状組成物である、請求項9に記載の環境に優しい構造体。
【請求項12】
前記化粧料組成物の粘度が、5,000~20,000cps(centi poise)である、請求項9に記載の環境に優しい構造体。
【請求項13】
前記構造体が、前記構造体に担持された化粧料組成物を塗布具に付けて用いるためのものである、請求項9に記載の環境に優しい構造体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の環境に優しい構造体、及び環境に優しい構造体に担持された化粧料組成物を含む、化粧品。
【請求項15】
前記化粧品が、さらに塗布具を含む、請求項14に記載の化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、天然繊維及び再生繊維を含む環境に優しい構造体、及びそれを含む化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液状の化粧料組成物は、真空容器やポンプ容器、ガラス容器などに充填して流通・保管していたが、持ち運びが不便であるという欠点があった。そこで、外出時でも手軽に化粧をしたり、化粧直しをしたりする必要性が増すにつれて、液状化粧料組成物を長時間均一に担持して使用できる化粧料組成物担体が登場した。しかしながら、発泡フォームからなる化粧料組成物担体は、石油由来の原料であって、廃棄後の環境への貢献が不十分といった問題があった。
【0003】
これらの環境問題を考慮し、環境に有益な材料を用いて環境に優しい構造体を研究された。ただし、環境に優しい素材であっても、化粧料組成物を担持する担体として長時間流通・保管後もその構造を維持できる安定性を備えなければならず、油相及び水相成分が混合された化粧料組成物を担持しても油相成分が分離されてはならず、構造体を押圧して内部に担持された化粧料組成物が適量且つ均一に排出される程度の弾力性を有さなければならない。また、環境に優しい素材であって、廃棄後に自然分解するといった特性も備えなければならない。
【0004】
そこで、本発明者は、化粧料組成物を担持して使用できる程度の特性を有しながらも、廃棄後に自然分解するので環境に優しい特性を有する構造体を研究し、天然繊維及び再生繊維を混合することにより、前記特性を全て備えた環境に優しい構造体を開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10-1805020号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10-2187728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、液状組成物を担持し、使用期間中にその形態が維持されると共に、その後は自然分解する環境に優しい特性を有する構造体について研究を行った。
【0007】
研究を行ったところ、天然繊維及び再生繊維が混合された構造体の場合、使用期間中に形態が維持され、内部に担持された化粧料組成物の油相成分が分離せずに弾力性を有し、優れた使用感を提供すると共に、その後は自然分解されて環境に優しい特性を有することが確認されたことから、本発明を完成した。
【0008】
よって、一態様において、本開示は、天然繊維及び再生繊維を含む環境に優しい構造体を提供することを目的とする。
【0009】
別の態様において、本開示は、前記環境に優しい構造体及び環境に優しい構造体に担持された化粧料組成物を含む化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、天然繊維及び再生繊維を含み、下記(A)~(C)の特性のうちの少なくとも1つを有する環境に優しい構造体を提供する。(A)前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均長さは、40~80mmである。(B)前記天然繊維及び再生繊維の重量比は、85:15~20:80である。(C)前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均太さは、15~25μmである。
【0011】
本開示の別の態様では、前記環境に優しい構造体及び環境に優しい構造体に担持された化粧料組成物を含む化粧品が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様による天然繊維及び再生繊維を含む環境に優しい構造体は、特定範囲の天然繊維及び再生繊維の重量比、繊維の平均長さまたは太さを有するため、材料として繊維を含むが、弾力性のある発泡フォーム担体に類似した構造を有しており、前記構造体の内部に化粧料組成物を担持する際に、担持された前記化粧料組成物の一部が集まる繊維トラップ(filament trap)構造を有しているため、化粧料組成物の油相成分が分離せず、製造後の流通・保管期間中もその構造が維持されるといった安定性を奏し、前記構造体を押圧すると、担持された化粧料組成物が微細拡散の形式で排出されるため、優れた化粧効果を発揮すると共に、使用後は自然分解するといった環境に優しい特性も有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の一態様において、「担体」とは、組成物を例にすることができる任意の材料または成分を担持できるものを意味し、「担持体」、「含浸材」または「媒介物」でも表すことができる。さらに、「担体」とは、それに担持された材料を別々の塗布具に排出するために使用されてもよい。前記担体に担持された組成物は、例えば、手、パフ、チップ、ブラシなどの塗布手段(塗布具またはアプリケータ(applicator)とも呼ばれる)を介して皮膚に送達することができる。
【0014】
本開示の一態様において、「担持能」とは、任意の材料または成分を保持する能力を意味する。担体に要求される「担持能」は、組成物を長時間均一に担持するものであることから、塗布具などで一時的に物質を付けるものと区別される。
【0015】
本開示の一態様において、「充填能」または「充填力」とは、構造体(担体)が化粧料組成物を充填できる能力を意味し、構造体(担体)に一定量の化粧料組成物が充填されるのに要される時間で表すことができる。本開示の一態様において、「充填能」または「充填力」の測定は、円直径56mm×高さ7.0mmの大きさの構造体(担体)に5,000~20,000cpsの化粧料組成物を手動で充填するのに要される時間を意味する。
【0016】
本開示の一態様において、「排出能」または「排出力」とは、化粧料組成物を担持した構造体(担体)から塗布具によって化粧料組成物を付ける際に排出される化粧料組成物の量を意味し、多くもなく少なくもない適量の化粧料組成物が排出されることが好ましい。本開示の一態様における「排出能」または「排出力」の測定は、5,000~20,000cpsの化粧料組成物が充填された円直径56mm×高さ7.0mmの大きさの構造体(担体)の表面を1~2kgの重量(力)で押されたときに取られる測定値である。
【0017】
本開示の一態様において、「耐久性」とは、化粧料組成物を構造体(担体)に担持し、一定温度下で一定時間放置したときに、構造体(担体)が溶融または破れるなど、構造体(担体)の全容積の一部の体積でも減少することなくその状態を維持できる程度及び/または使用時、塗布具によって構造体(担体)から化粧料組成物を付けるとき、構造体(担体)が塗布具による繰り返しの圧力に耐える程度を意味する。
【0018】
以下、本開示を詳細に説明する。
【0019】
一態様において、本開示は、天然繊維及び再生繊維を含み、(A)前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均長さは40~80mmである。(B)前記天然繊維及び再生繊維の重量比は85:15~20:80である。(C)前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均太さは15~25μmである;のうち少なくとも1つの特性を有する、環境に優しい構造体を提供する。
【0020】
本開示の一態様に係る環境に優しい構造体は、天然繊維及び再生繊維を含んでもよい。
【0021】
本開示の一実施形態によれば、天然繊維及び再生繊維を含む構造体の場合、前記構造体に担持された化粧料組成物の一部が集まる繊維トラップ(filament trap)構造を有することから、化粧料組成物の油相及び水相が分離されず、構造体を押圧すると担持された化粧料組成物が拡散形式で排出され、そのように排出された化粧料組成物を皮膚に塗布すると化粧膜が薄く密着感が向上し、優れた化粧効果を有することを確認した(実験例1及び表1を参照)。
【0022】
本開示の一態様において、「天然繊維」は、天然で産生される繊維である。前記天然繊維は、具体的には、セルロース系繊維及びタンパク質系繊維からなる群から選択される少なくとも1つであってもよく、より具体的には、セルロース及びポリ乳酸(polylactic acid;PLA)繊維からなる群から選択された少なくとも1つであってもよく、さらに具体的には、セルロースであってもよいが、再生繊維と混合して化粧料組成物を担持し、自然分解する性質を有する天然繊維であればそれに限定されるものではない。
【0023】
本開示の一態様において、「再生繊維」は、天然または人造の繊維状高分子物質を溶解・融解などにより均一な状態にし、それを再び繊維として形成した繊維の一種である。前記再生繊維は、具体的には、レーヨン、ポリエステル(polyester;PET)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer;TPE)、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane;TPU)、天然パルプ繊維、ナイロン及びアセテートからなる群から選択される少なくとも1つであってもよく、より具体的には、レーヨン、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)及びナイロンからなる群から選択される少なくとも1つであってもよく、さらに具体的には、ポリエステルであってもよいが、天然繊維と混合して化粧料組成物を担持し、自然分解する性質を有する再生繊維であればそれに限定されるものではない。
【0024】
本開示の一態様による天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均長さは、40~80mmであってもよい。具体的には、天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均長さは、40mm以上、42mm以上、44mm以上、46mm以上、48mm以上、50mm以上、52mm以上、54mm以上、56mm以上、58mm以上、60mm以上、62mm以上、64mm以上、66mm以上、68mm以上、70mm以上、72mm以上、74mm以上、76mm以上、または78mm以上であってもよく、80mm以下、78mm以下、76mm以下、74mm以下、72mm以下、70mm以下、68mm以下、66mm以下、64mm以下、62mm以下、60mm以下、58mm以下、56mm以下、54mm以下、52mm以下、50mm以下、48mm以下、46mm以下、44mm以下、または42mm以下であってもよいが、それに限定されるものではない。前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均長さが40mm未満であると、繊維表面に毛羽が形成され安定性が低下する。また、前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均長さが80mm超であると、前記構造体(担体)内部に担持された化粧料組成物の油相成分が繊維に沿って移動するようになり、油相成分が分離して液相の化粧料組成物を適切に担持できない。
【0025】
本開示の一実施例によれば、前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均長さが40~80mmである場合、化粧料組成物の油相成分が分離されず、化粧料組成物を構造体(担体)に安定して保持すると共に、長時間用いても毛羽が形成されず、優れた安定性を有することが確認された(実験例5及び表6)。
【0026】
本開示の一態様による天然繊維及び再生繊維の重量比は、85:15~20:80であってもよい。具体的には、前記天然繊維及び再生繊維の重量比は、85:15以下、80:20以下、75:25以下、70:30以下、65:35以下、60:40以下、55:45以下、50:50以下、45:55以下、40:60以下、35:65以下、30:70以下、または25:75以下であり、20:80以上、25:75以上、30:70以上、35:65以上、40:60以上、45:55以上、50:50以上、55:45以上、60:40以上、65:35以上、70:30以上、75:25以上、または80:20以上であってもよいが、それらに限定されるものではない。前記構造体の天然繊維及び再生繊維の重量比が85:15を超える場合、化粧料組成物を担持する際の耐久性が低下し、流通または使用期間中に構造が崩壊して化粧料組成物を担持する担体としての使用には適さない。また、前記構造体の天然繊維及び再生繊維の重量比が20:80未満の場合、化粧料組成物を担持してから使用期間が経過しても自然に分解されず、自然環境を汚染したり破壊したりする可能性がある。
【0027】
本開示の一実施例によれば、天然繊維及び再生繊維の重量比が85:15~20:80の場合、高温で3週間保管しても構造が維持され、5週間が経過したときに担体全体の体積の一部が分解する。それは、自然に加水分解されたと予想され、本開示の一態様に係る環境に優しい構造体として耐久性と環境に優しい特性の両方を有することが確認された(実験例3及び表4)。
【0028】
本開示の一態様による天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均太さは、15~25μmであってもよい。具体的には、天然繊維及び再生繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの平均太さは、15μm以上、16μm以上、17μm以上、18μm以上、19μm以上、20μm以上、21μm以上、22μm以上、23μm以上または24μm以上であってもよく、25μm以下、24μm以下、23μm以下、22μm以下、21μm以下、20μm以下、19μm以下、18μm以下、17μm以下または16μm以下であってもよいが、それに限定されるものではない。前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択された少なくとも1つの平均太さが15μm未満の場合、構造体(担体)の密度が高く、繊維組織が緻密で非常に少量の化粧料組成物が排出されるので、化粧効果が低下する。また、前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均太さが25μmを超える場合、構造体(担体)の密度が低く、繊維組織が粗くまばらで、排出される化粧料組成物の量が多く、化粧膜がよれたり、厚塗りになって使用感が低下したりする。
【0029】
本開示の一実施例によれば、天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均太さは、15~25μmの場合、構造体(担体)を構成する組織が細かく、適量の化粧料組成物が微細に排出されるので、高いカバー力を備えると共に薄い化粧膜を表現でき、使用感に優れた効果を有することが確認された(実験例4及び表5)。
【0030】
本開示の一態様による構造体は、前記天然繊維及び再生繊維を撚り合わせた構造であってもよい。
【0031】
本開示の一態様による構造体は、前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの表面の少なくとも一部に、凹凸、突起または撚れが形成されたものであってもよい。具体的には、前記構造体は、前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの表面全面積の0%超100%以下に凹凸、突起または撚れが形成されたものであってもよく、より具体的には、前記構造体は、前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの表面全体の面積の0%超、1%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上または90%以上に凹凸、突起または撚れが形成されたものであってもよく、100%以下、99%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下に凹凸、突起または撚れが形成されたものであってもよい。本開示の一実施例によれば、前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される1つまたは複数の表面に凹凸、突起または撚れのない線形であれば、弾力性がないのに対して、凹凸、突起または撚れが形成されると、弾性力が増加されて内部に担持された化粧料組成物をより適当な量で均一に排出し、使用感もまた優れていることが確認された(実験例6及び表7)。
【0032】
本開示の一態様による担持体は、天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの断面の最短径に対する最長径の比が1を超える繊維を含んでもよい。本開示の一態様による天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つは、平状であってもよい。本開示の一実施例によれば、前記担体に含まれる繊維がその断面の最短径と最長径の長さが類似して円形または正方形の断面を有する綿(cotton)である場合、前記構造体(担体)に担持された化粧料組成物が適量排出されないが、前記繊維の断面の最短径に対する最長径の比が1を超える場合、適量の化粧料組成物が均一に排出されることが確認された(実験例2及び表3)。
【0033】
本開示の一態様による構造体の密度は、0.015~0.032g/cm3であってもよい。具体的には、前記構造体の密度は、0.015g/cm3以上、0.016g/cm3以上、0.018g/cm3以上、0.02g/cm3以上、0.022g/cm3以上、0.024g/cm3以上、0.026g/cm3以上、0.028g/cm3以上または0.03g/cm3以上であってよく、0.032g/cm3以下、0.03g/cm3以下、0.028g/cm3以下、0.026g/cm3以下、0.024g/cm3以下、0.022g/cm3以下、0.02g/cm3以下、0.018g/cm3以下、または0.016g/cm3以下であってもよいが、それに限定されるものではない。前記構造体の密度が0.015g/cm3未満の場合、化粧料組成物を担持するには密度が低く、繊維組織が粗くまばらで、排出される化粧料組成物の量が多く、それにより化粧膜がよれたり、厚塗りになって使用感が低下したりする。また、前記構造体の密度が0.032g/cm3を超える場合、化粧料組成物を担持するには密度が高く、繊維組織が緻密で非常に少量の化粧料組成物が排出されるので、化粧効果が低下する。
【0034】
本開示の一態様による構造体の厚さは、0.1~10mmであってもよい。具体的には、前記構造体の厚さは、0.1mm以上、0.5mm以上、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、2.5mm以上、3mm以上、3.5mm以上、4mm以上、4.5mm以上、5mm以上、5.5mm以上、6mm以上、6.5mm以上、7mm以上、7.5mm以上、8mm以上、8.5mm以上、9mm以上、9.5mm以上、10mm以下、9.5mm以下、9mm以下、8.5mm以下、8mm以下、7.5mm以下、7mm以下、6.5mm以下、6mm以下、5.5mm以下、5mm以下、4.5mm以下、4mm以下、3.5mm以下、3mm以下、2.5mm以下、2mm以下、1.5mm以下、1mm以下、または0.5mm以下であってもよいが、それに限定されるものではない。前記構造体の厚さが0.1mm未満であると、化粧料組成物の担持量が少なすぎて、10mmを超えると、使用する際の化粧料組成物が残量なしでは排出が難しい。
【0035】
本開示の一態様による構造体は、化粧料組成物担持用であってもよい。
【0036】
本開示の一態様による構造体は、前記担持化粧料組成物の一部が集まる複数の保管空間を含む構造を有してもよく、具体的には、前記構造は、繊維トラップ(filament trap)構造であってもよい。一般に、化粧料組成物が担持された構造体(担体)が繊維素材からなる場合、繊維が絡み合っている網(web)構造を有し、繊維に沿って担持された化粧料組成物が流れ、油相成分が分離するので不安定である。一方、本開示の一態様による構造体(担体)は、担持された化粧料組成物の一部が集まる複数の保管空間を有しており、化粧料組成物の油相成分が繊維に沿って移動する流れが切れるので油相成分の分離が起こらず、そのような繊維トラップ構造により、構造体(担体)を押圧すると担持された化粧料組成物が微細拡散の形式で排出され、優れた効果を有する。
【0037】
本開示の一態様による化粧料組成物は、液状組成物であってもよく、溶液、エマルジョン、ゲル、クリームまたは懸濁液を含んでもよい。化粧料組成物が固相の場合よりも液状の場合、持ち運び及び保管が困難であるが、本開示の一態様による構造体(担体)を用いる場合、液状またはクリーム状の化粧料組成物を安定かつ安全に保管及び持ち運びすることができる。
【0038】
本開示の一態様による化粧料組成物は、乳化型、具体的には油中水(W/O)型または水中油(W/O)型であるか、あるいは分散型、具体的には油分散型または水分散型であってもよい。
【0039】
本開示の一態様による化粧料組成物は、5,000~20,000cps(centi poise)の粘度を有してもよい。前記粘度は、40mLの安定性容器に内容物を満たし、その後、30℃チャンバーに1日以上保管してから、ブルックフィールドLVII粘度計にスピンドル4番を用いて30rpmで1分間作動させた後、測定したものであってもよい。具体的には、前記化粧料組成物の粘度は、5,000cps以上、5,500cps以上、6,000cps以上、6,500cps以上、7,000cps以上、7,500cps以上、8,000cps以上、8,500cps以上、9,000cps以上、9,500cps以上、10,000cps以上、11,000cps以上、12,000cps以上、13,000cps以上、14,000cps以上、15,000cps以上、16,000cps以上、17,000cps以上、18,000cps以上または19,000cps以上であってもよく、20,000cps以下、19,000cps以下、18,000cps以下、17,000cps以下、16,000cps以下、15,000cps以下、14,000cps以下、13,000cps以下、12,000cps以下、11,000cps以下、10,000cps以下、9,500cps以下、9,000cps以下、8,500cps以下、8,000cps以下、7,500cps以下、7,000cps以下、6,500cps以下、6,000cps以下、または5,500cps以下であってもよいが、それに限定されるものではない。本開示の一態様による構造体は、低粘度の化粧料組成物を内部に担持しながらも化粧料組成物の油相成分が分離されず、弾力性を有し、使用期間中に構造が維持されると共に適量の化粧料組成物を均一に排出することができる。
【0040】
本開示の一態様に係る化粧料組成物は、スキンケア用化粧料組成物、化粧用化粧料組成物及び日焼け止め剤からなる群から選択されるものでもよく、具体的には、ツインケーキ、メイクアッププライマー、メイクアップベース、ファンデーション、コンシーラー、口紅、リップグロス、パウダー、リップライナー、アイブロー、アイライナー、アイシャドウ、ブラッシャー、日焼け止め剤、ローション、クリームまたはエッセンスなどに剤形化されてもよいが、それらに限定されるものではない。
【0041】
本開示の一態様による構造体は、前記構造体に担持された化粧料組成物を塗布具に付けて用いるためのものであってもよい。前記塗布具は、化粧料組成物が担持された構造体(担体)から化粧料組成物を付けることのできる別の道具であれば、限定されない。例えば、前記塗布具は、手、パフ、チップ、ブラシなどであってもよく、塗布手段またはアプリケーター(applicator)でもよい。すなわち、本開示の一態様による構造体は、塗布具ではなく化粧料組成物が担持された担体であって、前記担体から化粧料組成物を取る別個の塗布具を使用しなければならない。
【0042】
本開示の一態様による構造体は、複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0043】
本開示の一態様に係る構造体は、構造体の下面(手または塗布具と接触する面の反対側の面)と側面との少なくとも一方の面が、化粧料組成物の流れを阻害する構造となっていてもよく、具体的には、前記構造は、皮膜であってもよく、前記化粧料組成物の流れを阻害する構造により、構造体に化粧料組成物が担持された状態で、下方または横方に化粧料組成物が漏れるのを防止することができる。前記のように、構造体の側面または底面を化粧料組成物の流れを阻害する構造とすると、使用中に化粧料組成物が側面または底面に移動して構造体の外部に流出することを減らすことができ、最終的に化粧料組成物の遺失を減少させることができる。故に使用期間が増え、便宜性が改善される効果がある。
【0044】
別の態様において、本開示は、前記環境に優しい構造体及び環境に優しい構造体に担持された化粧料組成物を含む化粧品が提供される。前記環境に優しい構造体及び化粧料組成物に対する説明は、上述したとおりである。
【0045】
本開示の一態様による化粧品は、さらに塗布具を含んでもよい。前記塗布具は、化粧料組成物が担持された構造体から化粧料組成物を付けることのできる別の道具であれば、限定されない。例えば、前記塗布具は、手、パフ、チップ、ブラシなどであってもよく、塗布手段またはアプリケーター(applicator)でもよい。すなわち、本開示の一態様による構造体は、塗布具ではなく化粧料組成物が担持された担体であって、前記担体から化粧料組成物を取る別個の塗布具を使用しなければならない。
【0046】
以下、実施例及び実験例を挙げて本開示の構成及び効果をより具体的に説明する。しかしながら、以下の実施例、製造例及び実験例は、本開示の理解を助けるために例示として提供するものであり、本開示の範疇及び範囲がそれによって限定されるものではない。
【0047】
[実験例1]構造体素材による化粧料組成物の排出方式の違い及び安定性の確認
化粧料組成物担持用である構造体は、担体として化粧料組成物を内部に担持し、前記構造体を押圧すると化粧料組成物が排出される構造を有する。構造体の素材によって異なる構造を有し、それによって化粧料組成物が排出される方法が異なる。本発明者は、構造体の素材によって化粧料組成物がどのように排出されるかを確認し、油相成分を含む下記表1の組成を有する化粧料組成物が内部に担持されたときに、構造安定性が維持されるか否かを確認するために、下記の実験を行った。その結果を
図2に示す。そのとき、前記製造した構造体の大きさは、円直径56mm×高さ7.0mmである。
【0048】
【0049】
【0050】
比較例1-1は、従来の発泡フォーム担体であり、内部に複数の空隙を含む多角形、例えば、五角形(pentagonal)構造を有する。そのような発泡フォーム担体は、多角形構造を有する空隙内に化粧料組成物が担持されているが、前記担体を押圧すると、担持された化粧料組成物が液滴(droplet)状で排出され、化粧料組成物の油相及び水相が分離せず、安定している。しかしながら、比較例1-1の発泡フォーム担体は、石油由来原料を素材に製造されたものであり、環境への貢献が不十分である。
【0051】
比較例1-2は、合成繊維であるPE/PPから作られたウェブ(web)構造の構造体(担体)であり、前記合成繊維は、長繊維で担持された化粧料組成物が大量に(bulk)排出される。特に、比較例1-2の構造体を押圧すると、担持された化粧料組成物が瞬間的に大量排出されるばかりで、使用期間中に化粧料組成物の排出量が急激に減少して不便である。また、比較例1-2の構造体は、構造体をなす繊維に沿って化粧料組成物の油相成分が流れ、化粧料組成物中の油相成分が分離して不安定である。そのような比較例1-2の構造体の問題は、繊維からなる構造体(担体)であって、繊維が絡み合うウェブ構造を有しているので、内部に担持された化粧料組成物を保管できる空隙が大きく、前記化粧料組成物のうち、油成分が繊維によって分離されることが予想される。
【0052】
その一方、実施例1は、天然繊維と再生繊維とを混合した素材でできた、本開示の一態様に係る環境に優しい構造体である。実施例1の構造体は、長さの短い短繊維を含んでいるので、前記構造体内部に担持された化粧料組成物の油相成分が繊維に沿って移動する流れが切れ、前記化粧料組成物の一部が集まる繊維トラップ(filament トラップ)構造を有することから、化粧料組成物の油相及び水相が分離されない。また、そのような繊維の長さ及び繊維トラップ構造により、比較例1-2の構造体に比べて、構造体を押圧した際に、担持された化粧料組成物が微細拡散の形式で排出され、そのように排出された化粧料組成物を皮膚に塗布すると、化粧膜が薄く、密着感が向上し、優れた化粧効果を奏する。
【0053】
それにより、本開示の一態様に係る天然繊維及び再生繊維を含む環境に優しい構造体は、繊維を素材に含むものの、弾性力のある発泡フォーム担体のような構造を有しているので、優れた安定性を発揮し、押圧時に化粧料組成物が拡散形式で排出され、優れた化粧効果を奏することが確認された。
【0054】
[実験例2]繊維の種類による構造体の耐久性及び排出力の比較
実験例1から、天然繊維及び再生繊維を含む構造体の優れた安定性及び使用感を確認した。本開示の一態様に係る環境に優しい構造体は、化粧料組成物を担持し、弾性力を有しながらそれを排出することができ、使用期間中に化粧料組成物を担持しながらも使用可能な状態を維持するのに十分な耐久性を有するべきである。そこで、混合される天然繊維及び再生繊維のそれぞれの種類による構造体の耐久性及び排出力を比較した。その結果を表3に示す。そのとき、前記製造した構造体の大きさは、円直径56mm×高さ7.0mmであり、耐久性及び排出力の評価方法は、以下のとおりである。
【0055】
耐久性の評価方法
表1の化粧料組成物15gが担持された下記表3の繊維からなる構造体を、70℃の高温で3週間保管したときにおける構造体の体積を比較し、比較したところ、構造体の一部が分解すると不良、分解されず構造体の形態を維持すると優秀と評価した。
【0056】
排出力の評価方法
下記表3の繊維からなる構造体に、表1の化粧料組成物15gを充填し、各構造体からパフまたは手を用いて構造体に担持された化粧料組成物を1回塗布するのに適した量が均一に排出されるかを評価した。下記表3において、△は多すぎたり少なすぎたりする量の化粧料組成物が排出されるか、あるいは均一に排出されないことを、○は適量の化粧料組成物が均一に排出されることを、◎は非常に適度な量の化粧料組成物が長時間均一に排出されることを意味する。
【0057】
【0058】
表3に示されるように、混合される天然繊維及び再生繊維の種類によって、構造体の安定性及び排出力に差があることを確認した。そのとき、排出力は多くもなく少なくもない量が排出されることが好ましいので、使用初期に1回ペイオフするとき、約0.3~0.5gが排出される程度を適正量と判断した。排出力が0.3g以下であれば、塗布量が少なく化粧効果が低下し、0.5g以上であると化粧がよれる現象が発生し、不均一に塗布される。
【0059】
[実験例3]天然繊維及び再生繊維の重量比による耐久性及び分解度の比較
本開示の一態様に係る環境に優しい構造体は、使用期間中に化粧料組成物を担持しながらも使用可能な状態を維持するが、その後は自然分解して環境に有益な特性を有するべきである。そこで、天然繊維及び再生繊維の重量比による耐久性と分解度を比較した。その結果を表4に示す。そのとき、天然繊維としてはセルロースを、再生繊維としてはPETを用いて製造した構造体に、実験例1の化粧料組成物15gを担持して評価した。
【0060】
耐久性の評価方法
高温(70℃)で3週間保管してもその形態が維持されれば、ユーザが構造体を用いる間でも安定した形態を維持すると判断した。耐久性の評価方法は、実験例2と同様である。
【0061】
分解度の評価方法
高温(70℃)で保管した場合、3週間の経過、すなわち3週間以上経過したとき(下記表4では5週経過)、体積変化を測定し、体積が減少すると分解されたものと評価し、体積が減少しないと分解しないもの(安定)と評価した。
【0062】
【0063】
表4に示されるように、天然繊維及び再生繊維の重量比が100:0~90:10の場合(比較例2-1~2-4)、高温で3週間保管すると不安定で構造が崩壊し、化粧料組成物を担持する担体としての使用には適さなかった。また、天然繊維及び再生繊維の重量比が10:90及び5:96の場合(比較例2-5及び2-6)、高温で5週間保管しても自然に分解されず、環境に優しい特性を有さなかった。
【0064】
その一方、天然繊維及び再生繊維の重量比が85:15~20:80の場合(実施例2-1~2-8)、高温で3週間保管しても構造が維持され、5週間が経過したときに構造体全体の体積の一部が分解する。それは、自然に加水分解されたと予想され、本開示の一態様に係る環境に優しい構造体として耐久性と環境に優しい特性の両方を有することが確認された。
【0065】
[実験例4]繊維の太さによる使用感の比較
本開示の一態様に係る環境に優しい構造体を構成する天然繊維及び再生繊維の太さによる使用感を評価した。そのとき、構造体は、天然繊維としてはセルロースを、再生繊維としてはPETを用い、天然繊維及び再生繊維の重量比は約40:60であり、繊維平均太さのみ異なる実験例1における実験例1の化粧料組成物15gを担持した。そのとき、前記製造した構造体の大きさは、円直径56mm×高さ7.0mmである。
【0066】
使用感は、メイクアップ製品を用いる15人のユーザを対象に、繊維平均太さの異なる構造体を使用してもらい、その結果を評価した。
【0067】
【0068】
表5に示されるように、構造体を構成する繊維の平均太さが15μm未満であると(比較例3-1及び3-2)、構造体の密度が高く、繊維組織が緻密で、非常に少ない量の化粧料組成物が排出されて化粧効果が落ちた。また、繊維の平均太さが30μm超であると(比較例3-3及び3-4)、構造体の繊維組織が粗くまばらで、排出される化粧料組成物の量が多く、化粧膜がよれたり、厚塗りになって使用感が低下したりした。
【0069】
その一方、繊維の平均太さが15~25μmの場合(実施例3-1~3-3)、構造体を構成する組織が細かく、適量の化粧料組成物が微細に排出されるので、高いカバー力を備えると共に薄い化粧膜を表現でき、使用感に優れた効果を有することが確認された。
【0070】
[実験例5]繊維の長さによる安定度の評価
本開示の一態様に係る環境に優しい構造体を構成する天然繊維及び再生繊維の長さによる安定度を、実験例1と同様の方法で評価した。その結果を表6に示す。そのとき、環境に優しい構造体は、天然繊維としてはセルロースを、再生繊維としてはPETを用い、天然繊維及び再生繊維の重量比は40:60であり、繊維の平均太さは約20μmであり、実験例1の化粧料組成物15gを担持した。
【0071】
【0072】
表6に示されるように、構造体を構成する繊維の平均長さが40mm未満であると(比較例4-1~4-3)、繊維表面に毛羽が形成され安定性が低下した。また、繊維の平均長さが80mm超であると(比較例4-4及び4-5)、前記構造体内部に担持された化粧料組成物の油相成分が繊維に沿って移動するようになり、油相成分が分離して液相の化粧料組成物を適切に担持できなかった。
【0073】
その一方、繊維の平均長さが40~80mmの場合(実施例4-1~4-3)、化粧料組成物の油相が分離されず、化粧料組成物を構造体(担体)に安定して保持すると共に、長時間用いても毛羽が形成されず、優れた安定性を有することが確認された。
【0074】
[実験例6]繊維の形態による排出力及び使用感の比較
本開示の一態様に係る環境に優しい構造体を構成する天然繊維及び再生繊維の形態による排出力及び使用感を評価した。その結果を表7に示す。そのとき、環境に優しい構造体は、天然繊維としてはセルロースを、再生繊維としてはPETを用いた。また、天然繊維及び再生繊維の重量比は40:60であり、繊維の平均太さは約20μmであり、繊維の平均長さは約45mmであり、実験例1の化粧料組成物15gを担持した。
【0075】
排出力は実験例2と同様の方法で評価し、使用感は実験例4と同様の方法で評価した。
【0076】
【0077】
表7に示されるように、構造体を構成する繊維が線状の場合(比較例5)よりも、蛇腹状で凹凸、突起または撚れが形成された場合(実施例5)、弾性力が増加して内部に担持された化粧料組成物をより適当な量で均一に排出し、使用感も優れていることが確認された。
【0078】
従って、本開示の一態様に係る環境に優しい構造体は、内部に化粧料組成物を担持することができ、弾性力を有しながら前記担持された化粧料組成物を排出することができ、製造後、使用期間中に化粧料組成物を安定して担持して使用可能な状態を維持すると共に、その後は自然分解して環境に優しい特性を有し、油相及び水相成分を含む化粧料組成物が担持されても油相成分が分離しない優れた安定性を有する効果がある。
【0079】
本開示は、一実施例として以下の実施形態を提供することができる。
【0080】
第1の実施形態は、天然繊維及び再生繊維を含み、下記(A)~(C)の特性のうちの少なくとも1つを有する環境に優しい構造体を提供することができる:(A)前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均長さは、40~80mmである。(B)前記天然繊維及び再生繊維の重量比は、85:15~20:80である。(C)前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの平均太さは、15~25μmである。
【0081】
第2の実施形態は、第1の実施形態において、前記天然繊維が、セルロース系繊維及びタンパク質系繊維からなる群から選択される少なくとも1つである環境に優しい構造体を提供することができる。
【0082】
第3の実施形態は、第1の実施形態または第2の実施形態において、前記再生繊維が、ポリエステル(polyester;PET)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer;TPE)、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane;TPU)、及び天然パルプ繊維からなる群から選択される少なくとも1つである環境に優しい構造体を提供することができる。
【0083】
第4の実施形態は、第1の実施形態ないし第3の実施形態のうち少なくとも1つであって、前記構造体が、前記天然繊維及び再生繊維を撚り合わせた構造である、環境に優しい構造体を提供することができる。
【0084】
第5の実施形態は、第1の実施形態ないし第4の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの表面の少なくとも一部に、凹凸、突起または撚れが形成されている、環境に優しい構造体を提供することができる。
【0085】
第6の実施形態は、第1の実施形態ないし第5の実施形態のうち少なくとも1つであって、前記構造体が、前記天然繊維及び再生繊維からなる群から選択される少なくとも1つの断面の最短径に対する最長径の比が1を超える繊維を含む、環境に優しい構造体を提供することができる。
【0086】
第7の実施形態は、第1の実施形態ないし第6の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記構造体の密度が、0.015~0.032g/cm3である、環境に優しい構造体を提供することができる。
【0087】
第8の実施形態は、第1の実施形態ないし第7の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記構造体の厚さが、0.1~10mmである、環境に優しい構造体を提供することができる。
【0088】
第9の実施形態は、第1の実施形態ないし第8の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記構造体が、化粧料組成物担持用である、環境に優しい構造体を提供することができる。
【0089】
第10の実施形態は、第9の実施形態において、前記構造体が、前記担持された化粧料組成物の一部が集まる複数の保管空間を含む構造を有する、環境に優しい構造体を提供することができる。
【0090】
第11の実施形態は、第9の実施形態または第10実施形態において、化粧料組成物が、液状組成物である、環境に優しい構造体を提供することができる。
【0091】
第12の実施形態は、第9の実施形態ないし第11の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記化粧料組成物の粘度が、5,000~20,000cps(centi poise)である、環境に優しい構造体を提供することができる。
【0092】
第13の実施形態は、第9の実施形態ないし第12の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記構造体が、前記構造体に担持された化粧料組成物を塗布具に付けて用いるためのものである、環境に優しい構造体を提供することができる。
【0093】
第14の実施形態は、第1の実施形態ないし第13の実施形態のうち少なくとも1つに係る環境に優しい構造体、及び前記環境に優しい構造体に担持された化粧料組成物を含む化粧品を提供することができる。
【0094】
第15の実施形態は、第14の実施形態において、前記化粧品が、さらに塗布具を含む化粧品を提供することができる。