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特開2024-58638液体取り扱い装置、および中空プランジャの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058638
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】液体取り扱い装置、および中空プランジャの使用
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B01L3/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023176707
(22)【出願日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】22201369.0
(32)【優先日】2022-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512265652
【氏名又は名称】サートリウス・ビオヒット・リキッド・ハンドリング・オイ
【氏名又は名称原語表記】SARTORIUS BIOHIT LIQUID HANDLING OY
【住所又は居所原語表記】LAIPPATIE 1, FI‐00880 HELSINKI, FINLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】パシ・ヴィヒネン
【テーマコード(参考)】
4G057
【Fターム(参考)】
4G057AB16
4G057AB18
4G057AB31
(57)【要約】
【課題】吸引及び分注のために利用可能な異なる注入容量範囲を有する簡便な液体取り扱い装置及び方法を提供すること。
【解決手段】本発明の例示的な態様によれば、空気置換原理に基づく液体取り扱い装置であって、第1チャンバと第2チャンバとを含む空洞と、前記空洞内に真空または圧力を加えるために、前記空洞内を移動可能なプランジャと、を備え、ここで、前記第1チャンバが、第1注入容量範囲を提供するように構成され、前記第2チャンバが、前記第1チャンバと共に、前記第1注入容量範囲よりも大きい第2注入容量範囲を提供するように構成され、前記第1チャンバおよび前記第2チャンバが、閉鎖可能な流体接続部によって接続され、前記流体接続部が、前記プランジャを通って設けられている液体取り扱い装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気置換原理に基づく液体取り扱い装置であって、
第1チャンバと第2チャンバとを含む空洞と、
前記空洞内に真空または圧力を加えるために、前記空洞内で移動可能なプランジャと、
を備え、
ここで、前記第1チャンバが、第1注入容量範囲または第1注入容量を提供するように構成され、
前記第2チャンバが、前記第1チャンバと共に、前記第1注入容量範囲または前記第1注入容量よりも大きい第2注入容量範囲または第2注入容量を提供するように構成され、
前記第1チャンバおよび前記第2チャンバが、閉鎖可能な流体接続部によって接続され、
前記流体接続部が、前記プランジャを通って設けられている、液体取り扱い装置。
【請求項2】
前記第1注入容量範囲または前記第1注入容量が、前記流体接続部が閉じているときに利用可能であるように、構成されている、請求項1に記載の液体取り扱い装置。
【請求項3】
前記第2注入容量範囲または前記第2注入容量が、前記流体接続部が開いているときに利用可能であるように、構成されている、請求項1または請求項2に記載の液体取り扱い装置。
【請求項4】
前記第1チャンバおよび前記第2チャンバが、円筒形である、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項5】
前記第2チャンバが、前記第1チャンバよりも大きい直径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項6】
前記プランジャが、前記空洞の内面、通常は両方の前記チャンバの内面に対してシールされている、請求項1から5のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項7】
前記プランジャが、前記プランジャの外周に設けられたフランジによって、前記第2チャンバの内面に対してシールされている、請求項1から6のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項8】
前記プランジャが、その長さにわたる少なくとも一部が中空であり、該中空部が、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間の前記閉鎖可能な流体接続部、または前記閉鎖可能な流体接続部の少なくとも一部を、提供する、請求項1から7のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項9】
前記プランジャの長さの少なくとも一部、好ましくは前記プランジャの下端部から上方の全長が、中空である、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項10】
前記流体接続部が、前記プランジャの下端部から前記プランジャの側壁の開口部まで前記プランジャの内部に延在するチャネルを有し、その結果、好ましくは、前記プランジャが、その長さにわたる少なくとも各部が中空となっている、請求項1から9のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項11】
前記閉鎖可能な流体接続部を開閉し、特に前記プランジャの前記側壁における前記開口部を開閉するように構成された閉鎖機構、
を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項12】
前記閉鎖機構が、前記プランジャの前記中空部内のロッド、を有し、ここで、前記ロッドが、前記流体接続部を開閉するために前記中空部内でそれぞれ上下に移動可能である、請求項1から11のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項13】
前記閉鎖機構が、ソレノイドモーターなどの電気モーターによって作動する、請求項1から12のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項14】
前記液体取り扱い装置が、手持ち式ピペット、好ましくは手持ち式空気置換ピペットである、請求項1から13のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項15】
前記液体取り扱い装置が、自動液体取り扱いステーションである、請求項1から14のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項16】
前記液体取り扱い装置が、シングルチャネルまたはマルチチャネルの液体取り扱い装置である、請求項1から15のいずれか一項に記載の液体取り扱い装置。
【請求項17】
空気置換液体取り扱い装置における中空プランジャであって、前記プランジャが内部で移動するように構成された空洞、の2つの部分の間の流体接続部として機能する、中空プランジャ、の使用であって、
前記流体接続部が、前記液体取り扱い装置の注入容量範囲または注入容量を減少させるために閉鎖可能に構成されている、使用。
【請求項18】
液体取り扱い装置であって、
第1チャンバと第2チャンバとを含む空洞であって、前記第1チャンバが第1容量を有し、前記第2チャンバが前記第1容量よりも大きい第2容量を有する、空洞と、
前記空洞内に真空または圧力を加えるために前記空洞内を移動し、それによって、前記空洞の開口下端部に取り付けられたチップに/チップから、液体を吸引または分注するように構成されたプランジャと、
を備え、前記第1チャンバおよび前記第2チャンバが、閉鎖可能な流体接続部によって接続されている、液体取り扱い装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気置換原理に従って作動する液体取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気置換ピペットは、一般に、円筒形空洞と、前記空洞内で移動するように設けられたプランジャと、を備える。前記プランジャは、ユーザが手動で作動させることも、電動モーターで自動的に作動させることもできる。前記プランジャがシリンダ内を上方に移動するとき、前記シリンダの下部にまたはその開口端部に取り付けられたチップ中に、液体が吸引される。前記プランジャが下方に移動するとき、液体が前記チップから排出される。
【0003】
従来の空気置換ピペットでは、吸引および分注のために利用可能な注入容量の範囲は、ピペットのシリンダおよびプランジャの寸法、特にシリンダおよびプランジャの直径および長さ、ならびにプランジャのストローク長によって決まる。従来では、単一の容量範囲しか利用できず、拡大させることや縮小させることなどの変更はできない。この容量範囲内で、プランジャストローク長、すなわちプランジャの移動距離を調整することにより、特定のピペッティング動作に対して所望の注入容量を選択することが可能である。ストローク長を最短値に設定すると、容量範囲内の最小容量が利用可能となる。逆に、ストローク長を最長値に設定すると、容量範囲内の最大容量が利用可能となる。
【0004】
一般に、大容量ピペットの精度は、その容量範囲の下限部分の容量を使用する場合には制限される。従って、最小注入容量は常に規定される。
【0005】
プランジャストローク長を調整できない固定容量空気置換ピペットも存在する。このようなピペットでは、任意の容量範囲が利用できず、一定の注入容量が利用可能である。
【0006】
本発明は、既知の空気置換ピペットに存在する問題の少なくとも一部を解決することを意図している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの特定の実施形態は、従属項に定義される。
【0008】
本発明の第1態様によれば、空気置換原理に基づく液体取り扱い装置であって、
第1チャンバと第2チャンバとを含む空洞と、
前記空洞内に真空または圧力を加えるために、前記空洞内で移動可能なプランジャと、
を備え、
前記第1チャンバが、第1注入容量範囲を提供するように構成され、
前記第2チャンバが、前記第1チャンバと共に、前記第1注入容量範囲よりも大きい第2注入容量範囲を提供するように構成され、
前記第1チャンバおよび前記第2チャンバが、閉鎖可能な流体接続部によって接続され、
前記流体接続部が、前記プランジャを通って設けられている、液体取り扱い装置、が提供される。
【0009】
本発明の第2態様によれば、液体取り扱い装置であって、
第1チャンバと第2チャンバとを含む空洞であって、前記第1チャンバが第1容量を有し、前記第2チャンバが前記第1容量よりも大きい第2容量を有する、空洞と、
前記空洞内に真空または圧力を加えるために前記空洞内を移動し、それによって、前記空洞の開口下端部に取り付けられたチップに/チップから、液体を吸引または分注するように構成されたプランジャと、を備え、
前記第1チャンバおよび前記第2チャンバが、閉鎖可能な流体接続部によって接続されている、液体取り扱い装置、が提供される。
【0010】
本発明の第3態様によれば、
空気置換液体取り扱い装置における中空プランジャであって、前記プランジャが内部で移動するように構成された空洞の2つの部分の間の流体接続部として機能する、中空プランジャ、の使用であって、
前記流体接続部が、前記液体取り扱い装置の容量範囲を減少させるために閉鎖可能に構成されている、使用、が提供される。
【0011】
前記第1態様または前記第2態様または前記第3態様の様々な実施形態は、以下の箇条書きされたリストのうちの1つ以上の特徴を、含み得る:
・前記第1注入容量範囲または前記第1注入容量は、前記流体接続部が閉じているときに利用可能であるように、構成されている。
・前記第2注入容量範囲または前記第2注入容量は、前記流体接続部が開いているときに利用可能であるように、構成されている。
・前記空洞は、前記第1チャンバと第2チャンバとから構成されている。
・前記空洞は、液体を受け入れるための、使い捨てチップ、例えばプラスチック製使い捨てチップなどのチップを保持するように構成された開口下端部を、有する。
・前記第1チャンバは、実質的に円筒形である。
・前記第2チャンバは、実質的に円筒形である。
・前記第2チャンバは、前記第1チャンバよりも大きい直径を有する。
・前記プランジャは、前記空洞の内面、通常は両方のチャンバの内面に対してシールされている。
・前記プランジャは、前記プランジャの外周に設けられたフランジによって、前記第2チャンバの内面に対してシールされている。
・前記プランジャは、その長さにわたる少なくとも一部が中空である。
・前記プランジャは、その全長にわたって中空である。
・前記中空部または前記中空プランジャは、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間の前記閉鎖可能な流体接続部、または前記閉鎖可能な流体接続部の少なくとも一部を、提供する。
・前記プランジャの長さの少なくとも一部、好ましくは前記プランジャの下端部から上方の全長が、中空である。
・前記流体接続部は、前記プランジャの下端部から前記プランジャの側壁の開口部まで前記プランジャの内部に延在するチャネルを有し、その結果、好ましくは、前記プランジャは、その長さにわたる少なくとも各部が中空となっている。
・前記液体取り扱い装置は、前記閉鎖可能な流体接続部を開閉し特に前記プランジャの前記側壁における前記開口部を開閉するように構成された閉鎖機構、を備える。
・前記閉鎖機構は、前記プランジャの中空部内にロッドまたはバーを有する。
・前記ロッドは、前記流体接続部を開閉するために、特に前記開口部を開閉するために、中空部内で、通常は垂直方向に動くことができる。
・前記ロッドは、前記流体接続部を開閉するために、特に前記開口部を開閉するために、中空部内で、その垂直軸周りで動くことができる。
・前記閉鎖機構は、ソレノイドモーターなどの電気モーターによって作動する。
・前記液体取り扱い装置は、空気置換ピペットである。
・前記液体取り扱い装置は、一定のプランジャストローク長を有する空気置換ピペットである。
・前記液体取り扱い装置は、調整可能なプランジャストローク長を有する空気置換ピペットである。
・前記液体取り扱い装置は、手持ち式ピペット、好ましくは手持ち式空気置換ピペットである。
・前記液体取り扱い装置は、自動液体取り扱いステーションである。
・前記液体取り扱い装置は、シングルチャネルまたはマルチチャネルの液体取り扱い装置である。
・前記流体接続部は、前記プランジャを通って設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、1つのピペットで2つの代替的な、典型的には異なる容量範囲を有する簡便な方法を提供することができる。
【0013】
本発明は、実施態様が省スペースであるため、手動手持ち式ピペットにおいて特に有益であり得る。ピペットの外形寸法に影響を及ぼすことなく、2つの容量範囲を提供することができる。
【0014】
さらに、本発明は、ピペットが2つの容量範囲をユーザにもたらすため、実質的に異なる分注容量でいくつかのピペッティングステップを実行することが可能になる。分注シーケンスの途中で、あるピペットの使用から異なる容量範囲を有する別のピペットへの使用に変更することを、回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の1つの実施形態による液体吸引分注ヘッドまたはピペットを示す。
図2】本発明の1つの実施形態による液体吸引分注ヘッドまたはピペットを示す。
図3】本発明の1つの実施形態による液体吸引分注ヘッドまたはピペットを示す。
図4】本発明の1つの実施形態による液体吸引分注ヘッドまたはピペットを示す。
図5】本発明の1つの実施形態によるプランジャおよびロッドを示す。
図6】本発明の1つの実施形態によるプランジャおよびロッドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(定義)
本文脈において、用語「液体取り扱い装置」は、通常では20mlより少ない量で、液体を吸引および分注するように構成された装置を、通常含む。
【0017】
本文脈において、用語「ピペット」は、通常、例えば機械式ピペットまたは電子ピペットなどの、手持ち式液体分注装置を指し、自動液体取り扱いロボットまたはステーションにおけるピペッティングヘッドを指す場合もある。
【0018】
本文脈において、用語「流体」は、通常、空気を指す。
【0019】
本文脈において、用語「プランジャ」は、用語「ピストン」と同義である。
【0020】
本文脈において、用語「プランジャストローク長」は、用語「プランジャ移動長」および「プランジャ移動距離」と同義である。
【0021】
本文脈において、「流体接続部によって接続されている」という表現は、通常、流体(空気など)を通すためのチャネルによって、接続されていることを指す。「流体接続部」という用語は、通常、空気接続部または圧力チャネルを指す。
【0022】
本発明は、好ましくは、空洞内に真空または圧力を加え、それによって空洞の開口下端部に取り付けられたチップに/チップから液体を吸引または分注するために、プランジャが空洞内で移動することができる空気置換ピペットまたは分注装置に関する。
【0023】
本明細書において、用語「容量範囲」は、典型的には、ピペットの注入容量範囲、すなわち、調整可能なプランジャ移動距離にわたって空洞内でプランジャを移動させることによって、吸引および分注するようにピペットが構成される液体容量の範囲を、指す。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態は、調整可能なプランジャストローク長を有する空気置換ピペットに適用可能である。前記調整により、利用可能な注入容量の範囲を有することが可能になる。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態は、一定のプランジャストローク長を有する空気置換ピペットに適用可能である。
【0026】
調整可能なプランジャストローク長を有するピペットの場合、本発明の新規チャンバ構造によって、単一のピペットまたは液体取り扱い装置に代替注入容量範囲がもたらされ得ることが、観察された。
【0027】
また、固定プランジャストローク長を有するピペットの場合、本発明の新規チャンバ構造により、代替の一定注入容量が単一のピペットまたは液体取り扱い装置にもたらされ得ることが観察された。
【0028】
1つの実施形態では、空気置換原理に基づく液体取り扱い装置が提供され、該液体取り扱い装置は、第1チャンバと第2チャンバとを含む、またはから構成される空洞と、前記空洞内に真空または圧力を加えるために空洞内で移動可能なプランジャと、を備える。前記プランジャの移動により、通常、前記空洞内の空気が置換され、空洞の端部に取り付けられたチップからの液体の吸引およびチップへの液体の分注を行う。前記空洞の前記端部は、前記空洞の開口下端部である。
【0029】
前記空洞は、通常、2つの個別の部品から構成されるか、または2つの個別の部品を含み、それぞれが空気を保持するための独自の容量または容積を有する。前記部品は、単一の組み合わせた容量を形成するように連結可能である。
【0030】
前記第1チャンバは、単独で使用される場合など、前記第2チャンバへの空気接続なしで、第1注入容量範囲を提供するように構成される。
【0031】
前記第2チャンバは、通常、単独では使用されず、前記第1チャンバと組み合わせて、または一緒に使用されるのみであり、その結果、それらのチャンバの個々の容量により、単一の一体化された容量が形成される。前記組み合わされた容量は、前記第1注入容量範囲よりも大きい第2注入容量範囲を提供する。
【0032】
各容量範囲内において、ユーザは、前記プランジャストローク長を調節することにより、従来通り、特定のピペッティング動作に対して所望の注入容量を設定することができる。
【0033】
前記第1チャンバおよび前記第2チャンバは、通常、閉鎖可能な流体接続部によって接続される。好ましくは、前記ピペットを用いてピペッティング作業を行う際に、より小さい容量範囲からより大きい容量範囲へまたはその逆へそれぞれ変更するために、前記流体接続部は、必要に応じて開閉され得る。その結果、チップを大容量のチップに、または小容量のチップに変更することが、適切になる場合がある。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記流体接続部は、前記プランジャを通って設けられている。例えば、前記プランジャの長さの少なくとも一部を通る閉鎖可能なチャネルが、前記閉鎖可能な流体接続部として機能し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記流体接続部は、閉鎖可能なホースまたはチューブを含む。
【0036】
1つの実施形態において、前記第1注入容量範囲は、前記流体接続部が閉鎖状態であるときに利用可能であるように、構成される。
【0037】
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間の流体接続部が閉じているとき、好ましくは、前記フランジの上方で前記第2チャンバの上部から、空気を外に送出するためのチャネルが、設けられる。前記流体接続部が開いていて前記第2チャンバが使用されているとき、前記フランジの上方で第2チャンバの上部から空気を外に送出するための前記チャネルは、閉じられている。
【0038】
1つの実施形態において、前記第2注入容量範囲は、前記流体接続部が開いているときに利用可能であるように、構成される。
【0039】
1つの実施形態において、前記空洞は、使い捨てプラスチックチップなどの液体を受けるためのチップ、を保持するように構成された開口下端部を、備える。
【0040】
好ましくは、前記第1チャンバおよび前記第2チャンバは、円筒形である。これらのチャンバはまた、例えば、前記液体取り扱い装置の本体の形状などの前記液体取り扱い装置の外形寸法に適合するために、任意の他の適切な形状を有し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記第2チャンバは、前記第1チャンバよりも大きな直径を有する。前記第2チャンバは、前記第1チャンバより低い高さを有し得る。
【0042】
好ましくは、前記第1チャンバの高さは、プランジャストローク長に等しいか、またはプランジャストローク長よりも大きい。
【0043】
好ましくは、前記第2チャンバの高さは、プランジャストローク長に等しいか、またはプランジャストローク長よりも大きい。
【0044】
前記プランジャは、典型的には、空洞の高さに沿った所定の位置で、空洞の内面に対してシールされる。
【0045】
前記プランジャは、前記プランジャの外周に設けられたフランジによって、例えば、前記フランジの外縁と前記第2チャンバの内面との間にシールを設けることによって、前記第2チャンバの内面に対してシールされ得る。
【0046】
1つの実施形態において、前記プランジャは、その長さにわたる少なくとも一部が中空であり、該中空部は、通常、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間の前記閉鎖可能な流体接続部、またはその少なくとも一部、をもたらす。
【0047】
前記プランジャの下端部から上方への長さの少なくとも10%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも80%、の部分が、中空であり得る。
【0048】
プランジャ全体が、中空であってもよい。
【0049】
1つの実施形態において、前記流体接続部は、プランジャの下端部からプランジャの側壁の開口部までプランジャの内部に延在するチャネルを備え、その結果、前記プランジャは、その長さにわたる少なくとも各部が中空となっている。
【0050】
前記液体取り扱い装置は、前記閉鎖可能な流体接続部を開閉するように、特に前記プランジャの前記側壁の前記開口部を開閉するように、構成された閉鎖機構を備え得る。
【0051】
例えば、前記閉鎖機構は、前記プランジャの中空部内のロッドまたはバーを含み得、前記ロッドは、前記流体接続部を開閉するために中空部内で動き得る。
【0052】
前記閉鎖機構は、好ましくは、ソレノイドモーターなどの電気モーターによって作動される。前記閉鎖機構は、ロッドをそれぞれ上下に動かすことによって、手動で作動させることもできる。
【0053】
前記液体取り扱い装置は、手持ち式ピペット、好ましくは手持ち式空気置換ピペットであってもよい。
【0054】
前記液体取り扱い装置は、自動液体取り扱いロボットまたはステーションであってもよい。
【0055】
前記液体取り扱い装置は、シングルチャネル装置またはマルチチャネル装置であってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明は、空気置換液体取り扱い装置における中空プランジャの使用であって、前記プランジャが内部で移動するように構成されている空洞の2つの部分間の流体接続部として機能する中空プランジャの使用を提供する。通常、前記流体接続部は、前記液体取り扱い装置の注入容量範囲を減少させるために閉鎖可能に構成されている。
【0057】
1つの実施形態では、少なくとも2つの容量範囲、例えば少なくとも3つの容量範囲が提供される。1つの好ましい実施形態では、ちょうど2つの容量範囲が提供される。
【0058】
前記容量範囲は、重なっていても、重なっていなくてもよい。
【0059】
以下では、第1容量範囲と第2容量範囲など、ちょうど2つの容量範囲を有する実施形態について、記載する。
【0060】
通常、両方の容量範囲の最大値は、10000μl以下である。
【0061】
1つの実施形態において、2つの容量範囲はそれぞれ、最大で1000μlと5000μl、または例えば100μlと1000μl、または例えば30μlと300μl、または例えば20μlと200μl、または例えば10μlと200μl、または例えば10μlと100μlを、有する。
【0062】
1つの実施形態において、前記容量範囲は、同一または実質的に同一の最小容量を有してもよい。例えば、提供される前記容量範囲は、1~100μmおよび1~1000μmであり得る。
【0063】
1つの実施形態において、前記容量範囲は、同一または実質的に同一の最大容量を有してもよい。例えば、提供される前記容量範囲は、10~1000μmおよび1~1000μmであり得る。
【0064】
図1図4は、本発明の実施形態による液体吸引分注ヘッドまたはピペットを示す。2つの代替液体注入容量範囲が提供される。図1図4には同様の部品が含まれており、同じ参照符号が付されている。
【0065】
前記ピペットは、空洞内で移動可能なプランジャ11を備える。前記プランジャが上方に移動すると、前記ピペットの開口下端部12に取り付けられたチップに、液体が吸引される。前記チップは図示されていない。前記プランジャが下方に移動すると、液体が前記チップから排出される。前記ピペットは、空気置換の原理で機能する。したがって、前記プランジャと液体とが直接接触することはない。
【0066】
図1および図2では、前記プランジャ11は、その最下位置にある。図3および図4では、前記プランジャ11は、上昇した位置にある。
【0067】
図1および図3では、より小さい容量範囲が使用されている。図2および図4では、より大きな容量範囲が使用されている。
【0068】
2つの代替的な容量範囲は、前記流体接続部によって接続され得る2つのチャンバを含む2部空洞を有することによって、ピペット内にもたらされる。通常、前記チャンバは、前記流体接続部を閉じることによって、相互から切り離すことができる。
【0069】
より小さい容量範囲を担うチャンバである第1チャンバ13は、空洞の下部に形成される。前記下部は、円筒形状を有する。前記第1チャンバは、前記空洞の下部の内壁と、前記プランジャとによって画定される。
【0070】
より大きな容量範囲を提供するために前記第1チャンバと共に使用される、第2チャンバ14は、前記空洞の上部に形成される。前記上部も円筒形状を有するが、前記空洞の下部よりも、直径が大きい。前記空洞の下部および上部は、下部シリンダおよび上部シリンダと呼ばれ得る。ここで、用語「上部」および「下部」は、吸引操作時や分注操作時などのピペットの通常の使用時の、位置を指す。
【0071】
前記プランジャ11は、前記空洞の内壁、特に前記下部シリンダおよび前記上部シリンダの両方の内壁に対して、シールされている。
【0072】
図には、前記プランジャ11と前記下部シリンダ13の内面との間のシール15が、示されている。
【0073】
さらに、前記プランジャは、その外周にフランジ16を有している。前記フランジ16と上部シリンダ14の内壁との間には、シール17が設けられている。前記第2チャンバは、前記空洞上部の内壁と前記フランジとによって画定されている。
【0074】
この実施形態では、前記プランジャ11を中空にすることにより、2つのチャンバ間のチャネル18が得られる。前記プランジャの中空部は、前記プランジャの側壁に設けられた開口部19によって、前記上部シリンダの内部と、流体接続(空気接続)で接続される。
【0075】
この実施形態では、前記プランジャは、前記下部シリンダおよび前記上部シリンダの内部に位置する全長にわたって、中空である。
【0076】
前記閉鎖機構は、プランジャ中空内部の上部に設けられて中空プランジャ内で上下に移動可能であるロッド20、を備える。前記ロッドの下端部21は、プランジャの内壁に対してシールされている。前記ロッドは、より大きな容量範囲が所望される場合およびより小さな容量範囲が所望される場合にそれぞれ、前記開口部19および同時に前記チャネル18を開閉するように、構成されている。前記ロッドを前記プランジャ内部で下方に動かし、前記開口部を通過させ、前記開口部より下方に移動させると、チャンバ間の接続が閉じられる。前記ロッドをプランジャ内部で上方に動かし、開口部を通過させ、開口部より上方に移動させると、中空のプランジャと開口部とを介したチャンバ間の流体接続が、元に戻るかまたは開かれる。
【0077】
したがって、この実施形態では、小さい方のチャンバはプランジャ原理によって機能し、大きい方のチャンバはシリンダ原理によって機能する。
【0078】
「プランジャ原理」とは、置換される空気の容量がチャンバ内のプランジャの容量によって画定される構成を指す。
【0079】
「シリンダ原理」とは、置換される空気の容量がシリンダ自体の容量によって画定される構成を指す。
【0080】
したがって、これら2つの構成では、分注精度は、プランジャの寸法の精度によって、またシリンダの寸法の精度によって、それぞれ決定される。
【0081】
代替的には、前記閉鎖機構は、中空プランジャ11内にてその垂直軸周りで移動可能に設けられたロッド20、を有し得る。言い換えれば、前記ロッド20は、前記中空プランジャ11内にてその垂直軸周りで回転し得る。前記ロッド20は、ロッドの下端部21からロッドの上端部22に向かって延在する第1の切り取り部または面取り部(cut or chamfer)と、ロッドの上端部22からロッドの下端部21に向かって延在する第2の切り取り部または面取り部と、による円形断面を有する。前記第1の切り取り部または面取り部は、前記第2の切り取り部または面取り部とはロッド断面の反対側に、あり得る。前記ロッド20が前記プランジャ11の内側にある場合、前記第1の切り取り部または面取り部、および前記第2の切り取り部または面取り部は、前記ロッド20と前記プランジャ11との間に、それぞれ第1プランジャチャンバ23および第2プランジャチャンバ24を、形成する。前記第2プランジャチャンバ24の容量は、前記第1プランジャチャンバ23の容量よりも大きくてもよく、あるいはその逆でもよい。前記ロッド20がプランジャ11の内部でその垂直軸周りに動かされると、前記第1プランジャチャンバ23または前記第2プランジャチャンバ24は、開口部19に連通した状態で、回転され得る。前記ロッド20は、このようにして前記開口部19を開閉するように構成されている。
【0082】
図5および図6は、プランジャ11と、前記プランジャ11内でその垂直軸周りで移動可能なロッド20と、を示す。
【0083】
図5は、前記第1プランジャチャンバ23が前記開口部19と流体接続しており、チャネルが前記ロッド21の下端部の方に開口しているときの位置にあるロッド20を、示す。より大きい容量範囲が利用されている状態である。
【0084】
図6は、前記第2プランジャチャンバ24が前記開口部19と流体接続しており、チャネルが前記ロッド22の上端部の方に開口しているときの位置にある前記ロッドを、示す。より小さい容量範囲が利用されている状態である。
【0085】
開示された本発明の実施形態は、本明細書に開示された特定の構造、プロセス工程、または材料に限定されるものではなく、関連技術の当業者によって認識されるように、それらの均等物にまで拡張されるものであることが理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用されており、限定を意図するものではないことも理解される。
【0086】
本明細書を通して「1つの(one)実施形態」または「1つの(an)実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での「1つの(one)実施形態において」または「1つの(an)実施形態において」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。
【0087】
本明細書での使用において、複数の品目、構造要素、成分要素、および/または材料は、便宜的に、共通のリストで提示され得る。ただし、これらのリストは、あたかも、リストの各メンバーが別体かつ固有のメンバーとして個別に識別されているかのように解釈されなければならない。したがって、そのようなリストのいかなる個々のメンバーも、別段の指示がない限り、共通のグループにおけるそれらの提示に基づいて、同じリストの任意のその他のメンバーの事実上の均等物として解釈されてはならない。更に、本発明の種々の実施形態および例は、ここで、その種々の構成要素に対する代替物と共に参照され得るものである。そのような実施形態、例および代替物は、互いの事実上の均等物として解釈されるべきではなく、本発明の別個で自律的な表現として解釈されなければならない。
【0088】
更に、説明した特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状などの例など、多くの特定の詳細が提供されている。しかしながら、当業者は、本発明が1つ以上の特定の詳細なしで、または他の方法、構成要材料料などを用いて実施可能であることを認識するであろう。他の例では、本発明の態様を不明瞭化することを回避するために、周知の構造、材料、または動作は、詳細には図示または記載されていない。
【0089】
上述の例は、一つまたは複数の具体的な用途における本発明の原理を説明するのに役立つものであるが、当業者には、発明の能力を発揮することなく、かつ本発明の原理および概念から逸脱することなく、実装の形態、使用法および詳細における数多くの変更を行うことができることが明らかになるだろう。したがって、本発明が、以下に述べる請求項によって制限される場合を除いて、制限されることは意図していない。
【0090】
動詞「備える」および「含む」は、本文書においては、記載されていない特徴構成の存在を除外しない、または、その存在を要件としないオープンな限定として使用されている。従属請求項に記載されている特徴は、特に銘記されない限り、互いに自由に組み合わせ可能である。更に、「1つ(a)」または「1つ(an)」、すなわち、単数形は、この文献全体を通じて、複数を除外するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、少なくとも機械式または電子式の手持ちピペットおよび自動液体分注ロボットにおいて工業的に適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
11 プランジャ
12 ピペットの開口下端部
13 第1チャンバ
14 第2チャンバ
15 シール
16 フランジ
17 シール
18 チャネル
19 開口部
20 ロッド
21 ロッド下端部
22 ロッド上端部
23 第1プランジャチャンバ
24 第2プランジャチャンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】