(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058642
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】靴を製造するための方法、その方法を実施するためのシステム、および靴
(51)【国際特許分類】
B29D 35/10 20100101AFI20240418BHJP
A43B 13/04 20060101ALI20240418BHJP
B29C 39/42 20060101ALI20240418BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20240418BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20240418BHJP
【FI】
B29D35/10
A43B13/04 A
B29C39/42
B29K101:12
B29K105:04
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023177154
(22)【出願日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】10 2022 210 886.8
(32)【優先日】2022-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510204998
【氏名又は名称】アディダス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ダイクマンズ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ジェイ.シーフライド
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン ゴーテ
(72)【発明者】
【氏名】マキシミリアン ドレクスラー
(72)【発明者】
【氏名】アミール ファティ
(72)【発明者】
【氏名】チュ レ
(72)【発明者】
【氏名】クリス ホルメス
【テーマコード(参考)】
4F050
4F204
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA43
4F050CA08
4F050HA56
4F050HA60
4F050HA73
4F050HA85
4F050JA01
4F050KA08
4F050KA14
4F050LA01
4F050NA57
4F204AA04
4F204AA16
4F204AA24A
4F204AA29
4F204AA31
4F204AA45
4F204AC01
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4F204AD08
4F204AG20
4F204AH67
4F204AM29
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB11
4F204EF01
4F204EK13
(57)【要約】
【課題】靴、特にスポーツシューズ、を製造するための方法を提供すること。
【解決手段】方法は、型の中に靴底要素のための複数の個々の粒子を提供するステップと、型の中にアッパーを提供するステップと、複数の個々の粒子を互いとおよびアッパーと接合するために、複数の個々の粒子とアッパーとを電磁場を利用して融着させるステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴、特にスポーツシューズ、を製造するための方法であって、
a.型の中に靴底要素のための複数の個々の粒子を提供するステップと、
b.型の中にアッパーを提供するステップと、
c.複数の個々の粒子を互いとおよびアッパーと接合するために、複数の個々の粒子とアッパーとを電磁場を利用して融着させるステップと、を含む方法。
【請求項2】
d.型の中に靴底要素のための支持要素を提供するステップ、
e.型の中に靴底要素のための外底要素を提供するステップ、
の1つまたは複数をさらに含み、
f.ステップcが、複数の個々の粒子を、互いと、支持要素と、外底要素と、およびアッパーと接合するために、支持要素と外底要素とを電磁場を利用して融着させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップcが単一のステップで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
電磁場が、30kHz~300MHzの無線周波数範囲、好ましくは1MHz~200MHzの範囲、より好ましくは1MHz~50MHzの範囲、最も好ましくは25~30MHzの範囲、または300MHz~300GHzのマイクロ波範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップcが接着剤なしで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
型の中の電磁場の電磁場強度分布を局所的に調節するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
電磁場を利用して供給されるエネルギーを時間と共に変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
型の第1の部分領域内の複数の個々の粒子および/またはアッパーに、型の第2の部分領域内と比べてより多くの電磁場によるエネルギーが供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップcが、複数の個々の粒子の表面および/またはアッパーの表面を融着させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップcの前に、靴底要素のための複数の個々の粒子とアッパーとの間に接続層を配置するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップcが、複数の個々の粒子から靴底要素を成形するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
複数の個々の粒子および/またはアッパーが、ステップcの前に型の中で予備加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
型が、ポリマー材料、好ましくは熱可塑性材料、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリカーボネート(PC)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデンまたはポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、またはポリエチレン(PE)の1つまたは複数、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
複数の個々の粒子が、フォーム状材料、好ましくは、発泡熱可塑性ポリウレタン(eTPU)、発泡ポリアミド(ePA)、発泡ポリエーテルブロックアミド(ePEBA)、ポリラクチド(PLA)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、発泡ポリエチレンテレフタレート(ePET)、発泡ポリブチレンテレフタレート(ePBT)、発泡熱可塑性ポリエステルエーテルエラストマー(eTPEE)、発泡ポリスチレン(ePS)の1つまたは複数に基づくもの、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
アッパーが、布地アッパーであり、編み構造、織り構造、不織構造、ランダムに堆積した繊維、多方向層状材料、メッシュ構造、の1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1つに記載の方法を実施する手段を備えているシステム。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1つに記載の方法で製造された、特にスポーツシューズである、靴。
【請求項18】
靴が接着剤を含まない、請求項17に記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴、特にスポーツシューズを製造するための方法、この方法を実施するためのシステム、および靴に関する。
【背景技術】
【0002】
靴を製造するための従来の方法は、一般に、組み立てに基づく手法(すなわち、部品のストックフィット)を採り、事前に製造された靴底やアッパーなどの様々な個々の部品を異なる加工ステーションで加工することを要し、それらはその後さらに別の場所で連結される。このような製造方法は、通例、非常に複雑で多くの労働力を要すると共に、ストックフィットされた部品を共に接着するために危険な物質の化学的使用を必要とする。
【0003】
これらの不都合点を克服するために、出願人は、独国特許出願公開第102016208998(A1)号明細書、独国特許出願公開第102016209044(A1)号明細書、および独国特許出願公開第102016209045(A1)号明細書において、複数の完成した靴を製造するための靴底型、方法およびシステムを開示している。しかし、これらの方法にはなお改良の余地がある。
【0004】
粒子フォーム材料、すなわち、発泡させたプラスチック材料製の個々の粒子から作られた材料(発泡フォームビーズおよびビーズフォームとも呼ばれる)、の使用は、スポーツシューズ用の靴底を製造するためのクッション要素の製造にも取り入れられている。詳細には、型の中で粒子を加圧蒸気にさらすことによって粒子表面で融着される(当分野でしばしば「スチームチェスト成形」と呼ばれる)発泡熱可塑性ポリウレタン(eTPU)の粒子の使用が、靴底を製造するために検討されてきた。
【0005】
しかし、靴底をスチームチェスト成形するための従来の型は、靴生産工程の特有の要件に最適に適合されてはいない。例えば、従来の型を用いる、粒子から作られる靴底のスチームチェスト成形工程は、従来の型は一般に質量が大きいため、型を加熱するのに多量のエネルギーを必要とする。さらに、そのような型の冷却工程は、低速であり、したがって長いサイクル時間につながる。最後に、粒子から靴底をスチームチェスト成形するには、粒子の均質な相互接続を達成するために加圧蒸気を均一に粒子に供給する必要がある。従来の型は、その構造に起因して、そのような均一な媒体の供給に最適に適合してはいない。
【0006】
加圧蒸気以外のエネルギー担体も検討されている。詳細には、靴底要素を製造するための方法が出願人により独国特許出願公開第102016223980(A1)号明細書に記載されており、そこでは、発泡材料の粒子を含む第1の材料が型に充填され、型の充填中に、少なくとも1つの電磁場の形態のエネルギーを供給することにより、粒子が予備加熱される。
【0007】
これら開示される方法の共通の不都合点は、まだ、完成した靴の生産全体を十分に考慮に入れていないことであり、完成した靴の製造は、特に特定の材料特性を必要とするスポーツシューズのような現代の高性能フットウェアの製造には、依然として非常に複雑で多くの労働力を要する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来技術の前記不都合点を克服し、靴を製造するための改良された方法を提供することであり、この方法では製造労力が最適化され、方法はさらに、可能な限りエネルギー効率的であり、一方で、環境的に有害なまたは危険な物質を用いずに済む。
【発明の概要】
【0009】
この目的は、独立請求項の教示内容によって達成される。有利な実施形態が従属請求項に含まれている。
【0010】
本発明の一態様によると、靴、特にスポーツシューズ、を製造するための方法は、型の中に靴底要素のための複数の個々の粒子を提供するステップと、型の中にアッパーを提供するステップと、複数の個々の粒子を互いとおよびアッパーと接合するために、複数の個々の粒子とアッパーとを電磁場を利用して融着させるステップと、を含む。
【0011】
複数の個々の粒子とアッパーを電磁場からの電磁気エネルギーで融着させることにより、本発明は、靴の全体製造のための改良された方法を提供する。個々のフォーム状粒子は、それらが靴底要素を形成するように共に融着させて互いと接合させてよく、アッパーは、耐久性があり恒久的な形で、融着させて、この製造された靴底要素と接合(または連結)してよい。言い換えると、靴の2つの主要部品、すなわち靴底要素とアッパーが、同じ型の中で共に連結されてよい。例えば、靴底要素の頂部表面に現れている粒子の軟化された(または部分的に溶解させた)表面領域を接合/連結剤として使用して、アッパーを靴底要素の頂部に接続してよい。このようにして、エネルギーの量、工程ステップの数、追加部品または中間部品の数、処理時間、ならびに組み立てステップ(およびそれに伴う労働工数)の1つまたは複数が低減され得る。本願の文脈では、融着と接合は、異なる処理時間および/または温度で行われてよく、例えば複数の個々の粒子は、アッパーへの複数の個々の粒子の接合よりも低い温度で融着されてよく、または、電磁場の局所エネルギー量が異なるおよび/もしくは型温度が異なるので同時に行われてもよいことが留意されるべきである。さらに、接着層のような接続層が使用される場合、融着と接合の異なる処理時間も考えられ得る。
【0012】
さらに、靴底要素および靴全体の製造のために電磁場からの電磁気エネルギーを使用することは、成形時間を短縮し、例えば型による過度なエネルギー吸収を回避することにより、エネルギーを節減し、また、例えば、エネルギー供給が、エネルギー流の注入のように何らかの種の材料移送に結びつくことがないため、成形された靴底要素の冷却および安定化を促進する助けとなり得る。加えて、電磁場は、靴底要素のための複数の個々の粒子およびアッパーが充填された型に電磁場が浸透し、靴全体にわたって、そして靴のあらゆる深さにおいて、改良された融着/成形および接合が達成できるように選択されてよい。そのようにして、アッパーのコンパクトな材料を靴底要素のフォーム状材料と接合することによって靴が1つの工程ステップで製造できるため、靴の製造全体が大幅に簡素化され得る。
【0013】
この出願の個々の粒子は、「発泡材料」、「発泡粒子」、「発泡ペレット」、「発泡ビーズ」、「フォーム粒子」、「フォーム状粒子」、「フォーム状ペレット」または「フォーム状ビーズ」と呼ばれることもあり、したがって、製造された靴底要素は、「粒子フォーム」、「ビーズフォーム」、「ペレットフォーム」部品または要素と呼ばれることがある。粒子フォームの分野でそのようなフォーム状粒子が呼ばれることがある他の用語が使用されてもよい。
【0014】
本願のアッパーの材料およびアッパー自体は、当技術分野で知られる様々な技術を使用して作製されてよい。1つの実施形態では、アッパーの材料は、布地材料アッパーであってよい。一般に、本願の布地は、材料の糸を作製することによって製造される柔軟な材料であってよい。糸は、単繊維糸であっても多繊維糸であってもよく、多繊維糸は、未加工の繊維(天然起源または合成起源のいずれか)を長い撚られた長さに紡ぐことによって生産される繊維または糸の絡み合った束であり、布地は、織り、編み、クロッシェ編み、結び、タッチング(tatting)、フェルト化、接合により、またはそのような糸を共に撚り合わせることにより、アッパー部品として形成されてよい。さらに、用語「布」が、本願の布地の同義語として使用されることがある。また、アッパーが、皮革、特に熱可塑性ポリウレタンを用いた、合成皮革材料、または上述された布地の1つと非布地材料の複合材料からなることも考えられる。
【0015】
本願の文脈では、用語「接合する」は、個々の粒子から靴底要素を製造し、耐久性があり強固で恒久的な形で布地アッパーと接合するために、用語「取り付ける」、「強固に連結する」、「固定する」、「相互に接続する」または「接続する」と同義で使用される場合があることが留意されるべきである。
【0016】
方法は、型の中に靴底要素のための支持要素を提供するステップ、および/または、型の中に靴底要素のための外底要素を提供するステップをさらに含んでよく、上述した融着させるステップは、複数の個々の粒子を、互いと、支持要素と、外底要素と、およびアッパーと接合するために、支持要素と外底要素とを電磁場を利用して融着させるステップをさらに含んでよい。また、複数の個々の粒子、支持要素、外底要素、またはアッパーのうち少なくとも2つだけが、電磁場を利用して融着されて互いと接合されることも考えられる。支持要素は、補強要素、編み布、織り布、不織布のような布地シート、成形部品、ヒールカウンタ、靴底板、内側支持要素、横側支持要素、つま先支持要素、接合層、複合要素、例えば、ならびに皮革または合成皮革からなる要素、および最新技術における他の一般に使用される要素、のうちの少なくとも1つであってよい。本願の文脈では、用語「要素」は用語「部品」と同義で使用される場合があることが留意されるべきである。
【0017】
靴底要素のこれら2つの主要要素、すなわち支持要素および外底要素、の一方または両方を設けることにより、これら2つの要素の一方または両方に関する事前または事後生産ステップが必要でなくなる可能性があるため、靴底要素の処理時間を短縮することにより、靴全体の製造全体がさらに改良され得る。また、2つの要素のための複数の自動化された生産ステーションの必要性もなく、これは、施設内の製造システムの必要とされる占有面積を低減する。さらに、これらの記載される実施形態は、例えば支持要素が回内や回外を防ぐための選択的な支持などの特別な靴底特性を提供し得るため、述べられた向上した材料特性を持つ改良された靴、特にスポーツシューズ、を提供するのを助け得る。
【0018】
上述された融着させるステップの1つまたは複数は、単一のステップで行われてよい。これは、型の中での単一の工程ステップによる靴の製造全体の簡素化と最適化のために、請求される本方法の上述された利点を強化する。本願で使用される表現「上述された融着させるステップの1つまたは複数」は、複数の個々の粒子を互いとおよびアッパーと接合するために、複数の個々の粒子とアッパーとを電磁場を利用して融着させるステップ、複数の個々の粒子を、互いと、支持要素と、外底要素と、およびアッパーと接合するために、支持要素と外底要素とを電磁場を利用して融着させるステップ、ならびに、複数の個々の粒子、支持要素、外底要素、またはアッパーのうち少なくとも2つだけが、電磁場を利用して融着されて互いと接合されるステップ、を指すことが留意されるべきである。
【0019】
電磁場は、30kHz~300MHzの無線周波数範囲、好ましくは1MHz~200MHzの範囲、より好ましくは1MHz~50MHzの範囲、最も好ましくは25~30MHzの範囲、または300MHz~300GHzのマイクロ波範囲であってよい。好ましい実施形態では、電磁場は、27.12MHz前後の無線周波数範囲の周波数を有してよい。1つまたは複数の無線周波数または無線周波数範囲が使用されてよいことも考えられる。
【0020】
また、無線周波発生器が市販されており、それらが靴を製造するためのシステムで容易に実装され得る。さらに、無線周波放射が、システムのそれぞれの部分に集束されてもよく、その強度および周波数が要件に合わせて適合されてよい。
【0021】
マイクロ波発生器が市販されており、それらが、比較的少ない労力で本発明の方法を使用するために靴を製造するためのシステムに実装され得る。加えて、エネルギー効率を向上できるように、マイクロ波放射を基本的に、複数の個々の粒子および布地アッパーが提供される型のキャビティに集束させることが可能であり得る。さらに、マイクロ波放射の強度および周波数は、靴底要素および布地アッパーなどの靴部品のそれぞれの要件に合わせて容易に変化させ、適合させ得る。
【0022】
電磁場、特に電磁放射線が、上述の周波数範囲とは異なる周波数範囲で供給されることがさらに可能である。
【0023】
上述された融着させるステップの1つまたは複数は、接着剤なしで行われてよい。これは、靴底および靴全体の製造中に、糊のような毒性のまたは危険な物質の量を減らし、また製造施設およびその環境への害を生じさせるのを回避する助けとなり得る。
【0024】
上述された融着させるステップの1つまたは複数は、赤外線放射を使用せずに行われてよい。これは、個々の粒子、支持要素または外底要素、ならびにアッパーなどの靴底要素のそれぞれの要素の望ましくない破壊を回避する助けとなり得る。無論、赤外線放射からの熱エネルギーを供給することによって靴をさらに硬化させることが考えられ、請求される本発明から除外されるべきではない。上述された融着させるステップはまた、糊付け、溶着、高周波溶着、超音波溶着、レーザ溶着、圧着、縫製、ねじ留め、リベット留め、融着、クリッピング、封止、熱圧力処理の施与、蒸気処理への曝露のような他の連結技術の少なくとも1つを伴わずに行われてよい。
【0025】
方法は、型の中の電磁場の電磁場強度分布を局所的に調節するステップをさらに含んでよい。これは、靴底要素(またはミッドソール)や靴のアッパーなど、変化する厚みを有する型の中の要素、または型自体の変化する厚みへの、一定したエネルギー印加を可能にし得る。例えば、靴の要素の中の高密度の材料は、融着のためにより速く加熱することがあり、したがって、低密度エリアのエネルギー吸収とバランスを取るために、それらの要素によってより多くのエネルギーが吸収され得るように、電磁場の電磁場強度分布を局所的に調節してよい。このようにして、例えば変化する異なる周波数をもつ、変化する異なる電磁場を印加するよりも単純な形で、靴の個々の要素の性質に影響を与えてよい。
【0026】
電磁場を利用して供給されるエネルギーは、時間と共に変化させてよい。例えば、少なくとも1つの電磁場を利用して供給されるエネルギーは、時間と共に徐々に増大させてよい。このようにして、変化する電磁場の電磁誘導からの経時変化する磁束が、粒子およびアッパーの導電性材料の中に渦電流を作り出すことができ、それが材料を加熱し、したがって、粒子の表面とアッパーの融着に寄与する。
【0027】
型の第1の部分領域内の複数の個々の粒子および/またはアッパーに、型の第2の部分領域内と比べてより多くの電磁場によるエネルギーが供給されてよい。これは、型の中の粒子および/またはアッパーの予備加熱と、粒子とアッパーの融着の両方に当てはまり得る。このようにして、複数の異なる部分領域が靴の中に作り出されてよく、それらは、各自の厚み、硬さ、呼吸性、柔軟性、弾性、感触、外観において、または製造を容易にするための他の特性に関して異なる。
【0028】
上述された融着させるステップの1つまたは複数は、複数の個々の粒子の表面および/またはアッパーの表面を融着させるステップをさらに含んでよい。これは、エネルギーを供給することが、例えば結合剤や蒸気の導入のように、靴底要素および/またはアッパーの何らかの種の材料移送に結びつくことがないため、様々な厚みおよび複雑な形状をもつ靴底要素および/または靴全体の製造を可能にし得る。上述したように、電磁場は、靴底要素のための個々の粒子およびアッパーが充填された型に電磁場が基本的に均質に浸透し、基本的に一定量のエネルギーをすべての粒子およびアッパーに供給するように選択されてよく、それにより、粒子の表面および/またはアッパーの均質で一定した融着が、靴全体にわたって、そして個々の靴部品のあらゆる深さにおいて、達成され得るようにする。代替として、電磁場は、上記で説明されたように、型の中に配置された粒子およびアッパーへのエネルギーの供給が局所的に変化するように選択されてもよい。このようにして、粒子の表面および/またはアッパーの融着の性質および度合いは、局所的に影響を与えられてよい。詳細には、靴底要素の内部の粒子表面の融着は、靴底要素の表面における粒子表面の融着とは独立して制御されてよい。上記を要約すると、これらの実施形態は、靴底要素と布地アッパーの間のより良好な接合を提供するのを助け得る。
【0029】
方法は、上述された融着させるステップの1つまたは複数の前に、靴底要素のための複数の個々の粒子と布地アッパーとの間に接続層を配置するステップをさらに含んでよい。そのような実施形態は、製造された靴底要素の凹凸のある表面を回避するために、粒子に対してある種の保護層を提供し得、凹凸のある表面は、布地アッパーの中に入り込んで、靴の着用者にとって不快な着用感を招くことがある。そのような接続層による布地アッパーの保護も考えられる。
【0030】
上述された融着させるステップの1つまたは複数は、複数の個々の粒子から靴底要素を成形するステップをさらに含んでよい。複数の個々の粒子から靴底要素を成形することは、靴を製造するための特に効率的な方法である。加えて、ある種の粒子フォーム部品として粒子を靴底要素として成形することは、毒性のまたは危険な物質を要さない。
【0031】
複数の個々の粒子および/またはアッパーは、上述された融着させるステップの1つまたは複数の前に型の中で予備加熱されてよい。予備加熱は、電磁場によって実現されてよい。予備加熱に使用される電磁場のタイプ/性質は、粒子とアッパーの融着に使用される電磁場のタイプ/性質と異なってよい。しかし、予備加熱に使用される電磁場のタイプ/性質が、粒子とアッパーの融着に使用される電磁場のタイプ/性質と同じであることも可能である。粒子および/またはアッパーを予備加熱することにより、型の中の粒子および/またはアッパーに供給されなければならないエネルギーの量を低減させることができ、それがさらに、処理時間を短縮し、例えば型による過度のエネルギー吸収を回避することによってエネルギーを節減し、また、上記で説明されたように、製造された靴の冷却および安定化を促進する助けとなり得る。粒子および/またはアッパーの予備加熱はまた、例えば、靴底要素の製造に使用される粒子のうち異なるサブセットがそれぞれ異なる度合いに予備加熱され得るため、概して製造方法のより細かく調整された制御を可能にすることにも寄与し得る。
【0032】
上述された方法で使用される型は、ポリマー材料、好ましくは熱可塑性材料、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリカーボネート(PC)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデンまたはポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、またはポリエチレン(PE)の1つまたは複数、を含んでよい。さらに、型のポリマー材料は、フォーム状材料からなってもよい。これらの材料は、好都合であることが判明しており、したがって本発明の文脈で使用されてよい。例えば、POMは、無線周波放射に対しておよそ0.008の誘電損率Dを有する。よって、この材料は、電磁場の一部分のみを吸収するので無線周波放射に対して基本的に透明であり、また比較的低い損率のために、ある程度の厚みに形成され得る。ポリマー材料は、製造される靴またはその要素と比較して、型の誘電率を増大させるように適合されてよい。ポリマー材料は、型の誘電損率を増大させるように適合されてよい。
【0033】
上述された方法で使用される複数の個々の粒子は、フォーム状材料、好ましくは、発泡熱可塑性ポリウレタン(eTPU)、発泡ポリアミド(ePA)、発泡ポリエーテルブロックアミド(ePEBA)、ポリラクチド(PLA)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、発泡ポリエチレンテレフタレート(ePET)、発泡ポリブチレンテレフタレート(ePBT)、発泡熱可塑性ポリエステルエーテルエラストマー(eTPEE)、発泡ポリスチレン(ePS)の1つまたは複数に基づくもの、を含んでよい。例えば、靴底の製造で使用するために、eTPU、ePEBAおよび/またはePAの粒子は、好都合であることが判明しており、したがって本発明の文脈で使用されてよい。粒子と型の表面の両方にフォーム状材料を使用することは、同じような損率につながり、それにより粒子と型両方の実質的に均一な加熱が得られ、型は、靴底要素のより良好な融着が得られるように用意されてよい。
【0034】
上述された方法で使用されるアッパーは、布地アッパーであってよく、編み構造、織り構造、不織構造、ランダムに堆積した繊維、多方向層状材料、メッシュ構造、の1つまたは複数を含んでよい。これら布地構造のいくつかは、良好な通気性または呼吸性を必要とするアッパーの部分で有益に用いられ得る。さらに、編み構造は、絡み合った網目による布地構造のために、はるかに高い伸縮性を提供し得る。さらに、不織構造は、アッパーの内側表面において好適な感触を提供し得、布地アッパーの望まれる部分における適切な安定性が提供され得る。
【0035】
補強のためおよび伸びの低減のために、熱可塑性材料が添加された可融糸が布地アッパーに使用されてよく、それは融着後に編み構造を固定する。非熱可塑性糸で包囲された熱可塑性糸、熱可塑性糸で包囲された非熱可塑性糸、または熱可塑性材料の純粋な融着糸を使用することが考えられる。そのような融着糸が編まれて、布地アッパーの編み構造にされてよい。
【0036】
上述された方法における接合の強度は、最も弱い融着後材料の強度よりも高くてよい。言い換えると、最も弱い融着後材料は、複数の個々の粒子とアッパーとの間の接合の強度に屈する。本願の文脈において、用語「強度」は、材料が変形負荷に抵抗することを可能にする機械的性質であり、これは、材料の強度とは、外部負荷の作用の下で破壊に耐える材料の能力であることを意味する。材料の強度が高い程、それは大きい負荷に耐えることができる。さらに、表現「最も弱い融着後の」は、異なる材料同士の一定程度の融着性に対応する。
【0037】
本発明はまた、アッパーのコンパクトな材料を靴底要素の粒子材料と接合することによって1ステップで靴が製造されるように上述された方法を実施する手段を備えているシステムに関する。
【0038】
本発明はまた、上述された方法の1つによって製造された靴、特にスポーツシューズに関する。さらに、この靴は、上記で説明された理由により、接着剤を含まなくてよい。
【0039】
本発明は以下の実施形態を含む。
1.靴、特にスポーツシューズ、を製造するための方法であって、
a.型の中に靴底要素のための複数の個々の粒子を提供するステップと、
b.型の中にアッパーを提供するステップと、
c.複数の個々の粒子を互いとおよびアッパーと接合するために、複数の個々の粒子とアッパーとを電磁場を利用して融着させるステップと、を含む方法。
2.d.型の中に靴底要素のための支持要素を提供するステップ、
e.型の中に靴底要素のための外底要素を提供するステップ、
の1つまたは複数をさらに含み、
f.ステップcが、複数の個々の粒子を、互いと、支持要素と、外底要素と、およびアッパーと接合するために、支持要素と外底要素とを電磁場を利用して融着させるステップをさらに含む、上記実施形態の方法。
3.ステップcが単一のステップで行われる、上記実施形態の1つの方法。
4.電磁場が、30kHz~300MHzの無線周波数範囲、好ましくは1MHz~200MHzの範囲、より好ましくは1MHz~50MHzの範囲、最も好ましくは25~30MHzの範囲、または300MHz~300GHzのマイクロ波範囲である、上記実施形態の1つの方法。
5.ステップcが接着剤なしで行われる、上記実施形態の1つの方法。
6.型の中の電磁場の電磁場強度分布を局所的に調節するステップをさらに含む、上記実施形態の1つの方法。
7.電磁場を利用して供給されるエネルギーを時間と共に変化させる、上記実施形態の1つの方法。
8.型の第1の部分領域内の複数の個々の粒子および/またはアッパーに、型の第2の部分領域内と比べてより多くの電磁場によるエネルギーが供給される、上記実施形態の1つの方法。
9.ステップcが、複数の個々の粒子の表面および/またはアッパーの表面を融着させるステップをさらに含む、上記実施形態の1つの方法。
10.ステップcの前に、靴底要素のための複数の個々の粒子とアッパーとの間に接続層を配置するステップをさらに含む、上記実施形態の1つの方法。
11.ステップcが、複数の個々の粒子から靴底要素を成形するステップをさらに含む、上記実施形態の1つの方法。
12.複数の個々の粒子および/またはアッパーが、ステップcの前に型の中で予備加熱される、上記実施形態の1つの方法。
13.型が、ポリマー材料、好ましくは熱可塑性材料、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリカーボネート(PC)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデンまたはポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、またはポリエチレン(PE)の1つまたは複数、を含む、上記実施形態の1つの方法。
14.複数の個々の粒子が、フォーム状材料、好ましくは、発泡熱可塑性ポリウレタン(eTPU)、発泡ポリアミド(ePA)、発泡ポリエーテルブロックアミド(ePEBA)、ポリラクチド(PLA)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、発泡ポリエチレンテレフタレート(ePET)、発泡ポリブチレンテレフタレート(ePBT)、発泡熱可塑性ポリエステルエーテルエラストマー(eTPEE)、発泡ポリスチレン(ePS)の1つまたは複数に基づくもの、を含む、上記実施形態の1つの方法。
15.アッパーが、布地アッパーであり、編み構造、織り構造、不織構造、ランダムに堆積した繊維、多方向層状材料、メッシュ構造、の1つまたは複数を含む、上記実施形態の1つの方法。
16.上記実施形態の1つの方法を実施する手段を備えているシステム。
17.上記実施形態の1つによる方法で製造された、特にスポーツシューズである、靴。
18.靴が接着剤を含まない、上記実施形態の靴。
【0040】
以下、本発明の可能な実施形態が、次の図を参照しながらさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】型の中で完成した靴を製造するための本発明の方法を示す図である。
【
図2a】電磁場を利用して複数の個々の粒子を融着させてそれらを互いに接合した後の個々の粒子から作られた、本発明による製造された靴底要素を示す図である。
【
図2b】電磁場を利用して複数の個々の粒子を融着させてそれらを互いに接合した後の個々の粒子から作られた、本発明による製造された靴底要素を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の様々な態様の可能な実施形態が、主として靴全般、例えばスポーツシューズ、カジュアルシューズ、紐靴、または作業ブーツなどのブーツ、の製造との関係で、以下の詳細な説明で説明される。しかし、本発明はそれらの実施形態に制限されないことが強調される。むしろ本発明は、フォーム状材料および布地材料を用いる、種々のスポーツ衣料製品、例えばひざプロテクタまたはひじプロテクタ、に使用されてもよく、スポーツ衣料の少なくとも一部は、個々の粒子から成形され、例えば、テニスラケット、ゴルフクラブ、野球バット、バトミントンラケット、クリケットバット、アイスホッケースティック、ホッケースティック、スカッシュラケット、卓球バット、すね当て等である。さらに、用語「スポーツ衣料」は、スポーツや身体運動のために着用される、靴およびスポーツ装具などの付属品を含む、衣類を指すことがある。スポーツ専用の衣類または衣服は、大半のスポーツおよび身体運動のため、実用、快適性、または安全性の理由のために着用され得る。典型的なスポーツ専用衣服には、トラックスーツ、短パン、Tシャツ、およびポロシャツが含まれ得る。特殊な衣服には、水着(水泳用)、ウェットスーツ(ダイビングやサーフィン用)、スキースーツ(スキー用)、およびレオタード(体操用)が含まれ得る。スポーツシューズには、トレーニングシューズ、ランニングシューズ、サッカーシューズ、バスケットシューズ、バレーボールシューズ、テニスシューズ、ラグビーシューズ、ゴルフシューズ、乗馬靴、スノーボードブーツ、およびアイススケート靴が含まれ得る。また、スポーツ専用衣類または衣服には、ビキニ、一部のクロックトップ、および男性用サポーター(jockstrap)やスポーツブラなどの下着も含まれ得る。
【0043】
以下では、本発明の個々の実施形態だけがより詳細に説明され得ることがさらに言及される。しかし、当業者は、それら特定の実施形態を参照して説明される任意選択の特徴および可能な変更は、本発明の範囲から逸脱することなく、さらに変更される、および/または別のやり方で、もしくは別のサブコンビネーションで互いと組み合わされてよいことを理解するであろう。個々の特徴は、望まれる結果を得るためにそれらがなくても済む場合は省略されてもよい。したがって、冗長さを回避するために、先の項における説明が参照され、これは以下の詳細な説明にも当てはまる。
【0044】
図1は、型120の中に、靴底要素110のための複数の個々の粒子105を提供し、布地アッパー130などのアッパーを提供することにより、完成した靴100、特にスポーツシューズ、を製造するための本発明の方法を示す。
【0045】
複数の個々の粒子105を提供することは、例えば自動化された製造ライン内の少なくとも1つの原料ラインを介して、粒子を容器から型120に充填および/または移送することを含んでよい。
【0046】
布地アッパー130の提供は、作業者により手作業で、および/または機械、例えばロボット、により自動的に行われてよい。
【0047】
次いで、複数の個々の粒子105と布地アッパー130とを、電磁場140を利用して融着させて、複数の個々の粒子105を互いとおよび布地アッパー130と接合する。複数の個々の粒子105と布地アッパー130の接合は、2つの二重線矢印によって模式的に示されている。
【0048】
電磁場140は、放射線源145、例えば2枚のコンデンサ極板、から発されてよく、その場合、一方のコンデンサ極板が無線周波発生器に接続され、他方のコンデンサ極板が接地される。しかし、複数の放射線源もしくはエネルギー源が使用されることも可能であり、または1つのエネルギー源が、異なる周波数の放射線を発する等してもよく、それらの場合は、複数の電磁場が(言語学的な意味で)参照される。これらの電磁場は、空間中の所与の点で重なり合って、空間中のこの点に物理的電磁場を形成する。
【0049】
電磁場140は、例えば、マイクロ波範囲の放射線、すなわち300MHz~300GHzの範囲の周波数をもつ放射線、であってよい。電磁場140はまた、無線周波数範囲の放射線、すなわち30kHz~300MHzの範囲の周波数をもつ放射線、であってもよい。
【0050】
エネルギーが、上述した周波数範囲とは異なる周波数範囲にある電磁場140からの放射線の形態で供給されることがさらに可能である。具体例として、エネルギーは、紫外線(UV)放射の形態で供給されてもよい。
【0051】
電磁場140がマイクロ波範囲の放射線である場合は、マイクロ波放射を水に照射すると水の加熱につながるため、水が、粒子105および/または布地アッパー130におけるエネルギー吸収材料として適する可能性がある。また無線周波数範囲の電磁場140についても、水が、エネルギー吸収材料として検討されてよい。また、エネルギー吸収材料が金属、特に金属粉、からなってもよいことが考えられる。例えば、例えば金属粉の形態である金属は、少なくとも1つの電磁場から特に多量のエネルギーを吸収することができ、同時に扱いおよび注入が容易であるため、好都合であり得る。金属はさらに、必要な場合には、例えば金属的な光沢を与えるために、粒子105および/または(布地)アッパー130の外観に影響を与えるという目的にも応え得る。
【0052】
粒子105は、ランダムに配置されても、または配置された粒子105とランダムに配置された粒子105の組み合わせが使用されてもよい。粒子105同士は、その表面で接続されてよい。粒子105に使用される材料およびその利点については上記で説明した。
【0053】
型120は、底部、頂部、および側部などの異なる部分(図示せず)からなってよい。その他の型形状ならびに型120のより多いまたは少ない部分も考えられる。
【0054】
布地アッパー130は、編み、織り、および/または不織、の構造のうち1つまたは複数を備えてよい。布地材料は、ランダムに堆積した繊維、多方向層状材料、および/またはメッシュ構造を備えてよい。
【0055】
また、(布地)アッパー130が、粒子105と(布地)アッパー130との間の間接的な融着のための可融中間層または接続層として働き得る、可融性糸の少なくとも1つの熱溶解層を備えてよいことも考えられる。そのような層は任意選択であってよく、本発明は、粒子105と(布地)アッパー130とを電磁場を利用して融着させて、粒子105を互いとおよび(布地)アッパー130と接合することによって実施されてもよいことが留意されるべきである。
【0056】
上述したように、粒子105と布地アッパー130を実際に融着させる前に粒子105および/または布地アッパー130を予備加熱することが考えられる。そのようにして、粒子105および/または布地アッパー130は、融着のためにその後適用される電磁場140からの電磁放射線に対して好ましい吸収範囲になるように、まず特定の温度に加熱されてよい。この予備加熱は、粒子105および/または布地アッパー130を型120に/の中に供給する前またはその最中に、型120の中で行われてよい。
【0057】
上で説明されたようなエネルギー吸収材料の使用と同様に、粒子105および/または布地アッパー130の予備加熱は、例えば、靴の複数の材料の電磁場140の吸収のバランスを取ることを試みるときに使用されてよい。
【0058】
粒子105および/または布地アッパー130の予備加熱は、上述のステップのために材料を供給する前に行われると好都合であることがあり、さらに、型120が閉じられつつあるときに予備加熱することが好都合である場合もある。そのような予備加熱は、実際の融着ステップに必要とされる時間、したがって粒子105および布地アッパー130を型120の中に保持しておくために必要とされる時間が短縮され得るため、本発明の方法を実施する際にシステムのスループットを向上させる可能性がある。
【0059】
追加的または代替的に、一例では、材料を特定の温度に予備加熱するために、電磁場140を第1のより低い電力または電圧で印加することが可能である(例えば、粒子105および布地アッパー130を提供する間、ならびに/またはそれらが型120の中にあるときに)。その後、電力または電圧を、徐々にまたは急に、増大させてよい。電力または電圧は、より低い値で適用された後に、型120のうちいくつかの異なる部分領域においても上昇させてよい(図示せず)。このようにして、粒子105および/または布地アッパー130の部分的な予備加熱のみを得ることが可能となる。これは、それぞれ異なる性質(例えば、大きさまたは吸収材料)を有する粒子105および布地アッパー130を使用する場合に有用であり得る。
【0060】
一部の実施形態では、型120の底部、頂部、または側部のうち少なくとも1つの部分が予備加熱されてよい。これらのオプションは、粒子105および/または(布地)アッパー130の材料を型120に提供して行われても、提供せずに行われてもよい。
【0061】
電磁場140の電力または電圧は、徐々に増大させてもよい。例えば、放射電力の増大は、靴100を生産するための全サイクル時間が生産のための望ましい範囲内になるように選択されてよい。例えば、融着は40~70秒の範囲であってよい。加えて、融着後の靴100の冷却時間は、10~20分の範囲であってよい。よって、靴を製造するための従来の方法と比較して、本発明の方法は大幅に高速であり得る。一般に、放射電力の増大時間は、かなり自由に選択することができ、粒子120の表面と布地アッパー130の融着工程、よって靴の融着全体、を制御するために調節され得る。例えば、粒子120の材料に応じて、過度に高速な増大は、粒子の細胞構造を損なう可能性がある。一方、過度に低速な増大は、不十分であることがあり、または標準以下の融着結果につながることがある。
【0062】
予備加熱の後、次いで電磁放射線140を印加して、電力の最適な移動を実現してよい。この手法は、温度に依存する誘電損率を有する材料が使用される場合にも有用であることがある。
【0063】
ここで、本方法の利点は、粒子105および布地アッパー130の材料と比べて型120が限られた量のエネルギーしか吸収しないことであり得ることが改めて強調される。例えば、型120の製造のためにエポキシ樹脂を使用することが、好都合であることが判明している。エポキシ樹脂は、複雑な形状のキャビティをもつ型120に合わせて処理されることが可能であり、電磁場に対して低い吸収能を備えていることがある。低い吸収能力をもつ型を製造するための当技術分野で知られる他の方法が使用されてもよい。
【0064】
図2aおよび
図2bは、電磁場を利用して複数の個々の粒子105を融着してそれらを互いに接合させた後の個々の粒子105から作られた、本発明による製造された靴底要素110を示す。
【0065】
図2aには、靴底要素110の底部表面が示されており、ここでは、外底要素115が用意され、それを電磁場を利用して融着させて複数の個々の粒子105と接合した。
【0066】
そのような外底要素115は、靴底要素110の複数の個々の粒子105を保護する可能性がある。
【0067】
図2bには、複数の個々の粒子105と布地アッパー130とを電磁場を利用して融着させることにより、複数の個々の粒子105を互いとおよび布地アッパー130と接合させた後の靴底要素110の頂部表面が、(よりよい理解のために)布地アッパー130の一部分と共に示されている。
【符号の説明】
【0068】
100 靴
105 粒子
110 靴底要素
115 外底要素
120 型
130 アッパー
140 電磁放射線、電磁場
145 放射線源
【外国語明細書】