(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058651
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】パッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ、パッドアセンブリ、ブレーキキャリパ
(51)【国際特許分類】
F16D 65/097 20060101AFI20240418BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20240418BHJP
F16D 65/02 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
F16D65/097 E
F16D65/097 A
F16D65/097 C
F16D65/092 B
F16D65/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023177482
(22)【出願日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】102022000021213
(32)【優先日】2022-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ダレッシオ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ボージス,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】クリッパ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】カルミナーティ,マッティア
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA63
3J058AA73
3J058AA87
3J058BA16
3J058BA23
3J058CA41
3J058CA63
3J058CA64
3J058CA65
3J058CC22
3J058FA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ブレーキパッドを軸方向、周方向及び径方向に付勢して振動を低減し、ブレーキ終了時にパッドをブレーキディスクから離間させて摩擦材とブレーキディスクとの間の残留トルクを除去または低減するブレーキキャリパスプリングのアセンブリに関する。
【解決手段】パッドホールドスプリング(2)が、径方向(R-R)及び周方向(C-C)に主に延在し、少なくとも1つのC形部(4)を有する。連結部(10)は、アンカー部(8)に対して、ディスクに向かって、引っ込んだ静止位置と少なくとも1つの前進位置との間で、軸方向及び逆方向に弾性的に移動可能である。パッドリターンスプリング(3)が、少なくとも1本のワイヤから作られる。連結部(10)は、中央部(5)から前記周方向(C-C)に沿って第2距離に配置される第1伸張部(22)を備え、第2距離(D2)が第1距離(D1)よりも小さい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキキャリパ(100)用のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ(1)であって、
前記ブレーキキャリパ(100)は、ディスクブレーキ(102)を跨いで配置されるように適合されたキャリパ本体(109)を備え、
前記アセンブリ(1)は、軸方向(A-A)と、前記軸方向(A-A)に垂直な径方向(R-R)と、前記軸方向(A-A)及び前記径方向(R-R)の両方に垂直な周方向または接線方向(C-C)とを画定し、
前記アセンブリ(1)は、
前記キャリパ本体(109)に収容されたブレーキパッド(103)の少なくとも1つのガイドイヤ(111)と前記キャリパ本体(109)との間に配置され、前記ブレーキパッド(103)を前記径方向(R-R)及び前記周方向(C-C)に付勢するように構成された少なくとも1つのパッドホールドスプリング(2)と、
前記ブレーキパッド(103)を前記ブレーキディスク(102)から離れるように前記軸方向(A-A)に付勢するように構成されたパッドリターンスプリング(3)を備えており、
前記パッドホールドスプリング(2)と前記パッドリターンスプリング(3)とが別個の部品として作られて作動的に連結されており、
前記パッドホールドスプリング(2)が、前記径方向(R-R)及び前記周方向(C-C)に延在しており、
前記パッドホールドスプリング(2)が、少なくとも前記径方向(R-R)に延びる中央部(5)と、前記中央部(5)の径方向両端部から延在する上部(6)及び下部(7)を有するC形部(4)を備え、
前記上部(6)と前記下部(7)が、少なくとも部分的に前記中央部(5)から離れるように周方向(C-C)に延在しており、
前記C形部(4)が、前記キャリパ本体(109)の凹部(106)に挿入されるように構成されるとともに前記ガイドイヤ(111)を収容するように構成されており、
前記パッドリターンスプリング(3)が、
前記C形部(4)に動作可能に連結された固定部(8)と、
前記ブレーキパッド(103)を連結するように構成された連結部(10)と、
前記アンカー部(8)及び前記連結部(10)に作動的に連結された連結アーム(9)であって、前記連結部(10)が、前記アンカー部(8)に対して、軸方向(A-A)において、前記ディスク(102)に向かって、引っ込んだ静止位置と少なくとも1つの前進位置との間を弾性的に移動可能である、連結アーム(9)と、を備え、
前記パッドリターンスプリング(3)が少なくとも1本のワイヤから作られており、
前記連結アーム(9)が、前記連結部(8)に連結されたアーム端部(16)を有し、
前記アーム端部(16)が、前記中央部(5)または前記中央部(5)の径方向延長部に対して前記周方向(C-C)に沿って第1距離(D1)をおいて配置され、
前記連結部(10)が、前記中央部(5)から前記周方向(C-C)に沿って第2距離に配置される第1伸張部(22)を備え、
前記第2距離(D2)が前記第1距離(D1)よりも小さい、ブレーキキャリパ(100)用のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記第1伸張部(22)は、スプリング自由端(23)を有し、
前記スプリング自由端(23)は、前記中央部(5)に面するように構成され、
前記スプリング自由端(23)は、前記少なくとも1つのワイヤの断面と等しい表面によって構成される、請求項1に記載のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記連結スプリング(10)が第2伸張部(24)を備え、
前記第2伸張部(24)と前記第1伸張部(22)とが、所定の連結角を形成するように、及び/又は、前記中央部(5)に面する凹部を形成するように、連結されている、請求項1又は2に記載のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記第2伸張部(24)と前記第1伸張部(22)とが、同じ連結平面上に配置されているか、または横たわっており、
前記連結平面が前記軸方向(A-A)に対して垂直である、及び/または
前記連結角が前記中央部(5)に向かって鋭角である、請求項3に記載のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記第1伸張部(22)が直線状のワイヤ伸張部であり、
前記第2伸張部(24)が直線状のワイヤ伸張部であり、
前記第2伸張部(24)と前記第1伸張部(22)とが第3の伸張部(25)によって連結されており、
前記第3の伸張部(25)が湾曲しており
及び/または
前記第2伸張部(24)が前記アーム端部(16)に接続されて実質的に直角を形成し、
前記第2伸張部(24)が、前記径方向(R-R)に対して0度から45度の間、好ましくは15度から30度の間の第2伸張角だけ、前記連結平面において傾斜している、請求項3または4に記載のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ(1)。
【請求項6】
前記パッドリターンスプリング(3)が、前記連結アーム(9)を前記アンカー部(8)に連結する少なくとも1つの巻回部(17)を備え、
前記少なくとも1つの巻回部(17)が、巻回軸(A)を中心として螺旋状に巻かれており、前記連結部(10)を少なくとも前記軸方向(A-A)に沿って、前記引っ込められた静止位置に向かって常に弾性的に付勢して、前記巻回部(17)が前記ブレーキパッド(103)及び/または前記パッドホールドスプリング(2)と接触するのを回避するようにしてある、請求項1-5のいずれかに記載のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ(1)。
【請求項7】
前記巻回部(17)が、前記巻回軸(A)の周りに巻回された複数のコイル(31、32)を有し、
前記複数のコイル(31、32)が、ねじりによって弾性変形することにより、前記連結部(10)を前記引っ込められた静止位置に向けて弾性的に付勢し、前記連結アーム(9)及び/又は前記連結部(10)における前記軸方向(A-A)の曲げによる弾性変形を防止し、
及び/または、
前記巻回軸(A)が、前記軸方向(A-A)に実質的に平行に配向されるか、または前記軸方向(A-A)もしくは前記軸方向に平行な方向に対して入射する及び/または垂直である、請求項6に記載のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ(1)。
【請求項8】
前記複数のコイル(31、32)が、少なくとも、1つの第1コイル(31)と1つの第2コイル(32)を有し、及び/又は、
前記複数のコイル(31、32)は、円筒形又は円錐形の螺旋部分を形成する同心のスプリングであり、及び/又は
前記少なくとも1つのワイヤがワイヤ直径を有し、
前記巻回部(17)が、前記ワイヤ直径と前記ワイヤ直径の4/3との間の巻回ピッチを有し、前記巻回ピッチが、少なくとも2つの隣接するコイルの中心間の、巻回軸(A)に沿った距離として定義される、請求項7に記載のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ(1)。
【請求項9】
少なくとも1つのブレーキパッド(103)と、請求項1-8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ(1)とを含み、
前記パッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ(1)が、前記ブレーキパッド(103)に接続可能であり、
前記ブレーキパッド(103)が、摩擦材(105)と、前記摩擦材(105)を支持する支持プレート(104)とを備え、前記支持プレート(104)が、周方向(C-C)に向けて横に突出する少なくとも1つのガイドイヤ(111)を備え、
前記パッドホールドスプリング(2)の前記C形部(4)が、前記ブレーキパッド(103)を周方向(C-C)及び径方向(R-R)に付勢するように前記ガイドイヤ(111)を収容するように構成されており、
前記パッドリターンスプリング(3)の前記連結部(10)が、少なくとも前記連結アーム(9)によって前記連結部(10)から離間させられた前記巻回部(17)によって、及び/又は前記連結部(10)の前記ブレーキパッド(103)からの連結解除を防止することによって、前記パッド(103)を前記ブレーキディスク(102)から離間する方向に付勢するように、前記ガイドイヤ(111)に係合するように構成されている、ブレーキキャリパ(100)用のブレーキパッドアセンブリ。
【請求項10】
車両に連結可能であり、ブレーキディスク(102)を跨いで配置されるように構成されたキャリパ本体(109)であって、前記キャリパ本体(109)が少なくとも1つのブレーキパッド収容ポケットを備え、前記収容ポケットが少なくとも1つの凹部(106)を備える、キャリパ本体(109)と、
前記パッドホールドスプリング(2)が、少なくとも、前記ガイドイヤ(111)と前記凹部(106)との間に介装され、
前記パッドリターンスプリング(3)の前記連結部(10)が、前記ガイドイヤ(111)と結合されて、前記ブレーキディスク(102)から離れる方向に付勢している、請求項9に記載のパッドアセンブリ、を備えたブレーキキャリパ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
【0002】
本発明は、ブレーキパッドを軸方向、周方向及び径方向に付勢して振動を低減し、ブレーキ終了時にパッドをブレーキディスクから離間させて摩擦材とブレーキディスクとの間の残留トルクを除去または低減することができるブレーキキャリパスプリングのアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
【0004】
ブレーキキャリパ内の少なくとも1つのブレーキパッドを弾性的に保持し、付勢するように構成されたディスクブレーキスプリングアセンブリが知られている。
【0005】
特に、文献US20180223928、US9677629、US8869950及びCN207989608Uには、パッドリターンスプリングに作動可能に連結されたパッドホールドスプリングを有するスプリングアセンブリが示されている。
【0006】
通常、パッドホールドスプリングは、パッドの振動を低減するために、軸方向への動きを制限することなく、パッドをブレーキキャリパのシート内に保持する。
【0007】
パッドリターンスプリングは、ブレーキが解除された状態でパッドとブレーキディスクとの間の望ましくない接触に起因する残留ブレーキトルク(残留トルク)を低減または除去するように、各ブレーキ動作の後にブレーキパッドをディスクから離れる方向に付勢する。
【0008】
いくつかの既知の解決策には、パッドホールドスプリングがパッドリターンスプリングと一体に作られたスプリングアセンブリが含まれる。このようなスプリングは、成形され曲げられた一枚の板金から作られるため、ディスクブレーキの異なる適用分野ごとに異なるタイプのスプリングを作る必要がある。このような解決策は、異なるディスクブレーキの用途ごとに特定のスプリングアセンブリが必要であるため、製造コストの点で特に不利である。
【0009】
他のよく知られた解決策は、パッドホールドスプリングとパッドリターンスプリングが別々の板金から作られ、組み立てられるスプリングアセンブリから構成される。このように、パッドリターンスプリングは、ブレーキシステムの適用要件に応じてカスタマイズすることができる。しかしながら、特に高性能ブレーキ用途の場合、軸方向リーフスプリングの採用は、ブレーキが搭載される車両の性能に悪影響を及ぼす包絡線と重量増加の問題を引き起こす。
【0010】
さらに他の解決策は、パッドホールドスプリングとパッドリターンスプリングが、成形され曲げられた板金片とワイヤスプリングから作られ、その後組み立てられるスプリングアセンブリを提供する。このタイプの解決策は、例えば、GB2257483号文書及びUS2013025981号文書から知られている。
【0011】
これらの解決策では、ワイヤパッドリターンスプリングは、パッドホールドスプリングに接続されるように適合されたアンカー部と、ブレーキパッドに接続され、少なくとも軸方向に前進した位置と軸方向に後退した静止位置との間で移動可能であるように適合された連結部と、アンカー部と連結部とを連結し、連結部を軸方向に後退した静止位置に常に付勢し、ブレーキ作用が完了するとブレーキパッドがブレーキディスクから離れるようにする弾性リターン部とからなる。
【0012】
これらの解決策の幾つかにおいて、連結部は、パッドプレートに当接拘束されることなく、ブレーキディスクに面するブレーキパッド部に連結されることが見出された。このような解決策では、スプリングの連結部は、パッドホールドスプリングの方向に進み、プレート上で接線方向または周方向に摺動することができることが見出された。
【0013】
特に、例えば組立中に、プレート上で連結部が接線方向に摺動することにより、プレートの縁とパッドホールドスプリングの壁との間の連結部がパッド自体から結合解除されたり、パッドの縁とパッドホールドスプリングとの間に挟まれたりし、パッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングアセンブリの動作が損なわれる可能性がある。
【0014】
さらに、例えば摩擦材の摩耗が激しい条件下では、ブレーキパッドのイヤ部のサイドエッジに対向するパッドホールドスプリングの壁部に接触するまで、プレート上の連結部の接線方向の摺動によりワイヤスプリングの弾性復帰部を少なくとも部分的に付勢し、弾性復帰部とパッドホールドスプリングとの間に摩擦が発生して、ブレーキキャリパの性能に悪影響を及ぼすことがある。
【0015】
特に、ワイヤパッドリターンスプリングの大きな表面とパッド保持壁との間の摺動は、ワイヤパッドリターンスプリングのブレーキ効率、耐用年数及び信頼性に悪影響を及ぼし、特に、パッドがディスクからゆっくりと離れる原因となり、ブレーキパッドの偏摩耗につながる。場合によっては、スプリングアーム部間の摩擦が非常に大きくなり、パッドの動きが止まってしまい、ワイヤスプリングの一部がブレーキパッドとパッドホールドスプリングとの間に挟み込まれてしまう。
【0016】
そのため、当業界では、摩擦材の摩耗が進行した状態でも、パッドの戻りの信頼性を高め、メンテナンスの手間を減らすことができるように、ワイヤパッドリターンスプリングを単純な形状にしたパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリを提供する必要性を強く感じている。
【0017】
従って、設計及び製造時の時間及びコストに影響を与えることなく、ディスクブレーキの様々な適用分野及び所望の性能に使用できるように、高い適応性及び改造の容易性を可能にしながら、ブレーキ時に、ブレーキ終了時の残留トルクを低減する、あるいは抑制する、特に効率的な性能、並びに振動及び騒音の最小化特性を同時に提供することができる、スプリングアセンブリ、パッドアセンブリ及びブレーキキャリパを製造する必要性が生じる。
【0018】
従って、本発明の根底にある課題は、先行技術を参照して述べた欠点を回避しつつ、前述のニーズを満たすような構造的及び機能的特徴を有し、前述の感じたニーズを満たすようなスプリングアセンブリ、パッドアセンブリ及びブレーキキャリパを考案することである。
【発明の概要】
【0019】
解決手段
【0020】
本発明の目的は、パッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ、ならびにブレーキパッドのアセンブリ、及びブレーキキャリパを提供することであり、これらのアセンブリは、ブレーキ動作が完了した後の残留トルクを、除去しないまでも低減することができ、ブレーキ信頼性を高めることができる。
【0021】
これら及び他の目的及び利点は、請求項1に記載のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ、請求項9に記載のブレーキパッドアセンブリ、及び請求項10に記載のブレーキキャリパによって達成される。
【0022】
いくつかの有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0023】
本発明の一態様によれば、提案された解決策は、改善されないまでも非常に高いブレーキ効率を維持し、例えば、通常の作動中にパッドリターンスプリングとパッドホールドスプリングとの間に摩擦接触がなく、パッドリターンスプリングが、パッドリターンスプリングとパッドホールドスプリングとの間に摩擦接触が生じる場合に、パッドホールドスプリングに接触するパッドリターンスプリングの表面が公知の解決策に比べて非常に小さくなるように形成されていることによって、効率が強く改善される。
【0024】
この解決策の分析により、提案された解決策では、パッドリターンスプリングがブレーキパッドのディスク側表面上で接線方向に摺動することによる、リターンスプリングとパッドホールドスプリングとの間の接触面積を、パッドリターンスプリングワイヤの断面の数分の一に制限することができ、一方では、発生可能な摩擦力を減少させ、他方では、スプリングワイヤ部分ブレーキパッドとパッドホールドスプリングとの間にはまり込んだり、あるいはブレーキパッドから外れて接続が失われたりすることを回避できることが示された。
【0025】
さらに、提案された解決策により、パッドホールドスプリングとパッドリターンスプリングのアセンブリの耐用年数を既知の解決策よりも長くすることができ、メンテナンスの介入を大幅に減らすことができる。
【0026】
この解決策の分析により、提案された解決策により、従来技術の解決策よりもパッドとブレーキディスクの間の残留トルクを低減することができ、その結果、ブレーキパッドの偏摩耗の発生を低減し、特にメンテナンスの発生を低減できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面
【0028】
スプリングアセンブリ、パッドアセンブリ、及びブレーキキャリパセンブリのさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して非限定的に示す、その好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【0029】
【
図1】
図1は、本発明によるブレーキキャリパの軸図であり、キャリパ本体と、少なくとも1つのブレーキパッドと、キャリパ本体及び少なくとも1つのブレーキパッドに連結された、本発明による少なくとも1つのパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリと、を備える。
【0030】
【
図2】
図2は、ブレーキパッドに連結された、本発明によるパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリを含むパッドアセンブリの軸方向図であり、ブレーキパッドに対向するブレーキディスクが図式的に示されている。
【0031】
【
図3】
図3は、
図2のパッドアセンブリの正面図であり、ブレーキディスクとは反対側のパッド支持プレートが示されている。
【0032】
【
図4】
図4は、
図2のパッドアセンブリの正面図であり、パッド摩擦材とプレートのブレーキディスク側表面とが示されており、パッドのイヤ部において、プレートのブレーキディスク側表面と接触している連結部分が示されている、パッドリターンスプリングのブレーキパッドからの不本意な離脱を防止するように、かつ、パッドリターンスプリングとパッドリターンスプリングとの間の摩擦接触面が、連結部のパッドホールドスプリング方向への接線方向または周方向への摺動の場合に減少するように、連結部が曲げられている。
【0033】
【
図5】
図5は、本発明によるパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリの軸方向図である。
【0034】
【
図6】
図6は、ブレーキディスク側における
図5のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリの軸方向に垂直な正面図であり、手前には、軸方向に垂直な平面において屈曲部を有するパッドリターンスプリングワイヤ部の端部が示されている。
【0035】
【
図7】
図7は、
図5のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリの接線方向に垂直な側面図である。
【0036】
【
図8】
図8は、本発明によるパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリのさらなる実施形態の軸方向図であり、
図5からの2つのパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリが示されており、これらのパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリは、軸方向に垂直な中心面に対して相互に鏡面であり、ブリッジ状部分によって接続されている。
【0037】
【
図9】
図9は、リベット留め及び/またはクランプ留めによってパッドホールドスプリングに連結されたパッドリターンスプリングワイヤ部の連結部の軸方向図を示す。
【
図10】
図10は、リベット留め及び/またはクランプ留めによってパッドホールドスプリングに連結されたパッドリターンスプリングワイヤ部分の連結部の軸方向図を示す。
【0038】
【
図11】
図11は、パッドホールドスプリングの孔に挿入されるようにS字状に曲げられたパッドリターンスプリングの対向する円板側端部と、パッドホールドスプリングの壁の対向する表面と接触し、連結要素によって保持されたS字状に曲げられた部分とを有する、パッドホールドスプリングに連結されたパッドリターンスプリングワイヤ部の連結部の軸図である。
【
図12】
図12は、パッドホールドスプリングの孔に挿入されるようにS字状に曲げられたパッドリターンスプリングの対向する円板側端部と、パッドホールドスプリングの壁の対向する表面と接触し、連結要素によって保持されたS字状に曲げられた部とを有する、パッドホールドスプリングに連結されたパッドリターンスプリングワイヤ部の連結部の軸図である。
【0039】
【
図13】
図13は、本発明によるパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリの軸方向図であり、パッドリターンスプリングは、周方向に対して同軸である巻線からなる少なくとも1つのワイヤ部からなり、ワイヤ部の端部は、軸方向に対して垂直な面内で少なくとも1つの屈曲部を形成している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
いくつかの好ましい実施形態の説明
【0041】
一般的な実施形態によれば、ブレーキキャリパ100用のパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングのアセンブリ1が提供される。
【0042】
以下の説明では、特に断らない限り、アセンブリ1は、ブレーキパッド及び/又はキャリパ本体に結合されていない静止状態にあるときに説明される。
【0043】
アセンブリ1は、軸方向A-A、軸方向A-Aに垂直な径方向R-R、及び軸方向A-A及び径方向R-Rの両方に垂直な周方向又は接線方向C-Cを画定する。
【0044】
一実施形態によれば、軸方向A-Aは、ブレーキキャリパ100のキャリパ本体109が跨るように配置され得るブレーキディスク102の回転軸に平行である。
【0045】
アセンブリ1は、少なくとも1つのパッドホールドスプリング2と少なくとも1つのパッドリターンスプリング3とから構成され、異なる半完成品で作られた後、作動可能に連結されている。
【0046】
パッドホールドスプリング2は、ブレーキキャリパ100のブレーキパッド103の少なくとも1つのガイドイヤ111とブレーキキャリパ100のキャリパ本体109との間に配置され、ブレーキパッド103を径方向R-R及び周方向C-Cに付勢するように構成されている。
【0047】
パッドリターンスプリング3は、ブレーキパッド103をブレーキディスク102から離れる軸方向A-Aに付勢するように構成されている。
【0048】
パッドホールドスプリング2は、径方向R-R及び周方向C-Cに主に延在している。
【0049】
パッドホールドスプリング2は、少なくとも1つのC形部4を備える。C形部4は、中央部5、上側部6及び下側部7からなる。中央部5は、少なくとも径方向R-Rに延び、主に径方向R-Rに沿って延びる。上側部6及び下側部7は、中央部5から周方向C-Cに少なくとも部分的に片持ち梁状に延びており、中央部5の径方向に対向する2つの端部から延びている。一実施形態によれば、中央部5は、少なくとも径方向R-R及び軸方向A-Aに延びている。一実施形態によれば、上側部6及び下側部7も軸方向A-Aに延びている。一実施形態によれば、上側部6及び下側部7は、周方向C-C及び径方向R-Rからなる長手方向に沿って、中央部5の径方向に対向する2つの端部から片持ち状に延びている。
【0050】
C形部4は、キャリパ本体109の凹部106に挿入されるように構成され、ガイドイヤ111を収容するように構成される。
【0051】
パッドリターンスプリング3は、C形部4に動作可能に連結されたアンカー部8と、ブレーキパッド103を連結するように構成された連結部10と、アンカー部8及び連結部10に動作可能に連結された連結アーム9とを備える。連結部10は、ディスク102に向かって、引っ込んだ静止位置と少なくとも1つの前進位置との間で、軸方向A-Aにアンカー部8に対して弾性的に移動可能であり、その逆も同様である。
【0052】
一実施形態によれば、アンカー部8は、C形部4から軸方向A-Aにおいて、ディスク102とは反対側の第1方向に延びている。
【0053】
実施形態によれば、連結アーム9は、アンカー部8から、主に軸方向A-Aに向けられた長手アーム方向に沿って、ディスク102と一致する第2方向に、第1方向とは反対側に延びる。
【0054】
一実施形態によれば、連結部10は、第2方向に沿って引き伸ばされた、ディスク102に向かう少なくとも1つの前進位置と、その反対方向に引き込まれた静止位置との間で、軸方向A-Aに弾性的に移動可能である。
【0055】
パッドリターンスプリング3は、少なくとも1本のワイヤから作られている。
【0056】
連結アーム9は、連結部8に直接的又は間接的に連結されたアーム端部16からなる。
【0057】
アーム端部16は、中央部5またはその径方向延長部及び/またはその軸方向延長部に対して、周方向C-Cに沿って第1距離D1に配置される。
【0058】
有利には、第2距離D2は、第1距離D1よりも小さい。ブレーキパッド103に対して連結部10が中央部5に向かって周方向又は接線方向に摺動する場合、組立中及び/又は摩擦材料の非常に攻撃的な摩耗状態の間、第1伸張部22は、中央部5と最初に干渉し、アーム端部16が中央部5に接触するのを防止する、一方では連結部10がブレーキパッド103から外れるのを防止し、摺動接触の場合にはパッドリターンスプリング3とパッドホールドスプリング2の中央部5との間に発生する摩擦力を、パッドホールドスプリング2とパッドリターンスプリング3との間に制限する。
【0059】
一実施形態によれば、第1伸張部22は、連結部10のうち、パッドホールドスプリング2の中央壁5、または径方向及び/もしくは軸方向におけるその延長部に最も近い部分から構成される。
【0060】
一実施形態によれば、第1伸張部22は、連結部10及び連結アーム9のうち、パッドホールドスプリング2の中央壁5に最も近い部分、又は径方向及び/又は軸方向におけるその伸張部に最も近い部分である。
【0061】
実施形態によれば、第1伸張部22は、スプリング自由端23を有する。実施形態によれば、スプリング自由端23は、中央部5に面している。一実施形態によれば、スプリング自由端23は、パッドリターンスプリング3のワイヤの一部分の表面によって画定される。一実施形態によれば、スプリング自由端23は、パッドリターンスプリングワイヤの直径を直径として有する円の表面よりも小さい表面を有する。実施形態によれば、スプリング自由端23は、中央部5と干渉するように構成されている。それにより、連結部10の偶発的な周方向の摺動の場合に、パッドリターンスプリング3と中央部5との間の接触面を制限することが可能である。
【0062】
一実施形態によれば、連結部10は、第2伸張部24を備える。一実施形態によれば、第2伸張部24と第1伸張部22とが連結され、連結部角部を形成する。実施形態によれば、連結角は、中央部5に面する鋭角である。実施形態によれば、第2伸張部24及び第1伸張部22は連結され、凹状部を形成し、該凹状部は中央部5に面する。
【0063】
実施形態によれば、第2伸張部24及び第1伸張部22は、同じ連結平面上に配置されるか又は横たわり、連結部平面は、軸方向A-Aに垂直である。実施形態によれば、第2伸張部24及び第1伸張部22は、V字状に曲げられた部分を形成する。第1伸張部22及び第2伸張部24を設けることにより、摩擦材料の摩耗が非常に進行した状態であっても、ブレーキパッドの応力に高い信頼性で耐えることができる連結部10を得ることができる。
【0064】
実施形態によれば、第1伸張部22は直線状のワイヤ伸張部であり、第2伸張部24は直線状のワイヤ伸張部であり、第2伸張部24と第1伸張部22とは第3伸張部25によって連結されており、第3伸張部25は湾曲している。一実施形態によれば、第2伸張部24は、径方向R-Rに対して0度から45度の間、好ましくは15度から30度の間の第2伸張角だけ連結平面内で傾斜している。
【0065】
一実施形態によれば、連結部10とアンカー部8との間のパッドリターンスプリング3は、連結部を引っ込んだ静止部の方向に弾性的に戻すように曲げられている。実施形態によれば、連結部は、引っ込められた静止部の方向に常に弾性的に戻される。
【0066】
実施形態によれば、連結アーム9は、アンカー部8を連結部10に直接連結し、連結部を引っ込んだ静止部の方向に常に弾性的に戻すように曲げられている。実施形態によれば、連結アーム9は、引っ込んだ静止部の方向に曲がることによって連結部を弾性的に戻すように、径方向と軸方向とからなる平面内で曲げられている。
【0067】
一実施形態によれば、有利には、パッドリターンスプリング3は、連結アーム9をアンカー部8に連結する少なくとも1つの巻回部17を備える。少なくとも1つの巻回部17は、巻回軸Aを中心として螺旋状に巻かれた少なくとも1つのワイヤからなり、巻回軸Aは、ブレーキパッド103の巻回部17との接触を避けて、軸方向A-Aに沿って連結部10を引っ込んだ静止位置に向けて常に弾性的に付勢するように配向されている。一実施形態によれば、巻回軸Aは、軸方向A-Aに実質的に平行である。一実施形態によれば、巻回軸Aは、軸方向A-Aに対して垂直であることを避けて、軸方向A-Aに対して入射する。
【0068】
これにより、パッドリターンスプリングを軸方向A-Aに入射する平面及び/または実質的に垂直な平面に曲げることによって弾性エネルギーを蓄えることができる巻回部17によって、パッドリターンスプリング3の軸方向の伸長を制限することが可能になる。有利には、軸方向を構成する平面において少なくとも1つのワイヤに曲がりが生じることを回避することが可能であり、連結部10を弾性的に移動させるためにパッドリターンスプリングの曲げられた部分と作用することを回避することができる。
【0069】
実施形態によれば、巻回部17は、巻回軸Aを中心に巻回された複数のコイル31,32からなり、実施形態によれば、複数のコイル31,32は、ねじりによって弾性変形し、連結部10を引っ込んだ静止位置に向けて弾性的に付勢する。実施形態によれば、パッドリターンスプリング3は、通常動作時に、連結アーム9内及び/又は連結部10内及び/又は巻回部17内において軸A-A方向に曲がることによって弾性変形するのを防止するように曲げられている。
【0070】
一実施形態によれば、複数のコイル31,32は、少なくとも第1コイル31と第2コイル32とからなる。実施形態によれば、各コイル31,32は、実質的に同じ外径を有する。一実施形態によれば、複数のコイル31,32のうちの少なくとも1つのコイルは、複数のコイル31,32のうちの少なくとも1つの他のコイルの外径よりも小さい及び/又は大きい外径を有する。一実施形態によれば、複数のコイル31、32は同心である。一実施形態によれば、第1コイル31は、第2コイル32に対してずれている。一実施形態によれば、複数のコイル31、32は、円筒形又は円錐形の螺旋スプリング部を形成する。
【0071】
一実施形態によれば、少なくとも1つのワイヤは、ワイヤ直径を有する。一実施形態によれば、巻回部17は、ワイヤ直径とワイヤ直径の4/3との間の巻回ピッチを有する。実施形態によれば、巻回ピッチは、少なくとも2つの隣接するコイルの中心間の巻回軸Aの方向に沿った距離として定義される。
【0072】
実施形態によれば、巻回部17は、第1軸方向パッドリターンスプリング包囲部A1を画定する。連結アーム9及び連結部8は、第2軸方向パッドリターンスプリング包絡線A2を画定する。第1軸方向パッドリターンスプリング包絡線A1は、第2軸方向パッドリターンスプリング包絡線A2よりも小さい。
【0073】
一実施形態によれば、巻回部17は、第1径方向パッドリターンスプリング包絡線R1を画定する。結合部8は、第2径方向パッドリターンスプリング包絡線R2を画定する。径方向パッドリターンスプリング包絡線R1は、第2径方向パッドリターンスプリング包絡線R2よりも小さい。
【0074】
一実施形態によれば、巻回部17は、巻回方向に従って巻回軸Aに対して巻線の下で曲げられ、その際、連結部10は、少なくとも部分的に巻回方向とは反対の方向に曲げられる。
【0075】
巻回部17を設けることにより、ブレーキパッド103及びキャリパ本体109に対するアセンブリ1の組付け作業中にパッドリターンスプリングワイヤが塑性変形する確率を減少させるか、あるいは無くすことにより、アセンブリ1の軸方向の包囲を著しく減少させることができる。また、パッドリターンスプリングの曲げ形状を、ワイヤの巻回軸Aを中心とする螺旋状の巻回とすることにより、長期に亘って持続し、組立時の周方向又は径方向の衝撃に対して高い耐性を有する弾性エネルギー蓄積部を提供することができる。
【0076】
高抵抗、パッドに適用される高い弾性復帰力、及び経時的な高い信頼性を維持しながら、パッドリターンスプリング3の軸方向A-Aにおける小さな包絡線を得ることを可能にする巻回部17の提供により、アセンブリ1を既存のノギスのいくつかの形状に取り付けることが可能である。さらに、パッドリターンスプリング3の軸方向A-Aにおける小さな包絡線のおかげで、小さな寸法を有する新しいキャリパを提供したり、他の要素を導入したりすることが可能である。
【0077】
巻回部17を設けることにより、軸方向からなる平面内で屈曲及び伸長する弾性リターンアームを含むパッドリターンスプリングに対して、パッドリターンスプリング3の軸方向の剛性を低減することができる。これにより、一方では、摩擦材が極度に摩耗する条件下でも、パッドを高い信頼性で支持し弾性的に戻すことが可能になり、他方では、公知の解決策と比較して、より広い幾何公差の範囲で信頼性の高い結果を得ることが可能になる。
【0078】
巻回部17を設けることにより、公知の解決策と比較して、軸方向包絡線を増加させることなく、または軸方向包絡線を非常に低く保つことなく、パッドリターンスプリング3のワイヤの長手方向の長さを増加させることが可能である。巻回部17を設けることにより、パッドに加えられる弾性復帰力と同じ方向であるかそうでないかを問わない巻回軸を中心に線ばねを曲げることが可能である。巻回部17が設けられていることにより、パッドに加えられる復帰力は、巻回部のコイルのねじり変形によるものであり、軸方向への曲げによる弾性力の発生を回避することができる。
【0079】
一実施形態によれば、アンカー部8は、ブレーキディスク102から離れる方向に延びる少なくとも第1直線状伸張部19を有し、第1直線状伸張部19は、軸方向A-Aに平行である。実施形態によれば、アンカー部8は、巻回部17の巻回軸Aを軸方向A-Aに平行または入射及び/または垂直に配置するために、巻回部17を第1直線状伸張部19に接続する少なくとも第1湾曲伸張部18を有する。一実施形態によれば、巻回部17は、ブレーキディスク102の方向に螺旋状に延びている。実施形態によれば、第1湾曲伸張部は、直角に曲げられている。
【0080】
実施形態によれば、連結アーム9は、実質的に直線状であり、軸方向A-Aに平行である。実施形態によれば、アセンブリの通常の動作中、連結アーム9は、例えば曲がることによって、連結部10を軸方向に弾性的に付勢することを回避する。
【0081】
実施形態によれば、連結アーム9は、連結アーム9を軸方向A-Aに平行に配置するように、少なくとも軸方向A-Aを含む平面において巻回部17と直角をなす第1湾曲接続部33によって巻回部17に接続される。
【0082】
実施形態によれば、第2伸張部24は、連結アーム9と連結部10との間に実質的に直角を形成する第2湾曲連結部20によって、アーム端部16及び/又は連結アーム9に連結される。
【0083】
実施形態によれば、アンカー部8は、第1湾曲伸張部18に接続された第2直線伸張部21を有する。一実施形態によれば、アンカー部8は、巻回部17が延びる第2湾曲伸張部20を有し、第2湾曲伸張部20及び第2直線伸張部21は、軸方向A-Aに垂直な平面上に少なくとも部分的に位置する。
【0084】
一実施形態によれば、パッドホールドスプリング2は連結壁13を備え、パッドリターンスプリング3のアンカー部8は、パッドホールドスプリング2の連結壁13に固定されている。
【0085】
一実施形態によれば、アンカー部8は、径方向R-RにおいてC形部4によって区画された凹部に面する結合壁13の少なくとも一面に結合される。
【0086】
実施形態によれば、パッドホールドスプリング2は、連結壁13に連結された連結要素14を備える。実施形態によれば、結合要素14は、アンカー部8の少なくとも一部分を締め付けるように構成された少なくとも一対の結合タブ15を備える。一実施形態によれば、一対の連結タブ15は、アンカー部8の第1直線伸張部19に締め付けられる。実施形態によれば、パッドリターンスプリング3のアンカー部8は、連結壁13にリベット留め又は溶接又は干渉結合される。
【0087】
実施形態によれば、アンカー部8は、S形状に曲げられたアンカー部端部を形成するように、第3湾曲伸張部35によって第1直線伸張部19に連結された第3直線伸張部34からなる。一実施形態によれば、第1直線伸張部19は、C形部4の囲まれた部分に関して反対側を向いた連結壁13の下面に接触している。実施形態によれば、連結壁13は、固定部8の少なくとも一部分が挿入される貫通孔を有する。実施形態によれば、第3湾曲伸張部35は、連結壁の孔に挿入され、第3直線伸張部34は、パッドリターンスプリング2をパッドホールドスプリング3に連結するように、連結壁13の、C形部4の囲まれた部分に対向する、連結壁13の上面と径方向に対向する上面に当接する。一実施形態によれば、アンカー部8は、L字状に曲がったアンカー部端部を形成するように、第3湾曲伸張部35によって第1直線伸張部19に接続された第3直線伸張部34からなる。
【0088】
一実施形態によれば、パッドホールドスプリング2は、ブレーキディスク102とは反対方向の軸方向A-Aに片持ち梁状に延びる下側部7に作動可能に連結された第1片持ち梁部11からなる、 パッドホールドスプリング2が、周方向C-Cに片持ち梁状に延びる第1片持ち梁部分11に作動可能に連結された第2片持ち梁部12からなり、パッドホールドスプリング2のアンカー部8が第2片持ち梁部12に固定され、第2片持ち梁部12が連結壁13を構成する。
【0089】
実施形態によれば、アセンブリ1は、2つのパッドホールドスプリング2と、2つのパッドリターンスプリング3と、2つのパッドホールドスプリング2を連結するブリッジ状部分36とを備える。
【0090】
実施形態によれば、パッドリターンスプリング3は、2本の平行なワイヤを並べて配置したものである。
【0091】
一実施形態によれば、パッドホールドスプリング2は、C形部4にシームレスに動作可能に連結されたL形部26を備える。実施形態によれば、L形部26は、第2支持部28に垂直に動作可能に連結された第1支持部27を備える。一実施形態によれば、第1支持部27は、C形部4の上側部6から垂直に延び、上側部6と第2支持部28とで、C形部4とは反対の凹みを有するU形部を得るようになっている。一実施形態によれば、C形部4の中央部5は、C形部4の凹部の外側の周方向C-Cに片持ち梁状に延びる第1保持要素29を備える。実施形態によれば、L形部26は、第1支持部27と第2支持部28との間に開口部を構成し、第1支持部27は、開口部内に周方向C-Cに片持ち梁状に延びる第2保持要素30を構成する。実施形態によれば、第1支持部27は、周方向C-Cに対向する縁部からL形部26内に突出する一対の保持要素からなる。
【0092】
実施形態において、ブレーキパッド103は、外側ブレーキパッド又は内側ブレーキパッドであり、外側ブレーキパッドは、内側ブレーキパッドと比較して、車両からさらに離間している。実施形態では、内側ブレーキパッドは、ブレーキキャリパのスラスト手段またはピストンによって直接付勢されるように適合され、外側ブレーキパッドは、キャリパ本体109のフローティング要素110の一部によって、ブレーキキャリパのスラスト手段またはピストンによって間接的に付勢されるように適合される。一実施形態では、外側ブレーキパッドに接続された及び/または接続されるように適合された各パッドリターンスプリング3は、外側リターン荷重を規定する。実施形態では、内側ブレーキパッドに接続された及び/または接続されるように適合された各パッドリターンスプリング3は、内側リターン荷重を規定する。実施形態では、内側リターン荷重は、外側リターン荷重と等しい。内側ブレーキパッドと外側ブレーキパッドとからなる一対のブレーキパッドを支持するフローティングタイプのブレーキキャリパでは、ブレーキ作用が完了すると、内側ブレーキパッドに作用するパッドリターンスプリング3は、外側ブレーキパッドに作用するパッドリターンスプリング3と対称的な方法で、かつ同じ弾性挙動で働く。実施形態では、内側リターン荷重は、外側リターン荷重よりも低い。内側ブレーキパッドと外側ブレーキパッドとからなる一対のブレーキパッドを支持するフローティングタイプのブレーキキャリパでは、ブレーキ動作が完了すると、内側ブレーキパッドに作用するパッドリターンスプリング3は、外側ブレーキパッドに作用するパッドリターンスプリング3に対して非対称に作用する。サイドリターン荷重に比べて増大した外側リターン荷重が与えられることによって、ブレーキパッドがブレーキディスクから離れることができることに加えて、パッドリターンスプリング3によって、車両から離れることによってその静止位置にあるキャリパ本体のフローティング要素110にリターン戻り力が加えられ、ブレーキディスクに対して部分的に再センタリングされるのを助け、ディスクに対するブレーキパッドの完全な離脱を確実にする。
【0093】
本発明はまた、ブレーキキャリパ100用のブレーキパッドアセンブリに関する。ブレーキパッドアセンブリは、少なくとも1つのブレーキパッド103と、上述した実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つのパッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングアセンブリ1とを備える。
【0094】
パッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングアセンブリ1は、ブレーキパッド103に連結可能である。ブレーキパッド103は、摩擦材105と、摩擦材105を支持する支持プレート104とを備える。支持プレート104は、周方向C-Cに側方に突出する少なくとも1つのガイドイヤ111を備える。パッドホールドスプリング2のC形部4は、パッド103を周方向C-C及び径方向R-Rに付勢するように、少なくとも1つのガイドイヤ111を収容するように構成されている。パッドリターンスプリング3の結合部10は、巻回部17によって、パッド103をブレーキディスク102から離れる方向に付勢するようにガイドイヤ111を結合するように構成されている。一実施形態によれば、巻回部17は、少なくとも連結アーム9の連結部10から軸方向に間隔を置いて配置されている。一実施形態によれば、巻回部17は、支持プレート104のフットプリントに対して部分的に外側にある。実施形態によれば、巻回部17は、ガイドイヤ111のフットプリントに対して部分的に外側にある。本明細書において、フットプリントとは、軸方向A-Aに垂直な平面に対する要素のプロファイルを意味する。実施形態によれば、巻回部17は、支持プレート104に直接接触することを回避する。
【0095】
実施形態によれば、ブレーキパッド103は、少なくとも1つのガイドイヤ111を周方向C-C及び径方向R-Rに横方向に区画するイヤサイドエッジ112を備える。実施形態によれば、ブレーキパッド103は、摩擦材105に対して反対側を向く後部のイヤガイド面113と、摩擦材105と同じ側を向く前部の第1イヤガイド面114とを備える。
【0096】
実施形態によれば、イヤサイドエッジ112は、C形部4に挿入可能である。一実施形態によれば、連結部10は、パッド103を軸方向A-Aにおいて常に摩擦材105と反対方向に付勢するように、前部の第1イヤガイド面114に連結可能である。
【0097】
実施形態によれば、イヤサイドエッジ112は、主に径方向R-Rに沿って延びる径方向エッジ116と、主に周方向C-Cに沿って延びる周方向エッジ117とによって径方向に区画された少なくとも1つの凹部115を画定する。実施形態によれば、径方向エッジ116と周方向エッジ117とは段差状に接続されており、アーム端部16は、凹部115に対して、周方向エッジ117に対向する径方向R-Rと、径方向エッジ116に対向する周方向C-Cとに、接触することなく対向している。一実施形態によれば、巻回部17は、部分的に凹部115に面している。実施形態によれば、連結部10は、前部の第1イヤガイド面114に接触し、及び/又は、前部の第1イヤガイド面114と凹部115を画定する周方向エッジ117との交差部によって画定されるイヤコーナ107に接触する。
【0098】
本発明はまた、上述した実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つのパッドアセンブリを備えるブレーキキャリパ100に関する。
【0099】
ブレーキキャリパ100は、車両に連結可能であり、ブレーキディスク102を跨いで配置されるように適合されたキャリパ本体109を備え、キャリパ本体109は、少なくとも1つのブレーキパッド収容ポケットを備え、収容ポケットは、少なくとも1つの凹部10を備える。パッドホールドスプリング2は、少なくともガイドイヤ111と凹部106との間に介装されている。パッドリターンスプリング3の結合部10は、ガイドイヤ111に結合され、ブレーキディスク102から離れる方向に付勢する。
【0100】
実施形態によれば、キャリパ本体109は、車両に固定的に連結可能な支持体101を備え、支持体101は、少なくとも1つのブレーキパッドハウジングポケットを構成する。
【0101】
実施形態によれば、キャリパ本体109は、支持体101にフローティング方式で連結されたフローティング要素110を備え、フローティング要素は、ブレーキディスク102を跨いで配置され、スラスト手段によって、ブレーキパッド103を、軸方向A-Aに沿って、少なくとも1つのパッド静止位置と1つのパッドブレーキ位置との間でブレーキディスク102に向かって直接的又は間接的に付勢するように構成されている。
【0102】
一実施形態によれば、ブレーキディスク102はディスク軸を備え、軸方向A-Aはディスク軸に平行である。
【0103】
実施形態によれば、キャリパ本体109は、支持突起108を具備し、L形部26は、支持突起108に結合され、及び/又は、支持体101は、支持突起108を具備する。
【符号の説明】
【0104】
1 パッドホールドスプリング及びパッドリターンスプリングアセンブリ
2 パッドホールドスプリング
3 パッドリターンスプリング
4 C形部
5 中央部
6 上部
7 下部
8 アンカー部
9 連結アーム
10 連結部
11 第1片持ち梁部分
12 第2片持ち梁部分
13 連結壁
14 連結要素
15 連結タブ
16 アーム端部
17 巻回部分
18 第1湾曲伸張部
19 第1直線伸張部
20 第2湾曲伸張部
21 第2直線伸張部
22 第1伸張部
23 スプリング自由端
24 第2伸張部
25 第3伸張部
26 L形部
27 第1支持部
28 第2支持部
29 第1保持要素
30 第2保持要素
31 第1コイル
32 第2コイル
33 第1湾曲接続部
34 第3直線伸張部
35 第3湾曲伸張部
36 ブリッジ状部分
100 ブレーキキャリパ
101 支持体
102 ブレーキディスク
103 ブレーキパッド
104 支持プレート
105 摩擦材
106 凹部
107 イヤコーナ
108 支持突起
109 キャリパ本体
110 フローティング要素
111 ガイドイヤ
112 イヤサイドエッジ
113 後部のイヤガイド面
114 前部のイヤガイド面
115 イヤ凹部
116 径方向エッジ
117 周方向エッジ
A-A 軸方向
R-R 径方向
C-C 周方向または接線方向
【外国語明細書】