(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058666
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】自動車のバッテリーのDC電圧変換および充電のための電気システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240418BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240418BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240418BHJP
B60L 58/20 20190101ALI20240418BHJP
B60L 53/22 20190101ALI20240418BHJP
【FI】
H02M3/28 V
H02J7/00 P
H02J7/00 J
H02J7/02 J
H02J7/00 303C
H02M3/28 U
H02M3/28 H
H02M3/28 Q
B60L58/20
B60L53/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023178468
(22)【出願日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】2210625
(32)【優先日】2022-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】522457531
【氏名又は名称】ヴァレオ、イーオートモーティブ、フランス、エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】Valeo eAutomotive France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】ウェンデル、ダ-クーニャ-アルベス
(72)【発明者】
【氏名】ケリー、リベイロ、ド、ファリア、サントス
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB01
5G503BB05
5G503BB06
5G503DA07
5G503FA06
5G503GB03
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC21
5H125BC29
5H125BE02
5H125DD02
5H125EE51
5H125FF16
5H730AA18
5H730AS01
5H730AS05
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB27
5H730BB61
5H730CC04
5H730DD04
5H730EE03
5H730EE04
5H730EE13
5H730EE73
5H730FG22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自動車の高電圧バッテリーおよび低電圧バッテリーを充電および放電する電気自動車またはハイブリッド電気自動車の電気システムを提供する。
【解決手段】電気システム(1)は、三つの一次巻線、三つの第1の二次巻線および六つ三次巻線を備える多相変圧器(20)と、PFCコンバータ(10)に接続される三つの一次巻線を制御する第1の多相Hブリッジ(B1)を備えるLLC一次回路(12)と、第2の多相Hブリッジ(B2)を備え、第1のバッテリー(34)とのエネルギー交換を可能にするHVDC部(30)と、第2のバッテリー(44)とのエネルギー交換を可能にし、変圧器(20)の三次巻線を制御する整流器(41)を備えるLVDC部(40)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車またはハイブリッド電気自動車の電気システム(1)であって、前記電気システム(1)は、力率改善(PFC)コンバータ(10)に接続され、前記自動車の第1のバッテリー(34)および第2のバッテリー(44)を充電および放電するように構成され、前記第1のバッテリー(34)は、前記第2のバッテリー(44)よりも高い定格電圧を有し、前記電気システム(1)は、
一次巻線(P1、P2、P3)、第1の二次巻線(S1、S2、S3)、および三次巻線(T1a-T1b、T2a-T2b、T3a-T3b、またはT1、T2、T3)を備える変圧器(20)であって、多相変圧器である変圧器(20)と、
前記一次巻線(P1、P2、P3)を制御する第1の多相Hブリッジ(B1)を備えるLLC一次回路(12)であって、前記LLC一次回路(12)は、前記PFCコンバータに接続されるLLC一次回路(12)と、
前記第1のバッテリー(34)とのエネルギー交換を可能にするように、前記LLC一次回路(12)、前記第1の二次巻線(S1、S2、S3)、および前記第1のバッテリー(34)に結合されたHVDC部(30)であって、前記HVDC部(30)は、前記第1の二次巻線(S1、S2、S3)を制御するように構成された第2の多相Hブリッジ(B2)を備えるHVDC部(30)と、
前記第2のバッテリー(44)とのエネルギー交換を可能にするように、前記変圧器(20)の前記三次巻線および前記第2のバッテリー(44)に結合されたLVDC部(40)であって、前記LVDC部(40)は、前記変圧器(20)の前記三次巻線を制御するように構成された整流器(41)を備えるLVDC部(40)と
を備える、電気システム(1)。
【請求項2】
共振コンデンサ(Cr1、Cr2、Cr3)と、第1の磁化インダクタ(Lm1、Lm2、Lm3)と、前記変圧器(20)の前記一次巻線(P1、P2、P3)に結合された第1の共振インダクタ(Llkp1、Llkp2、Llkp3)とを備える第1の共振回路を備え、前記共振コンデンサ(Cr1、Cr2、Cr3)は、前記第1の多相Hブリッジ(B1)と前記共振インダクタ(Llkp1、Llkp2、Llkp3)との間に接続され、前記共振コンデンサ(Cr1、Cr2、Cr3)および前記共振インダクタ(Llkp1、Llkp2、Llkp3)は、前記一次巻線(P1、P2、P3)と直列であり、前記第1の共振回路は、多相共振回路であり、前記LLC一次回路(12)は、前記第1の共振回路の前記共振コンデンサ(Cr1、Cr2、Cr3)および前記第1の共振インダクタ(Llkp1、Llkp2、Llkp3)を備える、請求項1に記載の電気システム(1)。
【請求項3】
前記第1の二次巻線(S1、S2、S3)のうちの1つとそれぞれ直列の二次コンデンサ(Cs1、Cs2、Cs3)、第2の磁化インダクタ、および第2の共振インダクタ(Llks1、Llks2、Llks3)を備える第2の共振回路を備え、前記二次コンデンサ(Cs1、Cs2、Cs3)は、前記第1の二次巻線(S1、S2、S3)と前記第2の多相Hブリッジ(B2)との間に接続され、前記第2の共振回路は、多相共振回路であり、前記HVDC部(30)は、前記二次コンデンサ(Cs1、Cs2、Cs3)と、前記第2の共振インダクタ(Llks1、Llks2、Llks3)とを備え、前記第2の共振回路は、前記第1のバッテリー(34)を放電して前記PFCコンバータ(10)を充電するために利用される、請求項1または請求項2に記載の電気システム(1)。
【請求項4】
前記LVDC部(40)は、前記整流器(41)の出力に接続され、その入力からその出力まで電圧を降圧するように構成されたバックコンバータ(42)を備え、前記バックコンバータ(42)は、多相インターリーブ型バックコンバータであり、複数のスイッチ(BUCK_S1~BUCK_S6)と、インダクタ(Lb1、Lb2、Lb3)とを備え、前記インダクタ(Lb1、Lb2、Lb3)は、前記バックコンバータ(42)の前記スイッチと前記バックコンバータ(42)の出力との間に接続される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気システム(1)。
【請求項5】
前記整流器(41)は、前記変圧器(20)の前記三次巻線(T1a-T1b、T2a-T2b、T3a-T3b)のうちの1つにそれぞれ対応する複数の組のスイッチを形成する複数のスイッチ(SR_S1~SR_S6)を備え、前記三次巻線の各々は、2つの補助巻線で構成され、前記組のスイッチの各々は、2つのスイッチを備え、前記2つのスイッチの一方は、前記対応する三次巻線の第1の端子と前記整流器(41)のノードとの間に接続され、前記2つのスイッチの他方は、前記対応する三次巻線の第2の端子と前記整流器(41)の前記ノードとの間に接続され、前記三次巻線(T1a-T1b、T2a-T2b、T3a-T3b)の各々は、中点を有し、すべての前記中点は、前記整流器(41)の第2の出力端子に接続され、前記整流器(41)の第1の出力端子は、前記整流器(41)の前記ノードに接続される、請求項1から請求項4のいずれかに記載の電気システム(1)。
【請求項6】
前記整流器(41)は、前記変圧器(20)の前記三次巻線(T1、T2、T3)のうちの1つにそれぞれ接続された複数の組のスイッチを形成する複数のスイッチ(SR_S1~SR_S6)を備え、前記三次巻線の各々は、単一の巻線である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の電気システム(1)。
【請求項7】
第1の動作モードでは、前記電気システム(1)が前記PFCコンバータ(10)から前記第1のバッテリー(34)を充電するための車載充電器(OBC)として利用されるように構成され、前記バックコンバータ(42)は、停止される、請求項4から請求項6のいずれかに記載の電気システム(1)。
【請求項8】
第2の動作モードでは、前記電気システム(1)が前記第1のバッテリー(34)を充電するためのOBCとして利用されると同時に、前記第2のバッテリー(44)を充電するためのDC-DCコンバータとして利用されるように構成され、前記第1および前記第2のバッテリー(34、44)は、両方とも前記PFCコンバータ(10)から充電される、請求項4から請求項7のいずれかに記載の電気システム(1)。
【請求項9】
第3の動作モードでは、前記電気システム(1)が前記第1のバッテリー(34)を放電して前記第2のバッテリー(44)および前記PFCコンバータ(10)を同時に充電するために利用されるように構成され、前記バックコンバータ(42)は、停止される、請求項4から請求項8のいずれかに記載の電気システム(1)。
【請求項10】
第4の動作モードでは、前記電気システム(1)が前記第1のバッテリー(34)を放電して前記第2のバッテリー(44)を自律的に充電するように構成されたDC-DCコンバータとして利用されるように構成され、前記PFCコンバータから電流が流れず、前記第1の多相Hブリッジ(B1)は、停止される、請求項4から請求項9のいずれかに記載の電気システム(1)。
【請求項11】
第5の動作モードでは、前記電気システム(1)が前記第2のバッテリー(44)を放電して前記第1のバッテリー(34)を自律的に充電するように構成された逆DC-DCコンバータとして利用されるように構成され、前記電気システム(1)は、前記PFCコンバータ(10)と前記第1の多相Hブリッジ(B1)との間に接続されたDC-Linkコンデンサ(11)を備え、前記DC-Linkコンデンサ(11)は、電流振動を回避するために切断される、請求項4から請求項10のいずれかに記載の電気システム(1)。
【請求項12】
前記第1のバッテリー(34)は、60Vよりも大きい定格電圧を有する高電圧バッテリーであり、前記第2のバッテリー(44)は、60V以下の定格電圧を有する低電圧バッテリーである、請求項1から請求項11のいずれかに記載の電気システム(1)。
【請求項13】
前記一次巻線(P1、P2、P3)および前記二次巻線(S1、S2、S3)は、第1のサブ変圧器を形成するように結合され、前記一次巻線(P1、P2、P3)および前記三次巻線(T1a-T1b、T2a-T2b、T3a-T3b、またはT1、T2、T3)は、第2のサブ変圧器を形成するように結合され、前記二次巻線(S1、S2、S3)および前記三次巻線(T1a-T1b、T2a-T2b、T3a-T3b、またはT1、T2、T3)は、第3のサブ変圧器を形成するように結合される、請求項1から請求項12のいずれかに記載の電気システム(1)。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の電気システム(1)を備える、電気自動車またはハイブリッド電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車(EV)またはハイブリッド電気自動車(HEV)に利用される電気システムの分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、自動車の2つのバッテリーを充電および放電するように構成された電気システムに関し、バッテリーの一方は、他方よりも高い定格電圧を有する。
【背景技術】
【0003】
既知のように、電気自動車またはハイブリッド自動車両は、車載高電圧電気ネットワークを介して高電圧(HV)電源バッテリーによって給電される電気駆動システムと、車載低電圧電気ネットワークを介して低電圧(LV)電源バッテリーによって給電される複数の補助電気機器とを備える。したがって、高電圧バッテリーは、自動車の推進を可能にする電動システムへの電力供給を保証する。低電圧バッテリーは、車載電子制御ユニット(ECU)、窓リフトモータ、マルチメディアシステムなどの補助電気機器に給電する。高電圧バッテリーは、典型的には、100V~900V、好ましくは400V~600Vの電圧を送達し、低電圧バッテリーは、典型的には、約12V、24V、または48Vの電圧を送達する。
【0004】
一般に、電気/ハイブリッド自動車の電気システムは、異なる電源間のインターフェースとして作用し、高電圧および低電圧バッテリーを充電する2つの電力コンバータを備える。2つの電力コンバータは、車載電気充電器(OBC)と、DC-DCコンバータとを備える。OBCは、外部電力網(例えば家庭用ACグリッド)から交流(AC)電圧を収集し、AC電圧を高直流(DC)電圧に変換して高電圧バッテリーを充電するために利用される。一方、補助電源(APM)ともみなされるDC-DCコンバータは、高電圧バッテリーからの高電圧を低電圧に変換し、自動車の低電力アクセサリおよび低電圧バッテリーに供給を行うように構成される。
【0005】
一般に、電気システムのOBCおよびDC-DCコンバータは、2つの完全に独立した装置として自動車に搭載され、各々が個々のケーシングおよび個々の冷却システムを有する。それにもかかわらず、電気システムのコンパクトな設計、例えば自動車に搭載される電気システムの体積および重量の低減、電気システムの構成要素の数の低減に対する要求が高まっている。この目的のために、最近の市場ではいくつかの解決策が提案されている。
【0006】
解決策の1つは、同じケーシング内に独立したOBCおよびDC-DCコンバータを設置することであり、これによりそれらの両方が同じ冷却システムさらには同じ電磁両立性(EMC)フィルタを使用することが可能になる。しかし、そのような電気システムの体積および重量、ならびに構成要素(例えば、半導体、磁気回路、相互接続、およびプリント回路基板(PCB))の数は、依然として低減される必要がある。
【0007】
他の既知の解決策は、電気システムがより少ない構成要素を有することを可能にし得る。しかし、そのような電気システムは、バッテリーに供給される電流中のリップル、電力散逸、電気システムの特定の構成要素間のガルバニック絶縁の欠如、電気システムの構造設計に関するモジュール性の欠如などの重要な欠点を呈する。
【0008】
これに関連して、本発明の主な目的は、上述の欠点の少なくとも一部を克服しながら、自動車の高電圧バッテリーおよび低電圧バッテリーを充電および放電するように構成された電気システムを提供することである。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、電気自動車またはハイブリッド電気自動車の電気システムであって、電気システムは、力率改善(PFC)コンバータに接続され、自動車の第1のバッテリーおよび第2のバッテリーを充電および放電するように構成され、第1のバッテリーは、第2のバッテリーよりも高い定格電圧を有し、電気システムは、
【0010】
一次巻線、第1の二次巻線、および三次巻線を備える変圧器であって、変圧器は、多相変圧器である変圧器と、
【0011】
一次巻線を制御する第1の多相Hブリッジを備えるLLC一次回路であって、LLC一次回路は、PFCコンバータに接続されるLLC一次回路と、
【0012】
第1のバッテリーとのエネルギー交換を可能にするように、LLC一次回路、第1の二次巻線、および第1のバッテリーに結合されたHVDC部であって、HVDC部は、第1の二次巻線を制御するように構成された第2の多相Hブリッジを備えるHVDC部と、
【0013】
第2のバッテリーとのエネルギー交換を可能にするように、変圧器の三次巻線および第2のバッテリーに結合されたLVDC部であって、LVDC部は、変圧器の三次巻線を制御するように構成された整流器を備えるLVDC部と
を備える、電気システムに関する。
【0014】
したがって、本発明は、自動車の高電圧バッテリーおよび低電圧バッテリーを充電および放電するように構成されたモジュール式電気システムを提供する。
【0015】
一次巻線および二次巻線は、第1のサブ変圧器を形成するように結合され、一次巻線および三次巻線は、第2のサブ変圧器を形成するように結合され、二次巻線および三次巻線は、第3のサブ変圧器を形成するように結合される。
【0016】
一実施形態によれば、電気システムは、共振コンデンサと、第1の磁化インダクタと、変圧器の一次巻線に結合された第1の共振インダクタとを備える第1の共振回路を備え、共振コンデンサは、第1の多相Hブリッジと共振インダクタとの間に接続され、共振コンデンサおよび共振インダクタは、一次巻線と直列であり、第1の共振回路は、多相共振回路である。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、LLC一次回路は、第1の共振回路の共振コンデンサおよび第1の共振インダクタを備える。
【0018】
有利には、電気システムは、第1の二次巻線のうちの1つとそれぞれ直列の二次コンデンサ、第2の磁化インダクタ、および第2の共振インダクタを備える第2の共振回路を備え、二次コンデンサは、第1の二次巻線と第2の多相Hブリッジとの間に接続され、第2の共振回路は、多相共振回路である。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、HVDC部は、二次コンデンサと、第2の共振インダクタとを備え、第2の共振回路は、第1のバッテリーを放電してPFCコンバータを充電するために利用される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、LVDC部は、整流器の出力に接続され、その入力からその出力まで電圧を降圧するように構成されたバックコンバータを備える。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、バックコンバータは、多相インターリーブ型バックコンバータであり、複数のスイッチと、インダクタとを備え、インダクタは、バックコンバータのスイッチとバックコンバータの出力との間に接続される。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、整流器は、変圧器の三次巻線のうちの1つにそれぞれ対応する複数の組のスイッチを形成する複数のスイッチを備え、三次巻線の各々は、2つの補助巻線で構成され、組のスイッチの各々は、2つのスイッチを備え、2つのスイッチの一方は、対応する三次巻線の第1の端子と整流器のノードとの間に接続され、前記2つのスイッチの他方は、対応する三次巻線の第2の端子と前記整流器のノードとの間に接続される。
【0023】
有利には、三次巻線の各々は、中点を有し、すべての中点は、整流器の第2の出力端子に接続され、整流器の第1の出力端子は、整流器の前記ノードに接続される。
【0024】
有利には、整流器は、変圧器の三次巻線のうちの1つにそれぞれ接続された複数の組のスイッチを形成する複数のスイッチを備え、三次巻線の各々は、単一の巻線である。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、電気システムは、第1の動作モードでは、電気システムがPFCコンバータから第1のバッテリーを充電するための車載充電器として利用されるように構成され、バックコンバータは、停止される。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、電気システムは、第2の動作モードでは、電気システムが第1のバッテリーを充電するためのOBCとして利用されると同時に、第2のバッテリーを充電するためのDC-DCコンバータとして利用されるように構成され、第1および第2のバッテリーは、両方ともPFCコンバータから充電される。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、電気システムは、第3の動作モードでは、電気システムが第1のバッテリーを放電して第2のバッテリーおよびPFCコンバータを同時に充電するために利用されるように構成され、バックコンバータは、停止される。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、電気システムは、第4の動作モードでは、電気システムが第1のバッテリーを放電して第2のバッテリーを自律的に充電するように構成されたDC-DCコンバータとして利用されるように構成され、PFCコンバータから電流が流れず、第1の多相Hブリッジは、停止される。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、電気システムは、第5の動作モードでは、電気システムが第2のバッテリーを放電して第1のバッテリーを自律的に充電するように構成された逆DC-DCコンバータとして利用されるように構成され、電気システムは、PFCコンバータと第1の多相Hブリッジとの間に接続されたDC-Linkコンデンサを備え、DC-Linkコンデンサは、電流振動を回避するために切断される。
【0030】
有利には、第1のバッテリーは、60Vよりも大きい定格電圧を有する高電圧バッテリーであり、第2のバッテリーは、60V以下の定格電圧を有する低電圧バッテリーである。
【0031】
本発明はまた、上記で簡単に説明した電気システムを備える、電気自動車またはハイブリッド電気自動車に関する。
【0032】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、態様、および利点は、添付の図面と併せて、本発明の好ましい実施形態を開示する以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。
【0033】
本発明は、以下の説明を読み、非限定的な例として与えられた添付の図面を参照することによって、よりよく理解されるであろう。添付の図面では、同一の参照符号が同様の対象物に与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態による、AC/DC電圧変換およびバッテリーの充電のための電気システムを示す図である。
【
図2】
図1に示される電気システムの変圧器が共振インダクタおよび磁化インダクタを備えることを示す図である。
【
図3】
図1に示される電気システムの変圧器が共振インダクタも磁化インダクタも備えないことを示す図である。
【
図4】
図1に図示される実施形態とは異なる本発明の一実施形態による電気システムを示す図である。
【
図5】
図4に示される電気システムの変圧器が共振インダクタおよび磁化インダクタを備えることを示す図である。
【
図6】
図4に示される電気システムの変圧器が共振インダクタも磁化インダクタも備えないことを示す図である。
【
図7】本発明による電気システムの第1の動作モードを示す図である。
【
図8】本発明による電気システムの第2の動作モードを示す図である。
【
図9】本発明による電気システムの第3の動作モードを示す図である。
【
図10】本発明による電気システムの第4の動作モードを示す図である。
【
図11】本発明による電気システムの第5の動作モードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を、図面を参照して以下に詳述する。本開示から当業者には明らかなように、本発明のこれらの実施形態の以下の説明は例示のみを目的として提供され、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義される本発明を限定する目的では提供されない。
【0036】
本発明は、電気自動車またはハイブリッド電気自動車の電気システム1に関する。電気システム1は、自動車の2つのバッテリー34、44を充電および放電するように構成される。
図1は、本発明の一実施形態による電気システム1を示している。
【0037】
電気システム1は、力率改善コンバータ(PFC)部10と、変圧器20と、高電圧直流(HVDC)部30と、低電圧直流(LVDC)部40とを備える。電気システム1は、例えば220Vの電圧を送達するPFCコンバータ10の出力Gを通して外部電力網に接続され、外部電力網によって給電される。PFCコンバータ10は、AC/DCコンバータである。電気システム1は、
図7~
図11および関連する段落にそれぞれ示されている5つの動作モードを有する。
【0038】
変圧器20は、多相変圧器である。本文中の「多相」という用語は、相の数「n」を意味し、nは、3の倍数または2の倍数である。例えば、図に示される実施形態では、nは、3に等しい(すなわち「三相」)。変圧器20は、一次巻線P1~P3と、第1の二次巻線S1~S3と、三次巻線T1a-T1b、T2a-T2b、T3a-T3bとを備える。三次巻線の各々は、好ましくは2つの補助巻線で構成され、一次巻線のうちの1つおよび第1の二次巻線のうちの1つに対応する。例えば、
図1に示される実施形態では、補助巻線T1a、T1bは、一次巻線P1および第1の二次巻線S1に磁気的に結合される。あるいは、
図4に示されるように、三次巻線は、それぞれ単一の巻線T1、T2、T3とすることができ、(整流器41の)3つのハーフブリッジに接続され、これについては後の説明で詳細に説明される。
【0039】
さらに、三次巻線の各々は、特に、その対応する一次巻線とその対応する第1の二次巻線を結合する磁気コアの肢部の1つの周りを回る三次巻線を得ることによって、その対応する一次巻線およびその対応する第1の二次巻線と容易に一体化することができる。例えば、
図1(または
図4)に示される実施形態では、三次巻線T1a-T1b(またはT1)は、磁気コアの第1の肢部上の一次巻線P1および第1の二次巻線S1と一体化することができる。同様に、三次巻線T2a-T2b(またはT2)は、磁気コアの第2の肢部上の一次巻線P2および第1の二次巻線S2と一体化することができ、三次巻線T3a-T3b(またはT3)は、磁気コアの第3の肢部上の一次巻線P3および第1の二次巻線S3と一体化することができる。
【0040】
PFCコンバータ10は、DC-Linkコンデンサ11にそれぞれ接続された2つの出力端子Gと、DC-Linkコンデンサ11に接続されたLLC一次回路12とを備える。PFCコンバータ10は、AC-DCコンバータである。DC-Linkコンデンサ11は、出力端子Gと第1の多相HブリッジB1との間に接続される。LLC一次回路12は、変圧器20の一次巻線P1~P3を制御するように構成された第1の多相HブリッジB1を備える。第1の多相HブリッジB1は、好ましくは金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である複数の被制御スイッチLLC_S1~LLC_S6を備える。より正確には、第1の多相HブリッジB1は、
図1に示されるように、1対のスイッチでそれぞれ構成される3つのアームLLC_S1-LLC_S2、LLC_S3-LLC_S4、LLC_S5-LLC_S6を備える。
【0041】
電気システム1は、第1の多相HブリッジB1に結合された第1の共振回路を備える。第1の共振回路は、多相共振回路であり、共振コンデンサCr1~Cr3と、第1の共振インダクタLlkp1~Llkp3と、第1の磁化インダクタLm1~Lm3とを備える。一実施形態によれば、LLC一次回路12は、共振コンデンサCr1~Cr3と、第1の共振インダクタLlkp1~Llkp3とを備える。
【0042】
共振コンデンサCr1~Cr3は、第1の共振インダクタLlkp1~Llkp3と第1の多相HブリッジB1のアームのうちの1つとの間にそれぞれ接続される。第1の共振インダクタLlkp1~Llkp3は、変圧器20の一次巻線P1~P3のうちの1つにそれぞれ結合される。共振コンデンサCr1~Cr3および第1の共振インダクタLlkp1~Llkp3は、一次巻線P1~P3と直列である。一次巻線P1~P3のうちの1つにそれぞれ対応する第1の磁化インダクタLm1~Lm3は、それぞれ一次巻線P1~P3とは別個の構成要素であるか、あるいは、それぞれ一次巻線P1~P3のうちの1つの固有インダクタンスである。
【0043】
図2および
図5に示されるように、第1の共振インダクタLlkp1~Llkp3および第1の磁化インダクタLm1~Lm3は、変圧器20に一体化される。あるいは、
図3および
図6に示されるように、変圧器20は、第1の共振インダクタLlkp1~Llkp3も第1の磁化インダクタLm1~Lm3も備えない。
【0044】
HVDC部30は、第1のバッテリー34とのエネルギー交換を可能にするように、LLC一次回路12、第1の二次巻線S1~S3、および第1のバッテリー34に結合される。第1のバッテリー34は、高電圧(HV)バッテリーであり、「高電圧」は、60V、さらには80Vもしくは100Vよりも大きい、特に100V~900Vの電圧を意味する。第1のバッテリー34は、例えば400V程度の高電圧で給電される。HVDC部30は、LLC二次回路31を備える。LLC二次回路31は、二次コンデンサCs1~Cs3と、第2の多相HブリッジB2とを備える。二次コンデンサCs1~Cs3は、第1の二次巻線S1~S3と第2の多相HブリッジB2との間に接続される。
【0045】
LLC二次回路31は、第2の多相HブリッジB2によって制御される。第2の多相HブリッジB2は、好ましくはMOSFETトランジスタである複数の被制御スイッチREC_S1~REC_S6を備える。より正確には、第2の多相HブリッジB2は、
図1および
図4に示されるように、1対のスイッチでそれぞれ構成された複数のアームREC_S1~REC_S2、REC_S3~REC_S4、およびREC_S5~REC_S6を備える。二次コンデンサCs1~Cs3は、第1の二次巻線S1~S3のうちの1つ、および第2の多相HブリッジB2のアームのうちの1つとそれぞれ直列である。
【0046】
好ましい実施形態によれば、共振コンデンサCr1、Cr2、またはCr3の容量値と比較して、二次コンデンサCs1~Cs3は、各々が高い容量値、特に例えば少なくとも10倍大きい容量値を備える。二次コンデンサCs1~Cs3の容量値は、例えば、それぞれ3μF~100μFである。これにより、電気システム1のスイッチング周波数において無視できるインピーダンスを有することが可能になる。二次コンデンサCs1~Cs3の機能は、逆の動作、すなわち後述する第3および第4の動作モードにおいて変圧器の飽和を回避することである。
【0047】
加えて、電気システム1は、二次コンデンサCs1~Cs3と、第2の共振インダクタLlks1~Llks3と、好ましくは第2の磁化インダクタ(図示せず)とを備える第2の共振回路を備えることができる。第2の共振回路は、多相共振回路である。第2の共振インダクタLlks1~Llks3は、変圧器20の第1の二次巻線S1~S3のうちの1つとそれぞれ直列である。第2の磁化インダクタは、第1の二次巻線S1~S3のうちの1つにそれぞれ対応し、特に、第1の二次巻線S1~S3のうちの1つの固有インダクタンスにそれぞれ対応する。この第2の共振回路は、PFCコンバータを充電するために、すなわち後述する第3の動作モードで第1のバッテリー34を放電するために利用される。
【0048】
一実施形態によれば、第2の共振インダクタLlks1~Llks3(および場合によっては第2の磁化インダクタ)は、
図2および
図5に示されるように、変圧器20に一体化される。あるいは、変圧器20は、
図3および
図6に示されるように、第2の共振インダクタLlks1~Llks3も第2の磁化インダクタも備えない。
【0049】
別の実施形態によれば、変圧器20は、第1の共振インダクタLlkp1~Llkp3も第2の共振インダクタLlks1~Llks3も備えず、第1の磁化インダクタLm1~Lm3を備える。
【0050】
回路が第2の共振インダクタLlks1~Llks3を備える実施形態によれば、共振コンデンサCr1、Cr2、またはCr3の容量値と比較して、二次コンデンサCs1~Cs3は各々、同じ大きさの値を備える。
【0051】
好ましくは、HVDC部30は、逆スイッチ32と、出力EMCフィルタ33とをさらに備える。逆スイッチ32は、LLC二次回路31と出力EMCフィルタ33との間に接続され、OBCが誤動作した場合にHVDCバッテリーを保護するように構成される。EMCフィルタ33は、出力EMCフィルタ33と第1のバッテリー34との間に接続され、EMC要件に適合するように電力コンバータによって生成された高調波ノイズをフィルタリングするために利用される。
【0052】
LVDC部40に関して、LVDC部40は、第2のバッテリー44とのエネルギー交換を可能にするように、変圧器20の三次巻線および第2のバッテリー44に結合される。第2のバッテリー44は、低電圧(LV)バッテリーであり、「低電圧」は、60V以下、さらには48V、24V、または12V以下、特に8V~15.5Vの電圧を意味する。LVDC部40は、整流器41と、バックコンバータ42とを備える。LVDC部40は、好ましくはセンタータップ整流器である整流器41に接続される。
【0053】
整流器41は、変圧器20の三次巻線とバックコンバータ42との間に接続され、好ましくはMOSFETトランジスタである複数のスイッチSR_S1~SR_S6を備える。変圧器20のLV側における整流器41は、フルブリッジ整流器であってもよく、あるいは、半波整流器であってもよい。
図1に示される実施形態によれば、スイッチSR_S1~SR_S6は、三次巻線T1a-T1b、T2a-T2b、T3a-T3bのうちの1つにそれぞれ対応する複数の組のスイッチを形成する。組のスイッチの各々は、2つのスイッチを備え、2つのスイッチの一方は、対応する三次巻線の第1の端子と整流器41のノードとの間に接続され、前記2つのスイッチの他方は、三次巻線の第2の端子と整流器41のノードとの間に接続される。例えば、整流器41の第1の組のスイッチは、スイッチSR_S1およびSR_S2で構成され、三次巻線T1a-T1bに対応する。スイッチSR_S1は、三次巻線T1a-T1bの第1の端子と整流器41のノードとの間に接続される。第2のスイッチSR_S2は、三次巻線T1a-T1bの第2の端子と前記整流器41のノードとの間に接続される。同様に、整流器41の第2の組のスイッチは、スイッチSR_S3およびSR_S4で構成され、三次巻線T2a-T2bに対応する。スイッチSR_S3は、三次巻線T2a-T2bの第1の端子と整流器41のノードとの間に接続される。スイッチSR_S4は、三次巻線T2a-T2bの第2の端子と前記整流器41のノードとの間に接続される。整流器41の第3の組のスイッチは、スイッチSR_S5およびSR_S6で構成され、三次巻線T3a-T3bに対応する。スイッチSR_S5は、三次巻線T3a-T3bの第1の端子と整流器41のノードとの間に接続される。スイッチSR_S6は、三次巻線T3a-T3bの第2の端子と前記整流器41のノードとの間に接続される。三次巻線T1a-T1b、T2a-T2b、T3a-T3bの各々は、中点を有し、すべての中点は、整流器41の第2の出力端子に接続される。整流器41の第1の出力端子は、整流器41の前記ノードに接続される。
【0054】
整流器41のスイッチSR_S1~SR_S6がそれぞれダイオードである一実施形態では、ダイオードのカソードは、整流器41のノードに接続される。これらのダイオードは、例えば、それ自体既知のいわゆる「超高速」ダイオードである。しかし、スイッチSR_S1~SR_S6がMOSFETである実施形態と比較して、スイッチSR_S1~SR_S6がダイオードである実施形態は、電気システム1の効率、特に第2のバッテリー44を充電するための電圧変換効率を低下させる。加えて、一実施形態によれば、整流器41のスイッチSR_S1~SR_S6は、同期整流を実施することができる。特に、スイッチSR_S1~SR_S6を自己制御することができるため、導通損失を低減することができる。
【0055】
あるいは、
図4に示される実施形態によれば、三次巻線T1、T2、T3は、整流器41の3つのハーフブリッジに接続される。スイッチSR_S1~SR_S6は、三次巻線T1、T2、T3のうちの1つにそれぞれ接続された複数の組のスイッチを形成する。三次巻線T1は、スイッチSR_S1およびSR_S2で構成された第1の組のスイッチに接続される。同様に、三次巻線T2およびT3は、スイッチSR_S3、SR_S4で構成された第2の組のスイッチおよびスイッチSR_S5、SR_S6で構成された第3の組のスイッチにそれぞれ接続される。
【0056】
変圧器20および整流器41は、最終的に第2のバッテリー44を充電するためにバックコンバータ42に供給を行うことが可能である。バックコンバータ42は、その入力からその出力まで電圧を降圧するように構成されたDC-DCコンバータである。バックコンバータ42は、第2のバッテリー44に供給される8V~15.5Vの出力電圧(例えば12Vの出力電圧)を生成する。バックコンバータ42は、好ましくは必要とされる総電力に応じた相数の多相インターリーブ型バックコンバータ(例えば三相インターリーブ型バックコンバータ)であり、複数のスイッチBUCK_S1~BUCK_S6と、インダクタLb1~Lb3とを備える。スイッチBUCK_S1~BUCK_S6は、好ましくはMOSFETトランジスタであり、
図1に示されるように、インダクタLb1、Lb2、Lb3のうちの1つとそれぞれ直列の複数の対のスイッチを形成する。インダクタLb1~Lb3は、スイッチBUCK_S1~BUCK_S6とバックコンバータ42の出力との間に接続される。好ましくは、バックコンバータ42は、バックコンバータ42の入力における、またはバックコンバータ42の入力に接続されたコンデンサCbをさらに備える。
【0057】
好ましくは、LVDC部40のスイッチは、40Vおよび60VのパワーMOSFETである。一実施形態によれば、LVDC部40は、出力フィルタ43をさらに備える。出力フィルタ43は、バックコンバータ42と第2のバッテリー44との間に接続され、EMC要件に適合するように電力コンバータによって生成された高調波ノイズをフィルタリングするために利用される。加えて、LVDC部40は、電流中のリップルを低減し、前記電流の連続成分のみを維持するために、第2のバッテリー44に供給される電流をフィルタリングするように構成された少なくとも1つの二次インダクタを備えてもよい。一実施形態によれば、二次インダクタは、バックコンバータ42からの、第2のバッテリー44に供給される電流をフィルタリングするために出力フィルタ43内にある。
【0058】
図に示すように、EMCフィルタは、2段フィルタである。代替形態によれば、EMCフィルタは、例えばパイフィルタまたは単段フィルタであってもよい。
【0059】
一次巻線P1と第1の二次巻線S1との間の変圧比、および一次巻線P2と第1の二次巻線S2との間の変圧比、および一次巻線P3と第1の二次巻線S3との間の変圧比は、それぞれ1程度であり、PFC(DCリンクコンデンサで調節されたDC電圧に既に変換されている公共電源網など)から100Vを超える電圧、特に400V程度の電圧を第1のバッテリー34に提供する。それにもかかわらず、一次巻線P1または第1の二次巻線S1と三次巻線T1a-T1b(またはT1)との間の変圧比、および一次巻線P2または第1の二次巻線S2と三次巻線T2a-T2b(またはT2)との間の変圧比、および一次巻線P3または第1の二次巻線S3と三次巻線T3a-T3b(またはT3)との間の変圧比は、LVDC部40において100V未満、特に24V~48V、さらには12Vの電圧を得るように決定される。
【0060】
本発明による電気システム1は、
図7~
図11に示される以下の5つの動作モードのうちの少なくとも1つを実施するように構成される。
【0061】
したがって、電気システム1は、PFCと第1のバッテリー34との間の電気充電器として、および第1のバッテリー34と第2のバッテリー44との間のDC-DCコンバータとして作用することが可能であり、第1のバッテリー34は、第2のバッテリー44よりも高い定格電圧を有するように構成される。
【0062】
図7は、電気システム1の第1の動作モードを示しており、電気システム1は、PFCから第1のバッテリー34を充電するように構成された車載充電器(OBC)としてのみ利用される。電流は、
図7の方向D1に流れる。
【0063】
LLC一次回路12およびHVDC部30は、第1および第2の多相HブリッジB1、B2によってそれぞれ制御される。さらに、第1および第2の多相HブリッジB1、B2は、一次巻線P1~P3をその対応する第1の二次巻線S1~S3とそれぞれ結合することによって形成された第1の変圧器ユニットを制御するように構成される。共振コンデンサCr1~Cr3、第1の共振インダクタLlkp1~Llkp3、および第1の磁化インダクタLm1~Lm3は、第1の共振回路を形成する。
【0064】
第1の多相HブリッジB1のスイッチLLC_S1~LLC_S6は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作で制御される。一方、第2の多相HブリッジB2のスイッチREC_S1~REC_S6は、ゼロ電流スイッチング(ZCS)動作で制御される。バックコンバータ42のスイッチBUCK_S1~BUCK_S6は、開放されている。言い換えれば、バックコンバータ42は停止される。
【0065】
したがって、LLC一次スイッチング周波数は、第1のバッテリー34を充電するための電圧を調節するように修正される。電圧がLVDC部40の整流器41の出力に生成されるが、バックコンバータ42が停止しているため、第2のバッテリー44への電流はまだない。
【0066】
図8は、電気システム1の第2の動作モードを示しており、電気システム1は、第1のバッテリー34を充電するためのOBCとして利用されると同時に、第2のバッテリー44を充電するためのDC-DCコンバータとして利用される。第1および第2のバッテリー34、44は、両方ともPFCから充電される。電流は、
図8の2つの方向D2aおよびD2bにそれぞれ流れる。
【0067】
変圧器20の三次巻線および一次巻線P1~P3は、第2のバッテリー44に供給を行うための第2の変圧器ユニットを形成する。一次巻線S1~S3の各々とその対応する三次巻線との間の変圧比は、HVDC部30と比較して、LVDC部40内の電圧が低減されるように選択される。さらに、上述したように、LVDC部40の少なくとも1つの二次インダクタは、第2のバッテリー44に供給される電流をフィルタリングして電流中のリップルを低減する。
【0068】
第1および第2の多相HブリッジB1、B2は、第1のバッテリー34を充電するための第1の動作モードと同様に制御され、これにより電気システム1は、第1のバッテリー34を充電する主電源としての役割を果たすOBCとして機能することが可能である。一方、整流器41は、LVDC部40が第2のバッテリー44を充電する補助電力として機能するように、第1の動作モードとは異なる方法で制御される。このために、整流器41のスイッチSR_S1~SR_S6は、同期整流を実施するように制御される。バックコンバータ42は、整流器41の出力に接続され、電圧レベルを第2のバッテリー44を充電するための所望の電圧レベルに低下させる。
【0069】
第1の多相HブリッジB1のスイッチLLC_S1~LLC_S6は、ZVS動作で制御される。一方、第2の多相HブリッジB2のスイッチREC_S1~REC_S6は、ZCS動作で制御される。整流器41のスイッチSR_S1~SR_S6は、上述したように同期整流を実施し、必要に応じて、バックコンバータ42のスイッチBUCK_S1~BUCK_S6をオンまたはオフにそれぞれ強制的に切り替えるハードスイッチングが実施される。
【0070】
したがって、LLC一次スイッチング周波数は、第1のバッテリー34を充電するための電圧を調節するように修正される。16V~28Vの電圧がLVDC部40の整流器41の出力に生成され、次いでバックコンバータ42が作動されてLVDC電圧を8V~15.5Vに調節する。総電力は、AC側では7kW、DC側では11kWまたは22kWのサイズにすることができ、したがって総電力は第1のバッテリー34と第2のバッテリー44との間で共有される。
【0071】
図9は、電気システム1の第3の動作モードを示している。LLC一次回路12およびLLC二次回路31は対称に設計されているため、第3の動作モードは第2の動作モードと部分的に同様である。
【0072】
第3の動作モードでは、電気システム1は、第1のバッテリー34を放電してPFCコンバータ10および第2のバッテリー44を同時に充電するために利用される。言い換えれば、第1のバッテリー34からの電力は、PFCコンバータ10と第2のバッテリー44との間で共有される。電流は、
図9の2つの方向D3aおよびD3bにそれぞれ流れる。
【0073】
第1の多相HブリッジB1のスイッチLLC_S1~LLC_S6は、ZCS動作で制御される。一方、第2の多相HブリッジB2のスイッチREC_S1~REC_S6は、ZVS動作で制御される。バックコンバータ42のスイッチBUCK_S1~BUCK_S6は、開放されている。言い換えれば、バックコンバータ42は停止される。整流器41は、LVDC部40を補助電源として機能させ、第2のバッテリー44を充電することが可能である。このために、整流器41のスイッチSR_S1~SR_S6は、同期整流を実施するように制御される。必要に応じて、バックコンバータ42のスイッチBUCK_S1~BUCK_S6をオンまたはオフにそれぞれ強制的に切り替えるハードスイッチングが実施される。
【0074】
第2の動作モードと同様に、第3の動作モードにおけるLVDC部40は、好ましくは、電流中のリップルを低減し、前記電流の連続成分のみを維持するために、第2のバッテリー44に供給される電流をフィルタリングするように構成された少なくとも1つの二次インダクタを備える。
【0075】
したがって、LLC二次スイッチング周波数は、PFCコンバータ10における電圧を調節するように修正される。16V~28Vの電圧がLVDC部40の整流器41の出力に生成され、次いでバックコンバータ42が作動されてLVDC電圧を8V~15.5Vに調節する。
【0076】
図10は、電気システム1の第4の動作モードを示しており、電気システム1は、第1のバッテリー34を放電して第2のバッテリー44を自律的に充電するように構成されたDC-DCコンバータとしてのみ利用される。この機能は、補助電源(APM)としても知られている。電流は、
図10の方向D4に流れる。
【0077】
PFCコンバータ10には、電流が存在しない。
【0078】
第1の多相HブリッジB1は、停止される。第2の多相HブリッジB2は、第2のバッテリー44を充電するのに適切な電圧をLVDC部40に供給するように、デューティサイクル、例えば50%で制御される。第1の二次巻線S1~S3および変圧器20の三次巻線は、第3の変圧器ユニットを形成する。特に、バックコンバータ42は、整流器41の出力で得られ、変圧器20の三次巻線と第1の二次巻線S1~S3との間の変圧比に依存する電圧を、第2のバッテリー44に供給される所望の電圧に変換するために利用される。
【0079】
さらに、LVDC部40は、好ましくは、電流中のリップルを低減し、前記電流の連続成分のみを維持するために、第2のバッテリー44に供給される電流をフィルタリングするように構成された少なくとも1つの二次インダクタを備える。
【0080】
第1の多相HブリッジB1のスイッチLLC_S1~LLC_S6は、アクティブではない。一方、スイッチREC_S1~REC_S6は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作で制御される。整流器41のスイッチSR_S1~SR_S6は、同期整流を実施するように制御され、必要に応じて、バックコンバータ42のスイッチBUCK_S1~BUCK_S6をオンまたはオフにそれぞれ強制的に切り替えるハードスイッチングが実施される。
【0081】
LLC二次スイッチング周波数は、LVDC部40における電圧を調節するように修正され、次いでバックコンバータ42が作動されてLVDC電圧を8V~15.5Vに調節する。
【0082】
図11は、電気システム1の第5の動作モードを示しており、電気システム1は、第2のバッテリー44を放電して第1のバッテリー34を自律的に充電するように構成された逆DC-DCコンバータとして利用される。電流は、
図11の方向D5に流れる。
【0083】
電解コンデンサ内の電流振動を回避し、かつ寿命低下を防止するために、PFCコンバータ10のDC-Linkコンデンサ11を切断しなければならない。バックコンバータ42はインターリーブ昇圧となり、電力を変圧器20のLV側に供給する。次いで、前記電力はLLC二次回路31に伝達され、これによりHVDC部30のHVコンデンサを充電または予備充電し、次いで第1のバッテリー34を充電することが可能になる。LV電流を制限するためには、LV側でソフトスタートが必要である。
【0084】
加えて、上述のものとは異なる実施形態によれば、バックコンバータ42のインダクタLb1~Lb3は互いに結合されてもよく、あるいは互いに結合されなくてもよい。さらに、前述の実施形態では、バックコンバータ42は変圧器のLV側における三相インターリーブ型バックコンバータであるが、バックコンバータ42は、3相とは異なる数の相を有することができ、かつ/または電気システム1のHVDC部30に移動することができる。
【0085】
本発明による電気システム1は、1つの多相変圧器のみを使用するEVまたはHEV用の一体型OBC/DC-DCコンバータであり、追加の電圧コンバータを必要とせずに上述の5つの動作モードを提供する。独立したOBCおよび独立したDC-DCコンバータを備える従来の電気システムと比較して、電気システム1はより少ない構成要素を有し、これにより電気システム1は体積が小さくなり、より軽量とすることが可能になる。加えて、製造および組立コストが低減される。本発明は、例えば異なる電力レベル7kW、11kW、および22kW、ならびに例えば異なる電圧ネットワーク800V、24V、48Vに対してスケーラブルである。
【0086】
いくつかのその例示的な実施形態を参照して実施形態を説明したが、本開示の原理の趣旨および範囲内に入る多数の他の修正および実施形態が当業者によって考案され得ることを理解されたい。
【外国語明細書】