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▶ ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058677
(43)【公開日】2024-04-26
(54)【発明の名称】GPCピーク面積比を示すトナー粒子
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20240419BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240419BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
G03G9/08
G03G9/087 331
G03G9/097 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148501
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】石川 恵一
(72)【発明者】
【氏名】家田 修
(72)【発明者】
【氏名】寺田 明紀
(72)【発明者】
【氏名】團野 敬博
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500CA06
2H500EA13A
2H500EA14B
2H500EA33A
2H500EA44B
(57)【要約】      (修正有)
【解決手段】結着樹脂と、着色剤と、離型剤と、を含有するトナー粒子であって、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)により測定されたトナー粒子の分子量分布において、分子量が20,000未満におけるピーク面積に対する分子量が20,000以上におけるピーク面積のピーク面積比が5/95~21/79であり、トナー粒子は、変調示差走査熱量測定(MDSC)による2回目の昇温時に100℃~140℃の間にピークを示さない、トナー粒子。
【効果】低温定着性に優れたトナー粒子であり得る。また、オフセット耐性に優れたトナー粒子であり得る。また、耐熱保管性に優れたトナー粒子であり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と、
着色剤と、
離型剤と、を含有するトナー粒子であって、
ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)により測定された前記トナー粒子の分子量分布において、分子量が20,000未満におけるピーク面積に対する分子量が20,000以上におけるピーク面積のピーク面積比が5/95~21/79であり、
前記トナー粒子は、変調示差走査熱量測定(MDSC)による2回目の昇温時に100℃~140℃の間にピークを示さない、トナー粒子。
【請求項2】
前記結着樹脂が、120℃以上の軟化点を有する第1のポリエステル樹脂と、120℃未満の軟化点を有する第2のポリエステル樹脂とを含む、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項3】
前記第1のポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートとカルボン酸とジオールとの重縮合体である、請求項2に記載のトナー粒子。
【請求項4】
前記ジオールが芳香族ジオールのみからなる、請求項3に記載のトナー粒子。
【請求項5】
前記カルボン酸が、ペンダント基を有する2価カルボン酸又はその無水物、及び3価カルボン酸又はその無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項3に記載のトナー粒子。
【請求項6】
トナー粒子を含むトナーカートリッジであって、
ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)により測定された前記トナー粒子の分子量分布において、分子量が20,000未満におけるピーク面積に対する分子量が20,000以上におけるピーク面積のピーク面積比が5/95~21/79であり、
前記トナー粒子は、変調示差走査熱量測定(MDSC)による2回目の昇温時に100℃~140℃の間にピークを示さない、トナーカートリッジ。
【請求項7】
前記トナー粒子が、120℃以上の軟化点を有する第1のポリエステル樹脂と、120℃未満の軟化点を有する第2のポリエステル樹脂とを含む、請求項6に記載のトナーカートリッジ。
【請求項8】
前記第1のポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートとカルボン酸とジオールとの重縮合体である、請求項7に記載のトナーカートリッジ。
【請求項9】
前記ジオールが芳香族ジオールのみからなる、請求項8に記載のトナーカートリッジ。
【請求項10】
前記カルボン酸が、ペンダント基を有する2価カルボン酸又はその無水物、及び3価カルボン酸又はその無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項8に記載のトナーカートリッジ。
【請求項11】
トナー粒子を含む画像形成装置であって、
ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)により測定された前記トナー粒子の分子量分布において、分子量が20,000未満におけるピーク面積に対する分子量が20,000以上におけるピーク面積のピーク面積比が5/95~21/79であり、
前記トナー粒子は、変調示差走査熱量測定(MDSC)による2回目の昇温時に100℃~140℃の間にピークを示さない、画像形成装置。
【請求項12】
前記トナー粒子が、120℃以上の軟化点を有する第1のポリエステル樹脂と、120℃未満の軟化点を有する第2のポリエステル樹脂とを含む、請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記第1のポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートとカルボン酸とジオールとの重縮合体である、請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記ジオールが芳香族ジオールのみからなる、請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記カルボン酸が、ペンダント基を有する2価カルボン酸又はその無水物、及び3価カルボン酸又はその無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項13に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子写真法などの静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、様々な分野で利用されている。電子写真法においては、感光体表面を均一に帯電させた後、この感光体表面に静電荷像を形成し、トナー粒子を含む現像剤で静電潜像を現像することで、トナー像として可視化する。そして、このトナー像が記録媒体表面に転写され、定着することにより、画像が形成される。ここで用いられる現像剤としては、トナー粒子及びキャリアからなる2成分現像剤と、磁性トナー又は非磁性トナーを単独で用いる1成分現像剤とが知られている。
【発明を実施するための形態】
【0002】
以下、トナー粒子の一実施形態について説明する。一実施形態に係るトナー粒子は、結着樹脂と、着色剤と、離型剤とを含有する。
【0003】
一実施形態に係るトナー粒子は、5/95~21/79のGPCピーク面積比を示す。このGPCピーク面積比は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)により測定されたトナー粒子の分子量分布において、分子量が20,000未満におけるピーク面積Aに対する分子量が20,000以上におけるピーク面積Aのピーク面積比A/Aである。すなわち、GPCピーク面積比A/Aは、分子量20,000を基準としたときの低分子量成分の量に対する高分子量成分の量の比を表す。GPCピーク面積比A/Aは、実施例に記載の方法で測定される。
【0004】
GPCピーク面積比A/Aの下限値は、8/92、10/90、12/88、又は14/86であってもよい。GPCピーク面積比A/Aの上限値は、20/80、18/82、又は16/84であってもよい。
【0005】
一実施形態に係るトナー粒子は、変調示差走査熱量測定(MDSC)による2回目の昇温時に100℃~140℃の間にピークを示さない。当該ピークは、トナー粒子が結晶性を有している場合に現れるピークである。つまり、一実施形態に係るトナー粒子は、結晶性(結着樹脂の原料(例えばポリエチレンテレフタレート)に由来する結晶性)を有さないということもできる。変調示差走査熱量測定(MDSC)は、実施例に記載の方法で実施される。
【0006】
結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含んでよい。結着樹脂は、120℃以上の軟化点を有する第1のポリエステル樹脂(高軟化点のポリエステル樹脂)と、120℃未満の軟化点を有する第2のポリエステル樹脂(低軟化点のポリエステル樹脂)とを含んでよい。
【0007】
本明細書における軟化点は、フローテスター(例えば、定試験力押出形 細管式レオメータ「フローテスターCFT-500型」、島津製作所社製)を用いて測定される樹脂の流動曲線に基づくT1/2として定義される。軟化点(T1/2)は、実施例に記載の方法で測定される。
【0008】
第1のポリエステル樹脂の軟化点は、123℃以上、125℃以上、又は130℃以上であってもよく、160℃以下、155℃以下、150℃以下、又は145℃以下であってもよく、低温定着性、耐オフセット性及び耐熱保管性の点で更に優れる観点から、好ましくは、140℃以下又は135℃以下であってもよい。
【0009】
第2のポリエステル樹脂の軟化点は、118℃以下、115℃以下、又は110℃以下であってもよく、80℃以上であってもよく、低温定着性及び耐熱保管性の点で更に優れる観点から、好ましくは、85℃以上又は90℃以上であってもよい。
【0010】
第1のポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートとカルボン酸とジオールとの重縮合体であってよい。この場合、第1のポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートとカルボン酸とジオールと(以下、これらをまとめて「第1の重縮合成分」ともいう)をエステル化反応させることにより得られる。より具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレートにモノマー単位として含まれるエチレングリコールとアルコールとの間でエステル交換反応を生じさせると共に、カルボン酸の重縮合も生じさせることにより、第1のポリエステル樹脂を得ることができる。
【0011】
ポリエチレンテレフタレートの物性は特に制限されないが、一例として、ポリエチレンテレフタレートの数平均分子量(Mn)は、5,000以上、10,000以上、又は15,000以上であってよく、60,000以下、55,000以下、50,000以下、又は45,000以下であってよい。ポリエチレンテレフタレートは、リサイクルされたポリエチレンテレフタレートであってもよい。この場合、環境に配慮されたトナー粒子が提供され得る。
【0012】
ポリエチレンテレフタレートの量(仕込量)は、第1の重縮合成分の全量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、85質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下であってよい。
【0013】
カルボン酸は、多価カルボン酸又はその無水物であってよい。多価カルボン酸は、2価カルボン酸又はその無水物を含んでよい。2価カルボン酸としては、ペンダント基を有する2価カルボン酸、及びペンダント基を有さない2価カルボン酸が挙げられる。
【0014】
ペンダント基を有する2価カルボン酸は、二つのカルボキシル基を有する鎖を主鎖としたときに、当該主鎖から分岐している鎖(ペンダント基)を有している。ペンダント基は、鎖状の炭化水素基であってよく、アルキル基又はアルケニル基であってよい。ペンダント基の炭素数は、3以上、4以上、6以上、8以上、10以上、又は12以上であってもよく、30以下、28以下、26以下、24以下、22以下、20以下、18以下、16以下、14以下、又は12以下であってもよい。
【0015】
ペンダント基を有する2価カルボン酸としては、炭素数3以上のアルキル基を有するコハク酸、炭素数3以上のアルケニル基を有するコハク酸、炭素数3以上のアルキル基を有するアルキルビスコハク酸、及び炭素数3以上のアルケニル基を有するアルケニルビスコハク酸が挙げられる。当該2価カルボン酸としては、具体的には、例えば、オクチルコハク酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、テトラデシルコハク酸、ヘキサデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸、イソオクタデシルコハク酸、ヘキセニルコハク酸、オクテニルコハク酸、デセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、イソオクタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、及びノネニルコハク酸が挙げられる。
【0016】
ペンダント基を有さない2価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニルアセト酸、p-フェニレン-2-アセト酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニルアセト酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0017】
カルボン酸は、3価カルボン酸又はその無水物を含んでもよい。3価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、及びピレントリカルボン酸が挙げられる。
【0018】
カルボン酸は、2価カルボン酸又はその無水物、及び3価カルボン酸又はその無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、上述したMDSCのピークを示さないトナー粒子がより容易に得られる観点から、好ましくは、ペンダント基を有する2価カルボン酸又はその無水物、及び3価カルボン酸又はその無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。
【0019】
カルボン酸の量(仕込量)は、第1の重縮合成分の全量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、65質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下であってよい。
【0020】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂環式ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物などの芳香族ジオールが挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。ジオールは、好ましくは芳香族ジオールを含み、オフセット耐性及び耐熱保管性の点で更に優れる観点から、より好ましくは芳香族ジオールのみからなる(芳香族ジオール以外のジオールが含まれない)。
【0021】
ジオールの含有量は、第1の重縮合成分の全量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下であってよい。
【0022】
第2のポリエステル樹脂は、カルボン酸とジオールとの重縮合体であってよい。この場合、第2のポリエステル樹脂は、カルボン酸とジオールと(以下、これらをまとめて「第2重縮合成分」ともいう)をエステル化反応させることにより得られる。第2の重縮合成分は、ポリエチレンテレフタレートを更に含んでもよい。カルボン酸、ジオール及びポリエチレンテレフタレートの詳細は、第1のポリエステル樹脂について説明したのと同様である。
【0023】
第1のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、第2のポリエステル樹脂の重量平均分子量より大きい。第1のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、20,000以上、30,000以上、又は40,000以上であってよく、80,000以下、75,000以下、又は70,000以下であってよい。第2のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、5,000以上、6,000以上、又は7,000以上であってよく、30,000以下、20,000以下、又は15,000以下であってよい。第1及び第2のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定される。
【0024】
第1のポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の全量を基準として、2質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってよい。第2のポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の全量を基準として、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上であってよく、98質量%以下、90質量%以下、又は80質量%以下であってよい。
【0025】
トナー粒子における結着樹脂の含有量は、トナー粒子の全量を基準として、40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上であってよく、90質量%以下、85質量%以下、又は75質量%以下であってよい。
【0026】
着色剤は、例えば、ブラック着色剤、シアン着色剤、マゼンタ着色剤及びイエロー着色剤から選ばれる少なくとも1種の着色剤を含むことができる。着色剤は、色相、彩度、明度、耐候性、トナー内の分散性などを考慮して、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0027】
ブラック着色剤は、カーボンブラック又はアニリンブラックであってよい。イエロー着色剤は、縮合窒素化合物、イソインドリノン化合物、アントラキン化合物、アゾ金属錯体又はアリルイミド化合物であってよい。イエロー着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180などが挙げられる。
【0028】
マゼンタ着色剤は、縮合窒素化合物、アントラキン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物であってよい。マゼンタ着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254などが挙げられる。
【0029】
シアン着色剤は、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、又はアントラキン化合物などであってよい。シアン着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが挙げられる。
【0030】
着色剤の含有量は、トナー粒子の全量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってよい。
【0031】
離型剤としては、例えばワックスが挙げられる。ワックスは、天然ワックスであっても合成ワックスであってもよい。ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、シリコンワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、カルナバワックス、蜜蝋、及びメタロセンワックスが挙げられる。ワックスは、好ましくはエステルワックスであってよい。
【0032】
エステルワックスは、例えば、炭素数15~30の脂肪酸と炭素数10~30の一価アルコールとのエステルであってよく、炭素数15~30の脂肪酸と炭素数3~30の多価アルコールとのエステルであってもよい。エステルワックスとしては、例えば、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル、及びモンタン酸グリセリドが挙げられる。
【0033】
ワックスの融点は、60℃以上又は70℃以上であってよく、100℃以下又は90℃以下であってよい。
【0034】
ワックスの含有量は、トナー粒子の全量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、15質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下であってよい。
【0035】
トナー粒子は、必要に応じて、荷電制御剤を更に含有してもよい。荷電制御剤は、ネガ系荷電制御剤であってもポジ系荷電制御剤であってもよい。
【0036】
トナー粒子は、必要に応じて、無機微粒子を更に含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、及び酸化アルミニウム微粒子が挙げられる。
【0037】
トナー粒子は、例えばトナーカットリッジに収容されてよい。他の一実施形態は、上述したトナー粒子を含むトナーカートリッジである。トナー粒子は、トナーカートリッジ中の容器内に収容されていてよい。すなわち、トナーカートリッジは、トナー粒子を収容する容器を備えていてよい。
【0038】
トナー粒子は、例えば画像形成装置内で使用される。他の一実施形態は、上述したトナー粒子を含む画像形成装置である。画像形成装置は、例えば、感光体と、帯電装置と、感光体に対して静電潜像を形成する露光装置と、静電潜像に現像剤を塗布して現像する現像装置と、感光体上のトナー像を転写材に転写する転写装置と、を備えていてよい。
【実施例0039】
以下、実施例によってトナー粒子を更に詳細に説明するが、トナー粒子は実施例に限定されない。まず、実施例で測定した各特性の測定方法について説明する。
【0040】
(トナー粒子のMDSC測定)
トナー粒子0.01±0.005gをアルミパンに計量し、変調示差走査熱量計Q2000(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、30℃から昇温速度20℃/分で200℃まで昇温した。続いて、降温速度20℃/分で0℃まで冷却した。その後、25℃から再び昇温速度0.5℃/分で変調1℃、60秒にて200℃まで昇温し、この2回目の昇温時の熱流量を測定した。得られた熱流量曲線において、100℃における熱流量と140℃における熱流量とを結んだ直線(ベースライン)に対して、100℃~140℃において、ベースラインから熱流量の最大値までの距離(ベースラインにおける熱流量と熱流量の最大値との差)が1J/g未満であれば(言い換えれば、100℃~140℃において、ベースラインから熱流量の最大値までの距離(ベースラインにおける熱流量と熱流量の最大値との差)が1J/g以上となる温度がなければ)、100℃~140℃の間にピークが無いと判断した。
【0041】
(トナー粒子の分子量分布の測定)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、以下の方法でトナー粒子の分子量分布を測定した。
(1)試料溶液の調製
トナー粒子20mgを20ccスクリュー管に秤取り、THF10mLを入れ、アズワン ミックスローターバリアブル 1-1186-12にて4時間攪拌した。この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、得られた濾液を試料溶液として使用した。
(2)分子量測定
Waterse2695(日本ウォーターズ株式会社製)を測定装置として使用し、GLサイエンス社製カートリッジガードカラムEをホルダー(4.0×10mm×2)、昭和電工製KF-805L×2本+KF-800Dをカラムとして使用して、溶離液としてTHFを毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。続いて、試料溶液20μLを注入し、40℃、流速1.0mL/分の条件で測定を実施した。
トナー粒子の分子量は、予め作成した検量線に基づき算出した。検量線としては、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(5.0×10)、A-1000(1.01×10)、A-2500(2.63×10)、A-5000(5.97×10)、F-1(1.02×10)、F-2(1.81×10)、F-4(3.97×10)、F-10(9.64×10)、F-20(1.90×10)、F-40(4.27×10)、F-80(7.06×10)、F-128(1.09×10))を標準試料として3次式の検量線を用いた。
【0042】
(ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwの測定)
上記のトナー粒子の分子量分布の測定と同様にして、ポリエステル樹脂の分子量分布を測定し、得られた分子量分布からポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwを算出した。
【0043】
(ポリエステル樹脂の軟化点の測定)
各ポリエステル樹脂の軟化点を、フローテスター(定試験力押出形 細管式レオメータ「フローテスターCFT-500型」、島津製作所社製)を用いて測定した。具体的には、各ポリエステル樹脂1.0gを加圧成型し、直径1mm(長さ1mm)のノズルを具備した加熱シリンダに入れた後、ピストンを載せて98N(10kgf)の試験荷重を加えた。3.0℃/分の昇温速度で樹脂を加熱しながら、前記ノズルからの樹脂を押し出すようにして、樹脂の溶融流出量の関数であるピストン降下量を記録し、昇温法による樹脂の流動曲線を得た。流動曲線において、最初に変曲点(樹脂の熱膨張によりピストンが降下から僅かな上昇に転じる点)が現れた後、ピストンが再降下し始める変曲点Aにおけるピストン降下量Sminと、樹脂流出の終了点Bにおけるピストン降下量Smaxとを記録した。そして、変曲点Aと終了点Bとの中間点Cにおけるピストン降下量S1/2を下記式:
S1/2=Smim+(Smax-Smin)/2
により算出した。算出されたピストン降下量S1/2に対応する温度を、樹脂の軟化点T1/2とした。
【0044】
続いて、ポリエステル樹脂及びトナー粒子の製造方法について説明する。
【0045】
(第1のポリエステル樹脂RH1~RH4、及び第2のポリエステル樹脂RL3の製造)
表1に示す量のアルコールを及びポリエチレンテレフタレートと、エステル化触媒としてジブチルスズオキサイドまたはチタンラクテート等の有機チタンをアルコール及びポリエチレンテレフタレートの合計量に対して0.1から0.2重量%とを、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した1リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、215℃まで昇温し、2時間常圧で反応を行った。240℃に達したら8~100kPaの減圧下にて、樹脂中の水を留去させることでエステル化反応を行った。その後酸価を測定し目標に達したら真空を解除し200℃に降温する。200℃に達したら出来上がりの目標傘下になるようにTMAを添加し1時間酸付加反応を行い、高軟化点を有するポリエステル樹脂である第1のポリエステル樹脂RH1~RH4、及び低軟化点を有するポリエステル樹脂である第2のポリエステル樹脂RL3を得た。
【0046】
(第2のポリエステル樹脂RL1及びRL2の製造)
表1に示す量のアルコール及びカルボン酸と、エステル化触媒とを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した1リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、260℃で反応させ、低軟化点を有するポリエステル樹脂である第2のポリエステル樹脂RL1、RL2及びRL4を得た。
【0047】
得られた各ポリエステル樹脂について、上述した方法で重量平均分子量Mw及び軟化点T1/2を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1中の略称の意味は以下のとおりである。
BPA-2PO:ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(プロピレンオキサイド平均付加モル数=2.2)
BPA-2EO:ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(エチレンオキサイド平均付加モル数=2)
NPG:ネオペンチルグリコール
i-PhA:イソフタル酸
AdiA:アジピン酸
DDSA:ドデセニルコハク酸無水物
DimerAcid:ダイマー酸
TMA:トリメリット酸
PET:ポリエチレンテレフタレート(数平均分子量Mn:24,000)
【0050】
(トナー粒子の製造)
表2及び3に示す組成の各結着樹脂100質量部、着色剤としてカーボンブラック「MA-100」(三菱化学(株)製)10質量部、及び離型剤「WEP-5」(日油株式会社製、融点:83℃)7質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて予備混合した後、二軸混練機((株)池貝製、PCM-30)で混練した。ついで、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業(株)製、MDS-I)で分級し、体積中位粒子径(D50)が6.8μmのトナー粒子の粉体を得た。
【0051】
得られた実施例及び比較例の各トナー粒子について、上述した方法で分子量分布を測定し、得られた分子量分布から、分子量が20,000未満の低分子量領域におけるピーク面積Aに対する分子量が20,000以上の高分子量領域におけるピーク面積Aのピーク面積比A/Aを算出した。また、得られた実施例及び比較例の各トナー粒子について、上述した方法でMDSC測定を行い、2回目の昇温時の100℃~140℃の間におけるピークの有無を判断した。さらに、得られた実施例及び比較例の各トナー粒子について、以下の評価を実施した。結果を表2及び3に示す。
【0052】
<最低定着温度(MFT)の評価>
ベルトタイプ定着器(三星電子社製、カラーレーザ660モデル(商品名)の定着器)を使用して、100%ソリッドパターンのテスト用未定着画像を、60g紙(Boise社製、X-9(商品名))のテスト用紙に、定着速度160mm/秒、定着時間0.08秒の条件で定着させた。テスト用未定着画像の定着は、110℃から180℃の範囲における1℃間隔の各温度で行った。定着された画像の初期の光学密度を測定した。その後、画像部位に3M 810テープを付け、500gの錘を5回往復動させた後、テープを除去した。その後、テープ除去後の光学密度を測定した。以下の式:
定着性(%)=(初期の光学密度/テープ除去後の光学密度)×100
で求められる定着性が90%以上となる最も低い温度を最低定着温度(MFT、単位:℃)とした。MFTが低いほど低温定着性に優れている。
【0053】
<オフセット温度の評価>
ベルトタイプ定着器(三星電子社製、カラーレーザ660モデル(商品名))を使用して、100%ソリッドパターンのテスト用未定着画像を、60g紙(Boise社製、X-9(商品名))のテスト用紙に、定着速度160mm/秒、定着時間0.08秒の条件で定着させた。テスト用未定着画像の定着は、150℃から220℃の範囲における1℃間隔の各温度で行った。目視にてオフセットの有無を確認した。オフセットが発生する最も低い温度をオフセット温度(℃)とした。オフセット温度が高いほどオフセット耐性に優れている。
【0054】
<耐熱保管性の評価>
トナー粒子を温度50℃/湿度80RH%の環境下で100時間放置した後の凝集度を測定した。凝集度の測定には、POWDER TESTER(ホソカワミクロン社製、篩53,45,38μm)を使用した。上から53μm、45μm、38μmの順に篩を重ねてセットし、一番上の篩の上にトナー粒子2gを乗せ、篩を振動したときのそれぞれの篩に残ったトナーの質量を測定し(振幅1mm、振動時間40秒間)、下記式に従って凝集度を算出した。
凝集度=(M/2+M/2×(3/5)+M/2×(1/5))/100
式中、M:上段の篩に残ったトナー粒子の質量、M:中断の篩に残ったトナー粒子の質量、M:下段の篩に残ったトナー粒子の質量を表す。
算出された凝集度に応じて、以下の基準によって耐熱保管性を評価した。
S:凝集度が20%未満
A:凝集度が20%以上25%未満
B:凝集度が25%以上30%未満
C:凝集度が30%以上
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
上記で示されているように、一実施形態に係るトナー粒子は、低温定着性に優れたトナー粒子であり得る。また、他の一実施形態に係るトナー粒子は、オフセット耐性に優れたトナー粒子であり得る。また、他の一実施形態に係るトナー粒子は、耐熱保管性に優れたトナー粒子であり得る。
【0058】
以上、トナー粒子、トナーカートリッジ、画像形成装置等の様々な例について具体的に説明したが、特許請求の範囲の精神の範囲を逸脱しない範囲において種々の変形及び変更が可能であることは当業者にとって明らかである。すなわち、特許請求の範囲に記載した精神を逸脱しない範囲内において全ての変更が含まれることが意図される。