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特開2024-58681SDGs(持続可能な開発目標)に全体最適する育苗および植栽方法
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  • 特開-SDGs(持続可能な開発目標)に全体最適する育苗および植栽方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058681
(43)【公開日】2024-04-26
(54)【発明の名称】SDGs(持続可能な開発目標)に全体最適する育苗および植栽方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20240419BHJP
   A01G 9/08 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
A01G9/02 620Z
A01G9/08 610B
A01G9/02 603A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165929
(22)【出願日】2022-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】522405303
【氏名又は名称】鈴鹿シードリング協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】100103986
【弁理士】
【氏名又は名称】花田 久丸
(72)【発明者】
【氏名】杉村 秋治
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸康
(72)【発明者】
【氏名】藤方 利通
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NA10
2B327NB01
2B327NC02
2B327ND03
2B327SA22
(57)【要約】
【課題】植栽作業後に残る苗の梱包資材から出るプラスチック・ゴミを最少化するための「全体最適」の育苗および植栽方法が存在しない点である。
【解決手段】育苗現場では、生分解性の筒状容器中で玉竜(タマリュウ)を含む地被類の株分け生産植物の苗を育成し、その筒状容器に入った苗だけをまとめて軽量大型ネット袋に入れて植栽現場へ搬送し、植栽現場ではかさばるプラスチック・トレーではなく軽量大型ネット袋を作業者が容易に移動させながら、生分解性の筒状容器に入った苗を植栽し、植栽作業後は空の軽量大型ネット袋のみを小さくまとめて回収して、その植栽現場から回収した空の軽量大型ネット袋の束を育苗現場へ返送する、SDGs(持続可能な開発目標)に全体最適する育苗および植栽方法であることを最も主要な特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗現場で、プラスチック・トレーに入れた生分解性の筒状容器中で地被類の株分け生産植物の苗を育成する育苗ステップ(S1)と、
前記生分解性の筒状容器中で地被類の株分け生産植物の苗を目視検査した後に、前記プラスチック・トレーから良質苗を収納する生分解性の筒状容器のみを取出し、任意の数だけ軽量大型ネット袋へまとめて収納して出荷準備する良質苗選別ステップ(S2)と、
前記出荷準備した生分解性の筒状容器のみが入った軽量大型ネット袋を植栽現場へ搬送する搬送ステップ(S3)と、
植栽現場では前記軽量大型ネット袋を作業者が引きずって移動させながら、該軽量大型ネット袋に収納した生分解性の筒状容器に入った苗を、反転させずに生分解性の筒状容器のまま植栽する植栽ステップ(S4)と、
植栽作業後は植栽現場から空の前記軽量大型ネット袋のみを小さくまとめて回収する回収ステップ(S5)と、
植栽現場から回収した前記空の軽量大型ネット袋の束のみを植栽現場から育苗現場へ返送する返送ステップ(S6)で構成することで、育苗資材のリサイクル使用の促進と植栽現場での育苗資材ゴミの削減を図ることを特徴とするSDGs(持続可能な開発目標)に全体最適する育苗および植栽方法。
【請求項2】
前記地被類の株分け生産植物が、玉竜(タマリュウ)や、その他、芝桜、岩垂草(イワダレソウ)、ヘデラを含む地被類の株分け生産植物であることを特徴とする請求項1記載のSDGs(持続可能な開発目標)に全体最適する育苗および植栽方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、育苗現場での育苗資材のリサイクル使用の促進と、植栽現場での育苗資材ゴミの削減を図ることで、SDGsに全体最適する育苗および植栽方法に関する。すなわち育苗から植栽の個別ステップにおける部分最適ではなく全ステップを通して、育苗資材のリサイクル使用の促進と植栽現場での育苗資材ゴミの削減を図るために全体最適する育苗および植栽方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人の鈴鹿シードリング協同組合は、苗木等の本場である三重県鈴鹿市で草花苗と庭木苗の育苗業、および植栽現場での植栽業を行っている。育苗現場では一般には小さなプラスチック・ポットに苗を数本ずつ植え込み、図6(A)に示すようにこのポット苗をまとめてトレーで育苗する。一方、植栽現場では、育苗現場からポット苗を入れたトレーを多数搬入し、トレーに入れた多数のポットから1ポットずつ取り出して苗の移植を行う。なお植栽現場とは例えば高層建築物周辺の都市緑化や、その屋上緑化、更には広大な公共施設の公園やゴルフ場等を指称し、これ等の植栽現場ではグランドカバー用に図6(B)に示す玉竜(タマリュウ)や、その他、芝桜、岩垂草(イワダレソウ)、ヘデラを含む地被類の株分け生産植物の苗が広く植栽されている。植栽作業は、図6(C)に示すようにプラスチック・トレーから個々のプラスチック・ポットを取り出し、更にそのプラスチック・ポットから1ポットずつ苗を取り出して植え付ける。植え付け作業は、トレーに収納されていた時と比較すると約2倍の面積に間隔を置いて植えつけられる。従って多数のトレーに収納したポット苗を、育苗現場から植栽現場へ搬入して植え付ける必要がある。
【0003】
解決しようとする問題は、従来のプラスチック・ポット苗による植栽方法では以下のような問題点を有している点にある。すなわち現状では、1)根の活着を妨げるルーピングが少ない苗を育苗する有効な方法が見当たらず、2)更にプラスチック・トレーに配列された多数のポット苗から出荷前に良質苗のみを選別せずに全てのポット苗が出荷され、更にまた3)植栽現場では多くの育苗資材ゴミが残り資源の無駄となるばかりか、それ等の育苗資材ゴミの回収返送等の無駄な作業が多く存在していた。換言すると育苗ステップから植栽ステップに至る個々のステップでは多くの改良努力が既に払われてはいるが、全ステップを通してSDGsに全体最適する効率的な育苗および植栽方法が存在しないという問題が存在した。
【0004】
例えば200坪ほどの植栽現場、これは決して大きな現場ではないが、作業後に空のプラスチック・トレーとポットは、図6(D)のように極めて多数残される。この図では積み重ねられているため少なく見えるが実際は、見た目以上に大量の空のトレーとポットが広大な植栽現場には散乱して残る。通常であればこれ等の使用済トレーとポットは、再び育苗現場へ持ち帰り、再使用するものと廃棄するものに分別されることになる。ただし植栽現場が育苗現場から遠い場合には、この処理に大変困ることになる。理由は、再使用しようとして現場から持ち帰るにも手間と搬送コストがかかり、コスト的には合わないためである。また廃プラスチック素材として再利用しようとしても、これ等のトレーとポットに使われるプラスチックは、製造コストを下げるため素材レベルとしては、もともとリサイクルして再生使用が不可能な低レベルのプラスチック素材が用いられていることに起因する。そのため植栽現場近くのリサイクル業者はこれ等の育苗資材ゴミの引き取りを拒み、結果的に産業廃棄物として焼却する以外に処分方法は存在せず、これはSDGsの精神に反することとになり易い。つまり資源処理としては、「もったいない」ということになるのが現状である。
【0005】
これ等の諸問題を解決しようとする従来例をJ-PlatPat検索で検索すると多くの従来例にヒットするが、それ等の引例は単に限定された範囲、限定された育苗から植栽に至る個別ステップでの解決策を開示するのに止まり、SDGsに全体最適する全ステップにおける根本的な解決策を示すものではない。例えば実用新案登録第3228236号では、プラスチック・ポットの替わりに生分解性のポットを使用してプラスチック材の削減を図る構成を開示している。しかしながらその引例では、生分解性のポットを従来例の様にプラスチック・トレーに収納して植栽現場へ持ち込む前提である。すなわちこの引例では、植栽作業後の空のプラスチック・トレーの処理方法については何らの解決策を示さず、従って植栽現場では多くのプラスチック・トレーが残り、これ等はゴミとして処分されるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3228236号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は上述の様に育苗業界および植栽業界において、育苗ステップから植栽ステップに至る個々のステップではなく全ステップを通して、SDGsに全体最適する育苗および植栽方法が存在しないという課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、1)育苗現場では、プラスチック・ポットではなく生分解性の筒状容器中で玉竜(タマリュウ)を含む地被類の株分け生産植物の苗を育成し、2)その生分解性の筒状容器中で育成した苗を目視検査後に良質の苗のみを選別し、3)生分解性の筒状容器で育成した良質の苗のみをまとめて軽量大型ネット袋に入れて植栽現場へ搬送し、4)植栽現場ではかさばるプラスチック・トレーではなく軽量大型ネット袋を作業者が容易に移動させながら、生分解性の筒状容器に入った苗を植栽し、5)植栽作業後に残った空の軽量大型ネット袋のみを小さくまとめて回収し、6)そしてその植栽現場から回収した空の軽量大型ネット袋の束を育苗現場へ返送する、各ステップで構成する育苗および植栽方法であることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の育苗および植栽方法は、育苗現場では生分解性の筒状容器中で玉竜(タマリュウ)を含む地被類の株分け生産植物の苗を育成し、かつ目視確認後に良質の苗の入った生分解性の筒状容器だけを軽量大型ネット袋に入れて植栽現場へ搬送するため、従来のプラスチック・ポットのようにポット内で根がルーピングせず理想的な根鉢を形成できるだけでなく、環境に負荷が大きいプラスチックの使用を削減し、かつ搬送効率の向上に寄与することが出来る。また更に植栽現場では、軽量大型ネット袋を作業者が容易に移動させながら筒状容器に入った苗を植栽するので、作業者が楽に移植作業を行うことができ、かつ植栽作業後は空の軽量大型ネット袋のみを容易に回収して育苗現場へ返送または作業者が持ち帰ることが可能である。結果として本願発明に係る育苗および植栽方法は、育苗現場での育苗資材のリサイクル使用の促進と、植栽現場での育苗資材ゴミの削減を図ることが可能であり、今後世界が目指すSDGsの理念に合致する全体最適としての省資源社会を実現させることが可能となる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本願発明に係る、育苗現場での育苗資材のリサイクル使用の促進と植栽現場での育苗資材ゴミの削減を図る育苗および植栽方法を示すフローチャートである。
図2】(A)は本願発明の図1のステップ(S1)に示す生分解性の筒状容器で育苗した苗(右側)と、従来例に係るプラスチック・ポットで育苗した苗(左側)を示す写真である。(B)は生分解性の筒状容器で育苗する際に一本の苗を土壌中に挿入する際に使用するスリット付き移植ツールを示す写真と、(C)は従来例に係るプラスチック・ポットで育苗する時に問題となるルーピングした苗を示す写真である。
図3】本願発明の図1のステップ(S3)に示す軽量大型のネット袋に、ステップ(2)の目視確認後に良質の苗をまとめて入れて植栽現場へ搬送する際の出荷準備された荷姿を示す写真である。
図4】本願発明の図1のステップ(S4)に示す生分解性の筒状容器から苗を取出し、植栽作業を示す写真である。
図5】(A)は本願発明において使用された後に回収され、育苗現場へ返送する空の軽量大型のネット袋の束を示す写真である。
図6】(A)は従来例に係るプラスチック・トレーに収納したプラスチック・ポットを用いた育苗現場を示す写真である。(B)は従来例に係るプラスチック・ポットとプラスチック・トレーの写真である。(C)は従来例に係るプラスチック・トレーからプラスチック・ポットを取り出し、1ポットずつ植え付ける植栽作業の写真である。(D)は従来例に係る使用済の多量の空のプラスチック・トレーとプラスチック・ポットを積み上げた写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に育苗現場での育苗資材のリサイクル使用の促進、および植栽現場での効率的な植栽作業と育苗資材ゴミの削減を図るための「全体最適」として育苗および植栽方法について詳述する。なおここで述べる「全体最適」とは、単に各ステップにおける優位性を主張するものではなく、育苗から植栽の全ステップを通して産業上の利用価値が高い構成を指称する。
【0012】
図1は本願発明に係る育苗現場での育苗資材のリサイクル使用の促進と、植栽現場での育苗資材ゴミの削減を図る育苗および植栽方法を示すフローチャートである。まず育苗ステップ(S1)において、プラスチック・トレー内で図2(A)の右側に示すような生分解性の筒状容器内で玉竜(タマリュウ)や、その他、芝桜、岩垂草(イワダレソウ)、ヘデラを含む地被類の株分け生産植物の苗を育苗する。この生分解性の筒状容器内で育苗した苗は、植え穴が小さく、植付け作業が効率的に行うことが可能である。特に本願発明では図2(B)に示すように生分解性の筒状容器内の培養土中へ、スリット付き移植ツールを用いて株分け生産植物の子苗を植え付ける。すなわちこのスリット付き移植ツールのスリットに小苗の根っ子を収納させた後に、このスリット部を培養土中へ真下方向に挿入することで小苗の根っ子を生分解性の筒状容器内で真下方向へ植え付けることが容易となり、更に育苗作業の効率を向上させることが可能となる。またプラスチック・ポットの様に底面を有しない生分解性の筒状容器を本願発明では使用するため、図2(C)に示すようなプラスチック・ポット内で発生するルーピングを防止することが出来るという利点を有する。この様にスリット付き移植ツールを用いて真下方向に植え付けられた株分け生産植物の苗は、真下方向に植え付けられるためと底面を有しないために、生分解性の筒状容器内でルーピングが少ないため苗の活着率や初期成長に優れ、植栽可能期間が長いという利点も併せて有する。また従来例に係るプラスチック・ポットによる育苗と異なり、生分解性の筒状容器を使用するとプラスチックの廃棄量を減少させることが可能となり、環境に対する負荷を軽減させることが出来る利点を有する。更に従来のプラスチック・ポット苗を植栽現場に持ち込むと、植栽後に出る空のプラスチック・ポットの最終処分は現場では行えないため結局は育苗資材ゴミとして持ち帰る手間が無駄にかかる等の後始末の問題を有していたが、本願発明ではプラスチック・トレーやプラスチック・ポットは移植現場には持ち込まないので、こうした問題を予め解消させることもできる利点を有している。なおこの様な生分解性の筒状容器中で苗を生産するのは従来は植木業界のみで行われており、業界を異にする玉竜(タマリュウ)や、その他、芝桜、岩垂草(イワダレソウ)、ヘデラを含む地被類の株分け生産植物の育苗業界では実例はない。
【0013】
次に図1の良質苗選別ステップ(S2)では、育苗された玉竜(タマリュウ)や、その他、芝桜、岩垂草(イワダレソウ)、ヘデラを含む地被類の株分け生産植物の苗を収納した生分解性の筒状容器をプラスチック・トレーから1個ずつ取出し目視検査を行った後に、多数の生分解性の筒状容器をまとめて図3に示すような大型軽量ネット袋に収納して出荷準備がされる。この場合、プラスチック・トレーは育苗現場に残されるために再使用が可能であるばかりか、大型軽量ネット袋に収納された苗は搬送時の荷姿が小さく搬送コスト軽減が可能であるという利点を有する。もちろん大型軽量ネット袋の替わりに段ボール箱等の現場で最終処分し易い容器に入れて搬送してもよい。これに反し従来はプラスチック・トレーに収納されたプラスチック・ポットは目視検査されずに植栽現場へ持ち込むため、植栽現場での不良苗の処理と廃棄プラスチック等の育苗資材ゴミの処理に余分な労力が必要であったが、本願発明では現場へはその様な余分な資材は一切持ち込まないように構成した。
【0014】
次に図1の搬送ステップ(S3)では、良質の苗のみを収納した大型軽量ネット袋が植栽現場へ搬送される。なお1つの大型軽量ネット袋に収納する生分解性の筒状容器の数は、従来のプラスチック・トレーとは異なり作業者の体力に合わせて作業し易い数量だけを大型軽量ネット袋へ収納すればよい。この様に、特に体力の弱い高齢者の作業員に合わせて少な目の生分解性の筒状容器を大型軽量ネット袋に入れる等で、出荷荷姿を適宜決めることも可能である。
【0015】
次に図1の植栽ステップ(S4)では、搬送されてきた大型軽量ネット袋に収納されている生分解性の筒状容器を、そのままの状態で直接大型軽量ネットから一個ずつ植栽現場で取り出して苗の植付け作業が行われる。この場合作業者は広大な植栽現場で、従来のプラスチック・トレーとは異なり生分解性の筒状容器が多数収納された大型軽量ネット袋をいちいち持ち上げて移動しながら植え付けるのではなく、その大型軽量ネット袋を引きずるようにして移動させ、中に収納した生分解性の筒状容器の苗を一個ずつ取り出して植栽するので、疲れにくいという効果を得ることが出来る。またプラスチック・ポット苗とは異なりポットを上下反転させることなく、単に大型軽量ネット袋から一個ずつ筒状容器を取出し、図4に示すように簡便な穴あけ具で穿孔しながら植付け作業を進めることが出来る。この植付け作業では、穴あけ具は専用具を用いても、または図4に示すような現場で簡便に入手可能な端材等を利用した手作り用具を用いても構わない。重要な点はこの種の穴あけ具で穿孔してその中に本願発明に係る生分解性の筒状容器の苗を植え付けることで、根域が従来のポリポットよりコンパクトで良質になる点にある。そのため結果として植栽工事の経験が浅い作業者でも優良な根域を確保することが出来るばかりか、更に作業内容もプラスチック・トレーから個々のプラスチック・ポットを取出す必要はなく、また従来の様にプラスチック・ポットを反転させて苗を取り出す必要もないため、短時間で容易に植栽作業を進めることが出来るという植栽現場での利点を有する。この様に本願発明の植栽ステップ(S4)では、持ち運びにくいプラスチック・トレーとは異なり、1)大型軽量ネット袋を引きずりながら移動させるので作業者の移動負荷を軽減でき、2)取り出した生分解性の筒状容器内の苗は反転させずに短時間でそのまま植付け可能であり、3)さらに植付け後は、広大な植栽現場に散らばった空のプラスチック・トレーとポットを回収するための後処理は不要である、という植付け現場での作業上の利点を有する。これ等の利点は個々の動作では小さな利点に過ぎないかもしれないが、広大な植栽現場では全体としては作業者の負荷軽減上は大きな利点となり得る。
【0016】
そして図1のネット袋の資源回収ステップ (S5)では、植付け現場に散らばった空の大型軽量ネット袋のみを回収して、図5(A)の様に小さい荷姿でまとめられる。すなわち植栽現場に散らばった多数のプラスチック・トレーや膨大な数のプラスチック・ポットを一個ずつ回収して回る手間は不要であり、現場での後処理が極めて楽になるという利点を有する。その後、その小さくまとめた大型軽量ネット袋は返送ステップ(S6)で、再び育苗ステップ(S1)へ戻される。実際上は、この返送ステップ(S6)は作業者が小さくまとめた大型軽量ネット袋を作業後の帰車に積載して容易に回収可能であり、図5(B)や図6(D)に示す従来例のように非常に嵩張る使用後のプラスチック・トレーを広大な植栽現場から回収して処理する必要もないため、後処理が非常に軽減される利点を有する。換言すると植栽後の植栽現場に残るのは空の軽量のネット袋のみであり、ゴミは出ず、回収したネット袋は容易に回収でき、従来例のように残った多量のプラスチック・トレーとプラスチック・ポットを現場で再梱包する手間もかからない利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本件発明は、プラスチック・トレーやプラスチック・ポットを植栽現場へ持ち込まないので、これ等を無駄に廃棄する必要がなく、また植栽現場での作業員の作業負荷を軽減し、更にごみの排出を最少化することで資源の無駄遣いを防止できるため、育苗および植栽現場で「全体最適」としての省資源作業を実現させるSDGsの理念にも合致する利点を有する。これ等の改良点は従来例と比較すると極めて小さな改良の集積ではあるが、現場作業者の視点からは極めて大きな利点を有するのが実情である。


図1
図2
図3
図4
図5
図6