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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058692
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20240422BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F16F9/32 H
F16F9/46
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165938
(22)【出願日】2022-10-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴之
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC09
3J069EE38
(57)【要約】
【課題】付属機器をアウターチューブの外周に設置しても容易に製造できるとともに加工コストを低減可能なシリンダ装置を提供する。
【解決手段】本発明のシリンダ装置C1は、筒状であって径方向に貫通する孔8dを有するアウターシェル8とアウターシェル8内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド4とを有する伸縮ユニット1と、アウターシェル8の外周に装着されるとともに径方向に貫通する挿通孔20bを有する筒状のアダプタ20と、孔8dおよび挿通孔20bを介してアウターシェル8内に挿入されて伸縮ユニット1内に連通される第1接続通路21cを有してアダプタ20に保持される通路部材21と、第1接続通路21cに連通される液圧要素機器を有してアダプタ20に保持される付属機器とを備えて構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状であって径方向に貫通する孔を有するアウターシェルと、アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとを有する伸縮ユニットと、
前記アウターシェルの外周に装着されるとともに径方向に貫通する挿通孔を有する筒状のアダプタと、
前記孔および前記挿通孔を介して前記アウターシェル内に挿入されて、前記伸縮ユニット内に連通される第1接続通路を有して前記アダプタに保持される通路部材と、
前記第1接続通路に連通される液圧要素機器を有して、前記アダプタに保持される付属機器とを備えた
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記伸縮ユニットは、前記アウターシェル内に挿入されるとともに前記アウターシェルとの間にタンクを形成するシリンダを有し、
前記アウターシェルと前記アダプタとの間に形成される環状隙間と、前記アウターシェルに設けられて前記環状隙間と前記アウターシェル内とを連通する連通孔とを含んで形成される第2接続通路を備え、
前記第2接続通路を介して前記液圧要素機器が前記タンク内に連通される
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記アウターシェルは、外周に前記アダプタの一端に当接する環状凸部を有し、
前記アウターシェルの外周に装着されて前記アダプタの他端に当接する止め輪と、
前記アダプタの一端に取付けられるとともに前記環状凸部の割部分に挿入される金具と、
前記アダプタの他端に取り付けられて前記止め輪の外周に当接して前記止め輪の拡径を防止する環状のホルダとを備え、
前記環状凸部と前記止め輪とにより前記アウターシェルに対する前記アダプタの軸方向への移動を規制し、
前記環状凸部と前記金具とにより前記アウターシェルに対する前記アダプタの周方向への回転を規制する
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記アダプタは、外周に複数の平坦面を有し、
前記付属機器は、前記平坦面に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載シリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシリンダ装置にあっては、設置対象に利用されて設置対象の振動の抑制する目的で使用される。シリンダ装置としては、たとえば、鉄道車両に車体の進行方向に対して左右方向の振動を抑制すべく、車体と台車との間に介装されて使用されるものが知られている。
【0003】
このようなシリンダ装置は、鉄道車両の台車と、鉄道車両の車体下部に設けた中心ピンとの間に介装されて使用され、出力する減衰力或いは推力で鉄道車両の進行方向に対して横方向の車体の振動を抑制でき、鉄道車両における乗心地を向上させる。
【0004】
シリンダ装置は、たとえば、シリンダと、シリンダを覆ってシリンダとの間にタンクを形成するアウターチューブと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、シリンダ内に挿入されてピストンに連結されるロッドと、シリンダの一端とアウターチューブの一端とを閉塞するとともに内周にロッドが挿通されるロッドガイドと、シリンダの他端とアウターチューブの他端とを閉塞するボトムキャップと、ボトムキャップに保持されてロッド側室とタンクとを連通する通路と当該通路の途中に設けられる可変リリーフ弁とを有するバルブユニットとを備えている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-84841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなシリンダ装置では、ボトムキャップの端部に鉄道車両の車体に設置される中心ピンに連結可能なブラケットを備えており、バルブユニットがブラケットの至近に配置されるため、シリンダ装置を鉄道車両の台車と車体との間に設置する際にバルブユニットが邪魔になったり、バルブユニットが鉄道車両の部品と干渉したりする場合がある。
【0007】
このような事態を回避するには、バルブユニットをボトムキャップから遠ざければよいので、アウターチューブの外周にバルブユニットの台座を溶接によって取り付けて、バルブユニットをアウターチューブの外周に設置することが考えられる。
【0008】
しかしながら、アウターチューブにバルブユニットの台座を溶接して取り付けると、溶接によってアウターチューブおよび台座が歪んでしまうため、溶接加工後にアウターチューブおよび台座の歪みを切削その他の加工によって修正する必要があるとともに、ロッドガイドの固定に際してアウターチューブに螺子部を形成する場合があるが、螺子部を前記歪みの修正を行ってから加工する必要がある。
【0009】
よって、このようにアウターチューブにバルブユニット等のシリンダ装置の付属機器を取り付ける場合、溶接による歪みに対処しなくてはならず、シリンダ装置の製造工程が煩雑となるとともに加工コストが嵩んでしまう。
【0010】
そこで、本発明は、付属機器をアウターチューブの外周に設置しても容易に製造できるとともに加工コストを低減可能なシリンダ装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した目的を達成するため、本発明のシリンダ装置は、筒状であって径方向に貫通する孔を有するアウターシェルとアウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとを有する伸縮ユニットと、アウターシェルの外周に装着されるとともに径方向に貫通する挿通孔を有する筒状のアダプタと、孔および挿通孔を介してアウターシェル内に挿入されて伸縮ユニット内に連通される第1接続通路を有してアダプタに保持され通路部材と、第1接続通路に連通される液圧要素機器を有してアダプタに保持される付属機器とを備えて構成されている。
【0012】
このように構成されたシリンダ装置では、伸縮ユニットのアウターシェルの外周に嵌合されて装着されるアダプタによって付属機器が保持されて、通路部材を介して伸縮ユニット内に液圧要素機器を連通させるので、溶接によらずして付属機器を伸縮ユニットにおけるアウターシェルに装着できる。
【0013】
また、シリンダ装置における伸縮ユニットはアウターシェル内に挿入されるとともにアウターシェルとの間にタンクを形成するシリンダを有し、アウターシェルとアダプタとの間に形成される環状隙間とアウターシェルに設けられて環状隙間とアウターシェル内とを連通する連通孔とを含んで形成される第2接続通路を備え、第2接続通路を介して液圧要素機器がタンク内に連通されてもよい。
【0014】
このように構成されたシリンダ装置によれば、液圧要素機器が弁である場合には第2接続通路を通過してタンクへ移動する液体の流速を環状隙間によって低下させるので、タンク内の液体が気体を巻き込むのを抑制でき、液圧要素機器がポンプである場合には第2接続通路を通過してタンクから液体を吸い込むので付属機器のアウターシェルに対する周方向の設置位置によらず気体の吸込を防止できる。
【0015】
さらに、シリンダ装置は、アウターシェルが外周にアダプタの一端に当接する環状凸部を有し、アウターシェルの外周に装着されてアダプタの他端に当接する止め輪と、アダプタの一端に取付けられるとともに環状凸部の割部分に挿入される金具と、アダプタの他端に取り付けられて止め輪の外周に当接して止め輪の拡径を防止する環状のホルダとを備え、環状凸部と止め輪とによりアウターシェルに対するアダプタの軸方向への移動を規制し、環状凸部と金具とによりアウターシェルに対するアダプタの周方向への回転を規制してもよい。このように構成されたシリンダ装置によれば、アダプタに軸方向および回転方向の外力が作用しても、環状凸部と止め輪とがストッパとして機能するとともに環状凸部と金具とが回り止めとして機能して、外力を受け止めてアダプタをアウターシェルに不動にできるから、アダプタの挿通孔およびアウターシェル内に挿通される通路部材に外力を作用させずに済み、通路部材の劣化を防止できる。また、このように構成されたシリンダ装置によれば、ホルダによって止め輪の拡径が防止されるので、アダプタのアウターシェルからの脱落が阻止される。
【0016】
また、シリンダ装置におけるアダプタが外周に複数の平坦面を有し、付属機器が平坦面に取り付けられてもよい。このように構成されたシリンダ装置によれば、アダプタの外周に複数の平坦面を設けておくことで、アウターシェルの外周に複数の付属機器を設置できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシリンダ装置によれば、付属機器をアウターチューブの外周に設置しても容易に製造できるとともに加工コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施の形態におけるシリンダ装置の縦断面図である。
図2】第1の実施の形態におけるシリンダ装置の横断面図である。
図3】第1の実施の形態におけるシリンダ装置のアダプタ部分の一部拡大斜視図である。
図4】第2の実施の形態におけるシリンダ装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。第1の実施の形態におけるシリンダ装置C1は、図1に示すように、伸縮ユニット1と、アダプタ20と、通路部材21と、付属機器としてのバルブユニット22とを備えて構成されている。本実施の形態のシリンダ装置C1は、詳しくは図示しないが、鉄道車両の車体と台車との間に介装されており、伸縮時に発揮する減衰力によって車体の車両進行方向に対して水平横方向の振動を抑制する。なお、シリンダ装置C1は、鉄道車両以外を設置対象として利用されてもよい。
【0020】
以下、各部について詳細に説明する。伸縮ユニット1は、図1に示すように、シリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3に連結されるロッド4と、シリンダ2の外周側に配置されてシリンダ2との間にタンク7を形成する筒状のアウターシェル8とを備えている。
【0021】
シリンダ2は、筒状であって、その図1中右端に嵌合するバルブケース9によって閉塞されており、図1中左端には環状のロッドガイド10が取り付けられている。また、前記ロッドガイド10内には、シリンダ2内に移動自在に挿入されるロッド4が摺動自在に挿入されている。このロッド4は、一端がシリンダ2外へ突出されており、シリンダ2内の他端がシリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3に連結されている。このように、ロッド4は、シリンダ2内に軸方向へ移動可能に挿入されているので、シリンダ2の外周を覆うアウターシェル8内にも軸方向へ移動可能に挿入されている。また、ロッド4の他端には、鉄道車両における台車に設けられて取り付け部への取り付けを可能とするブラケット4aが設けられている。
【0022】
なお、ロッド4の外周とロッドガイド10との間は図示を省略したシール部材によってシールされており、これによりシリンダ2内は密閉状態に維持されている。また、シリンダ2内は、ピストン3によってロッド4が挿通されるロッド側室5とロッド4が挿通されないピストン側室6とに区画されている。これらロッド側室5とピストン側室6は、液体として、たとえば、作動油で充満されている。
【0023】
シリンダ2の外周側には、シリンダ2の外周を覆う筒状のアウターシェル8が設けられており、シリンダ2とアウターシェル8との間の環状隙間によって液体が貯留されるタンク7が形成されている。具体的には、タンク7には、液体として作動油が充填され、作動油の他に気体も充填されており、タンク7の圧力は略大気圧とされている。
【0024】
アウターシェル8は、図1に示すように、中間であってややボトム側となる図1中右方寄りに設けられた肉厚が他部よりも厚い厚肉部8aと、厚肉部8aの図1中右端に設けられたC形状の環状凸部8bと、厚肉部8aの図1中左端側に周方向に沿って設けられた環状溝8cと、厚肉部を径方向に貫通する孔8dと、孔8dと周方向に90度ずれた位置に設けられて肉厚を径方向に貫通する連通孔8e(図2参照)とを備えている。さらに、アウターシェル8の軸方向における厚肉部8aの孔8dおよび連通孔8eと環状凸部8bとの間、および、孔8dおよび連通孔8eと環状溝8cとの間には、シールリング30,31が装着されている。
【0025】
また、アウターシェル8の図1中左方の内周には、シリンダ2の外周に嵌合する環状のパイプホルダ11が収容されている。シリンダ2の図1中左端外周は、縮径されており、パイプホルダ11は、内周がシリンダ2の前記左端外周の縮径された部位に嵌合され、外周がアウターシェル8の内周に螺子結合されてアウターシェル8内に固定されている。また、アウターシェル8の図1中右端にはボトムキャップ12が取り付けられており、シリンダ2は、バルブケース9とともにパイプホルダ11とボトムキャップ12とによって挟持されてアウターシェル8内で固定されている。なお、パイプホルダ11は、軸方向に貫通する貫通孔11aを備えている。また、ボトムキャップ12の図1中右端には、鉄道車両における車体に設けられた図示しない取り付け部への取り付けを可能とするブラケット12aが設けられている。
【0026】
ロッドガイド10は、アウターシェル8の左端の内周に挿入されるとともに、図1中の右端から突出する環状の突出部10aをシリンダ2の図1中左端内周に嵌合させており、アウターシェル8の図1中左端の内周に螺着される環状のシールケース13とシリンダ2との間で挟持されてアウターシェル8内で固定されている。なお、ロッドガイド10は、突出部10aの側方からシリンダ2に当接する面にかけて形成されたパイプホルダ11の貫通孔11aに連通される切欠溝10bを備えている。
【0027】
ピストン3には、整流通路14が設けられている。整流通路14は、ピストン側室6とロッド側室5とを連通しており、途中に逆止弁14aを備えていて、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。また、バルブケース9には、吸込通路9aと吸込通路9aの途中に設けられた逆止弁9bが設けられている。吸込通路9aは、一端がピストン側室6に連通されており、他端がボトムキャップ12に設けられた切欠12bを介してタンク7内に連通されている。よって、吸込通路9aは、ピストン側室6とタンク7とを連通している。逆止弁9bは、タンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れのみを許容しており、吸込通路9aを一方通行の通路に設定している。
【0028】
アダプタ20は、筒状であってアウターシェル8の厚肉部8aの外周に嵌合してアウターシェル8に装着されている。アダプタ20は、図2に示すように、軸方向から見て矩形の2つの角部を斜めに切り落としてできる六角形状をしており、その一辺を付属機器であるバルブユニット22が取り付けられる平坦な取り付け面20aとしており、内周から径方向に貫通して取り付け面20aに開口する挿通孔20bを備えている。また、アダプタ20の内周であって軸方向の中央部分が拡径されてアダプタ20の内周に拡径部20cが形成されており、アダプタ20をアウターシェル8の厚肉部8aの外周に嵌合すると、アダプタ20とアウターシェル8との間に環状隙間Gが形成される。なお、挿通孔20bは、拡径部20cに開口している。なお、アダプタ20の外周形状は、少なくとも、後述する通路部材21および付属機器としてのバルブユニット22の取り付けが可能な形状であればよいので、前述した六角形に限られない。
【0029】
また、アダプタ20の図1中右端には、キー23aを備えた金具23がボルト24によって取り付けけられており、図3に示すように、キー23aがアウターシェル8の環状凸部8bの割部分8fをキー溝として挿入されることによって、アダプタ20のアウターシェル8に対する周方向への回転が規制されている。このように、本実施の形態では、キー23aを有する金具23と、アウターシェル8の外周に設けられた環状凸部8bとによって回り止めが構成されている。また、アダプタ20は、環状凸部8bの図1中左端面に当接しており、環状凸部8bに当接する位置からアウターシェル8に対して図1中右方への移動が規制されている。
【0030】
このようにアダプタ20がアウターシェル8に対して周方向および軸方向へ位置決めされると、アダプタ20の挿通孔20bは、アウターシェル8の孔8dに正対するとともに、アダプタ20の拡径部20cは、アウターシェル8の連通孔8eに対向して連通される。さらに、アダプタ20の内周面であって拡径部20cよりも図1中左方には、アウターシェル8の外周に装着されたシールリング30が対向して密着し、アダプタ20の内周面であって拡径部20cよりも図1中右方には、アウターシェル8の外周に装着されたシールリング31が対向して密着するので、アウターシェル8とアダプタ20との間がシールされる。
【0031】
そして、アダプタ20をアウターシェル8の厚肉部8aの外周に嵌合して前述のように図1中右方への移動が規制された状態で、アウターシェル8の環状溝8c内にC形の止め輪25を装着すると、止め輪25と環状凸部8bとがアダプタ20を軸方向で挟み込んでストッパとして機能し、アダプタ20はアウターシェル8に対して軸方向へ不動に固定される。また、アダプタ20は、金具23と環状凸部8bとによって周方向への回転が規制されるので、アウターシェル8に対して軸方向および周方向へ不動に固定されている。さらに、アダプタ20の図1中左端には、止め輪25の外周に当接して止め輪25を拘束して止め輪25の拡径を防止する環状のホルダ26がボルト27によって取り付けられている。ホルダ26は、図1中右端の内径が止め輪25の外周の嵌合が可能なように拡径されており、アダプタ20の図1中左端に取り付けられると止め輪25の外周に嵌合して止め輪25の外周を拘束して止め輪25の拡径を阻止する。よって、止め輪25に対してアダプタ20から図1中左方側へ押圧する外力が作用しても、ホルダ26によって、止め輪25の拡径が阻止されて止め輪25が環状溝8cから脱落することがないので、アダプタ20のアウターシェル8からの脱落が阻止される。
【0032】
通路部材21は、アダプタ20の取り付け面20aに対向する矩形のベースプレート21aと、ベースプレート21aの中央から突出するとともに先端側が大径な円柱状の軸21bと、ベースプレート21aの反アダプタ側の中央から開口して軸21b内を通って軸21bの先端部の側方へ開口する第1接続通路21cと、ベースプレート21aを図1中上下方向へ斜めに貫通して軸21bの小径な基端の近傍に開口する孔21dとを備えている。
【0033】
軸21bの先端の大径部分の外径は、アウターシェル8の孔8dの内径にほぼ等しく、軸21bの先端は、孔8dに嵌合できる。そして、通路部材21は、軸21bの先端をアダプタ20の挿通孔20bおよびアウターシェル8の孔8d内に挿入しつつベースプレート21aをアダプタ20の取り付け面20aに当接させると、軸21bの先端がアウターシェル8内に突出してタンク7内に挿入される。
【0034】
そして、ベースプレート21aをアダプタ20の取り付け面20aに当接した状態でベースプレート21aを貫通してアダプタ20に螺合するボルト28によって通路部材21は、アダプタ20に固定される。
【0035】
このように、通路部材21がアダプタ20に固定されると、軸21bの小径部位が挿通孔20bに径方向で対向して、軸21bと挿通孔20bを形成する内壁との間に隙間が形成される。よって、孔21dは、当該隙間を通じてアダプタ20の挿通孔20b内に連通されるとともに、アダプタ20とアウターシェル8との間の環状隙間Gおよび連通孔8eを介してタンク7に連通される。
【0036】
また、軸21bの先端は、前述のようにアウターシェル8内に突出している。そして、通路部材21の軸21bとパイプホルダ11とに架け渡されてタンク7内に収容されるパイプ29が設けられている。パイプ29は、一端を軸21bの先端の側部の第1接続通路21cの開口に嵌合させ、他端をパイプホルダ11の貫通孔11aの開口に嵌合させている。
【0037】
パイプホルダ11の貫通孔11aは、ロッドガイド10に形成された切欠溝10bによってシリンダ2内のロッド側室5に連通されているので、第1接続通路21cは、パイプ29内、貫通孔11aおよび切欠溝10bを介してシリンダ2内のロッド側室5に連通される。パイプ29とパイプホルダ11との間、パイプ29と軸21bとの間には、ぞれぞれ、符示しないシールリングが設けられており、第1接続通路21cとタンク7とが直接連通しないようになっている。
【0038】
付属機器としてのバルブユニット22は、通路部材21を介してアダプタ20に保持されるバルブハウジング40と、バルブハウジング40内に設けられる液圧要素機器としての可変リリーフ弁41と、可変リリーフ弁41の開弁圧を調整するソレノイド42とを備えている。
【0039】
バルブハウジング40は、通路部材21のベースプレート21aの反アダプタ側面に当接した状態でボルト43によって通路部材21に固定されている。よって、バルブハウジング40は、通路部材21を介してアダプタ20に固定されている。そして、バルブハウジング40は、一端が第1接続通路21cに連通されるとともに他端が孔21dに連通される流路40aを備えており、可変リリーフ弁41は、バルブハウジング40内であって流路40aの途中に設けられている。なお、本実施の形態では、バルブユニット22は、通路部材21を介してアダプタ20に連結されているが、たとえば、通路部材21のベースプレート21aを廃止して、バルブハウジング40に軸21bを保持させる構造を採用するようにしてバルブユニット22をアダプタ20に直接保持させるようにしてもよいし、付属機器であるバルブユニット22のバルブハウジング40に対して通路部材21を一体不可分に設ける構造を採用してもよい。このようにバルブハウジング40に対して通路部材21を一体不可分に設ける構造では、バルブハウジング40が通路部材21を兼ねることになる。
【0040】
可変リリーフ弁41は、流路40aを介して第1接続通路21cに連通されており、流路40aを開閉する弁体41aと、流路40aを遮断する方向へ弁体41aを付勢するばね41bと、流路40aを開放する方向へ圧力を作用させるパイロット通路41cとを備えている。流路40aは、第1接続通路21c、パイプ29内、貫通孔11aおよび切欠溝10bを介してロッド側室5に連通されるとともに、孔21d、環状隙間Gおよび連通孔8eを介してタンク7に連通されている。このように、孔21d、環状隙間Gおよび連通孔8eは、可変リリーフ弁41をタンク7へ連通する第2接続通路Pを構成している。そして、可変リリーフ弁41におけるパイロット通路41cは、弁体41aに対してロッド側室5の圧力を開弁方向に作用させている。
【0041】
ソレノイド42は、バルブハウジング40の図1中左端に取り付けられており、詳しくは図示しないが、プランジャ42aと、プランジャ42aを駆動するコイルと、コイルへの励磁時にプランジャ42aを吸引する固定鉄心と、コイルおよび固定鉄心を収容するフレーム42bとを備えている。そして、ソレノイド42は、通電時にプランジャ42aをフレーム42bから突出する方向へ駆動して可変リリーフ弁41の弁体41aにばね41bの付勢力に対抗して弁体41aを開弁方向へ押圧する推力を作用させる。ソレノイド42は、与えられる通電量に応じて推力を高低調整できる。また、ソレノイド42は、通電しない状態では、弁体41aに推力を与えない。
【0042】
よって、ソレノイド42は、通電量に応じて弁体41aに与える推力を高低調整できるので、可変リリーフ弁41の開弁圧を大小調整できる。本実施の形態の場合、可変リリーフ弁41は、ソレノイド42へ供給する電流量を最大とすると開弁圧を最小とし、ソレノイド42へ電流を供給しないと開弁圧を最大とする。よって、可変リリーフ弁41は、第1接続通路21cを介して連通される上流のロッド側室5の圧力をソレノイド42への通電量によって制御できる。なお、本実施の形態では、アダプタ20の取り付け面20aの隣の平坦な面にバルブユニット22におけるソレノイド42への通電量を制御するコントローラ100が搭載されている。アダプタ20の外周に複数の平坦面を設けておくことで、アウターシェル8の外周にバルブユニット22の他にもコントローラ100やその他の付属機器を複数設置することができる。
【0043】
シリンダ装置C1は、以上のように構成されており、以下にシリンダ装置C1の作動について説明する。まず、シリンダ装置C1の伸縮ユニット1が伸長する場合の作動を説明する。伸縮ユニット1が伸長作動すると、ピストン3がシリンダ2に対して図1中左方へ移動するので、ロッド側室5が縮小されるとともにピストン側室6が拡大される。この場合、整流通路14の途中に設けられた逆止弁14aは、ロッド側室5の圧力を受けて閉弁するため、縮小されるロッド側室5内の作動油は、第1接続通路21c、可変リリーフ弁41および第2接続通路Pを通過してタンク7へ向けて移動する。このような作動油の移動に対して可変リリーフ弁41によって抵抗が与えられるため、ロッド側室5の圧力は、タンク7よりも高い圧力であって可変リリーフ弁41の開弁圧に等しくなるように調整される。また、ピストン側室6は、ピストン3の移動によって容積が拡大して作動油が不足するが、この不足分の作動油は、逆止弁9bが開弁して吸込通路9aを介してタンク7からピストン側室6に供給される。よって、ピストン側室6の圧力は、ほぼタンク7の圧力と等しくなる。
【0044】
このように伸縮ユニット1の伸長作動時には、ピストン3のロッド側室側面に作用するロッド側室5の圧力がピストン3のピストン側室側面に作用するピストン側室6の圧力よりも高くなって、シリンダ装置C1は、伸縮ユニット1の伸長作動を妨げる伸側減衰力を発生する。また、シリンダ2内からロッド4が退出する体積分の作動油は、タンク7からピストン側室6に供給されて、シリンダ2内から退出するロッド4の体積補償がなされる。また、ソレノイド42へ供給する電流量に応じて可変リリーフ弁41の開弁圧を大小調整できるので、伸縮ユニット1の伸長作動時にシリンダ装置C1が発生する減衰力を高低調整できる。
【0045】
作動油は、可変リリーフ弁41を通過すると流速を速めて第2接続通路Pを通ってタンク7へ至るが、第2接続通路Pがアウターシェル8とアダプタ20との間の環状隙間Gを含んで形成されているため、作動油が環状隙間Gを通過する間に流速が遅くなる。よって、可変リリーフ弁41を通過した作動油が噴流となってタンク7内に排出されるのを防止され、タンク7内の作動油が気体を巻き込むのを抑制でき、シリンダ2内への気体の侵入を抑制してシリンダ装置C1の減衰力発生応答性を良好に保つことができる。
【0046】
また、連通孔8eがアウターシェル8の中間部分に設けられており、吸込通路9aに通じてタンク7からシリンダ2内に作動油を吸い込む吸込口となるボトムキャップ12の切欠12bと連通孔8eとがタンク7内で十分に離間しており、伸縮ユニット1の伸長作動時に気体の巻き込みの可能性のある可変リリーフ弁41を通過した直後の作動油をタンク7から吸込通路9aを介してシリンダ2内に吸い込まれるのを抑制できる。よって、本実施の形態のシリンダ装置C1では、シリンダ2内への気体の侵入をより効果的に抑制でき、シリンダ装置C1の減衰力発生応答性をより一層良好に保つことができる。なお、連通孔8eは、シリンダ装置C1を鉄道車両に設置した状態で油面から最も遠ざかるように最下方に位置するように設けられるとよい。
【0047】
つづいて、シリンダ装置C1の伸縮ユニット1が収縮する場合の作動を説明する。伸縮ユニット1が収縮作動すると、ピストン3がシリンダ2に対して図1中右方へ移動するので、ピストン側室6が縮小されるとともにロッド側室5が拡大される。この場合、吸込通路9aの途中に設けられた逆止弁9bがピストン側室6の圧力を受けて閉弁する一方で整流通路14の途中に設けられた逆止弁14aがピストン側室6の圧力を受けて開弁するので、縮小されるピストン側室6内の作動油は、整流通路14を介して拡大されるロッド側室5へ移動する。
【0048】
また、伸縮ユニット1の収縮作動時には、シリンダ2内にロッド4が侵入するため、シリンダ2内でロッド4がシリンダ2内に侵入する体積分の作動油が過剰となる。このシリンダ2内で過剰となる作動油は、第1接続通路21c、可変リリーフ弁41および第2接続通路Pを通過してタンク7へ向けて移動する。このような作動油の移動に対して可変リリーフ弁41によって抵抗が与えられるため、ロッド側室5の圧力は、タンク7よりも高い圧力であって可変リリーフ弁41の開弁圧に等しくなるように調整される。また、ピストン側室6は、整流通路14によってロッド側室5に連通された状態となるので、ピストン側室6の圧力とロッド側室5の圧力とはほぼ等しくなる。
【0049】
このように伸縮ユニット1の収縮作動時には、ピストン3のロッド側室側面に作用するロッド側室5の圧力とピストン3のピストン側室側面に作用するピストン側室6の圧力とがほぼ等しくなるが、ピストン3のロッド側室5の圧力を受ける受圧面積よりもピストン側室6の圧力を受ける受圧面積の方が大きいため、シリンダ装置C1は、収縮作動を妨げる圧側減衰力を発生する。また、シリンダ2内へロッド4が侵入する体積分の作動油は、シリンダ2内からタンク7へ排出されて、シリンダ2内へ侵入するロッド4の体積補償がなされる。このように、本実施の形態のシリンダ装置C1は、伸縮作動を呈すると減衰力を発生して、制振対象の振動を減衰させる緩衝器として機能する。
【0050】
なお、このシリンダ装置C1の場合、ロッド4の断面積をピストン3の断面積の二分の一にして、ピストン3のロッド側室側の受圧面積がピストン側室側の受圧面積の二分の一となるようになっている。よって、シリンダ装置C1の伸長時と収縮時とでシリンダ2内から可変リリーフ弁41を介してタンク7へ排出される作動油の流量が等しくなる。よって、シリンダ装置C1は、可変リリーフ弁41の開弁圧が同じであれば、伸長作動時と収縮作動時とでピストン3の移動速度が同じ場合に等しい減衰力を発揮できる。
【0051】
以上、本実施の形態のシリンダ装置C1は、筒状であって径方向に貫通する孔8dを有するアウターシェル8とアウターシェル8内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド4とを有する伸縮ユニット1と、アウターシェル8の外周に装着されるとともに径方向に貫通する挿通孔20bを有する筒状のアダプタ20と、孔8dおよび挿通孔20bを介してアウターシェル8内に挿入されて伸縮ユニット1内に連通される第1接続通路21cを有してアダプタ20に保持される通路部材21と、第1接続通路21cに連通される可変リリーフ弁(液圧要素機器)41を有してアダプタ20に保持されるバルブユニット(付属機器)22とを備えて構成されている。
【0052】
このように構成されたシリンダ装置C1では、伸縮ユニット1のアウターシェル8の外周に嵌合されて装着されるアダプタ20によってバルブユニット(付属機器)22が保持されて、通路部材21を介して伸縮ユニット1内に可変リリーフ弁(液圧要素機器)41を連通させるので、溶接によらずしてバルブユニット(付属機器)22を伸縮ユニット1におけるアウターシェル8に装着できる。
【0053】
前述のように、本実施の形態のシリンダ装置C1によれば、アウターシェル8にバルブユニット(付属機器)22を溶接せずに取り付けできるので、溶接加工後に必要であった歪みの修正加工が不要となって製造工程が簡素となる。以上より、本実施の形態のシリンダ装置C1によれば、バルブユニット(付属機器)22をアウターシェル8の外周に設置しても容易に製造できるとともに加工コストを低減できる。また、本実施の形態のシリンダ装置C1によれば、バルブユニット(付属機器)22をアウターシェル8の外周に設置できるので、鉄道車両の車体と台車との間のような狭い設置スペースにシリンダ装置C1を設置する際にバルブユニット(付属機器)22が邪魔にならず、バルブユニット(付属機器)22が設置対象の部品等へ干渉するのも回避できる。
【0054】
なお、本実施の形態では液圧要素機器は、可変リリーフ弁41とされているが、シリンダ装置C1が設置対象の振動を減衰させる緩衝器として機能させるうえでは通過する作動油の流れに抵抗を与える弁であればよく、たとえば、圧力制御弁や他の減衰弁であってもよく、付属機器は、液圧要素機器における前記抵抗の調整を行う場合にはソレノイド以外にも採用する弁に適するアクチュエータを備えてもよい。
【0055】
また、本実施の形態におけるシリンダ装置C1では、伸縮ユニット1がアウターシェル8内に挿入されるとともにアウターシェル8との間にタンク7を形成するシリンダ2を有し、アウターシェル8とアダプタ20との間に形成される環状隙間Gと、アウターシェル8に設けられて環状隙間Gとアウターシェル8内とを連通する連通孔8eとを含んで形成される第2接続通路Pを備え、第2接続通路Pを介して可変リリーフ弁(液圧要素機器)41がタンク7内に連通されている。
【0056】
このように構成されたシリンダ装置C1によれば、伸縮ユニット1内から可変リリーフ弁(液圧要素機器)41および第2接続通路Pを通過してタンク7へ移動する作動油(液体)の流速を環状隙間Gによって低下させるので、タンク7内の作動油(液体)が気体を巻き込むのを抑制でき、シリンダ2内への気体の侵入を抑制してシリンダ装置C1の減衰力発生応答性を良好に保つことができる。
【0057】
さらに、本実施の形態のシリンダ装置C1では、アウターシェル8が外周にアダプタ20の一端に当接する環状凸部8bを備え、アウターシェル8の外周に装着されてアダプタ29の他端に当接する止め輪25と、アダプタ20の一端に取付けられるとともに環状凸部8bの割部分8fに挿入される金具23と、アダプタ20の他端に取り付けられて止め輪25の外周に当接して止め輪25の拡径を防止する環状のホルダ26とを備え、環状凸部8bと止め輪25とによりアウターシェル8に対するアダプタ20の軸方向への移動を規制し、、環状凸部8bと金具23とによりアウターシェル8に対するアダプタ20の周方向への回転を規制する。
【0058】
このように構成されたシリンダ装置C1によれば、アダプタ20に軸方向および回転方向の外力が作用しても、止め輪25と環状凸部8bとがストッパとして機能するとともに、金具23と環状凸部8bとが回り止めとして機能して、前記外力を受け止めてアダプタ20をアウターシェル8に不動にできるから、アダプタ20の挿通孔20bおよびアウターシェル8の孔8dに挿通される通路部材21に前記外力を作用させずに済み、通路部材21の劣化を防止できる。さらに、このように構成されたシリンダ装置C1によれば、ホルダ26によって止め輪25の拡径が防止されるので、アダプタ20のアウターシェル8からの脱落が阻止される。なお、通路部材21の軸21bをアダプタ20の挿通孔20bおよびアウターシェル8の孔8dに嵌合させて通路部材21をアダプタ20の軸方向への移動を規制するストッパと周方向への回り止めとして利用することもできる。また、ストッパと回り止めは、前述した構成以外の構成で実現されてもよく、ストッパと回り止めの構成については適宜設計変更できる。
【0059】
また、本実施の形態のシリンダ装置C1では、アダプタ20が外周に取り付け面20aの他にも平坦面を有し、バルブユニット(付属機器)22の他にもコントローラ(付属機器)100が平坦面に取り付けられている。このように構成されたシリンダ装置C1によれば、アダプタ20の外周に複数の平坦面を設けておくことで、アウターシェル8の外周にバルブユニット22の他にもコントローラ100やその他の付属機器を複数設置することができる。
【0060】
前述したところでは、付属機器をバルブユニット22としているが、図4に示した第2の実施の形態のシリンダ装置C2のように、ポンプユニット50とされてもよく、この場合、シリンダ装置C2は、ポンプユニット50の駆動によって伸縮ユニット1を自ら伸縮駆動できるアクチュエータとして機能する。以下に、シリンダ装置C2の構成を説明するが、シリンダ装置C1と同じ部材については説明が重複するので同じ符号を付すのみとして詳しい説明を省略する。
【0061】
第2の実施の形態のシリンダ装置C2における伸縮ユニット1Aは、シリンダ装置C1における伸縮ユニット1の構成に加えて、パイプホルダ11とボトムキャップ12との間に架け渡されてタンク7内に収容される第2パイプ51と、ロッドガイド10およびパイプホルダ11とに設けられてロッド側室5を第2パイプ51の図4中左端の開口に連通する通路52と、ボトムキャップ12に設けられてボトムキャップ12の側方から開口して第2パイプ51の図4中右端の開口に連通する通路53と、バルブケース9およびボトムキャップ12に設けられてボトムキャップ12の側方から開口してピストン側室6に通じる通路54と、ボトムキャップ12に設けられてボトムキャップ12の側方から開口してタンク7内に通じる通路55とを備えている。また、アダプタ20には、環状隙間Gに連通されて取り付け面20aに開口する通路20dが設けられる。
【0062】
通路部材56は、円柱状であって基端側の外周にアダプタ20の挿通孔20bの内径よりも外径が大径なフランジ56aを備えている。そして、通路部材56の先端をアダプタ20の挿通孔20bとアウターシェル8の孔8dに挿通して、フランジ56aをアダプタ20の取り付け面20aに当接させると、通路部材56の先端がアウターシェル8内のタンク7に突出し、基端がアダプタ20の外へ向けて突出する。通路部材56は、基端から開口して先端の側部に通じる第1接続通路56bを備えている。そして、パイプ29の図4中右端が通路部材56の先端の側部の第1接続通路56bの開口に嵌合されており、第1接続通路56bはパイプ29、貫通孔11aおよび切欠溝10bを介してロッド側室5に連通されている。
【0063】
付属機器としてのポンプユニット50は、通路部材56の基端が嵌合されるハウジング50aと、ハウジング50a内に設けられて一端が第1接続通路56bに連通されるとともに他端がアダプタ20の通路20dに連通される流路50bと、ハウジング50a内であって流路50bの途中に設けられる液圧要素機器であるポンプ50cと、ハウジング50a内の流路50bのポンプ50cの吐出側に設けられる逆止弁50dと、ハウジング50aの図4中左端に取り付けられてポンプ50cを駆動するモータ50eとを備えている。
【0064】
流路50bは、第1接続通路21c、パイプ29内、貫通孔11aおよび切欠溝10bを介してロッド側室5に連通されるとともに、通路20d、環状隙間Gおよび図外の連通孔を介してタンク7に連通されている。なお、シリンダ装置C2における連通孔は、アウターシェル8に対して図2に示したシリンダ装置C1における連通孔8eと同じ位置に設けられている。液圧要素機器であるポンプ50cは、流路50bを介してロッド側室5内に連通されるとともにタンク7に連通される。逆止弁50dは、タンク7からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容し、流路50bを一方通行の通路に設定している。
【0065】
そして、モータ50eによってポンプ50cを駆動すると、ポンプ50cは、タンク7から作動油を吸い込んでロッド側室5へ作動油を供給する。なお、ポンプ50cは、ポンプユニット50の全体を小型にするためにギアポンプとされているが、ギアポンプ以外のポンプの利用も可能である。
【0066】
また、本実施の形態のシリンダ装置C2では、アクチュエータとして機能するために、ボトムキャップ12の側方にバルブユニット60が装着されている。バルブユニット60は、本例では、ボトムキャップ12の側面に開口する通路53と通路54とを連通させる第1通路61と、ボトムキャップ12の側面に開口する通路54と通路55とを連通させる第2通路62と、ボトムキャップ12の側面に開口する通路53と通路55とを連通させる排出通路63と、第1通路61を開閉可能な第1開閉弁64と、第2通路62を開閉可能な第2開閉弁65と、排出通路63に設けた可変リリーフ弁66とを備えている。
【0067】
第1通路61は、両端がバルブユニット60の図4中下端に開口しており、バルブユニット60をボトムキャップ12に装着すると、一端がロッド側室5に通じる通路53に、他端がピストン側室6に通じる通路54にそれぞれ連通される。よって、第1通路61は、ロッド側室5とピストン側室6とを連通している。
【0068】
第1開閉弁64は、本実施の形態では、電磁開閉弁とされており、第1通路61を開放してロッド側室5とピストン側室6とを連通する連通ポジションと、ロッド側室5とピストン側室6との連通を遮断する遮断ポジションとを備えている。そして、第1開閉弁64は、通電時に連通ポジションを採り、非通電時に遮断ポジションを採る。
【0069】
第2通路62は、両端がバルブユニット60の図4中下端に開口しており、バルブユニット60をボトムキャップ12に装着すると、一端がピストン側室6に通じる通路54に、他端がタンク7に通じる通路55にそれぞれ連通される。よって、第2通路62は、ピストン側室6とタンク7とを連通している。なお、第1通路61と第2通路62とは、通路54に通じる部分を互いに共有しあっているが、それぞれ独立して通路54に連通されてもよい。
【0070】
第2開閉弁65は、本実施の形態では、電磁開閉弁とされており、第2通路62を開放してピストン側室6とタンク7とを連通する連通ポジションと、ピストン側室6とタンク7との連通を遮断する遮断ポジションとを備えている。そして、第2開閉弁65は、通電時に連通ポジションを採り、非通電時に遮断ポジションを採る。
【0071】
排出通路63は、両端がバルブユニット60の図4中下端に開口しており、バルブユニット60をボトムキャップ12に装着すると、一端がロッド側室5に通じる通路53に、他端がタンク7に通じる通路55にそれぞれ連通される。よって、排出通路63は、ロッド側室5とタンク7とを連通している。なお、第1通路61と排出通路63とは、通路53に通じる部分を互いに共有しあっているが、それぞれ独立して通路53に連通されてもよい。また、第2通路62と排出通路63とは、通路55に通じる部分を互いに共有しあっているが、それぞれ独立して通路55に連通されてもよい。
【0072】
可変リリーフ弁66は、本実施の形態では、比例電磁リリーフ弁とされており、供給する電流量に応じて開弁圧を調節でき、電流量を最大とすると開弁圧を最小とし、電流を供給しないと開弁圧を最大とするようになっている。そして、可変リリーフ弁66は、ロッド側室5の圧力を開弁圧に調節でき、供給される電流量に応じてロッド側室5の圧力を制御できる。
【0073】
なお、本例では、ボトムキャップ12にバルブユニット60を装着して伸縮ユニット1とバルブユニット60とを一体化しているが、ロッドガイド10に適宜通路設けて、ロッドガイド10にバルブユニット60を装着してもよい。
【0074】
このように構成されたシリンダ装置C2では、伸縮ユニット1に図4中左へ押す方向の推力を発揮させる場合、第1開閉弁64を開弁させ、第2開閉弁65を閉弁させつつ、ポンプ50cを駆動するとともに可変リリーフ弁66への開弁圧をシリンダ装置C2に出力させたい推力となるように調節する。この状態では、ポンプ50cからロッド側室5へ作動油が供給されている状態であり、第2通路62が遮断されており、第1通路61がロッド側室5とピストン側室6とを連通する。シリンダ2内にポンプ50cから作動油が供給され、ロッド側室5とピストン側室6の圧力が可変リリーフ弁66の開弁圧に調節されるため、伸縮ユニット1は、ピストン3のロッド側室側とピストン側室側の受圧面積差に前記圧力を乗じた値の左向きの力を発生する。そして、シリンダ装置C2は、ロッド側室5とピストン側室6の圧力を可変リリーフ弁66で調節できるので、伸縮ユニット1に自ら伸長する方向の推力を発揮させるとともに、この推力を制御できる。
【0075】
他方、伸縮ユニット1に図4中右へ押す方向の力を発揮させる場合、第1開閉弁64を閉弁させ、第2開閉弁65を開弁させつつ、ポンプ50cを駆動するとともに可変リリーフ弁66への開弁圧をシリンダ装置C2に出力させたい推力となるように調節する。この状態では、第1通路61が遮断されているのでポンプ50cからロッド側室5のみに作動油が供給され、第2通路62によってピストン側室6とタンク7とが連通される。ロッド側室5にポンプ50cから作動油が供給されるとともにロッド側室5の圧力が可変リリーフ弁66の開弁圧に調節される一方で、ピストン側室6の圧力はタンク圧となる。よって、伸縮ユニット1は、タンク圧を0と看做せば、ロッド側室5の圧力にピストン3のロッド側室側の受圧面積を乗じた値の右向きの推力を発生する。そして、シリンダ装置C2は、ロッド側室5の圧力を可変リリーフ弁66で調節できるので、伸縮ユニット1に自ら収縮する方向の推力を発揮させるとともに、この推力を制御できる。
【0076】
また、シリンダ装置C2では、ポンプ50cを停止した状態で、第1開閉弁64を開弁させて第2開閉弁65を閉弁させると、ロッド側室5とピストン側室6との間での作動油の移動は何ら制限されず相互の行き来が可能となるが、ピストン側室6とタンク7との間での作動油の移動は吸込通路9aを通じてタンク7からピストン側室6へ向かう移動のみに制限される。この状態では、伸縮ユニット1が伸長する場合には作動油は可変リリーフ弁66を通過しなくなってシリンダ2内がタンク圧となるので、シリンダ装置C2は伸縮ユニット1の伸長を妨げる減衰力を発生しない。反対に、伸縮ユニット1が収縮する場合には、ロッド4がシリンダ2内に侵入する体積分の作動油が可変リリーフ弁66を通過してタンク7へ移動するため、シリンダ装置C2は可変リリーフ弁66の開弁圧に応じて伸縮ユニット1の収縮を妨げる減衰力を発生する。よって、ポンプ50cを停止した状態では、第1開閉弁64を開弁させて第2開閉弁65を閉弁させると、シリンダ装置C2は、伸縮ユニット1が収縮する場合にのみ減衰力を発生する片効きのダンパとして機能する。
【0077】
さらに、シリンダ装置C2では、ポンプ50cを停止した状態で、第1開閉弁64を閉弁させて第2開閉弁65を開弁させると、ロッド側室5とピストン側室6との間での作動油の移動は整流通路14を通じてピストン側室6からロッド側室5への向かう移動のみに制限されるが、ピストン側室6とタンク7との間での作動油の移動は何ら制限されず相互の行き来が可能となる。この状態では、伸縮ユニット1が収縮する場合には作動油は可変リリーフ弁66を通過しなくなってシリンダ2内がタンク圧となるので、シリンダ装置C2は伸縮ユニット1の収縮を妨げる減衰力を発生しない。反対に、伸縮ユニット1が伸長する場合には、ロッド側室5の容積減少に見合った体積の作動油が可変リリーフ弁66を通過してタンク7へ移動するため、シリンダ装置C2は可変リリーフ弁66の開弁圧に応じて伸縮ユニット1の伸長を妨げる減衰力を発生する。よって、ポンプ50cを停止した状態では、第1開閉弁64を閉弁させて第2開閉弁65を開弁させると、シリンダ装置C2は、伸縮ユニット1が伸長する場合にのみ減衰力を発生する片効きのダンパとして機能する。
【0078】
また、シリンダ装置C2は、ポンプ50cを停止し、第1開閉弁64および第2開閉弁65をともに閉弁させると、伸縮ユニット1が伸長しても収縮しても、シリンダ2内から作動油が可変リリーフ弁66を通じてタンク7へ移動する。よって、この場合、シリンダ装置C2は可変リリーフ弁66の開弁圧に応じて伸縮ユニット1の伸縮を妨げる減衰力を発生する。よって、ポンプ50cを停止し、第1開閉弁64および第2開閉弁65をともに閉弁させると、シリンダ装置C2は、伸縮ユニット1が伸長しても収縮しても減衰力を発生する両利きのパッシブダンパとして機能する。さらに、シリンダ装置C2は、ポンプ50cを停止し、第1開閉弁64および第2開閉弁65をともに開弁させると、ロッド側室5、ピストン側室6およびタンク7が可変リリーフ弁66を介さずに連通されるため、伸縮ユニット1が伸長しても収縮しても減衰力を発生しないアンロード状態となる。
【0079】
以上、本実施の形態のシリンダ装置C2は、筒状であって径方向に貫通する孔8dを有するアウターシェル8とアウターシェル8内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド4とを有する伸縮ユニット1と、アウターシェル8の外周に装着されるとともに径方向に貫通する挿通孔20bを有する筒状のアダプタ20と、孔8dおよび挿通孔20bを介してアウターシェル8内に挿入されて伸縮ユニット1内に連通される第1接続通路21cを有してアダプタ20に保持される通路部材21と、第1接続通路21cに連通されるポンプ(液圧要素機器)50cを有してアダプタ20に保持されるポンプユニット(付属機器)50とを備えて構成されている。
【0080】
このように構成されたシリンダ装置C2では、伸縮ユニット1のアウターシェル8の外周に嵌合されて装着されるアダプタ20によってポンプユニット(付属機器)50が保持されて、通路部材56を介して伸縮ユニット1内にポンプ(液圧要素機器)50cを連通させるので、溶接によらずしてポンプユニット(付属機器)50を伸縮ユニット1におけるアウターシェル8に装着できる。
【0081】
前述のように、本実施の形態のシリンダ装置C2によれば、アウターシェル8にポンプユニット(付属機器)50を溶接せずに取り付けできるので、溶接加工後に必要であった歪みの修正加工が不要となって製造工程が簡素となる。以上より、本実施の形態のシリンダ装置C2によれば、ポンプユニット(付属機器)50をアウターシェル8の外周に設置しても容易に製造できるとともに加工コストを低減できる。また、本実施の形態のシリンダ装置C2によれば、ポンプユニット(付属機器)50をアウターシェル8の外周に設置できるので、ボトムキャップ12にポンプユニット(付属機器)50とバルブユニット60とを取り付ける場合に比較して、鉄道車両の車体と台車との間のような狭い設置スペースにシリンダ装置C2を設置する際にポンプユニット(付属機器)50が邪魔にならず、ポンプユニット(付属機器)50が設置対象の部品等へ干渉するのも回避できる。
【0082】
なお、前述したシリンダ装置C2では、ポンプユニット50を付属機器としてアダプタ20を介してアウターシェル8の外周に取り付けているが、バルブユニット60も付属機器としてアダプタ20を介してアウターシェル8の外周に取り付けてもよいし、バルブユニット60を付属機器としてアダプタ20を介してアウターシェル8の外周に取り付けておき、ポンプユニット50についてボトムキャップ12或いはロッドガイド10に取り付ける態様も採り得る。
【0083】
なお、本実施の形態では液圧要素機器は、シリンダ装置C2をアクチュエータとして機能させるうえで必要なポンプ50cとされている。このように液圧要素機器は、シリンダ装置C1,C2に必要となる弁やポンプ等であり、シリンダ装置C1,C2の用途および機能に応じて採用される液圧要素機器であればよい。
【0084】
また、本実施の形態におけるシリンダ装置C2では、伸縮ユニット1がアウターシェル8内に挿入されるとともにアウターシェル8との間にタンク7を形成するシリンダ2を有し、アウターシェル8とアダプタ20との間に形成される環状隙間Gと、アウターシェル8に設けられて環状隙間Gとアウターシェル8内とを連通する連通孔8eとを含んで形成される第2接続通路Pを備え、第2接続通路Pを介してポンプ(液圧要素機器)50cがタンク7内に連通されている。
【0085】
このように構成されたシリンダ装置C2によれば、ポンプ(液圧要素機器)50cがアウターシェル8とアダプタ20との間に形成される環状隙間Gと連通孔8eとを含む第2接続通路Pを通じてタンク7から作動油(液体)を吸い込むので、タンク7の油面から最も遠いところに連通孔8eを設置しておけば、ポンプユニット(付属機器)50のアウターシェル8に対する周方向の設置位置によらず、ポンプ(液圧要素機器)50cが気体を吸い込むのを防止できる。なお、シリンダ装置C2を設置対象へ設置した状態で、ポンプユニット(付属機器)50がタンク7より下方へ配置されるようにすれば、ポンプ(液圧機器要素)50cにおける揚程を低くでき、ポンプ(液圧機器要素)50cの効率を向上できる。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1・・・伸縮ユニット、2・・・シリンダ、4・・・ロッド、7・・・タンク、8・・・アウターシェル、8b・・・環状凸部、8e・・・連通孔、8f・・・割部分、20・・・アダプタ、20b・・・挿通孔、21,55・・・通路部材、21c,55b・・・第1接続通路、22・・・バルブユニット(付属機器)、23・・・金具、25・・・止め輪、26・・・ホルダ、41・・・可変リリーフ弁(液圧要素機器)、50・・・ポンプユニット(付属機器)、50c・・・ポンプ(液圧要素機器)、C1,C2・・・シリンダ装置、G・・・環状隙間、P・・・第2接続通路
図1
図2
図3
図4