(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058693
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165942
(22)【出願日】2022-10-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、「戦略的イノベーション創造プログラム/SIP第2期/IoE社会のエネルギーシステム/高パワー密度、高温動作可能なWBGチップ搭載パワーモジュール/ユニバーサル対応コア・パワーモジュールの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】平尾 章
(72)【発明者】
【氏名】池田 良成
(72)【発明者】
【氏名】堀 元人
(57)【要約】
【課題】パワー半導体素子を搭載した半導体装置において、寄生インダクタンスを低減することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】導電板12aを上面側に有する絶縁回路基板1と、導電板12a上に搭載された半導体チップと、半導体チップに電気的に接続され、内側導体層61、内側導体層61の外周に設けられた外側導体層63、及び内側導体層61と外側導体層63の間に設けられた絶縁層62を有する外部接続端子6aとを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電板を上面側に有する絶縁回路基板と、
前記導電板上に搭載された半導体チップと、
前記半導体チップに電気的に接続され、内側導体層、前記内側導体層の周囲に設けられた外側導体層、及び前記内側導体層と前記外側導体層の間に設けられた絶縁層を有する外部接続端子と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記半導体チップの上方に設けられ、前記半導体チップと電気的に接続されたプリント基板を更に備える
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記外部接続端子が、前記導電板又は前記プリント基板上から上方に延伸する
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記外側導体層の下端が前記導電板又は前記プリント基板に電気的に接続され、
前記内側導体層の下端が前記絶縁層により塞がれている
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記内側導体層の上端が前記外側導体層に電気的に接続されている
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記内側導体層が柱状又は平板状であり、
前記絶縁層が前記内側導体層の外周を囲む筒状であり、
前記外側導体層が前記絶縁層の外周を囲む筒状である
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記内側導体層が平板状であり、
前記絶縁層が筒状であり前記内側導体層の周囲を囲み、
前記外側導体層が平板状であり複数設けられ、前記絶縁層の周囲で互いに対向する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記内側導体層が平板状であり、
前記絶縁層が平板状であり複数設けられ、前記内側導体層を挟んで互いに対向し、
前記外側導体層が平板状であり複数設けられ、前記内側導体層及び前記絶縁層を挟んで互いに対向する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記外部接続端子が、前記外側導体層の下端に設けられ、前記外側導体層の外径よりも広い幅の下部導体層を更に備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記外側導体層の下端が、前記導電板又は前記プリント基板に電気的に接続され、
前記内側導体層の上端が前記絶縁層により塞がれている
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記内側導体層の下端が前記外側導体層に電気的に接続されている
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記外部接続端子の下端が先細り形状である
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記外部接続端子の上端が先細り形状である
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記外側導体層が前記導電板及び前記プリント基板から離隔し、
前記内側導体層の下端が前記導電板又は前記プリント基板に電気的に接続されている
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体チップ及び前記絶縁回路基板を収容するケースを更に備え、
前記外部接続端子が前記ケースと一体的に形成されている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記外部接続端子が屈曲部を有する
請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記内側導体層にスリットが設けられている
請求項15に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記半導体チップを封止する封止部材を更に備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体素子を内蔵する半導体装置(半導体モジュール)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)又は酸化ガリウム(Ga2O3)等からなる次世代のパワー半導体素子を搭載したパワー半導体装置(以下、単に、「半導体装置」と呼ぶ。)の開発が進められている。これらのパワー半導体素子は、従来のシリコン(Si)からなるパワー半導体素子に対して絶縁破壊電界強度が高いことから高耐圧であり、また不純物濃度をより高く、活性層をより薄くすることができることから、高効率で高速動作が可能な小型の半導体装置を実現することができる。
【0003】
特許文献1には、金属板が、平板のパワー端子と近接して平行に延びており、パワー端子が発する磁場によって金属板の内部に渦電流が生じ、この渦電流の発生によって磁場が弱まり、パワー端子のインダクタンスを低減できることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、パワーモジュールにおいて、リカバリ電流が流れたとき、電磁誘導効果により、金属板の双方にリカバリ電流と逆方向の渦電流が生じ、リカバリ電流に起因する磁束が打ち消され、経路に生じるサージ電圧が減少する分だけ、経路の見かけ上の寄生インダクタンスが小さくなることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、半導体装置において、複数の電極の延設部分が、互いに5mm以内の間隔をあけて配置され、任意の一つの電極に交流電流を流した場合に発生する交番磁界と、他の電極表面の渦電流、または、他の電極に流す交流電流により発生する交番磁界とを、互いに打ち消すことができ、この結果として、自己インダクタンスを低減することができることが開示されている。
【0006】
特許文献4には、半導体モジュールにおいて、外部接続端子から他の外部接続端子までU字状の経路に沿って導通されることにより、外部接続端子から他の外部接続端子まで配線長を短くすることができ、インダクタンスを低減することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-022844号公報
【特許文献2】特開2016-059094号公報
【特許文献3】特開2015-185561号公報
【特許文献4】特開2021-068859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パワー半導体素子のスイッチング動作時には、主回路配線の寄生インダクタンスによってサージ電圧が発生し、パワー半導体素子が破壊される恐れがある。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、パワー半導体素子を搭載した半導体装置において、寄生インダクタンスを低減することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、(a)導電板を上面側に有する絶縁回路基板と、(b)導電板上に搭載された半導体チップと、(c)半導体チップに電気的に接続され、内側導体層、内側導体層の周囲に設けられた外側導体層、及び内側導体層と外側導体層の間に設けられた絶縁層を有する外部接続端子とを備える半導体装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パワー半導体素子を搭載した半導体装置において、寄生インダクタンスを低減することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置の側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の水平方向の断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の垂直方向の断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の垂直方向の他の断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る半導体装置の等価回路図である。
【
図7】第1実施形態に係る半導体装置及び比較例の解析周波数とインダクタンスの関係を示すグラフである。
【
図8】第2実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の水平方向の断面図である。
【
図9】第3実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の水平方向の断面図である。
【
図10】第4実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の水平方向の断面図である。
【
図11】第5実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の水平方向の断面図である。
【
図12】第6実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の水平方向の断面図である。
【
図13】第7実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の垂直方向の断面図である。
【
図14】第8実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の垂直方向の断面図である。
【
図15】第9実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の垂直方向の断面図である。
【
図16】第10実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の垂直方向の断面図である。
【
図17】第11実施形態に係る半導体装置の外部接続端子の垂直方向の断面図である。
【
図18】第12実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【
図19】第12実施形態に係る半導体装置の内側導体層の平面図である。
【
図20】第12実施形態に係る半導体装置の内側導体層の他の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、第1~第12実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す第1~第12実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0014】
以下の説明において、「第1主電極」とは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)であれば、エミッタ電極又はコレクタ電極のいずれか一方を意味する。電界効果トランジスタ(FET)や静電誘導トランジスタ(SIT)であれば、ソース電極又はドレイン電極のいずれか一方を意味する。静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)やゲートターンオフサイリスタ(GTO)、ダイオードであれば、アノード電極又はカソード電極のいずれか一方を意味する。また、「第2主電極」とは、IGBTであれば、上記第1主電極とはならないエミッタ電極又はコレクタ電極のいずれか一方を意味する。FETやSITであれば、上記第1主電極とはならないソース電極又はドレイン電極のいずれか一方を意味する。SIサイリスタやGTO、ダイオードであれば、上記第1主電極とはならないアノード電極又はカソード電極のいずれか一方を意味する。即ち、「第1主電極」がソース電極であれば、「第2主電極」はドレイン電極を意味する。「第1主電極」がエミッタ電極であれば、「第2主電極」はコレクタ電極を意味する。「第1主電極」がアノード電極であれば、「第2主電極」はカソード電極を意味する。
【0015】
また、以下の説明における「上」、「下」、「上下」、「左」、「右」、「左右」等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば「上下」は「左右」に変換して読まれ、180°回転して観察すれば「上下」は反転して読まれることは勿論である。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る半導体装置は、パワー半導体素子の2つ分の機能を有する「2イン1」と呼ばれる半導体モジュールである。第1実施形態に係る半導体装置は、
図1に示すように、絶縁回路基板1と、絶縁回路基板1上に搭載された半導体チップ2a,2bとを備える。半導体チップ2a,2bの上方には、半導体チップ2a,2bと離隔してプリント基板4が配置されている。半導体チップ2a,2b及びプリント基板4の周囲は、封止部材5により封止され、半導体チップ2a,2b及びプリント基板4が周囲と電気的に絶縁されている。
【0017】
絶縁回路基板1は、絶縁基板11と、絶縁基板11の上面に配置された上側導体層(導電板)12a,12bと、絶縁基板11の下面に配置された下側導体層(導電板)13とを備える。
図1では図示を省略するが、上側導体層12a,12bには所定の回路パターンが形成されている。
【0018】
絶縁回路基板1は、例えば直接銅接合(DCB)基板や活性金属ろう付け(AMB)基板等であってもよい。絶縁基板11は、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)、窒化ホウ素(BN)等からなるセラミクス基板や、高分子材料等を用いた樹脂絶縁基板で構成されている。上側導体層12a,12b及び下側導体層13は、例えば銅(Cu)やアルミニウム(Al)等からなる導体箔で構成されている。
【0019】
上側導体層12a,12b上には、はんだ又は焼結材等の接合材(不図示)を介して、或いは直接接合技術を用いて、半導体チップ2a,2bが接合されている。半導体チップ2a,2bは、例えばシリコン(Si)材料で構成してもよく、或いは炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)等のワイドバンドギャップ半導体材料で構成してもよい。
【0020】
半導体チップ2a,2bは、用途により種類が異なるが、例えば電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、静電誘導(SI)サイリスタ、ゲートターンオフ(GTO)サイリスタ等のパワー半導体素子、還流ダイオード(FWD)等の整流素子等が採用可能である。
【0021】
第1実施形態に係る半導体装置では、半導体チップ2a,2bがMOSFETである場合を例示している。半導体チップ2a,2bのそれぞれは、上面側に第1主電極(ソース電極)及び制御電極(ゲート電極)を有し、下面側に第2主電極(ドレイン電極)を有する。
【0022】
図1では2個の半導体チップ2a,2bを例示するが、半導体チップの数は特に限定されず、定格電流等に応じて適宜選択可能である。例えば、1個の半導体チップを有していてもよく、3つ以上の半導体チップを有していてもよい。
【0023】
半導体チップ2a,2bは、複数のポスト電極(バンプ)3a,3bを介してプリント基板4に接続されている。半導体チップ2aのソース電極は、複数のポスト電極3aの一部の下端に、はんだ又は焼結材等の接合材(不図示)を介して接合されている。半導体チップ2aのゲート電極は、複数のポスト電極3aの他の一部の下端に、はんだ又は焼結材等の接合材(不図示)を介して接合されている。半導体チップ2bのソース電極は、複数のポスト電極3bの一部の下端に、はんだ又は焼結材等の接合材(不図示)を介して接合されている。半導体チップ2bのゲート電極は、複数のポスト電極3bの他の一部の下端に、はんだ又は焼結材等の接合材(不図示)を介して接合されている。
【0024】
ポスト電極3a,3bは、例えば柱状(換言すれば、棒状又はピン状)であり、具体的には円柱、楕円柱、三角柱又は四角柱等の多角柱等であってもよい。ポスト電極3a,3bの材料としては、例えば銅(Cu)等の金属材料が使用可能である。ポスト電極3a,3bは、プリント基板4の下面側の下側配線層43に接合していてもよく、プリント基板4の上面側の上側配線層42まで貫通していてもよい。なお、半導体チップ2a,2bとプリント基板4とを電気的に接続する手段として、ポスト電極3a,3b以外の手段を用いてもよい。
【0025】
プリント基板4は、絶縁層41と、絶縁層41の上面に配置された上側配線層42と、絶縁層41の下面に配置された下側配線層43とを備える。例えば、絶縁層41は、ポリイミド樹脂や、ガラス繊維とポリイミド樹脂との組み合わせ等からなる樹脂基板で構成されている。
【0026】
上側配線層42及び下側配線層43は、例えば銅(Cu)やアルミニウム(Al)等からなる導体箔で構成されている。
図1では図示を省略するが、上側配線層42及び下側配線層43には、所定の回路パターンが形成されている。例えば、上側配線層42及び下側配線層43には、互いに同一の回路パターンが形成されていてもよい。上側配線層42及び下側配線層43は、絶縁層41を貫通するスルーホールを介して電気的に接続されていてもよい。
【0027】
絶縁回路基板1の上側導体層12aには、高電位側の外部接続端子(ドレイン側端子)6aの下端がはんだ又は焼結材等の接合材(不図示)を介して接合されている。ドレイン側端子6aは、絶縁回路基板1の上方に向かって延伸する。ドレイン側端子6aの上端は、封止部材5の上面から突出し、外部回路に接続される。ドレイン側端子6aは、絶縁回路基板1の上側導体層12aを介して半導体チップ2aのドレイン電極に電流を供給する。なお、ドレイン側端子6aの詳細な構造については後述する。
【0028】
プリント基板4の上側配線層42には、低電位側の外部接続端子(ソース側端子)6b及び出力側の外部接続端子(出力端子)6cが接続されている。ソース側端子6bの下端は、はんだ又は焼結材等の接合材(不図示)を介してプリント基板4の上側配線層42に接合されている。ソース側端子6bは、プリント基板4の上方に向かって延伸する。ソース側端子6bの上端は、封止部材5の上面から突出し、外部回路に接続される。ソース側端子6bは、半導体チップ2bのソース電極からの電流をポスト電極3b及びプリント基板4を介して外部回路に流す。
【0029】
出力端子6cの下端は、はんだ又は焼結材等の接合材(不図示)を介して絶縁回路基板1の上側導体層12bに接合されている。出力端子6cは、絶縁回路基板1の上方に向かって延伸する。出力端子6cの上端は、封止部材5の上面から突出し、外部回路に接続される。出力端子6cは、半導体チップ2aがオン状態のときに、半導体チップ2aのソース電極からの電流を、ポスト電極3a及びプリント基板4を介して外部回路に流す。出力端子6cは、半導体チップ2bがオン状態のときに、外部回路からの電流を、絶縁回路基板1の上側導体層12bを介して半導体チップ2bのドレイン電極に供給する。
【0030】
図示を省略するが、プリント基板4には、複数のゲート制御端子(外部接続端子)及び複数の補助ソース端子(外部接続端子)が接続されている。各ゲート制御端子は、半導体チップ2a,2bのオン・オフを制御する制御信号を、プリント基板4及びポスト電極3a,3bを介して半導体チップ2a,2bのゲート電極へそれぞれ印加する。各補助ソース端子は、ポスト電極3a,3b及びプリント基板4を介して半導体チップ2a,2bのソース側の電流をそれぞれ検出する。第1実施形態に係る半導体装置における「外部接続端子」には、ドレイン側端子6a、ソース側端子6b、出力端子6c、複数のゲート制御端子及び複数の補助ソース端子が含まれる。
【0031】
封止部材5は、第1実施形態に係る半導体装置の筐体を構成し、略直方体形状を有する。封止部材5の下面から、絶縁回路基板1が露出する。封止部材5としては、例えば熱硬化性樹脂等の樹脂材料が使用可能であり、具体的にはエポキシ樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂等が使用可能である。
【0032】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図2では、封止部材5の図示を省略し、ドレイン側端子6a、ソース側端子6b及び出力端子6cを実線で示し、絶縁回路基板1、半導体チップ2a,2b及びプリント基板4の平面パターンの外形を一点鎖線で模式的に示している。
【0033】
図2に示すように、絶縁回路基板1及び半導体チップ2a,2bは、矩形の平面パターンを有する。プリント基板4は、L字状の平面パターンを有するが、これに限定されず、例えば矩形の平面パターンを有していてもよい。ドレイン側端子6a及びソース側端子6bは、絶縁回路基板1の平面パターンである矩形の長手方向の一辺側に沿って、長手方向に並んで設けられている。出力端子6cは、絶縁回路基板1の平面パターンである矩形の略中央に設けられている。なお、ドレイン側端子6a、ソース側端子6b及び出力端子6cの配置位置は特に限定されない。
【0034】
図1及び
図2に示したドレイン側端子6aの水平方向の断面図を
図3に示す。
図3のA-A´線で切断したドレイン側端子6aの垂直方向の断面図を
図4に示す。
図4では模式的に、
図1よりもドレイン側端子6aの幅を太く、且つ長さを短く示している。
【0035】
図3及び
図4に示すように、ドレイン側端子6aは、内側導体層61と、内側導体層61の周囲に設けられた絶縁層62と、絶縁層62の周囲に設けられた外側導体層63を備える同軸型端子構造である。内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63は同軸上に設けられている。内側導体層61は円柱状である。絶縁層62は円筒状であり、内側導体層61の外周を囲むように設けられている。外側導体層63は円筒状であり、絶縁層62の外周を囲むように設けられている。
【0036】
内側導体層61及び外側導体層63は、銅(Cu)、Cuを主成分とするCu合金、アルミニウム(Al)、又はAlを主成分とするAl合金等の金属等からなる導電材料で構成されている。内側導体層61及び外側導体層63は、互いに同一の材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。
【0037】
絶縁層62は、ポリエチレン、テフロン(登録商標)、ポリイミド等の樹脂等からなる絶縁材料で構成されている。絶縁層62は、内側導体層61と外側導体層63とを分離する機能を有する。絶縁層62は、内側導体層61が電流通電されることを防止するため、内側導体層61の下端を塞ぐように設けられている。外側導体層63の下端は、はんだ等の接合材7により上側導体層12aに接合されている。外側導体層63は、上側導体層12aに電気的に接続されている。
【0038】
ドレイン側端子6aの上端は、第1実施形態に係る半導体装置の外部要素であるプリント基板(駆動回路基板)9の貫通孔に挿入され、はんだ等の接合材8によりプリント基板9に接合されている。プリント基板9は、
図1に示したプリント基板4とは異なる、半導体チップ4a,4bを駆動するための基板である。プリント基板9は、プリント基板4よりも上方に配置されており、封止部材9の外側に配置されている。なお、プリント基板9を、第1実施形態に係る半導体装置の内部要素として、第1実施形態に係る半導体装置が備えていてもよい。内側導体層61の上端は、絶縁層62に塞がれずに露出している。内側導体層61及び外側導体層63は、はんだ等の接合材8により互いに電気的に接続されている。これにより、内側導体層61が浮遊電位となることを防止することができる。
【0039】
第1実施形態に係る半導体装置のスイッチング動作時には、
図5に模式的に示すように、ドレイン側端子6aの外側導体層63には上側から下側へ電流I1が流れる。外側導体層63に流れる電流I1の周囲には、アンペールの法則により、磁場Mが発生する。磁場Mは、ドレイン側端子6aの上側から下側に見た場合に、時計回りに発生する。
【0040】
このとき、内側導体層61には、レンツの法則により、磁場Mを抑制する方向に渦電流I11,I12が生じる。渦電流I11,I12は、内側導体層61の中心部を上側から下側に、内側導体層61の周辺部を下側から上側に、渦状に流れる。この渦電流I11,I12が、ドレイン側端子6aの周囲の磁場Mを相殺して低減させる。この結果、ドレイン側端子6a自体の寄生インダクタンス及び変換回路部全体の寄生インダクタンスを低減させ、スイッチング動作時の誘導電圧を抑制することができる。
【0041】
図1に示したソース側端子6b及び出力端子6cは、
図3及び
図4に示したドレイン側端子6aと同様の構造を有する。また、図示を省略した複数のゲート制御端子及び複数の補助ソース端子も、
図3及び
図4に示したドレイン側端子6aと同様の構造を有していてもよい。なお、第1実施形態に係る半導体装置の「外部接続端子」のすべてが、
図3及び
図4に示したドレイン側端子6aと同様の構造を有していなくてもよく、第1実施形態に係る半導体装置の「外部接続端子」の一部が、例えば銅(Cu)等からなる単層構造であってもよい。
【0042】
第1実施形態に係る半導体装置の等価回路の一例を
図6に示す。
図6に示すように、第1実施形態に係る半導体装置は、3相ブリッジ回路の一部を構成する。
【0043】
ドレイン側端子Pに、上アーム側のトランジスタT1の第2主電極(ドレイン電極)が接続され、ソース側端子Nに、下アーム側のトランジスタT2の第1主電極(ソース電極)が接続されている。トランジスタT1のソース電極及びトランジスタT2のドレイン電極が出力端子U及び補助ソース端子S1に接続されている。トランジスタT2のソース電極には、補助ソース端子S2が接続されている。トランジスタT1,T2のゲート電極にはゲート制御端子G1,G2が接続されている。トランジスタT1,T2には、還流ダイオード(FWD)となるボディーダイオードD1,D2が逆並列に接続して内蔵されている。
【0044】
図6に示したドレイン側端子P、ソース側端子N及び出力端子Uが、
図1に示したドレイン側端子6a、ソース側端子6b及び出力端子6cに対応する。
図6に示したトランジスタT1,T2が、
図1に示した半導体チップ2a,2bにそれぞれ対応する。
図6に示したゲート制御端子G1,G2、補助ソース端子S1,S2は、
図1では図示を省略している。
【0045】
次に、第1実施形態に係る半導体装置のスイッチング動作について説明する。図示を省略したゲート制御端子を介して、半導体チップ2a,2bのオン・オフを制御する制御信号が、プリント基板4及びポスト電極3a,3bを介して半導体チップ2a,2bのゲート電極へ印加され、半導体チップ2a,2bが交互にスイッチング動作を行う。
【0046】
図1中の矢印I1~I6は、第1実施形態に係る半導体装置の電流経路を模式的に示している。ドレイン側端子6aから入った電流(矢印I1)が、絶縁回路基板1の上側導体層12aを経由し、上アーム側の半導体チップ2aからポスト電極3aへ流れ(矢印I2)、プリント基板4を経由し、出力端子6cから外部回路に流れる(矢印I3)。また、外部回路から出力端子6cに入った電流(矢印I4)が、絶縁回路基板1の上側導体層12bを経由し、下アーム側の半導体チップ2bからポスト電極3bへ流れ(矢印I5)、プリント基板4を経由し、ソース側端子6bから外部回路に流れる(矢印I6)。
【0047】
第1実施形態に係る半導体装置のスイッチング動作時に、半導体チップ2a,2bには以下の式(1)で表される誘導起電力ΔVが発生する。
ΔV=Ls×di/dt …(1)
【0048】
式(1)中のLsは電力変換装置内の変換回路部の寄生インダクタンスである。寄生インダクタンスは、入力コンデンサ内部、半導体モジュールの内部、入力コンデンサと半導体モジュールとの間の接続配線に存在する。式(1)中のdi/dtはスイッチング時の電流変化率である。半導体チップ2a,2bには、回路の直流電圧に加えて、式(1)の誘導起電力ΔVがサージ電圧として余分に印加される。そこで、定格電圧を決める際には、サージ電圧も含め、半導体チップ2a,2bの耐圧を超えないように設定する必要がある。
【0049】
ここで、電流経路I1~I6において、ドレイン側端子6a、ソース側端子6b及び出力端子6cが長いため、従来のように、ドレイン側端子6a、ソース側端子6b及び出力端子6cが銅(Cu)等からなる単層構造の場合には、ドレイン側端子6a、ソース側端子6b及び出力端子6c自体の寄生インダクタンスが電流経路I1~I6全体の寄生インダクタンスに占める割合が大きく、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が制限される。
【0050】
これに対して、第1実施形態に係る半導体装置によれば、
図5に模式的に示すように、ドレイン側端子6aを内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63を有する構造とすることにより、内側導体層61に渦電流I11,I12を発生させて、ドレイン側端子6aの周囲の磁場Mを相殺して低減させることができる。ソース側端子6b及び出力端子6c等の外部接続端子も、ドレイン側端子6aと同様の構造とすることで、ドレイン側端子6a、ソース側端子6b及び出力端子6c等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部全体の寄生インダクタンスを低減させることができるので、スイッチング動作時の誘導電圧を抑制することができる。
【0051】
次に、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法(組立方法)の一例を説明する。まず、
図3及び
図4に示したドレイン側端子6aを用意する。ドレイン側端子6aは、例えば、円筒状の外側導体層63に液状の樹脂を流し込み、その後、内側導体層61を差し込み、樹脂を固めて絶縁層62とすることで作製可能である。或いは、内側導体層61が絶縁層62で予め被覆されたものを円筒状の外側導体層63に差し込むことで作製可能である。また、ドレイン側端子6aと同様の構造のソース側端子6b及び出力端子6cも用意する。
【0052】
また、
図1に示した絶縁回路基板1を用意し、絶縁回路基板1の上側導体層12a,12b上に接合材を介して半導体チップ2a,2bを搭載する。次に、半導体チップ2a,2b上に接合材を介してポスト電極3a,3bを搭載し、ポスト電極3a,3b上に接合材を介してプリント基板4を搭載する。
【0053】
次に、絶縁回路基板1の上側導体層12a,12b上に接合材を介してドレイン側端子6a及び出力端子6cの下端を搭載し、プリント基板4の上側配線層42上に接合材を介してソース側端子6bの下端を搭載する。
【0054】
次に、加熱処理により、絶縁回路基板1、半導体チップ2a,2b、ポスト電極3a,3b及びプリント基板4を互いに接合する。次に、半導体チップ2a,2b、ポスト電極3a,3b及びプリント基板4を封止部材5で封止する。これにより、
図1に示した第1実施形態に係る半導体装置が完成する。
【0055】
図7は、第1実施形態に係る半導体装置及び比較例に係る半導体装置におけるドレイン側端子6aとソース側端子6bの間のインダクタンスの周波数依存性のシミュレーション結果を示す。第1実施形態に係る半導体装置では、ドレイン側端子6a、ソース側端子6b及び出力端子6cを
図3及び
図4に示した構造とし、比較例に係る半導体装置では、ドレイン側端子6a、ソース側端子6b及び出力端子6cを単層構造とした。
【0056】
図7の「本発明」が第1実施形態に係る半導体装置のシミュレーション結果であり、「比較例」が比較例に係る半導体装置のシミュレーション結果である。
図7に示すように、第1実施形態に係る半導体装置では、比較例に係る半導体装置と比較して、ドレイン側端子6aとソース側端子6bの間のインダクタンスが大幅に低減されていることが分かる。
【0057】
以上のように、第1実施形態に係る半導体装置によれば、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63を有する構造とすることにより、電流I1により発生する磁場Mを渦電流I11,I12により抑制することができる。このため、ドレイン側端子6a等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。
【0058】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの水平方向の断面図であり、
図3に示した第1実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの水平方向の断面の位置に対応する。第2実施形態に係る半導体装置は、
図8に示すように、ドレイン側端子6aが角柱状(四角柱状)である点が、
図3に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。
【0059】
ドレイン側端子6aは、角柱状(四角柱状)の内側導体層61と、内側導体層61の周囲を囲むように設けられた角筒状の絶縁層62と、絶縁層62の周囲を囲むように設けられた角筒状の外側導体層63とを備える。内側導体層61及びドレイン側端子6a全体の断面形状は、正方形又は長方形の矩形である。なお、内側導体層61及びドレイン側端子6a全体の断面形状は、三角形でもよく、五角形以上の多角形であってもよい。ドレイン側端子6aの垂直方向の断面は
図4と同様である。第2実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0060】
第2実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63を有する構造とすることにより、ドレイン側端子6a等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。
【0061】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの水平方向の断面図であり、
図3に示した第1実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの水平方向の断面の位置に対応する。第3実施形態に係る半導体装置は、
図9に示すように、ドレイン側端子6aが平板状である点が、
図3に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。「平板状」とは、互いに対向する一対の主面を有し、一対の主面が平行に一方向に延伸する形状である。
【0062】
ドレイン側端子6aは、平板状の内側導体層61と、内側導体層61の周囲を囲むように設けられた角筒状の絶縁層62と、絶縁層62の周囲を囲むように設けられた角筒状の外側導体層63とを備える。ドレイン側端子6aの垂直方向の断面は
図4と同様である。第3実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0063】
第3実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63を有する構造とすることにより、ドレイン側端子6a等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。
【0064】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの水平方向の断面図であり、
図3に示した第1実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの水平方向の断面の位置に対応する。第4実施形態に係る半導体装置は、
図10に示すように、ドレイン側端子6aが平板状であり、且つ外側導体層63a,63bが筒状ではない点が、
図3に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。
【0065】
ドレイン側端子6aは、平板状の内側導体層61と、内側導体層61の周囲を囲むように設けられた角筒状の絶縁層62と、絶縁層62の周囲に互いに対向するように設けられた平板状の外側導体層63a,63bとを備える。内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63a,63bを通過する垂直方向の断面は
図4と同様である。第4実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0066】
第4実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63a,63bを有する構造とすることにより、ドレイン側端子6a等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。
【0067】
(第5実施形態)
図11は、第5実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの水平方向の断面図であり、
図3に示した第1実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの水平方向の断面の位置に対応する。第5実施形態に係る半導体装置は、
図11に示すように、ドレイン側端子6aが平板状であり、且つ絶縁層62a,62b及び外側導体層63a,63bが筒状ではない点が、
図3に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。
【0068】
ドレイン側端子6aは、平板状の内側導体層61と、内側導体層61の互いに対向する一対の主面を挟んで互いに対向するように設けられた平板状の絶縁層62a,62bと、内側導体層61、絶縁層62a,62bを挟んで互いに対向するように設けられた平板状の外側導体層63a,63bを備える。即ち、平板状の内側導体層61、絶縁層62a,62b及び外側導体層63a,63bが積層されるように設けられている。内側導体層61、絶縁層62a,62b及び外側導体層63a,63bの積層方向における垂直方向の断面は
図4と同様である。第5実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0069】
第5実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を内側導体層61、絶縁層62a,62b及び外側導体層63a,63bを有する構造とすることにより、ドレイン側端子6a等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。更に、内側導体層61、絶縁層62a,62b及び外側導体層63a,63bを積層して貼り合わせればよく、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を容易に作製可能となる。
【0070】
(第6実施形態)
図12は、第6実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの水平方向の断面図であり、
図3に示した第1実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの水平方向の断面の位置に対応する。第6実施形態に係る半導体装置は、
図12に示すように、ドレイン側端子6aが更に多層の構造を有する点が、
図3に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。
【0071】
ドレイン側端子6aは、平板状の内側導体層61a,61bと、内側導体層61a,61bの周囲を囲むように設けられた角筒状の絶縁層62a,62bと、絶縁層62a,62bの周囲に設けられた平板状の外側導体層63a,63b,63cを備える。内側導体層61a及び絶縁層62aは、外側導体層63a及び外側導体層63bにより挟まれている。内側導体層61b及び絶縁層62bは、外側導体層63b及び外側導体層63cにより挟まれている。
【0072】
図示を省略するが、内側導体層61a,61bの下端は絶縁層62a,62bにより塞がれており、内側導体層61a,61bには電流通電されない。外側導体層63a,63b,63cの下端が上側導体層12aに接合し、外側導体層63a,63b,63cに電流通電する。なお、絶縁層62a,62bがそれぞれ筒状でなくてもよく、内側導体層61a,61bの互いに対向する一対の主面を挟んで対向するようにそれぞれ分かれていてもよい。第6実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0073】
第6実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を内側導体層61a,61b、絶縁層62a,62b及び外側導体層63a,63b,63cを有する構造とすることにより、ドレイン側端子6a等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。更に、ドレイン側端子6aを多層構造とすることで、電流容量を大きくすることができる。
【0074】
(第7実施形態)
図13は、第7実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面図であり、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面の位置に対応する。第7実施形態に係る半導体装置は、
図13に示すように、ドレイン側端子6aが、内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63の下端に設けられた下部導体層64を更に備える点が、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。
【0075】
下部導体層64は、銅(Cu)、Cuを主成分とするCu合金、アルミニウム(Al)、又はAlを主成分とするAl合金等の金属等からなる導電材料で構成されている。下部導体層64は、外側導体層63と一体的に形成されていてもよい。下部導体層64は、外側導体層63の外径よりも広い幅を有する。下部導体層64の下面が、はんだ又は焼結材等の接合材7により上側導体層12aに接合されている。第7実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0076】
第7実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63を有する構造とすることにより、ドレイン側端子6a等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。更に、下部導体層64を設けることにより、接合材7として焼結材を用いて加熱及び加圧により接合し易くなる。
【0077】
(第8実施形態)
図14は、第8実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面図であり、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面の位置に対応する。第8実施形態に係る半導体装置は、
図14に示すように、ドレイン側端子6aの内側導体層61の上端が絶縁層62により塞がれている点が、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。
【0078】
ドレイン側端子6aの上側では、内側導体層61及び外側導体層63は電気的に分離されている。内側導体層61の下端は、絶縁層62により塞がれず、上側導体層12aに接している。内側導体層61は、上側導体層12aを介して外側導体層63と電気的に接続されている。第8実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0079】
第8実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63を有する構造とすることにより、ドレイン側端子6a等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。
【0080】
(第9実施形態)
図15は、第9実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面図であり、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面の位置に対応する。第9実施形態に係る半導体装置は、
図15に示すように、ドレイン側端子6aの内側導体層61の上端が絶縁層62により塞がれ、且つ、ドレイン側端子6aの下端が先細り形状である点が、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。
【0081】
ドレイン側端子6aの上側では、内側導体層61及び外側導体層63は電気的に分離されている。内側導体層61の下端は、絶縁層62により塞がれず、上側導体層12aに接している。内側導体層61の下端は、接合材7に接していてもよい。内側導体層61は、上側導体層12a及び接合材7を介して外側導体層63と電気的に接続されている。第9実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0082】
第9実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63を有する構造とすることにより、ドレイン側端子6a等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。
【0083】
(第10実施形態)
図16は、第10実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面図であり、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面の位置に対応する。第10実施形態に係る半導体装置は、
図16に示すように、ドレイン側端子6aの上端が先細り形状である点が、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。
【0084】
ドレイン側端子6aの上側では、内側導体層61は、はんだ等の接合材8を介して外側導体層63と電気的に接続されている。第10実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0085】
第10実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63を有する構造とすることにより、ドレイン側端子6a等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。
【0086】
(第11実施形態)
図17は、第11実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面図であり、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面の位置に対応する。第11実施形態に係る半導体装置は、
図16に示すように、内側導体層61に電流通電し、外側導体層63に電流通電しない点が、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。
【0087】
外側導体層63の長さは、内側導体層61の長さよりも短い。外側導体層63の上端は、プリント基板9から離隔する。外側導体層63の下端は、上側導体層12aから離隔する。内側導体層61の下端は、接合材7により上側導体層12aに接合されている。内側導体層61の上端は、接合材8によりプリント基板9に接合されている。
【0088】
図17で模式的に示すように、第11実施形態に係る半導体装置のスイッチング動作時には、ドレイン側端子6aの内側導体層61には上側から下側へ電流I1が流れる。内側導体層61に流れる電流I1の周囲には、アンペールの法則により、磁場Mが発生する。磁場Mは、ドレイン側端子6aの上側から下側に見た場合に、時計回りに発生する。このとき、外側導体層63には、レンツの法則により、磁場Mを抑制する方向に渦電流I11,I12が生じる。この渦電流I11,I12が、ドレイン側端子6aの周囲の磁場Mを相殺して低減させる。第11実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0089】
第11実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ドレイン側端子6a等の外部接続端子を内側導体層61、絶縁層62及び外側導体層63を有する構造とすることにより、ドレイン側端子6a等の外部接続端子自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。
【0090】
(第12実施形態)
図18は、第12実施形態に係る半導体装置の一部の断面図である。第12実施形態に係る半導体装置は、
図18に示すように、絶縁回路基板1の下面に配置された冷却ベース21と、冷却ベース21上に配置され、絶縁回路基板1を収容するケース22を備え、且つ、外部接続端子30がケース22と一体的に形成されている点が、
図1に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。
【0091】
図示を省略するが、絶縁回路基板1上には
図1に示した半導体チップ2a,2bが配置されている。外部接続端子30は、絶縁回路基板1を介して半導体チップ2a,2bに電気的に接続されている。ケース22の内側には、絶縁回路基板1及び半導体チップ2a,2bを封止する封止部材(不図示)が配置されている。第12実施形態に係る半導体装置は、
図1に示した絶縁回路基板1の上方のプリント基板4を有しなくてもよい。
【0092】
外部接続端子30は平板状であり、Z字状に折り曲げられており、屈曲部30a,30bを有する。なお、外部接続端子30は、折り曲げられずに水平方向に延伸していてもよく、その場合には導電ブロック等を介して絶縁回路基板1に電気的に接続されていてもよい。外部接続端子30は、ドレイン側端子、ソース側端子及び出力端子のいずれかを構成する。
【0093】
外部接続端子30は、内側導体層31と、内側導体層31の周囲に設けられた絶縁層32と、絶縁層32の周囲に設けられた外側導体層33,34を備える。内側導体層31の絶縁回路基板1側の端部は絶縁層32により塞がれ、内側導体層31には電流通電されない。外側導体層34は、はんだ等の接合材(不図示)又は超音波接合等により、上側導体層12aと接合されている。外部接続端子30のケース22の外側には、コンデンサ等をボルトで締結するための貫通孔35が設けられている。
【0094】
内側導体層31、絶縁層32及び外側導体層33,34の積層方向のC-C´線で切断した断面は、
図9~
図11に示した断面形状のいずれかと同様であってよい。絶縁層32は、
図9又は
図10の絶縁層62のように筒状であってよく、
図11の絶縁層62a,62bのように、内側導体層31の一対の主面側にそれぞれ分かれた平板状であってもよい。外側導体層33,34は、
図9の外側導体層63のように筒状に連続していてもよく、
図10又は
図11の外側導体層63a,63bのように平板状であってもよい。
【0095】
内側導体層31及び外側導体層33,34は、銅(Cu)、Cuを主成分とするCu合金、アルミニウム(Al)、又はAlを主成分とするAl合金等の金属等からなる導電材料で構成されている。絶縁層32は、例えばポリイミドからなるフレキシブル基板で構成されている。
【0096】
図19は、内側導体層31をZ字状に折り曲げる前の内側導体層31の一例を示す平面図である。
図19に示すように、内側導体層31にスリット31aが設けられていてもよい。スリット31aの本数は特に限定されない。なお、図示を省略するが、外側導体層33,34にも同様にスリットが設けられていてもよい。
【0097】
図20は、内側導体層31をZ字状に折り曲げる前の内側導体層31の他の一例を示す平面図である。
図20に示すように、内側導体層31の屈曲部30a,30bに対応する位置にスリット31a,31bが設けられていてもよい。スリット31a,31bの本数は特に限定されない。スリット31a,31bを設けることにより、屈曲部30a,30bの位置で折り曲げやすくなる。なお、図示を省略するが、外側導体層33,34にも同様にスリットが設けられていてもよい。第12実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0098】
第12実施形態に係る半導体装置によれば、外部接続端子30がケース22と一体化されている場合でも、外部接続端子30を内側導体層31、絶縁層32及び外側導体層33,34で構成することにより、外部接続端子30自体の寄生インダクタンス及び変換回路部経路全体の寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング動作時の誘導電圧の抑制が可能となる。
【0099】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1~第12実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0100】
例えば、第1~第12実施形態に係る半導体装置として、パワー半導体素子2つ分の機能を有する「2イン1」の構成を例示したが、パワー半導体素子の1つ分の機能を有する「1イン1」の構成にも適用可能である。
【0101】
また、第1実施形態に係る半導体装置では、ドレイン側端子6aの上側の内側導体層61及び外側導体層63をはんだ等の接合材8により互いに電気的に接続する場合を例示したが、ドレイン側端子6aがプレスフィットピンのようにはんだを用いずに接続する構造である場合には、ドレイン側端子6aの表面にめっきを行い、めっきを介して内側導体層61及び外側導体層63を互いに電気的に接続してもよい。
【0102】
また、第1~第12実施形態がそれぞれ開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0103】
1…絶縁回路基板
2a,2b…半導体チップ
3a,3b…ポスト電極(バンプ)
4…プリント基板
5…封止部材
6a…外部接続端子(ドレイン側端子)
6b…外部接続端子(ソース側端子)
6c…外部接続端子(出力端子)
7,8…接合材
9…プリント基板
11…絶縁基板
12a,12b…上側導体層(導電板)
13…下側導体層(導電板)
21…冷却ベース
22…ケース
30…外部接続端子
30a,30b…屈曲部
31…内側導体層
31a,31b…スリット
32…絶縁層
33…外側導体層
35…貫通孔
41…絶縁層
42…上側配線層
43…下側配線層
61,61a,61b…内側導体層
62,62a,62b…絶縁層
63,63a,63b,63c…外側導体層
64…下部導体層
D1,D2…ボディーダイオード
G1,G2…ゲート制御端子
N…ソース側端子
P…ドレイン側端子
S1,S2…補助ソース端子
T1,T2…トランジスタ
U…出力端子
【手続補正書】
【提出日】2023-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
ドレイン側端子6aの上端は、第1実施形態に係る半導体装置の外部要素であるプリント基板(駆動回路基板)9の貫通孔に挿入され、はんだ等の接合材8によりプリント基板9に接合されている。プリント基板9は、
図1に示したプリント基板4とは異なる、半導体チップ
2a,2bを駆動するための基板である。プリント基板9は、プリント基板4よりも上方に配置されており、封止部材
5の外側に配置されている。なお、プリント基板9を、第1実施形態に係る半導体装置の内部要素として、第1実施形態に係る半導体装置が備えていてもよい。内側導体層61の上端は、絶縁層62に塞がれずに露出している。内側導体層61及び外側導体層63は、はんだ等の接合材8により互いに電気的に接続されている。これにより、内側導体層61が浮遊電位となることを防止することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
(第11実施形態)
図17は、第11実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面図であり、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置のドレイン側端子6aの垂直方向の断面の位置に対応する。第11実施形態に係る半導体装置は、図
17に示すように、内側導体層61に電流通電し、外側導体層63に電流通電しない点が、
図4に示した第1実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。