(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058698
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】回路基板のスペーサー
(51)【国際特許分類】
H05K 1/18 20060101AFI20240422BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H05K1/18 F
H05K3/34 502D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165949
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000115773
【氏名又は名称】リズム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 寿寛
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 芳一
【テーマコード(参考)】
5E319
5E336
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AB06
5E319CC02
5E319CC22
5E319GG01
5E336AA04
5E336AA09
5E336BB01
5E336CC07
5E336CC59
5E336CC60
5E336DD04
5E336DD16
5E336DD37
5E336EE01
5E336EE12
5E336GG30
(57)【要約】
【課題】回路基板上での占有面積の増大を防止し、高い接合強度で回路基板上に実装できる回路基板のスペーサーを提供する。
【解決手段】円柱状をなすスペーサー1の下端面1bと対応する円形状の導体パターン5を回路基板4上に形成すると共に、導体パターン5の周囲にレジスト6を形成し、下端面1bを導体パターン5上に当接させた姿勢でスペーサー1を実装する。導体パターン5の中央に円形レジスト16を形成して上方に突出させる。スペーサー1の下端面1bに円筒嵌合部15bを形成して円形レジスト16に嵌め込むことでスペーサー1を位置決めする。また、下端面1bの周囲に縮径部14bを形成して導体パターン5を上方に露出させ、スペーサー1の実装の際に、導体パターン5上で表面張力により溶融ハンダを縮径部14bの外周面に張り付かせてフィレット19を形成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状をなすスペーサーの一端面と対応する形状の導体パターンを回路基板上に形成すると共に、前記回路基板上の前記導体パターンの周囲にレジストを形成し、前記一端面を前記導体パターン上に当接させた姿勢で前記スペーサーを前記回路基板上に実装する一方、前記スペーサーの他端面に締結対象物を締結可能としてなる回路基板の実装構造に適用される回路基板のスペーサーにおいて、
前記スペーサーは、前記回路基板上に実装される際に、周囲に露出した前記導体パターンと外周面との間に溶融ハンダによるフィレットが形成されるように、前記一端面の周囲に外形を縮小した縮小部が形成されている
ことを特徴とする回路基板のスペーサー。
【請求項2】
前記スペーサーの一端面には、前記回路基板上の前記導体パターンの中央に段差状に突出して形成された円形レジストの外周と嵌合する円筒嵌合部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の回路基板のスペーサー。
【請求項3】
前記スペーサーは、前記締結対象物を締結するための雌ネジが前記一端面から前記他端面へと貫設され、
前記円筒嵌合部は、前記雌ネジの開口部に形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の回路基板のスペーサー。
【請求項4】
前記スペーサーは、前記一端面に加えて前記他端面にも前記縮小部が形成されて、軸線方向に対称の形状をなしている
ことを特徴とする請求項1に記載の回路基板のスペーサー。
【請求項5】
前記スペーサーは、前記一端面に加えて前記他端面にも前記円筒嵌合部が形成されて、軸線方向に対称の形状をなしている
ことを特徴とする請求項2に記載の回路基板のスペーサー。
【請求項6】
前記スペーサーは、アルミニウムを材料として製作されている
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の回路基板のスペーサー。
【請求項7】
前記スペーサーは、導電性を有する材料で製作されている
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の回路基板のスペーサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に用いられるスペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載のように、この種のスペーサーは、回路基板上に間隔をおいて締結対象物、例えば他の回路基板、バスバー、丸形端子等を締結するために使用されている。予めスペーサーは回路基板上に実装され、例えばスペーサーに形成された雌ネジに対しビスにより締結対象物が締結される。
【0003】
以下、特許文献1のような従来のスペーサーの回路基板に対する実装構造を説明する。例えば
図6に示す従来技術1では、スペーサー101の軸線Cに沿って雌ネジ102が貫設され、その下端面101bは雌ネジ102の開口部を取り囲む環状をなしている。スペーサー101の下端面101bと対応する回路基板104上の領域には導体パターン105が形成され、その周囲にはレジスト106が形成されている。例えばリフローハンダ付けによるスペーサー101の実装作業では、導体パターン105上にハンダペースト117が印刷され、チップマウンタにより回路基板104上の所期の位置にスペーサー101が載置され、炉による加熱工程を経て実装される。
【0004】
しかしながら、従来技術1のスペーサー101の実装構造は、下端面101bに相当する平面状のハンダ層118を介してスペーサー101が導体パターン105に接合されるだけのため、回路基板104に対する接合強度が低いという問題がある。
【0005】
その対策として、
図6に示す従来技術2のように、導体パターン105を外周側に拡張して上方に露出させた実装構造も実施されている。この場合には、加熱工程で溶融したハンダが表面張力によりスペーサー101の外周面に張り付いて固化し、これによりスペーサー101の下端部の外周に断面略三角状をなすフィレット119が形成される。結果としてスペーサー101は、その下端部の周囲全体がフィレット119を介して導体パターン105上に拘束されることから、回路基板104に対する接合強度が大きく向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術2のスペーサー101の実装構造では、回路基板104上でのスペーサー101の占有面積が増大するという問題がある。
【0008】
即ち、従来技術1の場合は、平面視において円形状をなすスペーサー101の外形に相当する領域を回路基板104上で占有するのに対し、従来技術2の場合には、スペーサー101の周囲を取り囲む環状のフィレット119の領域も占有面積として加わる。このようなスペーサー101の占有面積の増大は、周囲の電子部品の配置に影響を及ぼし、ひいては基板設計に制約を与える要因になり得る。
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、回路基板上での占有面積の増大を防止した上で、高い接合強度で回路基板上に実装することができる回路基板のスペーサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の回路基板のスペーサーは、柱状をなすスペーサーの一端面と対応する形状の導体パターンを回路基板上に形成すると共に、回路基板上の導体パターンの周囲にレジストを形成し、一端面を導体パターン上に当接させた姿勢でスペーサーを回路基板上に実装する一方、スペーサーの他端面に締結対象物を締結可能としてなる回路基板の実装構造に適用される回路基板のスペーサーにおいて、スペーサーが、回路基板上に実装される際に、周囲に露出した導体パターンと外周面との間に溶融ハンダによるフィレットが形成されるように、一端面の周囲に外形を縮小した縮小部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成した回路基板のスペーサーによれば、スペーサーが導体パターン上に実装される際には、縮径部の周囲に導体パターンが環状をなして露出し、導体パターン上で溶融ハンダが表面張力により縮径部の外周面に張り付いて固化し、これによりフィレットが形成される。結果としてスペーサーは、その下端面が平面状のハンダ層を介して導体パターンに接合されるだけでなく、縮径部の周囲全体がフィレットを介して導体パターン上で拘束される。そして、フィレットはスペーサーの周囲を取り囲む環状をなしているものの縮径部内に収まっているため、スペーサーの占有面積を増大させる要因にはならない。
【0012】
その他の態様として、スペーサーの一端面に、回路基板上の導体パターンの中央に段差状に突出して形成された円形レジストの外周と嵌合する円筒嵌合部が形成されていてもよい。
従って、スペーサーが導体パターン上に実装される際には、回路基板上の円形レジストにスペーサーの円筒嵌合部が嵌め込まれ、これにより所期の位置にスペーサーが位置決めされる。
【0013】
その他の態様として、スペーサーに、締結対象物を締結するための雌ネジが一端面から他端面へと貫設され、円筒嵌合部が、雌ネジの開口部に形成されていてもよい。
従って、雌ネジの開口部の形状を若干変更するだけで円筒嵌合部を形成可能となる。
【0014】
その他の態様として、スペーサーが、一端面に加えて他端面にも縮小部が形成されて、軸線方向に対称の形状をなしていてもよい。
従って、一端面または他端面の何れを導体パターン上に当接させた姿勢でスペーサーを回路基板上に実装しても、縮小部が所期の機能を奏する。
【0015】
その他の態様として、スペーサーが、一端面に加えて他端面にも円筒嵌合部が形成されて、軸線方向に対称の形状をなしていてもよい。
従って、一端面または他端面の何れを導体パターン上に当接させた姿勢でスペーサーを回路基板上に実装しても、円筒嵌合部が所期の機能を奏する。
【0016】
その他の態様として、スペーサーが、アルミニウムを材料として製作されていてもよい。
従って、スペーサーをアルミニウム製とした場合の接合強度に関する欠点を補った上で、スペーサーの軽量化が可能となる。
【0017】
その他の態様として、スペーサーが、導電性を有する材料で製作されていてもよい。
従って、回路基板上の導体パターンと締結対象物とをスペーサーを介して導通させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の回路基板のスペーサーによれば、回路基板上での占有面積の増大を防止した上で、高い接合強度で回路基板上に実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態のスペーサーを用いて回路基板上に他の回路基板を締結した場合を示す斜視図である。
【
図3】実施形態のスペーサーを用いて回路基板上にバスバーを締結した場合を示す斜視図である。
【
図4】実施形態のスペーサーを用いて回路基板上に丸形端子を締結した場合を示す斜視図である。
【
図6】
図5のA部詳細に相当するスペーサーのハンダ付け箇所を従来技術1,2と比較した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した回路基板のスペーサーの一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態のスペーサーを用いて回路基板上に他の回路基板を締結した場合を示す斜視図、
図2は、
図1に対応する分解斜視図、
図3は、スペーサーを用いて回路基板上にバスバーを締結した場合を示す斜視図、
図4は、スペーサーを用いて回路基板上に丸形端子を締結した場合を示す斜視図、
図5は、スペーサーを示す断面図である。以下の説明では、
図1のスペーサーの姿勢に倣って上下方向を表現する。
【0021】
まず、スペーサーの概略構成を説明すると、
図2,5に示すように、スペーサー1は上下方向に延びる円柱状をなしている。スペーサー1には軸線Cに沿って雌ネジ2が貫設され、スペーサー1の上端面1a(本発明の「他端面」に相当)には、上方に向けてテーパ状に拡開するガイド部3aを介して雌ネジ2の上部が開口している。同様にスペーサー1の下端面1b(本発明の「一端面」に相当)には、下方に向けてテーパ状に拡開するガイド部3b(本発明の「雌ネジの開口部」に相当)を介して雌ネジ2の下部が開口している。
【0022】
本実施形態のスペーサー1は、導電性を有する金属材料、例えばアルミニウムからなり、その製法としては、切削加工、プレス加工、フォーマー加工、ヘッダー加工などの周知の技術を任意に適用可能である。アルミニウムを材料とした場合には、表面に形成される酸化被膜によるハンダの接合強度の低下を防止するために、スズメッキ等の表面処理が施される。
【0023】
但し、必ずしもスペーサー1の材料を金属材料とする必要はない。例えば、後述するようにスペーサー1の下部が回路基板4上に実装されるため、この下部を金属製とし、他の部分を合成樹脂材料でインサート成型してもよい。或いは、スペーサー1全体を合成樹脂材料で射出成型し、その表面に金属メッキを施して導電性を付与すると共に、ハンダ付け可能としてもよい。
【0024】
このようなスペーサー1が実装される回路基板4の上面には、スペーサー1の下端面1bと対応する円形状をなす導体パターン5が形成され、導体パターン5の周囲にはレジスト6が形成されている。例えば導体パターン5は、回路基板4上に貼られた銅箔を導体パターン5の領域を残してエッチング処理することで形成される。また、レジスト6は、導体パターン5の領域を残してレジストインクをスクリーン印刷して紫外線照射により硬化させることで形成される。但し、これらの製法に限るものではなく、他の製法を適用してもよい。
【0025】
回路基板4上には、例えばリフローハンダ付けにより図示しない電子部品と共にスペーサー1が実装される。スペーサー1に関しては、導体パターン5の領域にハンダペーストが印刷され、チップマウンタによるスペーサー1の載置後に、炉による加熱工程を経て実装される。但し、実装作業の内容はこれに限ることはなく、例えばフローハンダ付け等により実施してもよい。
【0026】
回路基板4上に実装されたスペーサー1は、例えば
図1,2に示す他の回路基板7、
図3に示すバスバー8、
図4に示す丸形端子9等の締結対象物を、回路基板4上に所定間隔をおいて締結する役割りを果たす。
【0027】
回路基板4の上方位置に他の回路基板7を固定する場合には、
図1,2に示すように、例えば回路基板4上の四隅(1箇所のみを示す)にそれぞれスペーサー1を実装しておく。
図1に示すように、回路基板4の上方に他の回路基板7を配設してスペーサー1の上端面1aに当接させ、他の回路基板7の四隅に貫設されたビス孔7a及びワッシャ10を介してビス11を各スペーサー1の雌ネジ2にそれぞれ螺合させる。
【0028】
これにより回路基板4上にスペーサー1の長さ相当の間隙12をおいて他の回路基板7が締結され、この間隙12により、回路基板4上に実装された電子部品と他の回路基板7との干渉が防止される。また、スペーサー1が導電性を有するため、必要があれば、回路基板4上の導体パターン5と他の回路基板7の導体パターンとをスペーサー1を介して導通させることも可能となる。
【0029】
また、
図3,4に示すように、他の回路基板7から延設されたバスバー8や丸形端子9を回路基板4上に接続する場合、例えば回路基板4上の電子部品との干渉防止のために、バスバー8や丸形端子9を回路基板4上から上方に離間配置することもある。このような場合には、双方の離間距離に相当する長さのスペーサー1を回路基板4上に実装し、その上端面1aにワッシャ10を介してビス11によりバスバー8や丸形端子9を締結する。この場合の導体パターン5は回路基板4上の何れかの電子部品と電気的に接続されており、その電子部品がスペーサー1及びバスバー8または丸形端子9を介して他の回路基板と導通する。
【0030】
なお、他の回路基板7、或いはバスバー8や丸形端子9の締結構造は上記に限るものではない。例えば、雌ネジ2の代わりにスペーサー1に貫通孔を形成し、貫通孔を介してビス11を回路基板4の下面に設けたナットに螺合させてもよい。
【0031】
ところで、以上のように回路基板4上にスペーサー1が実装されるのであるが、
図6に基づき説明した従来技術1では、下端面101bに形成された平面状のハンダ層118を介してスペーサー101が導体パターン105に接合されるだけのため、回路基板4に対する接合強度が低いという問題がある。また、従来技術2では、スペーサー101の周囲にフィレット119を形成して接合強度を高めているものの、平面視においてフィレット119の領域に相当する分だけ回路基板4上のスペーサー101の占有面積が増大するという問題がある。
【0032】
このような不具合を解消すべく本発明では、円柱状をなすスペーサー1の下端面1bの周囲に外径(本発明の「外形」に相当)を縮小した縮径部(本発明の「縮小部」に相当)を形成することにより、回路基板4上のスペーサー1の占有面積を増大させることなく後述するフィレット19の形成スペースを確保しており、その詳細を以下に述べる。
【0033】
図6は、
図5のA部詳細に相当するスペーサー1のハンダ付け箇所を従来技術1,2と比較した拡大断面図である。
図2,5に示すように、本実施形態のスペーサー1は上下対称(本発明の「軸線方向に対称」に相当)の形状をなしている。その目的は、回路基板4上にスペーサー1を実装する際の誤装着の防止にあり、スペーサー1の実装作業の際に、上下何れの姿勢で回路基板4上に載置しても所期の機能を奏することから、実装作業を容易に実施できるという効果が得られる。
【0034】
以下、
図5,6に基づき下端面1b側に形成した縮径部14b及び円筒嵌合部15bについて述べるものとし、上端面1a側の縮径部14a及び円筒嵌合部15bは上下対称の同一形状をなしているため、重複する説明を省略する。スペーサー1の下端面1bの周囲全体には、段差状に外径を縮小した縮径部14bが形成されている。縮径部14bによる段差の上下方向の寸法L1及び半径方向の寸法L2は、それぞれ溶融ハンダによるフィレット19の形成を妨げない程度の大きさ、例えば、共に0.3mmmm以上に設定されている。但し、使用する位置や目的に応じて0.3mm未満としてもよく、このように縮径部14bを設定した場合も本発明に含まれるものとする。
【0035】
また、スペーサー1の下端面1bにはガイド部3bが下方に向けて拡開しており、ガイド部3bの下部は上下方向に同一内径を保った円筒状に形成され、この箇所が円筒嵌合部15bに相当する。
【0036】
上記したように回路基板4上には、円形状をなす導体パターン5の周囲にレジスト6が形成されており、
図6に示すように本実施形態では、導体パターン5の外径がスペーサー1の外径と略同一寸法に設定されている。また、導体パターン5の中央にも、軸線Cを中心とした円形状をなすレジスト16が形成され、結果として導体パターン5が環状をなしている。以下、この箇所を円形レジスト16と称すると、円形レジスト16の外径は、スペーサー1の円筒嵌合部15bの内径と同一または僅かに小さな寸法に設定されている。
【0037】
そして、
図6に示すように、回路基板4上の導体パターン5の厚みT1に比して、その外周側のレジスト6及び内周側の円形レジスト16の厚みT2が大きく設定されている。詳しくは、レジスト6,16の厚みT2は、導体パターン5の厚みT1にハンダペースト17の厚みT3を加算した値よりも大きく設定されている。ハンダペースト17が溶融しても、その厚みT3はフラックスの蒸発やフィレット19の形成により減少方向に変化するだけである。このため、溶融ハンダがハンダ層18として固化して導体パターン5上のスペーサー1の位置が定まるまで、T2>T1+T3の関係が保たれる。
【0038】
従って、円形レジスト16は、周囲の導体パターン5(詳しくは、導体パターン5上のハンダペースト17)の中央から上方に向けて段差状に突出している。なお、この大小関係に保つ必要があるのは円形レジスト16の厚みT2であるため、レジスト6についてはT2以外の厚みに設定してもよい。
【0039】
以上のような相互間の寸法設定により、スペーサー1の実装作業において、ハンダペースト17が印刷された導体パターン5上にスペーサー1を載置すると、導体パターン5の中央から突出する円形レジスト16にスペーサー1の円筒嵌合部15bが嵌め込まれる。これにより円形レジスト16と軸線Cを一致させた所期の位置にスペーサー1が位置決めされ、その外周面がレジスト6の内周と一致すると共に、スペーサー1の縮径部14bの周囲にはハンダペースト17が環状をなして露出する。
【0040】
炉による加熱工程でハンダペースト17が溶融しても、円形レジスト16と円筒嵌合部15bとの嵌合によりスペーサー1が位置決めされ続ける。そして、スペーサー1の周囲に露出している溶融ハンダは、表面張力によりスペーサー1の縮径部14bの外周面(本発明の「外周面」に相当)に張り付いて固化し、これにより縮径部14b内で断面略三角状をなすフィレット19を形成する。結果としてスペーサー1は、その下端面1bを平面状のハンダ層18を介して導体パターン5に接合されるだけでなく、
図6の従来技術2と同様に、縮径部14bの周囲全体がフィレット19を介して導体パターン5上で拘束される。このため、従来技術1と比較すると、より高い接合強度でスペーサー1を回路基板4上に実装することができる。
【0041】
また、フィレット19はスペーサー1の周囲を取り囲む環状をなしているものの、スペーサー1の外径をはみ出すことなく縮径部14b内に収まっている。このため、
図6中に「占有面積相当」として示すように、フィレット19形成は、回路基板4上でのスペーサー1の占有面積を増大させる要因にはならない。従って、従来技術1と等しい占有面積でスペーサー1を回路基板4上に実装でき、換言すると、
図6の従来技術2よりも回路基板4上の占有面積を縮小することができる。
【0042】
本実施形態のスペーサー1は上下対称の形状をなす。このため、
図6とは上下を逆転させた姿勢で回路基板4上に実装された場合でも、上記と同様の作用効果を達成できる。
【0043】
一方、本実施形態では、円形レジスト16と円筒嵌合部15bとの嵌合によりスペーサー1を位置決めし、これによりスペーサー1の実装位置の精度を向上させており、この点を従来技術1,2との比較に基づき説明する。
【0044】
まず、
図6示す従来技術1では、回路基板104上の導体パターン105及びハンダペースト117の厚みに比してレジスト106の厚みが大きく設定されている。このため、導体パターン105上に載置されたスペーサー101の下端部がレジスト106の内周に嵌め込まれて、所期の位置への位置決め作用が得られる。
【0045】
これに対して従来技術2では、フィレット19の形成のために導体パターン5を外周側に拡張して上方に露出させているため、スペーサー101の外周に対してレジスト106の内周が外周側に離間して位置決め作用が得られない。従って、ハンダペースト17が溶融すると、スペーサー101は溶融ハンダ上で浮遊して所期の位置に保てなくなる。なお、溶融ハンダの表面張力は、導体パターン105上の中心部へとスペーサー101を導く所謂セルフセンタリング現象を生起するものの、その作用は微小なため正確な位置決めは期待できない。
【0046】
その対策として本実施形態では、導体パターン5の内周側に円形レジスト16を形成している。
図6の従来技術1,2から明らかなように、導体パターン5の内周側は何ら利用されていないデッドスペースに相当する領域のため、周辺の部位に影響を及ぼすことなく円形レジスト16を形成できる。そして、この円形レジスト16に対応してスペーサー1側に円筒嵌合部15bを形成し、導体パターン5の中央から突出した円形レジスト16に嵌め込むことで位置決め作用を得ている。
【0047】
従って、従来技術1と同様に、回路基板4上の所期の位置にスペーサー1を確実に実装でき、ひいてはスペーサー1上に締結される締結対象物、例えば他の回路基板7、バスバー8、丸型端子等の位置精度を向上させるために大きく寄与する。
【0048】
また本実施形態では、スペーサー1の上端面1aから下端面1bまで雌ネジ2を貫設し、その開口部であるガイド部3a,3bに円筒嵌合部15a,15bを形成している。例えば雌ネジ2を貫設することなく上端面1a側だけとどめ、スペーサー1の下端面1bに円筒嵌合部15bを凹設しても位置決め作用は得られる。このような態様も本発明に含むものであるが、この場合には円筒嵌合部15bの形成のために手間を要する。雌ネジ2を貫通させると、その開口部であるガイド部3a、3bの形状を若干変更するだけで円筒嵌合部15a,15bを形成できる。従って、スペーサー1の製作をより簡略化できるという別の利点が得られる。
【0049】
一方、本実施形態のスペーサー1はアルミニウム製、従来技術1,2のスペーサー101は真鍮製であり、アルミニウムの比重は2.7程度、真鍮の比重は8.5程度である。双方のスペーサー1,101は、縮径部14b及び円筒嵌合部15bの有無等の若干の形状的な相違があるものの、ほぼ同一体積のため、互いの比重に対応する重量比と見なせる。結果として本実施形態のスペーサー1は、従来技術1,2のスペーサー101に比して格段に軽量化することができる。
【0050】
また、周知のようにアルミニウムと真鍮とは導電率や電気抵抗が近似するため、スペーサー1を導電体として利用した場合の定格電流値や温度上昇率等についても、真鍮製の従来技術1,2のスペーサー101と比較して遜色のない性能を達成できる。
【0051】
そして、このような利点を有するアルミニウム製のスペーサー1ではあるが、酸化被膜によりハンダの接合強度が低下するという欠点がある。この点を鑑みて、本実施形態ではスズメッキ等の表面処理を施しているが、製造コスト等の観点から表面処理を施さない場合もあり得る。
【0052】
この場合には、酸化被膜により回路基板4に対する接合強度が不足する可能性が生じるが、本実施形態ではフィレット19の形成により十分な接合強度を保つことができる。結果として本実施形態によれば、スペーサー1をアルミニウム製とした場合の接合強度に関する欠点を補った上で、軽量化という新たな利点を得ることができる。
【0053】
なお、以上の説明は、本発明をアルミニウム製のスペーサー1に限定する趣旨ではなく、当然であるが真鍮製のスペーサー等も本発明に含まれるものである。
【0054】
また、フィレット19の形成は以下の点でも役立つ。回路基板4へのスペーサー1の実装後には、ハンダ付けの良否を目視で検査する。本実施形態では、スペーサー1が正常にハンダ付けされると、その周囲に所期の形状のフィレット19が形成されるため、フィレット19の有無や形状に基づきハンダ付けの良否を判断できる。この点は従来技術2も同様であるが、元々フィレット19が形成されない従来技術1では良否の判断が困難になる。従って、本実施形態によれば、スペーサー1の実装後の検査を容易に実施できるという利点も得られる。
【0055】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、スペーサー1に縮径部14a,14bに加えて円筒嵌合部15a,15bを形成したが、例えば円筒嵌合部15a,15bを省略してもよい。
【0056】
また上記実施形態では、スペーサー1を円柱状とすると共に、誤装着の防止のために上下対称の形状としたが、これに限るものではない。例えば、スペーサー1を四角柱状等としてもよい。また、上端面1a側の縮径部14a及び円筒嵌合部15aを省略してもよく、この場合には、誤装着の防止作用と引き換えに、バスバー8や丸形端子9との接触面積が増加することから、接触不良をより確実に防止できる。
【符号の説明】
【0057】
1 スペーサー
1a 上端面(他端面)
1b 下端面(一端面)
2 雌ネジ
3a,3b ガイド部(開口部)
4 回路基板
5 導体パターン
6 レジスト
7 他の回路基板(締結対象物)
8 バスバー(締結対象物)
9 丸形端子(締結対象物)
14a,14b 縮径部(縮小部)
15a,15b 円筒嵌合部
16 円形レジスト
19 フィレット