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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058699
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】タンク
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/00 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
F01P11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165952
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野 等
(72)【発明者】
【氏名】中井 司
(57)【要約】
【課題】熱交換液の供給が容易な複数の室を有するタンクを提供する。
【解決手段】タンク(10)は、第1熱交換液(CL1)を収容する第1室(100)と、第2熱交換液(CL2)を収容する第2室(200)と、両者を隔てる隔壁(300)と、外部からの熱交換液(CL)を第1室(100)と第2室(200)に供給する受入部(400)と、受入部(400)を塞ぐ蓋部(500)と、を備える。隔壁(300)は、第1室(100)と第2室(200)を連通する連通路(310)を備える。タンク(10)は、蓋部(500)が受入部(400)を塞いでいるときに連通路(310)を封止し、塞いでいないときに連通路(310)を流通可能にする開閉部(600)を備える。連通路(310)は、第1室(100)と第2室(200)で想定されている最高液位(Lmax)の1/2よりも低い位置(P310)に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の温度を制御するための熱交換液を貯留するタンクであって、
第1温度範囲内に第1対象物の温度を制御するための前記熱交換液である第1熱交換液を収容する第1室と、
前記第1温度範囲とは異なる第2温度範囲内に第2対象物の温度を制御するための前記熱交換液である第2熱交換液を収容する第2室と、
前記第1室と前記第2室とを隔てる隔壁と、
前記タンクの外部から供給される前記熱交換液を受け入れて、前記第1室と前記第2室との少なくとも一方に供給する受入部と、
前記受入部を塞ぐ蓋部と、を備え、
前記隔壁は、前記第1室と前記第2室とを連通させる連通路を備え、
前記タンクは、さらに、
前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記連通路を封止し、前記蓋部が前記受入部を塞いでいないときに、前記連通路を流通可能にする開閉部を備え、
前記連通路は、前記隔壁において、前記第1室および前記第2室において想定されている前記熱交換液の最高液位の1/2よりも低い位置に設けられている、タンク。
【請求項2】
請求項1記載のタンクであって、
前記隔壁は、
前記受入部に接続されている円柱状の空間と、
前記円柱状の空間と前記第1室とを接続する第1開口と、
前記円柱状の空間と前記第2室とを接続する第2開口であって、前記円柱状の空間が伸びる方向について、前記第1開口とは異なる位置に配されている第2開口と、を有し、
前記連通路は、前記円柱状の空間のうち前記第1開口から前記第2開口に至る部位を含み、
前記開閉部は、
前記蓋部に接続されている棒状の部材であって、前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記円柱状の空間内に位置する、竿部を備え、
前記竿部は、
前記円柱状の空間を画定する前記隔壁の内面と、前記竿部の外周と、の間を封止するOリングであって、前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記円柱状の空間内において前記第1開口と前記第2開口との間に位置する部位に配されている、Oリングを有する、タンク。
【請求項3】
請求項1記載のタンクであって、
前記隔壁は、
前記受入部に接続されている円柱状の空間と、
前記円柱状の空間と前記第1室とを接続する第1開口と、
前記円柱状の空間と前記第2室とを接続する第2開口であって、前記円柱状の空間が伸びる方向について、前記第1開口とは異なる位置に配されている第2開口と、を有し、
前記連通路は、前記円柱状の空間のうち前記第1開口から前記第2開口に至る部位を含み、
前記開閉部は、
前記円柱状の空間内に一部が配されている棒状の部材である竿部と、
前記竿部の中心軸方向に沿って前記竿部に弾性力を加える弾性部材と、を備え、
前記竿部は、
前記円柱状の空間を画定する前記隔壁の内面と、前記竿部の外周と、の間を封止するシール部を有し、
前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記蓋部によって前記弾性部材の弾性力に抗して押されて、前記円柱状の空間内において前記第1開口と前記第2開口との間に前記シール部が位置する第1位置に、位置し、
前記蓋部が前記受入部から外されたときに、前記弾性部材の弾性力によって前記受入部に向かう方向に押されて、前記円柱状の空間内において前記第1開口および前記第2開口の上に前記シール部が位置する第2位置に、位置するように構成されている、タンク。
【請求項4】
請求項3記載のタンクであって、
前記竿部は、一端から他端に至る貫通孔を有する、タンク。
【請求項5】
請求項1記載のタンクであって、
前記隔壁は、
前記受入部に接続されている柱状の空間と、
前記柱状の空間と前記第1室とを接続する第1開口と、
前記柱状の空間と前記第2室とを接続する第2開口と、を有し、
前記連通路は、前記柱状の空間のうち前記第1開口から前記第2開口に至る部位を含み、
前記柱状の空間は、
前記第1開口および前記第2開口と接続されている第1部分空間と、
前記第1部分空間と前記受入部を接続しており、前記柱状の空間が伸びる方向に沿って見たときに、前記第1部分空間を包含する断面形状を有する第2部分空間と、を有し、
前記開閉部は、
前記蓋部に接続されている棒状の部材であって、前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記柱状の空間内に位置する、竿部と、
前記竿部に接続され、前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記第1部分空間において前記第1開口と前記第2開口を塞ぐ弁体部と、を備える、タンク。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のタンクであって、
前記隔壁の少なくとも一部は、
前記第1室の一部を画定する第1部材と、
前記第2室の一部を画定する第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に配され、前記第1部材および前記第2部材よりも熱伝導率が低い素材で構成される中間部材と、を備える、タンク。
【請求項7】
請求項1記載のタンクであって、
前記受入部は、
円筒状の外形を備え、
円筒の中心軸に沿って見たときに、前記受入部の内部空間のうち前記第1室と重なる領域の大きさと、前記受入部の前記内部空間のうち前記第2室と重なる領域の大きさと、が略同一となるように構成されている、タンク。
【請求項8】
請求項1記載のタンクであって、
前記第1温度範囲は、想定されている外気温よりも高い温度範囲を含み、
前記第2温度範囲は、前記第1温度範囲の上限よりも高い温度範囲を含み、
前記受入部は、
円筒状の外形を備え、
円筒の中心軸に沿って見たときに、前記受入部の内部空間のうち前記第1室と重なる領域の大きさが、前記受入部の内部空間のうち前記第2室と重なる領域の大きさよりも大きいように構成されている、タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換液を貯留するタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数系統の冷却水を貯留できるタンクが存在する。特許文献1のリザーブタンク装置は、タンク部と、供給部と、キャップと、切換機構と、を備える。
【0003】
供給部は、外部から供給される冷却水を、タンク部の内部に受け入れるための部分である。タンク部は、内部に第1空間および第2空間を有する。第1空間には、補機類を冷却するための冷却水が貯留される。第2空間には、エンジンを冷却するための冷却水が貯留される。第1空間と第2空間との間は、隔壁によって区画されている。
【0004】
隔壁には、円柱部が形成されている。円柱部は、供給部の直下の位置にある。円柱部の上端部には、内部空間が形成されている。円柱部の内部空間は、上方に開放されている。円柱部は、第1開口と第2開口とを有する。第1開口は、円柱部の内部空間と第1空間とを連通する。第2開口は、円柱部の内部空間と第2空間とを連通する。すなわち、第1空間と第2空間とは、円柱部の内部空間を介して連通している。このため、供給部から、上方に開放された内部空間を介して、第1空間および第2空間に対して冷却水を同時に供給できる。
【0005】
キャップは、供給部に取り付けられる蓋である。キャップは、円柱状の隔離部を有している。キャップが供給部に取り付けられているときには、隔離部は、隔壁の円柱部の内部空間に挿通されている。この状態においては、第1開口と第2開口は、隔離部を覆う弾性部材によって塞がれている。その結果、第1空間と第2空間は、隔離部によって隔てられる。
【0006】
切換機構は、隔壁の下部に設けられている。切換機構は、受入部とプラグとを有している。受入部は、プラグを受け入れるための内部空間を有する。受入部は、第1連通路と第2連通路とを有する。第1連通路は、受入部の内部空間と第1空間とを連通する。第2連通路は、受入部の内部空間と第2空間とを連通する。このため、第1空間と第2空間とは、切換機構の内部空間を介して連通し得る。受入部の内部空間内において、プラグがタンク部の外に向かって動かされ、その位置に配されると、切換機構は、第1連通路と第2連通路との間を塞がない状態となる。この状態において、供給部からの冷却水の供給が行われると、1回の注水で、第1空間と第2空間に冷却水を供給できる。
【0007】
受入部の内部空間内において、プラグがタンク部の内部に向かって動かされ、その位置に配されると、切換機構は、第1連通路と第2連通路との間を塞ぐ。冷却システムが動作しているときには、プラグは、タンク部の内部に向かって動かされ、第1連通路と第2連通路との間を塞ぐ。その結果、冷却システムが動作しているときには、第1空間と第2空間とは、切換機構によって隔てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-63686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されたリザーブタンク装置においては、タンク部の第1空間と第2空間に冷却水を供給する際には、タンク部の上部からキャップを取り外すだけでなく、タンク部の下部においてプラグを引き出す必要がある。このため、作業が繁雑である。また、冷却水の供給後、プラグを戻す作業を忘れて、第1空間と第2空間とが連通されたままとなるおそれもある。さらに、冷却水の流通を許容しまたは止めるための機構が2箇所に設けられているため、リザーブタンク装置内の冷却水が外部に漏れ出すリスクが高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0011】
(1)本開示の一形態によれば、タンクが提供される。このタンクは、対象物の温度を制御するための熱交換液を貯留するタンクであって、第1温度範囲内に第1対象物の温度を制御するための前記熱交換液である第1熱交換液を収容する第1室と、前記第1温度範囲とは異なる第2温度範囲内に第2対象物の温度を制御するための前記熱交換液である第2熱交換液を収容する第2室と、前記第1室と前記第2室とを隔てる隔壁と、前記タンクの外部から供給される前記熱交換液を受け入れて、前記第1室と前記第2室との少なくとも一方に供給する受入部と、前記受入部を塞ぐ蓋部と、を備える。前記隔壁は、前記第1室と前記第2室とを連通させる連通路を備る。前記タンクは、さらに、前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記連通路を封止し、前記蓋部が前記受入部を塞いでいないときに、前記連通路を流通可能にする開閉部を備える。前記連通路は、前記隔壁において、前記第1室および前記第2室において想定されている前記熱交換液の最高液位の1/2よりも低い位置に設けられている。
このような態様とすれば、第1室内と第2室内の少なくとも一方に、連通路の高さまで熱交換液が供給されることにより、連通路を介して、第1室と第2室の両方に、同じ液位まで熱交換液が供給される。このため、想定された最高液位の1/2よりも低い位置まで、第1室内と第2室内の少なくとも一方に熱交換液が供給されることにより、第1室と第2室の両方に、同じ液位まで熱交換液が供給される。そして、蓋部が受入部から取り外されることにより、タンクに対して別途の操作が行われなくても、上記の効果が得られる。
(2)上記形態のタンクにおいて、前記隔壁は、前記受入部に接続されている円柱状の空間と、前記円柱状の空間と前記第1室とを接続する第1開口と、前記円柱状の空間と前記第2室とを接続する第2開口であって、前記円柱状の空間が伸びる方向について、前記第1開口とは異なる位置に配されている第2開口と、を有し、前記連通路は、前記円柱状の空間のうち前記第1開口から前記第2開口に至る部位を含み、前記開閉部は、前記蓋部に接続されている棒状の部材であって、前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記円柱状の空間内に位置する、竿部を備え、前記竿部は、前記円柱状の空間を画定する前記隔壁の内面と、前記竿部の外周と、の間を封止するOリングであって、前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記円柱状の空間内において前記第1開口と前記第2開口との間に位置する部位に配されている、Oリングを有する、態様とすることもできる。
このような態様においては、竿部が接続されている蓋部が受入部から外され、その結果、竿部が円柱状の空間から抜き取られることにより、受入部と連通路とがいずれも連通状態とされる。このため、その状態において、タンクの外部から、受入部を介して、第1室および第2室に容易に熱交換液を供給できる。また、蓋部に接続されている竿部を円柱状の空間に挿入して、蓋部を受入部に取り付けることにより、受入部に対して正確な位置および向きに蓋部を配して、蓋部を取り付けることができる。そして、蓋部を受入部に取り付けることにより、受入部を塞ぐとともに、連通路を封止することができる。
また、隔壁の内面と竿部の外周との間を封止する部材がOリングであるため、隔壁の内面と竿部の外周との間を封止する部材として、隔壁の内面に面接触する部材が使用される態様に比べて、小さい力で、竿部を円柱状の空間に挿入し、竿部を円柱状の空間から抜き取ることができる。
(3)上記形態のタンクにおいて、前記隔壁は、前記受入部に接続されている円柱状の空間と、前記円柱状の空間と前記第1室とを接続する第1開口と、前記円柱状の空間と前記第2室とを接続する第2開口であって、前記円柱状の空間が伸びる方向について、前記第1開口とは異なる位置に配されている第2開口と、を有し、前記連通路は、前記円柱状の空間のうち前記第1開口から前記第2開口に至る部位を含み、前記開閉部は、前記円柱状の空間内に一部が配されている棒状の部材である竿部と、前記竿部の中心軸方向に沿って前記竿部に弾性力を加える弾性部材と、を備え、前記竿部は、前記円柱状の空間を画定する前記隔壁の内面と、前記竿部の外周と、の間を封止するシール部を有し、前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記蓋部によって前記弾性部材の弾性力に抗して押されて、前記円柱状の空間内において前記第1開口と前記第2開口との間に前記シール部が位置する第1位置に、位置し、前記蓋部が前記受入部から外されたときに、前記弾性部材の弾性力によって前記受入部に向かう方向に押されて、前記円柱状の空間内において前記第1開口および前記第2開口の上に前記シール部が位置する第2位置に、位置するように構成されている、態様とすることもできる。
このような態様においては、蓋部が、受入部から外され、その結果、竿部が第2位置に位置することにより、受入部と連通路とがいずれも連通状態とされる。このため、その状態において、タンクの外部から、受入部を介して、第1室および第2室に容易に熱交換液を供給できる。また、蓋部を受入部に取り付けることにより、受入部を塞ぐとともに、連通路を封止することができる。
(4)上記形態のタンクにおいて、前記竿部は、一端から他端に至る貫通孔を有する、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、タンクの外部から、受入部、竿部の貫通孔、および円柱状の空間、ならびに隔壁の第1開口および第2開口を介して、第1室および第2室に、効率的に熱交換液を供給できる。
(5)上記形態のタンクにおいて、前記隔壁は、前記受入部に接続されている柱状の空間と、前記柱状の空間と前記第1室とを接続する第1開口と、前記柱状の空間と前記第2室とを接続する第2開口と、を有し、前記連通路は、前記柱状の空間のうち前記第1開口から前記第2開口に至る部位を含み、前記柱状の空間は、前記第1開口および前記第2開口と接続されている第1部分空間と、前記第1部分空間と前記受入部を接続しており、前記柱状の空間が伸びる方向に沿って見たときに、前記第1部分空間を包含する断面形状を有する第2部分空間と、を有し、前記開閉部は、前記蓋部に接続されている棒状の部材であって、前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記柱状の空間内に位置する、竿部と、前記竿部に接続され、前記蓋部が前記受入部を塞いでいるときに、前記第1部分空間において前記第1開口と前記第2開口を塞ぐ弁体部と、を備える、態様とすることもできる。
このような態様においては、竿部が接続されている蓋部が、受入部から外され、その結果、竿部および弁体部が柱状の空間から抜き取られることにより、受入部と連通路とがいずれも連通状態とされる。このため、その状態において、タンクの外部から、受入部を介して、第1室および第2室に容易に熱交換液を供給できる。また、蓋部に接続されている竿部および弁体部を柱状の空間に挿入して、蓋部を受入部に取り付けることにより、受入部に対して正確な位置および向きに蓋部を配して、蓋部を取り付けることができる。そして、蓋部を受入部に取り付けることにより、受入部を塞ぐとともに、連通路を封止することができる。
また、弁体部は、第1部分空間内において、第1開口と第2開口を塞ぐことができるとともに、第2部分空間内を少ない抵抗で移動することができる。このため、柱状の空間が一貫して第1部分空間と同じ断面形状を有する態様に比べて、小さい力で、竿部および弁体部を柱状の空間に挿入し、竿部および弁体部を柱状の空間から抜き取ることができる。
(6)上記形態のタンクにおいて、前記隔壁の少なくとも一部は、前記第1室の一部を画定する第1部材と、前記第2室の一部を画定する第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に配され、前記第1部材および前記第2部材よりも熱伝導率が低い素材で構成される中間部材と、を備える、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、第1室内の第1熱交換液と、第2室内の第2熱交換液と、の間で、移動する熱の量を低減できる。このため、第1熱交換液と第2室との間の熱の移動により、第1熱交換液の温度が第1温度範囲から大きく外れ、第2熱交換液の温度が第2温度範囲から大きく外れる可能性を、低減できる。
(7)上記形態のタンクにおいて、前記受入部は、円筒状の外形を備え、円筒の中心軸に沿って見たときに、前記受入部の内部空間のうち前記第1室と重なる領域の大きさと、前記受入部の前記内部空間のうち前記第2室と重なる領域の大きさと、が略同一となるように構成されている、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、タンクの外部から供給される熱交換液は、受入部を介して、第1室と第2室に均等に供給される。このため、連通路を介して第1室と前記第2室との間で熱交換液が流通して、第1室と第2室の熱交換液の液位が略同一になるまでに、連通路の流路抵抗や熱交換液の粘性に起因する時間遅れがある場合にも、早期に第1室と第2室の熱交換液の液位を略同一にすることができる。
(8)上記形態のタンクにおいて、前記第1温度範囲は、想定されている外気温よりも高い温度範囲を含み、前記第2温度範囲は、前記第1温度範囲の上限よりも高い温度範囲を含み、前記受入部は、円筒状の外形を備え、円筒の中心軸に沿って見たときに、前記受入部の内部空間のうち前記第1室と重なる領域の大きさが、前記受入部の内部空間のうち前記第2室と重なる領域の大きさよりも大きいように構成されている、態様とすることもできる。
第1対象物と第2対象物とが運転されている状態およびそれらの運転が終了した直後の状態においては、第1室内の第1熱交換液の温度は、外気温よりも高く、第2室内の第2熱交換液の温度は、第1熱交換液の温度よりも高い可能性が高い。一方、新たにタンクの外部からタンクに供給される熱交換液の温度は、外気温と同じ温度である可能性が高い。
上記のような態様とすれば、タンクの外部から供給される熱交換液は、受入部を介して、第1室に、第2室よりも多く供給される。そして、第1室内の熱交換液の一部が、連通路を介して、より温度が高い第2室に供給される。このため、タンクへの熱交換液の供給により、第1熱交換液の温度が第1温度範囲から大きく外れ、第2熱交換液の温度が第2温度範囲から大きく外れる可能性が、低減される。
本開示は、タンク以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、タンクの製造方法、温度制御が行われる装置とタンクとを備えた装置等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のタンク10を示す説明図である。
図2】本実施形態のタンク10を示す説明図である。
図3】蓋部500が受入部400から外され、外部からタンク10に熱交換液CLが供給される状態を示す説明図である。
図4】本実施形態のタンク10bを示す説明図である。
図5】本実施形態のタンク10cを示す説明図である。
図6】蓋部500が受入部400から外され、外部からタンク10cに熱交換液CLが供給される状態を示す説明図である。
図7】本実施形態のタンク10dを示す説明図である。
図8】竿部610dの先端が段差部324の近傍にあるときの段差部324の近傍の拡大図である。
図9】竿部610eの先端が第1開口321eおよび第2開口322eの近傍にあるときの第1開口321eおよび第2開口322eの近傍の拡大図である。
図10】竿部610eの先端が第1開口321eおよび第2開口322eの近傍にあるときの第2開口322eの近傍の拡大図である。
図11】弁体部617が連通路310eを塞いでいるときの第1開口321eおよび第2開口322eの近傍の拡大図である。
図12】弁体部617が連通路310eを塞いでいるときの第2開口322eの近傍の拡大図である。
図13】本実施形態のタンク10fを示す説明図である。
図14】本実施形態のタンク10gを示す説明図である。
図15】本実施形態のタンク10hを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態のタンク10を示す説明図である。図1は、タンク10の断面図に相当する。ただし、図1は、タンク10の各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。
【0014】
タンク10は、対象物Ob1,Ob2の温度を制御するための熱交換液CLを貯留する。対象物Ob1,Ob2のうち第1対象物Ob1は、電気自動車の電池パックである。対象物Ob1,Ob2のうち、第2対象物Ob2は、電気自動車の車室の温度を制御するためのヒータである。
【0015】
タンク10は、第1室100と、第2室200と、隔壁300と、受入部400と、蓋部500と、開閉部600と、ボディ900と、を備える。
【0016】
ボディ900は、タンク10の外殻を構成する。ボディ900内に熱交換液CLが収容される。ボディ900は、ポリプロピレン(PP)にガラス繊維が20%付加された素材で構成されている。
【0017】
第1室100は、第1熱交換液CL1を収容する(図1の上段左部参照)。第1熱交換液CL1は、第1対象物Ob1の温度を第1温度範囲RH1内に制御するための熱交換液CLである。第1温度範囲RH1は、想定されている外気温よりも高い温度範囲を含む。本実施形態において、想定されている外気温は、-30℃~50℃である。第1温度範囲RH1は、20℃~65℃である。図1において、第1対象物Ob1から流通口911を介してタンク10に送出される第1熱交換液CL1の流れを、矢印Ac11で示す。タンク10から流通口912を介して第1対象物Ob1に送出される第1熱交換液CL1の流れを、矢印Ac12で示す。
【0018】
第2室200は、第2熱交換液CLを収容する(図1の上段右部参照)。第2熱交換液CL2の構成と、第1熱交換液CL1の構成とは、同じである。第2熱交換液CLは、第2対象物Ob2の温度を第2温度範囲RH2内に制御するための熱交換液CLである。第2温度範囲RH2は、第1温度範囲RH1とは異なる。より具体的には、第2温度範囲RH2は、第1温度範囲RH1の上限よりも高い温度範囲を含む。第2温度範囲RH2は、具体的には、60℃~80℃である。図1において、第2対象物Ob2から流通口921を介してタンク10に送出される第2熱交換液CL2の流れを、矢印Ac21で示す。タンク10から流通口922を介して第2対象物Ob2に送出される第2熱交換液CL2の流れを、矢印Ac22で示す。
【0019】
隔壁300は、第1室100と第2室200とを隔てる(図1の中央部参照)。隔壁300がボディ900内の空間を二つの空間に区分することにより、第1室100と第2室200とが、構成されている。タンク10が使用される際の姿勢において、隔壁300は、鉛直方向を含む向きに沿って配される。隔壁300は、円柱状の空間320と、第1開口321と、第2開口322と、を有する。
【0020】
タンク10が使用される際の姿勢において、円柱状の空間320は、鉛直方向に沿って伸びている(図1の中央部参照)。円柱状の空間320は、受入部400に接続されている。より具体的には、円柱状の空間320は、ボディ900内の空間を介して、円筒状の受入部400の内部空間に接続されている。隔壁300が有する円柱状の空間320の中心軸は、円筒状の受入部400の中心軸CAと一致する。
【0021】
第1開口321は、円柱状の空間320と第1室100とを接続している(図1の中段左部参照)。第2開口322は、円柱状の空間320と第2室200とを接続している(図1の中段右部参照)。第2開口322は、円柱状の空間320が伸びる方向D1について、第1開口321とは異なる位置に配されている。より具体的には、第2開口322は、円柱状の空間320が伸びる方向D1について、第1開口321よりも受入部400に近い位置に配されている。
【0022】
円柱状の空間320のうち第1開口321から第2開口322に至る部位を、「連通路310」とも呼ぶ(図1の中央部参照)。すなわち、隔壁300は、第1室100と第2室200とを連通させる連通路310を備える。連通路310は、隔壁300において、第1室100および第2室200において想定されている熱交換液CLの最高液位Lmaxの1/2よりも低い位置P310に設けられている。なお、連通路の位置とは、タンクが使用される際の姿勢において、連通路のうち最も高い位置にある部位の位置である。図1において、第1室100および第2室200において想定されている熱交換液CLの最低の液位を最低液位Lminとして示す。
【0023】
受入部400は、タンク10の外部から供給される熱交換液CLを受け入れて、第1室100と第2室200とに供給する(図1の上段右部参照)。受入部400は、円筒状の外形を備える。受入部400の内面には、雌ネジが形成されている。受入部400の内部空間は、ボディ900内の空間と、ボディ900外の空間とを、接続している。
【0024】
図2は、本実施形態のタンク10を示す説明図である。図2は、蓋部500をボディ900から外した状態のタンク10を、鉛直下方に向かって見たときの透視図に相当する。ただし、図2は、タンク10の各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。図1は、図2に示したI-I線に沿ってタンク10を分割した場合の断面図に相当する。
【0025】
受入部400の円筒の中心軸CAに沿って見たときに、受入部400の内部空間のうち第1室100と重なる領域AR41の大きさと、受入部400の内部空間のうち第2室200と重なる領域AR42の大きさと、が略同一となるように、受入部400は構成されている。なお、本明細書において、2以上の領域の大きさが「略同一である」とは、2以上の領域について、それらの領域の面積のうち最大のものと最小のものとの差が、最大のものの面積の10%以下であることを意味する。
【0026】
このような構成とすることにより、タンク10の外部から供給される熱交換液CLは、受入部400を介して、第1室100と第2室200に均等に供給される。このため、第1室100と第2室200の熱交換液CLの液位が略同一となる。また、後述する連通路310を介して第1室100と第2室200との間で熱交換液CLが流通して、第1室100と第2室200の熱交換液CLの液位が略同一になるまでに、連通路310の流路抵抗や熱交換液CLの粘性に起因する時間遅れがある場合にも、以下の効果が奏される。すなわち、早期に第1室100と第2室200の熱交換液CLの液位が略同一となる。
【0027】
蓋部500は、受入部400を塞ぐ(図1の上段中央部参照)。蓋部500は、より具体的には、円筒状の形状を有する部分と、円筒状の部分の一端を塞ぐ底部と、底部から円筒状の部分の内部空間に突出する円柱状の部分と、を備える。蓋部500の円柱状の部分の外面には、雄ネジが形成されている。蓋部500の円柱状の部分が受入部400の内部空間にねじ込まれることにより、蓋部500が受入部400に対して固定される。その結果、蓋部500により受入部400が塞がれる。受入部400の入口近傍の雌ネジと、蓋部500の円柱状の部分の先端部の雄ネジとの間には、寸法の余裕が設けられている。このため、受入部400への蓋部500の取付が容易となる。
【0028】
開閉部600は、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、連通路310を封止し、蓋部500が受入部400を塞いでいないときに、連通路310を流通可能にする(図1の上段中央部参照)。開閉部600は、竿部610を備える。
【0029】
図3は、蓋部500が受入部400から外され、外部からタンク10に熱交換液CLが供給される状態を示す説明図である。図3において、タンク10に熱交換液CLを供給する供給ガンを、供給ガンPGとして示す。
【0030】
竿部610は、蓋部500に接続されている棒状の部材である(図1の上段中央部参照)。より具体的には、竿部610は、蓋部500の中心軸に沿って、蓋部500に接続されている。竿部610は、蓋部500に対して固定されている、円形断面を有する棒状の部材である。竿部610は、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、円柱状の空間320内に位置する。蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、竿部610の中心軸は、円柱状の空間320の中心軸CA、および円筒状の受入部400の中心軸CAと一致する。蓋部500が受入部400から外されると、竿部610は、隔壁300の円柱状の空間320から抜き取られる(図3の中央部参照)。
【0031】
竿部610は、Oリング612を有する(図1の中央部参照)。Oリング612は、円柱状の空間320を画定する隔壁300の内面325と、竿部610の外周611と、の間を封止する。Oリング612は、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、円柱状の空間320内において第1開口321と第2開口322との間に位置する部位に配されている。その結果、開閉部600は、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、連通路310を封止し、蓋部500が受入部400を塞いでいないときに、連通路310を流通可能にする。
【0032】
このような構成とすることにより、竿部610が接続されている蓋部500が受入部400から外され、その結果、竿部610が円柱状の空間320から抜き取られることにより、受入部400と連通路310とがいずれも連通状態とされる。このため、その状態において、タンク10の外部から、受入部400を介して、第1室100および第2室200に容易に熱交換液CLを供給できる(図2参照)。
【0033】
受入部400への蓋部500の取付を容易にするために、受入部400の入口近傍の雌ネジと、蓋部500の円柱状の部分の先端部の雄ネジとの間には、寸法の余裕が設けられている。このため、蓋部が竿部と接続されていない態様においては、蓋部が受入部に対して傾いた状態ではめ込まれ、そのまま回転されることがある。そのような場合には、受入部に蓋部を適正に取り付けることはできない。
【0034】
しかし、本実施形態のタンク10においては、蓋部500に接続されている竿部610を円柱状の空間320に挿入して、蓋部500を受入部400に取り付けることにより、受入部400に対して正確な位置および向きに蓋部500を配して、蓋部500を取り付けることができる(図1参照)。そして、蓋部500を受入部400に取り付けることにより、受入部400を塞ぐとともに、連通路310を封止することができる。このため、連通路が蓋部の開閉と独立に開閉される態様とは異なり、タンクへの熱交換液の供給後、連通路の封止をし忘れることがない。
【0035】
また、本実施形態のタンク10においては、隔壁300の内面325と竿部610の外周との間を封止する部材がOリング612である(図1の中央部参照)。このため、隔壁300の内面325と竿部610の外周との間を封止する部材として、隔壁300の内面325に面接触する部材が使用される態様に比べて、小さい力で、竿部610を円柱状の空間320に挿入し、竿部610を円柱状の空間320から抜き取ることができる。
【0036】
なお、Oリングの弾性変形量は、通常は、外力の方向について、外力を受けていないときの外寸に対して、8%~30%である。これに対して、本実施形態においては、竿部610が円柱状の空間320内に位置する状態において、Oリング612の弾性変形量は、外力の方向について、外力を受けていないときの外寸に対して、5%~8%である。このため、竿部610が円柱状の空間320から抜き差しされても、Oリング612が隔壁300の内面325から受ける歪み力により破壊されることはない。
【0037】
なお、本実施形態において、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、開閉部600が行う連通路310の封止は、5%~8%圧縮されたOリングで実現できる程度の封止でよい(図1参照)。すなわち、開閉部600が行う連通路310の封止は、完璧な封止である必要はない。
【0038】
一方、Oリング612が隔壁300の内面325と竿部610の外周との間において5%~8%弾性変形していれば、第1室100と第2室200との間の熱交換液CLの流通を十分阻害できる。その結果、第1室100内の第1熱交換液CL1と、第2室200内の第2熱交換液CLと、の間で、移動する熱の量を低減できる。このため、タンク10が使用される際に、第1熱交換液CL1と第2熱交換液CL2との間の熱の移動により、第1熱交換液CL1の温度が第1温度範囲RH1から大きく外れ、第2熱交換液CLの温度が第2温度範囲RH2から大きく外れる可能性を、低減できる。
【0039】
本実施形態のタンク10によれば、第1室100内と第2室200内の少なくとも一方に、連通路310の高さまで熱交換液CLが供給されることにより、連通路310を介して、第1室100と第2室200の両方に、同じ液位まで熱交換液CLが供給される(図3の中央部参照)。このため、想定された最高液位Lmaxの1/2よりも低い位置まで、第1室100内と第2室200内の少なくとも一方に熱交換液CLが供給されることにより、第1室100と第2室200の両方に、同じ液位まで熱交換液CLが供給される。そして、蓋部500が受入部400から取り外されることにより、タンク10に対して別途の操作が行われなくても、上記の効果が得られる。
【0040】
本実施形態のタンク10によれば、第1対象物Ob1の温度を制御する第1熱交換液CL1と、第2対象物Ob2の温度を制御する第2熱交換液CLと、について、個別にタンクを設ける態様に比べて、タンクが占める空間の大きさを小さくできる。また、個別にタンクを設ける態様に比べて、蓋部を含むタンク全体の製造コストを低減できる。さらに、一つの受入部400を介して、第1室100と第2室200の両方に熱交換液CLを供給できるため、熱交換液を供給する際のユーザの負荷を低減できる。
【0041】
B.第2実施形態:
第2実施形態のタンク10bにおいては、隔壁300bの構成が、第1実施形態のタンク10の隔壁300の構成とは異なる。第2実施形態のタンク10bの他の点は、第1実施形態のタンク10と同じである。以下で、第1実施形態のタンク10との相違点について説明する。
【0042】
図4は、本実施形態のタンク10bを示す説明図である。図4は、蓋部500をボディ900から外した状態のタンク10bを、鉛直下方に向かって見たときの透視図に相当する。ただし、図4は、タンク10の各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。図4は、第1実施形態の図2に対応する。
【0043】
隔壁300bは、第1部材301と、第2部材302と、中間部材303と、を備える(図4の中央部参照)。第1部材301は、第1室100の一部を画定する(図4の上段中央部参照)。第1室100の他の一部は、ボディ900の内面によって画定されている。第2部材302は、第2室200の一部を画定する(図4の上段中央部参照)。第2室200の他の一部は、ボディ900の内面によって画定されている。
【0044】
第1部材301の上端と第2部材302の上端とは、図示しない板状部材で封止されている。このため、外部から熱交換液CLが供給される際に、熱交換液CLが第1部材301と第2部材302との間に入ることはない。
【0045】
中間部材303は、第1部材301と第2部材302との間に配されている(図4の上段中央部参照)。中間部材303は、第1部材301および第2部材302よりも熱伝導率が低い素材で構成されている。より具体的には、中間部材303の素材は、発泡ポリウレタンである。一方、第1部材301および第2部材302は、ポリプロピレン(PP)にガラス繊維が20%付加された素材で構成されている。
【0046】
このような構成とすることにより、第1室100内の第1熱交換液CL1と、第2室200内の第2熱交換液CLと、の間で、移動する熱の量を低減できる。このため、第1熱交換液CL1と第2室200との間の熱の移動により、第1熱交換液CL1の温度が第1温度範囲RH1から大きく外れ、第2熱交換液CLの温度が第2温度範囲RH2から大きく外れる可能性を、低減できる。
【0047】
たとえば、電気自動車が長い上り坂を走行する場合、単位時間あたりに多くのエネルギーが電気自動車の電池パックから取り出される。その結果、電池パックは高温になる。そのような場合には、第1対象物Ob1としての電池パックの温度を制御する第1熱交換液CL1の温度は、高くなる。しかし、本実施形態によれば、そのような場合にも、第1熱交換液CL1の昇温に起因して第2熱交換液CL2の温度が高くなってしまう事態を防止できる。
【0048】
C.第3実施形態:
第3実施形態のタンク10cにおいては、開閉部600cの構成が、第1実施形態のタンク10の開閉部600の構成とは異なる。第3実施形態のタンク10cの他の点は、第1実施形態のタンク10と同じである。以下で、第1実施形態のタンク10との相違点について説明する。
【0049】
図5は、本実施形態のタンク10cを示す説明図である。図5は、タンク10cの断面図に相当する。ただし、図5は、タンク10cの各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。図5は、第1実施形態の図1に対応する。
【0050】
開閉部600cは、竿部610cと、弾性部材620と、を備える。
【0051】
竿部610cは、隔壁300の円柱状の空間320内に一部が配されている棒状の部材である(図5の中央部参照)。竿部610cの他の一部は、隔壁300の上端から突出している。竿部610cは、蓋部500に接続されていない。竿部610cは、シール部612cを有する。
【0052】
シール部612cは、隔壁300の円柱状の空間320を画定する隔壁300の内面325と、竿部610cの外周と、の間を封止する。シール部612cは、具体的には、竿部610cの外周面から突出している3個のリング状の凸部である。シール部612cの凸形状の先端は、円柱状の空間320を画定する隔壁300の内面325に接触している。
【0053】
弾性部材620は、竿部610cの中心軸CA方向に沿って竿部610cに弾性力を加える(図5の下段中央部参照)。より具体的には、弾性部材620は、蓋部500が受入部400を塞いでいる状態において、竿部610cの先端を受入部400に向かって押圧するコイルバネである。
【0054】
開閉部600cにおいて、竿部610cは、以下のように構成されている。蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、蓋部500によって弾性部材620の弾性力に抗して竿部610cの上端が押されて、竿部610cは、第1位置に、位置する。第3実施形態において、図5に示す竿部610cの位置が第1位置である。竿部610cが第1位置にあるとき、円柱状の空間320内において第1開口321と第2開口322との間に、シール部612cが位置する(図5の下段中央部参照)。
【0055】
図6は、蓋部500が受入部400から外され、外部からタンク10cに熱交換液CLが供給される状態を示す説明図である。図6は、第1実施形態の図3に対応する。
【0056】
蓋部500が受入部400から外されたときに、弾性部材620の弾性力によって受入部400に向かう方向に竿部610cの下端が押されて、竿部610cは、第2位置に、位置する。第3実施形態において、図6に示す竿部610cの位置が第2位置である。竿部610cが第2位置にあるとき、円柱状の空間320内において第1開口321および第2開口322の上に、シール部612cが位置する(図6の中央部参照)。
【0057】
このような構成とすることにより、蓋部500が、受入部400から外され、その結果、竿部610cが第2位置に位置することにより、受入部400と連通路310とがいずれも連通状態とされる(図6の中央部参照)。このため、その状態において、タンク10cの外部から、受入部400を介して、第1室100および第2室200に容易に熱交換液CLを供給できる。第1室100と第2室200のうち、熱交換液CLの液位が高い方から、熱交換液CLの液位が低い方へ、連通路310を介して、熱交換液CLが流れる。そして、蓋部500を受入部400に取り付けることにより、受入部400を塞ぐとともに、連通路310を封止することができる(図5の中央部参照)。
【0058】
D.第4実施形態:
第4実施形態のタンク10dにおいては、隔壁300dおよび竿部610dの構成が、第3実施形態のタンク10cの隔壁300および竿部610の構成とは異なる。第4実施形態のタンク10dの他の点は、第3実施形態のタンク10cと同じである。以下で、第3実施形態のタンク10との相違点について説明する。
【0059】
図7は、本実施形態のタンク10dを示す説明図である。図7は、タンク10dの断面図に相当する。ただし、図7は、タンク10dの各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。技術の理解を容易にするため、図7においては、竿部610dが備えるシール部612dを示していない。
【0060】
第4実施形態のタンク10dにおいて、竿部610dは、一端から他端に至る貫通孔615を有する。その結果、蓋部500が受入部400から外された状態において、タンク10dの外部の空間は、竿部610dの貫通孔615、隔壁300の円柱状の空間320、および第1開口321を介して、第1室100と連通している。
【0061】
第4実施形態のタンク10dにおいて、隔壁300dは、円柱状の空間320と、第1開口321と、第2開口322と、に加えて、さらに、拡張流路部323と、段差部324とを備える。
【0062】
図8は、竿部610dの先端が段差部324の近傍にあるときの段差部324の近傍の拡大図である。図8も、タンク10dの各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。
【0063】
拡張流路部323は、円柱状の空間320の外周に設けられた管状の流路である(図7の中央部および図8の上段参照)。拡張流路部323は、円柱状の空間320とともに、円柱状の空間320よりも直径が大きい一体の円柱状の空間を形成する。拡張流路部323は、円柱状の空間320の中心軸CA方向について、隔壁300の上端から、第1開口321と第2開口322の間の位置まで、設けられている。
【0064】
竿部610dが備えるシール部612cは、隔壁300において拡張流路部323を画定する内壁とは接触しない(図7の中央部参照)。すなわち、竿部610dの外周611と、隔壁300において拡張流路部323を画定する内壁と、の間は、流路として機能する。
【0065】
竿部610dが備えるシール部612cは、拡張流路部323が設けられていない範囲の円柱状の空間320を画定する隔壁300の内面325と、竿部610の外周611と、の間を封止する(図8の中段参照)。
【0066】
段差部324は、隔壁300の内面325から円柱状の空間320内に突出している構成である。弾性部材620の弾性力に抗して竿部610dが下方に押し込まれると、竿部610dの先端は、段差部324に接触する。竿部610dの先端は、段差部324と接触した状態から、それ以上、下方に押し込まれることはない。
【0067】
開閉部600dにおいて、竿部610dは、以下のように構成されている。蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、蓋部500によって弾性部材620の弾性力に抗して竿部610dの上端が押されて、竿部610dは、第1位置に、位置する。第4実施形態において、図8に示す竿部610dの位置が第1位置である。
【0068】
竿部610が第1位置にあるとき、円柱状の空間320内において第1開口321と第2開口322との間に、シール部612cが位置する(図8の中段参照)。この状態において、シール部612cは、拡張流路部323が設けられていない範囲の円柱状の空間320を画定する隔壁300の内面325と、竿部610の外周611と、の間を封止する。その結果、(i)竿部610dの貫通孔615、隔壁300の円柱状の空間320、および第1室100と、(ii)第2室200とは、連通しない状態となる。
【0069】
蓋部500が受入部400から外されたときに、弾性部材620の弾性力によって受入部400に向かう方向に竿部610dの下端が押されて、竿部610は、第2位置に、位置する。第4実施形態において、図7に示す竿部610dの位置が第2位置である。
【0070】
竿部610が第2位置にあるとき、拡張流路部323が設けられている範囲に、シール部612cが位置する(図7の中央部参照)。この状態において、シール部612cは、隔壁300において拡張流路部323を画定する内壁とは接触しない(図7の中央部参照)。その結果、拡張流路部323を介して、竿部610dの貫通孔615、隔壁300の円柱状の空間320、および第1室100と、第2室200とは、連通した状態となる。
【0071】
このような構成とすることにより、蓋部500が受入部400から外された状態において、タンク10dの外部から、受入部400、竿部610dの貫通孔615、および円柱状の空間320、ならびに隔壁300の第1開口321および第2開口322を介して、第1室100および第2室200に、効率的に熱交換液CLを供給できる(図7参照)。
【0072】
E.第5実施形態:
第5実施形態のタンク10eにおいては、隔壁300eおよび開閉部600eの構成が、第1実施形態のタンク10の隔壁300および開閉部600の構成とは異なる。第5実施形態のタンク10eの他の点は、第1実施形態のタンク10と同じである。以下で、第1実施形態のタンク10との相違点について説明する。
【0073】
図9は、竿部610eの先端が第1開口321eおよび第2開口322eの近傍にあるときの第1開口321eおよび第2開口322eの近傍の拡大図である。図9は、タンク10eの各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。
【0074】
隔壁300eは、受入部400に接続されている柱状の空間320eと、第1開口321eと、第2開口322eと、を有する。
【0075】
柱状の空間320eは、より具体的には、四角形の断面形状を有する柱状の空間320eである(図9の上段中央部参照)。ただし、隔壁300eに垂直な向きD2についての柱状の空間320eの厚みは、柱状の空間320eの下端部において、他の部分よりも小さい(図9の下段中央部参照)。柱状の空間320eの第1室100側の内壁は、平面である。柱状の空間320eの第2室200側の内壁は、段差を有する。
【0076】
その結果、柱状の空間320eは、第1部分空間326と、第2部分空間327と、を有する。第1部分空間326は、第1開口321eおよび第2開口322eと接続されている部分空間である。第2部分空間327は、第1部分空間326と受入部400を接続している部分空間である。柱状の空間320eが伸びる方向D1に沿って見たときに、第2部分空間327は、開閉部600eの弁体部617より大きく、第1部分空間326を包含する断面形状を有する。
【0077】
第5実施形態のタンク10eにおいては、第2開口322eは、柱状の空間320eが伸びる方向D1について、第1開口321eと同じ位置に配されている(図9の下段参照)。より具体的には、第1開口321eと第2開口322eとは、柱状の空間320eの下端部に設けられている。第1室100と第2室200とを連通させる連通路310eは、第1開口321eと第2開口322eとを両端とし、方向D2に平行な方向を中心軸とする円柱状の空間である。
【0078】
開閉部600eは、竿部610eと、弁体部617と、を備える。
【0079】
竿部610eは、蓋部500に接続されている棒状の部材である(図1の上段中央部参照)。より具体的には、竿部610eは、蓋部500の中心軸に沿って、蓋部500に接続されている。竿部610eは、蓋部500の中心軸を中心に、蓋部500に対して回転できるように、蓋部500に接続されている。このため、蓋部500が受入部400に対して回転されているときにも、竿部610eは、一定の向きを保つことができる。竿部610eは、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、柱状の空間320e内に位置する。
【0080】
図10は、竿部610eの先端が第1開口321eおよび第2開口322eの近傍にあるときの第2開口322eの近傍の拡大図である。図10は、第1室100から第2室200に向かう向きに各構成を見たときの図である。図10は、タンク10eの各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。
【0081】
弁体部617は、竿部610eに接続されている。弁体部617は、円板状の形状を有する。弁体部617は、連通路310eの中心軸に平行な中心軸を有する。弁体部617の直径は、第1開口321eおよび第2開口322eの直径よりも大きい。弁体部617は、弾性部材で構成されている。
【0082】
図11は、弁体部617が連通路310eを塞いでいるときの第1開口321eおよび第2開口322eの近傍の拡大図である。図11は、タンク10eの各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。
【0083】
図12は、弁体部617が連通路310eを塞いでいるときの第2開口322eの近傍の拡大図である。図12は、第1室100から第2室200に向かう向きに各構成を見たときの図である。図12は、タンク10eの各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。
【0084】
蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、弁体部617は、柱状の空間320eの第1部分空間326に位置する。そして、弁体部617の中央部分は、連通路310e内に位置する(図11の下段参照)。一方、弁体部617の外周部分の表面は、柱状の空間320eの第1室100側の内壁のうち第1開口321eを囲む部分、空間320eの第2室200側の内壁のうち第2開口322eを囲む部分、および空間320eの下方の内壁と、密着する(図12の下段参照)。その結果、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、弁体部617は、柱状の空間320eの第1部分空間326において第1開口321eと第2開口322eを塞ぐ。
【0085】
このような構成とすることにより、竿部610eが接続されている蓋部500が、受入部400から外され、その結果、竿部610eおよび弁体部617が柱状の空間320eから抜き取られることにより、受入部400と連通路310eとがいずれも連通状態とされる。このため、その状態において、タンク10eの外部から、受入部400を介して、第1室100および第2室200に容易に熱交換液CLを供給できる。また、蓋部500に接続されている竿部610eおよび弁体部617を柱状の空間320eに挿入して、蓋部500を受入部400に取り付けることにより、受入部400に対して正確な位置および向きに蓋部500を配して、蓋部500を取り付けることができる。そして、蓋部500を受入部400に取り付けることにより、受入部400を塞ぐとともに、連通路310を封止することができる。
【0086】
また、第5実施形態のタンク10eにおいては、弁体部617は、第1部分空間326内において、第1開口321eと第2開口322eを塞ぐことができるとともに、第2部分空間327内を少ない抵抗で移動することができる(図9の下段および図11の下段参照)。このため、柱状の空間320eが一貫して第1部分空間326と同じ断面形状を有する態様に比べて、小さい力で、竿部610eおよび弁体部617を柱状の空間320eに挿入し、竿部610eおよび弁体部617を柱状の空間320eから抜き取ることができる。
【0087】
F.第6実施形態:
第6実施形態のタンク10fにおいては、隔壁300f、熱交換液CLを収容する空間、および開閉部600fの構成が、第1実施形態のタンク10の隔壁300、第1室100、第2室200、および開閉部600の構成とは異なる。第6実施形態のタンク10fの他の点は、第1実施形態のタンク10と同じである。以下で、第1実施形態のタンク10との相違点について説明する。
【0088】
図13は、本実施形態のタンク10fを示す説明図である。図13は、蓋部500をボディ900から外した状態のタンク10fを、鉛直下方に向かって見たときの透視図に相当する。ただし、図13は、タンク10fの各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。
【0089】
タンク10fは、隔壁300に代えて隔壁300fを備える。タンク10fは、第1室100と、第2室200と、に代えて、第1室100fと、第2室200fと、第3室700fと、を備える。タンク10fは、開閉部600に代えて開閉部600fを備える。
【0090】
隔壁300fは、第1室100fと、第2室200fと、第3室700fと、を隔てる(図13の中央部参照)。隔壁300fは、ボディ900内において、受入部400の中心軸CAを中心に、三方に放射状に伸びている。隔壁300fがボディ900内の空間を3個の空間に区分することにより、第1室100fと、第2室200fと、第3室700fとが、構成されている。
【0091】
第1室100fは、第1熱交換液CL1を収容する(図13の上段左部参照)。第1熱交換液CL1は、第1対象物Ob1から流通口911fを介して第1室100fに送出される。第1熱交換液CL1は、第1室100fから流通口912fを介して第1対象物Ob1に送出される。
【0092】
第2室200fは、第2熱交換液CL2を収容する(図13の上段右部参照)。第2熱交換液CL2は、第2対象物Ob2から流通口921fを介して第2室200fに送出される。第2熱交換液CL2は、第2室200fから流通口922fを介して第2対象物Ob2に送出される。
【0093】
第3室700fは、第3熱交換液CL3を収容する(図13の下段参照)。第3熱交換液CL3の構成と、第2熱交換液CL2の構成と、第1熱交換液CL1の構成とは、同じである。第3熱交換液CL3は、第3対象物Ob3から流通口931fを介して第3室700fに送出される。第3熱交換液CL3は、第3室700fから流通口932fを介して第3対象物Ob3に送出される。図13において、第3対象物Ob3から流通口931fを介してタンク10fに送出される第3熱交換液CL3の流れを、矢印Ac31で示す。
【0094】
隔壁300fは、円柱状の空間320fを備える。円柱状の空間320fの中心軸と、受入部400の中心軸CAとは一致する。隔壁300fは、さらに、(i)空間320fと、(ii)第1室100f、第2室200f、および第3室700fと、をそれぞれ連通する3個の開口を備える。3個の開口は、円柱状の空間320fが伸びる方向について、互いに異なる位置に配されている。
【0095】
円柱状の空間320fのうち上記の各開口をつなぐ部位を、「連通路」とも呼ぶ。連通路は、隔壁300fにおいて、第1室100、第2室200、および第3室700fにおいて想定されている熱交換液CLの最高液位の1/2よりも低い位置に設けられている。
【0096】
竿部610fは、2個のOリングを有する。各Oリングは、円柱状の空間320fを画定する隔壁300fの内面と、竿部610fの外周と、の間を封止する。各Oリングは、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、円柱状の空間320f内において上記の3個の開口のうち隣接する開口の間にそれぞれ位置する部位に、配されている。
【0097】
その結果、開閉部600fは、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、円柱状の空間320f内において各開口をつなぐ連通路を封止し、蓋部500が受入部400を塞いでいないときに、連通路を流通可能にする。
【0098】
本実施形態のタンク10fによれば、第1室100f内と第2室200f内と第3室700f内との少なくともいずれかに、連通路の高さまで熱交換液CLが供給されることにより、連通路を介して、第1室100fと第2室200fと第3室700fのすべてに、同じ液位まで熱交換液CLが供給される。このため、想定された最高液位Lmaxの1/2よりも低い位置まで、第1室100fと第2室200fと第3室700fのいずれかに熱交換液CLが供給されることにより、第1室100fと第2室200fと第3室700fのすべてに、同じ液位まで熱交換液CLが供給される。そして、蓋部500が受入部400から取り外されることにより、タンク10に対して別途の操作が行われなくても、上記の効果が得られる。
【0099】
G.第7実施形態:
第7実施形態のタンク10gにおいては、隔壁300g、熱交換液CLを収容する空間、および開閉部600gの構成が、第1実施形態のタンク10の隔壁300、第1室100、第2室200、および開閉部600の構成とは異なる。第7実施形態のタンク10gの他の点は、第1実施形態のタンク10と同じである。以下で、第1実施形態のタンク10との相違点について説明する。
【0100】
図14は、本実施形態のタンク10gを示す説明図である。図14は、蓋部500をボディ900から外した状態のタンク10gを、鉛直下方に向かって見たときの透視図に相当する。ただし、図14は、タンク10gの各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。
【0101】
タンク10gは、隔壁300に代えて隔壁300gを備える。タンク10gは、第1室100と、第2室200と、に代えて、第1室100gと、第2室200gと、第3室700gと、第4室800gと、を備える。タンク10gは、開閉部600に代えて開閉部600gを備える。
【0102】
隔壁300gは、第1室100gと、第2室200gと、第3室700gと、第4室800gと、を隔てる(図14の中央部参照)。隔壁300gは、ボディ900内において、受入部400の中心軸CAを中心に、四方に放射状に伸びている。隔壁300gがボディ900内の空間を4個の空間に区分することにより、第1室100gと、第2室200gと、第3室700gと、第4室800gとが、構成されている。
【0103】
第1室100gは、第1熱交換液CL1を収容する(図14の上段左部参照)。第1熱交換液CL1は、第1対象物Ob1から流通口911gを介して第1室100gに送出される。第1熱交換液CL1は、第1室100gから流通口912gを介して第1対象物Ob1に送出される。
【0104】
第2室200gは、第2熱交換液CL2を収容する(図14の上段右部参照)。第2熱交換液CL2は、第2対象物Ob2から流通口921gを介して第2室200gに送出される。第2熱交換液CL2は、第2室200gから流通口922gを介して第2対象物Ob2に送出される。
【0105】
第3室700gは、第3熱交換液CL3を収容する(図14の下段左部参照)。第3熱交換液CL3は、第3対象物Ob3から流通口931gを介して第3室700gに送出される。第3熱交換液CL3は、第3室700gから流通口932gを介して第3対象物Ob3に送出される。
【0106】
第4室800gは、第4熱交換液CL4を収容する(図14の下段右部参照)。第4熱交換液CL4の構成と、第3熱交換液CL3の構成と、第2熱交換液CL2の構成と、第1熱交換液CL1の構成とは、同じである。第4熱交換液CL4は、第4対象物Ob4から流通口941gを介して第4室800gに送出される。第4熱交換液CL4は、第4室800gから流通口942gを介して第4対象物Ob4に送出される。図14において、第4対象物Ob4から流通口931gを介してタンク10gに送出される第4熱交換液CL4の流れを、矢印Ac31で示す。
【0107】
隔壁300gは、円柱状の空間320gを備える。円柱状の空間320gの中心軸と、受入部400の中心軸CAとは一致する。隔壁300gは、さらに、(i)空間320gと、(ii)第1室100g、第2室200g、第3室700gと、および第4室800gと、をそれぞれ連通する4個の開口を備える。4個の開口は、円柱状の空間320gが伸びる方向について、互いに異なる位置に配されている。
【0108】
円柱状の空間320gのうち上記の各開口をつなぐ部位を、「連通路」とも呼ぶ。連通路は、隔壁300gにおいて、第1室100、第2室200、第3室700g、および第4室800gにおいて想定されている熱交換液CLの最高液位の1/2よりも低い位置に設けられている。
【0109】
竿部610gは、3個のOリングを有する。各Oリングは、円柱状の空間320gを画定する隔壁300gの内面と、竿部610gの外周と、の間を封止する。各Oリングは、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、円柱状の空間320g内において4個の開口のうち隣接する開口の間にそれぞれ位置する部位に配されている。
【0110】
その結果、開閉部600gは、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、円柱状の空間320g内において各開口をつなぐ連通路を封止し、蓋部500が受入部400を塞いでいないときに、連通路を流通可能にする。
【0111】
本実施形態のタンク10gによれば、第1室100g内と第2室200g内と第3室700g内と第4室800g内との少なくともいずれかに、連通路の高さまで熱交換液CLが供給されることにより、連通路を介して、第1室100gと第2室200gと第3室700gと第4室800gのすべてに、同じ液位まで熱交換液CLが供給される。このため、想定された最高液位Lmaxの1/2よりも低い位置まで、第1室100gと第2室200gと第3室700gと第4室800gのいずれかに熱交換液CLが供給されることにより、第1室100gと第2室200gと第3室700gと第4室800gのすべてに、同じ液位まで熱交換液CLが供給される。そして、蓋部500が受入部400から取り外されることにより、タンク10に対して別途の操作が行われなくても、上記の効果が得られる。
【0112】
H.第8実施形態:
第8実施形態のタンク10hにおいては、受入部400hの構成が、第3実施形態のタンク10cの受入部400cの構成とは異なる。第8実施形態のタンク10hの他の点は、第3実施形態のタンク10cと同じである。以下で、第3実施形態のタンク10cとの相違点について説明する。
【0113】
図15は、本実施形態のタンク10hを示す説明図である。図15は、蓋部500をボディ900から外した状態のタンク10hを、鉛直下方に向かって見たときの透視図に相当する。ただし、図15は、タンク10hの各部の寸法および形状を正確に表現するものではない。図15は、第1実施形態の図2に対応する。
【0114】
第8実施形態において、受入部400hは、以下のように構成されている。受入部400hは、円筒状の外形を備える。円筒の中心軸CA4に沿って見たときに、受入部400hの内部空間のうち第1室100と重なる領域AR41hの大きさは、受入部400hの内部空間のうち第2室200と重なる領域AR42hの大きさよりも大きい(図13の中央部参照)。すなわち、蓋部500が受入部400hを塞いでいるときに、円筒状の受入部400hの中心軸CA4は、開閉部600cの竿部610cの中心軸CAおよび隔壁300の円柱状の空間320の中心軸CAと、一致しない。一方、竿部610cの中心軸CAは、円柱状の空間320の中心軸CAと一致する。受入部400hの他の点は、第1実施形態のタンク10の受入部400と同じである。
【0115】
第1対象物Ob1と第2対象物Ob2とが運転されている状態およびそれらの運転が終了した直後の状態においては、第1室100内の第1熱交換液CL1の温度は、外気温よりも高く、第2室200内の第2熱交換液CLの温度は、第1熱交換液CL1の温度よりも高い可能性が高い。一方、新たにタンク10hの外部からタンク10hに供給される熱交換液CLの温度は、外気温と同じ温度である可能性が高い。
【0116】
本実施形態のタンク10hにおいては、第1室100と重なる領域AR41hの大きさが、第2室200と重なる領域AR42hの大きさよりも大きい。このため、タンク10hの外部から供給される熱交換液CLは、受入部400hを介して、第1室100に、第2室200よりも多く供給される。そして、第1室100内の熱交換液CLの一部が、連通路310を介して、より温度が高い第2室200に供給される。よって、タンク10hへの熱交換液CLの供給により、第1熱交換液CL1の温度が第1温度範囲RH1から大きく外れ、第2熱交換液CLの温度が第2温度範囲RH2から大きく外れる可能性が、低減される。
【0117】
I.他の実施形態:
I1.他の実施形態1:
(1)上記第1実施形態においては、第2温度範囲RH2は、第1温度範囲RH1の上限よりも高い温度範囲を含む。しかし、第2温度範囲は、第1温度範囲の上限よりも高い温度範囲を含まず、第1温度範囲の下限よりも低い温度範囲を含んでいてもよい。すなわち、第2温度範囲は、第1温度範囲とは重ならない範囲を少なくとも一部に含んでいればよい。
【0118】
(2)上記実施形態においては、第1対象物Ob1は、電気自動車の電池パックである。第2対象物Ob2は、電気自動車の車室の温度を制御するためのヒータである。しかし、熱交換液CLが温度を制御する対象物は、電気回路に含まれるインバータ、コンピュータ、内燃機関、インタークーラーなど、他の対象であってもよい。
【0119】
(3)上記第2実施形態においては、中間部材303の素材は、発泡ポリウレタンである(図3の上段中央部参照)。しかし、中間部材の素材は、ウレタン以外の他のオレフィンによる発泡ポリオレフィンや、不織布などの繊維の集積体であってもよい。また、中間部材は、空気のみを含む部屋として構成されてもよい。
【0120】
上記第2実施形態においては、ボディ900、第1部材301、および第2部材302は、ポリプロピレン(PP)にガラス繊維が20%付加された素材で構成されている。しかし、ボディ、第1部材、および第2部材は、繊維が付加されていないポリプロピレン(PP)で構成されるなど、通常のタンクの使用環境における十分な耐熱性および強度を確保できる材料で構成されていればよい。ただし、タンクに収容される熱交換液との反応性が低い材料であることが好ましい。
【0121】
(4)上記第1実施形態においては、連通路310は、円柱状の空間320のうち第1開口321から第2開口322に至る部位である(図1の中央部参照)。しかし、第1室と第2室とを連通させる連通路は、他の部位を含んでいてもよい。
【0122】
(5)第4実施形態においては、隔壁300dは、拡張流路部323と、段差部324とを備える。しかし、隔壁は、拡張流路部323を備え、段差部324とを備えない態様とすることもできる。
【0123】
(6)上記第5実施形態においては、第2部分空間327は、柱状の空間320eが伸びる方向D1に沿って見たときに、開閉部600eの弁体部617より大きく、第1部分空間326を包含する断面形状を有する(図9および図11参照)。しかし、第2部分空間は、隔壁が備える柱状の空間が伸びる方向に沿って見たときに、開閉部の弁体部よりも小さく構成されていてもよい。ただし、隔壁が備える柱状の空間が伸びる方向に沿って見たときに、第1部分空間を包含する断面形状を有することが好ましい。
【0124】
(7)上記第1実施形態においては、タンク10が使用される際の姿勢において、円柱状の空間320は、鉛直方向に沿って伸びている(図1の中央部参照)。しかし、隔壁が備える柱状の空間は、タンクが使用される際の姿勢において、斜め下に向かう方向に伸びていてもよい。
【0125】
(8)上記第1実施形態においては、受入部400は、タンク10の外部から供給される熱交換液CLを受け入れて、第1室100と第2室200とに供給する(図1の上段右部参照)。しかし、受入部は、熱交換液を受け入れて、それぞれ熱交換液を収容する複数の室のうち、一部の室のみに熱交換液を供給してもよい。
【0126】
(9)上記第1実施形態においては、竿部610が円柱状の空間320内に位置する状態において、Oリング612の弾性変形量は、外力の方向について、外力を受けていないときの外寸に対して、5%~8%である(図1の中央部参照)。しかし、竿部が隔壁の円柱状の空間内に位置する状態において、Oリングの弾性変形量は、外力の方向について、外力を受けていないときの外寸に対して、5%以下など、他の値であってもよい。すなわち、Oリングは、第1熱交換液と第2熱交換液との混合により大規模な熱の移動が起こらない態様で使用されていればよい。
【0127】
(10)上記第1実施形態においては、竿部610は、Oリング612を有する(図1の中央部参照)。しかし、竿部は、中心軸方向について異なる位置に設けられた複数のOリングを備えていてもよい。そのような対応とすることにより、よりタンク内の複数の室内の熱交換液間の熱の移動や、圧力差の減少を、抑制できる。
【0128】
(11)上記第3実施形態においては、シール部612cは、竿部610cの外周面から突出している3個のリング状の凸部である(図5の中央部参照)。しかし、シール部は、Oリング、竿部の外周に設けられた凹部にはめ込まれた環状の構造など、他の構成であってもよい。
【0129】
(12)上記第3実施形態においては、弾性部材620は、蓋部500が受入部400を塞いでいる状態において、竿部610cの先端を受入部400に向かって押圧するコイルバネである(図5の下段中央部参照)。しかし、弾性部材は、竿部の中心軸方向に沿って竿部に弾性力を加えることができるものであれば、ゴムや樹脂などの弾性を有する部材で構成された膜状の部材や紐状の部材として構成されていてもよい。
【0130】
(13)上記第1実施形態においては、開閉部600は、蓋部500が受入部400を塞いでいるときに、連通路310を封止し、蓋部500が受入部400を塞いでいないときに、連通路310を流通可能にする(図1の上段中央部参照)。ただし、開閉部は、蓋部が受入部を塞いでいないときに、常に前記連通路を流通可能にしていなくてもよい。すなわち、開閉部は、蓋部が受入部を塞いでいない状況、たとえば、蓋部が受入部から外された状況下において、連通路を流通可能にする状態を取り得ればよい。
【0131】
I2.他の実施形態2:
上記第1実施形態においては、竿部610は、Oリング612を有する(図1の中央部参照)。しかし、竿部は、竿部の外周面から突出しているリング状の凸部など、隔壁の円柱状の空間を画定する隔壁の内面と、竿部の外周と、の間を封止する他の構成を備えていてもよい。
【0132】
I3.他の実施形態3:
上記第3実施形態においては、開閉部600cは、弾性部材620と、を備える。しかし、開閉部は、第1および第2実施形態に示すように、タンクは、竿部の中心軸方向に沿って竿部に弾性力を加える弾性部材を、備えない態様とすることもできる。
【0133】
I4.他の実施形態4:
上記第4実施形態において、竿部610dは、一端から他端に至る貫通孔615を有する(図7参照)。しかし、第1および第2実施形態に示すように、タンクの竿部は、一端から他端に至る貫通孔を備えない態様とすることもできる。
【0134】
I5.他の実施形態5:
第5実施形態において、開閉部600eは、弁体部617を備える(図9図12参照)。しかし、開閉部は、蓋部が受入部を塞いでいるときに、柱状の空間の第1部分空間において第1開口と第2開口を塞ぐ弁体部を、備えない態様とすることもできる。
【0135】
I6.他の実施形態6:
上記第2実施形態において、隔壁300bは、第1部材301と、第2部材302と、中間部材303と、を備える(図4の中央部参照)。中間部材303は、第1部材301および第2部材302よりも熱伝導率が低い素材で構成されている。しかし、第1および第2実施形態に示すように、隔壁は、外面を構成する素材よりも熱伝導率が低い素材で構成されている内部構造を備えていない態様とすることもできる。
【0136】
I7.他の実施形態7:
上記第1実施形態において、受入部400の内部空間のうち第1室100と重なる領域AR41の大きさと、受入部400の内部空間のうち第2室200と重なる領域AR42の大きさとは、略同一である。しかし、第8実施形態に示すように、受入部は、受入部の内部空間のうち第1室と重なる領域の大きさと、受入部の内部空間のうち第2室と重なる領域の大きさとが、異なっている態様とすることもできる。
【0137】
I8.他の実施形態8:
上記第8実施形態において、受入部400hの内部空間のうち第1室100と重なる領域AR41hの大きさは、受入部400hの内部空間のうち第2室200と重なる領域AR42hの大きさよりも大きい(図13の中央部参照)。しかし、第1実施形態に示すように、受入部は、受入部の内部空間のうち第1室と重なる領域の大きさと、受入部の内部空間のうち第2室と重なる領域の大きさとが、略同一である態様とすることもできる。
また、受入部は、受入部の内部空間のうち第1室と重なる領域の大きさが、受入部の内部空間のうち第2室と重なる領域の大きさよりも、小さい態様とすることもできる。
【0138】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0139】
10…タンク、10b…タンク、10c…タンク、10d…タンク、10e…タンク、10f…タンク、10g…タンク、10h…タンク、100…第1室、100f…第1室、100g…第1室、200…第2室、200f…第2室、200g…第2室、300…隔壁、300b…隔壁、300d…隔壁、300e…隔壁、300f…隔壁、300g…隔壁、301…第1部材、302…第2部材、303…中間部材、310…連通路、310e…連通路、320…空間、320e…空間、320f…空間、320g…空間、321…第1開口、321e…第1開口、322…第2開口、322e…第2開口、323…拡張流路部、324…段差部、325…隔壁の内面、326…第1部分空間、327…第2部分空間、400…受入部、400h…受入部、500…蓋部、600…開閉部、600c…開閉部、600d…開閉部、600e…開閉部、600f…開閉部、600g…開閉部、610…竿部、610d…竿部、610e…竿部、610f…竿部、610g…竿部、611…竿部の外周、612…Oリング、612c…シール部、615…貫通孔、617…弁体部、620…弾性部材、700f…第3室、700g…第3室、800g…第4室、900…ボディ、911…流通口、911f…流通口、911g…流通口、912…流通口、912f…流通口、912g…流通口、921…流通口、921f…流通口、921g…流通口、922…流通口、922f…流通口、922g…流通口、931f…流通口、931g…流通口、932f…流通口、932g…流通口、AR41…受入部の内部空間のうち第1室と重なる領域、AR41h…受入部の内部空間のうち第1室と重なる領域、AR42…受入部の内部空間のうち第2室と重なる領域、AR42h…受入部の内部空間のうち第2室と重なる領域、Ac11…第1対象物から流通口を介してタンクに送出される第1熱交換液の流れを示す矢印、Ac12…タンクから流通口を介して第1対象物に送出される第1熱交換液の流れを示す矢印、Ac21…第2対象物から流通口を介してタンクに送出される第2熱交換液の流れを示す矢印、Ac22…タンクから流通口を介して第2対象物に送出される第2熱交換液の流れを示す矢印、Ac31…第3対象物から流通口を介してタンクに送出される第3熱交換液の流れを示す矢印、Ac41…第4対象物から流通口を介してタンクに送出される第4熱交換液の流れを示す矢印、CA…中心軸、CA4…受入部の中心軸、CL…熱交換液、CL1…第1熱交換液、CL2…第2熱交換液、CL3…第3熱交換液、CL4…第4熱交換液、D1…隔壁の円柱状の空間が伸びる方向、D2…隔壁に垂直な方向、Lmax…最高液位、Lmin…最低液位、Ob1…第1対象物、Ob2…第2対象物、Ob3…第3対象物、Ob4…第4対象物、P310…連通路の位置、PG…供給ガン
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