(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005870
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】移動体、イベント探索システム、移動体の制御方法、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240110BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106296
(22)【出願日】2022-06-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・研究集会名 卒業論文発表会 開催場所 学校法人 関西大学 千里山キャンパス 第2学舎4号館F401教室 開催日 令和4年2月16日 ・ウェブサイトのアドレス https://www.dropbox.com/s/78y8mnttgdafvt1/KUUS_2021_B_abst.pdf?dl=0 掲載日 令和4年2月16日 ・ウェブサイトのアドレス https://onsite.gakkai-web.net/ipsj/onsite/ 掲載日 令和4年2月17日 ・研究集会名 情報処理学会 第84回全国大会 開催場所 Web会議(Zoom)、愛媛大学 城北キャンパス 1ZA会場 開催日 令和4年3月3日
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 泰久
(72)【発明者】
【氏名】出原 昇真
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301BB14
5H301CC04
5H301CC07
5H301DD08
5H301DD17
5H301GG09
5H301QQ01
(57)【要約】
【課題】不感地帯に存在する場合においても、イベントを効率よく探索できる移動体を提供する。
【解決手段】移動体(1a)は、第2螺旋軌道とは異なる第1螺旋軌道に沿って移動するように移動体(1a)を制御する拡散制御部(103)と、前記移動体が物理情報を検知したとき、または、他の移動体(1A)が前記物理情報を検知したとき、前記他の移動体と群を形成して前記イベントを探索するように前記移動体を制御する探索制御部(104)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イベントが発する物理情報を検知するために、他の移動体と共に前記イベントを探索する移動体であって、
第1螺旋軌道に沿って移動するように前記移動体を制御する拡散制御部と、
前記物理情報を検知する検知部と、
前記他の移動体と通信する通信部と、
前記移動体が前記物理情報を検知したとき、または、前記他の移動体が前記物理情報を検知したとき、前記移動体が前記他の移動体と群を形成して前記イベントを探索するように前記移動体を制御する探索制御部と、を備え、
前記第1螺旋軌道は、前記他の移動体である第1移動体が移動する第2螺旋軌道と異なる、移動体。
【請求項2】
イベントが発する物理情報を検知するために、他の移動体と共に前記イベントを探索する移動体であって、
前記物理情報を検知する検知部と、
サーバと通信する通信部と、
を備え、
前記通信部は、
前記移動体が移動する第1螺旋軌道の情報を前記サーバより受信し、
前記移動体が前記物理情報を検知したとき、または、前記他の移動体が前記物理情報を検知したとき、前記移動体が前記他の移動体と群を形成して前記イベントを探索する指示を前記サーバより受信し、
前記第1螺旋軌道は、前記他の移動体である第1移動体が移動する第2螺旋軌道と異なる、移動体。
【請求項3】
前記移動体の移動速度は前記第1移動体の移動速度と異なる、請求項1または2に記載の移動体。
【請求項4】
前記拡散制御部は、前記他の移動体である第2移動体と群を形成して前記第1螺旋軌道を移動するように前記移動体を制御する、請求項1に記載の移動体。
【請求項5】
前記拡散制御部は、前記第1螺旋軌道に沿って移動する複数の移動体が分布する幅を、前記第1螺旋軌道を移動する移動体の数に応じて設定する、請求項4に記載の移動体。
【請求項6】
請求項1または2に記載の移動体を複数含み、前記複数の移動体のそれぞれは複数の異なる螺旋軌道のいずれかに沿って拡散して、前記イベントを探索するイベント探索システム。
【請求項7】
イベントが発する物理情報を検知するために、他の移動体と共に前記イベントを探索する移動体の制御方法であって、
第1螺旋軌道に沿って拡散するように前記移動体を制御する拡散制御ステップと、
前記物理情報を検知する検知ステップと、
前記他の移動体と通信する通信ステップと、
前記移動体が前記物理情報を検知したとき、または、前記他の移動体が前記物理情報を検知したとき、前記移動体が前記他の移動体と群を形成して前記イベントを探索するように前記移動体を制御する探索制御ステップと、を含み、
前記第1螺旋軌道は、前記他の移動体である第1移動体が移動する第2螺旋軌道と異なる、移動体の制御方法。
【請求項8】
イベントが発する物理情報を検知するために、他の移動体と共に前記イベントを探索する移動体の制御方法であって、
前記移動体が移動する第1螺旋軌道の情報をサーバより受信する第1通信ステップと、
前記物理情報を検知する検知ステップと、
前記移動体が前記物理情報を検知したとき、または、前記他の移動体が前記物理情報を検知したとき、前記移動体が前記他の移動体と群を形成して前記イベントを探索する指示を前記サーバより受信する第2通信ステップと、を含み、
前記第1螺旋軌道は、前記他の移動体である第1移動体が移動する第2螺旋軌道と異なる、移動体の制御方法。
【請求項9】
請求項1に記載の移動体を動作させるための制御プログラムであって、前記拡散制御部および前記探索制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イベントが発する物理情報を検知するためにイベントを探索する移動体等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットまたはUAV(無人航空機)などの自律移動する移動体を用いて所定の作業を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、対象領域を探索することで当該対象領域における作業領域を特定する飛行体が開示されている。特許文献2には、作業対象に対して螺旋散布作業を行う無人機が開示されている。特許文献3には、掃除走行パターンを螺旋形とし、掃除走行パターンを掃除領域に応じて可変的に適用するロボット掃除機が開示されている。
【0003】
また、移動体を用いて災害発生時の要救助者の探索などの探索作業を行う技術の研究・開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-045898号公報
【特許文献2】特表2020-503016号公報
【特許文献3】特開2006-236313号公報
【特許文献4】特開2021-114020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、探索対象とするイベントは広範囲に散在し、その位置および数が不明であり得る。このようなイベントに対して、単体の移動体を用いて上述の探索作業を実施する場合、単位時間における探索可能範囲が限定されるため、イベントの探索に大幅な時間を要する。すなわち、特許文献1~3のような単体の移動体の使用を前提としている構成を、上述の探索作業に適用するのは困難である。
【0006】
そこで、複数の移動体が協調して探索を行う手法が知られている。当該手法では、複数の移動体が群として機能し、個々の移動体の能力に限定されないイベントの探索および捕捉が可能となる。しかしながら、複数のイベントが存在する場合、イベントの探索および捕捉が逐次処理となり、全てのイベントの捕捉が完了するまでに大幅な時間を要する。
【0007】
また、複数の移動体により移動センシングクラスタ(MSC)を構成する手法も知られている。当該手法では、複数の移動体に対して群知能を適用することにより、複数の群を適宜構成し、より多くのイベントの探索および捕捉が可能となる。しかしながら、移動センシングクラスタは、イベントが発する物理情報を移動体が取得できることを前提としている。そのため、複数の移動体は、イベントが発する物理情報を検知できる検知領域の外部(不感地帯)に位置する場合、移動センシングクラスタを構成できない。
【0008】
複数の移動体が不感地帯に位置する場合、複数の移動体を拡散させることでイベントが発する物理情報を検知できる検知領域にいずれかの移動体が至る可能性が高まる。しかしながら、いずれかの移動体が当該物理情報を検知したとしても、複数の移動体の拡散により移動体間で無線通信ができない場合、移動センシングクラスタに移行できない。
【0009】
本発明の一態様は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、不感地帯に存在する場合においても、イベントを効率よく探索できる移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る移動体は、イベントが発する物理情報を検知するために、他の移動体と共に前記イベントを探索する移動体であって、第1螺旋軌道に沿って移動するように前記移動体を制御する拡散制御部と、前記物理情報を検知する検知部と、前記他の移動体と通信する通信部と、前記移動体が前記物理情報を検知したとき、または、前記他の移動体が前記物理情報を検知したとき、前記移動体が前記他の移動体と群を形成して前記イベントを探索するように前記移動体を制御する探索制御部と、を備え、前記第1螺旋軌道は、前記他の移動体である第1移動体が移動する第2螺旋軌道と異なる。
【0011】
また、前記移動体の移動速度は前記第1移動体の移動速度と異なっていてもよい。また、前記拡散制御部は、前記他の移動体である第2移動体と群を形成して前記第1螺旋軌道を移動するように前記移動体を制御してもよい。また、前記拡散制御部は、前記第1螺旋軌道に沿って移動する複数の移動体が分布する幅を、前記第1螺旋軌道を移動する移動体の数に応じて設定してもよい。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る移動体は、イベントが発する物理情報を検知するために、他の移動体と共に前記イベントを探索する移動体であって、前記物理情報を検知する検知部と、サーバと通信する通信部と、を備え、前記通信部は、前記移動体が移動する第1螺旋軌道の情報を前記サーバより受信し、前記移動体が前記物理情報を検知したとき、または、前記他の移動体が前記物理情報を検知したとき、前記移動体が前記他の移動体と群を形成して前記イベントを探索する指示を前記サーバより受信し、前記第1螺旋軌道は、前記他の移動体である第1移動体が移動する第2螺旋軌道と異なる。
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るイベント探索システムは、前記移動体を複数含み、前記複数の移動体のそれぞれは複数の異なる螺旋軌道のいずれかに沿って拡散して、前記イベントを探索する。
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るサーバは、イベントが発する物理情報を検知するために、他の移動体と共に前記イベントを探索する移動体を制御するサーバであって、前記移動体と通信するサーバ通信部と、前記移動体が第1螺旋軌道に沿って移動するように前記移動体を制御する拡散制御部と、前記移動体が物理情報を検知したとき、または、前記他の移動体が前記物理情報を検知したとき、前記移動体が前記他の移動体と群を形成して前記イベントを探索するように前記移動体を制御する探索制御部と、を備え、前記第1螺旋軌道は、前記他の移動体である第1移動体が移動する第2螺旋軌道と異なる。
【0015】
また、前記移動体の移動速度は前記第1移動体の移動速度と異なっていてもよい。また、前記拡散制御部は、前記他の移動体である第2移動体と群を形成して前記第1螺旋軌道を移動してもよい。また、拡散制御部は、前記第1螺旋軌道に沿って移動する複数の移動体が分布する幅を、前記第1螺旋軌道を移動する移動体の数に応じて設定してもよい。
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る移動体の制御方法は、イベントが発する物理情報を検知するために、他の移動体と共に前記イベントを探索する移動体の制御方法であって、第1螺旋軌道に沿って拡散するように前記移動体を制御する拡散制御ステップと、前記物理情報を検知する検知ステップと、前記他の移動体と通信する通信ステップと、前記移動体が前記物理情報を検知したとき、または、前記他の移動体が前記物理情報を検知したとき、前記移動体が前記他の移動体と群を形成して前記イベントを探索するように前記移動体を制御する探索制御ステップと、を含み、前記第1螺旋軌道は、前記他の移動体である第1移動体が移動する第2螺旋軌道と異なる。
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る移動体の制御方法は、イベントが発する物理情報を検知するために、他の移動体と共に前記イベントを探索する移動体の制御方法であって、前記移動体が移動する第1螺旋軌道の情報をサーバより受信する第1通信ステップと、前記物理情報を検知する検知ステップと、前記移動体が前記物理情報を検知したとき、または、前記他の移動体が前記物理情報を検知したとき、前記移動体が前記他の移動体と群を形成して前記イベントを探索する指示を前記サーバより受信する第2通信ステップと、を含み、前記第1螺旋軌道は、前記他の移動体である第1移動体が移動する第2螺旋軌道と異なる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、イベントが不感地帯に存在する場合においても、イベントを効率よく探索できる移動体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るイベント探索システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】比較例に係る複数の移動体が拡散する様子を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る複数の移動体が拡散する様子を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る複数の移動体が拡散する様子を示す模式図である。
【
図5】複数の移動体が群を形成して拡散する様子を示す模式図である。
【
図6】移動体がイベントの探索中に実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】比較例および実施例に係る、Selfish移動体数および螺旋移動体数に対する平均捕捉数を示すグラフである。
【
図8】比較例および実施例に係る、Selfish移動体数および螺旋移動体数に対する平均不感地帯探索時間を示すグラフである。
【
図9】本発明の他の実施形態に係るイベント探索システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係るサーバがイベントの探索中に実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態1〕
(移動体1aの構成)
図1は、イベント探索システム100の要部構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、イベント探索システム100は、移動体1aおよび移動体1aと相互に無線通信する少なくとも1つ以上の他の移動体1A(移動体1b、移動体1c・・・)を含む。以下、移動体1aの要部構成について
図1を参照して説明する。なお、他の移動体1Aについても移動体1aと同様の構成を有していてもよい。また、移動体1aおよび他の移動体1Aを区別する必要がないときには、単に移動体1と記載する。また、本明細書中において、「拡散する」とは、初期位置から離れるように、不感地帯に存在する移動体1が螺旋軌道に沿って移動することを表す。
【0021】
移動体1aは、移動体1aの各部を統括して制御する制御部10、移動体1aが使用する各種データを記憶する記憶部20を備えている。また、移動体1aは、移動体1aが他の移動体1Aと通信するための通信部30、探索対象であるイベントが発する物理情報を検知する検知部40、および移動体1aを駆動する駆動部50を備えている。
【0022】
移動体1aは、記憶部20に格納された移動アルゴリズムに従って制御部10が駆動部50を制御することにより、自律的な動作を行う。例えば、移動体1aは、検知部40が検知したイベントが発する物理情報に基づき、イベントを探索する。また、移動体1aは、他の移動体1Aと群を形成してイベントを探索する。ここで、移動体1aおよび他の移動体1Aが群を形成するとは、移動体1aと他の移動体1Aとが通信可能距離を保ちつつ無線通信することにより、互いの位置情報および互いの検知結果を把握することである。特に、移動体1aおよび他の移動体1Aは、互いの検知結果として互いが検知した物理情報の強度等を把握することにより、移動体1aの位置を特定するための移動センシングクラスタを構成できる。
【0023】
探索対象であるイベントは、移動体1aが検知可能な物理情報を発しているものであればよく、特に限定されない。例えば、イベントは、電磁波、電波、熱、ガス、放射線、音等のような、個々のイベントに特有の識別情報を持たない物理情報を発するものであってもよい。また、イベントから伝搬された物理情報の強度は距離に応じて減衰するものであってもよい。
【0024】
また、移動体1aは、検出したイベントに対して能動的処理を行ってもよい。例えば、イベントは、非常事態の際の構造物の破損箇所、要救助者、または資源等であってもよい。そして、これらの場合、移動体1aは、上記能動的処理として、構造物の故障箇所の修理、要救助者の救助、または資源の回収等を行ってもよい。なお、以下では上記能動的処理を捕捉と呼ぶ。
【0025】
また、移動体1aは、自律移動する移動体であればよく、例えば自律移動ロボット、ドローン、自動車、小型人工衛星などであってもよい。
【0026】
通信部30による無線通信の手段としては、近距離無線通信、例えば、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等が挙げられる。WiFiを用いる場合、移動体1aの通信距離は(平地の場合)100m程度である。Bluetoothを用いる場合、移動体1aの通信距離は20~30m程度である。なお、通信部30による無線通信の手段としては、これらに限定されない。
【0027】
検知部40としては、探索対象であるイベントが発する物理情報に応じたセンサ等を適用すればよい。イベントが電波を発するものである場合、検知部40は電波強度を検出するセンサである。イベントが熱を発するものである(例えば、イベントが要救助者である)場合、検知部40は温度を検出するセンサ(例えば赤外カメラ)である。イベントがガスを発するものである場合、検知部40はガスの濃度を検出するセンサである。
【0028】
駆動部50は、移動体1aを移動させることができるものであればよい。例えば、移動体1aがドローンと呼ばれる無人航空機である場合、移動体1aを空中で移動させる駆動部50を適用すればよい。なお、移動体1aは、空中を移動するものに限られず、水中あるいは地上等の任意の場所を任意の方法で移動するものであってもよい。
【0029】
また、制御部10には、通信制御部101、制御方式決定部102、拡散制御部103、探索制御部104、移動制御部105、および位置算出部106が含まれている。
【0030】
通信制御部101は、通信部30が受信する他の移動体1Aが発信した情報を取得する。他の移動体1Aが発信した情報としては、例えば他の移動体1Aの位置情報および検知結果などである。ここで、検知結果は、他の移動体1Aが物理情報を検知したか否か、および/または当該物理情報の強度を含む。また、通信制御部101は、位置算出部106が算出した移動体1aの位置情報および検知部40の検知結果を取得する。通信制御部101は、当該位置情報および検知結果を、通信部30を介して他の移動体1Aに送信する。
【0031】
制御方式決定部102は、移動体1aの制御方式を決定する。具体的には、制御方式決定部102は、イベント探索の開始時において不感地帯に存在する移動体1aを拡散させる制御方式を決定する。また、検知部40が物理情報を検知したとき、または、他の移動体1Aが物理情報を検知した旨の信号を移動体1aが受信したとき、制御方式決定部102は、他の移動体1Aと群を形成してイベントを探索する制御方式を決定する。また、移動体1aがイベントの位置に至ったとき、制御方式決定部102は、イベントを捕捉する制御方式を決定する。
【0032】
拡散制御部103は、制御方式決定部102が移動体1を拡散させる制御方式を決定したとき、移動体1aの拡散に係る制御を開始する。拡散制御部103は、他の移動体1Aである移動体1b(第1移動体)が移動する第2螺旋軌道T2とは異なる、移動体1aが移動する第1螺旋軌道T1を決定する(
図3および
図4を参照)。拡散制御部103は、第1螺旋軌道T1に沿って移動体1aを拡散させる。すなわち、拡散制御部103は、移動体1aが第1螺旋軌道T1に沿って移動するような移動体1aの移動ベクトルを生成する。第1螺旋軌道T1および第2螺旋軌道T2を特に区別する必要がない場合、単に螺旋軌道Tと呼ぶ。螺旋軌道Tについての詳細は、
図3および
図4を参照して後述する。
【0033】
また、拡散制御部103は、第1螺旋軌道T1に応じた移動体1の移動速度を決定してもよい(
図4を参照)。すなわち、拡散制御部103は、移動体1aの移動速度を(移動体1が移動する第1螺旋軌道T1とは異なる第2螺旋軌道T2を移動する)移動体1bの移動速度と異ならせてもよい。
【0034】
また、拡散制御部103は、移動体1aが他の移動体1Aである移動体1aa(第2移動体)と群を形成して第1螺旋軌道T1を移動するように、移動体1を拡散させてもよい(
図5を参照)。このとき、拡散制御部103は、第1螺旋軌道T1に沿って移動する複数の移動体が分布する幅を、第1螺旋軌道T1を移動する移動体1の数に応じて設定してもよい。
【0035】
探索制御部104は、制御方式決定部102がイベントを探索する制御方式を決定したとき、移動体1aの探索に係る制御を開始する。探索制御部104は、他の移動体1Aと群を形成して、検知した物理情報を発するイベントを探索するように移動体1aを制御する。具体的には、探索制御部104は、移動体1aおよび他の移動体1Aに対して群知能を適用した移動センシングクラスタを構成する。例えば、移動センシングクラスタとして上記の特許文献4に記載の無線通信システムを構成してもよい。当該無線通信システムにおいて、各移動体1が相互に無線通信することにより、複数の移動体1の中から、群のリーダーとして振る舞う群リーダーが動的に決まるようになっている。そして、群リーダー以外の移動体1は、群リーダーに追従するフォロワーとして振る舞い、これにより移動体群が形成される。探索制御部104は、移動体1aが群リーダーとして探索を行う方針か、フォロワーとして探索を行う方針かを決定し、このような決定に基づいて移動体1aの移動ベクトルを生成する。探索制御部104は、拡散制御部103と一体に形成されていてもよい。
【0036】
移動制御部105は、拡散制御部103または探索制御部104が生成した移動ベクトルに従って駆動部50を駆動することにより、移動体1aを移動させる。
【0037】
位置算出部106は、移動体1aの位置を算出する。位置の算出には、例えばGPS(Ground Positioning System)等を利用してもよい。
【0038】
(比較例)
図2は、比較例に係る4つの移動体1´a~1´dが拡散する様子を示す模式図である。
図2に示すように、比較例において、移動体1´a~1´dは放射状に拡散している。すなわち、
図2の符号2001に示す状態から
図2の符号2002に示す状態にかけて、移動体1´a~1´dはそれぞれ所定の範囲内の初期位置から四方に直線的に移動している。
【0039】
図2の符号2001に示すように、まず移動体1´a~1´dは所定の範囲内の初期位置に位置する。ここで、移動体1´a~1´dは、イベントが発する物理情報を検知できる検知領域Dの外部である不感地帯に存在する。そのため、移動体1´a~1´dは、群を形成(群知能を適用した移動センシングクラスタを構成)できない。そこで、いずれかの移動体が検知領域Dに至るように、移動体1´a~1´dは放射状に拡散する。
【0040】
図2の符号2002に示すように、移動体1´aは、検知領域Dの内部に至り、イベントEVが発する物理情報を検知する。なお、移動体1´aが検知領域Dに至ったとしても、移動体1´aに対するイベントEVの方向および距離が正確に分かるわけではない(正確に分からないケースも多い)。そのため、移動体1´aは物理情報を検知すると、その周辺を探索することになる。ここで、複数の移動体が協働してイベントEVを探索すると、1台の移動体で探索する場合と比べて、探索時間*台数をより小さくできる。すなわち、複数の移動体が協働してイベントEVを探索することで、効率的にイベントEVの位置を特定できる。しかしながら、移動体1´b,1´cおよび1´dは、移動体1´aとは異なる方向に拡散しているため、移動体1´aから遠く離れており、移動体1´aと無線通信できない。すなわち、いずれかの移動体が検知領域Dに至ったとしても、移動体1´a~1´dは群を形成できず、イベントEVを効率よく探索できない。
【0041】
(螺旋方式)
図3は、本発明の一実施形態に係る複数の移動体1a~1dが拡散する様子を示す模式図である。
図3に示すように、本発明の一実施形態において、移動体1a~1dは螺旋方式により拡散している。すなわち、移動体1a~1dは、所定の範囲I内の初期位置からそれぞれ異なる螺旋軌道T1~T4に沿って(螺旋状のストリームを通って)拡散している。このような移動体1a~1dを螺旋移動体と呼ぶ。移動体1a~1dは、上述のように拡散することで、効率的かつ網羅的に不感地帯を探索できる。なお、
図3は、移動体1a~1dが所定の範囲I内の初期位置から少し移動して所定の範囲I外に出た状態を示している。
【0042】
螺旋軌道T1~T4は、例えば任意の螺旋(アルキメデス螺旋、放物螺旋、双曲螺旋、リチュース螺旋、およびフェルマー螺旋等)に近似する形状、またはそれらを組み合わせたものであればよい。また、
図3に示す一例では、4つの移動体1a~1dが拡散しているが、移動体の数としてはこれに限定されない。また、
図3に示す一例では、4つの移動体1a~1dは同時に拡散を開始しているが、移動体1a~1dが拡散を開始する時刻を移動体1a~1dごとに異ならせてもよい。これにより、移動体1a~1dを接近させつつ拡散させることができる。
【0043】
図4は、本発明の一実施形態に係る複数の移動体1a,1bが拡散する様子を示す模式図である。以下、いずれかの移動体が検知領域Dに至った後、移動体1a,1bが群を形成する方法を、
図4を参照して説明する。なお、
図4の符号4002~4004では、拡散開始時刻から単位時間ごとに移動体1a,1bが位置した箇所が軌跡として示されている。また、
図4では、移動体1a,1bが移動する螺旋軌道の図示は省略している。
【0044】
図4の符号4001に示すように、まず移動体1a,1bは所定の範囲内の初期位置に位置する。ここで、移動体1a,1bは、検知領域Dの外部である不感地帯に存在する。そのため、移動体1a,1bは、群を形成(群知能を適用した移動センシングクラスタを構成)できない。そこで、いずれかの移動体が検知領域Dに至るように、移動体1a,1bは、それぞれ異なる螺旋軌道(第1螺旋軌道T1および第2螺旋軌道T2)に沿って、それぞれの初期位置を中心に螺旋状に拡散する。
【0045】
図4の符号4002は、
図4の符号4001に示す状態から時間経過し、移動体1a,1bが拡散された状態を示す。ここで、移動体1a,1bは、依然として不感地帯に存在する。そのため、移動体1a,1bは、それぞれ異なる螺旋軌道に沿って螺旋状に拡散し続ける。
【0046】
図4の符号4003は、
図4の符号4002に示す状態からさらに時間経過し、移動体1a,1bがさらに拡散された状態を示す。ここで、移動体1aは、検知領域Dの内部に至り、イベントEVが発する物理情報を検知する。一方、移動体1bは、移動体1aと初期位置に関してほぼ対称の位置に存在するため、移動体1aから遠く離れており、移動体1aと無線通信できない。すなわち、
図4の符号4003に示す状態では、移動体1a,1bは群を形成できない。なお、この時点で、イベントEVが発する物理情報を検知した移動体1aは、当該物理情報の強度に基づきイベントEVを単体で探索してもよい。
【0047】
図4の符号4004は、
図4の符号4003に示す状態からさらに時間経過し、移動体1bがさらに拡散された状態を示す。ここで、移動体1bは、移動体1aが位置する検知領域Dに到達しイベントからの物理情報を検知する、または、移動体1aに接近し、無線通信できる。すなわち、移動体1a,1bは群を形成できる。
【0048】
このように、不感地帯に存在する移動体1a,1bは螺旋方式により拡散することにより、いずれかの移動体は検知領域Dに至ることができ、かつ、他の移動体は検知領域Dに後から至る、または、検知領域Dに至った移動体にいずれ接近し、無線通信できる。したがって、移動体1a,1bは、不感地帯に存在する場合においても、群を形成(群知能を適用した移動センシングクラスタを構成)して、イベントEVを効率よく探索できる。
【0049】
また、移動体1aが検知領域Dの内部に至り、イベントEVが発する物理情報を検知した後、移動体1bが螺旋状に拡散することにより検知領域Dの内部に至り、イベントEVが発する物理情報を検知する場合もあり得る。この場合でも移動体1aと移動体1bは、お互いに無線通信できるので群を形成できる。
【0050】
さらに、イベントEVの位置を特定した後、複数の移動体が協働することで、一台の移動体では不可能であった処理をイベントEVに対して実行できる。
【0051】
また、移動体1aの移動速度は、(移動体1aが移動する第1螺旋軌道T1とは異なる第2螺旋軌道T2を移動する)移動体1bの移動速度と異なっていてもよい。例えば、移動体1aと移動体1bとが通信可能な距離を維持しながら、それぞれ第1螺旋軌道T1および第2螺旋軌道T2に沿って移動してもよい。このとき、外側を移動する移動体の移動距離が内側を移動する移動体の移動距離より長くなるので、外側を移動する移動体の移動速度が内側を移動する移動体の移動速度よりも速くなるように規定される。これにより、移動体1aが検知領域Dに至った直後、移動体1aは移動体1b(他の移動体)と群を形成できる。また、同様に、移動体1bが検知領域Dに至った場合も、その直後に移動体1aは移動体1bと群を形成できる。
【0052】
図5は、複数の移動体1が群を形成して拡散する様子を示す模式図である。
図5に示すように、移動体1aが他の移動体1Aである移動体1aa(第2移動体)と群SW1を形成して第1螺旋軌道T1を移動してもよい。ここで、移動体1aaは、第1螺旋軌道T1に沿って移動する移動体1aに追従する形で、第1螺旋軌道T1を移動する。これにより、移動体1aが検知領域Dに至った直後に、移動体1aは移動体1aaと群を形成して、イベントEVを探索および捕捉できる。したがって、イベントEVの探索および捕捉をより効率よく行うことができる。同様に、他の螺旋軌道(第2螺旋軌道T2)においても、複数の移動体(移動体1b,1ba,1bb)が群SW2を形成していてもよい。
【0053】
ここで、第1螺旋軌道T1に沿って移動する複数の移動体が分布する幅(以下、第1螺旋軌道T1の幅と称する)は、第1螺旋軌道T1において群を形成する移動体1の数に応じて設定されてもよい。具体的には、第1螺旋軌道T1の幅は、第1螺旋軌道T1において群を形成する移動体の数が多いほど広く設定される。
図5に示す一例では、2つの移動体1a,1aaが群SW1を形成して移動する第1螺旋軌道T1の幅は、3つの移動体1b,1ba,1bbが群SW2を形成して移動する第2螺旋軌道T2の幅より狭く設定される。これにより、複数の移動体1は、効率的かつ網羅的に不感地帯を探索できる。
【0054】
このように、各移動体の軌道を螺旋軌道とすることで、移動体の最大移動速度を大きくし、かつ、網羅的に広範囲の探索を行うことができる。
【0055】
(動作例)
図6は、移動体1aがイベントの探索中に実行する処理の一例を示すフローチャートである。以下、
図6を参照し、不感地帯に存在する移動体1aが拡散し、他の移動体1Aと共に群を形成してイベントを探索する動作例について説明する。
【0056】
当該処理の開始時において、制御方式決定部102は、不感地帯に存在する移動体1aを拡散させる制御方式を決定する。このとき、拡散制御部103は、移動体1aの拡散に係る制御を開始する。まず、拡散制御部103は、移動体1aが移動する第1螺旋軌道T1を決定する(S11)。ここで、移動体1aが移動する第1螺旋軌道T1は、他の移動体1Aである移動体1bが移動する第2螺旋軌道T2とは異なる。拡散制御部103は、第1螺旋軌道T1に応じた移動体1aの移動速度を決定してもよい。第1螺旋軌道T1および移動体1aの移動速度は、予め上位システムあるいはユーザに決定され、記憶部20に格納されてもよい。この場合、拡散制御部103は、記憶部20から第1螺旋軌道T1を取得する。
【0057】
次に、制御方式決定部102は、イベントが発する物理情報の検知を検知部40に試行させる(S12)。通信制御部101は、他の移動体1Aに物理情報の検知結果と自身(移動体1a)の位置の情報とを送信する(通信ステップS13)。また、通信制御部101は、他の移動体1Aからの、他の移動体1Aによる物理情報の検知結果と他の移動体1Aの位置の情報との受信を通信部30に試行させる。なお、他の移動体1Aが移動体1aと通信可能な範囲に位置していない場合、他の移動体1Aは、移動体1aと通信できない。
【0058】
次に、制御方式決定部102は、イベントが発する物理情報を移動体1a自身が検知したか否かを判定する(S14)。ここでは、制御方式決定部102は、物理情報の強度が所定の閾値を超えていれば、移動体1aは物理情報を検知した(すなわち、移動体1aは検知領域Dに至った)と判定する(検知ステップS14でYES)。この場合、制御方式決定部102は、他の移動体1Aと群を形成してイベントを探索する制御方式を決定する。このとき、探索制御部104は、探索に係る移動体1aの制御を開始する(S18)。
【0059】
一方、制御方式決定部102は、物理情報の強度が所定の閾値を超えていなければ、移動体1aは物理情報を検知していない(すなわち、移動体1aは依然として不感地帯に存在する)と判定する(検知ステップS14でNO)。その後、S15に進む。
【0060】
次に、通信制御部101は、通信部30が、他の移動体1Aからの情報(他の移動体1Aによる物理情報の検知結果および他の移動体1Aの位置の情報)を受信したか否かを判定する(S15)。通信部30が他の移動体1Aからの情報を受信した場合(S15でYES)、S16に進む。探索制御部104は、他の移動体1Aによる物理情報の検知結果から、他の移動体1Aが物理情報を検知したか否かを判定する(S16)。他の移動体1Aが物理情報を検知した場合(S16でYES)、制御方式決定部102は、他の移動体1Aと群を形成してイベントを探索する制御方式を決定する。
【0061】
通信部30が他の移動体1Aからの情報を受信していない場合(S15でNO)、または、他の移動体1Aが物理情報を検知していない場合(S16でNO)、拡散制御部103は、決定した第1螺旋軌道T1に沿って(かつ決定した移動速度に基づき)移動体1aを拡散させる(拡散制御ステップS17)。その後、処理はS12に戻る。
【0062】
移動体1a自身が物理情報を検知した場合(検知ステップS14でYES)、探索制御部104は、自機をリーダーとして、他の移動体1Aと群を形成するように移動体1aを制御する。探索制御部104は、他の移動体1Aと協働して、検知した物理情報を発するイベントを探索および補足するように移動体1aを制御する(探索制御ステップS18)。このように、移動体1aと他の移動体1Aとは、群を形成してイベントを探索する移動センシングクラスタへ移行する。なお、他の移動体1Aが通信可能な範囲にいないなど、群を形成することができない場合、探索制御部104は、検知した物理情報を発するイベントを単体で探索するように移動体1aを制御する。移動体1aがイベントの位置に至るまで、通信制御部101は、他の移動体1Aに物理情報を検知した旨を通知する。これにより、移動体1aはイベントの探索を実行しつつ、
図4に示すように移動体1aに接近してきた他の移動体1Aと適宜群を形成できる。
【0063】
他の移動体1Aが物理情報を検知していた場合(S16でYES)、探索制御部104は、他の移動体1Aをリーダーとして、自機をフォロワーとして、他の移動体1Aと群を形成するように移動体1aを制御する。探索制御部104は、他の移動体1Aと協働して、検知した物理情報を発するイベントを探索・補足するように移動体1aを制御する(探索制御ステップS18)。例えば、探索制御部104は、移動体1a(および移動体1aと群を形成している他の移動体1A)の位置情報および検知結果に基づきイベントの位置を算出する。移動制御部105は、算出したイベントの位置に向かわせるように、移動体1aを移動させる。移動センシングクラスタ(群)においては、複数の移動体1a、1Aは互いに通信可能な範囲内で移動し、リーダーが統括的に各移動体1a、1Aの移動先を決定および指示する。これにより、移動センシングクラスタは、効率的にイベントの位置の特定および補足をすることができる。
【0064】
移動体1aまたは他の移動体1Aがイベントを補足した後、制御方式決定部102は、予め決められた探索終了時刻に達したか否かを判定する(S19)。予め決められた探索終了時刻に達した場合(S19でYES)、制御方式決定部102は、移動体1aに探索処理を終了させる。
【0065】
予め決められた探索終了時刻に達していない場合(S19でNO)、処理はS11に戻る。拡散制御部103は、他のイベントの探索のため、再度移動体1aの拡散軌道を決定する。このとき、拡散制御部103は、前回の第1螺旋軌道T1を続ける形で、移動体1aを拡散させてもよい。または、拡散制御部103は、イベントの捕捉完了時の位置を初期位置とした螺旋軌道を新たに決定し、当該螺旋軌道に沿って移動体1aを拡散させてもよい。このようにして、移動体1aは不感地帯での探索を継続する。
【0066】
上述のように、拡散制御部103は、他の移動体1Aである移動体1bが移動する第2螺旋軌道T2とは異なる第1螺旋軌道T1に沿って拡散するように移動体1aを制御する。これにより、移動体1aは、他の移動体1Aと共に、効率的かつ網羅的に不感地帯を探索できる。また、移動体1aが物理情報を検知した場合、他の移動体1Aは移動体1aにいずれ接近する。そのため、移動体1aは他の移動体1Aに物理情報を検知した旨を通知し、他の移動体1Aと群を形成できる(
図4参照)。同様に、他の移動体1Aが物理情報を検知した場合、移動体1aは他の移動体1Aにいずれ接近する。そのため、他の移動体1Aが物理情報を検知した旨の信号を受信し、移動体1aは他の移動体1Aと群を形成できる。したがって、移動体1a,1bは、不感地帯に存在する場合においても、群を形成(群知能を適用した移動センシングクラスタを構成)して、イベントを効率よく探索および捕捉できる。このように、イベント探索システム100によれば、イベントが発する物理情報を検知する地帯に迅速にかつ確実にいずれかの移動体1a、1bが到達し、検知した地帯では複数の移動体1a、1bが迅速に群を構成可能である。
【0067】
(シミュレーション結果)
2通りの方式による移動体のイベント探索のシミュレーションを行った。一方の方式は、本実施形態において示した螺旋方式であり、他方の方式は、Selfish方式である。Selfish方式においては、移動体に対して移動体間の距離に応じた引力および斥力を相互に作用させる。また、一部の移動体については、利己的な振る舞いを行うために、引力係数が小さい値(斥力が引力を上回るよう)に設定される。このような移動体をSelfish移動体と呼ぶ。Selfish方式において、複数の移動体は、
図2に示したように、放射状に拡散する。
図7および
図8を参照し、螺旋方式によるイベント探索の性能を以下に説明する。
図7および
図8において、Selfish方式および螺旋方式によるシミュレーション結果をそれぞれ比較例および実施例として示している。また、本シミュレーションの条件は以下の表1に示す。
【0068】
【表1】
図7は、比較例に係るSelfish移動体数R1および実施例に係る螺旋移動体数A1に対する平均捕捉数を示すグラフである。
図7に示すように、Selfish移動体数および螺旋移動体数を6台以上とした場合、Selfish方式と比較し螺旋方式では平均捕捉数が多くなる。特に、螺旋移動体数を6台からさらに増加させるに従い、Selfish方式に対する螺旋方式の優位性は顕著となる。
【0069】
図8は、比較例に係るSelfish移動体数R1および実施例に係る螺旋移動体数A1に対する平均不感地帯探索時間を示すグラフである。
図8に示すように、Selfish方式と比較し螺旋方式では(特にSelfish移動体数および螺旋移動体数を6台以上とした場合、平均捕捉数が多い上に)不感地帯での探索時間は短くなっている。
【0070】
これは、螺旋方式において、螺旋移動体数を増加させると、螺旋軌道をマルチストリーム化でき、効率的かつ網羅的に不感地帯を探索できるためである。また、螺旋移動体がイベントの物理情報を検知した後、他の螺旋移動体と群を形成して、イベントを効率よく探索および捕捉できるためである。
【0071】
上記構成によれば、災害発生時においてインフラが停止している場合においても、自律移動する移動体を複数含むイベント探索システム100を用いてイベントの探索作業を行うことができる。すなわち、災害発生時の被害状況の把握、要救助者の探索および要救助者の救助活動に貢献できる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「包摂的で安全かつ強靭で持続可能な都市及び人間居住を実現する」等の達成にも貢献するものである。
【0072】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0073】
図9は、本発明の他の実施形態に係るイベント探索システム200の要部構成の一例を示すブロック図である。
図9に示すように、イベント探索システム200は、第1移動体201a(移動体)と、第2移動体201b(他の移動体)と、第1移動体201aおよび第2移動体201bを制御するサーバ202とを備える。なお、本実施形態では簡単のため移動体数を2としているが、移動体数は3以上であってもよい。また、第1移動体201aおよび第2移動体201bを区別する必要がないときには、単に移動体201と記載する。実施形態2では、サーバ202上に制御方式決定部102、拡散制御部103、および探索制御部104を設ける点で、実施形態1とは異なる。
【0074】
第1移動体201aは、第1制御部10aと、第1記憶部20aと、第1通信部30aと、第1検知部40aと、第1駆動部50aとを備える。第1制御部10aは、第1通信制御部101aと、第1移動制御部105aと、第1位置算出部106aとを備える。
【0075】
第1通信部30aは、サーバ202のサーバ通信部220と通信を行う。第1通信部30aは、第2移動体201bの第2通信部30bと通信を行ってもよい。
【0076】
第1通信制御部101aは、第1通信部30aが受信するサーバ202が発信した情報を取得する。サーバ202が発信した情報としては、例えば第1移動体201aの移動ベクトルである。また、第1通信制御部101aは、第1位置算出部106aが算出した第1移動体201aの位置情報および検知結果を取得する。第1通信制御部101aは、当該位置情報および検知結果を、第1通信部30aを介してサーバ202に送信する。
【0077】
第1移動制御部105aは、第1通信制御部101aが取得した移動ベクトルに従って第1駆動部50aを駆動することにより、第1移動体201aを移動させる。
【0078】
第1移動体201aにおける残りの各部材については、実施形態1における移動体1aの対応する各部材と同様の機能を有する。また、第2移動体201bについても第1移動体201aと同様の構成を有する。
【0079】
サーバ202は、サーバ制御部210と、サーバ通信部220とを備える。サーバ制御部210は、サーバ通信制御部211と、制御方式決定部102と、拡散制御部103と、探索制御部104とを備える。
【0080】
サーバ通信部220は、第1移動体201aの第1通信部30aおよび第2移動体201bの第2通信部30bと通信を行う。
【0081】
サーバ通信制御部211は、サーバ通信部220が受信する移動体201が発信した情報を取得する。移動体201が発信した情報としては、例えば各移動体201の位置情報および検知結果である。また、サーバ通信制御部211は、拡散制御部103および探索制御部104が算出した各移動体の移動ベクトルを取得する。拡散制御部103が算出した各移動体の移動ベクトルは、該移動体が拡散移動する螺旋軌道を示す情報である。探索制御部104が算出した各移動体の移動ベクトルは、該移動体に他の移動体と群を形成してイベントを探索させる移動指示である。サーバ通信制御部211は、サーバ通信部220を介して、各移動体の移動ベクトルを対応する移動体201に送信する。
【0082】
制御方式決定部102と、拡散制御部103と、探索制御部104とは、各移動体について実施形態1で示した処理を行う。
【0083】
図10は、サーバ202がイベントの探索中に実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0084】
当該処理の開始時において、制御方式決定部102は、不感地帯に存在する移動体201を拡散させる制御方式を決定する。このとき、拡散制御部103は、移動体201の拡散に係る制御を開始する。まず、拡散制御部103は、各移動体201が移動する螺旋軌道を決定する(S31)。ここで、第1移動体201aが移動する第1螺旋軌道T1は、第2移動体201bが移動する第2螺旋軌道T2とは異なる。次に、サーバ通信制御部211は、決定した螺旋軌道に基づく移動ベクトルを、サーバ通信部220を介して各移動体201に送信する。これにより、螺旋軌道に沿って移動体201を拡散させる(S32)。
【0085】
サーバ通信制御部211は、サーバ通信部220を介して、各移動体201から移動体201の位置情報および物理情報の検知結果を受信する(S33)。
【0086】
次に、制御方式決定部102は、イベントが発する物理情報を移動体201が検知したか否かを判定する(S34)。例えば、制御方式決定部102は、第1移動体201aから受信した物理情報の強度が所定の閾値を超えていれば、第1移動体201aは物理情報を検知したと判定する(S34でYES)。この場合、制御方式決定部102は、移動体201同士で協働してイベントを探索する制御方式を決定する。このとき、探索制御部104は、探索に係る移動体201の制御を開始する(S35)。
【0087】
一方、制御方式決定部102は、何れの移動体201から受信した物理情報の強度も所定の閾値を超えていなければ、移動体201は物理情報を検知していないと判定する(S34でNO)。その後、S32に戻る。
【0088】
いずれかの移動体が物理情報を検知したと判定した場合(S34でYES)、探索制御部104は、イベントを検知した検知移動体と、検知移動体に隣接する(最も近い位置にいる)隣接移動体とを、移動センシングクラスタへ移行させる(S35)。具体的には、イベントを検知した第1移動体201aの位置情報に基づき、隣接する第2移動体201bを第1移動体201aの位置に向かわせ、群を形成させる。なお、3つ以上の移動体201を移動センシングクラスタへ移行させてもよい。これにより、イベントを複数の移動体201で探索できるようになる。例えば、サーバ通信制御部211は、移動体201の位置情報および検知結果を受信する。探索制御部104は、移動体201の位置情報および検知結果等に基づきイベントの位置を特定する。
【0089】
移動体201がイベントを補足した後、制御方式決定部102は、予め決められた探索終了時刻に達したか否かを判定する(S36)。予め決められた探索終了時刻に達した場合(S36でYES)、制御方式決定部102は、移動体201に探索処理を終了させる。
【0090】
予め決められた探索終了時刻に達していない場合(S36でNO)、処理はS31に戻る。拡散制御部103は、他のイベントの探索のため、再度各移動体201の拡散軌道を決定する。
【0091】
上述のように、サーバ202が移動体201を制御することで、第1移動体201aが物理情報を検知した直後に、第2移動体201bを第1移動体201aの位置に向かわせられる。そのため、イベントの探索に要する時間をより短縮できる。
【0092】
あるいは、第1移動体201aがイベントを検知した後も、サーバ202は、第2移動体201bを第1移動体201aの位置に向かわせることなく、第2移動体201bを螺旋拡散させてもよい。そして、第2移動体201bが第1移動体201aに接近した際に、第2移動体201bが第1移動体201aを検知したことをサーバ202に通信してもよい。その後、第1移動体201aと第2移動体201bとが群を形成してイベントを探索してもよい。
【0093】
または、第2移動体201bがイベントに接近した際に、第2移動体201bがイベントを検知したことをサーバ202に通信してもよい。その後、第1移動体201aと第2移動体201bとが群を形成してイベントを探索してもよい。
【0094】
上記のように、本発明の一態様によれば、イベントを効率よく探索できる。数および位置が不明なイベントを有限時間内に数多く捕捉回収するためには、移動体が空間的に十分に拡散し、かつ、物理情報の到達範囲に至った場合は速やかに移動センシングクラスタへ移行する(群を形成する、集まる)ことが必要となる。すなわち、移動体を拡散させるだけではなく、複数の移動体が群を形成し、協働することが重要である。本発明の一態様によればこのような目的を達成することができる。
【0095】
〔ソフトウェアによる実現例〕
移動体1a(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現できる。
【0096】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0097】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0098】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0099】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0100】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1a 移動体
1b 移動体(第1移動体)
1aa 移動体(第2移動体)
1A 他の移動体
10 制御部
30 通信部
40 検知部
100、200 イベント探索システム
103 拡散制御部
104 探索制御部
202 サーバ
220 サーバ通信部