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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058701
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】化粧板の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 3/18 20060101AFI20240422BHJP
   B05C 1/12 20060101ALI20240422BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240422BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20240422BHJP
   B05C 11/02 20060101ALI20240422BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B05C3/18
B05C1/12
B05C11/10
B05C9/12
B05C11/02
B41J2/01 129
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165954
(22)【出願日】2022-10-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】522405565
【氏名又は名称】三和合板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】高松 守
(72)【発明者】
【氏名】原田 和典
【テーマコード(参考)】
2C056
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
2C056HA44
4F040AA22
4F040AB04
4F040AB06
4F040AC01
4F040AC04
4F040AC09
4F040BA35
4F040CA15
4F040CB27
4F040CB38
4F040DB16
4F040DB21
4F040DB30
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA06
4F042BA25
4F042CB01
4F042CB19
4F042DB41
4F042DD09
4F042DD46
4F042DF24
4F042ED02
4F042ED04
(57)【要約】
【課題】電力消費を抑制し、環境破壊の抑止に寄与しつつ化粧板を容易に形成できるようにする。
【解決手段】含浸紙6を基材2の上面に重ねた状態で加圧する第1の加圧手段7の上流側であって含浸紙が重ねられる直前位置において、第1の塗料供給手段10により、バイオマス化が50%以上で少なくとも紫外線硬化特性を備えた粘性を有する樹脂系の塗料を供給し、硬化手段17の紫外線LEDによる紫外線照射により、第1の加圧手段7の下流側で含浸紙6に含浸された塗料を硬化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上面に樹脂系の塗料を含浸、硬化した含浸紙を貼着して化粧板を製造する化粧板の製造装置において、
前記基材は、長尺の木質板から成り所定長さごとに分離可能に形成されており、
前記基材を長尺方向に搬送する搬送手段と、
含浸紙ロールから繰り出された含浸紙を前記基材の上面に重ねた状態で加圧する上面側の主ローラ及び下面側の従ローラを有する加圧手段と、
少なくとも紫外線硬化特性を備えた粘性を有する樹脂系の塗料を、前記加圧手段の上流側の前記含浸紙が重ねられる直前位置において前記基材の上面に前記基材の幅にわたって供給し、前記加圧手段の前記主ローラ及び前記従ローラの回転により加圧しつつ前記含浸紙に前記塗料を含浸させる塗料供給手段と、
前記塗料供給手段により供給される前記塗料が、前記基材の幅以上に広がることを規制して前記基材の幅に留めおく規制手段と、
前記加圧手段の下流側で前記含浸紙に含浸された前記塗料を硬化させる硬化手段と
を備えることを特徴とする化粧板の製造装置。
【請求項2】
前記硬化手段の下流側に設けられ、前記塗料が含浸された前記含浸紙に樹脂フィルムを積層する積層手段と、
前記積層手段の下流側に設けられ前記樹脂フィルムを剥離する剥離手段とを更に備え、
前記積層手段は、
フィルムロールから繰り出された前記樹脂フィルムを、前記塗料が含浸された前記含浸紙の上面に重畳する重畳ローラと、
少なくとも紫外線硬化特性を備えた粘性を有する樹脂系の塗料を、前記重畳ローラの上流側の前記樹脂フィルムが重ねられる直前位置において前記含浸紙の上面に前記基材の幅にわたって供給して前記含浸紙の上面に所定厚さの前記塗料の層を形成する塗料層形成手段と、
前記塗料層形成手段により形成される前記塗料の層が、前記基材の幅以上に広がることを規制して前記基材の幅に留めおく他の規制手段と、
前記塗料層形成手段により形成された前記塗料の層の前記塗料を硬化させる他の硬化手段と
を備え、
前記剥離手段は、前記塗料層形成手段により形成され前記硬化手段により硬化された前記塗料の層を前記含浸紙の上面に残した状態で前記樹脂フィルムを剥離するものであることを特徴とする請求項1に記載の化粧板の製造装置。
【請求項3】
前記加圧手段と前記積層手段との間に設けられ、前記塗料が含浸された前記含浸紙に所定パターンの印刷を施す印刷手段を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の化粧板の製造装置。
【請求項4】
前記搬送手段による前記基材の搬送方向に、複数の前記積層手段及び前記剥離手段の組が順次並設されていることを特徴とする請求項2に記載の化粧板の製造装置。
【請求項5】
複数の組の前記積層手段の前記塗料層形成手段により形成される少なくとも1つの前記塗料の層の厚さが他と異なることを特徴とする請求項4に記載の化粧板の製造装置。
【請求項6】
前記剥離手段の下流側に設けられ、前記基材を前記所定長さで分離する分離手段を更に備えることを特徴とする請求項2または3に記載の化粧板の製造装置。
【請求項7】
前記塗料は、バイオマス化が50%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基材の上面にバイオマス化した少なくとも紫外線硬化特性を有する樹脂系の塗料を含浸した含浸紙を紫外線硬化によって貼着して化粧板を製造する化粧板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧板は、パーティクルボードやMDFなどの木質繊維板の基材表面に所定の印刷が施された化粧紙を熱圧によって貼着して製造される(例えば、特許文献1参照)。このとき、メラミン樹脂を充填した槽中に含浸紙を浸漬させることによりメラミン樹脂を含浸させ、メラミン樹脂を含浸させた含浸紙を基材上面に重ね、低圧で熱圧成型した低圧メラミン化粧板と、メラミン樹脂を含浸した含浸紙及びフェノール樹脂を含浸したクラフト含浸紙のみを積層して高圧で熱圧成型する厚さ1mmほどの高圧メラミン化粧板がよく知られており、これらメラミン化粧板は上面硬度が高く、対汚染性、耐摩耗性、耐熱性、耐水性に優れ、傷付きにくいことから、低圧メラミン化粧板は家具材や内装材等に使用され、薄い高圧メラミン化粧板は家具やドアの面材、棚やカウンターの面材等に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-140629公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の化粧板は、上記したようなメラミン樹脂やフェノール樹脂等の石油由来の樹脂を含浸、乾燥、熱圧着(180℃)して使用するため、製造プロセスの電気使用量が膨大で、またマイクロプラスチック問題の原因ともなり、近年叫ばれている持続可能な開発目標いわゆるSDGsの趣旨に反することになり、環境破壊の抑止を妨げる要因となっている。
【0005】
また、熱圧時に付着した含浸紙のメラミン樹脂を除去する作業が必要になり、手間がかかり、多くの電力を消費し廃棄物も多く発生するという問題もある。
【0006】
この発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、石油由来の樹脂の使用を可能な限り削減し、製造プロセスの電力消費、廃棄物を削減して環境破壊の抑止に寄与しつつ化粧板を安価に、且つ、容易に生産できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る化粧板の製造装置は、基材の上面に樹脂を含浸、硬化した含浸紙を貼着して化粧板を製造する化粧板の製造装置において、前記基材は、長尺の木質板から成り所定長さごとに分離可能に形成されており、前記基材を長尺方向に搬送する搬送手段と、含浸紙ロールから繰り出された含浸紙を前記基材の上面に重ねた状態で加圧する上面側の主ローラ及び下面側の従ローラを有する加圧手段と、少なくとも紫外線硬化特性を備えた粘性を有する樹脂系の塗料を、前記加圧手段の上流側の前記含浸紙が重ねられる直前位置において前記基材の上面に前記基材の幅にわたって供給し、前記加圧手段の前記主ローラ及び前記従ローラの回転により加圧しつつ前記含浸紙に前記塗料を含浸させる塗料供給手段と、前記塗料供給手段により供給される前記塗料が、前記基材の幅以上に広がることを規制して前記基材の幅に留めおく規制手段と、前記加圧手段の下流側で前記含浸紙に含浸された前記塗料を硬化させる硬化手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、含浸紙を基材の上面に重ねた状態で加圧する加圧手段の上流側であって含浸紙が重ねられる直前位置において、塗料供給手段により、少なくとも紫外線硬化特性を備えた粘性を有する樹脂系の塗料を供給し、硬化手段により、加圧手段の下流側で含浸紙に含浸された塗料を硬化させるため、例えば紫外線LED(波長405nm)を用いることにより低消費電力で含浸した塗料を硬化して含浸紙を基材に強固に接着することができ、SDGsの趣旨に反することなく環境破壊の抑止に寄与することができる。
【0009】
また、規制手段により、塗料供給手段によって供給される塗料が、基材の幅以上に広がるのを規制して基材の幅に留めおくことができるため、塗料が基材の幅から溢れ出すことを防止できて塗料の無駄をなくすことができ、加えて加圧手段のローラに塗料が直接触れることがないことから、従来の塗工機であるロールコーターなどを使用した際の清掃が不要になり、また廃液などの廃棄物が発生することもないことに加え、基材が長尺のまま搬送手段により搬送されつつ含浸紙が紫外線LEDによって接着されるため、従来のような「接着剤」を用いる必要がない。
【0010】
また、前記硬化手段の下流側に設けられ、前記塗料が含浸された前記含浸紙に樹脂フィルムを積層する積層手段と、前記積層手段の下流側に前記樹脂フィルムを剥離する剥離手段とを更に備え、前記積層手段は、フィルムロールから繰り出された前記樹脂フィルムを、前記塗料が含浸された前記含浸紙の上面に重畳する重畳ローラと、少なくとも紫外線硬化特性を備えた粘性を有する樹脂系の塗料を、前記重畳ローラの上流側の前記樹脂フィルムが重ねられる直前位置において前記含浸紙の上面に前記基材の幅にわたって供給して前記含浸紙の上面に所定厚さの前記塗料の層を形成する塗料層形成手段と、前記塗料層形成手段により形成される前記塗料の層が、前記基材の幅以上に広がることを規制して前記基材の幅に留めおく他の規制手段と、前記塗料層形成手段により形成された前記塗料の層の前記塗料を硬化させる他の硬化手段とを備え、前記剥離手段は、前記塗料層形成手段により形成され前記硬化手段により硬化された前記塗料の層を前記含浸紙の上面に残した状態で前記樹脂フィルムを剥離するものであるとよい。
【0011】
こうすると、硬化手段の下流側において、積層手段の重畳ローラにより、塗料が含浸されて硬化された含浸紙にフィルムロールから繰り出された樹脂フィルムが積層され、塗料層形成手段により、少なくとも紫外線硬化特性を備えた粘性を有する樹脂系の塗料が、重畳ローラの上流側の樹脂フィルムが重ねられる直前位置において含浸紙の上面に基材の幅にわたって供給されて塗料の層が形成され、他の硬化手段により塗料の層の塗料が硬化されたのち、剥離手段により、硬化した塗料の層を含浸紙の上面に残した状態で樹脂フィルムが剥離されるため、塗料を含浸した含浸紙の上面に積層された塗料の層により鏡面に仕上げることができ、鏡面の化粧板を容易に形成することができる。また、樹脂フィルムの塗料の層側を粗面にしておけば、鏡面ではなく艶消し面を有する化粧板を形成することもでき、デザイン性に優れ種々の用途に使用可能な化粧板を容易に生産することができる。
【0012】
また、前記加圧手段と前記積層手段との間に設けられ、前記塗料が含浸された前記含浸紙に所定パターンの印刷を施す印刷手段を更に備えるとよい。この場合、印刷手段は加圧手段と積層手段との間において、所望の印刷を施すことができるため、含浸紙ロールごと新たなデザインの含浸紙に変更する必要がなく、デザインの変更が生じても迅速に小ロットに対応することが可能になり、安価かつ効率的である。
【0013】
また、前記搬送手段による前記基材の搬送方向に、複数の前記積層手段及び前記剥離手段の組が順次並設されているとよい。こうすると、塗料の層を複数積層した化粧板を形成することができ、耐摩耗性や耐熱性、耐水性等の既存の低圧メラミン化粧板と遜色のない化粧板を形成することができる。
【0014】
また、複数の組の前記積層手段の前記塗料層形成手段により形成される少なくとも1つの前記塗料の層の厚さが他と異なるようにしてもよい。この場合、塗料の層の厚みを変えることにより、種々の用途に応じた鏡面を有する化粧板を形成することができる。
【0015】
また、前記剥離手段の下流側に設けられ、前記基材を前記所定長さで分離する分離手段を更に備えるとよい。こうすると、長尺の基材を適宜分離することにより、用途に応じた化粧板を容易に形成することができる。
【0016】
また、前記塗料は、バイオマス化が50%以上であるのが望ましい。こうすると、電気消費量と石油由来樹脂の使用量を抑制し、環境に優しい製造プロセスと製品を提供することが可能になり、SDGsの趣旨に合致する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、少なくとも紫外線硬化特性を備えた特性を有する樹脂系の塗料を使用することにより、例えば紫外線LEDを用いることにより低消費電力で塗料を硬化することでき、SDGsの趣旨に反することなく環境破壊の抑止に寄与することができる。さらに、規制手段により、塗料供給手段によって供給される塗料を基材の幅に留めおくことができるため、塗料が基材の幅から溢れ出すことを防止できて塗料の無駄をなくすことができ、加えて加圧手段のローラに塗料が直接触れることがないことから、廃棄物が出ない生産ラインを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る化粧板の製造装置の一実施形態の概略構成図である。
図2図1の一部の斜視図である。
図3図1の動作説明用フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明に係る化粧板の製造装置の一実施形態について、図1ないし図3を参照して説明する。
【0020】
本実施形態における化粧板の製造装置1は、図1に示すように構成されている。図1において、2は所定長のパーティクルボード(PB)を材間無しで長尺に連結した状態で搬送される基材、3は複数の搬送ローラ4から成り基材2を図1中の矢印方向の搬送する搬送手段、5は基材2とほぼ同幅を有し印刷可能なチタン紙等の含浸紙6が巻回された含浸紙ロール、7は第1の加圧手段(以下、単に「加圧手段」ともいう)であり、含浸紙ロール5の下方に配置され、含浸紙ロール5から繰り出された含浸紙6を搬送中の基材2の上面に重ねた状態で上、下それぞれから所定圧力で加圧する上面側の主ローラ7a及び下面側の従ローラ7bを備える。ここで、両ローラ7a,7bの軸方向の長さは、図2に示すように基材2の幅よりも大きく設定されている。
【0021】
また、図1において、10は第1の塗料供給手段(以下、単に「塗料供給手段」ともいう)であり、紫外線硬化特性及び湿気硬化特性を兼ね備えた粘性を有する樹脂系の塗料が充填された塗料槽11を備えるとともに、塗料槽11に一端が接続され他端が第1の加圧手段7の主ローラ7aの上流側に配置された複数の供給パイプ12を備えており、第1の加圧手段7の上流側の含浸紙6が重ねられる直前位置において基材2の上面に基材2の幅にわたって塗料槽11内の塗料を供給する。
【0022】
ここで、上記樹脂系の塗料としてはバイオマス化が50%以上のもので、例えば、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ラテックス系樹脂、ゴム系樹脂、ビニルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂やこれらの各種変形樹脂、また、これらの樹脂と尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、イソシアネート系樹脂等を用いるとよい。
【0023】
紫外線硬化特性のある樹脂としては、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどのオリゴマーやポリマーを単独または混合させたものに、反応性モノマーを適宜加えたものを主成分とし、活性エネルギー線を紫外線とするため、光重合開始剤が添加したものが好ましい。
【0024】
また、湿気硬化特性のある樹脂としては、主にイソシアネート系化合物が好適であり、イソシアネート系化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のイソシアネートモノマー、並びにこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンのアダクト体等のポリイソシアネート誘導体、並びにこれらイソシアネートモノマーまたはポリイソシアネート誘導体のブロック体等が好ましい。
【0025】
図1に戻り、14は塗料供給手段10により供給される塗料が、基材2の幅以上に広がることを規制して基材2の幅に留めおく第1の規制手段(以下、単に「規制手段」ともいう)であり、図2に示すように、第1の加圧手段7の主ローラ7aの上流側に配置されて基材2の両端部上に載置され、かつ下流側の円弧状の端面が主ローラ7aの周面に沿うように設置された規制板15,15を備え、両規制板15,15は基材2の幅よりも狭い間隔であってその間隔を可変に設けられており、主ローラ7aの上流側の基材2、両規制板15,15及び基材2に重ねられる含浸紙6により囲まれる領域に塗料溜り16が形成される。そして、この塗料溜り16に塗料槽11から供給された粘性を有する樹脂系の塗料が溜り、第1の加圧手段7の主ローラ7aの図1図2中の矢印方向への回転によって、含浸紙6の下面に塗料が基材2の幅方向にわたり付着して、含浸紙6の下面に塗料が塗布された状態で加圧手段7の両ローラ7a,7bの加圧力が制御されることで、含浸紙6の下面に塗布された塗料が含浸紙6及び基材2の幅方向に広がって均一に含浸されることになる。
【0026】
さらに、図1において、17は紫外線LEDを備え第1の加圧手段7の下流側で含浸紙6に含浸された塗料、基材2と含浸紙6との間の塗料を同時に硬化させる硬化手段、18は印刷手段であるインクジェットプリンタであり、加圧手段7の下流側であって基材2の上方に設置され、搬送される基材2に積層された含浸紙6に、所定パターンの印刷を施す。このとき、紫外線硬化性バイオマスインクを用いて印刷することにより、インクジェットプリンタ18に内蔵の例えば405nmの紫外線LEDによる紫外線照射により紫外線インクが硬化して、含浸紙6に所定パターンの印刷が施される。
【0027】
また、図1において、20は樹脂フィルムである所定厚の透明なPETフィルムが巻回されたPETフィルムロール、21は第2の加圧手段(以下、単に「加圧手段」ともいう)であり、PETフィルムロール20の下方に配置され、PETフィルムロール20から繰り出されたPETフィルム22を、搬送中の基材2の上面の含浸紙6の更に上面に重ねた状態で、上下それぞれから所定圧力で加圧してPETフィルム22を含浸紙6に重畳する重畳ローラである上面側の主ローラ21a及び下面側の従ローラ21bを備える。
【0028】
図1において、24は第2の塗料供給手段(以下、単に「塗料供給手段」ともいう)であり、第1の塗料供給手段10と同様、バイオマス化された紫外線硬化特性及び湿気硬化特性を兼ね備えた粘性を有する樹脂系の塗料が充填された塗料槽25を備えるとともに、塗料槽25に一端が接続され他端が第2の加圧手段21の主ローラ21aの上流側に配置された複数の供給パイプ26を備えており、第2の加圧手段21の上流側のPETフィルム22が重ねられる直前位置において基材2上の含浸紙6の上面に基材2の幅にわたって塗料槽25内の塗料を供給する。
【0029】
さらに、図1において、28は第2の塗料供給手段24により供給される塗料が基材2の幅以上に広がることを規制して基材2の幅に留めおく第2の規制手段であり、第1の規制手段14と同様、図1に示すように、第2の加圧手段21の主ローラ21aの上流側に配置されて基材2の両端部上に載置され、かつ下流側の円弧状の端面が主ローラ21aの周面に沿うように設置された規制板29,29を備え、両規制板29,29は基材2の幅よりも狭い間隔であってその間隔を可変に設けられており、主ローラ21aの上流側の基材2、両規制板29,29及び基材2に重ねられるPETフィルム22により囲まれる領域に塗料溜り30が形成されるようになっており、第2の塗料供給手段24及び第2の規制手段28により、本発明における「塗料層形成手段」が構成されている。
【0030】
また、PETフィルムロール20、第2の加圧手段21の主ローラ21a、従ローラ21b、第2の塗料供給手段24及び第2の規制手段28により、第1の加圧手段7の下流側に設けられて塗料が含浸された含浸紙6にPETフィルム(樹脂フィルム)22を積層する積層手段が構成されている。
【0031】
図1において、32は紫外線LEDを備え第2の加圧手段21の下流側で含浸紙6とPETフィルム22との間に塗布された塗料の層の塗料を硬化させる他の硬化手段、33は硬化手段32の下流側に配置され基材2上の含浸紙6に積層されたPETフィルム22を剥離する剥離ローラから成る剥離手段、34は剥離手段33により剥離されたPETフィルム22を巻き取って回収する巻取ローラである。
【0032】
このとき、PETフィルム22として、一定厚で含浸紙6に接触する下面が平坦なフィルムを使用することにより、基材2に重ねられた含浸紙6の上面を鏡面に仕上げることができ、PETフィルム22として、一定厚で含浸紙6に接触する下面が細かな凹凸を有する粗面のフィルムを使用することにより、基材2に重ねられた含浸紙6の上面を鏡面ではなく艶消し面に形成することができる。また、PETフィルム22の下面の鏡面の一部に、凹凸等による所定のデザインを施しておけば、基材2に重ねられた含浸紙6の上面に凹凸等によるデザインを形成することができる。
【0033】
図1において、36は剥離手段33の下流側に設けられ含浸紙6が積層された状態の基材2を所定長さで切断するカッター及びこれを上下動させるアクチュエータを備える分離手段であり、分離手段36により、基材2が所定長さに分離されて化粧板37が形成される。このとき、塗料が紫外線硬化特性に加えて湿気硬化特性を有するため、日本のような湿度の高い環境下では、化粧板37を放置しておくことで、硬化手段17,32の紫外線LEDにより100%硬化させなくても湿気により塗料を自然に100%硬化させることもできる。
【0034】
次に、化粧板37を形成する各工程について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0035】
図3に示すように、基材2の材間をゼロにし(ステップS1)、第1の塗料供給手段10により、基材2の上面に塗料槽11に充填された紫外線硬化特性及び湿気硬化特性を有する塗料を塗布し(ステップS2)、塗料を塗布した基材2に含浸紙6を重ね合わせて第1の加圧手段7により上下から加圧することによって、塗料を含浸紙6に含浸させ(ステップS3)、硬化手段17の紫外線LEDによる紫外線を照射することにより含浸紙に含浸した塗料を硬化し(ステップS4)、搬送手段3により搬送される基材2に積層された含浸紙6に、印刷手段であるインクジェットプリンタ18により、所定パターンの印刷を施す(ステップS5)。
【0036】
さらに、第2の塗料供給手段24により、基材2に積層された含浸紙6の上面に、塗料槽25に充填された紫外線硬化特性及び湿気硬化特性を有する塗料を塗布し(ステップS6)、塗料を塗布した基材2上の含浸紙6にPETフィルム22を重ね合わせて第2の加圧手段21により上下から加圧することによって、塗料の層の厚みを調整し(ステップS7)、硬化手段32の紫外線LEDによって紫外線を照射し、含浸紙6とPETフィルム22との間に塗布された塗料を硬化させる(ステップS8)。
【0037】
その後、剥離手段33によりPETフィルム22を剥離し(ステップS9)、分離手段36により、含浸紙6が積層された状態の基材2を所定長さで分離し(ステップS10)、所定長さの化粧板37を形成して一連の工程を終える。
【0038】
したがって、上記した実施形態によれば、含浸紙6を基材2の上面に重ねた状態で加圧する第1の加圧手段7の上流側であって含浸紙が重ねられる直前位置において、第1の塗料供給手段10により、バイオマス化された(例えば、バイオマス化50%以上)紫外線硬化特性及び湿気硬化特性を兼ね備えた粘性を有する樹脂系の塗料を供給し、硬化手段17により、第1の加圧手段7の下流側で含浸紙6に含浸された塗料を硬化させるため、硬化手段17の紫外線LEDにより紫外線を照射することにより低消費電力で塗料を硬化することでき、これに加えて雰囲気中の湿気によっても塗料を硬化することができ、これに加えて基材2内部、含浸紙6内部や雰囲気中の湿気によっても塗料を硬化することができ、SDGsの趣旨に反することなく環境破壊の抑止に寄与することができる。
【0039】
また、規制手段14,28により、第1、第2の塗料供給手段10,24によって供給される塗料が、基材2の幅以上に広がるのを規制して基材2の幅に留めおくことができるため、塗料が基材2の幅から溢れ出すのを防止することができて、塗料の無駄をなくすことができる。さらに、第1の加圧手段7の主ローラ7aや第2の加圧手段21の主ローラ21aに塗料が直接触れることがないことから、これらを清掃する必要がなく、また廃棄物が出ないので作業効率の向上を図ることができる。このとき、基材2が長尺のまま搬送手段3により搬送されつつ含浸紙6が塗料の硬化によって接着されるため、塗料が漏れ出す余地がなくなり、より効果的に塗料の無駄を防止することができる。
【0040】
また、硬化手段17の下流側において、積層手段を構成する主ローラ21aにより、塗料が含浸された含浸紙6にPETフィルムロール20から繰り出されたPETフィルム22が積層され、紫外線硬化特性及び湿気硬化特性を兼ね備えた粘性を有する樹脂系の塗料が、主ローラ21aの上流側のPETフィルム22が重ねられる直前位置において含浸紙6の上面に基材の幅にわたって供給されて塗料の層が形成され、他の硬化手段32により塗料の層が硬化されたのち、剥離手段33により、硬化した塗料の層を含浸紙の上面に残した状態でPETフィルム22が剥離されるため、塗料を含浸した含浸紙6の上面に積層された塗料の層により鏡面に仕上げることができ、鏡面の化粧板37を容易に形成することができる。
【0041】
また、PETフィルム22の塗料の層側を粗面にしておけば、鏡面ではなく艶消し面を有する化粧板37や、凹凸による所定のデザインを有する化粧板37を形成することもでき、デザイン性に優れ種々の用途に使用可能な化粧板を容易に形することができる。
【0042】
また、紫外線LEDを備える硬化手段17を第1の加圧手段7の下流側に設け、第2の加圧手段21の下流側に硬化手段32を設け、硬化手段32の上流側にPETフィルムロール20、第2の加圧手段21の主ローラ21a、従ローラ21b、第2の塗料供給手段24及び第2の規制手段28から成る積層手段を設けるため、硬化手段17,32により、塗料をほぼ100%硬化させることができて、非常に効率的である。さらに、塗料が湿気硬化特性も備えるため、日本のような湿度の高い環境下では、化粧板37を放置しておくことで、硬化手段17,32の紫外線LEDにより100%硬化させなくても、湿気により塗料を自然に100%硬化させることもできる。
【0043】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0044】
例えば、上記した実施形態では、塗料槽11,25に充填する塗料として、紫外線硬化特性及び湿気硬化特性の両方を兼ね備えるものを使用したが、紫外線硬化特性のみを有するものを使用してもよい。
【0045】
また、他の実施形態として、図1中の1点鎖線で囲むPETフィルムロール20、第2の加圧手段21の主ローラ21a、従ローラ21b、及び、第2の塗料供給手段24と第2の規制手段28とから成る塗料層形成手段により構成される積層手段、並びに、硬化手段32の組を、基材2の搬送方向に複数設けてもよい。
【0046】
このとき、前の組のPETフィルムロール20には、塗料の層側の面に凹凸を有する透明なPETフィルムを使することで、当該PETフィルムの剥離後、硬化して塗料表面を粗面にして次の組における塗料の付着性及び硬化性を向上することができる。また、硬化収縮の歪みを分散する事ができる。さらに、上記した各組において積層される塗料の層の厚みを変えることにより、種々の用途に応じた鏡面等を有する化粧板37を形成することが可能になる。
【0047】
こうすると、塗料の層を複数積層した化粧板37を形成することができ、耐摩耗性や耐熱性、耐水性等の既存の低圧メラミン化粧板と遜色のない化粧板37を、環境破壊の抑止に寄与しつつ容易に形成することができる。
【0048】
また、紫外線硬化特性及び湿気硬化特性を有する塗料は、バイオマス化が50%以上であれば、上記したものに限定されるものではない。
【0049】
また、PETフィルム22に代えて、紫外線が透過可能なその他の樹脂フィルムを積層するようにしてもよい。
【0050】
そして、基材の上面に樹脂系の塗料を含浸、硬化した含浸紙を貼着して化粧板を製造する化粧板の製造装置に本発明を広く適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 …化粧板の製造装置
2 …基材
3 …搬送手段
4 …搬送ローラ
6 …含浸紙
7 …第1の加圧手段
7a …主ローラ
7b …従ローラ
10 …第1の塗料供給手段
14 …第1の規制手段
15 …規制板
16 …塗料溜り
17 …硬化手段
18 …インクジェットプリンタ(印刷手段)
20 …PETフィルムロール(積層手段)
21 …第2の加圧手段(積層手段)
21a…主ローラ(重畳ローラ、積層手段)
21b…従ローラ(重畳ローラ、積層手段)
22 …PETフィルム(樹脂フィルム)
24 …第2の塗料供給手段(塗料層形成手段、積層手段)
28 …第2の規制手段(塗料層形成手段、積層手段)
29 …規制板
32 …他の硬化手段
33 …剥離手段
37 …化粧板
図1
図2
図3