(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058709
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】靴及び先芯を有する靴用インナーシューズ
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20240422BHJP
A43B 3/16 20220101ALI20240422BHJP
A43B 19/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A43B23/02 102
A43B3/16 Z
A43B19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165962
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】前田 直俊
(72)【発明者】
【氏名】郡山 智彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 剛
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 雄
(72)【発明者】
【氏名】古石 麗奈
(72)【発明者】
【氏名】北山 裕教
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BC01
4F050BF06
4F050EA29
4F050FA27
4F050JA23
(57)【要約】
【課題】 先芯を有する靴のフィット性の向上と、着用者の快適性が得られる靴及び先芯を有する靴用インナーシューズを提供する。
【解決手段】
本発明の一実施形態に係る靴1は、アウター用ソール20とアウター用ソール20の上方を覆う先芯27と、アウター用ソール20に設けられたアウター用アッパー21を備えるアウターシューズ2と、アウターシューズ2の内側に配置されるインナーシューズ3を有し、インナーシューズ3は、インナー用ソール30とインナー用ソール30の上方に設けられたインナー用アッパー31とを備え、アウターシューズ22の内側にインナーシューズ3が位置する場合、インナー用ソール30の爪先部分30fが先芯27の内側に位置するように構成される。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウター用ソールと、前記アウター用ソールの爪先部分の上方を覆う先芯と、前記アウター用ソールの上方に設けられたアウター用アッパーを備えるアウターシューズと、前記アウターシューズの内側に着脱可能なインナーシューズを有し、
前記インナーシューズは、
インナー用ソールと、前記インナー用ソールの上方に設けられたインナー用アッパーとを備え、
前記アウターシューズの内側に前記インナーシューズが位置する場合、前記インナー用ソールの爪先部分が前記先芯の内側に位置する、
靴。
【請求項2】
前記インナー用ソールの爪先部分は、前記先芯の内側に直接または間接に複数箇所で接触する、請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記先芯は、爪先上部を覆う上面部と、この上面部から滑らかに屈曲して一体的に形成された先端部及び両側の側面部を有し、
前記インナーシューズの前記インナー用ソールは、少なくとも前記先芯の先端部と両側の側面部と接触する、請求項2に記載の靴。
【請求項4】
前記インナーシューズの前記インナー用ソールは、樹脂、エラストマー、ゴムなどの高分子組成物またはその発泡体を含む軟質部材からなる、請求項1から3のいずれか1項に記載の靴。
【請求項5】
前記アウターシューズの前記アウター用ソールに巻き上げ部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の靴。
【請求項6】
前記巻き上げ部に少なくとも1箇所のくり抜き部を設けた、請求項5に記載の靴。
【請求項7】
前記インナーシューズが、前足部、中足部、後足部を有し、
前記インナー用ソールの中足部及び後足部の少なくとも1箇所が前記アウターシューズの内側と接触する、請求項2または3のいずれかに記載の靴。
【請求項8】
前記インナーシューズの前記インナー用ソールの底面に足長方向に伸びる溝状部を有し、前記アウターシューズの前記アウター用ソールの上面に足長方向に伸びると共に前記溝状部に対応する畝状部を設けた、請求項1から3のいずれかに記載の靴。
【請求項9】
前記インナーシューズの前記インナー用ソールの少なくとも1箇所に凸部を設け、前記アウターシューズの前記アウター用ソールの前記巻き上げ部の前記凸部に対応する位置に凹部を設けた、請求項5に記載の靴。
【請求項10】
前記インナーシューズの前記インナー用ソールの踵部に踵保持部が設けられ、前記インナー用ソールの前記踵保持部の上端に切り込み部を形成した、請求項1から3のいずれか1項に記載の靴。
【請求項11】
前記インナーシューズが前足部、中足部、後足部を有し、前記インナー用ソールの前記中足部または前記後足部に空洞部を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の靴。
【請求項12】
前記インナー用ソールの前記空洞部にファンを有する、請求項11に記載の靴。
【請求項13】
前記インナー用ソールの前記空洞部に動作計測または圧力計測可能なセンサを有する、請求項11に記載の靴。
【請求項14】
前記インナー用ソールの上面に、前記空洞部から前足部方向に連接する1個以上の通気溝が設けられている、請求項12に記載の靴。
【請求項15】
前記インナー用ソールの上面にインソールが設けられ、前記インソールの前足部に貫通孔を有する、請求項14に記載の靴。
【請求項16】
前記インナー用ソール側面、上面、底面のうち少なくとも1箇所に前記空洞部に連なる取り出し口が設けられている、請求項11に記載の靴。
【請求項17】
前記インナー用ソールの前記取り出し口に連通し、前記アウターシューズの前記アウター用ソールに設けられた通気孔を有する、請求項16に記載の靴。
【請求項18】
前記取り出し口が前記インナー用ソールの側面に設けられ、前記通気孔が前記アウター用ソールの前記巻き上げ部に設けられることを特徴とする、請求項17に記載の靴。
【請求項19】
先芯を有するアウターシューズに着脱可能なインナーシューズであって、
前記インナーシューズは、インナー用ソールと前記インナー用ソールの上方に設けられ足を収容するインナー用アッパーとを備える、先芯を有する靴用のインナーシューズ。
【請求項20】
前記インナー用ソールの爪先部分は、装着する前記アウターシューズの前記先芯の内側に直接または間接に複数箇所で接触する、請求項19に記載の先芯を有する靴用のインナーシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴及び先芯を有する靴用インナーシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や建設現場で働く人、あるいは宅配業の荷物や商品の運送者等が主として履く靴として、安全靴や作業靴がある。この種の靴は、爪先部を落下物による衝撃や圧迫から保護するため金属、硬質樹脂材料等から構成される先芯が爪先部に内装されている。
【0003】
従来の安全靴などの先芯を有する靴は、要求される安全性や基準を満たすために、着用者の快適性が犠牲にされているのが現状である。特に、爪先部分は、柔軟性を有さない先芯で足を覆うために、着用者の足よりも大きめに形成されている。よって、従来の先芯を有する靴は、爪先付近のフィット性が低く着用者の快適性が乏しい。
【0004】
また、安全靴などの先芯を有する靴は様々な環境で使用する場面が多いが、足の保護を優先しているため外気温や季節等の使用環境に応じて快適性を考慮した先芯を有する靴は見受けられない。
【0005】
ところで、特許文献1には、アウターと、アウターの内側に配置されるインナーとを有し、インナーを取り外し可能にした靴が開示されている。上記した特許文献1においては、安全靴として用いることができることが記載され、材質の異なるインナーを交換できるようにすることが開示されている。
【0006】
上記した特許文献1のインナーは、インソールを有することは開示されているが、アウターソールを備えることについては、何ら開示も示唆もなく、このインナー単体で靴として使用することは想定していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の安全靴は、爪先付近のフィット性が乏しく着用者の快適性が犠牲にされている。また、安全靴において、インナーシューズ単体で靴として使用することを想定したものは無かった。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、先芯を有する靴のフィット性の向上と、着用者の快適性が得られる靴及び先芯を有する靴用インナーシューズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明等は、先芯を有する靴のフィット性の向上と、着用者の快適性について検討した。本発明者等は、鋭意検討の結果、以下のような構成に想到した。
【0011】
本発明の一実施形態に係る靴は、アウター用ソールと前記アウター用ソールの上方を覆う先芯と、前記アウター用ソールに設けられたアウター用アッパーを備えるアウターシューズと、前記アウターシューズの内側に配置されるインナーシューズを有し、前記インナーシューズは、インナー用ソールと前記インナー用ソールの上方に設けられたインナー用アッパーとを備え、前記アウターシューズの内側に前記インナーシューズが位置する場合、前記インナー用ソールの爪先部分が前記先芯の内側に位置するように構成される。
【0012】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0013】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、インナーシューズがアウターシューズに対して着脱可能に構成されるので、着用者の爪先付近のフィット性を向上させたインナーシューズを提供することにより、フィット性及び快適性に優れた靴が得られる。さらに、インナーシューズは、インナー用ソールを有しているので、インナーシューズ単体で使用することができるとともに、インナーシューズのアウターシューズへの挿入が容易であり、靴としての利便性を損なわない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る靴を示す側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る靴を示す上面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る靴において、インナーシューズをアウターシューズから取り外した状態を示す側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る靴と着用者の足骨格との位置関係を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態の靴のアウターシューズを示す外足側の側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態の靴のアウターシューズを示す内足側の側面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態の靴のアウターシューズを示す上面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態の靴のアウターシューズを示す背面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態の靴のアウターシューズを示す底面図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態の靴のアウターシューズの断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の靴に用いられる先芯を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明の靴に用いられる先芯の上面図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態の靴のインナーシューズを示す内足側の側面図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態の靴のインナーシューズを示す上面図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態の靴のインナーシューズを示す底面図である。
【
図18】
図18は、インナーシューズをアウターシューズに挿入した状態を示す本発明の実施形態の靴の断面図である。
【
図21】
図21は、本発明の第1変形例の靴のインナーシューズを示す内足側の側面図である。
【
図22】
図22は、本発明の第1変形例の靴のインナーシューズを示す外足側の側面図である。
【
図23】
図23は、本発明の第1変形例の靴のインナーシューズを示す上面図である。
【
図24】
図24は、本発明の第2変形例の靴のインナーシューズの背面図である。
【
図25】
図25は、本発明の第3変形例の靴を示す内足側の側面図である。
【
図26】
図26は、本発明の第3変形例の靴のアウターシューズを示す上面図である。
【
図27】
図27は、本発明の第3変形例の靴のアウターシューズにおいて、外付けアッパーを開いた状態を示す上面図である。
【
図28】
図28は、本発明の第4変形例の靴におけるインナー用ソールを上下方向の中央部分で断面にした模式図である。
【
図29】
図29は、第4変形例の靴におけるインナー用ソールの側面図である。
【
図31】
図31は、第4変形例の靴におけるインソールの上面図である。
【
図32】
図32は、第5変形例の靴におけるインナーシューズの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態に係る靴に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る靴は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
本発明の実施形態、変形例においては、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要でない部材の一部は省略して表示する。
【0017】
また、第1、第2などの序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0018】
[実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る先靴の構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る靴1を示す側面図、
図2は、本発明の実施形態に係る靴1を示す上面図、
図3は、本発明の実施形態に係る靴1において、インナーシューズ3をアウターシューズ2から取り外した状態を示す側面図である。
図1及び
図2を含め、以下の図では、特に説明しない限り、右足用の靴1を示すが、左足用の靴1にも同様に適用される。
図4は、本発明の実施形態に係る靴と着用者の足骨格との位置関係を示す模式図である。
【0019】
本実施形態の靴1は、工場や建設現場で働く人、あるいは宅配業の荷物や商品の運送者等が履く、先芯を有する靴であり、例えば、安全靴、作業靴として用いられる。本実施形態の靴1は、アウターシューズ2とインナーシューズ3とからなる。本発明においては、
図3に示すように、インナーシューズ3は、アウターシューズ2の内側に着脱可能に構成されている。
【0020】
本実施形態の靴1においては、インナーシューズ3がアウターシューズ2に着脱可能に構成されているので、デザイン、材質などが異なるインナーシューズ3に交換することができる。例えば、夏など温度、湿度の高い環境で着用する場合、高通気性の材料で構成されたインナーシューズ3を用いることで足の蒸れを抑制することができる。また、冬など温度が低い環境で着用する場合、高保温性の材料で構成されたインナーシューズ3を用いることで、着用者の足が冷えにくく、快適に着用できる。また、インナーシューズ3を取り外すことができるので、インナーシューズ3だけを洗うこともできる。さらに、使用によりインナーシューズ3が劣化した際には、インナーシューズ3だけを交換すればよい。
【0021】
図2に示すように、靴1の幅方向中心線Laから内足側(図中左側)を内足部1a、幅方向中心線Laから外足側(図中右側)を外足部1bという。
【0022】
本発明においては、外足側から内足側に向かう方向を内側といい、その反対方向を外側という。中心線Laに沿った方向を「足長方向」という。中心線Laに沿ってつま先側に向かう方向を「前側」または「前方」といい、その反対側を「後側」または「後方」という。したがって、幅方向は中心Laに直交する。
【0023】
本発明においては、靴1を水平面に載置した状態(以下、「水平状態」という。)における上側を「上側」または「上方」といい、その反対側を「下側」または「下方」という。また、水平状態において、鉛直に延びる方向を「上下方向」という。
【0024】
本発明においては、
図1、
図2及び
図4に示すように、靴1のうち、前後方向において中足骨B2(
図4参照)に対応する部分を中足部1Mという。中足部1Mは、靴1の前後長Lを100%とするとき、中心線Laと直交する直線に平行な範囲で、先端から25%~85%、より厳密には、30%~80%の長さLM分の領域である。また、靴1のうち、前後方向において、中足部1Mより前側の部分を前足部1Fといい、長さLF分の領域である。また、中足部1Mより後側の部分を後足部1Rといい、長さLR分の領域をいう。前足部1Fは、概ね趾骨B3(
図4参照)に対応する部分であり、後足部1Rは、概ね足根骨B1(
図4参照)に対応する部分である。
【0025】
図4に示すように、足は、足根骨B1、第1~第5の中足骨B2、趾骨B3で構成される。趾骨B3は基節骨B33、中節骨B32、末節骨B31で構成されている。
図4の左から第1、第2、第3、第4、第5である。足の関節は、IP関節J2、PIP関節J’2、MP関節(中足趾節関節)J1、リスフラン関節J3、ショパール関節J4で構成されている。
図4においては、MP関節に沿う仮想線をLbで表している。
【0026】
本実施形態の靴1のアウターシューズ2とインナーシューズ3について、図面を参照して説明する。
【0027】
(アウターシューズ)
図5~
図12を参照して、本実施形態の靴1のアウターシューズ2について説明する。
図5は、本発明の実施形態の靴1のアウターシューズ2を示す外足側の側面図、
図6は、本発明の実施形態の靴1のアウターシューズ2を示す内足側の側面図、
図7は、本発明の実施形態の靴1のアウターシューズ2を示す上面図、
図8は、本発明の実施形態の靴1のアウターシューズ2を示す背面図、
図9は、本発明の実施形態の靴1のアウターシューズ2を示す底面図、
図10は、本発明の実施形態の靴1のアウターシューズ2の断面図、
図11は、
図10の爪先部(Xで囲んだ部分)の拡大図、
図12は、
図10の爪先部分のY-Y’断面図である。
【0028】
アウターシューズ2は、アウター用ソール20と、アウター用ソール20の上方に設けられたアウター用アッパー21を備える。アウター用アッパー21には、アウター用ソール20の爪先部分の上方を覆う先芯27が内蔵されている(
図10~
図12参照)。
【0029】
(アウター用ソール)
アウター用ソール20は、地面に接するためのアウトソール20cを有し、耐滑性や耐摩耗性に優れた材料、例えば、加硫ゴム、耐油性ラバーなどによって形成されている。アウター用ソール20の上方には、接着等の手段により、アウター用アッパー21が固定される。
【0030】
本実施形態のアウター用ソール20は、両側面部20a、両側面部20aの後方に設け踵部20b、両側面部20aの前方に設けられた爪先部20fを有する。
図8に示すように、アウター用ソール20のアウトソール20cの接地面は、滑りにくさを考慮した溝部を設けた形状に形成されている。
【0031】
本実施形態においては、アウター用ソール20の爪先部20fは、上側に上げたトウアップ構造とし、つまずきを抑制している。アウター用ソール20の爪先部20fの先端には、アウター用アッパー21側に向かって巻き上げられた巻き上げ部20mが設けられている。巻き上げ部20mを設けることにより、重量物の移動時など爪先部20fを使用する作業時におけるアウター用アッパー21の劣化を抑制することができる。
【0032】
図8に示すように、アウター用ソール20の踵部20bの後端には、アウター用アッパー21側に向かって巻き上げられた巻き上げ部20nが設けられている。
【0033】
本実施形態においては、巻き上げ部20nは、内足部1a側から外足部1b側に向かって巻き上げ高さを高くしている。これにより、着用者の足が外足部1b側に倒れることが抑制される。
【0034】
尚、本実施形態においては、アウター用ソール20は、アウトソール20cと一体に形成されているが、アウター用ソール20は、アウトソールとミッドソールとインソールにより構成してもよい。
【0035】
本実施形態においては、
図5に示すように、内足部1a側のアウター用ソール20の踵部20bには、アウター用アッパー21側に向かって巻き上げられた山状の巻き上げ部20dが設けられている。巻き上げ部20dの上下方向の中間部には、くり抜き部20eが設けられている。このくり抜き部20eには、透明又は半透明の樹脂製フィルム又はメッシュ状の布材からなる蓋材20xが設けられている。蓋材20xに透明又は半透明の樹脂製フィルムを用いた場合、蓋材20xを介してアウターシューズ2内に挿入されたインナーシューズ3のインナー用ソール30を視認することができ、インナーシューズ3の種類をアウターシューズ2に挿入された状態で確認することができる。
【0036】
また、蓋材20xにメッシュ状の布材を用いた場合、蓋材20xを介してアウターシューズ2内の吸排気が可能となり、アウターシューズ2内の換気が促進される。
【0037】
本実施形態においては、外足部1b側のアウター用ソール20の側面部20aには、アウター用アッパー21側に向かって巻き上げられた山状の巻き上げ部20gが設けられている。巻き上げ部20gの上下方向の中間部には、くり抜き部20hが設けられている。このくり抜き部20hには、透明又は半透明の樹脂製フィルム又はメッシュ状の布材からなる蓋材20iが設けられている。
【0038】
踵部20bの蓋材20xと同様に、蓋材20iに透明又は半透明の樹脂製フィルムを用いた場合、蓋材20iを介してアウターシューズ2内に挿入されたインナーシューズ3のインナー用ソール30を視認することができ、インナーシューズ3の種類をアウターシューズ2に挿入された状態で確認することができる。
【0039】
また、蓋材20iにメッシュ状の布材を用いた場合、蓋材20iを介してアウターシューズ2内の吸排気が可能となり、アウターシューズ2内の換気が促進される。
【0040】
(アウター用アッパー)
アウター用ソール20の上方に固定されるアウター用アッパー21は、踵被い部21aと、爪先被い部21bと、これらの間に形成される中間被い部21cとを有する。
【0041】
踵被い部21aと中間被い部21cの間にシューズ入れ口部22が形成されている。
図7に示すように、中間被い部21cは、シューズ入れ口部22から前方に足の甲の中程まで開口部24が形成されている。開口部24を挟んで両中間被い部21cの端部には、それぞれレースホール26aが設けられている。シューレース26が内足部1a側の中間被い部21cと外足部1b側の中間被い部21cのそれぞれのレースホール26aに両側から交互に通される。
【0042】
本実施形態のアウター用アッパー21は、舌片を設けていないが、開口部24を舌片で閉じるような構造にすることもできる。なお、開口部24は必須の構成ではなく、アウター用アッパー21がいわゆるモノソック構造であってもよい。
【0043】
アウターシューズ2にインナーシューズ3を挿入する際には、シューレース26を緩め、開口部24を開いた状態でシューズ入れ口部22からインナーシューズ3を挿入する。そして、シューレース26を締めることにより、インナーシューズ3を介してインナーシューズ3に挿入された足を締め付ける。また、アウターシューズ2からインナーシューズ3を取り外す時には、シューレース26を緩め、開口部24を開き、シューズ入れ口部22からインナーシューズ3を取り出す。
【0044】
本実施形態においては、開口部24を覆うように、爪先被い部21bから中間被い部21cにかけて甲カバー29が設けられている。この甲カバー29により、開口部24と、レースホール26aと、シューレース26がアウター用アッパー21内に収容される。これにより、アウター用アッパー21の足の甲側の隙間等を減らすことが可能となり、着用者の足の保護性を高めることができる。さらに、シューレース26もアウター用アッパー21内に収容されるので、シューレース26が外部の部材に接触することを防止できる。
【0045】
また、本実施形態の甲カバー29は、前後方向に沿って、多数の樹脂性の保護材29aが一体に設けられている。保護材29aにより、足幅方向の伸縮性を損なうことなく、足の甲部分の保護性を高めることが可能なため、インナーシューズ3を容易に装着できるとともに、安全性に優れた靴を提供できる。
【0046】
図10に示すように、アウター用アッパー21のシューズ入れ口部22は、踵部の上端にアウター用アッパー21の内部に膨らむ凸部21dが設けられている。この凸部21dは、アウターシューズ2にインナーシューズ3を挿入した際に、インナーシューズ3の踵保持部30nの上端より上部に位置するように設けられている。
【0047】
アウター用アッパー21の内部へ膨らむ凸部21dにより、靴1の使用時にインナーシューズ3がアウターシューズ2から容易に脱げてしまうことを抑制できる。
【0048】
図10~
図12に示すように、爪先被い部21bの裏面には、鉄製又は樹脂性の先芯27が内蔵され、この先芯27は、爪先部分の上方を覆い、着用者の爪先を防護する。本実施形態においては、先芯27はガラス繊維強化樹脂性が用いられ、
図13及び
図14に示す形状に形成されている。
図13及び
図14に示すように、本実施形態の先芯27は、爪先上部を覆う上面部27aと、この上面部27aから滑らかに屈曲して一体的に形成された先端部27b及び両側の側面部27cを有する。側面部27cの下部には下辺に折り曲げられたスカート部27dが設けられている。
【0049】
先芯27は、スカート部27dがアウター用ソール20の足底面に配置し、爪先被い部21bの裏面に上面部27a、先端部27b、両側面部27cを密着させる。そして、爪先被い部21bの裏面に、編物、織物、不織布等からなる先裏28aが縫製又は接着により取り付けられる。先芯27は、爪先被い部21bと先裏28aの間に配設され、先芯27が爪先被い部21bに内蔵される。アウター用ソール20の足底面に配置される中底28bの爪先側は、先裏28a上に配置される。
【0050】
本実施形態においては、中底28bを設けているが、中底28bを省略してもよい。また、先芯27を爪先被い部21bの裏面とアウター用ソール20の足底面に接着し、先裏28aを省略しても良い。本発明は、着用者はインナーシューズ3内に足を挿入した状態でアウターシューズ2に挿入するので、先裏28aを省略しても着用者の足の指が先芯27に直接触れることはない。
【0051】
(インナーシューズ)
図15~
図17を参照して、本実施形態の靴1のインナーシューズ3について説明する。
図15は、本発明の実施形態の靴1のインナーシューズ3を示す内足側の側面図、
図16は、本発明の実施形態の靴1のインナーシューズ3を示す上面図、
図17は、本発明の実施形態の靴1のインナーシューズ3を示す底面図である。
【0052】
インナーシューズ3は、インナー用ソール30と、インナー用ソール30の上方に設けられたインナー用アッパー31を備える。
図1及び
図2に示すように、インナー用ソール30は、インナーシューズ3をアウターシューズ2の内側に挿入した際、アウター用ソール20の内表面に当接し、内表面の起伏に沿う形状で形成される。インナー用アッパー31は、インナーシューズ3がアウターシューズ2の内側に配置された際、アウター用アッパー21の内側に重ねられる。
【0053】
(インナー用ソール)
インナー用ソール30は、アウターシューズ2の足底面に接するための底面30cを有する。本実施形態のインナー用ソール30は、両側面部30a、両側面部30aの後方に設けられた踵部30b、両側面部30aの前方に設けられた爪先部30fを有する。
【0054】
本実施形態のインナー用ソール30は、アウターシューズ2にインナーシューズ3を挿入した際、インナー用ソール30がアウターシューズ2のアウター用ソール20の足底面と爪先部30f、両側面部20a、踵部30bに沿うように、爪先部30fから両側面部30a、踵部30bに向かってインナー用ソール30の厚さが次第に大きくなるように形成されている。
【0055】
インナー用ソール30は、樹脂、エラストマー、ゴムなどの高分子組成物またはその発泡体を含む軟質部材で構成されている。インナー用ソール30を軟質部材で構成することにより、インナー用ソール30のクッション性が向上し、インナーシューズ3をアウターシューズ2に挿入して靴1と使用する時のクッション性が向上する。室内などにおいて、インナーシューズ3単体で着用する場合には、インナー用ソール30の底面30cが室内の床などと接する。
【0056】
本実施形態においては、インナー用ソール30の踵部30bの後端には、インナー用アッパー31側に向かって巻き上げられた踵保持部30nが設けられている。
【0057】
インナー用ソール30の上方には、接着等の手段により、インナー用アッパー31が固定される。インナー用アッパー31内には、インソール34が配置されている。
【0058】
図17に示すように、底面30cは、耐滑性及び屈曲性を考慮した複数の溝部39を設けた形状に形成されている。さらに、底面30cには、足長方向に伸びる溝状部35を設ける。そして、アウターシューズ2のアウター用ソール20の上面に足長方向に伸びると共に溝状部35に対応する畝状部6(
図7の破線参照)を設ける。
【0059】
インナーシューズ3のインナー用ソール30の溝状部35とアウター用ソール20の上面の畝状部6を嵌合させることにより、インナーシューズ3とアウターシューズ2の足幅方向における両者のずれが抑制できる。
【0060】
尚、インナー用ソール30の溝状部35及びアウター用ソール20の上面の畝状部6は、必須の構成ではなく、両者を設けなくてもよい。
【0061】
本実施形態においては、インナー用ソール30は、ミッドソールを有していないが、ミッドソールを有するように構成してもよい。また、インソール34を含まなくてもよい。
【0062】
(インナー用アッパー)
インナー用アッパー31は、インナー用ソール30の上方に設けられ足を収容する。インナー用アッパー31は、足を収容するための内部空間33を囲む。インナー用アッパー31は、インナー踵被い部31aと、インナー爪先被い部31bと、これらの間に形成されるインナー中間被い部31cとを有する。
【0063】
インナー踵被い部31aとインナー中間被い部31cの間にインナー履き口部32が形成されている。本実施形態のインナー用アッパー31はいわゆるモノソック構造で構成されている。
【0064】
本実施形態のインナー用アッパー31は、着用者の足にフィットするように、材質及び内部空間33の形状が構成されている。
【0065】
インナー踵被い部31aには、インナー踵被い部31aの上部から少し上まで延びる引手36が設けられている。インナー爪先被い部31bの爪先部分からインナー履き口部32の前方から少し後側に延びる足甲部引手37が設けられている。
【0066】
インナー用アッパー31に足を挿入する際、着用者は、引手36を引きながらインナー履き口部32から足を挿入することで、内部空間33内への足の挿入が容易に行える。そして、足甲部引手37を引っ張り、インナー用アッパー31の内部空間33に足を確実に収容させることができる。
【0067】
本実施形態においては、インナーシューズ3のインナー用アッパー31は、高伸縮性の材料で形成され、着用者の足へのフィット性を高めている。
【0068】
また、インナーシューズ3のインナー用アッパー31は、高通気性の材料または高保温性の材料で形成することができる。インナー用アッパー31を高通気性の材料で形成すると、着用者の足の蒸れを抑制することができる。また、インナー用アッパー31を高保温性の材料で形成すると、着用者の足の冷えなどが抑制できる。
【0069】
このように、インナー用アッパー31の材料が異なるインナーシューズ3を用意することで、着用者が季節、使用環境などに応じたインナーシューズ3を選択することにより、季節、使用環境に適した靴1を提供することができる。
【0070】
インナーシューズ3は、インナー用ソール30を有しているので、インナーシューズ3単体で使用することができるとともに、インナーシューズ3のアウターシューズ2への挿入が容易である。さらに、非作業時には、インナーシューズ3のみで使用することが可能であり、非作業時の快適性を担保できる。
【0071】
インナーシューズ3とアウターシューズ2とを分離することができるので、インナーシューズ3のみを交換、または洗濯することができるので、長期間に亘って清潔に利用できる。
【0072】
次に、インナーシューズ3をアウターシューズ2に挿入した状態の本実施形態の靴1について、
図18~
図20を参照にして説明する。
図18は、インナーシューズ3をアウターシューズ2に挿入した状態を示す本発明の実施形態の靴1の断面図、
図19は、
図18の爪先部(Xで囲んだ部分)の拡大図、
図20は、
図18の爪先部分のY-Y’断面図である。
【0073】
図18~
図20に示すように、インナーシューズ3をアウターシューズ2に挿入すると、インナー用ソール30は、アウター用ソール20の内表面に当接し、アウター用ソール20の内表面の起伏に沿ってアウター用ソール20上にインナー用ソール30の底面が配置される。インナー用アッパー31は、インナーシューズ3がアウターシューズ2のアウター用アッパー21の内側に収容される。
【0074】
本実施形態に係る靴1は、先芯27を有するアウターシューズ2の内側に着用者の足にフィットするインナーシューズ3を配置可能に構成されている。靴1の着用者は、足にインナーシューズ3がフィットした状態でアウターシューズ2を着用する。靴1の先芯27内には、インナーシューズ3を着用した状態の足が位置しているので、着用者の爪先付近のフィット性を向上させた靴1を提供できる。これにより、インナーシューズ3によりフィット性に優れた靴1を提供できる。従来の先芯により爪先部分が大きめに形成されてフィット性が乏しいという問題を解消できる。
【0075】
本実施形態においては、
図18~
図20に示すように、インナー用ソール30の爪先部30fは、先芯27の内側に先裏28aを介して複数箇所で接触する。すなわち、インナー用ソール30の爪先部30fは、先芯27の内側に間接に複数箇所で接触する。尚、アウターシューズ2に先裏28aを設けていない場合には、インナー用ソール30の爪先部30fは、先芯27の内側に直接に複数箇所で接触することになる。
【0076】
インナーシューズ3のインナー用ソール30の爪先部30fを先芯27の内側に直接または間接に複数箇所で接触させることで、先芯27に対してインナーシューズ3のインナー用ソール30の爪先部30fが位置決めされ、アウターシューズ2とインナーシューズ3との間にずれが発生することなく、所定の位置に装着され、良好な履き心地が得られる。
【0077】
本実施形態においては、
図20に示すように、インナーシューズ3のインナー用ソール30は、少なくとも先芯27の先端部27bと両側の側面部27cと接触する。
【0078】
インナーシューズ3のインナー用ソール30は、少なくとも先芯27の先端部27bと両側の側面部27cと接触することで、先芯27に対してインナーシューズ3のインナー用ソール30の爪先部30fを確実に位置決めすることができる。
【0079】
本実施形態においては、アウターシューズ2のアウター用ソール20の側面部20aに巻き上げ部20gを形成している。
【0080】
アウターシューズ2のアウター用ソール20の側面部20aに巻き上げ部20gを有することにより、インナーシューズ3とアウターシューズ2の足幅方向におけるずれを抑制する。
【0081】
また、本実施形態においては、インナーシューズ3が、前足部1F、中足部1M、後足部1Rを有している。そして、インナー用ソール30の中足部1M及び後足部1Rの少なくとも1箇所がアウターシューズ2の内側と接触するように構成している。
【0082】
インナーシューズ3のインナー用ソール30が先芯27と先芯以外の他の箇所の少なくとも1箇所が接触することで、インナーシューズ3とアウターシューズ2とを位置決めすることができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【0084】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の図面及び説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一符号を付する。実施形態と重複する説明は適宜省略し、実施形態と相違する構成について詳細に説明する。
【0085】
[第1変形例]
第1変形例のインナーシューズ3aについて、
図21~
図23を参照して説明する。
図21は、本発明の第1変形例の靴1のインナーシューズ3aを示す内足側の側面図、
図22は、本発明の第1変形例の靴1のインナーシューズ3aを示す外足側の側面図、
図23は、本発明の第1変形例の靴1のインナーシューズ3aを示す上面図である。
【0086】
実施の形態の説明では、インナーシューズ3のインナー用アッパー31は、モノソック構造で形成している。第1変形例のインナーシューズ3aは、
図21~
図23に示すように、インナー用アッパー31は、内部空間33に着用者の足の収容を容易にするために、履き口部32の前方に切り込み38aを入れ、その切り込み38aを被うように締付片38が設けられている。締付片38の先端と履き口部32の側方のインナー用アッパー31に面ファスナ(図示せず)が設けられている。締付片38の先端の面ファスナとインナー用アッパー31の面ファスナとを固定することにより、履き口部32の前方の切り込み38aを締付け、インナー用アッパー31に挿入した足を締め付け固定する。
【0087】
締付片38の面ファスナをインナー用アッパー31の面ファスナから開放することにより、履き口部32の前方の切り込み38aにより、履き口部32を大きく拡げることができる。これにより、足の挿入を容易にしている。
【0088】
このように、この第1変形例のインナーシューズ3aによれば、インナーシューズ3aへの足の出し入れが容易に行える。
【0089】
[第2変形例]
第2変形例のインナーシューズ3bについて、
図24を参照して説明する。
図24は、本発明の第2変形例の靴1のインナーシューズ3bの背面図である。
【0090】
実施の形態の説明では、インナーシューズ3のインナー用ソール30の踵部30bの後端には、インナー用アッパー31側に向かって巻き上げられた踵保持部30nが設けられている。この第2変形例は、インナー用ソール30の踵保持部30nの上端に切り込み部30pを形成している。
【0091】
インナー用ソール30の踵保持部30nの上端に切り込み部30pを形成することにより、インナーシューズ3bをアウターシューズ2に挿入時のインナーシューズ3bの足幅方向中央部での折れ曲がり変形を許容することができる。
【0092】
[第3変形例]
第3変形例の靴11について、
図25~
図27を参照して説明する。
図25は、本発明の第3変形例の靴11を示す内足側の側面図、
図26は、本発明の第3変形例の靴11のアウターシューズ2aを示す上面図、
図27は、本発明の第3変形例の靴11のアウターシューズ2aにおいて、外付けアッパー4を開いた状態を示す上面図である。
【0093】
実施の形態の説明では、アウターシューズ2は、開口部24を覆うように、爪先被い部21bから中間被い部21cにかけて甲カバー29が設けられている。これに対して,
図25~
図27に示すように、第3変形例の靴11のアウターシューズ2aにおいては、アウターシューズ2aのシューズ入れ口部22の前方から開口部24を被う外付けアッパー4を設けている。第3変形例のシューズ入れ口部22は、前方が外付けアッパー4で被われる分だけ大きく形成されている。
【0094】
外付けアッパー4の爪先被い部21b側は、アウター用アッパー21に縫合され、外付けアッパー4は、アウター用アッパー21に対して開閉自在に取り付けられている。外付けアッパー4の後方の両端には、面ファスナ40が設けられている。シューズ入れ口部22近傍には、外付けアッパー4の面ファスナ40と噛み合う面ファスナ22aが取り付けられている。
【0095】
両面ファスナ40、22aを外すことにより、外付けアッパー4を前方に開くことができ、シューズ入れ口部22を大きく露出させることができる。これにより、インナーシューズ3の挿入、取り出しが容易に行える。
【0096】
この第3変形例においては、開口部24の引き締めをダイヤル式の靴締め方式により行っている。すなわち、開口部24の両端にワイヤ42を通し、ワイヤ42をダイヤル43の回転により引き締め、開口部24の締め付けるように構成されている。尚、開口部24には、舌片24aが設けられている。
【0097】
外付けアッパー4には、アウター用アッパー21に対して閉じた際に、ダイヤル43が入り込む孔41が設けられている。
【0098】
[第4変形例]
第4変形例について、
図28~
図31を参照して説明する。
図28は、本発明の第4変形例の靴1におけるインナー用ソール130を上下方向の中央で断面にした模式図、
図29は、第4変形例の靴におけるインナー用ソール130の側面図、
図30は、第4変形例の靴の側面図、
図31は、第4変形例の靴におけるインソール340の上面図である。
【0099】
第4変形例は、インナーシューズ3が前足部1F、中足部1M、後足部1Rを有しており、インナー用ソール130の中足部1Mまたは後足部1Rに空洞部30sを設けている。
図28及び
図29に示すインナー用ソール130は、後足部1Rに空洞部30sを設けている。空洞部30sを設けることにより、この空洞部30s内に電子デバイスなどを挿入することができる。
【0100】
図28及び
図29に示すインナー用ソール130おいては、インナー用ソール130の空洞部30sにファン5を配置している。
【0101】
ファン5により空洞部30sに空気を送ることにより、インナーシューズ3内部に空気の流れを作り、内部空間33の温湿度を低下させることができる。ファン5は、例えば、電動ファンであり、充電電池で動作するように構成できる。充電電池は、電動ファンに一体に設けても、電動ファンと別体に設け、ケーブルにより電力を供給するように構成してもよい。充電電池を電動ファンに一体に設けた場合、充電電池が切れると電動ファンを空洞部30sより取り出して充電する。
【0102】
図28に示すように、インナー用ソール130の上面に、空洞部30sから前足部1F方向に連接する1個以上、第4変形例においては、3個の通気溝30tが設けられている。
【0103】
ファン5からの空気が通気溝30tを介して前足部1F方向に送られ、前足部1F方向から空気を内部空間33に送り込むことができる。これにより、内部空間内の換気が促進される。
【0104】
変形例4においては、インナー用ソール130の側面、上面、底面のうち少なくとも1箇所に空洞部30sに連なる取り出し口30uが設けられている。
図28及び
図29に示す例においては、インナー用ソール130の側面に取り出し口30uが設けられている。
【0105】
空洞部30sに連なる取り出し口30uを設けることにより、ファン5などを取り出し口30uから取り出すことができるので、ファン5の充電などのメンテナンスが容易に行える。また、取り出し口30uから空気を取り入れることもできる。また、使用環境によっては電子デバイスを取り外して使用することも可能である。
【0106】
変形例4においては、
図31に示すように、インナー用ソール130の上面にインソール34が設けられ、インソール34の前足部1Fに貫通孔34sが設けられている。
【0107】
貫通孔34sを設けことにより、ファン5からの空気が通気溝30t、貫通孔34sを介して前足部1F方向に送られ、前足部1F方向から空気を内部空間33に送り込むことができる。
【0108】
変形例4においては、
図30に示すように、インナー用ソール130の取り出し口30uに連通し、アウターシューズ2のアウター用ソール20に通気孔20uが設けられている。この変形例4においては、取り出し口30uがインナー用ソール130の側面に設けられ、通気孔20uがアウター用ソール20の巻き上げ部20dに設けられている。
【0109】
これにより、通気孔20u、取り出し口30uを介して空気を流入させることができる。
【0110】
前記した変形例4においては、空洞部30sにファン5を配設したが、これ以外の電子デバイス、例えば、動作計測または圧力計測可能なセンサを配設してもよい。
【0111】
動作計測を行う動作計測センサを配設した場合、着用時間、速度、加速度、角度、角速度などの着用者の動作に付随する情報を得ることができる。この得られた情報から着用者の活動量を算出することができる。着用者の活動量から、業務パフォーマンスの評価、着用者の業務負荷を把握し、適切な業務量の管理、着用者の活動量より、休憩を促すことなど種々の利用が行える。
【0112】
圧力計測可能な圧力センサを配設した場合、着用者の足裏に負荷される圧力を取得できる。足裏に負荷される圧力を取得することにより、着用者の負荷が算出でき、過負荷時にアラートなどを出すことができる。
【0113】
[第5変形例]
第5変形例について、
図32を参照して説明する。
図32は、第5変形例の靴におけるインナーシューズの側面図である。
【0114】
図32に示すように、第5変形例は、インナーシューズ3のインナー用ソール30の側面の少なくとも1箇所に凸部30vを設けている。アウターシューズ2のアウター用ソール20の巻き上げ部20gにおいて、インナー用ソール30の凸部30vに対応する位置に凹部として機能するくり抜き部20eを設けている。
【0115】
インナーシューズ3のインナー用ソール30の凸部30vとアウターシューズ2のアウター用ソール20の巻き上げ部20gの凹部(くり抜き部20e)を嵌合させることにより、インナーシューズ3とアウターシューズ2の足長方向における両者のずれを抑制することができる。
【0116】
[その他の変形例]
実施の形態の説明においては、内足部1a側のアウター用ソール20の踵部20bに、巻き上げ部20dが設けられているが、内足部1a側のアウター用ソール20の爪先部20fまたは側面部20aに巻き上げ部を設けてもよい。
また、実施の形態の説明においては、外足部1b側のアウター用ソール20の側面部20aに巻き上げ部20gが設けられているが、外足部1b側のアウター用ソール20の爪先部20fまたは踵部20bに巻き上げ部を設けてもよい。
【0117】
上述の各変形例は上述の実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0118】
上述した実施形態と変形例の任意の組合せもまた本発明の実施形態として有用である。組合せによって生じる新たな実施形態は、組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0119】
上述の各変形例は上述の実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0120】
上述した実施形態と変形例の任意の組合せもまた本発明の実施形態として有用である。組合せによって生じる新たな実施形態は、組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0121】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
(1)アウター用ソールと、前記アウター用ソールの爪先部分の上方を覆う先芯と、前記アウター用ソールの上方に設けられたアウター用アッパーを備えるアウターシューズと、前記アウターシューズの内側に着脱可能なインナーシューズを有し、
前記インナーシューズは、
インナー用ソールと、前記インナー用ソールの上方に設けられたインナー用アッパーとを備え、
前記アウターシューズの内側に前記インナーシューズが位置する場合、前記インナーソールの爪先部分が前記先芯の内側に位置する、靴。
(2)前記インナー用ソールの爪先部分は、前記先芯の内側に直接または間接に複数箇所で接触する、上記(1)に記載の靴。
(3)前記先芯は、爪先上部を覆う上面部と、この上面部から滑らかに屈曲して一体的に形成された先端部及び両側の側面部を有し、
前記インナーシューズの前記インナー用ソールは、少なくとも前記先芯の先端部と両側の側面部と接触する、上記(2)に記載の靴。
(4)前記インナーシューズの前記インナー用ソールは、樹脂、エラストマー、ゴムなどの高分子組成物またはその発泡体を含む軟質部材からなる、上記(1)から(3)のいずれかに記載の靴。
(5)前記アウターシューズの前記アウター用ソールに巻き上げ部を有する、上記(1)から(4)のいずれかに記載の靴。
(6)前記巻き上げ部に少なくとも1箇所のくり抜き部を設けた、上記(5)に記載の靴。
(7)
前記インナーシューズが、前足部、中足部、後足部を有し、
前記インナー用ソールの中足部及び後足部の少なくとも1箇所が前記アウターシューズの内側と接触する、上記(2)または(3)に記載の靴。
(8)前記インナーシューズの前記インナー用ソールの底面に足長方向に伸びる溝状部を有し、前記アウターシューズの前記アウター用ソールの上面に足長方向に伸びると共に前記溝状部に対応する畝状部を設けた、上記(1)から(7)のいずれかに記載の靴。
(9)前記インナーシューズの前記インナー用ソールの少なくとも1箇所に凸部を設け、前記アウターシューズの前記アウター用ソールの前記巻き上げ部の前記凸部に対応する位置に凹部を設けた、上記(1)から(8)のいずれかに記載の靴。
(10)前記インナーシューズの前記インナー用ソールの踵部に踵保持部が設けられ、前記インナー用ソールの前記踵保持部の上端に切り込み部を形成した、上記(1)から(9)いずれかに記載の靴。
(11)前記インナーシューズが前足部、中足部、後足部を有し、前記インナー用ソールの前記中足部または前記後足部に空洞部を有する上記(1)から(10)いずれかに記載の靴。
(12)前記インナー用ソールの前記空洞部にファンを有する、上記(11)に記載の靴。
(13)前記インナー用ソールの前記空洞部に動作計測または圧力計測可能なセンサを有する、上記(11)に記載の靴。
(14)前記インナー用ソールの上面に、前記空洞部から前足部方向に連接する1個以上の通気溝が設けられている、上記(12)に記載の靴。
(15)前記インナー用ソールの上面にインソールが設けられ、前記インソールの前足部に貫通孔を有する、上記(14)または(15)に記載の靴。
(16)前記インナー用ソール側面、上面、底面のうち少なくとも1箇所に前記空洞部に連なる取り出し口が設けられている、上記(11)から(15)のいずれかに記載の靴。
(17)前記インナー用ソールの前記取り出し口に連通し、前記アウターシューズのアウター用ソールに設けられた通気孔を有する、上記(16)に記載の靴。
(18)前記取り出し口が前記インナー用ソールの側面に設けられ、前記通気孔が前記アウター用ソールの前記巻き上げ部に設けられることを特徴とする、上記(17)に記載の靴。
(19)先芯を有するアウターシューズに着脱可能なインナーシューズであって、
前記インナーシューズは、インナー用ソールと前記インナー用ソールの上方に設けられ足を収容するインナー用アッパーとを備える、先芯を有する靴用のインナーシューズ。
(20)前記インナー用ソールの爪先部分は、装着する前記アウターシューズの前記先芯の内側に直接または間接に複数箇所で接触する、上記(19)に記載の先芯を有する靴用のインナーシューズ。
(21)前記インナーシューズを前記アウターシューズのアッパー内に配置した際に、前記アウターシューズの前記アッパーの踵上部の上部に当接する高さまで、前記インナーシューズのインナー用ソール踵上部が、前記インナーシューズのアッパーに巻き上げて形成される、上記(1)から(3)のいずれかに記載の靴。
(22) 前記アウターシューズに挿入された前記インナーシューズのインナー用ソール踵上部の上端より上部に位置する前記アウターシューズの前記アッパーの踵上部の上部に、前記アッパー内部へ突出する凸部を設けた、上記(1)から(3)のいずれかに記載の靴。
(23)前記アウターシューズのアッパーはモノソック構造である、上記(1)から(3)のいずれかに記載の靴。
(24)前記アウターシューズのシューレースが前記アッパーに内蔵されている、上記(1)から(3)のいずれかに記載の靴。
(25)前記アウターシューズの足入れ口前方のアッパーは、足幅方向の伸縮性を足長方向の伸縮性より大きくした、上記(1)から(3)のいずれかに記載の靴。
(26)前記アウターシューズの足入れ口前方を覆う外付けアッパーを設けた、上記(1)から(3)のいずれかに記載の靴。
(27)前記インナーシューズのアッパーは、高伸縮性の材料で形成される、上記(1)から(3)のいずれかに記載の靴。
(28)前記インナーシューズのアッパーは、高通気性の材料で形成される、上記(1)から(3)のいずれかに記載の靴。
(29)前記インナーシューズのアッパーは、高保温性の材料で形成される、上記(1)から(3)のいずれかに記載の靴。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、ローカットタイプの安全靴、ハイカットタイプの安全靴、またはブーツタイプの安全靴に利用することができる。
【符号の説明】
【0123】
1 :靴
1F :前足部
1M :中足部
1R :後足部
2 :アウターシューズ
3 :インナーシューズ
4 :外付けアッパー
5 :ファン
20 :アウター用ソール
20a :側面部
20b :踵部
20c :アウトソール
20d :巻き上げ部
20e :くり抜き部
20f :爪先部
20g :巻き上げ部
20h :くり抜き部
20m、20n :巻き上げ部
21 :アウター用アッパー
21a :踵被い部
21b :爪先被い部
21c :中間被い部
22 :シューズ入れ口部
24 :開口部
26 :シューレース
26a :レースホール
27 :先芯
27a :上面部
27b :先端部
27c :側面部
30 :インナー用ソール
30a :側面部
30b :踵部
30c :底面
30f :爪先部
30n :踵保持部
30p :切り込み部
30s :空洞部
30t :通気溝
30u :取り出し口
31 :インナー用アッパー
31a :インナー踵被い部
31b :インナー爪先被い部
31c :インナー中間被い部
32 :インナー履き口部