(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058716
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】電動パワーステアリングの制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20240422BHJP
H02P 7/06 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B62D5/04
H02P7/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165977
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】米澤 稔浩
(72)【発明者】
【氏名】今里 諒
(72)【発明者】
【氏名】桝 恭輔
【テーマコード(参考)】
3D333
5H571
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CC03
3D333CC44
3D333CC45
3D333CC46
3D333CC47
3D333CD07
3D333CD53
3D333CE15
5H571AA03
5H571EE02
5H571HA01
5H571HA09
5H571HC01
5H571HD02
5H571JJ03
5H571JJ17
5H571LL22
5H571LL29
5H571LL33
5H571MM12
(57)【要約】
【課題】電流の分解能の低下を抑えるために基板を固定対象に固定した場合に基板に反りが発生することを考慮してシャント抵抗の放熱性を向上させる。
【解決手段】EPS-ECU60は、ブラシ付きモータ20を制御して車両1の操舵制御を行うものであり、基板100と、基板100の主面101に実装されたシャント抵抗R1を含む電流検出回路110およびMOS-FET120a~120dと、基板100の裏面側に配置される、基台部131、基板固定部132a~132d、MOS-FET用放熱部133およびシャント抵抗用放熱部134を備える基板固定・放熱構造体130とを備え、シャント抵抗R1は基板100の主面101の端部に面実装され、基板100のシャント抵抗R1よりも端辺側が基板固定部132aに取り付けたりして基板固定・放熱構造体130に固定され、シャント抵抗用放熱部135はMOS-FET用放熱部134と繋がっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ付きモータのモータ電流を検出する、シャント抵抗を含む電流検出回路を備え、当該電流検出回路により検出される前記モータ電流に基づいて前記ブラシ付きモータを制御して車両の操舵制御を行う電動パワーステアリングの制御装置であって、
前記シャント抵抗と、
主面の所定の端部に前記シャント抵抗が面実装され、前記シャント抵抗よりも所定の端辺側の所定の箇所が固定対象に固定される基板と、
前記基板を前記シャント抵抗とで挟み、当該基板を垂直方向から見た平面視において当該シャント抵抗と重なる範囲があるように配置され、前記シャント抵抗の熱を吸収して放熱する第1の放熱体と、
前記第1の放熱体が繋がっている第2の放熱体と
を備えることを特徴とする電動パワーステアリングの制御装置。
【請求項2】
前記基板の前記主面に面実装され、前記ブラシ付きモータに流れる電流をスイッチングする半導体素子をさらに備え、
前記第2の放熱体は、前記基板を前記半導体素子とで挟み、前記平面視において当該半導体素子と重なる範囲があるように配置され、前記半導体素子の熱を吸収して放出するものであり、
前記平面視において前記第1の放熱体の方が前記第2の放熱体よりも前記基板の前記所定の端辺側に配置され、
前記基板に対する前記第1の放熱体の距離と前記基板に対する前記第2の放熱体の距離とは異なり、前記第1の放熱体の方が前記第2の放熱体よりも前記基板に近い
ことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリングの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出回路を構成するシャント抵抗に関わる放熱構造を有する電動パワーステアリングの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドライバーのハンドル操作に必要な力を、ブラシ付きモータを利用して補助する電動パワーステアリングの電子制御ユニット(EPS-ECU(Electric Power Steering-Electronic Control Unit))がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ブラシ付きモータを利用するEPS-ECUは、ブラシ付きモータのモータ電流を自EPS-ECUで検出する機能を電流検出回路で実現している。
【0005】
電流検出回路として、例えば、
図7に示す回路構成を有する電流検出回路110を利用することができる。
図7に回路構成を示す電流検出回路110の回路構成は、一般的な電流検出回路の回路構成であるため、詳細な説明を記載せずに、簡単な記載に留める。電流検出回路110は、抵抗R1~R7、オペアンプAMP、平滑用のキャパシタCを備える。電流検出回路110では、ブラシ付きモータに流れる電流(ブラシ付きモータのモータ電流)をシャント抵抗R1に通電することにより電圧に変換する。抵抗R2~R6、および、オペアンプAMPは、抵抗R5,R6で負帰還をかけ、抵抗R2~R4でオペアンプAMPの非反転入力端子と反転入力端子との間に発生するオフセット電圧を補償する、オフセット補償された負帰還の非反転増幅回路を構成している。シャント抵抗R1にモータ電流を通電することにより変換された電圧はオペアンプAMP、抵抗R5,R6により増幅され、増幅された電圧(出力電圧)は抵抗R7の電圧としてターミナルTから出力される。電流検出回路6で増幅されたアナログの電圧値は、デジタルの電圧値に変換されてEPS-ECU内のCPUにより用いられる。
【0006】
例えば、ブラシ付きモータの大電流化(例えば、55[A]→65[A])では、
図8(a)に一例を示すように、システム上の電流検出範囲が拡大する(電流検出範囲の最大値が「A」→「B」に大きくなる)。一方で、CPUの仕様により電流検出回路110の出力電圧の上限(5[V])は変更できず、ダイナミックレンジは変更できない。このため、大電流化に対応するには、シャント抵抗R1の抵抗値を下げて、電流の分解能を大電流に見合った分解能に低下させる必要がある。なお、CPUを高機能化すれば(例えば12ビット→14ビット)、電流の分解能を低下させずに大電流化に対応可能であるが、CPUのコストアップや演算時のオーバフローの懸念がある。
【0007】
シャント抵抗R1の抵抗値を小さくすると、電流の分解能の低下による電流検出回路110の電流検出性能が悪化することで、電流検出回路110の出力電圧と基準電圧とを比較するコンパレータが電流検出回路110の出力電圧の変動に対して応答できずに電流変動が大きくなってしまう虞がある。
【0008】
また、シャント抵抗R1として面実装品(基板の主面に面実装される部品)で対応した場合、シャント抵抗R1の小型化による発熱に起因してシャント抵抗R1の抵抗値をさらに小さくする必要がある。シャント抵抗R1として板シャントを用いる場合に比べて面実装品を用いた場合、
図8(b)に一例を示すように、システム上の電流検出範囲が拡大し(電流検出範囲の最大値が「B」→「C」に大きくなり)、電流の分解能が要求以上に低下しまい、電流の変動に関わるシステム性能を満足できない虞がある。
【0009】
また、シャント抵抗R1として面実装品を使用した場合に、電流検出回路110のゲインの値を大きくしてシステム上の電流検出範囲の最大値を「C」→「B」(板シャントを用いた場合の最大値)に戻すことが考えられる。電流検出回路110のゲインの値を大きくした場合、電流検出回路110の電線上の信号に重畳した電波(ノイズ)も大きく増幅されることで電流検出回路110の出力電圧を利用するCPUに誤作動が発生する場合がある。このため、電流検出回路110のゲインの値を大きくするのにも限界があって、ゲインの値を大きくする前に比べて、
図8(c)に一例を示すように、システム上の電流検出範囲の最大値を「C」→「D」にまでしか戻すことができない(「C」→「B」に戻すことができない)虞がある。
【0010】
本発明の目的は、電流の分解能の低下を抑えるために基板を固定対象に固定した場合に基板に反りが発生することを考慮してシャント抵抗の放熱性を向上させた放熱構造を有する電動パワーステアリングの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明に係る電動パワーステアリングの制御装置は、ブラシ付きモータのモータ電流を検出する、シャント抵抗を含む電流検出回路を備え、当該電流検出回路により検出される前記モータ電流に基づいて前記ブラシ付きモータを制御して車両の操舵制御を行う電動パワーステアリングの制御装置であって、前記シャント抵抗と、主面の所定の端部に前記シャント抵抗が面実装され、前記シャント抵抗よりも所定の端辺側の所定の箇所が固定対象に固定される基板と、前記基板を前記シャント抵抗とで挟み、当該基板を垂直方向から見た平面視において当該シャント抵抗と重なる範囲があるように配置され、前記シャント抵抗の熱を吸収して放熱する第1の放熱体と、前記第1の放熱体が繋がっている第2の放熱体とを備えることを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、基板の主面の、基板の反りの小さい端部にシャント抵抗を配置し、シャント抵抗と当該シャント抵抗用の第1の放熱体を基板を挟んで平面視で重なり合うように配置することで、シャント抵抗と第1の放熱体との距離を小さくできてシャント抵抗の放熱性を向上できる。また、第1の放熱体が繋がっている第2の放熱体を設けることで、シャント抵抗の熱を第1の放熱体と第2の放熱体とに分散させて放熱することができてシャント抵抗の放熱性を向上できる。これにより、ブラシ付きモータの大電流化のために、シャント抵抗の抵抗値を下げる必要がなくなってモータ電流の分解能の過度な低下を防止できる。
【0013】
また、前記基板の前記主面に面実装され、前記ブラシ付きモータに流れる電流をスイッチングする半導体素子をさらに備え、前記第2の放熱体は、前記基板を前記半導体素子とで挟み、前記平面視において当該半導体素子と重なる範囲があるように配置され、前記半導体素子の熱を吸収して放出するものであり、前記平面視において前記第1の放熱体の方が前記第2の放熱体よりも前記基板の前記所定の端辺側に配置され、前記基板に対する前記第1の放熱体の距離と前記基板に対する前記第2の放熱体の距離とは異なり、前記第1の放熱体の方が前記第2の放熱体よりも前記基板に近いとしてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1の放熱体の方を第2の放熱体よりも基板の反りの小さい端辺側に配置することで、基板に対する第1の放熱体の距離を小さくして、第1の放熱体と基板との間に設けられる熱伝導部材の厚みを薄くすることが可能になるので、シャント抵抗の放熱性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板の主面の、基板の反りの小さい端部にシャント抵抗を配置し、シャント抵抗と当該シャント抵抗用の第1の放熱体を基板を挟んで平面視で重なり合うように配置することで、シャント抵抗と第1の放熱体との距離を小さくできてシャント抵抗の放熱性を向上できる。また、第1の放熱体が繋がっている第2の放熱体を設けることで、シャント抵抗の熱を第1の放熱体と第2の放熱体とに分散させて放熱することができてシャント抵抗の放熱性を向上できる。これにより、ブラシ付きモータの大電流化のために、シャント抵抗の抵抗値を下げる必要がなくなってモータ電流の分解能の過度な低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリングシステムのシステム構成を示すシステム構成図である。
【
図2】
図1のHブリッジ回路の回路構成を示す回路図である。
【
図3】
図1のEPS-ECUでの電流検出回路を構成するシャント抵抗の熱およびHブリッジ回路を構成するMOS-FETの熱に対する放熱構造を説明するための図である。
【
図4】
図3において基板を基板固定・放熱構造体の基板固定部に取り付けて固定した場合における基板の反りおよび基板と基板固定・放熱構造体との距離を説明するための模式図である。
【
図5】
図3において基板を基板固定・放熱構造体の基板固定部に取り付けて固定した場合における基板とシャント抵抗用放熱部との間に配置するグリスの幅を説明するための模式図である。
【
図6】変形例におけるシャント抵抗の熱およびMOS-FETの熱に対する放熱構造を説明するための図である。
【
図7】従来の電流検出回路の回路構成を示す回路図である。
【
図8】(a)~(c)は課題を説明するための電流検出回路の検出電流と出力電圧との特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
本発明の一実施形態に係るEPS-ECU60について
図1から
図5を参照しつつ説明する。なお、EPS-ECU60は、本発明の「電動パワーステアリングの制御装置」に相当する。
【0019】
車両1は、
図1に示すように、ハンドル(不図示)、舵角センサ10、ブラシ付きモータ20、トルクセンサ30、撮影装置40、カメラECU50、および、EPS-ECU60などを備えている。
【0020】
舵角センサ10は、ハンドル(ステアリング)の中立位置からの回転角度(操舵角度(舵角)を検出するセンサである。本実施形態では、舵角センサ10は、中立位置を0[deg]として、ハンドルが時計回りに操作された場合を正の値とし、ハンドルが反時計回りに操作された場合を負の値として、舵角を検出し、検出した舵角をEPS-ECU60へ出力する。また、舵角センサ10は、舵角センサ10が検出した舵角と、タイマにより計時した時間とから、ハンドルの角速度を算出し、算出した角速度をEPS-ECU60へ出力する。
【0021】
ブラシ付きモータ20は、EPS-ECU60によりブラシ付きモータ20に印加される電流の通電方向(ブラシ付きモータ20を右回転させる方向か左回転させる方向かの通電方向)および電流値が制御されて、ブラシ付きモータ20に印加される電流の通電方向および電流値に応じてハンドルを回転させるトルクを出力する。
【0022】
トルクセンサ30は、ハンドルに加えられる操舵トルクを検出するセンサであり、検出した操舵トルクをEPS-ECU60へ出力する。
【0023】
撮影装置40は、車両1の周辺の画像を撮影するものであって、車両1の右サイドカメラ、左サイドカメラ、フロントカメラおよびリアカメラなど、車両1の複数個所に設けられたカメラにより構成され、撮影装置40の各カメラにより撮影された画像データをカメラECU50へ出力する。
【0024】
カメラECU50は、ドライバーの運転支援に関する制御などを行う電子制御ユニットであり、各種制御や各種演算などを行うCPU(不図示)および各種プログラムや各種データを記憶するメモリ(不図示)を備えたマイクロプロセッサなどにより構成される。カメラECU50は、ドライバーに対する運転支援に関わる自動操舵時などにおいて、撮影装置40から入力された画像データに基づいて目標とする舵角(目標舵角)を算出し、算出した目標舵角をEPS-ECU60へ出力する。
【0025】
EPS-ECU60は、ドライバーの運転支援に関わる自動操舵などに関する制御を行う電子制御ユニットであり、基板100(
図3参照)と、各種演算などを行うCPU(不図示)および各種プロブラムや各種データを記憶するメモリ(不図示)を備えたマイクロプロセッサ61と、電流検出回路110と、Hブリッジ回路120などとにより構成される。本実施形態において、電流検出回路110は、
図7に回路構成を示す一般的な電流検出回路を用いる。また、Hブリッジ回路120は、
図2に示す回路構成をしており、
図2に回路構成を示すHブリッジ回路120の回路構成は、一般的な電流検出回路の回路構成であるため、詳細な説明を記載せずに、簡単な記載に留める。
【0026】
図2に示すHブリッジ回路120は、4個のMOS-FET120a~120dを組み合わせた構成をしている。(a)MOS-FET120a=ON、MOS-FET120b=OFF、MOS-FET120c=OFF、MOS-FET120d=ONとした場合におけるブラシ付きモータ20に印加する電流の通電方向を利用してブラシ付きモータ20の回転方向を一の回転方向に制御する。(b)MOS-FET120a=OFF、MOS-FET120b=ON、MOS-FET120c=ON、MOS-FET120d=OFFとした場合におけるブラシ付きモータ20に印加する電流の通電方向を利用してブラシ付きモータ20の回転方向を他の回転方向に制御する。なお、(c)MOS-FET120a=OFF、MOS-FET120b=OFF、MOS-FET120c=OFF、MOS-FET120d=OFF、(d)MOS-FET120a=OFF、MOS-FET120b=OFF、MOS-FET120c=ON、MOS-FET120d=ONはブラシ付きモータ20のブレーキとして利用される。また(e)MOS-FET120a=ON、MOS-FET120b=OFF、MOS-FET120c=ON、MOS-FET120d=OFF、(f)MOS-FET120a=OFF、MOS-FET120b=ON、MOS-FET120c=OFF、MOS-FET120d=ONは使用禁止とされる。
【0027】
EPS-ECU60は、通常時においては、運転者のハンドルの操作を検知し、検知した操作方向への回転をアシストするように、Hブリッジ回路120を構成する4個のMOS-FET120a~120dのON/OFFを制御してブラシ付きモータ20に印加する電流の通電方向および電流値などを制御することでブラシ付きモータ20の駆動を制御する。また、EPS-ECU60は、ドライバーの運転支援に関わる自動操舵時などにおいては、舵角センサ10により検出されたハンドルの舵角および角速度と、トルクセンサ30により検出された操舵トルクと、カメラECU50により算出された目標舵角と、電流検出回路110により検出されたモータ電流とに基づいて、Hブリッジ回路120を構成する4個のMOS-FET120a~120dのON/OFFを制御してブラシ付きモータ20に印加する電流の通電方向および電流値などを制御することでブラシ付きモータ20の駆動を制御する。
【0028】
続いて、EPS-ECU60の放熱構造について
図3を参照しつつ説明する。
図1のEPS-ECU60は、
図3に示すように、基板100、CPU(不図示)およびメモリ(不図示)を備えたマイクロプロセッサ61(
図1参照)、シャント抵抗R1を構成素子として含む電流検出回路110(
図1、
図7参照)、4個のMOS-FET120a~120dを構成素子として含むHブリッジ回路120(
図1、
図2参照)、基板固定・放熱構造体130、および、グリス140A,140Bを備える。基板固定・放熱構造体130は、基台部131、4つの基板固定部132a~132d、MOS-FET用放熱部133、および、シャント抵抗用放熱部134を備える。
【0029】
基板100は、基板100の主面101を垂直方向から見た平面視(以下、単に、「平面視」と記載する。)で矩形状をしており、平面視で基板100の4隅の角部の各々には円形状をした貫通孔100a~100dが設けられている。基板100は、主面101と反対側の面(主面101の裏側の面:以下では、適宜、「基板100の裏面」、単に「裏面」と記載する。)が基板固定・放熱構造体130の基台部131に対向し、平面視で基板100の貫通孔100a~100dが基板固定・放熱構造体130の基板固定部132a~132dのネジ穴と重なるように配置し、4本のネジ105a~105dを利用して基板固定・放熱構造体130の4つの基板固定部132a~132dに取り付けられる。このように、基板100は、貫通孔100a~100dのある部分で基板固定・放熱構造体130の基板固定部132a~132dに取り付けられて基板固定・放熱構造体130に固定される。
【0030】
基板100の主面101には、マイクロプロセッサ61(
図1参照)、シャント抵抗R1を構成素子として含む電流検出回路110(
図1、
図7参照)、および、4個のMOS-FET120a~120dを構成素子として含むHブリッジ回路120(
図1、
図2参照)が実装されている。
【0031】
シャント抵抗R1は、基板100の主面101に面実装(表面実装)される部品(SMD:Surface Mount Device)である。シャント抵抗R1は、基板100の主面101の端部(貫通孔100dが設けられた角部の角と貫通孔100aが設けられた角部の角とを結ぶ辺100daに対して予め設定した所定の距離内にある当該辺100da付近の領域)に面実装されている。シャント抵抗R1よりも基板固定部132aに固定される貫通孔100aがある部分の方が、貫通孔100aが設けられた角部の角と貫通孔100bが設けられた角部の角とを結ぶ辺100abに近く、シャント抵抗R1よりも基板固定部132dに固定される貫通孔100dがある部分の方が、貫通孔100cが設けられた角部の角と貫通孔100dが設けられた角部の角とを結ぶ辺100cdに近いなど、基板100は、シャント抵抗R1よりも端辺側で基板固定・放熱構造体130に固定されている。
【0032】
4個のMOS-FET120a~120dの各々は、基板100の主面101に面実装(表面実装)される部品(SMD)である。4個のMOS-FET120a~120dの各々は、基板100の主面101の、貫通孔100aが設けられた角部の角と貫通孔100bが設けられた角部の角とを結ぶ辺100abと、貫通孔100cが設けられた角部の角と貫通孔100dが設けられた角部の角とを結ぶ辺100cdとの間の中央付近に、面実装されている。4個のMOS-FET120a~120dの各々よりもシャント抵抗R1の方が、貫通孔100aが設けられた角部の角と貫通孔100bが設けられた角部の角とを結ぶ辺100abに近い。なお、4個のMOS-FET120a~120dの各々と貫通孔100cが設けられた角部の角と貫通孔100dが設けられた角部の角とを結ぶ辺100cdとの最短距離よりも、シャント抵抗R1と貫通孔100aが設けられた角部の角と貫通孔100bが設けられた角部の角とを結ぶ辺100abとの最短距離の方が小さい。また、4個のMOS-FET120a~120dの各々と基板100の主面101のMOS-FETに最も近い辺との最短距離よりも、シャント抵抗R1と基板100の主面101のシャント抵抗R1に最も近い辺との最短距離の方が小さい。
【0033】
基板固定・放熱構造体130は、上述したように、基台部131、4つの基板固定部132a~132d、MOS-FET用放熱部133、および、シャント抵抗用放熱部134を備える。4つの基板固定部132a~132dの各々は、基台部131の平面視での4隅の角部の各々から基台部131に対して垂直方向の一方に棒状に延在し、4つの基板固定部132a~132dの各々には基台部131と反対側の端面にネジ穴が設けられている。基板100は、上述したように、基板100の裏面が基板固定・放熱構造体130の基台部131と対向し、平面視で基板100の貫通孔100a~100dが基板固定・放熱構造体130の基板固定部132a~132dのネジ穴と重なるように配置し、4本のネジ105a~105dを利用して基板固定・放熱構造体130の4つの基板固定部132a~132dに取り付けられる。このとき、基板100は、上述したように、シャント抵抗R1よりも端辺側で基板固定・放熱構造体130の基板固定部132a~132dに固定されている。
【0034】
基板100を4本のネジ105a~105dを利用して基板固定・放熱構造体130の4つの基板固定部132a~132dに固定して、基板100が
図4に示すように反った場合、基板100の中央よりも基板固定部132a~132dに近い端の方が基板100の反り量が小さ。したがって、シャント抵抗用放熱部134を中央よりも基板固定部132a~132dに近い端の方に置くことにより基板100と基板固定・放熱構造体130(基板固定・放熱構造体130のシャント抵抗用放熱部134)との距離を小さくすることができる。
【0035】
MOS-FET用放熱部133は、主に、MOS-FET120a~120dの熱を吸収して放出するものである。MOS-FET用放熱部133は、基板100をMOS-FET120a~120dとで挟み(MOS-FET120a~120dは基板100の主面101に面実装されて主面101側にあり、MOS-FET用放熱部133は基板100の裏面側にあり)、平面視においてMOS-FET120a~120dと重なる範囲があるように、基台部131に配置されている。MOS-FET用放熱部133は、平面視で、基台部131の、基板固定部132aと基板固定部132bとを結ぶ線と、基板固定部132cと基板固定部132dとを結ぶ線との間の中央付近に配置される。
【0036】
シャント抵抗用放熱部134は、主に、シャント抵抗R1の熱を吸収して放出するものである。シャント抵抗用放熱部134は、基板100をシャント抵抗R1とで挟み(シャント抵抗R1は基板100の主面101に面実装されて主面101側にあり、シャント抵抗用放熱部134は基板100の裏面側にあり)、平面視においてシャント抵抗R1と重なる範囲があるように、基台部131に配置されている。シャント抵抗用放熱部134は、平面視で、基台部131の、基板固定部132aと基板固定部132bとを結ぶ線と、基板固定部132cと基板固定部132dとを結ぶ線との間であって、MOS-FET用放熱部133よりもシャント抵抗用放熱部134の方が基板固定部132aと基板固定部132bとを結ぶ線に近くなる(MOS-FET用放熱部133よりもシャント抵抗用放熱部134の方が、基板100の貫通孔100aが設けられた角部の角と貫通孔100bが設けられた角部の角とを結ぶ辺100abに近くなる)ように配置されている。なお、基板固定部132cと基板固定部132dとを結ぶ線に対するMOS-FET用放熱部133の最短距離よりも、基板固定部132aと基板固定部132bとを結ぶ線に対するシャント抵抗用放熱部134の最短距離の方が小さい。シャント抵抗用放熱部134とMOS-FET用放熱部133との基台部131の面131aを基準とした高さを比較した場合、シャント抵抗用放熱部134の方が、MOS-FET用放熱部133よりも高くなっている。
【0037】
シャント抵抗用放熱部134は、MOS-FET用放熱部133と繋がっている。本実施形態では、シャント抵抗R1の熱は、シャント抵抗用放熱部134と、シャント抵抗用放熱部134につながっているMOS-FET用放熱部133とに分散して吸収されて放出される。
【0038】
熱伝導部材であるグリス140Aは、MOS-FET用放熱部133の基台部131と反対側の面(以下、「上面」と記載する。)に設けられて、基板100の裏面とMOS-FET用放熱部133の上面とが直接接触するのを防止するためのものである。また、熱伝導部材であるグリス140Bは、シャント抵抗用放熱部134の基台部131と反対側の面(以下、「上面」と記載する。)に設けられて、基板100の裏面とシャント抵抗用放熱部134の上面とが直接接触するのを防止するためのものである。
【0039】
基板100の裏面に対するシャント抵抗用放熱部134の上面の距離と、基板100の裏面に対するMOS-FET用放熱部133の上面の距離とは異なっており、シャント抵抗用放熱部134の上面の方がMOS-FET用放熱部133の上面よりも基板100の裏面に近くなっている。
【0040】
基板100を4本のネジ105a~105dを利用して基板固定・放熱構造体130の4つの基板固定部132a~132dに固定して、基板100が
図4に示すように反った場合、
図5(a)に示すように仮に基板100の中央部に対してシャント抵抗R1およびシャント抵抗用放熱部134を配置したときのグリス140Bの厚みよりも、本実施形態のように基板100の端部に対してシャント抵抗R1およびシャント抵抗用放熱部134を配置したときのグリス140Bの厚みの方が薄くなる。
【0041】
上記した実施形態によれば、基板100の主面101の、基板100のりの小さい端部にシャント抵抗R1を配置し、シャント抵抗R1とシャント抵抗用放熱部134とを基板100を挟んで平面視で重なり合うように配置することで、シャント抵抗R1とシャント抵抗用放熱部134との距離を小さくできてシャント抵抗R1の放熱性を向上できる。
【0042】
また、シャント抵抗用放熱部134をMOS-FET用放熱部133に繋げることで、シャント抵抗R1の熱をシャント抵抗用放熱部134とMOS-FET用放熱部133とに分散させて放熱することができてシャント抵抗R1の放熱性を向上できる。
【0043】
また、シャント抵抗用放熱部134の方をMOS-FET用放熱部133よりも基板100の反りの小さい端辺側に配置することで、基板100に対するシャント抵抗用放熱部134の距離を小さくして、グリス140Aの厚みを薄くすることが可能になるので、シャント抵抗R1の放熱性をより一層向上させることができる。
【0044】
また、上記のようにシャント抵抗R1の放熱性が非常に優れたものであるため、ブラシ付きモータ20の大電流化のために、シャント抵抗R1の抵抗値を下げる必要がなくなってモータ電流の分解能の過度な低下を防止できる。
【0045】
また、シャント抵抗用放熱部134をMOS-FET用放熱部133と繋げてMOS-FET用放熱部133をシャント抵抗R1に対する放熱にも利用することで、シャント抵抗用放熱部134の重量を抑えることができる。
【0046】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、シャント抵抗用放熱部134をMOS-FET用放熱部133に繋がるようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図6に示すように、シャント抵抗用放熱部134Aを基板固定部132aに繋がるようにしてもよいし、シャント抵抗用放熱部をMOS-FET用放熱部および基板固定部の双方に繋がるようにしてもよい。
【0048】
図6では、基板固定・放熱構造体130Aは、基台部131、4つの基板固定部132a~132d、MOS-FET用放熱部133、および、シャント抵抗用放熱部134Aを備える。シャント抵抗用放熱部134Aは、基板100をシャント抵抗R1とで挟み、平面視においてシャント抵抗R1と重なる範囲があるように、基台部131に配置され、シャント抵抗用放熱部134Aは、上述したように、基板固定部132aに繋がっている。シャント抵抗用放熱部134Aの方が、平面視で、MOS-FET用放熱部133よりも、基板固定部132aと基板固定部132bとを結ぶ線に近い(シャント抵抗用放熱部134Aの方が、MOS-FET用放熱部133よりも基板100の貫通孔100aが設けられた角部の角と貫通孔100bが設けられた角部の角とを結ぶ辺100abに近い)。シャント抵抗用放熱部134Aは、基板固定部132aと基板固定部132bとを結ぶ線と、基板固定部132cと基板固定部132dとを結ぶ線との間であって、基板固定部132a近傍に設けられている。
図6の変形例の場合、上記の実施形態に比べてシャント抵抗用放熱部134Aをより基板固定部132aの近くに配置することで、シャント抵抗用放熱部134Aと基板100とが基板100の反り量がより小さい部分で対向するようになるので、グリス134Bの厚みをより薄くすることができて放熱性の向上がより図られる。
【0049】
また、上記実施形態では、ブラシ付きモータ20に流れる電流をスイッチングする半導体素子として、MOS-FET120a~100dを用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、MOS-FET120a~100d以外のオン状態およびオフ状態の2状態がある半導体素子を用いるようにしてもよい。
【0050】
また、電流検出回路110の回路構成を
図7に示す回路構成としているが、これに限定されるものではなく、他の回路構成の電流検出回路であってもよい。
【0051】
また、上記の実施形態で説明した内容や上記の変形例で説明した内容を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0052】
本発明は、電流検出回路を構成するシャント抵抗に関わる放熱構造を有する電動パワーステアリングの制御装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
60:EPS-ECU(電動パワーステアリングの制御装置)
100:基板
101:主面
100a~100d:貫通孔
110:電流検出回路
R1:シャント抵抗
120:Hブリッジ回路
120a~120d:MOS-FET(半導体素子)
130,130A:基板固定・放熱構造体
132a~132d:基板固定部(固定対象)
133:MOS-FET用放熱部(第2の放熱体)
134,134A:シャント抵抗用放熱部(第1の放熱体)
140A,140B:グリス