IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイチコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-軌陸作業車 図1
  • 特開-軌陸作業車 図2
  • 特開-軌陸作業車 図3
  • 特開-軌陸作業車 図4
  • 特開-軌陸作業車 図5
  • 特開-軌陸作業車 図6
  • 特開-軌陸作業車 図7
  • 特開-軌陸作業車 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058723
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】軌陸作業車
(51)【国際特許分類】
   B60F 1/04 20060101AFI20240422BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20240422BHJP
   B60S 9/14 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B60F1/04
B61D15/00 B
B60S9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165989
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】川島 延之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明夫
(72)【発明者】
【氏名】内田 智則
(72)【発明者】
【氏名】太田 満
(72)【発明者】
【氏名】須藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】内海 祐希
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026EA26
3D026EA38
3D026EA54
3D026EA56
3D026EA74
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軌陸作業車の作業時の安定性を向上させる。
【解決手段】車体上に作業装置を備え、道路および軌道を走行可能で、転車装置を備えて軌陸車が構成される。転車装置が、車体の下方に向かって上下方向に伸縮可能な転車用ジャッキと、転車用ジャッキにより上下移動される回転支持テーブル130と、転車用ジャッキの作動を制御する転車ジャッキ制御部および転車制御装置を備えて構成される。高所作業装置は、作業台操作ボックスの操作レバーと、高所作業装置を作動させる作業アクチュエータと、操作レバーの操作に応じて作業アクチュエータを駆動して高所作業装置を作動させる高所作業制御部および高所作業制御装置を備えて構成される。そして、高所作業装置による作業が行われるときに、転車ジャッキ制御部および転車制御装置により転車用ジャッキを作動させて回転支持テーブル130を下方に張り出す制御を行う。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に作業装置を備え、道路走行用車輪および軌道走行用車輪を有して道路および軌道を走行可能な軌陸作業車であり、前記軌陸作業車を軌道に対して載線・退線させるための転車装置を備えた軌陸作業車であって、
前記転車装置が、
前記車体に設けられて前記車体の下方に向かって上下方向に伸縮可能な転車用ジャッキと、前記転車用ジャッキの下端部に設けられて前記転車用ジャッキにより上下移動される転車支持台と、前記転車用ジャッキの作動を制御するジャッキ制御装置と、を備えて構成され、
前記作業装置が、
前記作業装置による作業を行うために操作される作業操作装置と、前記作業装置を作動させるアクチュエータと、前記作業操作装置の操作に応じて前記アクチュエータを駆動して前記作業装置を作動させる作業制御装置と、を備えて構成され、
前記作業装置による作業が行われるときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを作動させて前記転車支持台を下方に張り出す制御を行うことを特徴とする軌陸作業車。
【請求項2】
前記作業装置を使用しないときには前記作業装置が前記車体上に格納される構成であり、前記作業装置の格納を検出する格納検出器を備え、
前記格納検出器により前記作業装置が格納状態ではなくなったことを検出したときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを作動させて前記転車支持台を下方に張り出す制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の軌陸作業車。
【請求項3】
前記作業装置を使用しないときには前記作業装置が前記車体上に格納される構成であり、前記作業装置の格納を検出する格納検出器を備え、
前記格納検出器により前記作業装置が格納状態であることが検出されている状態において、前記作業操作装置に対する所定の操作が行われたときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを作動させて前記転車支持台を下方に張り出す制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の軌陸作業車。
【請求項4】
前記作業装置が、前記車体上に少なくとも起伏自在に設けられたブームと、前記ブームの先端に取り付けられた作業者が搭乗する作業台とを備え、前記ブームが前記車体上に設けられたブーム受けの上に載置されて格納される構成であり、
前記格納検出器が前記ブーム受けに設けられ、前記ブームが前記ブーム受けの上に載置されたことを検出して格納の検出を行うことを特徴とする請求項2もしくは3に記載の軌陸作業車。
【請求項5】
前記軌道走行用車輪を軌道上に張り出した状態において、前記作業装置による作業が行われるときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを作動させて前記転車支持台を下方に張り出す制御を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の軌陸作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路及び鉄道の軌道上を走行可能な軌陸作業車に関する。本発明は特に、軌陸作業車を踏切内において軌道上に位置させる載線作業や、軌道上から道路に位置させる退線作業を行うための転車装置を備えた軌陸作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
軌陸作業車(以下、軌陸車とも称する)は、道路走行用車輪(以下、タイヤ車輪とも称する)によって道路走行自在に構成された車体の前後左右に、各々張出/格納自在な軌道走行用車輪(以下、鉄輪とも称する)を設け、この鉄輪を張り出した状態で鉄道の軌道(レール)上を走行可能な軌道走行装置を有し、軌道上でトロリ線などの鉄道設備の工事・点検を行う際に広く用いられている。また軌陸作業車は、通常、道路上(例えば踏切)から軌道上へ車体を載せ、又は、車体を軌道上から踏切内の道路上へ降ろす作業を容易にするための載退線装置を備えている。ここで、車体を軌道上へ載せることを「載線」といい、車体を軌道上から降ろすことを「退線」という。
【0003】
従来、載退線装置の一種として転車支持台を備えた転車装置が知られている。転車支持台は、軌陸作業車の車体の下部に下方に伸縮自在に設けられており、軌陸作業車の載線作業又は退線作業を行う際は、例えば踏切内において転車支持台を下方へ張り出して車体を地上から浮上させ、車体を水平方向へ旋回可能に支持する。この状態から、載線作業を行う場合は、作業者が車体を押して車体の向きを軌道の敷設方向へ転換させ、鉄輪を張り出した後に転車支持台を上方に収縮させて鉄輪を軌道(レール)上に載置させて車体を軌道上に載せるように構成されている。このような構成の転車装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5635817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている軌陸作業車は車体上にカーゴクレーンを設けた構成であるが、車体上には高所作業装置、クレーン装置などの作業装置が搭載される構成の様々なタイプの軌陸作業車が知られている。このような軌陸作業車は軌道走行状態において高所作業装置などを用いて作業を行うことがあり、このようなときには軌道(レール)上に鉄輪が位置した状態で鉄輪により車体を支持することが多い。高所作業装置やクレーン装置を有する軌陸作業車において作業時の車体を安定支持することが求められるが、軌道(レール)上に鉄輪が位置した状態で鉄輪により車体を支持する場合に、車体の安定支持に注意を払う必要性が高い。ところが一般的に、軌道はカーブしている部分において傾いて設けられている、すなわち、外側のレールが内側よりも高くなるカントと称される傾きが設けられている。このため、軌道(レール)上に鉄輪が位置した状態で鉄輪により車体を支持して作業を行う場合において、軌陸作業車がカントのある場所を走行するときに支持安定性が低下しやすいという問題がある。なお、軌道(レール)上に鉄輪が位置した状態において、停車して作業用ジャッキを張り出して車体を支持し高所作業装置を用いて作業を行うこともあるが、このようなときには鉄輪が軌道から離れないもしくは極く僅かしか離れない状態で支持が行われることが多い。これは、作業を終えて作業用ジャッキの支持を解除したときに、鉄輪が確実に軌道上に戻るようにするためであるが、この結果、車体は軌道のカントに沿った傾斜のままでの支持となり、支持安定性が低下しやすいという問
題がある。
【0006】
なお、支持安定性向上のためにカウンタウエイトを設けることも良く行われている。ところが、軌陸作業車においては、道路走行装置と軌道走行装置とを備え、さらに転車装置を備えるため、一般的な高所作業車、クレーン車に比べて重量が増加傾向にあり、カウンタウエイトを付加する余裕が少ないという事情がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、カウンタウエイトの追加などを行うことなく、作業時の安定性を向上させることができるような構成の軌陸作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明にかかる軌陸作業車は、車体上に作業装置(例えば、実施形態におけるブーム30および作業台40を備えた高所作業装置)を備え、道路走行用車輪(例えば、実施形態における操舵輪3Sおよび駆動輪3D)および軌道走行用車輪(例えば、実施形態における前鉄輪12Fおよび後鉄輪12R)を有して道路および軌道を走行可能な軌陸作業車であり、前記軌陸作業車を軌道に対して載線・退線させるための転車装置(例えば、実施形態における転車装置110)を備えて構成される。前記転車装置が、前記車体に設けられて前記車体の下方に向かって上下方向に伸縮可能な転車用ジャッキ(例えば、実施形態における転車用ジャッキ120)と、前記転車用ジャッキの下端部に設けられて前記転車用ジャッキにより上下移動される転車支持台(例えば、実施形態における回転支持テーブル130)と、前記転車用ジャッキの作動を制御するジャッキ制御装置(例えば、実施形態における転車ジャッキ制御部81および転車制御装置85)と、を備えて構成される。また、前記作業装置(例えば、実施形態における旋回台20、ブーム30および作業台40)が、前記作業装置による作業を行うために操作される作業操作装置(例えば、実施形態における作業台操作ボックス42の作業操作装置43)と、前記作業装置を作動させる作業アクチュエータ(例えば、実施形態における旋回モータ21、ブーム伸縮シリンダ31、ブーム起伏シリンダ32、首振りモータ41)と、前記作業操作装置の操作に応じて前記作業アクチュエータを駆動して前記作業装置を作動させる作業制御装置(例えば、実施形態における高所作業制御部83および高所作業制御装置90)と、を備えて構成される。そして、前記作業装置による作業が行われるときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを作動させて前記転車支持台を下方に張り出す制御を行う。
【0009】
上記軌陸作業車において、前記作業装置を使用しないときには前記作業装置が前記車体上に格納される構成であり、前記作業装置の格納を検出する格納検出器(例えば、実施形態における格納検出器39)を備え、前記格納検出器により前記作業装置が格納状態ではなくなったことを検出したときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを作動させて前記転車支持台を下方に張り出す制御を行うのが好ましい。
【0010】
また、上記軌陸作業車において、前記作業装置を使用しないときには前記作業装置が前記車体上に格納される構成であり、前記作業装置の格納を検出する格納検出器(例えば、実施形態における格納検出器39)を備え、前記格納検出器により前記作業装置が格納状態であることが検出されている状態において、前記作業操作装置に対する所定の操作が行われたときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを作動させて前記転車支持台を下方に張り出す制御を行うのが好ましい。
【0011】
また、上記軌陸作業車において、前記作業装置が、前記車体上に少なくとも起伏自在に設けられたブーム(例えば、実施形態におけるブーム30)と、前記ブームの先端に取り付けられた作業者が搭乗する作業台(例えば、実施形態における作業台40)とを備え、
前記ブームが前記車体上に設けられたブーム受け(例えば、実施形態におけるブーム受け38)の上に載置されて格納される構成であり、前記格納検出器(例えば、実施形態における格納検出器39)が前記ブーム受けに設けられ、前記ブームが前記ブーム受けの上に載置されたことを検出して格納の検出を行うのが好ましい。
【0012】
さらに、上記軌陸作業車において、前記軌道走行用車輪を軌道上に張り出した状態において、前記作業装置による作業が行われるときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを作動させて前記転車支持台を下方に張り出す制御を行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る軌陸作業車によれば、前記作業装置による作業が行われるときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを駆動して前記転車支持台を下方に張り出す制御を行うので、前記軌陸作業車全体としての重心位置が低い位置に移動する。これにより、前記作業装置を作動させて、前記軌陸作業車の重心位置が外方に移動するような場合、前記転車支持台を下方に張り出して前記軌陸作業車全体としての重心位置が低下しているため、前記軌陸作業車の重心位置の外方への移動量を小さく抑えることができ、車体の支持安定性が向上する。すなわち、前記転車支持台を引き上げて格納した状態のときに比べて、前記転車支持台を下方に張り出した状態の方が、前記作業装置を作動させたときにおける前記軌陸作業車の重心位置の外方への移動量が小さくなり、車体の支持安定性が向上する。
【0014】
上記軌陸作業車において、前記格納検出器により前記作業装置が格納状態ではなくなったことを検出したときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを駆動して前記転車支持台を下方に張り出す制御を行うのが好ましい。前記作業装置による作業は、格納状態の前記作業装置を非格納状態としてから行われるため、このように制御すれば、作業を行うときに的確に前記転車支持台を下方に張り出して、確実に支持安定性を確保することができる。
【0015】
また、上記軌陸作業車において、前記格納検出器により前記作業装置が格納状態であることが検出されている状態において、前記作業操作装置に対する所定の操作が行われたときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを駆動して前記転車支持台を下方に張り出す制御を行うのが好ましい。前記作業装置が格納された状態から前記作業操作装置が操作されて初めて前記作業装置による作業が開始されるものであるため、このように制御すれば、必要なときに的確に前記転車支持台を下方に張り出して、確実に支持安定性を確保することができる。
【0016】
また、上記軌陸作業車において、前記作業装置が前記ブームと、前記ブームの先端に取り付けられた作業者が搭乗する作業台とを備え、前記ブームが前記車体上に設けられたブーム受けの上に載置されて格納される構成である場合には、前記格納検出器が前記ブーム受けに設けられるのが好ましい。このようにすれば、前記ブームの格納を正確且つ的確に検出できる。
【0017】
さらに、上記軌陸作業車において、前記軌道走行用車輪を軌道上に張り出して前記軌陸作業車が軌道上を走行可能な状態において、前記作業装置による作業が行われるときに、前記ジャッキ制御装置により前記転車用ジャッキを駆動して前記転車支持台を下方に張り出す制御を行うのが好ましい。軌道(レール)上に鉄輪が位置した状態で鉄輪により車体を支持する場合に特に車体の安定支持に注意を払う必要性が高いが、このようなときに、前記転車支持台を下方に張り出すことにより、支持安定性を向上することができる。なお、軌道(レール)上に鉄輪が位置した状態で鉄輪により前記軌陸作業車体を支持して作業を行う場合において、軌道にカントのある位置での作業を行うときに、後述するように、
特に顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る転車装置を備えた軌陸作業車の外観を示す側面図である。
図2】上記転車装置の下部の概要構成を拡大して示す平面断面図である。
図3】上記軌陸作業車を転車装置を用いて道路走行と軌道走行とを切り替える作業(載線作業および退線作業)や、高所作業を行うための制御システムの構成を示すブロック図である。
図4】軌陸作業車が踏切内に移動した状態を示す平面図である。
図5】レールの上に載線した軌陸作業車を転車装置の後側で断面して前方を見て示す概略断面図である。
図6】カントがあるレールの上に載線した軌陸作業車を転車装置の後側で断面して前方を見て示す概略断面図である。
図7】カントがあるレールの上に載線し転車装置を下方に張り出した状態の軌陸作業車を転車装置の後側で断面して前方を見て示す概略断面図である。
図8】レールの上に載線し転車装置を下方に張り出した状態の軌陸作業車を転車装置の後側で断面して前方を見て示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明に係る軌陸作業車1の側面図を図1に示す。図1において軌陸作業車1は、前部に運転キャビン4を設けた車体2を有し、車体2の前部に配設された左右一対のタイヤ車輪である操舵輪3Sと、車体2の後部に配設された左右一対のタイヤ車輪である駆動輪3Dとからなる道路走行用車輪によって道路上を走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、シャシフレーム5とシャシフレーム5上に取り付けられたサブフレーム6とからなる車体フレームを有して構成されている。ここで、図1では車体2の左側の操舵輪3S及び駆動輪3Dのみを図示しているが、車体2の右側にも同様の操舵輪3S及び駆動輪3Dが設けられている。
【0020】
車体2における操舵輪3Sの後方および駆動輪3Dの後方には、作業用ジャッキ15が設けられている。作業用ジャッキ15は、車体フレームに固定保持される上部ジャッキ体15aと、上部ジャッキ体15a内に下方に移動自在に配設された下部ジャッキ体15bと、その内部に上部ジャッキ体15aと下部ジャッキ体15bを繋いで設けられたジャッキシリンダ16を有して構成される。このジャッキシリンダ16が伸縮移動することによって、上部ジャッキ体15aに対して下部ジャッキ体15bが下方に向けて移動されるようになっている。作業用ジャッキ15は、主に軌陸作業車1が作業する際に使用されるものであり、ジャッキシリンダ16の伸縮動により下部ジャッキ体15bが下方に向けて移動することで車体2を持ち上げ支持し、それにより車体2全体を安定支持させた状態とする。
【0021】
操舵輪3Sの後方の作業用ジャッキ15の後部側には、車体フレームに対して上下揺動自在に支持された前鉄輪12Fと、前鉄輪12Fを格納位置(図中、二点鎖線で示す位置)と張出位置(図中、実線で示す位置)との間で上下揺動作動させるための前鉄輪揺動シリンダ13Fを有した前鉄輪揺動装置45とが設けられている。また、駆動輪3Dの後方の作業用ジャッキ15の後部側には、車体フレームに対して上下揺動自在に支持された後鉄輪12Rと、後鉄輪12Rを格納位置(図中、二点鎖線で示す位置)と張出位置(図中、実線で示す位置)との間で上下揺動作動させるための後鉄輪揺動シリンダ13Rを有した後鉄輪揺動装置46とが設けられている。
【0022】
ここで、上述した格納位置とは、軌陸作業車1が操舵輪3S及び駆動輪3Dによって道
路などを走行する際に、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを、走行路面より上側となる所定の高さまで上昇させた位置(図1において二点鎖線で示す前鉄輪12F及び後鉄輪12Rの位置)をいう。また、上述した張出位置とは、図1において実線で示すように、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rが軌道上に位置し、操舵輪3Sおよび駆動輪3Dが軌道Rから離れて上方に位置し、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rにより軌道Rの上を走行可能となる位置まで、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを張り出した位置をいう。
【0023】
なお、図1では車体2の左側の前鉄輪12Fおよび後鉄輪12Rのみを図示しているが、車体2の右側にも同様の前鉄輪12Fおよび後鉄輪12Rが設けられている。また、作業用ジャッキ15と、前鉄輪揺動シリンダ13Fおよび前鉄輪揺動装置45と、後鉄輪揺動シリンダ13Rおよび後鉄輪揺動装置46についても、車体2の左側に設けられたもののみを図示しているが、車体2の右側にも同様の作業用ジャッキ15、前鉄輪揺動シリンダ13Fおよび前鉄輪揺動装置45と、後鉄輪揺動シリンダ13Rおよび後鉄輪揺動装置46が設けられている。
【0024】
前鉄輪揺動装置45の前鉄輪揺動シリンダ13Fおよび後鉄輪揺動装置46の後鉄輪揺動シリンダ13Rを伸縮動させて、前鉄輪12Fおよび後鉄輪12Rを格納位置と張出位置との間で上下揺動させる制御は、作業者が鉄輪操作装置72(図3参照)を操作して行われる。鉄輪操作装置72は、図1では示していないが、車体2の後端位置や側端位置における作業者が操作しやすい位置に設けられており、作業者が鉄輪操作装置72を操作して、前鉄輪揺動シリンダ13Fおよび後鉄輪揺動シリンダ13Rを伸縮動させ、前鉄輪12Fおよび後鉄輪12Rを格納位置と張出位置との間で上下揺動させるようになっている。図1には図示していないが、前鉄輪12Fおよび後鉄輪12Rが張り出されたことを検出する鉄輪張出検出器95を備えている(図3参照)。鉄輪張出検出器95は、前鉄輪12Fおよび後鉄輪12Rが張出位置にあることを検出するだけでなく、格納位置にあることも検出するようにしても良い。
【0025】
この制御を行うシステムは図3のように構成される。図3に示すように、鉄輪操作装置72からの操作信号はコントローラ80に入力され、コントローラ80の鉄輪揺動制御部82により鉄輪制御装置86の作動が制御される。鉄輪制御装置86は、例えば、エンジンもしくは電気モータにより駆動される油圧ポンプ、この油圧ポンプから吐出される作動油を前鉄輪揺動シリンダ13Fおよび後鉄輪揺動シリンダ13Rへ供給する制御を行う鉄輪用油圧制御バルブなどから構成される。コントローラ80の鉄輪揺動制御部82は鉄輪用油圧制御バルブの駆動制御を行い、鉄輪操作装置72の操作に応じて前鉄輪揺動シリンダ13Fおよび後鉄輪揺動シリンダ13Rへの作動油供給制御を行う。この結果、作業者が鉄輪操作装置72を操作すると、その操作に応じて前鉄輪揺動シリンダ13Fおよび後鉄輪揺動シリンダ13Rを伸縮動させ、前鉄輪12Fおよび後鉄輪12Rを格納位置と張出位置との間で上下揺動させることができる。
【0026】
車体2の中央下部には転車装置110が設けられている。転車装置110は、図2にも示すように、車体2の下部に設けられ下方に向かって伸縮可能な転車用ジャッキ120と、転車用ジャッキ120の下端部に設けられた回転支持テーブル(転車支持台)130とを有して構成されている。転車用ジャッキ120は、前後方向に互いにずれて左右方向(車幅方向)に互いに離間して並んで配置された2個の伸縮ポスト(左伸縮ポスト121Lおよび右伸縮ポスト121R)を有している。左伸縮ポスト121Lは、その内部に設けられた転車伸縮シリンダ122Lの伸縮動により、下方に向けて上下方向に伸縮動可能に構成されている。同様に、右伸縮ポスト121Rは、その内部に設けられた転車伸縮シリンダ122Rの伸縮動により、下方に向けて上下方向に伸縮動可能に構成されている。なお、左伸縮ポスト121Lの伸縮量と右伸縮ポスト121R伸縮量は、互いに同じとなるように調整することも可能であり互いに異なるように調整することも可能である。転車用
ジャッキ120は、2個の伸縮ポスト121L,121Rが上下方向に伸縮動することにより下方に向けて上下方向に伸縮動可能に構成されている。
【0027】
伸縮ポスト121L,121Rを上下方向に伸縮動させる制御は、作業者が転車操作装置71(図3参照)を操作して行われる。転車操作装置71は、図1では示していないが、車体2の後端位置や側端位置における作業者が操作しやすい位置に設けられており、作業者が転車操作装置71を操作して、左右転車伸縮シリンダ122L、122Rを伸縮動させて左右伸縮ポスト121L,121Rを上下方向に伸縮動させ、転車用ジャッキ120を下方に向かって伸縮動させ、転車用ジャッキ120の下端部に設けられた回転支持テーブル(転車支持台)130を上下動させるようになっている。なお、図1には示していないが、後述するように軌道上での高所作業時に回転支持テーブル130を下方に張り出し制御するときに、その張り出し位置(量)を検出するための転車張出検出器96が転車装置110に設けられている。
【0028】
この制御を行うシステムは、図3に示すように構成されている。このシステムにおいて、転車操作装置71からの操作信号がコントローラ80に入力され、コントローラ80の転車ジャッキ制御部81により転車制御装置85の駆動が制御される。転車制御装置85は、例えば、エンジンもしくは電気モータにより駆動される油圧ポンプ、この油圧ポンプから吐出される作動油を左右転車伸縮シリンダ122L、122Rへ供給する制御を行う転車用油圧制御バルブなどから構成される。コントローラ80の転車ジャッキ制御部81は転車用油圧制御バルブの駆動制御を行い、転車操作装置71の操作に応じて左右転車伸縮シリンダ122L、122Rへの作動油供給制御を行う。この結果、作業者が転車操作装置71を操作すると、その操作に応じて左右転車伸縮シリンダ122L、122Rを伸縮動させ、転車用ジャッキ120を下方に向かって伸縮動させ、転車用ジャッキ120の下端部に設けられた回転支持テーブル(転車支持台)130を上下動させることができる。このようにして回転支持テーブル(転車支持台)130を上下動させるときにおいて、上記転車張出検出器96からの検出信号がコントローラ80に入力されるが、その入力に基づく制御については後述する。
【0029】
回転支持テーブル130は、転車用ジャッキ120の下端部において2個の伸縮ポスト121L,121Rの各下端部を繋ぐように水平に設けられた上板131と、上板131の下部に上下に延びる回転中心軸Oの回りに回転自在に水平に設けられた下板135とを有して構成されている。図2に示すように、上板131の側部に回転駆動モータ132が設けられており、この回転駆動モータ132から下方に突出する駆動軸にピニオンギヤ(図示せず)が取り付けられている。一方、下板135の上面に大径の回転ギヤ136が取り付けられており、その外周面に被動ギヤ歯136aが形成されている。この被動ギヤ歯136aには、回転駆動モータ132の駆動軸に取り付けられたピニオンギヤが噛合している。このため、回転駆動モータ132によりピニオンギヤを回転駆動するとこれと噛合する被動ギヤ歯136aを介して回転ギヤ136に回転駆動力を伝えて、被動ギヤ136が取り付けられた下板135を上板131に対して回転させることができる。
【0030】
転車装置110において、転車用ジャッキ120を下方に伸長させて回転支持テーブル130の下板135を接地させて車体2を地面から持ち上げ支持することが可能である。そして、このように持ち上げ支持した状態で、下板135に対して上板131および転車用ジャッキ120を回転させることによって、車体2の方向転換を行い、載線作業・退線作業を行うことが可能である。この方向転換は、転車装置110により車体2を持ち上げ支持した状態で、作業者が車体を押して下板135に対して上板131および転車用ジャッキ120を回転させて行う。なお、回転駆動モータ132により下板135に対して上板131を回転させて行うようにすることも可能である。
【0031】
転車装置110は、車体2の中央下部に位置して設けられているが、図4に示すように、回転支持テーブル130の上板131に対する下板135の回転中心となる上下に延びる回転中心軸Oが車体2の幅方向中央に位置するようになっている。さらに、左右一対の前鉄輪12F、12Fは車体2の幅方向において左右対称に位置して設けられており、左右一対の後鉄輪12R、12Rも車体2の幅方向において左右対称に位置して設けられている。すなわち、回転中心軸Oを通って前後に延びる前後軸A1に対して、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rがそれぞれ左右対称に位置して設けられている。また、左右一対の前鉄輪12F、12Fを繋ぐ前鉄輪軸および左右一対の後鉄輪12R、12Rを繋ぐ後鉄輪軸は、回転中心軸Oを通って幅方向に延びる左右軸A2と平行で、前後軸A1に対して直角である。
【0032】
転車装置110においては、上述のように、転車用ジャッキ120を下方に伸長させて回転支持テーブル130を下方に張り出して車体支持を行って載線作業、退線作業を行うが、道路走行時および軌道走行時には転車用ジャッキ120を上方に縮小して回転支持テーブル130を上方に移動させて格納保持する。このように格納保持するときには、図4において実線で示すように、下板135をその長手方向が左右方向(左右軸A2の方向)に延び、短手方向が前後方向(前後軸A1の方向)に延びる回転位置で保持する。
【0033】
運転キャビン4の後方にある架装領域の前部(サブフレーム6の前部)には、旋回モータ21の駆動により水平旋回可能に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱22には、フートピン23を軸としてブーム30が上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。ブーム30は、フートピン23により支柱22に起伏自在に取り付けられた基端ブーム30aと、中間ブーム30bと、先端ブーム30cとが入れ子式に組み合わされて構成されている。ブーム30の内部にはブーム伸縮シリンダ31が設けられており、このブーム伸縮シリンダ31の伸縮動によりブーム30を長手方向に伸縮動させることができるように構成されている。基端ブーム30aと支柱22の間にはブーム起伏シリンダ32が跨設されており、このブーム起伏シリンダ32の伸縮動によりブーム30を上下面内において起伏動させることができるように構成されている。
【0034】
先端ブーム30cの先端部には、作業台支持ブラケット35がブーム30の起伏面内において揺動可能に取り付けられている。作業台支持ブラケット35は、内部に設けられたレベリングシリンダ36の伸縮動によりブーム30の起伏角度によらず作業台支持ブラケット35の上面が常時水平に保持されるように構成されている。レベリングシリンダ36の伸縮動は、作業台40の傾斜角度を検出する傾斜角センサ(図示略)の検出値に応じて制御される。そして、この作業台支持ブラケット35の上面に作業台40が水平旋回自在に取り付けられている。作業台支持ブラケット35の内部には首振りモータ41が設けられており、この首振りモータ41を駆動させることにより作業台40を作業台支持ブラケット35に対して水平旋回(首振り作動)させることができるように構成されている。上記のように作業台支持ブラケット35の上面は常時水平に保持されるため、作業台40の床面もブーム30の起伏角度によらず水平に保持されるようになっている。作業台40には、旋回モータ21、ブーム伸縮シリンダ31、ブーム起伏シリンダ32、首振りモータ41などの各種油圧アクチュエータを駆動するために作業者が操作する作業操作装置43を有する作業台操作ボックス42が設けられている。この作業操作装置43は、作業者が操作する操作レバー、操作スイッチ類を有して構成される。
【0035】
旋回台40の旋回制御、ブーム30の起伏、伸縮制御、作業台40の水平旋回(首振り作動)制御を行うシステムは図3のように構成される。これらの制御は作業操作装置43に設けられた操作レバー、操作スイッチ類を作業者が操作して行われる。このため、図3に示すように、作業操作装置43の操作レバー、操作スイッチ類が操作されたときにその
操作信号がコントローラ80に入力され、コントローラ80の高所作業制御部83により高所作業制御装置90の駆動が制御されるように構成されている。高所作業制御装置90は、例えば、エンジンもしくは電気モータにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される作動油を旋回モータ21、ブーム伸縮シリンダ31、ブーム起伏シリンダ32、首振りモータ41へ供給する制御を行う高所作業用油圧制御バルブなどから構成される。コントローラ80の高所作業制御部83は作業操作装置43の操作レバー、操作スイッチ類の操作に応じて高所作業制御装置90の高所作業用油圧制御バルブの駆動制御を行い、旋回モータ21、ブーム伸縮シリンダ31、ブーム起伏シリンダ32、首振りモータ41への作動油供給制御を行う。この結果、作業者が作業操作装置43の操作レバー、操作スイッチ類を操作すると、その操作に応じて旋回モータ21、ブーム伸縮シリンダ31、ブーム起伏シリンダ32、首振りモータ41を駆動させることができる。
【0036】
このようにして旋回モータ21、ブーム伸縮シリンダ31、ブーム起伏シリンダ32、首振りモータ41を駆動させると、その駆動に応じて旋回台40を旋回させたり、ブーム30を起伏、伸縮させたり、作業台40を水平旋回させたりすることができる。これにより、図1において二点鎖線で示すように作業台40を所望高所に移動させて、作業台40に搭乗した作業者により所望の高所作業を行うことができる。高所作業を行わないときには、図1において実線で示すように、ブーム30を後方に向けて倒伏させて車体2上に格納するようになっている。この格納姿勢でブーム30を支持するためのブーム受け38が車体2に設けられており、ブーム受け38にはブーム30を載置してブーム30が格納状態であることを検出する格納検出器39が設けられている。格納検出器39からの検出信号はコントローラ80に入力されるが、その入力に基づく制御については後述する。
【0037】
以上のように構成した軌陸作業車1は、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを格納し、操舵輪3S及び駆動輪3Dによって道路などを走行することが可能であるとともに、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを踏切50上に張り出し、軌道上を走行することも可能である。このとき、鉄輪張出検出器95により、前鉄輪12Fおよび後鉄輪12Rが格納位置にあるか張出位置にあるか検出される。このように、道路走行と軌道走行とを切り替えるために、上述の転車装置110を備えている。この転車装置110を用いて道路走行と軌道走行とを切り替える作業(載線作業および退線作業)について、以下に説明する。
【0038】
転車装置110を用いた載線作業および退線作業は、例えば、踏切内において行われる。図4に、軌陸作業車1が踏切50内に移動した状態を平面視で示しており、この踏切50においては、左右一対のレール60、60を有した軌道Rが道路51を直角に横切って延びている。踏切内を車両が走行するときに、レール60が走行の妨げとならないようにするために、踏切50においては、左右のレール60、60の外側の道路51の上面がレール60の上面と一致し、レール60、60の間の道路55の上面もレール60の上面と一致するように、道路の路面が形成されている。転車作業を行うには、図4に示すように、転車装置110における下板135の回転中心Oが、レール60、60の中央位置に位置するように軌陸用作業車1を移動させて停車する。これは、前述したように、回転中心軸Oを通って前後に延びる前後軸A1に対して、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rがそれぞれ左右対称に位置して設けられているからである。なお、このときは道路走行状態であり、前鉄輪12Fおよび後鉄輪12Rは格納されている。
【0039】
このように下板135の回転中心Oが、レール60、60の中央位置に位置するように軌陸用作業車1を移動させた状態では、上述したように転車装置110の下板135は、その長手方向が左右方向(左右軸A2の方向)に延び、短手方向が前後方向(前後軸A1の方向)に延びる回転位置で格納保持されている。そこでまず、転車操作装置71を操作して回転駆動モータ132を駆動して、下板135を図4において二点鎖線で示すように
、長手方向が前後方向(前後軸A1の方向)に延び、短手方向が左右方向(左右軸A2の方向)に延びる回転位置まで90度回転させる。これにより、下板135は左右のレール60、60を跨ぐ状態となる。この状態から、転車操作装置71を操作して、転車用ジャッキ120により回転支持テーブル130(上板131および下板135)を下方に移動させ、下板135をレール60およびレール60、60の間の道路55に当接させて、転車装置110により車体2を持ち上げ支持する。その後、車体2を作業者が押す等して、下板135に対して、上板131およびこれに繋がる軌陸用作業車1を90度回転させる。
【0040】
すると、図4において二点鎖線で示すように、車体2が軌道Rの延びる方向に向き、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rがレール60、60の真上に位置する。そこで、鉄輪操作装置72を操作して前鉄輪12Fおよび後鉄輪12Rを張出位置に移動させる。このとき、鉄輪張出検出器95により、前鉄輪12Fおよび後鉄輪12Rが張出位置に移動したことが検出される。この後、転車操作装置71を操作して、転車装置110による車体2の持ち上げ支持を解放すると、すなわち、転車用ジャッキ120により回転支持テーブル130(上板131および下板135)を引き上げて格納すると、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rがレール60、60の上に載り、図1に示す状態となり、載線作業が完了する。このとき、下板135は、その長手方向が車体の左右方向に延び、短手方向が前後方向に延びる回転位置となるので、そのまま格納保持される。
【0041】
以上においては、踏切まで道路走行してきた軌陸作業車1を、踏切内で軌道Rに移し替える載線作業を説明したが、踏切内で上記と逆の作動を行わせれば、軌陸作業車1を軌道R上から道路に移し替える退線作業を行うことができる。
【0042】
上述のようにして軌陸作業車1をレール60、60の上に載線した後、停止状態でもしくは低速走行状態で高所作業を行うことがある。このような作業状態の一例を図5に示している。図5は、軌陸作業車1を転車装置110の後側で断面して前方を見た状態を示しており、左右の前鉄輪揺動装置45、45により左右の前鉄輪12F、12Fが下方に張り出されて左右のレール60、60の上に載っている。図5には表れないが、左右の後鉄輪12R、12Rも同様に、左右の後鉄輪揺動装置46、46により下方に張り出されて左右のレール60、60の上に載っている。この作業状態では、旋回台20が旋回されるとともにブーム30が起立して伸長されており、作業台40が車体左側の上方に位置している。この状態における軌陸車1の図5の面内における重心位置を符号G1(1)で示しており、車体左右方向の中心Cに対して左側に距離D1(1)だけ左側にずれて位置しており、左側の前鉄輪12Fに対して距離D2(1)だけ内側(右側)に位置している。なお、図5の状態では、転車装置110の回転支持テーブル130(上板131および下板135)は上方に引き上げられて格納状態である。
【0043】
図5の状態においては左方向に転倒モーメントが作用するため、軌陸作業車1の安定性は、左側の前および後鉄輪12F、12Rに対して軌陸作業車1の重量W1により生じる安定モーメントM1=W1×D2(1)により決まる。作業台40が図5のように左側に位置すると、作業台40の重量およびブーム30の重量および位置に応じて転倒方向のモーメント(転倒モーメント)M2が作用するが、この転倒モーメントM2が安定モーメントM1より大きくなると転倒のおそれが生じるため、このような状態とならないようにブーム30および作業台40の移動規制が行われる。このような移動規制(作業範囲規制)を行うことにより、軌陸作業車1をレール60、60の上に載線した状態で、停車したままもしくは低速走行しながら高所作業を可能としている。
【0044】
ところで前述したように、軌道(レール60、60)はカーブしている部分においてカ
ントが設けられており、一般的にカーブの外側のレール60が内側のレール60よりも高くなっている。このため、軌道(レール)上に鉄輪が位置した状態で前および後鉄輪12F、12Rにより車体を支持して作業を行う場合において、軌陸作業車1がカントのある場所を走行するときに支持安定性が低下しやすいという問題がある。これについて、図6を参照して説明する。
【0045】
図6は、カーブしている箇所でのカントが設けられたレール60、60を示しており、カーブ内側となる左側レール60に対して外側となる右側レール60の方が高くなっている。このようにカントが設けられたレール60、60の上を軌陸作業車1が走行するときには、図示のように車体2が左側に傾き、これに応じて軌陸車1の図6の面内における重心位置G1(2)は左側に移動する。このため、図6に示すように、車体中心からの距離D1(2)は、図5のようにカントがない場合に比べて大きくなる。すなわち、D1(2)>D1(1)となる。これにより、左側の前鉄輪12F(および後鉄輪12R)に対する重心位置G1(2)の距離D2(2)は図5のようにカントがない場合に比べて小さくなる。すなわち、D2(2)<D2(1)となる。この結果、軌陸作業車1の安定モーメントはM1=W×D2(2)となり、図5の場合より小さくなる。すなわち、カントがある領域において軌陸作業車の作業安定性が低下する。
【0046】
このようなことに鑑み、軌陸作業車1をレール60、60の上に載線した後、停止状態でもしくは低速走行状態で高所作業を行うときには、図7に示すように、転車装置110において、転車用ジャッキ120により回転支持テーブル130(上板131および下板135)を下方に張り出す制御が行われる。この制御は、図3の制御システムにおけるコントローラ80により、格納検出器39からの検出信号を受けて行われる。軌陸作業車1をレール60、60の上に載線するときにはブーム30がブーム受け38の上に載置されて格納状態であり、載線されたときにはブーム30は格納状態である。また、上述のように載線作業の完了時には、回転支持テーブル130(上板131および下板135)は上方に引き上げられた格納状態である。このため、この状態では、ブーム30がブーム受け38の上に載置されて格納状態であることが格納検出器39により検出され、その検出信号はコントローラ80に送られる。
【0047】
この状態から、ブーム30が起立作動されてブーム受け38から離れると、これが格納検出器39により検出され、その検出信号がコントローラ80に送られる。この検出信号を受けるとコントローラ80の転車ジャッキ制御部81は転車制御装置85により転車用ジャッキ120(左右の転車伸縮シリンダ121L、121R)を伸長作動させ、回転支持テーブル130(上板131および下板135)を下方に移動させる。このとき、転車張出検出器96が回転支持テーブル130の下方への移動量(下方への張出量)を検知しており、この検知信号を受けてコントローラ80の転車ジャッキ制御部81は回転支持テーブル130の下面(下板135の下面)がレール60、60に近接する位置まで移動させる制御を行う。すなわち、回転支持テーブル130の下面(下板135の下面)がレール60、60に当接せずに軌陸作業車1がレール60、60の上を走行移動できるが、回転支持テーブル130を可能な限り下方に移動させる制御を行う。
【0048】
このように回転支持テーブル130を下方に移動させる制御は、格納検出器39によりブーム30がブーム受け38から離れたことを検出して行われるが、ブーム30が格納状態ではなくなったことを他の方法で検出しても良い。例えば、格納状態からブーム30を起立動させるように作業操作装置43の操作が行われたときに、回転支持テーブル130を下方に移動させる制御を行っても良い。さらには、軌陸作業車1をレール60、60の上に載線させる載線作業が完了したときに、これに続いて回転支持テーブル130を下方に移動させる制御を行っても良い。
【0049】
図8に示すように、回転支持テーブル130(上板131および下板135)を下方に張り出すと、車体が傾くことに対する支持安定性が向上する。この効果は特に、軌陸作業車1がカントを有するレール60、60の上に位置した場合に顕著である。図7に、回転支持テーブル130を下方に移動させた状態で、軌陸作業車1がカントを有するレール60、60の上に位置した場合を示している。図7では、回転支持テーブル130が上方に格納された状態のときの転車装置110の重心位置を符号G2(1)で示し、回転支持テーブル130を下方に移動させた状態での転車装置110の重心位置を符号G2(2)で示している。回転支持テーブル130を下方に移動させると図示のようにその重心位置G2(1)は重心位置G2(2)まで斜め右下方に移動し、車体に作用する右方向(時計回り方向)のモーメント、すなわち安定モーメントが増加する。
【0050】
また、軌陸作業車1全体の重心位置が位置G1(3)となり、回転支持テーブル130が上方に格納された状態のときの重心位置G1(2)(図6に示す重心位置)より右側に位置し、車体左右方向の中心Cからの距離D1(3)は、図6に示す回転支持テーブル130が上方に格納された状態のときの距離D1(2)より小さくなる。このため、左側の前鉄輪12F(および後鉄輪12R)に対する重心位置G1(3)の距離D2(3)は図6のように回転支持テーブル130が上方に格納された状態のときの距離D2(2)より大きくなる。すなわち、D2(3)>D2(2)となる。この結果、軌陸作業車1の安定モーメントはM1=W×D2(3)となり、図6の場合より大きくなる。すなわち、安定性が向上する。これにより、軌陸作業車1をレール60、60の上に載線した状態での安定性が向上し、停車状態もしくは低速走行しながらの高所作業での安全性が向上する。
【0051】
上述のようにカントがあるレール60、60の上で、すなわち、軌陸作業車1が傾いた状態で、回転支持テーブル130を下方に張り出すと、車体の支持安定性が向上することが分かる。すなわち、回転支持テーブル130を下方に張り出せば車体が傾斜したときの安定性が向上する。このことから分かるように、高所作業装置を作動させて、軌陸作業車1の重心位置が外方に移動するような場合に、回転支持テーブル130(転車支持台)を下方に張り出して軌陸作業車1の全体としての重心位置が低下しているため、軌陸作業車1の重心位置の外方への移動量を小さく抑えることができ、車体の支持安定性が向上する。このように、回転支持テーブル130を引き上げて格納した状態のときに比べて、回転支持テーブル130を下方に張り出した状態の方が、作業装置を作動させたときにおける軌陸作業車1の重心位置の外方への移動量が小さくなり、車体の支持安定性が向上する。
【0052】
以上説明したように、回転支持テーブル130を下方に張り出すと、図8のようにカントが無いレール60、60の上に位置するときにおいても、ブーム30の作動により車体の重心位置が移動するなどして少し車体が傾くことに対して安定性が向上する。すなわち、回転支持テーブル130を下方に張り出すことにより、車体の傾斜に対する安定性が向上する。このため、上述したように、載線状態だけでなく、道路走行状態において作業用ジャッキ15を張り出して車体2を持ち上げ支持した状態のときに、回転支持テーブル130を下方に張り出す制御を行っても良い。これにより、作業用ジャッキ15を張り出して車体2を持ち上げ支持して高所作業を行うような場合においても、車体の支持安定性を向上させることができる。
【0053】
軌陸作業車1をレール60、60の上に載線して停止した状態で高所作業を行うときに、作業用ジャッキ15を張り出して車体を支持して高所作業を行うこともある。このようなときには鉄輪12F、12Rがレール60、60から離れないもしくは極く僅かしか離れない状態で支持が行われる。これは、作業を終えて作業用ジャッキ15の支持を解除したときに、鉄輪12F、12Rが確実にレール60、60上に戻るようにするためであるが、この結果、車体はカントに沿った傾斜のままでの支持となり、支持安定性が低下しやすいという問題がある。このようなときにも、回転支持テーブル130を下方に張り出す
制御を行えば、車体の支持安定性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 軌陸作業車 2 車体
3S 操舵輪 3D 駆動輪
12F 前鉄輪 12R 後鉄輪
38 ブーム受け 39 格納検出器
42 作業台操作ボックス 43 作業操作装置
45 前鉄輪揺動装置 46 後鉄輪揺動装置
R 軌道 61 レール
71 転車操作装置 72 鉄輪操作装置
80 コントローラ 81 転車ジャッキ制御部
82 鉄輪揺動制御部 83 高所作業制御部
90 高所作業制御装置 95 鉄輪張出検出器
110 転車装置 120 転車用ジャッキ
130 回転支持テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8