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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058739
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】還付金ファクタリングシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20230101AFI20240422BHJP
【FI】
G06Q40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166020
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 真之介
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB00
5L055BB00
(57)【要約】
【課題】ユーザに返還される還付金を債権として買い取り、当該ユーザに対して、所定の買取金額を還付金の返還前に即時に支払う。
【解決手段】ユーザ端末30を介して入力される還付申告データに基づいて生成された申告書類データを受信する申告書類データ受信部11と、受信された申告書類データを還付処理を行う外部システム50に送信する申告書類データ送信部12と、申告書類データに基づいてユーザに返還される還付金の金額と、当該還付金に係る債権の買取金額を算出する買取金額算出部13と、買取金額が示す買取金をユーザの銀行口座に振り込む債権買取処理を実行する債権買取部14と、外部システム50からユーザの銀行口座に振り込まれる還付金を回収する回収処理を実行する還付金回収部15を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに返還される所定の還付金に係る債権を買い取り、当該ユーザに対して、所定の買取金額を前記還付金の返還前に支払うための還付金ファクタリングシステムであって、
所定の入力端末を介して入力される、前記ユーザの還付申告に必要となる還付申告データに基づいて生成された所定の申告書類データを受信する申告書類データ受信手段と、
受信された前記申告書類データを、前記還付金の還付処理を行う外部システムに送信する申告書類データ送信手段と、
前記外部システムに送信される前記申告書類データに基づいて、前記ユーザに返還される前記還付金の金額と、当該還付金に係る前記債権の買取金額を算出する買取金額算出手段と、
算出された前記買取金額が示す買取金を、前記ユーザの銀行口座に振り込む所定の債権買取処理を実行する債権買取手段と、
前記外部システムから前記ユーザの銀行口座に振り込まれる還付金を、当該銀行口座から回収する所定の回収処理を実行する還付金回収手段と、を備える
ことを特徴とする還付金ファクタリングシステム。
【請求項2】
前記債権買取手段は、
前記申告書類データが前記外部システムに送信されると、前記債権買取処理を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の還付金ファクタリングシステム。
【請求項3】
前記ユーザが、所得税の確定申告を行う納税者であり、
前記外部システムが、国税電子申告・納税システムであり、
前記還付金ファクタリングシステムが、前記ユーザの前記銀行口座を管理する銀行システムである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の還付金ファクタリングシステム。
【請求項4】
前記入力端末が、前記ユーザが操作する所定のユーザ端末である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の還付金ファクタリングシステム。
【請求項5】
前記入力端末が、前記銀行システムに備えられた銀行端末である
ことを特徴とする請求項3に記載の還付金ファクタリングシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば確定申告(還付申告)を行うことで納税者に返還される還付金について、必要となる還付手続や還付金の受け取りを支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、所得税を納めた納税者は、本来の税額より多くの税金を納付した場合や、一旦税金を納めた後に減税(減免措置等)の対象となった場合には、税務署に申告を行うことによって税金が返還・還付されることがある。
例えば、給与所得者が給与等から源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が、年間の所得金額について計算した所得税額よりも多い場合には、確定申告をすることによって、納め過ぎの所得税の還付を受けることができる。
この申告を還付申告という。
【0003】
具体的には、還付申告は、以下のような場合に行うことができる。
(1)年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっているとき。
(2)一定の要件のマイホームの取得などをして、住宅ローンがあるとき。
(3)マイホームに特定の改修工事をしたとき。
(4)認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)。
(5)災害や盗難などで資産に損害を受けたとき。
(6)特定支出控除の適用を受けるとき。
(7)多額の医療費を支出したとき。
(8)特定の寄附をしたとき。
(9)上場株式等に係る譲渡損失の金額を申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得等の金額から控除したとき。
【0004】
ところで、以上のような還付申告(確定申告)は、国税庁(税務署)に対して申告手続を行う必要があることから、例えば、普段確定申告を行ったことのない給与所得者にとっては、手続の仕方がよく分からない、手続自体が煩雑で煩わしい、といった問題がある。
また、近年は、インターネット技術の進展により、確定申告の手続はオンライン等で比較的簡便に行えるようになってきており、また、還付申告は1年を通していつでも行えるようになっているが、申告手続の完了から実際に還付金の返還(支払)が行われるまでに、一定程度の時間がかかるという問題があった。
【0005】
具体的には、現状、還付金が納税者に返還(指定口座への振込)されるのは、申告手続を完了してから、早くても2~3週間、繁忙期(毎年2月16日~3月15日の確定申告期間)では1~1.5月程度はかかることがある。
このため、例えば、年末のふるさと納税でクレジットカードの利用限度額が上限に達してしまった、年度末は何かと物入りで早く還付金がほしい、といった納税者の要望に応えることは困難であった。
このため、還付金の還付を申告手続からリアルタイムに行えるようになれば、上記のような還付期間の問題を解消でき、還付申告を含む確定申告の更なる利用促進にも資することができるようになるが、現在までのところ、それを実現し得る有効な提案はなされていない。
【0006】
ここで、上記のような還付申告や還付期間の課題を解決することを目的として、例えば、特許文献1には「確定申告代行還付金ポイント還元システム」が提案されている。
この特許文献1で提案されているシステムは、経費計上できる物やサービスの購入や、病院での医療費の支払い、寄付金などのクレジットカード決済を行うと、その決済額による還付金相当額の一部(例えば90%)もしくは全額がポイントとして付与され、確定申告時には、クレジットカードシステムが税務署サーバに接続して利用者の確定申告を行い、税務署サーバはクレジットカード会社の口座に還付金を送金する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-110598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術を含めて、これまでの還付金ファクタリングの支援技術には、更なる改良の余地があった。
例えば、特許文献1に提案されているシステムでは、クレジットカードの決済時に、決済額による還付金の一部もしくは全部がポイントとして付加されるというものであるが、確定申告による還付金の額は、確定申告を行うことによって決定されるものであり、確定申告以前に行われるクレジットカードの決済の時点で、還付金額が決定されることはあり得ない。
このため、クレジットカード決済時には不明な還付金相当額の一部もしくは全額を、当該クレジットカード決済時に、どのようにしてポイントに換算・変換して還付するのかは不明であり、実現性に欠けるものであった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するために提案されたものであり、還付申告を行うユーザに返還される還付金を債権として買い取ることにより、当該ユーザに対して、所定の買取金額を還付金の返還前に即時に支払うことを可能とし、還付申告から還付金の返還までのタイムラグを解消して、ユーザに対してリアルタイムに還付金相当額の買取金を付与するとともに、実際の還付金の返還によって確実な債権回収を実現することができる、迅速性・確実視・信頼性等に優れた還付金ファクタリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、ユーザに返還される所定の還付金に係る債権を買い取り、当該ユーザに対して、所定の買取金額を前記還付金の返還前に支払うための還付金ファクタリングシステムであって、所定の入力端末を介して入力される、前記ユーザの還付申告に必要となる還付申告データに基づいて生成された所定の申告書類データを受信する申告書類データ受信手段と、受信された前記申告書類データを、前記還付金の還付処理を行う外部システムに送信する申告書類データ送信手段と、前記外部システムに送信される前記申告書類データに基づいて、前記ユーザに返還される前記還付金の金額と、当該還付金に係る前記債権の買取金額を算出する買取金額算出手段と、算出された前記買取金額が示す買取金を、前記ユーザの銀行口座に振り込む所定の債権買取処理を実行する債権買取手段と、前記外部システムから前記ユーザの銀行口座に振り込まれる還付金を、当該銀行口座から回収する所定の回収処理を実行する還付金回収手段と、を備える構成としてある。
【0011】
また、本発明は、上記のような本発明に係る還付金ファクタリングシステムで実行されるプログラムとして構成することができる。
さらに、本発明は、上記のような本発明に係る還付金ファクタリングシステム及びプログラムによって実施可能な方法として実施することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、還付申告を行うユーザに返還される還付金を債権として買い取ることにより、当該ユーザに対して、所定の買取金額を還付金の返還前に即時に支払うことが可能となり、還付申告から還付金の返還までのタイムラグを解消することができる。
これによって、ユーザに対してリアルタイムに還付金相当額の買取金を付与するとともに、実際の還付金の返還によって確実な債権回収を実現することができる、迅速性・確実視・信頼性等に優れた金融サービスの提供が可能となる。
したがって、本願発明によれば、例えば金融機関、特に、銀行や銀行代理業者等が提供する金融サービスやプラットフォームサービスなどに好適な還付金ファクタリングシステム及びプログラム・方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る還付金ファクタリングシステムの全体構成を模式的に示す説明図である。
図2】本発明における還付金ファクタリングの全体の流れを模式的に示す説明図である。
図3】還付金ファクタリングシステムにおける各部の構成を示す機能ブロック図である。
図4】還付金ファクタリングシステムの記憶手段に格納されるデータ構成を示す説明図であり、(a)は申告情報データ(データベース方式)、(b)は債権管理データ(ブロックチェーン方式)の各データ構成の一例を示している。
図5】還付金ファクタリングシステムにおける処理動作の概要を示すフローチャートである。
図6図5に示す処理動作の詳細を示す説明図である。
図7図6から引き続いて、図5に示す処理動作の詳細を示す説明図である。
図8図7から引き続いて、図5に示す処理動作の詳細を示す説明図である。
図9】還付金ファクタリングシステムにおけるユーザ端末に表示される出力イメージを示す説明図であり、(a)はユーザのホーム画面、(b)は還付書類登録画面、(c)は還付金の詳細内訳画面の一例である。
図10】還付金ファクタリングシステムにより銀行側に提供されるユーザ情報の出力イメージを示す表示画面の一例である。
図11】本発明の還付金ファクタリングシステムを搭載したプラットフォームサービスの概要を示す説明図である。
図12】還付金ファクタリングシステムにおけるサーバ・ユーザ端末・外部システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る還付金ファクタリングシステムの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
ここで、以下に示す本発明の還付金ファクタリングシステム(本システム)は、プログラム(ソフトウェア)の命令によりコンピュータで実行される処理,手段,機能によって実現される。プログラムは、コンピュータの各構成要素に指令を送り、以下に示す本発明に係る所定の処理や機能等を行わせることができる。すなわち、本発明における各処理や手段,機能は、プログラムとコンピュータとが協働した具体的手段によって実現される。
【0015】
なお、プログラムの全部又は一部は、例えば、磁気ディスク,光ディスク,半導体メモリ,その他任意のコンピュータで読取り可能な記録媒体により提供され、記録媒体から読み出されたプログラムがコンピュータにインストールされて実行される。また、プログラムは、記録媒体を介さず、通信回線を通じて直接にコンピュータにロードし実行することもできる。
また、本システムは、単一の情報処理装置(例えば一台のパーソナルコンピュータ等)で構成することもでき、複数の情報処理装置(例えば複数台のサーバコンピュータ群等)で構成することもできる。
【0016】
また、本システムを構成する装置群に含まれる各情報処理装置は、例えば図12に示すように、CPU301、RAM302、ROM303、HDD304、入力装置305、表示装置(ディスプレイ)306、通信IF307等を含むハードウェアによって構成される。これらの構成要素はシステムバスで接続され、システムバスを介してデータのやり取りが行われる。CPU(Central Processing Unit)301は、中央処理装置とも呼ばれ、コンピュータの中心的な処理を行う部位であり、各装置の制御やデータの計算や加工を行う。RAM(Random Access Memory)302は、メモリ装置の一種で、データの消去や書き換えが可能なものである。ROM(Read Only Memory)303は、半導体などを用いたメモリ装置の一種で、データ書き込みは製造時1回のみで、利用時には記録されたデータの読み出しのみできるものである。HDD(Hard Disk Drive)304は、磁性体の性質を利用し、情報を記録し読み出す補助記憶装置である。なお、HDDに代えて、あるいはHDDとともに、例えばSSD(Solid State Drive)を記憶装置・記憶手段とすることもできる。入力装置305は、ユーザがコンピュータに対して操作指示を行うため、あるいは、文字等を入力するために使用され、具体的には、キーボード、マウス等で構成される。表示装置306は、例えば液晶ディスプレイ等で構成される。本システムにおける各装置は、入力装置305及び表示装置306が一体となったタッチパネル機能を有する装置を備えていてもよい。また、他の端末や情報処理装置等との通信が可能となる通信機能(通信IF307)を備えることもできる。通信IF(Inter Face)307は、所定の通信規格に従って他の装置と通信するための装置であり、例えばNIC(Network Interface Card)を含む。
【0017】
[システム構成]
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る還付金ファクタリングシステム1(以下「本システム1」という)は、還付金ファクタリングサーバ10と、一又は二以上のユーザ端末30(30a~30n)とを備えて構成されている。
そして、これら還付金ファクタリングサーバ10・ユーザ端末30は、LAN・WAN等のネットワークを含むインターネット100を介して接続され、それぞれ相互にデータ通信が可能となっている。
また、還付金ファクタリングサーバ10は、インターネット100を介して、本システム1の外部に設置されている所定の外部システム50とも通信可能に接続されるようになっている。
【0018】
そして、本システム1は、図1図2に示すように、例えば、還付金ファクタリングサーバ10を設置・運用する「銀行」と、銀行の顧客でありユーザ端末30を使用・操作する「納税者」と、納税者に対する還付金の返還を行う外部システム50を設置・運用する「国税庁・税務署」の三者の間で、本発明に係る還付金ファクタリング処理を実行するようになっている。
【0019】
具体的には、図2に示すように、本システム1では、「銀行・納税者・税務署(国税庁)」の三者間で、以下のような7つの処理・ステップが実行されるようになっている。
(1)申告書類の作成(e-Tax等)。
(2)申告書類の登録・還付金受領債権の譲渡。
(3)申告内容のチェック・データ保存(債権の管理・申告情報の管理)
(4)申告書類の代理送信(e-Tax等)。
(5)即金振込(債権買取)。
(6)還付金振込(後日)。
(7)還付金回収(権利行使)
【0020】
このような本システム1の処理が実行されることで、まず納税者にとっては、カードローン等よりも手軽な、新たなマイクロファイナンスサービスの提供を受けることができることになる。
また、本システム1による還付金ファクタリングサービスは、還付金の受取口座を保有する銀行の存在を前提としており、本システム1を介してサービスを提供する銀行としては、還付金の受取口座に自行の口座を指定させることで、ほぼ確実に債権を回収することができるようになる。その結果、顧客である納税者に対する金利や手数料を比較的低くリーズナブルに提供することができ、顧客サービスを魅力あるものとすることが可能となる。
さらに、銀行からすると、自行をメインバンクにする動機づけを納税者に与え、他行との差別化を図ることが可能となる。
以上のような本システム1における還付金ファクタリング処理の詳細については、図5図9を参照しつつ後述する。
【0021】
[還付金ファクタリングサーバ]
還付金ファクタリングサーバ10は、ユーザに返還される所定の還付金に係る債権を買い取り、当該ユーザに対して、所定の買取金額を還付金の返還前に支払うための、本システム1の中核となる情報処理装置であり、本発明の還付金ファクタリングシステムを構成している。
この還付金ファクタリングサーバ10は、本システム1に係る還付金ファクタリングサービスを提供する金融機関(普通銀行・信託銀行・信用金庫など)において設置・運営される、例えば1又は2以上のサーバコンピュータやパーソナルコンピュータ、クラウドコンピューティングサービス上に構築された1又は2以上の仮想サーバからなるサーバシステム等、所定のプログラム(ソフトウェア)が実装された情報処理装置によって構成することができる。
【0022】
また、還付金ファクタリングサーバ10には、図示しないOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)などが備えられ、サーバコンピュータとして運用されるようになっている。
そして、還付金ファクタリングサーバ10には、Webサーバプログラムなどのミドルウェア上で稼働するソフトウェアが実装されるようになっている。
このソフトウェアは、1又は2以上のユーザ端末30に対して、インターネット100等のネットワークを介して、例えばAPI(Application Programming Interface)という形で利用可能なアプリケーションを公開、提供する。
これにより、各ユーザ端末30では、還付金ファクタリングサーバ10から提供・提案される、例えば還付金の申告書類の登録処理や、還付金債権の買取金の振込通知の受信など、本システム1のサービスの提供を受けるために運用される専用のアプリケーションプログラムやウェブブラウザ等を呼び出してログインすることにより、本発明に係る還付金ファクタリングシステムの機能を実行させ使用することができるようになる。
【0023】
また、還付金ファクタリングサーバ10には、情報・データの記憶手段として実装される後述する所定の還付金ファクタリング記憶部20が備えられており、本発明に係る還付金ファクタリングシステムの運用に必要となる所定の情報が記憶・蓄積・管理・更新等されるようになっている。
この記憶手段には、各種の情報リソースとして、本システム1における管理対象となるユーザ(顧客・納税者)に関する所定情報、例えば、ユーザの識別情報・属性情報・口座情報・申告書類情報・債権情報・その他の情報を含む情報が記憶され、また、後述する各ユーザ端末30から所定の情報、例えば申告書類情報や個人情報などが送信・更新されると、本システム1の運用に伴って随時必要な情報が読み出されて、記憶手段の情報として追加・更新等されるようになっている。
【0024】
具体的には、還付金ファクタリング記憶部20には、申請情報データ21,債権管理データ22が記憶されるようになっており、本システム1における還付金ファクタリング処理に必要な所定のデータが記憶・管理されるようになっている。
そして、本実施形態に係る還付金ファクタリングサーバ10は、還付金ファクタリング記憶部20で記憶・管理されるデータに基づいて、図3に示すように、申告書類データ受信部11,申告書類データ送信部12,買取金額算出部13,債権買取部14,還付金回収部15の各部として機能するように構成され、各処理動作が実行されることで、本発明に係る還付金ファクタリングが実現できるになっている。
【0025】
なお、このように還付金ファクタリングサーバ10において記憶・蓄積・処理される情報は、例えば本システム1を利用する各金融機関が有する勘定系・情報系の情報処理システムとなる自前の金融機関システムや、複数の金融機関に対して勘定系・情報系の情報処理システムを提供する金融機関基幹システム(全銀システム・勘定系システム)から(図5参照)、日次処理等により定期的に抽出して、還付金ファクタリングサーバ10で取得,蓄積等することができる。
また、金融機関が連携できる自前の情報処理システムや外部の基幹システム等を有していない場合には、例えば手動で各種情報を還付金ファクタリングサーバ10に登録・蓄積することもできる。
【0026】
さらに、還付金ファクタリングサーバ10に蓄積された情報は、ネットワークを介して、他のプログラム(例えば銀行端末16・ユーザ端末30のアプリケーション等)において取得・参照できるようにすることも可能である。
例えば、還付金ファクタリングサーバ10に蓄積された情報を、ネットワークを介して、複数の金融機関の端末・情報処理装置のプログラムにおいて取得・参照することができれば、本システム1を利用する各金融機関は、納税者であるユーザの納税に関連した各種情報(例えば、年収・家族構成・社会保険料・生命保険料・医療費控除額・住宅ローンの有無とその金額など)を取得することができ、ユーザの収入やライフスタイル等を分析して、各ユーザに対するサービス提供やマーケティングのための情報として有効利用することが可能となる(図11参照)。
【0027】
[申告書類データ受信部]
申告書類データ受信部11は、所定の入力端末を介して入力される、納税者であり銀行顧客であるユーザの還付申告に必要となる還付申告データに基づいて生成された、所定の申告書類データを受信する処理を実行する。
この申告書類データ受信部11が、本発明に係る申告書類データ受信手段を構成する。
申告書類データ受信部11は、申告書類データを受信すると、後述する所定のデータのチェック処理を実行した上で、チェック済みのデータを記憶手段(還付金ファクタリング記憶部20)に記憶・登録する。
【0028】
具体的には、申告書類データ受信部11は、所定の入力端末として、ユーザが操作するユーザ端末30から送信される申告書類データを受信する。
この場合には、申告書類データは、ユーザの入力操作に応じて、ユーザ端末30において還付申告データに基づいて生成・送信されることになる。
また、申告書類データ受信部11は、所定の入力端末として、還付金ファクタリングサーバ10に接続された銀行端末16において入力・生成された申告書類データを受信することもできる。
【0029】
銀行端末16は、還付金ファクタリングサーバ10が設置・運用される銀行に備えられた入力端末・情報処理装置であり、申告書類データを含む各種データの入力・生成が行えるようになっている。
この場合には、申告書類データは、例えば銀行に来店したユーザが持参した紙ベースの還付申告書類などに基づいて、銀行の担当者・オペレータ等が銀行端末16に対して行う入力操作に応じて生成・送信されることになる。この場合、ユーザ端末30を構成するスマートフォンやPCの操作が苦手な例えば高齢者等のユーザや、確定申告の手続に不慣れなユーザの指示に従い、銀行の担当者等が申告書類データの入力を「代行」することによって、よりきめ細かい顧客サービスの提供が行えるようになる。また、銀行の担当者が税理士資格を保有する場合は、代理で申告書類データを作成することが可能である。
【0030】
なお、還付申告データ・還付申告書類に基づいて生成される申告書類データは、例えば外部システム50を構成する国税庁(税務署)が公開・提供しているインターネットサイト「e-Tax国税電子申告・納税システム」の「確定申告書等作成コーナー」や、市販の確定申告用ソフトウェア等を利用することで、ユーザ端末30や銀行端末16で容易に生成・保存等することができる。
また、申告書類データは、例えばユーザが予め税理士等に依頼して作成されたデータを、ユーザ端末30を介して送信し、あるいは、銀行に来店して銀行端末16を介して入力・送信等することも勿論可能である。
【0031】
そして、申告書類データ受信部11は、本システム1に受信・入力された申告書類データについて、所定のチェック処理として、還付金の受取口座として自行(当該銀行)の口座が指定されていることをシステムにより自動判定するチェック処理を行い、指定口座に誤りが無ければ、申告書類データ12を記憶手段(還付金ファクタリング記憶部20)に保存・登録する。
還付金ファクタリング記憶部20に登録された申告書類データは、申請情報データ21及び債権管理データ22として記憶・管理されるとともに、各申告書類データは、納税者単位で、後述する申告書類データ送信部12によって外部システム50に送信される。
【0032】
[申告書類データ送信部]
申告書類データ送信部12は、上述した申告書類データ受信部11を介して受信・登録された申告書類データを、還付金の還付処理を行う外部システム50に送信する処理を実行する。
この申告書類データ送信部12が、本発明に係る申告書類データ送信手段を構成する。
【0033】
具体的には、申告書類データ送信部12は、上述した申告書類データ受信部11で受信され、還付金ファクタリング記憶部20に登録された申告書類データを、インターネット100を介して、国税庁(税務署)が運営する外部システム50に対して送信する。
これによって、還付申告を行おうとするユーザに代わって、本システム1を運用する銀行が代理送信を行うことができ、銀行の顧客サービスとして提供できるようになる。
【0034】
[買取金額算出部]
買取金額算出部13は、外部システム50に送信される申告書類データに基づいて、ユーザに返還される還付金の金額と、当該還付金に係る債権の買取金額を算出する買取金額算出する処理を実行する。
この買取金額算出部13が、本発明に係る買取金額算出手段を構成する。
【0035】
具体的には、買取金額算出部13は、まず、本システム1に受信・入力された申告書類データから、還付金の金額を算出する。
なお、申告書類データの基づく還付金額の算出は、上述した外部システム50を構成する国税庁(税務署)が提供しているインターネットサイトや市販のソフトウェア等を利用することで、算出・保存等することができる。
そして、買取金額算出部13は、申告書類データに基づいて算出された還付金額に対して、所定の手数料を差し引いた金額を買取金額として算出する。
【0036】
ここで、買取金額算出部13で算出される買取金額の手数料としては、例えば還付金額に所定の利率(例えば3%,10%など)を掛けたものや、一律に還付申告1件毎に所定の金額(例えば10,000円/申告など)とすることができる。
また、顧客であるユーザの当該銀行の取引実績(例えば預金残高・取引内容など)に応じて、手数料を優遇・変動させることもできる。
このような手数料の変動・優遇措置によって、本システム1を介した顧客サービスをよりきめ細かく提供できるようになる。
【0037】
[債権買取部]
債権買取部14は、
算出された前記買取金額が示す買取金を、前記ユーザの銀行口座に振り込む所定の債権買取処理を実行する。
この債権買取部14が、本発明に係る債権買取手段を構成する。
具体的には、債券買取部14は、上述した買取金額算出部13で算出された還付金額から手数料を差し引いた買取金額を、即金で納税者であるユーザの当該銀行の指定口座に振込(振替)・入金処理を実行する。
【0038】
ここで、本システム1では、債権買取部14は、申告書類データが上述した申告書類データ送信部12から外部システムに送信されると、そのタイミングで債権買取処理を実行することができる。
これによって、還付申告が行われる前に買取金額を支払ってしまうことを防止でき、また、例えば納税者であるユーザが他の銀行などにも同様の申告依頼などをする二重申告が行われることも有効に防止できるようになる。
【0039】
なお、債権買取部14で振り込まれる買取金額は、例えばユーザの指定等に応じて、任意の金額を、普通預金や定期預金など複数の口座に振り分けて入金することもできる。
また、買取金額の振込・入金処理が実行されると、本システム1から該当するユーザのユーザ端末30に対して、振込処理が完了したことや振込金額などを知らせる通知やアラート等を送信することもできる。
これによって、本システム1を介した顧客サービスをよりきめ細かく提供できるようになる。
【0040】
[還付金回収部]
還付金回収部15は、外部システム50からユーザの銀行口座に振り込まれる還付金を、当該銀行口座から回収する所定の回収処理を実行する。
この還付金回収部15が、本発明に係る還付金回収手段を構成する。
【0041】
具体的には、還付金回収部15は、外部システム50を介して国税庁(税務署)から確定申告の内容に基づく還付金が、顧客であるユーザの指定口座に振り込まれると、当該還付金をユーザの口座から当該銀行の所定の口座(例えば別段預金口座など)に振り替える。
これによって、本システム1を運営する銀行は、債券として買い取った還付金を確実に回収することができるようになる。
以上のような申告書類データ受信部11,申告書類データ送信部12,買取金額算出部13,債権買取部14,還付金回収部15の各部による具体的な処理動作については、図5図9を参照しつつ後述する。
【0042】
[還付金ファクタリング記憶部]
還付金ファクタリング記憶部20は、本システム1の管理対象となるユーザ(顧客・納税者)に関する所定情報、例えば、ユーザの識別情報・属性情報・口座情報・申告書類情報・債権情報・その他の情報を含む情報が、ユーザ単位・債権単位で記憶・管理される記憶手段である。
また、還付金ファクタリング記憶部には、インターネット100等のネットワークを介して各ユーザ端末30や外部システム50から所定の情報が入力・送信されて、それらの情報に応じてもデータが随時格納・更新される。
【0043】
還付金ファクタリング記憶部20に格納・管理される所定の情報としては、本システム1の管理対象となる、上記のような納税者の還付申告・債権買取に関する情報であり、具体的には、図3に示すように、申告情報データ21,債権管理データ22などの各種情報・データがある。
なお、以下に示す還付金ファクタリング記憶部20に記憶される情報は、本システム1において処理対象となる情報の一例であって、特に以下の情報のみに限定されるものではなく、本システム1として必要な情報を追加・削除・変更等することができることは言うまでもない。
【0044】
具体的には、還付金ファクタリング記憶部20の申請情報データ21,債権管理データ22を構成する情報・データとしては、図4に示すように、例えば以下のようなものがある(各データのサンプル・内容・備考については図4参照)。
【0045】
[申請情報データ]
申請情報データとしては、例えば納税者の識別情報(氏名・ID等)別に、以下のようなデータが、データベース方式で記憶・管理できるようになっている。
1.店番
2.科目
3.口座番号
4.申告年
5.給与所得
6.不動産所得
7.医療控除
8.寄付控除
9.住宅ローン控除
10.配偶者所得
【0046】
[債権管理データ]
債権管理情報データとしては、銀行と納税者の間で締結・生成された契約トランザクション別に、例えばスマートコントラクトによって、以下のようなデータがブロックチェーン方式で記憶・管理できるようになっている。
ここで、「スマートコントラクト」とは、対象となる契約・取引について、特定の条件が満たされた場合に、決められた処理が自動的に実行されるようにする、契約履行管理の自動化プログラムであり、ブロックチェーン上に記録された実効性のある取引・契約について、その発効などの条件をプログラムとして記述し履行管理を自動化することが可能となる。
1.契約内容
2.執行条件
3.口座情報
【0047】
以上のような、還付金ファクタリング記憶部20で記憶・管理されるデータに基づいて、上述した申告書類データ受信部11,申告書類データ送信部12,買取金額算出部13,債権買取部14,還付金回収部15による各処理動作が実行され、本システム1に係る還付金ファクタリングが実現されることになる。
【0048】
[ユーザ端末]
ユーザ端末30(30a~30n)は、インターネット100等のネットワークを介して還付金ファクタリングサーバ10に接続可能な、本システム1の納税者・銀行顧客となるユーザによって使用・操作される、例えばスマートフォンやノートPC,デスクトップPC,タブレット端末など、一又は二以上の情報処理装置によって構成することができる。
このようなユーザ端末30を介して、ユーザ端末30を使用するユーザ(納税者・銀行客)は、インターネット100を介して、還付金ファクタリングサーバ10にアクセスして、還付申告に必要な各種情報を送信/受信でき、還付金の買取金額や入金の有無などの通知を出力・表示させることができるようになる。
【0049】
[外部システム]
外部システム50は、インターネット100を介して還付金ファクタリングサーバ10に接続された、本システム1の還付申告の申告先であり、還付金の返還元となる、国税庁・税務署において設置・運営されるPCやサーバ群等によって構成される情報処理装置である。
この外部システム50を介して、例えば上述した国税庁(税務署)が公開・提供しているインターネットサイト「e-Tax国税電子申告・納税システム」や「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし所望の情報を閲覧することができ、還付申告に必要な情報を入手することができる。
そして、この外部システム50に対して、還付金ファクタリングサーバ10からアクセスすることにより、還付申告に必要となる申告書類データの提出・送信(代理送信)や、還付金の受領等が、ネットワークを介したオンラインで行えるようになる。
【0050】
[動作]
次に、以上のような本システム1における具体的な処理・動作(還付金ファクタリング方法の実施)について、図5図9を参照して説明する。
本システム1では、上述した還付金ファクタリングサーバ10の申告書類データ受信部11,申告書類データ送信部12,買取金額算出部13,債権買取部14,還付金回収部15における一連の処理動作が実行されることにより、以下に示すステップ(1)~ステップ(8)の処理が行われる(図5参照)。
これによって、納税者であり銀行顧客であるユーザに対する金融サービスとして、還付申告の代理送信・還付金の債権買取・還付金の回収等の還付金ファクタリングサービスを提供することができるようになる。
【0051】
(1)申告書類作成
本システム1に係る還付金ファクタリングは、申告書類の作成処理から開始する。
申告書類の作成は、図5及び図6に示すように、通常は、納税者自らが、自己が操作するユーザ端末30への入力操作に応じて申告書類データの作成が行われる。
具体的には、例えば国税庁が提供するe-Taxや民間の国税電子申告サービス(弥生会計、マネーフォワード等)を利用し、給与所得情報や保険料控除、医療費控除等の情報を入力して、電子申告書類データを作成し、ユーザ端末30等の記憶手段にファイル保存することで行われる。
【0052】
また、申告書類の作成は、納税者に代わって、例えば銀行に来店したユーザが持参した紙ベースの還付申告書類などに基づいて、銀行の担当者・オペレータ等が銀行端末16に対して行う入力操作に応じて、電子申告書類データを生成し、ユーザ端末30や銀行端末16に送信しファイル保存するようにしても良い。これによって、ユーザ端末30を構成するスマートフォンやPCの操作が苦手な例えば高齢者等のユーザや、確定申告の手続に不慣れなユーザに代わって、銀行側が顧客サービスの一環として申告書類データの入力・生成を行うことができるようになる。
【0053】
(2)申告書類登録+債権情報
上記ステップ(1)で生成された申告書類データは、銀行側の還付金ファクタリングサーバ10に送信され、申告書類情報及び債権情報として受信・登録される(申告書類データ受信部11)
具体的には、図5及び図6に示すように、納税者が操作するユーザ端末30(又は銀行端末16)を介して、ステップ(1)で作成された申告書類データのファイルが、例えば銀行側が提供・運営しているインターネットバンキングシステム等を介してアップロードされ、還付金ファクタリングサーバ10(還付金ファクタリング記憶部20)に受信・登録される。
図9(b)に、ユーザ端末30に表示される還付書類登録(アップロード)画面の出力イメージの一例を示す。同図に示すアップロード画面は、図9(a)に示す本システム1で提供されるアプリ(API)のホーム画面から、ユーザの入力操作に応じて、遷移・表示させることができ、還付書類の登録・アップロード処理を実行することができる。
【0054】
この申告書類データの登録・アップロード処理が実行されると、同時に、納税者が還付金受領債券を銀行へ譲渡する旨を同意したファクタリング契約を申し込む契約処理が実行される。
このファクタリング契約は、例えば納税者が操作するユーザ端末30のアプリ上において、又は訪問した銀行の店頭において、所定の契約同意を示すデータを生成・保存することで行われる。同時に、申告情報データ提供に関しても同意することのデータも生成され保存・登録される。
また、契約の同意データの登録については、上述のとおり、納税者が自らユーザ端末30を介してファイルをアップロードする場合だけでなく、例えば、銀行の窓口等で、営業員がシステム入力を「代行」して、電子申告書類とともに、契約同意データを入力・作成することも可能である。
【0055】
(3)-1申告内容チェック
上記ステップ(1)及び(2)を経て、申告書類データが銀行側の還付金ファクタリングサーバ10に入力・登録されると、登録されたデータが、還付金ファクタリングサーバ10において抽出・参照され、申告内容のチェック処理が実行される(申告書類データ受信部11)。
具体的には、申告内容のチェック処理は、図5及び図6に示すように、銀行が、申告書類データに示された還付金の受取口座として、還付金ファクタリングサーバ10を運営する当該銀行(自行)の口座が指定されていることを、システムにより自動確認することで行われる。
チェック処理で受取口座が自行の口座であれば、「OK」となり、後続のステップ(3)-2に進む。
【0056】
一方、チェック処理で、当該銀行以外の銀行(他行)の口座が指定されている場合には、システム上「NG」となり、例えばアラートやエラー表示等が生成・出力され、その旨を示す通知等が、還付金ファクタリングサーバ10から該当する納税者のユーザ端末30に送信され、申告書類データが差し戻される。
なお、本システム1では、還付金の受取口座のみをチェック処理の対象とし、例えば、申告内容そのものの誤りに関しては、チェック処理の対象外としている。ステップ(1)における納税者の入力ミスは、銀行側は免責されるためであり、また、銀行側のチェック処理負担を軽減するためである。
但し、本システム1において、申告書類データの申告内容自体についても、チェック処理の対象とすることも勿論可能である。
【0057】
(3)-2データ保存
上記ステップ(3)-1で、申告内容のチェック処理で「OK」となると、申告書類データが還付金ファクタリングサーバ10(還付金ファクタリング記憶部20)に保存・登録される。
具体的には、図5及び図6に示すように、還付金ファクタリング記憶部20に登録される申告書類データとしては、例えば、銀行の顧客となる各納税者の、源泉徴収票や保険料控除申告書に記載された申告情報、還付金受領債券管理情報がデータベースに保存される(申告情報データ21)。
また、債券については、ブロックチェーン基盤上で管理される(債権管理データ22)。
例えば、本システム1(還付金ファクタリング記憶部20)では、債権管理データ22を、上述したスマートコントラクトプログラムによって管理することができる。
【0058】
なお、債権管理については、本サービスのブロックチェーン基盤だけでなく、銀行各社が保持する既存の電子記録債権(でんさい)管理システムの選択も可能とする。
ここで、「電子記録債権・でんさい」(登録商標)とは、株式会社全銀電子債権ネットワーク(通称「でんさいネット」(登録商標))が取り扱う電子記録債権であり、手形・指名債権(売掛債権等)の問題点を克服した金銭債権である。
【0059】
(4)申告書類代理送信
上記のように還付金ファクタリング記憶部20に登録された申告書類データを、本システム1から還付金の還付処理を行う外部システム50に送信される(申告書類データ送信部12)。
具体的には、図5及び図7に示すように、本システム1では、銀国の顧客となる納税者が作成・登録した電子申告書類を、例えば税理士がe-Taxによって代理送信(通常の税理士業務)することができる。
なお、申告書類データの送信は、例えば、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)技術により自動送信することができ、また、税理士やオピニオン等の入力操作に応じて送信することができる。
【0060】
また、例えば電子申告書類は、紙に印刷して税務署で代理提出を行うことも可能であり、この場合には、上述したステップ(2)において、銀行窓口等で予め納税者から委任状を受領することができる。
さらに、例えばe-Tax(API)を利用して、本システム1自体に電子申告機能を搭載・設置することも可能であり、その場合には、税理士を介さず、納税者自らが納税を行うこともできる(但し、対応様式に制限あり)。
【0061】
(5)即金振込
申告書類データが送信されると、本システム1では、当該申告書類データに基づいて、銀行顧客となる納税者に対して返還される還付金の金額と、当該還付金に係る債権の買取金額が算出されるとともに(買取金額算出部13)、算出された買取金額の買取金が、当該銀行(自行)が保有する納税者の受取口座に振り込まれる(債権買取部14)。
具体的には、本システム1では、図5及び図7に示すように、申告書類の還付金額から所定の手数料を差し引いた額を、即金で納税者の口座に振り込む振込(口座振替)処理が実行される。
この納税者への振込処理が実行されると、その口座振替処理に係る所定の情報が、本システム1から、上述した金融機関基幹システム(全銀システム・勘定系システム)に送信され、金融機関基幹システムの情報が更新される(図5参照)。
【0062】
ここで、納税者への振込額は、還付金額を上限として、所定の手数料を差し引いた金額が振り込まれる他、例えば、納税者が任意の金額を指定して振込処理を実行することもできる。
また、所定の手数料は、銀行(やグループ会社)が発行するポイントを優先して充当することもできる。例えば、所定の手数料を差し引く処理を実行する際、まず対象ユーザが保有するポイントの有無を確認する処理を実施し、ポイントがあれば優先して利用する処理を実施するようにしても良い。これによって、対象ユーザは、例えば取引実績に応じて銀行等から付与されたポイントやキャンペーン等で付与されたポイントを、還付金の買取手数料として利用することができるようになる。
また、振込は、現金だけでなく、例えば自行(やグループ会社等)が発行するポイントで還元することも可能である。
図9(c)に、ユーザ端末30に表示される還付金(買取金)の金額とその詳細・内訳等を示す画面の出力イメージの一例を示す。同図に示す還付金の詳細画面は、図9(a)に示す本システム1で提供されるアプリ(API)のホーム画面から、ユーザの入力操作に応じて、遷移・表示させることができ。
【0063】
(6)還付金振込
申告書類データが国税庁・税務署(外部システム50)で受理され還付処理が実行されると、所定の還付金が、納税者が指定する当該銀行の口座に振り込まれる。
具体的には、図5及び図7に示すように、税務署の担当者が、提出・受理された確定申告の内容に基づき、還付金を指定口座に振り込む振込処理が行われる(通常の還付処理)。
この納税者への還付金振込処理は、上述した金融機関基幹システム(全銀システム・勘定系システム)を介して、外部システム50から還付金ファクタリングサーバ10に所定情報が送信されて実行される(図5参照)。
【0064】
(7)還付金回収
上記ステップ(6)により外部システム50(税務署)からユーザの銀行口座に還付金が振り込まれると、本システム1では、振り込まれた還付金を、当該銀行口座から回収する所定の回収処理(銀行の所定口座への振替処理)が実行される(還付金回収部15)。
具体的には、銀行は、図5及び図8に示すように、上述したステップ(6)の還付金振込処理をトリガーとして、ステップ(2)で譲渡を受けた権利を行使して、自行の口座へ振替処理を実行する。これによって、銀行は、納税者から買い取った還付金の債権を確実に回収することができるようになる。
なお、例えば納税者の虚偽の申告や本サービス外からの二重申告等、還付金が一定期間経過しても振り込まれないような場合には、銀行は、納税者の違反行為としてファクタリング契約を解消(返金要求等を個別に実施)することができる。
【0065】
(8)申告情報閲覧
さらに、以上のようにして還付金の申告・買取・回収処理が実行された銀行では、本システム1において、所定の申告情報の閲覧処理を実行することができる。
具体的には、図5及び図8に示すように、本システム1を利用する銀行は、例えば、還付金ファクタリング記憶部20に保存される申告情報データ21,債権管理データ22から、例えば年収情報や保険契約情報、住宅ローン契約情報等について、銀行の営業担当等が銀行端末16等を操作することで、所望の情報を出力・表示させて閲覧し、必要なデータを分析して顧客サービスや営業活動に活用することができる。
【0066】
図10に、そのような本システム1を利用する銀行側に提供されるユーザ情報の出力・表示画面の一例を示す。
なお、銀行側で出力・閲覧等できるユーザ情報としては、本システム1を利用する銀行各社のセキュリ要件等に応じて、生データではなく、匿名加工等のデータ変換処理を予め施すことも可能である。
【0067】
[本システムに基づくプラットフォームサービスの展開]
以上のような本システム1によれば、本システム1を基盤とした更なる発展型・応用型の金融サービスシステムを構築することもできる。
図11に、本システム1を基盤として発展させた応用型の金融プラットフォームサービス(Embedded Tax Platform)の概要を示す。
同図に示すように、上述した本システム1を更に応用・発展させることで、例えば、顧客・ユーザである納税者に対して還付金ファクタリングサービスを提供する銀行等に対して、税務機能・ファクタリング機能・CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)機能を統合した、金融プラットフォームサービスを提供することが可能となる。
すなわち、このような統合プラットフォームによれば、上述した還付金ファクタリングは、銀行から納税者へのサービスとして提供され、かつ、Embedded Tax Platformは、本システム1を提供するソフトウェアベンダーや、複数の企業等のデータシステムの運用を業務として請け負う情報システム企業(システム・インテグレータ)から銀行側に提供されるサービスとして実現することができる。これによって、個々の銀行A,銀行B・・・で、それぞれ個別にシステムを構築するのではなく、還付金ファクタリングサービスの提供に必要となる機能を、モジュールとしてEmbedded Tax Platformとして整備することで、銀行各行の既存金融サービスに組み込むだけで、効率的に還付金ファクタリングサービスを提供することが可能になる。
【0068】
[税務機能]
・申告書類登録
・委任状管理
・還付金計算
・電子申告システム連携
[要素技術]
・マイナポータル接続
【0069】
[ファクタリング機能]
・債権管理
・還付金入金通知
・権利行使
・勘定系システム連携
[要素技術]
・ブロックチェーン技術
【0070】
[CDP機能]
・データ取得同意
・データ加工(匿名化)
・データ蓄積
・マーケティング基盤連携
[要素技術]
・匿名加工/秘密計算
【0071】
このように、本システム1を利用したプラットフォームサービスでは、銀行が提供する新サービスとして、予め納税者から同意を得てマーケティング等にデータを活用することができる。
なお、口座情報等により、マイナンバーとは別のID等でデータを管理することで、個人情報保護法に準拠し、より安全な状態でデータ管理を行うことができる。
【0072】
以上説明したように、本発明に係る還付金ファクタリングシステム1によれば、還付申告を行うユーザに返還される還付金を、ユーザが受取口座を開設している銀行が債権として買い取ることで、当該銀行の顧客であるユーザに対して、所定の買取金額を還付金の返還前に即時に支払うことができるようになる。
これによって、ユーザは、還付申告から還付金の返還までのタイムラグを解消して早期に還付金の資金化・現金化が可能となり、銀行側も、顧客への提供サービス・顧客囲い込み・メインバンク化の一環として、本システム1を有効活用することができる。
【0073】
また、本システム1では、ユーザに対して還付金相当額の買取金をリアルタイムに付与・支払できるとともに、後日の還付金の返還によって、銀行側は確実な債権回収が担保されることから、安心・安全な金融サービスを提供できるようになる。
したがって、本システム1によれば、例えば金融機関、特に、銀行や銀行代理業者等が提供する金融サービスやプラットフォームサービスなどに好適な還付金ファクタリングシステムを実現することができる。
【0074】
以上、本発明について好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、本発明の還付金ファクタリングの対象として、確定申告(還付申告)によって還付される所得税の還付金を例にとって説明したが、本発明の還付金ファクタリングの対象としては、特に所得税の還付金のみに限定されず、例えば、類似の給付金等を対象とすることもでき、その他の技術的応用・発展も可能である。
【0075】
例えば、本発明は、以下のようなプラットフォームサービス等への技術的な応用・発展・展開も期待できる。
1.公的給付金等への応用
還付金に限らず、その他の公的給付金、例えば教育訓練給付・傷病手当・児童手当・介護手当等についても、本発明を適用した技術的な展開が可能である。
但し、代理提出に限定が存在したり、年金のように担保にしたりすることが法律で禁止されているものもあることに留意すべきである。
また、対応については、得られるデータの価値から逆算して優先順位を付けて対応することが望ましい。
【0076】
2.法人ビジネスへの展開
法人税の還付についても、中小企業や個人事業主を中心に、同様のスキームで、本発明に基づくサービス展開が可能である。
法人ファクタリングの場合は、データ利活用やマーケティングの観点での価値は低い一方、申告時の財務諸表データを活用し、法人融資へのドアノック商品として、本発明に基づくサービスの利用が期待できる。
【0077】
3.債権のデジタル証券化
サービス利用が拡大した際には、ファクタリングだけでなく、ブロックチェーン技術を活用して、例えば債権のトークン化によるデジタル証券の発行も可能となる。
この場合、需要サイドである納税者だけでなく、供給サイドである投資家についても、本発明に基づくプラットフォームへの取り込みや、銀行との関係強化等を図ることができるようになる。
【0078】
以上のようにして、本発明を適用することで、早期かつ確実なファクタリング及び債権回収等のニーズのある各種ビジネス等に、最適なサービス提供等を実現することが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、例えば確定申告(還付申告)を行うことで納税者に返還される還付金について、必要となる還付手続や還付金の受け取りを支援するための還付金ファクタリングシステムとして好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 還付金ファクタリングシステム
10 還付金ファクタリングサーバ(銀行)
11 申告書類データ受信部
12 申告書類データ送信部
13 買取金額算出部
14 債権買取部
15 還付金回収部
16 銀行端末
20 還付金ファクタリング記憶部
21 申請情報データ
22 債権管理データ
30 ユーザ端末(納税者)
50 外部システム(国税庁・税務署)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12