(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058746
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】耐雪フェンス
(51)【国際特許分類】
E04H 17/02 20060101AFI20240422BHJP
E04H 17/16 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
E04H17/02
E04H17/16 105Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166032
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】591168312
【氏名又は名称】中村建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500407651
【氏名又は名称】株式会社ビーセーフ
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】新宮 正盛
(72)【発明者】
【氏名】金田 学
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 正人
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 秀士
【テーマコード(参考)】
2E142
【Fターム(参考)】
2E142AA01
2E142BB01
2E142CC12
2E142HH03
2E142MM00
(57)【要約】
【課題】積雪による荷重負荷を有利に軽減乃至は分散することの出来る耐雪フェンス構造を提供する。
【解決手段】耐雪フェンス10の上部胴縁18aをワイヤロープにて構成し、且つ各支柱14に、上部胴縁18aから上方に延びる延長部14aを形成すると共に、それら延長部14aの上部間を連結するように積雪対策ロープ22を配設し、そして隣接する支柱14間の中間部に位置する積雪対策ロープ22の所定長さ部分を、上部胴縁18aを構成するワイヤロープに対してワイヤグリップ32を用いて一体的に取り付けて、一体的連結部24を構成し、一体的連結部24の両端から支柱14の延長部14aの上部に向かって延びる積雪対策ロープ22部分が、所定角度で上方に傾斜する傾斜部26として張設することで、一体的連結部24とその両側に位置する傾斜部26にて平底の深皿形状を呈するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に立設されてなる形態にて、所定距離を隔てて連設された複数の支柱と、それら複数の支柱の上部間及び下部間をそれぞれ連結する上部胴縁及び下部胴縁と、それら上部胴縁と下部胴縁との間及び前記複数の支柱間に張設されたネット部材とを有する耐雪フェンスにして、
前記上部胴縁がワイヤロープにて構成され、且つ前記複数の支柱にそれぞれ前記上部胴縁から上方に延びる延長部が形成されていると共に、それら支柱の延長部の上部間を連結するように積雪対策ロープが配設され、そして隣接する前記支柱間の中間部に位置する該積雪対策ロープの所定長さ部分が、前記上部胴縁を構成するワイヤロープに対して一体的に取り付けられて、一体的連結部を構成しており、更に該一体的連結部の両端から対応する支柱の前記延長部の上部に向かってそれぞれ延びる該積雪対策ロープ部分が、所定角度で上方に傾斜する傾斜部として張設されて、該一体的連結部とその両側に位置する該傾斜部とによって平底の深皿形状を呈していることを特徴とする耐雪フェンス。
【請求項2】
前記積雪対策ロープと前記上部胴縁との一体的連結部が、隣接する前記支柱間の間隔の1/4~1/3の長さにおいて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐雪フェンス。
【請求項3】
前記支柱の延長部に対する前記積雪対策ロープの取付位置が、前記上部胴縁から、隣接する前記支柱間の間隔の少なくとも1/5の長さに相当する高さにおいて、設けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐雪フェンス。
【請求項4】
前記積雪対策ロープと前記上部胴縁との一体的連結部の両端からそれぞれ対応する支柱までの距離が、等距離とされていることを特徴とする請求項1に記載の耐雪フェンス。
【請求項5】
前記積雪対策ロープが、前記支柱の両側において、前記平底の深皿形状を呈するように構成されていると共に、該支柱の延長部の上部に取り付けられる支柱両側の積雪対策ロープの前記傾斜部が、同一の角度において、それぞれの前記一体的連結部の端部から上傾していることを特徴とする請求項1に記載の耐雪フェンス。
【請求項6】
前記積雪対策ロープが、5~20mmのロープ径を有するワイヤロープであることを特徴とする請求項1に記載の耐雪フェンス。
【請求項7】
前記支柱の延長部の上部に対して、それに直交する方向の貫通孔が設けられて、該貫通孔にガイドパイプが挿通されていると共に、該ガイドパイプ内に、前記積雪対策ロープが挿通されることによって、該積雪対策ロープが前記支柱の延長部の上部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐雪フェンス。
【請求項8】
前記ガイドパイプが、上方に凸なる湾曲形状において、配設されていることを特徴とする請求項7に記載の耐雪フェンス。
【請求項9】
前記複数の支柱の延長部間に、複数本の線状部材が、上下方向に所定間隔を隔てて互いに平行に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の耐雪フェンス。
【請求項10】
前記線状部材が、前記積雪対策ロープに対して、上下方向において重ならないように位置せしめられていることを特徴とする請求項9に記載の耐雪フェンス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪地域において好適に設置される耐雪フェンスに係り、特に、積雪の重みによってフェンスが変形するのを有利に抑制乃至は阻止し得るようにした構造の耐雪フェンスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地面に立設されてなる形態において、所定距離を隔てて連設された複数の支柱と、それら複数の支柱間に位置するように張設された、金網等のネット部材とを含んでなる構成のフェンスが、地面の所定の領域を他の領域から仕切るための手段として用いられてきており、例えば、高速道路等の敷地内に、関係者以外の人間や動物等が立ち入るのを防止して、交通の安全を確保することや、道路敷地等が不法に占拠されることを未然に防止すること等を目的とした、立ち入り防止柵(立ち入り防止用フェンス)の他、耕作地の敷地境界上に設置されて、境界を明確化したり、野生動物が侵入するのを防止するためのフェンス、更には落石、雪崩、崩落土砂等を対象とした防護柵や、住宅、工場、運動場等の外柵等が、知られている。そして、それらの一例が、特開2016-199849号公報、実開昭60-184955号公報、特許第4629806号公報等においても、明らかにされている。
【0003】
ところで、そのようなフェンスが雪国等の積雪地域に設置されて、多量の雪が降り積もったりした場合において、その積もった雪は、自重にて沈降するようになるが、フェンスには、その沈降荷重(沈降力)が作用することとなり、これによって、支柱間に張架された胴縁が屈曲したり、更には、支柱が変形したりする等の問題があり、甚だしい場合にあっては、フェンス全体が破損する等の問題を内在している。
【0004】
このため、特開2001-342751号公報においては、金網の胴縁に、ヒートパイプの放熱部を這わせたことを特徴とする耐雪フェンスが提案されているが、ヒートパイプの設置には、多くの費用がかかることに加えて、ヒートパイプによる融雪作用では、降雪量が多くなるに従い、その機能乃至は特徴を充分に発揮させることが困難となって、フェンスの変形等の問題は、依然として内在している。
【0005】
また、特開2003-314092号公報には、フェンス体とそれを支持する支柱とを有する積雪地用フェンスにおいて、かかるフェンス体を上下方向移動可能に支柱に支持させ、フェンス体への荷重増加に伴いフェンス体を支柱に対して下降可能としたり、或いはフェンス体を上下方向可撓可能に構成し、フェンス体を弾性体により上方向に付勢して、支柱に支持させるようにした構造が提案され、これによって、積雪による沈降荷重が吸収され得るとされている。しかしながら、フェンス体を上下方向に移動可能としたり、弾性体(バネ)にて上方向に付勢したりしても、フェンス体の上下方向の移動量には限度があり、その下限に達した後は、従来と同様な沈降荷重が作用するようになるところから、胴縁、更には支柱の曲がりや変形等が惹起される問題は、依然として内在しており、更に、多数の弾性体(バネ)を配設することとなるために、設置コストが増大する等の問題も内在しているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-199849号公報
【特許文献2】実開昭60-184955号公報
【特許文献3】特許第4629806号公報
【特許文献4】特開2001-342751号公報
【特許文献5】特開2003-314092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、積雪による荷重負荷を有利に軽減乃至は分散することの出来る耐雪フェンス構造を提供することにあり、また、他の課題とするところは、積雪量が大量となっても、その沈降荷重による胴縁や支柱の曲がり乃至は変形、更にはフェンスの損傷を効果的に抑制乃至は回避し得る構造の耐雪フェンスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は、上述した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載及び図面に開示の技術思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
そこで、本発明は、先ず、前記した課題を解決するために、地面に立設されてなる形態にて、所定距離を隔てて連設された複数の支柱と、それら複数の支柱の上部間及び下部間をそれぞれ連結する上部胴縁及び下部胴縁と、それら上部胴縁と下部胴縁との間及び前記複数の支柱間に張設されたネット部材とを有する耐雪フェンスにして、前記上部胴縁がワイヤロープにて構成され、且つ前記複数の支柱にそれぞれ前記上部胴縁から上方に延びる延長部が形成されていると共に、それら支柱の延長部の上部間を連結するように積雪対策ロープが配設され、そして隣接する前記支柱間の中間部に位置する該積雪対策ロープの所定長さ部分が、前記上部胴縁を構成するワイヤロープに対して一体的に取り付けられて、一体的連結部を構成しており、更に該一体的連結部の両端から対応する支柱の前記延長部の上部に向かってそれぞれ延びる該積雪対策ロープ部分が、所定角度で上方に傾斜する傾斜部として張設されて、該一体的連結部とその両側に位置する該傾斜部とによって平底の深皿形状を呈していることを特徴とする耐雪フェンスを、その要旨とするものである。
【0010】
なお、かくの如き本発明に従う耐雪フェンスの好ましい態様の一つによれば、前記積雪対策ロープと前記上部胴縁との一体的連結部が、隣接する前記支柱間の間隔の1/4~1/3の長さにおいて形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に従う耐雪フェンスの好ましい態様の他の一つによれば、前記支柱の延長部に対する前記積雪対策ロープの取付位置が、前記上部胴縁から、隣接する前記支柱間の間隔の少なくとも1/5の長さに相当する高さにおいて、設けられていることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明に従う耐雪フェンスの好ましい態様の別の一つによれば、前記積雪対策ロープと前記上部胴縁との一体的連結部の両端からそれぞれ対応する支柱までの距離が、等距離とされていることを特徴とするものである。
【0013】
更にまた、本発明にあっては、前記積雪対策ロープが、前記支柱の両側において、前記平底の深皿形状を呈するように構成されていると共に、該支柱の延長部の上部に取り付けられる支柱両側の積雪対策ロープの前記傾斜部が、同一の角度において、それぞれの前記一体的連結部の端部から上傾している構造が、有利に採用されることとなる。
【0014】
加えて、本発明に従う耐雪フェンスの好ましい態様の更に別の一つによれば、前記積雪対策ロープが、5~20mmのロープ径を有するワイヤロープであることを特徴としている。
【0015】
そして、本発明にあっては、望ましくは、前記支柱の延長部の上部に対して、それに直交する方向の貫通孔が設けられて、該貫通孔にガイドパイプが挿通されていると共に、該ガイドパイプ内に、前記積雪対策ロープが挿通されることによって、該積雪対策ロープが前記支柱の延長部の上部に取り付けられている構成が採用され、そこでは、ガイドパイプは、有利には、上方に凸なる湾曲形状において、配設されている構成が採用されることとなる。
【0016】
また、本発明にあっては、前記複数の支柱の隣接するものの延長部間に、複数本の線状部材が上下方向に所定間隔を隔てて配設されている構成を採用することも可能であり、そこでは、線状部材は、前記積雪対策ロープに対して、上下方向において重ならないように位置せしめられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
このような本発明に従う耐雪フェンスにおいては、複数の支柱の上部間を連結する上部胴縁をワイヤロープにて構成すると共に、かかるワイヤロープの上方に、積雪対策ロープを配設して、この積雪対策ロープの支柱間の中間部に位置する所定長さ部分を、上部胴縁を構成するワイヤロープに対して一体的に取り付けることにより、一体的な連結部を構成する一方、この一体的連結部の両端から対応する支柱に延びる積雪対策ロープ部分を、それぞれ、支柱の延長部の上部に取り付けて、上方に傾斜する傾斜部を形成し、それら一体的連結部とその両側の傾斜部とによって、平底の深皿形状を呈するように構成しているところから、積雪による沈降荷重の全てが、上部胴縁に作用することはなく、そのような沈降荷重は、一体的連結部とその両側に位置する傾斜部に分散乃至は分担して受け止められることとなり、更に、傾斜部に作用する沈降荷重分は、支柱(延長部)にて支持され、しかも支柱には、その両側において対称的な沈降荷重分が作用するようになるものであるところから、大きな沈降荷重がフェンスに作用しても、充分に堪え得るものとなるのであり、以て、上部胴縁や支柱、更にはフェンス全体の変形や損傷が、効果的に抑制乃至は回避され得ることとなるのである。
【0018】
しかも、本発明にあっては、各支柱にそれぞれ上方への延長部を設け、それら延長部を連結するように、積雪対策ロープを配設するようにしたものであるところから、積雪による沈降荷重対策としては、比較的簡単な構造となるものであると共に、従来の如きヒートパイプやフェンス体の上下方向移動構造乃至は多数の弾性体を配設する必要もないところから、設置費用も効果的に軽減せしめられ得ることとなるのであり、以て、実用的な耐雪フェンス構造が有利に提供され得たのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に従う耐雪フェンスの一例を示す正面部分説明図である。
【
図2】
図1に示される耐雪フェンスにおいて、支柱の延長部の上部に対する積雪対策ロープの取付け構造を示す、
図1のA部に相当する説明図であって、(a)は、その取付け部分の正面図であり、(b)は、その取付け部の縦断面図であり、(c)は、支柱延長部の縦断面部分図であり、(d)は、支柱延長部に対する積雪対策ロープの取付けに用いられるガイドパイプの縦断面説明図である。
【
図3】
図1に示される耐雪フェンスにおいて、上部胴縁を構成するワイヤロープと積雪対策ロープとを一体的に連結して、一体的連結部を構成するために用いられるワイヤグリップの分解説明図である。
【
図4】
図1に示される耐雪フェンスにおいて、支柱に対する上部胴縁(ワイヤロープ)の取付け構造の一例を示す説明図であって、(a)は、その正面部分説明図であり、(b)は、(a)におけるB-B断面説明図である。
【
図5】本発明に従う耐雪フェンスにおける積雪対策ロープの各部位の配設長さや配設角度及び支柱における延長部の長さや支柱間距離について説明するための線図である。
【
図6】本発明に従う耐雪フェンス構造を獣害防止柵に適用した例を示す説明図であって、(a)は、その正面説明図であり、(b)は、その支柱部分の平面形態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の構成を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0021】
先ず、
図1には、本発明に従う耐雪フェンスの一例について、3本の支柱を含むフェンスの一部が、正面視の形態において示されている。そこにおいて、耐雪フェンス10は、高速道路等の特定領域に関係者以外の人間や動物等が立ち入るのを防止し、交通の安全を確保することに加えて、道路敷地等が不法に占拠されることを未然に防止することを目的とする、立ち入り防止柵として用いられるものであって、所定距離を隔てて地面に配設された複数の基礎12と、それぞれの基礎12上に立設された複数の支柱14と、それら支柱14間に張設されたネット部材である金網16とを含んで、構成されている。
【0022】
具体的には、かかる耐雪フェンス10において、それぞれの基礎12は、よく知られているように、コンクリート製のブロック形状乃至は柱状体形状を呈するものであって、その上に一体的に立設される支柱14を確実に支持すべく、地中に所定深さに亘って埋設されてなる形態において、仕切るべき領域の境界に沿って、所定距離を隔てて、例えば2メートル程度の間隔を隔てて、配設されている。また、支柱14は、一般に、金属製、特に鉄乃至は鋼材質の長尺物であって、例えば、円筒形状や三角筒形状等の断面形状を呈するパイプ乃至は形材、若しくは折曲材が用いられ、ここでは、円筒状の鉄パイプが用いられている。さらに、それら複数の支柱14の上部間や下部間を連結するように、上部胴縁18a及び下部胴縁18bが、それぞれ固設されていると共に、それら支柱14の上部胴縁18aと下部胴縁18bとの間に位置する部分を3等分する位置に、2本の金属製ワイヤ(ロープ材)20が、横骨線として横架されてなる状態において、それら上部胴縁18aと下部胴縁18bとの間及び複数の支柱14,14間に跨がって、従来と同様な金属製の金網16が張設されて、基本的なフェンス構造が構成されている。
【0023】
ところで、そのようなフェンス構造において、上部胴縁18aは、雪が積もり易く、また積雪荷重乃至は沈降荷重を受け易いものであるところから、そのような荷重の受圧面積が大きくなる従来のL字状ブラケット(アングル部材)とは異なり、本発明においては、所定太さのワイヤロープにて構成され、このワイヤロープにて、複数の支柱14が相互に連結せしめられているのである。なお、この上部胴縁18aを構成するワイヤロープとしては、一般に5mm~20mm程度、好ましくは8mm~15mm程度のロープ径を有するものが、適宜に用いられることとなる。
【0024】
また、
図1に示される耐雪フェンス10においては、本発明に従って、複数の支柱14には、上部胴縁18aから更に上方に延びる延長部14aが、それぞれ形成されていると共に、それら支柱14の延長部14aの上部間を連結するように、積雪対策ロープ22が配設されているのである。そして、それぞれの隣接する支柱14,14間の中間部に位置する積雪対策ロープ22の所定長さ部分が、上部胴縁18aを構成するワイヤロープに対して一体的に取り付けられて、一体的連結部24が形成されていると共に、かかる一体的連結部24の両端から、対応する支柱14の延長部14aの上部に向かってそれぞれ延びる積雪対策ロープ22部分が、所定角度(α)で上方に傾斜する傾斜部26として張設されており、これによって、一体的連結部24とその両側に位置する傾斜部26,26とによって、側面視において、平底の深皿形状を呈する形態となるように、積雪対策ロープ22が配設されている。なお、このような積雪対策ロープ22としては、前記した上部胴縁を構成するワイヤロープと同様に、一般に5mm~20mm程度、好ましくは8mm~15mm程度のロープ径を有するものが、用いられることとなる。
【0025】
そして、積雪対策ロープ22は、ここでは、
図2に示されるようにして、各支柱14の延長部14aの上部に取り付けられているのである。即ち、
図2(c)に示される如く、支柱14の延長部14aには、その軸方向に直角な方向の貫通孔28が形成されており、この貫通孔28に対して、
図2(d)に示される如き、上方に凸なる湾曲形状を呈するガイドパイプ30が挿入されて、溶接等の適当な固着手段によって固定せしめられてなる状態下において、かかるガイドパイプ30内に、積雪対策ロープ22が挿通されることにより、
図2(a)及び(b)に示されるように、支柱14の延長部14aの上部に取り付けられるようになっているのである。
【0026】
さらに、かかる積雪対策ロープ22の所定長さ部分を、上部胴縁18aを構成するワイヤロープに一体的に取り付けるに際しては、公知の各種の連結手段が用いられ得るが、ここでは、JISにても規定されているワイヤグリップが有利に用いられ、その一例が、
図3に示されている。そこにおいて、ワイヤグリップ32は、よく知られているように、Uボルト32aと、ワイヤ保持本体32bと、ナット32cとから、構成されている。このようなワイヤグリップ32を用いて、そのUボルト32a内に積雪対策ロープ22と上部胴縁(ワイヤロープ)18aとを収容した状態において、Uボルト32aの両端のネジ部にナット32c,32cを螺入し、ワイヤ保持本体32bを移動させて締め付けることにより、2つのワイヤロープの固定が行われることとなるのである。そして、このようなワイヤグリップ32の複数個を用いて、積雪対策ロープ22と上部胴縁(ワイヤロープ)18aとが一体化せしめられることにより、一体的連結部24が、所定長さにおいて形成されることとなるのである。また、そのような一体的連結部24の両端から、それぞれ、対応する支柱14の延長部14aの上部に向かってそれぞれ延びる積雪対策ロープ22部分が、所定角度(α)で上方に傾斜する傾斜部26,26として張設されることとなるのであり、これによって、それら一体的連結部24とその両側に位置する傾斜部26,26とによって、側面視が平底の深皿形状を呈する形態において、積雪対策ロープ22が配設されることとなるのである。
【0027】
なお、上部胴縁18aの支柱14上部に対する取付けには、従来から採用されているワイヤの取付け乃至は支持(保持)構造が適宜に採用され得、例えば、
図4に示される如くして、上部胴縁18aの固定が行われることとなる。そこでは、締結部材34として、上記したワイヤグリップ32と同様なU字状ボルト34aとナット34bとからなる構造のものが用いられ、U字状ボルト34aが、その脚部を支柱14に貫通せしめてなる形態において、ナット34bが螺合せしめられることにより、U字状ボルト34a内に挿通された上部胴縁18aが、支柱14との間において、固定、保持せしめられ得るようになっている。
【0028】
ところで、かくの如き耐雪フェンス10において、積雪対策ロープ22と上部胴縁18aとの一体的連結部24の長さとしては、換言すれば
図5においてbとして示される長さとしては、一般に、隣接する支柱14,14の延長部14a,14a間の間隔:aの1/4~1/3の長さ(b=a/4~a/3)において選定され、これによって、積雪により作用する沈降荷重が、一体的連結部24によって上部胴縁18aに、そしてその左右に位置する傾斜部26,26にて両側の支柱(延長部14a)に、それぞれ効果的に分散乃至は分担せしめられ得るのである。
【0029】
また、かかる一体的連結部24は、隣接する支柱14,14から等距離(c)の間隔を隔てて設けられていることが望ましく、従って、一体的連結部24の両端から、それぞれ対応する支柱14までの距離:cが、
図5に示される如く、等距離となる構成が、有利に採用されることとなる。そして、支柱14(延長部14a)に取り付けられる積雪対策ロープ22が、支柱14の両側において、
図5に示される如く、同一の角度:αにて、それぞれの一体的連結部24の端部から上方に傾斜する傾斜部26,26を形成して、支柱14の延長部14aの上部に取り付けられるようにすることにより、降雪荷重の分担荷重が、支柱14に対して、その両側から均等に作用することとなり、これによって、そのような分担荷重による支柱14に対する悪影響も、有利に解消乃至は回避され得ることとなるのである。
【0030】
さらに、各支柱14の延長部14aに対する積雪対策ロープ22の取付け位置に関しても、上部胴縁18aから隣接する支柱14,14間の間隔:aの少なくとも1/5の長さに相当する長さ:hとなるように、即ち、不等式:h≧a/5を満足するように、積雪対策ロープ22の取付け位置が選定されることとなる。尤も、そのような積雪対策ロープ22の取付け位置の上限は、フェンス10の用途や支柱14の高さ等に応じて、適宜に選定されるところであって、例えば、
図1に示される如き立ち入り防止柵の場合にあっては、通常、a/3程度とされ、また
図6に示される如き獣害防止柵の場合にあっては、2a/3程度とされることとなる。
【0031】
このような構成の耐雪フェンス10によれば、降雪地域において、多量の雪が降り積もった場合において、その積雪による沈降荷重がフェンスに作用しても、積雪対策ロープ22が、上部胴縁18aとの間において、一体的連結部24とその両側の傾斜部26,26とによって平底の深皿形状を呈するように配設されていることにより、そのような沈降荷重は、上部胴縁18aと共に、積雪対策ロープ22の傾斜部26、ひいてはその上端が取り付けられる支柱14の延長部14aによって、分担して、支持されることとなるのであり、以て、そのような沈降荷重の分散により、上部胴縁の変形、ひいてはフェンス全体の変形の問題が、効果的に抑制乃至は回避され得ることとなるのである。
【0032】
なお、本発明に従う耐雪フェンス構造は、上述の如き立ち入り防止柵に好適に適用され得るのみならず、公知の各種の仕切りフェンスにも適用可能であり、例えば、獣害防止柵に適用した場合においては、
図6(a)及び(b)に示される如き構成が、採用されることとなる。
【0033】
かかる
図6に示される獣害防止柵40においては、支柱14の延長部14aが、前述の立ち入り防止柵(10)の場合よりも、より高くなるように構成されて、動物が飛び越えるのを阻止し得るようになっているのであり、そして、そのような長く延長せしめられてなる延長部14aの上部に対して、積雪対策ロープ22が取り付けられて、前記した実施形態と同様に、上部胴縁18aとの一体的連結部24とその両側に位置する傾斜部26,26とによって、側面視が平底の深皿形状を呈するように、配設されている。そして、支柱14の延長部14aには、更にその高さ方向に所定間隔を隔てて、例えば、20センチ間隔にて、線状部材としてのワイヤ42が、互いに平行に上下方向に配設されている。なお、積雪対策ロープ22とワイヤ42とは、
図6(b)に示される如く、互いに横方向にズレた位置に配置されて、上下方向において重ならないように位置せしめられている。このように、複数本のワイヤ42の併設によって、積雪対策ロープ22の配設形態に応じて形成される平底の深皿形状の上部空間を通じて動物が飛び越えるのが、有利に阻止され得るようになっているのである。
【0034】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものでないことが、理解されるべきである。
【0035】
例えば、例示の実施形態においては、複数の支柱14の延長部14aの上部に対する積雪対策ロープ22の取付けが、ガイドパイプ30を介して行われており、これによって、積雪対策ロープ22の擦れによる摩耗、更には破損等の問題が効果的に回避され得ているのであるが、そのような積雪対策ロープ22の支柱14(具体的は延長部14a)に対する取付けには、公知の各種の取付け構造が採用し得るものであることは、言うまでもないところである。
【0036】
また、上部胴縁18a(ワイヤロープ)の支柱14に対する取付け形態としては、例示の如く、支柱14の側面に対して取り付け、保持する形式の他、積雪対策ロープ22の取付け方式と同様に、支柱14に、その軸直角方向に貫通する貫通孔を設けて、その貫通孔に上部胴縁18aを挿通、保持させる方式を採用することも可能である。そして、そのような上部胴縁の支柱14に対する取付け構造にあっても、例示の如きUボルト34を用いた固定構造の他、支柱14の外周面に固定せしめてなるブラケットに、上部胴縁18aを支持、固定せしめる構造等の、公知の各種の保持・固定構造が採用可能である。
【0037】
さらに、積雪対策ロープ22と上部胴縁18aとを所定長さに亘って一体化して、一体的連結部24を形成するには、
図3に示される如き、入手の容易なワイヤグリップ32の複数を用いた固定構造が、有利に採用されるところであるが、これに限定されるものではなく、従来から公知の各種のワイヤ固定(連結)構造を採用することが可能である。
【0038】
加えて、複数の支柱14の下部に取り付けられて、それらを連結する下部胴縁18bとしては、従来と同様な胴縁部材を用いることが可能であるが、特に、本発明にあっては、上部胴縁18aと同様なワイヤロープが、好適に用いられることとなる。
【0039】
なお、例示の実施形態においては、ネット部材として金網16が用いられており、本発明においては、そのような金網16の使用が一般的ではあるが、隣接する支柱14,14間に張設乃至は架設される公知のものが、何れも、フェンスの使用目的に応じて適宜に採用可能であることは、言うまでもないところである。
【0040】
また、本発明の適用され得るフェンスとして、例示の実施形態では、立ち入り防止柵にや獣害防止柵について説明してきたが、それらに限定されるものではなく、落石、雪崩、崩落土砂等を対象とした防護柵や、住宅、工場、運動場等の外柵等の他のフェンスも、その対象とすることが可能である。
【0041】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることが、理解されるべきである。
【符号の説明】
【0042】
10 耐雪フェンス 12 基礎
14 支柱 14a 延長部
16 金網 18a 上部胴縁
18b 下部胴縁 20 金属製ワイヤ
22 積雪対策ロープ 24 一体的連結部
26 傾斜部 28 貫通孔
30 ガイドパイプ 32 ワイヤグリップ
32a Uボルト 32b ワイヤ保持本体
32c ナット 34 締結部材
34a U字状ボルト 34b ナット
40 獣害防止柵 42 ワイヤ