(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058751
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】超音波流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/667 20220101AFI20240422BHJP
G01F 1/66 20220101ALI20240422BHJP
【FI】
G01F1/667 Z
G01F1/66 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166039
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 裕基
(72)【発明者】
【氏名】大津 信一郎
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA08
2F035DA14
(57)【要約】
【課題】超音波信号により流量を測定する場合に、精度良く測定できるようにする。
【解決手段】超音波流量計1は、第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12と、ダンピング配管13と、ダンピング配管13の外側に配置される第1の超音波伝播体14及び第2の超音波伝播体15と、第1の超音波素子11と第2の超音波素子11との間で送受信する超音波信号に基づいて流量を測定する流量測定部44とを備えている。第1の超音波素子11と、第1の超音波伝播体14と、ダンピング配管13と、第2の超音波素子12と、第2の超音波伝播体15とは筐体52に収容されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる流体の流量を超音波信号により測定する超音波流量計であって、
超音波信号を送受信する第1の超音波素子と、
超音波信号を送受信する第2の超音波素子と、
流路を規定し、超音波信号を減衰するダンピング配管と、
前記ダンピング配管の外側に配置され、前記第1の超音波素子と前記ダンピング配管との間で超音波信号を伝播する第1の超音波伝播体と、
前記ダンピング配管の外側に配置され、前記第2の超音波素子と前記ダンピング配管との間で超音波信号を伝播する第2の超音波伝播体と、
前記第1の超音波素子と前記第2の超音波素子との間で送受信する超音波信号に基づいて前記ダンピング配管で規定される流路の流量を測定する流量測定部と、
前記第1の超音波素子と、前記第1の超音波伝播体と、前記ダンピング配管と、前記第2の超音波素子と、前記第2の超音波伝播体とを収容する筐体と、
外部配管の流路と前記ダンピング配管の流路とが連通するように、当該外部配管を接続するための接続部と、を備える超音波流量計。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波流量計において、
前記ダンピング配管は、超音波信号の減衰能を有する材料で構成され、
前記ダンピング配管と前記第1の超音波伝播体との間、及び前記ダンピング配管と前記第2の超音波伝播体との間には、音響結合材が介在している超音波流量計。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波流量計において、
前記ダンピング配管における超音波信号が通過する部分の内面及び外面は滑らかな面で構成されている超音波流量計。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波流量計において、
前記ダンピング配管の内径は、前記外部配管の内径よりも大きく設定されている超音波流量計。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波流量計において、
前記ダンピング配管と前記外部配管との間には、前記ダンピング配管に近づくほど内径が拡大する拡大流路が設けられている超音波流量計。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波流量計において、
前記ダンピング配管と前記接続部との間には、前記ダンピング配管の流路と前記外部配管の流路とを連通させる管路部材が設けられ、
前記拡大流路は、前記管路部材内に設けられている超音波流量計。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波流量計において、
前記ダンピング配管の流路を流れる流体の圧力を測定する圧力測定部をさらに備える超音波流量計。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波流量計において、
前記ダンピング配管と前記接続部との間に、前記ダンピング配管の流路に連通する連通路が設けられ、
前記圧力測定部は、前記連通路に臨むように設けられている超音波流量計。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波流量計において、
前記ダンピング配管と前記接続部との間には、前記ダンピング配管の流路と前記外部配管の流路とを連通させる管路部材が設けられ、
前記連通路は、前記管路部材の周壁を貫通する第1通路と、当該第1通路と連通し、前記圧力測定部に達するまで延びる第2通路とを含む超音波流量計。
【請求項10】
請求項1に記載の超音波流量計において、
前記接続部は、上流側に位置する前記外部配管の流路と前記ダンピング配管の流路の上流側とが連通するように、当該上流側の前記外部配管を接続するための上流側接続部と、下流側に位置する前記外部配管の流路と前記ダンピング配管の流路の下流側とが連通するように、当該下流側の前記外部配管を接続するための下流側接続部とを含む超音波流量計。
【請求項11】
請求項10に記載の超音波流量計において、
流体の流れ方向上流側から下流側に向かって、前記上流側接続部、前記ダンピング配管及び前記下流側接続部が順に同一直線上に位置するように配置されている超音波流量計。
【請求項12】
請求項11に記載の超音波流量計において、
前記ダンピング配管の上流側部分及び下流側部分が固定されるセンタブロックを備え、
前記センタブロックの上流側部分及び下流側部分には、前記上流側接続部及び下流側接続部がそれぞれ固定されている超音波流量計。
【請求項13】
請求項12に記載の超音波流量計において、
前記第1の超音波伝播体及び前記第2の超音波伝播体は、前記センタブロックに固定されている超音波流量計。
【請求項14】
請求項13に記載の超音波流量計において、
前記第1の超音波素子は、前記第1の超音波伝播体に固定され、
前記第2の超音波素子は、前記第2の超音波伝播体に固定されている超音波流量計。
【請求項15】
請求項12に記載の超音波流量計において、
前記ダンピング配管は、前記センタブロックを構成する材料よりも軟質な材料で構成されている超音波流量計。
【請求項16】
請求項1に記載の超音波流量計において、
前記ダンピング配管は、前記第1の超音波伝播体及び前記第2の超音波伝播体を構成する材料よりも軟質な材料で構成されている超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流路を流れる流体の流量を超音波信号により測定する超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
流路を流れる流体の流量を測定する測定機器として、一般的に、熱式のフローセンサが知られている。熱式のフローセンサは、流路内に配置される上流側ヒータと下流側ヒータとを備えており、流体が流れる時の上流側ヒータと下流側ヒータの温度分布の変化を検出し、その検出結果に基づいて流量を測定している。
【0003】
ところが、熱式のフローセンサは、偏流や乱流バタつきが生じると測定が安定しないため、ヒータの上流に整流板が必要になる。整流板を設けると圧力損失が発生するとともに、整流板に汚染物質が詰まり易く、更なる圧力損失の増大をもたらすことがある。また、熱式のフローセンサのヒータは汚れに弱く、壊れやすいという短所もある。
【0004】
一方、流路を流れる流体の流量を超音波信号によって測定する測定機器として、超音波流量計が知られている(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1の超音波流量計は、金属配管の外壁に対して着脱自在に取り付けられ、金属配管の外から気体の流量を測定するクランプオン型超音波流量計である。特許文献1のクランプオン型超音波流量計の測定原理は、いわゆる伝搬時間差式であり、金属配管内を流れる気体に対して斜めに超音波信号を通過させ、流れに沿った方向と流れに逆らった方向とで超音波信号の伝播時間差を測定し、この伝搬時間差から気体の流速・流量を算出する。
【0005】
また、特許文献2の超音波流量計は、対象流体が流れる流路を規定する測定流路部を備えている。この測定流路部の入口と出口とにそれぞれ配管が接続されており、入口に接続されている配管から測定流路部に流入した流体が当該測定流路部を流れる間に、当該測定流路部に取り付けられた超音波素子によってその流量が測定され、流量が測定された流体は、出口に接続された配管が流出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-109360号公報
【特許文献2】特開2016-223800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えばエアシリンダ等の空気圧システムでは、レギュレータで設定した空気圧を元に、エアシリンダの動作タイミング調整やブロー量の調整などをスピードコントローラや絞り弁の絞り量によって調整している。この空気圧システムの流路途中に流量計を配置すれば、空気圧システムの動作管理を流量に基づいて行うことができ、有効である。
【0008】
ところが、熱式のフローセンサを配置すると、上述した整流板による圧力損失の発生により、調整条件が変動していまい、再調整が必要になるとともに、経時的な詰まりによって高頻度の調整やメンテナンスが必要になってしまう。
【0009】
そこで、特許文献1のクランプオン型超音波流量計を用いれば、流路に整流板を配置せずに済むので、熱式のフローセンサを配置した場合のような問題は起こらないと考えられる。
【0010】
しかしながら、特許文献1のクランプオン型超音波流量計は、金属配管の共振現象を利用して信号を強化し、信号とノイズの比(S/N)を向上させることにより、流体流量の正確な測定を可能にしている。従って、金属配管に取り付けられることが前提となっており、空気圧システムで一般的に用いられている軟質樹脂製配管には適さない。
【0011】
また、特許文献1では、金属配管の外から流量測定用の超音波信号を送信することで内部を流れる液体の測定は可能であるが、空気圧システムのように対象流体が気体の場合、金属配管と気体との音響インピーダンスの差が大きいため、超音波信号の大半が金属配管と気体との界面で反射してしまい、信号強度を大きくできないという問題がある。
【0012】
これに対し、特許文献2の超音波流量計は、測定流路部に超音波素子が取り付けられているので、対象流体が気体であっても正確な流量を測定できる。しかしながら、超音波素子が気体に曝されることになるため、気体に含まれている汚染物質が超音波素子に付着し易く、経時的に測定精度が低下してしまう。
【0013】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、超音波信号により流量を測定する場合に、精度良く測定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、流路を流れる流体の流量を超音波信号により測定する超音波流量計を前提とすることができる。超音波流量計は、超音波信号を送受信する第1の超音波素子と、超音波信号を送受信する第2の超音波素子と、流路を規定し、超音波信号を減衰するダンピング配管と、前記ダンピング配管の外側に配置され、前記第1の超音波素子と前記ダンピング配管との間で超音波信号を伝播する第1の超音波伝播体と、前記ダンピング配管の外側に配置され、前記第2の超音波素子と前記ダンピング配管との間で超音波信号を伝播する第2の超音波伝播体と、前記第1の超音波素子と前記第2の超音波素子との間で送受信する超音波信号に基づいて前記ダンピング配管で規定される流路の流量を測定する流量測定部とを備えている。前記第1の超音波素子と、前記第1の超音波伝播体と、前記ダンピング配管と、前記第2の超音波素子と、前記第2の超音波伝播体とは筐体に収容されている。外部配管は、接続部を介して前記ダンピング配管の流路と連通させることができる。
【0015】
すなわち、超音波素子から送信された超音波信号は、超音波伝播体を介して流体に伝播することになるが、仮に、従来例のように超音波伝播体と流体との間の音響インピーダンスの差が大きいと、超音波伝播体と流体との界面での反射が大きくなり、超音波信号が流体に殆ど伝播せずに超音波伝播体に滞留してしまう。超音波伝播体に滞留した超音波信号は、筐体を通じて受信側素子まで回り込んで当該受信側素子で受信され、これがノイズ成分となり、S/Nを悪化させる要因となり得る。
【0016】
これに対し、本態様では、ダンピング配管が第1の超音波伝播体と流体との間、及び第2の超音波伝播体と流体との間に介在しているので、第1の超音波伝播体と流体との間の音響インピーダンスの差、及び第2の超音波伝播体と流体との間の音響インピーダンスの差が共に小さくなり、超音波信号の界面での反射が小さくなる。これにより、超音波信号が第1の超音波伝播体及び第2の超音波伝播体に滞留し難くなる。その結果、筐体を介して受信側の素子まで回り込む超音波信号が減少するので、ノイズ成分が小さくなってS/Nが改善され、流量測定部で測定される流量の測定精度が向上する。
【0017】
本開示の他の態様では、前記ダンピング配管は、超音波信号の減衰能を有する材料で構成することができ、このような材料としては、例えば、ナイロン、テフロン(登録商標)、ポリウレタン等を挙げることができる。前記ダンピング配管と前記第1の超音波伝播体との間、及び前記ダンピング配管と前記第2の超音波伝播体との間に音響結合剤を介在させることで、各超音波素子から送信された超音波信号がダンピング配管に伝達され易くなり、迷信号を抑制できる。
【0018】
また、ダンピング配管における超音波信号が通過する部分の内面及び外面は滑らかな面で構成されていてもよい。これにより、超音波信号の経路上に凹凸等を無くすことができ、ノイズ成分がより一層小さくなる。
【0019】
また、ダンピング配管の内径は、外部配管の内径よりも大きく設定されていてもよい。これにより、外部配管からダンピング配管に流入した流体の流速が低下するので、外部配管を高速で流れている流体であっても流量の測定が可能になる。
【0020】
また、ダンピング配管と外部配管との間に、ダンピング配管に近づくほど内径が拡大する拡大流路が設けられていてもよい。これにより、例えば、流体が外部配管からダンピング配管に流入する際や、ダンピング配管から外部配管に流入する際に、乱流の発生が抑制されるので、測定精度が向上する。
【0021】
また、ダンピング配管と接続部との間に管路部材を設けてもよく、この場合、拡大流路を管路部材内に設けることができる。
【0022】
また、ダンピング配管の流路を流れる流体の圧力を測定する圧力測定部をさらに備えていてもよい。この場合、ダンピング配管と接続部との間に、ダンピング配管の流路に連通する連通路を設けておき、圧力測定部を連通路に臨むように設けることができる。これにより、質量流量の測定が可能になる。
【0023】
また、接続部は、上流側の外部配管を接続するための上流側接続部と、下流側の外部配管を接続するための下流側接続部とを含んでいてもよい。この場合、流体の流れ方向上流側から下流側に向かって、上流側接続部、ダンピング配管及び下流側接続部が順に同一直線上に位置するように配置できる。
【0024】
また、ダンピング配管の上流側部分及び下流側部分が固定されるセンタブロックを備えていてもよい。この場合、センタブロックの上流側部分及び下流側部分に上流側接続部及び下流側接続部をそれぞれ固定し、第1の超音波伝播体及び第2の超音波伝播体もセンタブロックに固定できる。これにより、各部材の相対的な位置関係を高精度に設定できる。
【0025】
また、ダンピング配管は、センタブロックを構成する材料よりも軟質な材料で構成されていてもよいし、第1の超音波伝播体及び第2の超音波伝播体を構成する材料よりも軟質な材料で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、流体が流れる流路を規定するダンピング配管の外側に超音波伝播体を配置し、超音波信号を、超音波伝播体を介して流体に伝播させるようにしたので、超音波信号を利用して流量を測定する場合にノイズ成分を小さくして精度良く測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る超音波流量計の断面図である。
【
図2】筐体を省略した超音波流量計の斜視図である。
【
図3】シールドを省略した超音波流量計の斜視図である。
【
図5】第1の超音波素子から送信された超音波信号の伝播を説明する図であり、FIG.5Aは比較例であり、FIG.5Bは本発明である。
【
図6】受信された超音波信号の波形の一例を示す図である。
【
図7】実施形態の変形例1に係る
図4相当図である。
【
図8】実施形態の変形例2に係る
図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る超音波流量計1の断面図である。超音波流量計1は、例えば圧縮空気をはじめとした各種気体の流量測定が可能に構成されている。超音波流量計1は、図示しないが空気圧システムに組み込んで利用することができる。空気圧システムは、大きく分けて駆動系用途のシステムと、吐出系用途のシステムと、吸引系用のシステムとがある。駆動系用途のシステムは、例えばエアシリンダ、チャック、圧入器等のように圧縮空気の圧力を利用して部材に力を加えるシステムである。吐出系用途のシステムは、例えば、ブロー、パージ、塗料などのスプレー、着座、リークテスト等で用いられる。吸引系用途のシステムは、例えば、吸着、真空引き等で用いられる。
【0030】
空気圧システムには、コンプレッサで圧縮された圧縮空気が流れる配管が設けられている。配管には、スピードコントローラや絞り弁等が設けられており、レギュレータで設定した空気圧を元に、エアシリンダ等の動作タイミング調整やブロー量の調整などをスピードコントローラや絞り弁の絞り量によって調整している。本実施形態では、空気圧システムの配管の途中に超音波流量計1を設け、この超音波流量計1により、流路を流れる流体の流量を超音波信号により測定することで、空気圧システムの動作管理を流量に基づいて行えるようにしている。尚、超音波流量計1は、圧縮空気以外にも例えば窒素やアルゴン等の流量を測定することもできる。超音波流量計1が流量を測定する流体を、例えば対象流体、被測定流体と呼ぶこともできる。
【0031】
以下、超音波流量計1の具体的な構造について説明する。超音波流量計1は、上流側外部配管101と、下流側外部配管102との間に設けられる。上流側外部配管101は、超音波流量計1よりも上流側に位置する外部配管であり、また、下流側外部配管102は、超音波流量計1よりも下流側に位置する外部配管である。上流側外部配管101と下流側外部配管102とは同じ部材からなるものであり、例えばナイロン、テフロン、ポリウレタン等の柔軟性を有するとともに可撓性を有する材料で構成されている。尚、上流、下流は、説明の便宜を図るために定義するだけであり、実際の使用状態を限定するものではない。
【0032】
上流側外部配管101及び下流側外部配管102は、空気圧システムに設けられている配管の一部であり、圧縮空気は上流側外部配管101から下流側外部配管102へ流れるようになっている。超音波流量計1を空気圧システムに取り付ける際には、既存の配管の一部を切断した後、切断部よりも上流側を上流側外部配管101とし、切断部よりも下流側を下流側外部配管102として超音波流量計1を上流側外部配管101と下流側外部配管102との間に設置することが可能である。つまり、超音波流量計1は既存の配管を切断して設置することが可能である。尚、超音波流量計1は、空気圧システムの新設時に当該空気圧システムに組み込むこともできる。
【0033】
超音波流量計1は、第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12と、ダンピング配管13と、第1の超音波伝播体14及び第2の超音波伝播体15とを備えている。第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12は、共に超音波信号を送受信するものであり、例えば圧電素子等で構成されていて全体として板状をなしている。ダンピング配管13は、対象流体が流れる流路を規定するとともに、第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12から送信された超音波信号を減衰する部材からなる。具体的には、ダンピング配管13は、超音波信号の減衰能を有する材料として、例えばナイロン、テフロン、ポリウレタン等からなり、第1の超音波伝播体14及び第2の超音波伝播体15を構成する材料よりも軟質な材料で構成されている。
【0034】
ダンピング配管13における超音波信号が通過する部分の内面及び外面は、凹凸の無い、滑らかな面で構成されている。本実施形態では、ダンピング配管13の長さ方向全体にわたり、内面及び外面が滑らかな面となっているので、第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12から送信された超音波信号が狙い通りに伝達される。また、ダンピング配管13の流路には、流体の流れ方向と交差する方向に存在する部材(例えばメッシュ、フィルタ等)が設けられていない。つまり、ダンピング配管13は、上流端から下流端まで完全に貫通した流路を有する円管材で構成されている。また、ダンピング配管13の内面が滑らかな面で構成されていることから、ダンピング配管13の内面に汚れが溜まりにくくなる。尚、ダンピング配管13の外径は例えば3mm以上20mm以下の範囲で設定することができる。
【0035】
第1の超音波素子11は、ダンピング配管13の外側において径方向一方(
図1の上側)に位置している。第1の超音波伝播体14は、第1の超音波素子11とダンピング配管13との間で超音波信号を伝播するものであり、ダンピング配管13の外側において第1の超音波素子11とダンピング配管13との間に配置されている。第1の超音波伝播体14におけるダンピング配管13側の配管側面14aは、当該ダンピング配管13の管軸線Xと平行に延びる面で構成されている。第1の超音波伝播体14における第1の超音波素子11側の素子側面14bは、上流側へ行くほどダンピング配管13の管軸線Xから離れるように、当該管軸線Xに対して所定角度だけ傾斜している。
【0036】
したがって、第1の超音波伝播体14の配管側面14aと素子側面14bとの管軸線Xに対する角度が相違することになり、これにより、第1の超音波伝播体14は上流側へ行くほど厚み寸法が厚くなるくさび型となる。よって、第1の超音波伝播体14を第1のくさび材と呼ぶこともできる。第1の超音波伝播体14は、例えばポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等で構成することができる。
【0037】
第1の超音波素子11における超音波信号を送受信する送受信面11aは、平面で構成されている。第1の超音波伝播体14の素子側面14bには、第1の超音波素子11の送受信面11aが当接されている。このため、第1の超音波素子11の送受信面11aもダンピング配管13の管軸線Xに対して所定角度だけ傾斜することになる。
【0038】
ダンピング配管13と第1の超音波伝播体14との間には、音響結合材13cが介在している。ダンピング配管13の外面が音響結合材13cに接触し、さらに第1の超音波伝播体14の配管側面14aが音響結合材13cに接触している。音響結合材13cはダンピング配管13の一部を構成する部材であってもよいし、第1の超音波伝播体14の一部を構成する部材であってもよい。音響結合材13cは、例えばゴムやグリス等からなる粘弾性体で構成されている。音響結合材13cをゴム製とする場合には、架橋ゴム、例えばブチルゴム(イソブチエン・イソプレンゴム(IIR))、エチレン(エチレン-プロピレンゴム(EPDM))、ニトリルゴム(NBR)(アクリロニトリル・ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、ノルボルネンゴム(NOR)等で構成することができる。また、音響結合材13cをゴム製とする場合、予めシート状に成形されたものを用いることができる。
【0039】
第2の超音波素子12は、ダンピング配管13の外側において径方向他方(
図1の下側)に位置しており、第1の超音波素子11と第2の超音波素子12とはダンピング配管13を径方向に挟むように配置されている。第2の超音波伝播体15は、第2の超音波素子12とダンピング配管13との間で超音波信号を伝播するものであり、ダンピング配管13の外側において第2の超音波素子12とダンピング配管13との間に配置されている。したがって、対象流体の流量は、ダンピング配管13の流路を流れている時に測定される。ダンピング配管13と第2の超音波伝播体15との間にも、音響結合材13cが介在している。第2の超音波伝播体15は、第1の超音波伝播体14と同様な樹脂材で構成することができる。
【0040】
第2の超音波伝播体15におけるダンピング配管13側の配管側面15aは、当該ダンピング配管13の管軸線Xと平行に延びる面で構成されている。第2の超音波伝播体15における第2の超音波素子12側の素子側面15bは、下流側へ行くほどダンピング配管13の管軸線Xから離れるように、当該管軸線Xに対して所定角度だけ傾斜している。第2の超音波伝播体15の配管側面15aと、第1の超音波伝播体14の配管側面14aとは、互いに平行であり、また、第2の超音波伝播体15の素子側面15bと、第1の超音波伝播体14の素子側面14bとは、互いに平行である。
【0041】
したがって、第2の超音波伝播体15の配管側面15aと素子側面15bとの管軸線Xに対する角度が相違することになり、これにより、第1の超音波伝播体14とは反対に、第2の超音波伝播体15は下流側へ行くほど厚み寸法が厚くなるくさび型となる。よって、第2の超音波伝播体15を第2のくさび材と呼ぶこともできる。
【0042】
第2の超音波素子12における超音波信号を送受信する送受信面12aは、第1の超音波素子11と同様に、平面で構成されている。第2の超音波伝播体15の素子側面15bには、第2の超音波素子12の送受信面12aが当接されている。このため、第2の超音波素子12の送受信面12aもダンピング配管13の管軸線Xに対して所定角度だけ傾斜することになる。
【0043】
超音波流量計1は、対象流体の流れ方向に長い形状のセンタブロック2をさらに備えている。センタブロック2は、例えば金属や硬質樹脂等の高剛性な部材からなるものである。したがって、ダンピング配管13は、センタブロック2を構成する材料よりも軟質な材料で構成されていて、センタブロック2を構成する材料よりも超音波信号の減衰能が高くなっている。
【0044】
センタブロック2には、ダンピング配管13が差し込まれる差込孔20が流体の流れ方向に貫通するように形成されている。ダンピング配管13の上流側部分及び下流側部分は、差込孔20に差し込まれた状態でセンタブロック2に固定される。つまり、ダンピング配管13は超音波流量計1に内蔵された内蔵配管と呼ぶこともできる。
【0045】
また、第1の超音波伝播体14及び第2の超音波伝播体15も、センタブロック2に固定されている。そして、第1の超音波素子11は、第1の超音波伝播体14に固定され、第2の超音波素子12は、第2の超音波伝播体15に固定されている。
【0046】
具体的には、センタブロック2には、第1の超音波伝播体14のダンピング配管13側が差し込まれる第1開口部25が形成されている。
図3に示すように、第1の超音波伝播体14には、センタブロック2の外面に重ね合わされる第1フランジ部14cが形成されている。第1フランジ部14cには、第1ホルダ16が重ね合わされている。第1ホルダ16には、固定用のネジ(図示せず)が挿通するネジ挿通孔16aが形成されている。ネジ挿通孔16aに挿通されたネジは、第1の超音波伝播体14の第1フランジ部14cを貫通してセンタブロック2にねじ込まれる。これにより、第1の超音波伝播体14がセンタブロック2に締結固定される。また、
図1に示すように、第1の超音波素子11は第1ホルダ16により第1の超音波伝播体14に押さえ付けられている。
【0047】
また、センタブロック2には、第2の超音波伝播体15のダンピング配管13側が差し込まれる第2開口部26が形成されている。
図3に示すように、第2の超音波伝播体15には、センタブロック2の外面に重ね合わされる第2フランジ部15cが形成されている。第2フランジ部15cには、第2ホルダ17が重ね合わされている。第2ホルダ17には、固定用のネジ(図示せず)が挿通するネジ挿通孔(図示せず)が形成されている。従って、第1の超音波伝播体14と同様に、第2の超音波伝播体15をセンタブロック2に締結固定できる。また、
図1に示すように、第2の超音波素子12は第2ホルダ17により第2の超音波伝播体15に押さえ付けられている。
【0048】
超音波流量計1は、上流側接続部30及び下流側接続部31と、上流側管路部材32及び下流側管路部材33とをさらに備えている。流体の流れ方向上流側から下流側に向かって、上流側接続部30、上流側管路部材32、ダンピング配管13、下流側管路部材33及び下流側接続部31が順に同一直線上に位置するように配置されている。この直線は、ダンピング配管13の管軸線X及びその延長線からなる直線である。尚、上流側管路部材32及び下流側管路部材33は必要に応じて設けられるものであり、省略してもよい。
【0049】
ダンピング配管13の上流側部分及び下流側部分の外面には、それぞれOリングからなる上流側配管シール材13a及び下流側配管シール材13bが密着するように設けられている。上流側配管シール材13aは、差込孔20の上流側の内面に密着するようになっており、上流側配管シール材13aによってダンピング配管13の上流側部分と差込孔20との間がシールされるようになっている。また、下流側配管シール材13bは、差込孔20の下流側の内面に密着するようになっており、下流側配管シール材13bによってダンピング配管13の下流側部分と差込孔20との間がシールされるようになっている。
【0050】
図3及び
図4に示すように、センタブロック2の両側面には、側面開口部2bが形成されている。側面開口部2bは、センタブロック2の長手方向に長い形状とされている。側面開口部2bにより、差込孔20が側方に開放されることになる。したがって、ダンピング配管13の一部が側面開口部2bから見える状態になる。側面開口部2bからグリス13dを塗布することができる。グリス13dは、超音波信号を減衰させるグリスであり、センタブロック2とダンピング配管13との間に介在するように塗布する。これにより、センタブロック2に伝播する音波が減少し、ダンピング配管13内で音波をより一層減衰させることができる。
【0051】
上流側接続部30は、上流側外部配管101の流路とダンピング配管13の流路とが連通するように、上流側外部配管101を接続するための部材である。上流側接続部30の下流側の外周面には、例えばネジ山30aが形成されており、このネジ山30aをセンタブロック2の差込孔20の上流側の内周面に形成されているネジ溝20aに螺合させることで、上流側接続部30がセンタブロック2に対して気密に接続される。
【0052】
上流側接続部30は、いわゆるワンタッチフィッティング、チューブフィッティング等と呼ばれている接続構造を構成する部材であり、上流側外部配管101をワンタッチ操作、即ち、工具等を用いることなく、接続したり、その接続を解除することが可能なものである。上流側接続部30の構成は、上述した構成に限られるものではなく、各種フィッティング構造を採用することができる。また、上流側接続部30の形状も任意に設定することができる。
【0053】
下流側接続部31は、下流側外部配管102の流路とダンピング配管13の流路の下流側とが連通するように、下流側外部配管102を接続するための部材である。下流側接続部31は、上流側接続部30と同様に構成されており、下流側の外周面に形成されているネジ山31aをセンタブロック2の差込孔20の下流側の内周面に形成されているネジ溝20bに螺合させることで、下流側接続部31がセンタブロック2に対して気密に接続されるようになっている。つまり、本実施形態の接続部は、上流側接続部30と下流側接続部31とを含んでおり、センタブロック2の上流側部分及び下流側部分には、上流側接続部30及び下流側接続部31がそれぞれ固定されている。尚、上流側接続部30及び下流側接続部31は、ネジ以外の固定構造を用いてセンタブロック2に固定することも可能である。
【0054】
上流側管路部材32は、ダンピング配管13と上流側接続部30との間に設けられ、ダンピング配管13の流路と上流側外部配管101の流路とを連通させるための部材である。具体的には、上流側管路部材32は、円筒状をなしており、センタブロック2の差込孔20の上流側に差し込まれた状態で保持されている。上流側管路部材32の流路の上流側は、上流側接続部30の流路と連通し、また、上流側管路部材32の流路の下流側は、ダンピング配管13の流路と連通している。
【0055】
ここで、ダンピング配管13の内径は、上流側外部配管101の内径よりも大きく設定されている。これにより、上流側外部配管101からダンピング配管13に流入した流体の流速が低下するので、上流側外部配管101を高速で流れている流体であってもダンピング配管13内での流量の測定が可能になる。尚、図示しないが、ダンピング配管13の内径と、上流側外部配管101の内径とは同じであってもよいし、ダンピング配管13の内径が上流側外部配管101の内径より小さくてもよい。
【0056】
本実施形態では、ダンピング配管13の内径が上流側外部配管101の内径よりも大きく設定されているので、上流側管路部材32内の流路を、ダンピング配管13に近づくほど内径が拡大する拡大流路32aとしている。この拡大流路32aの上流端の内径は、上流側外部配管101の内径及び上流側接続部30の下流端の内径と略等しく設定されている。一方、拡大流路32aの下流端の内径は、ダンピング配管13の内径と略等しく設定されている。これにより、流体が上流側外部配管101からダンピング配管13に流入する際に、乱流の発生が抑制されるので、測定精度が向上する。
【0057】
下流側管路部材33は、ダンピング配管13と下流側接続部31との間に設けられ、ダンピング配管13の流路と下流側外部配管102の流路とを連通させるための部材である。具体的には、下流側管路部材33は、円筒状をなしており、センタブロック2の差込孔20の下流側に差し込まれた状態で保持されている。下流側管路部材33の流路の下流側は、下流側接続部31の流路と連通し、また、下流側管路部材32の流路の上流側は、ダンピング配管13の流路と連通している。
【0058】
下流側外部配管102と上流側外部配管101とは同じ部材であるため、ダンピング配管13の内径は、下流側外部配管102の内径よりも大きなものとなる。このことに対応するように、下流側管路部材33内の流路を、下流側管路部材32に近づくほど内径が縮小する縮小流路33aとしている。この縮小流路33aの上流端の内径は、ダンピング配管13の内径と略等しく設定される一方、縮小流路33aの下流端の内径は、下流側外部配管102の内径及び下流側接続部31の上流端の内径と略等しく設定されている。これにより、流体がダンピング配管13から下流側接続部31に流入する際に、乱流の発生が抑制される。
【0059】
超音波流量計1は、回路基板40を更に備えている。回路基板40は、第1の超音波素子11を覆うように配置されており、ダンピング配管13の管軸線Xと略平行に延びている。回路基板40には、第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12が接続されている。さらに、回路基板40には、ダンピング配管13の流路を流れる流体の圧力を測定する圧力測定部41と、制御部42とが実装されている。制御部42は、外部に設けられていてもよい。圧力測定部41は、流体の圧力を電気信号に変換して出力するように構成された圧力センサで構成されており、具体的には、ひずみゲージ等を用いることができる。
【0060】
圧力測定部41の配設構造について具体的に説明する。センタブロック2の上流側部分には、圧力測定部41の受圧部41aが嵌合する筒状部22がダンピング配管13の管軸線Xに対して直交する方向へ突出するように設けられている。筒状部22の内面と受圧部41aの外面との間には、Oリングからなるセンサ部シール材23が設けられおり、センサ部シール材23によって筒状部22と受圧部41aとの間の気密性が確保されるようになっている。
【0061】
さらに、センタブロック2の上流側部分には、ダンピング配管13と上流側接続部30との間に、ダンピング配管13の流路に連通する連通路24が設けられている。連通路24は、上流側管路部材32の周壁を貫通する第1通路32bと、当該第1通路32bと連通し、圧力測定部41の受圧部41aに達するまで延びる第2通路2aとを含んでいる。第1通路32bは、センタブロック2の差込孔20の内部において上流側配管シール材13aと上流側接続部30の間の部分に連通している。また、第2通路2aも、センタブロック2の差込孔20の内部において上流側配管シール材13aと上流側接続部30の間の部分に連通している。これにより、ダンピング配管13の流路は、連通路24を介して筒状部22の内部と連通し、圧力測定部41の受圧部41aが連通路24に臨むように設けられることになる。尚、図示しないが、圧力測定部41をダンピング配管13の下流側に設けてもよい。
【0062】
超音波流量計1は、表示灯43、操作部(操作ボタン)及び表示パネル(図示せず)も備えている。表示灯43及び表示パネルは制御部42によって制御される。制御部42は、例えばマイクロコンピュータ等で構成されており、外部機器からの指令に基づいて第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12を制御して、流量測定の開始及び停止を実行する。また、制御部42は、測定値が予め設定された範囲外になった場合には、表示灯43の表示形態をそれまでの形態とは異なる形態に変化させる。例えば、表示灯43の表示色を変えたり、表示灯43を点滅させたりすることができる。表示パネルは、例えば有機ELパネルや液晶パネル等で構成されており、測定値や各種設定情報等が表示される。各種設定は、ユーザが操作部を操作することで可能になっている。操作部の操作状態は、制御部42によって取得し、受け付けられる。
【0063】
超音波流量計1は、流量測定部44も備えている。流量測定部44は、信号線42aを介して制御部42と通信可能に接続されている。第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12で受信された超音波信号、圧力測定部41で測定された圧力は、信号線42aを介して流量測定部44に送信される。尚、流量測定部44は、回路基板40に設けられていてもよい。
【0064】
流量測定部44は、例えばマイクロコンピュータ等で構成されており、第1の超音波素子11と第2の超音波素子12との間で送受信する超音波信号に基づいてダンピング配管13で規定される流路の流量を測定する部分である。すなわち、流量測定部44は、伝搬時間差式の測定部である。第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12は流量測定部44に接続されており、第1の超音波素子11と第2の超音波素子12との間で送受信する超音波信号は、流量測定部44に入力される。
【0065】
より具体的には、第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12は、ダンピング配管13の管軸線Xに対して傾斜しているので、ダンピング配管13内を流れる流体に超音波が斜めに通ることになる。第1の超音波素子11は、流れに逆らった方向に超音波信号を送信し、第2の超音波素子12は、流体の流れに沿った方向に超音波信号を送信する。このように、流体の流れに沿った方向と流れに逆らった方向とに超音波信号を送信してそれぞれ検出することで、流体の流れに沿った方向と流れに逆らった方向と超音波信号の伝播時間に差が生じることになる。
【0066】
第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12は例えば制御部42や外部のアンプ等によって制御されると、例えば間欠的にバースト波超音波信号(数MHzオーダの超音波パルスが例えば10個程度の塊となっている信号)を出射し、受信波形を流量測定部44のA/Dコンバータで高速サンプリングする。流量測定部44は、往路受信波形と復路受信波形とをそれぞれの出射時点の時刻を原点として位置合わせし、その状態から時間方向に相対的にずらしながら波形形状のマッチングを行い、マッチング度が極大となる時間シフト量を伝搬時間差として決定する。流量測定部44は、決定した伝搬時間差から流速・流量を算出する。流量測定部44が算出する流量は、瞬時流量であってもよく、積算流量であってもよい。
【0067】
流量測定部44は、圧力測定部41で測定された圧力を使用することで、質量流量を測定することもできる。質量流量を測定する際、ダンピング配管13の流路を流れる流体の温度を測定する温度センサを設けておき、温度センサによって検出された流体の温度を用いてもよいし、第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12で受信した超音波信号に基づいて音速を算出し、算出された音速から温度を推定し、質量流量の測定に用いてもよい。
【0068】
図2に示すように、超音波流量計1はシールド50を備えている。シールド50は、外来電気的ノイズによる測定精度の低下を抑制するための部材であり、例えば銅箔等で構成されている。第1の超音波素子11、第2の超音波素子12、ダンピング配管13、第1の超音波伝播体14、第2の超音波伝播体15、回路基板40、圧力測定部41等はシールド50によって覆われている。
【0069】
図1に示すように、超音波流量計1は、筐体52を備えている。筐体52は、少なくとも、第1の超音波素子11と、第1の超音波伝播体14と、ダンピング配管13と、第2の超音波素子12と、第2の超音波伝播体15とを収容する部材であり、本実施形態では、回路基板40、圧力測定部41、センタブロック2等も筐体52に収容されている。筐体52は、流体の流れ方向に分割されており、第1筐体構成部52aと第2筐体構成部52bとを有している。第1筐体構成部52aは上流側に位置しており、第2筐体構成部52bは下流側に位置している。第1筐体構成部52aには、上流側接続部30を覆う筒状の上流側カバー部52cが形成されている。第2筐体構成部52bには、下流側接続部31を覆う筒状の下流側カバー部52dが形成されている。筐体52の構成は上述した構成に限られるものではなく、例えばダンピング配管13の径方向に分割可能に構成されていてもよい。
【0070】
(流体の流量測定)
次に、上記のように構成された超音波流量計1を用いて流体の流量を測定する場合について説明する。はじめに比較例について説明する。
図5のFIG.5Aは、比較例を示しており、ダンピング配管13が無い状態で、本発明と同様な位置関係となるように、第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12と、第1の超音波伝播体14及び第2の超音波伝播体15とを配置している。この比較例の場合、第1の超音波素子11の送受信面11aから送信された超音波信号は、第1の超音波伝播体14の素子側面14bに入射して第1の超音波伝播体14を伝播し(矢印A1)、第1の超音波伝播体14の配管側面14aから流体に伝播する(矢印A2)。このとき、流体が気体である場合のように、第1の超音波伝播体14と流体との間の音響インピーダンスの差が大きいと、第1の超音波伝播体14と流体との界面での反射が大きくなる。第1の超音波伝播体14と流体との界面で反射した超音波信号の成分を矢印A3で示す。この反射した成分が多いため、流体に伝播する超音波信号(矢印A2)の強度が低くなる。また、第1の超音波伝播体14と流体との界面で反射した超音波信号は、第1の超音波伝播体14内に滞留する。第1の超音波伝播体14内に滞留した超音波信号は、センタブロック2等の部材を介して受信側素子(第2の超音波素子12)まで回り込み、第2の超音波素子12で受信される(矢印A4)。このように流体とは別の経路を通じて受信された超音波信号はノイズ成分となり、流量の測定を阻害する。第2の超音波素子12から送信された超音波信号も同様に、第2の超音波伝播体15と流体との界面で反射する成分が多くなってしまい、反射した成分がセンタブロック2等の部材を介して第1の超音波素子11まで回り込み、第1の超音波素子11で受信され、ノイズ成分となる。
【0071】
これに対し、FIG.5Bに示す本発明の実施形態では、流路を規定しているダンピング配管13が超音波信号を減衰する部材で構成されているので、第1の超音波伝播体14とダンピング配管13との音響インピーダンスが近くなる。また、第1の超音波伝播体14とダンピング配管13との間に音響結合材13cが介在している。実施形態では、第1の超音波素子11の送受信面11aから送信された超音波信号は、第1の超音波伝播体14の素子側面14bに入射して第1の超音波伝播体14を伝播し(矢印B1)、第1の超音波伝播体14の配管側面14aから音響結合材13c及びダンピング配管13に順に伝播する(矢印B2)。第1の超音波伝播体14とダンピング配管13との音響インピーダンスが近いので、第1の超音波伝播体14とダンピング配管13との界面での超音波信号の反射が小さくなるとともに、ダンピング配管13で超音波信号が減衰する。これにより、センタブロック2等の部材を介して受信側素子(第2の超音波素子12)まで回り込む超音波信号を減少させることができ、その結果、ノイズ成分が減少するので測定精度が向上する。
【0072】
超音波信号はダンピング配管13で規定されている流路内の流体を通過した後(矢印B3)、ダンピング配管13及び音響結合材13cに順に伝播する(矢印B4)。次いで、第2の超音波伝播体15を伝播して第2の超音波素子12で受信される(矢印B5)。第2の超音波素子12から送信された超音波信号も同様に、第2の超音波伝播体15とダンピング配管13との界面での反射が小さくなるので、ノイズ成分が減少する。
【0073】
図6は、例えば第1の超音波素子11から送信された超音波信号を第2の超音波素子12で受信した場合の波形の一例を示している。横軸が時間であり、縦軸が超音波信号の強度である。第2の超音波素子12で受信された波形のうち、初期に受信された領域C1はダンピング配管13内の残響成分である。領域C1よりも後の領域C2、C3、C4は、それぞれ多重反射信号である。ダンピング配管13内の残響成分を示している領域C1の強度は、多重反射信号を示している領域C2、C3、C4よりも弱く、かつ、時間軸方向に広い波形となっているので、領域C1の波形は流量の測定に適さない場合がある。
【0074】
そこで、本実施形態の流量測定部44は、伝搬時間差式の測定を実行する際に、ダンピング配管13内の残響成分を用いずに、残響が収束した後の多重反射信号を用いるように構成されている。これにより、測定精度を高めることが可能になる。
【0075】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0076】
図7は、実施形態の変形例1を示している。この変形例では、ダンピング配管13を側方から支持する支持部2dがセンタブロック2に設けられている。支持部2dは、第1の超音波伝播体14及び第2の超音波伝播体15とは異なる方向からダンピング配管13を支持するように配置されている。この例では2つの支持部2dによってダンピング配管13が径方向両側から挟まれるようになっている。これにより、ダンピング配管13が曲がらないようにすることができ、第1の超音波伝播体14及び第2の超音波伝播体15に対するダンピング配管13の相対位置を適切に設定できる。
【0077】
また、図示しないが、第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12の両方がダンピング配管13の径方向一方側に配置され、かつ、第1の超音波素子11及び第2の超音波素子12が管軸線X方向に離間して配置される方式、即ちV配置方式あるいは反射配置方式の超音波流量計に本発明を適用することもできる。
【0078】
図8は、実施形態の変形例2を示している。
図4に示す例では、グリス13dをダンピング配管13とセンタブロック2との間に介在するようにダンピング配管13の四隅に設けていたが、この変形例2では、ダンピング配管13の側面開口部2bに面する側方二か所に設けている。
図4に示す例では、超音波素子からの迷信号を吸収しやすいという効果はあるものの、流体に伝わる実信号をも吸収してしまう程度が大きい。それに対して、
図8に示す例では、迷信号を吸収する程度は弱くなるものの、迷信号を吸収でき、実信号を失う程度も小さいという点で優れる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明に係る超音波流量計は、例えば空気圧システム等に組み込んで利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 超音波流量計
2 センタブロック
2a 第2通路
11 第1の超音波素子
12 第2の超音波素子
13 ダンピング配管
13c 音響結合材
14 第1の超音波伝播体
15 第2の超音波伝播体
24 連通路
30 上流側接続部
31 下流側接続部
32a 拡大流路
32b 第1通路
41 圧力測定部
44 流量測定部
52 筐体