(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058760
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
F16D 1/02 20060101AFI20240422BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F16D1/02 130
F16D1/02 120
B65H5/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166057
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 優揮
【テーマコード(参考)】
3F049
【Fターム(参考)】
3F049AA03
3F049CA21
3F049LA07
3F049LB01
(57)【要約】
【課題】第1軸部材が連結部材から軸方向に想定範囲を超えてずれることを抑制できる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、軸装置60を備える。軸装置60は、軸方向ADに並ぶ第1軸部材の一例である駆動ローラー43及び第2軸部材の一例である駆動軸15と、連結部材61とを備える。連結部材61は、第1連結部62と第2連結部63とを有する。軸装置60は、第1キー部材71と第2キー部材72とを備える。第1連結部62は、第1被嵌合部(第1孔部621)と、第2被嵌合部(第1切り欠き部622)とを有する。駆動ローラー43は、第3被嵌合部(第2孔部433)と、第4被嵌合部(第2切り欠き部434)とを有する。第1キー部材71は、第1孔部621と第2孔部との両方に対して軸方向ADの両面で嵌合される。第2キー部材72は、第1切り欠き部622と第2切り欠き部との両方に対して回転方向CDの両面で嵌合される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸装置を備えた印刷装置であって、
前記軸装置は、
軸方向に並ぶ第1軸部材及び第2軸部材と、
前記第1軸部材と連結可能な第1連結部及び前記第2軸部材と連結可能な第2連結部を有する連結部材と、
前記第1軸部材と前記第1連結部とを連結させるための第1キー部材と、
前記第1軸部材と前記第1連結部とを連結させるための第2キー部材と、を備え、
前記第1軸部材は、前記第1連結部及び前記第2連結部を含む前記連結部材を介して、前記第2軸部材と連動して回転方向に回転可能であり、
前記第1連結部は、
前記第1キー部材と嵌合可能な第1被嵌合部と、
前記第2キー部材と嵌合可能な第2被嵌合部と、を有し、
前記第1軸部材は、
前記第1キー部材と嵌合可能な第3被嵌合部と、
前記第2キー部材と嵌合可能な第4被嵌合部と、を有し、
前記第1キー部材は、前記第1被嵌合部と前記第3被嵌合部との両方に対して前記軸方向の両面で嵌合され、
前記第2キー部材は、前記第2被嵌合部と前記第4被嵌合部との両方に対して前記回転方向の両面で嵌合されることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第1被嵌合部は、前記第1連結部の端縁から前記軸方向に所定距離離れた部分に配置され、前記第1キー部材を嵌合可能な第1孔部であり、
前記第3被嵌合部は、前記第1軸部材の端縁から前記軸方向に所定距離離れた部分に配置され、前記第1キー部材を嵌合可能な第2孔部である、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第2被嵌合部は、前記第1連結部の端縁から前記軸方向に所定の長さに亘って切り欠かれるとともに、前記第2キー部材を嵌合可能な第1切り欠き部であり、
前記第4被嵌合部は、前記第1軸部材の端縁から前記軸方向に所定の長さに亘って切り欠かれるとともに、前記第2キー部材を嵌合可能な第2切り欠き部である、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記連結部材は、前記第1切り欠き部と前記第2切り欠き部とを前記回転方向に位置合わせするために前記第2切り欠き部を視認可能な切り欠き状の窓部を有し、
前記第1孔部は、前記連結部材の前記軸方向において前記窓部の形成範囲内に位置することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1キー部材は、2本で1対であり、嵌合のために圧入される方向の軸が同じであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第2キー部材は、2本で1対であり、前記回転方向の位置が互いに対向する位置関係にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1キー部材と前記第2キー部材とは、前記回転方向において等角度間隔となるように配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第1キー部材の長さは、前記第1連結部の外径の1/2から前記第1連結部の厚さと前記第1軸部材の厚さとの和を差し引いた値よりも短いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1軸部材と第2軸部材とを連結する軸装置を備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、第1軸部材と第2軸部材とを連結する軸装置を備える印刷装置が開示されている。この印刷装置においては、用紙等の媒体を搬送する搬送装置を備える。搬送装置は、媒体を搬送するローラー対を備える。ローラー対は、モーターの動力で回転する駆動軸と連結された駆動ローラーと、駆動ローラーと対をなす従動ローラーとを備える。軸装置は、駆動ローラーを第1軸部材とし、モーターの動力で駆動される駆動軸を第2軸部材として、連結部材を介して第1軸部材と第2軸部材とを連結する。
【0003】
特許文献1に記載された軸装置は、連結部材と第1軸部材とを回り止めされた状態で連結する回り止め機構と、連結部材に対して第1軸部材を芯出しされた状態で連結する芯出し連結機構とを備える。芯出し連結機構は、連結部材と第1軸部材とを軸線に沿う方向に締結する締結部材を含む。締結部材を締結することで、連結部材と第1軸部材は、軸線に沿って接近することで、第1軸部材の一端部が連結部材の圧入穴に圧入される。また、軸装置は、回り止め機能として、キー部材と、キー溝とを備える。キー部材は、連結部材と第1軸部材とのそれぞれに設けられたキー溝(切り欠き部)に圧入される。これにより、連結部材と第1軸部材は回り止めされた状態で連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の印刷装置において、第1軸部材と連結部材との各々の軸線が公差等の関係で僅かにずれる場合がある。調整しても、公差等の影響で僅かなずれは避けられない。例えば、軸線の僅かなずれが原因で第1軸部材が偏心回転すると、偏心なしで回転する場合に比べ、第1軸部材は大きな負荷を受けやすい。この場合、例えば、芯出し連結機構の締結部材が緩む場合がある。このような状態で回転を繰り返すと、第1軸部材と連結部材との連結が軸方向に想定範囲を超えてずれたり、場合によっては第1軸部材と連結部材との連結が外れたりするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する印刷装置は、軸装置を備えた印刷装置であって、前記軸装置は、軸方向に並ぶ第1軸部材及び第2軸部材と、前記第1軸部材と連結可能な第1連結部及び前記第2軸部材と連結可能な第2連結部を有する連結部材と、前記第1軸部材と前記第1連結部とを連結させるための第1キー部材と、前記第1軸部材と前記第1連結部とを連結させるための第2キー部材と、を備え、前記第1軸部材は、前記第1連結部及び前記第2連結部を含む前記連結部材を介して、前記第2軸部材と連動して回転方向に回転可能であり、前記第1連結部は、前記第1キー部材と嵌合可能な第1被嵌合部と、前記第2キー部材と嵌合可能な第2被嵌合部と、を有し、前記第1軸部材は、前記第1キー部材と嵌合可能な第3被嵌合部と、前記第2キー部材と嵌合可能な第4被嵌合部と、を有し、前記第1キー部材は、前記第1被嵌合部と前記第3被嵌合部との両方に対して前記軸方向の両面で嵌合され、前記第2キー部材は、前記第2被嵌合部と前記第4被嵌合部との両方に対して前記回転方向の両面で嵌合される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における印刷装置を示す模式断面図である。
【
図3】軸装置を含む駆動系の要部を示す斜視図である。
【
図9】第1軸部材と連結部材との連結を外す手順を説明する側断面図である。
【
図10】第1軸部材と連結部材との連結を外した状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、印刷装置について図面を参照して説明する。印刷装置は、例えば、大判サイズの長尺の媒体に印刷を行うラージフォーマットプリンターである。
<印刷装置11の構成>
図1に示すように、印刷装置11は、支持台12と、支持台12上に固定された筐体部13と、媒体Mを支持する支持部20と、媒体Mを
図1に矢印で示す搬送方向FDに搬送する搬送装置25と、媒体Mに印刷を行う印刷部50とを備える。
【0009】
以降の説明では、媒体Mの搬送方向と直交する幅方向(
図1では紙面と直交する方向)に沿う一方向を走査方向Xとし、印刷部50が印刷を行う位置において媒体Mが搬送される方向を搬送方向Yとする。本実施形態において、走査方向X及び搬送方向Yは互いに交差(好ましくは、直交)する方向であって、いずれも鉛直方向Z(重力方向)と交差(好ましくは、直交)する方向である。走査方向Xは、媒体Mの幅方向であるので、幅方向Xという場合がある。なお、媒体Mの搬送方向FDは、
図1における実線の矢印で示すように搬送経路上の位置に応じて変化する。
【0010】
図1に示すように、支持部20は、媒体Mの搬送経路を形成する第1の支持部21、第2の支持部22及び第3の支持部23と、第2の支持部22の下側に配置された吸引機構24とを備える。第1の支持部21は、搬送方向FDにおける上流側より下流側の方が高くなるように傾斜した傾斜面を有する。第2の支持部22は、印刷部50と対向する位置に設けられ、印刷が行われる媒体Mを支持する。第3の支持部23は、搬送方向FDにおける上流側より下流側の方が低くなるように傾斜した傾斜面を有し、印刷部50による印刷後の媒体Mを案内する。第2の支持部22は、媒体Mを支持する支持面に図示しない複数の吸引孔を有し、吸引機構24の駆動によって吸引孔を通じて媒体Mを吸引することにより、印刷が行われる媒体Mの浮き上がりを抑制する。
【0011】
次に、搬送装置25の構成を詳述する。
図1、
図2に示すように、搬送装置25は、媒体Mを給送する給送部30と、給送部30から給送された媒体Mを搬送方向FDに沿って搬送する搬送部40とを備える。給送部30は、媒体Mをロール状に巻回したロール体31を回転可能に支持するロール体支持部32を有する保持部33と、ロール体31を正逆回転させる動力を出力する給送モーター34とを備える。なお、給送部30は、ロール体支持部32の回転を検出可能な回転検出器35を備える。
【0012】
図1に示すように、搬送部40は、媒体Mを挟持して搬送方向Yに沿って搬送するローラー対41と、ローラー対41に媒体Mを搬送する動力を出力する駆動源の一例としての搬送モーター42とを備える。ローラー対41は、回転可能に支持された駆動ローラー43と、回転する駆動ローラー43に従動して回転する従動ローラー44とが対をなすことで構成される。駆動ローラー43は、例えば幅方向Xに延びる状態で一対の支持部材45に支持されている。また、本例では、従動ローラー44は、駆動ローラー43に対する押付力を変更可能な変更部46に支持されている。変更部46は、駆動ローラー43に対する従動ローラー44の押付力を変更することで、ローラー対41が媒体Mを挟持する挟持力(ニップ力)を調整する。
【0013】
ここで、駆動ローラー43が偏心回転すると、ローラー対41が媒体Mを挟持するニップ力が変動し、これが原因でローラー対41と媒体Mとの間に予期せぬ滑りが発生し、搬送した媒体Mの停止位置が目標位置からずれてしまい搬送位置精度が低下する。また、偏心回転時の負荷や振動が原因で、例えば、駆動ローラー43の軸方向ADのずれが進むと、それに伴い偏心が助長されたり、ひいては連結部材61から第1端部432が外れることも可能性としてある。このため、駆動ローラー43が公差等の範囲内で多少の偏心回転をしても、駆動ローラー43の軸方向ADのずれが助長されにくい軸装置60が望まれる。
【0014】
駆動ローラー43は、搬送モーター42の正逆転駆動によって、媒体Mを搬送方向Yの下流側へ搬送する正転と、媒体Mを搬送方向Yの上流側へ逆搬送させる逆転とが可能である。そして、搬送モーター42の動力で駆動ローラー43が回転することにより、媒体Mはローラー対41に挟持された状態で支持部20の上面に案内されることで所定の搬送経路に沿って搬送される。なお、搬送部40は、駆動ローラー43の回転を検出可能な回転検出器47を備える。
【0015】
図1に示すように、印刷部50は、ローラー対41よりも搬送方向FDの下流側の位置で媒体Mに印刷する。印刷部50は、印刷領域PAにおいて、媒体Mに対してインクを吐出する印刷ヘッド53を備える。印刷部50は、例えばシリアル印刷方式を採用し、不図示のキャリッジモーターの駆動により、ガイド軸51に沿って走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ52を備える。キャリッジ52に設けられた印刷ヘッド53は、キャリッジ52の走査方向Xに沿う移動時に、支持部20に支持された媒体Mに向けてインクを吐出することで、媒体Mに文字や画像を形成する印刷動作を行う。また、印刷装置11は、
図1に示す搬送装置25及び印刷部50を制御する制御部100を備える。なお、印刷部50としてライン印刷方式を採用することもできる。この場合、ライン印刷方式の印刷ヘッド53は、想定される最大幅の媒体Mの幅よりも若干長い範囲に亘り複数のノズルが一定ピッチで幅方向Xに配置されるように1つ又は複数の記録ヘッドにより構成される。ライン印刷方式の印刷ヘッド53は、定速度で搬送される媒体Mに対して複数のノズルからインクを吐出することで印刷動作を行う。
【0016】
<軸装置60の構成>
次に、
図2を参照して軸装置60について説明する。本実施形態の軸装置60は、ローラー対41(
図1参照)を構成する駆動ローラー43と、搬送モーター42の動力で回転駆動される駆動軸15と、駆動軸15と駆動ローラー43とを連結する連結部材61と、を備える。搬送モーター42によって駆動軸15に付与される回転駆動力は、連結部材61を介して駆動ローラー43に伝達される。また、連結部材61は駆動ローラー43の端部に連結可能に構成されている。本例の連結部材61は、駆動ローラー43と駆動軸15とを一体に回転可能に連結する。つまり、連結部材61は、カップリング部材として機能する。駆動ローラー43の第1端部432は連結部材61に嵌入されている。なお、本実施形態では、駆動ローラー43が、第1軸部材の一例に相当し、駆動軸15が、第2軸部材の一例に相当する。
【0017】
図2に示すように、駆動ローラー43は、その軸方向ADに一列に配列された複数のローラー部431を有する。ローラー部431の表面は細かな溝又は細かな凹凸(いずれも図示略)が周面全体に亘って形成されている。ローラー部431の表面の高い摩擦力によってローラー対41により挟持される媒体Mの搬送力が確保される。
【0018】
図2、
図3に示すように、駆動軸15の他端部には、歯車17が固定されている。歯車17は、搬送モーター42の出力軸421(
図3に示す)の回転を駆動軸15に伝達する動力伝達機構(図示略)の一部を構成する。さらに駆動軸15の他端部には、回転検出器47(ロータリーエンコーダー)を構成する円板状の符号板471が歯車17と同軸上にその外側に固定されている。
【0019】
図2、
図3に示すように、駆動ローラー43は、その軸方向ADの両端部の部分で一対の支持部材45(
図3では一方のみ図示)に対して軸受16(ベアリング)を介して回転可能に支持されている。一対の支持部材45は、走査方向Xに媒体Mの想定最大幅よりも少し長い距離を離した二位置に立設されている。支持部材45は、筐体部13(
図1参照)を構成するフレーム(図示せず)に固定された底板部451から上方(-Z方向)に向かって立設されている。
【0020】
図3に示すように、一対の支持部材45には、駆動ローラー43の架設高さに相当する位置に、駆動ローラー43の両端部の直径よりも大きな直径を有する挿通孔452がそれぞれ設けられている。そして、駆動ローラー43の両端部に外嵌された円環状の軸受16(例えばベアリング)が、支持部材45の挿通孔452に嵌合されている。駆動ローラー43は、軸受16を介して支持部材45に対して回転可能に支持されている。駆動ローラー43は、連結対象の一端部として第1端部432を有する。
【0021】
図3に示すように、軸装置60は、連結部材61に対する駆動ローラー43の軸方向ADのずれおよび回転方向CDのずれを抑制する連結機構70を備える。連結機構70は、連結された連結部材61と駆動ローラー43との軸方向ADと回転方向CDとの両方向のずれを規制する機能を有する。
【0022】
連結部材61は、駆動ローラー43と連結可能な第1連結部62と、駆動軸15と連結可能な第2連結部63とを有する。駆動ローラー43の第1端部432のうち軸受16よりも少し外側(駆動軸15側)に位置する部分が、連結部材61の第1連結部62に圧入されている。この圧入によって、駆動ローラー43と連結部材61とは、それぞれの軸線が一致する状態で同軸上に連結されている。
【0023】
連結部材61は、筒状の第1連結部62と、第1連結部62と同軸上に隣接する状態で一体に形成された筒状の第2連結部63とを有する。第2連結部63には、駆動軸15の一端部が嵌入されている。本実施形態では、第1端部432と第1連結部62とは、連結機構70を介して双方の軸線を一致させるとともに回転方向CDのずれ(回転ずれ)、および軸方向ADのずれを防止する状態で連結されている。なお、駆動ローラー43は、内部が中空の筒状部材である。
【0024】
図3に示すように、連結部材61を介して連結されている駆動軸15と駆動ローラー43との軸心がずれていると、駆動軸15に対して駆動ローラー43が偏心回転する。駆動ローラー43は軸受16を介して支持部材45に支持されているため、偏心回転はある程度抑えられものの、駆動軸15と駆動ローラー43との各々の軸線をなるべく一致させることが好ましい。そのため、本実施形態では、駆動ローラー43の第1端部432と連結部材61の第1連結部62とを軸方向ADにガタが発生することなく第1キー部材71を介して連結されている。
【0025】
図3に示すように、連結部材61は、一体成形品である。連結部材61は、有底円筒状の第1連結部62と、円筒状の第2連結部63とを有する。第1連結部62と第2連結部63は、双方の軸線が一致する状態で軸方向ADに並んで配置されている。
【0026】
図3に示す搬送モーター42と駆動軸15との間の動力伝達機構は、例えば歯車列(輪列)又はベルト(例えば歯付きベルト)を備えたベルト式動力伝達機構などからなり、搬送モーター42の回転出力を歯車17に伝達する。なお、歯車17は、不図示の輪列を介して駆動軸15の回転を他のローラー(例えば排出ローラー)に伝達する機能を有する。また、符号板471はその全周に亘り一定ピッチで配列された多数の透光部472(例えばスリット)を有している。回転検出器47(ロータリーエンコーダー)を構成するセンサー473は、符号板471の透光部472の配列領域を挟んで対峙する発光部と受光部(いずれも図示略)とを有する。センサー473は、発光部から射出されて透光部472を透過した光を受光部が受光することで、駆動ローラー43の回転量に比例する数のパルスを含む検出信号(パルス信号)を出力する。このセンサー473からの検出信号は、制御部100に入力される。
【0027】
ここで、軸装置60を構成する部品には、公差等の範囲内で寸法誤差がある。このため、連結部材61と駆動ローラー43との間の微小なガタは避けられない。例えば、微小なガタに起因する連結部材61と駆動ローラー43とのうち少なくとも一方の一定範囲内の偏心は避けられない。微小な偏心であっても、回転中の連結部材61および駆動ローラー43には、偏心度合が零の理想の連結部材61および駆動ローラー43に比べ、偏心に起因する大きな遠心力が外力として加わる。この結果、印刷装置11を繰り返し使用するうちに部品の微小なずれが少しずつ進み、やがて連結部材61と駆動ローラー43との連結が外れる事態にもなりうる。連結部材61と駆動ローラー43が外れると、印刷装置11は媒体Mを搬送できない状態に故障する。よって、微小な偏心があっても、連結部材61から駆動ローラー43が外れることのない軸装置60が望まれる。
【0028】
次に、
図4~
図7を参照して、軸装置60における駆動ローラー43と連結部材61との連結構造について詳細に説明する。なお、以下では、回転方向CDを、周方向CDという場合がある。
【0029】
図5に示すように、軸装置60は、連結部材61を備える。連結部材61は、駆動ローラー43と駆動軸15とを連結する。連結部材61は、軸方向ADに並んで配置されるそれぞれ円筒状の第1連結部62と第2連結部63とを有する。第1連結部62と第2連結部63は、それぞれの軸線が一致する状態で軸方向ADに隣接して配置される。駆動ローラー43の第1端部432は、第1連結部62に圧入される。駆動軸15の一端部は、連結部材61の第2連結部63に圧入される。
【0030】
図5に示すように、連結部材61は、駆動ローラー43の一端部に切り欠かれた一対の第2切り欠き部434と嵌合可能な一対(
図4では一方のみ図示)の第2キー部材72と、駆動ローラー43の第1端部432を圧入可能な第1連結部62とを有する。第1連結部62は、例えば第2キー部材72が圧入される部分が切り欠かれた第1切り欠き部622を有する。
【0031】
第1連結部62は、駆動ローラー43の第1端部432が挿入される嵌合穴620を有する。嵌合穴620は、駆動ローラー43の第1端部432の部分における外径とほぼ同じ内径の内周面となった圧入面と、圧入面よりも軸方向外側の位置で圧入面よりも内周面が外側に向かって拡開する案内面とを有する。駆動ローラー43の第1端部が嵌合穴620に嵌合されることで、第1端部432は連結部材61と軸線が合った状態で嵌入可能である。このため、第1端部432は連結部材61に対して軸線が一致するように芯出しされた状態で連結される。
【0032】
また、
図4に示すように、連結部材61は、第1連結部62に、駆動ローラー43の第1端部432を嵌入可能な嵌合穴620(
図6参照)を有する。また、連結部材61は、第2連結部63に、駆動軸15の一端部を嵌入可能な嵌合穴631を有する。
【0033】
図4に示すように、第2連結部63には、周方向CDの複数箇所にねじ孔632が設けられている。第2連結部63のねじ孔632に複数のねじ64を螺入する。これにより、
図5に示すように、駆動軸15の一端部は第2連結部63に嵌入された状態で複数のねじ64により連結部材61に固定される。第2連結部63の外周面の周方向CDの複数箇所(
図3では1箇所のみ示す)に1又は複数(
図4の例では2本)ずつのねじ64によって駆動軸15と第2連結部63は固定されている。
【0034】
図4に示すように、駆動ローラー43の第1端部432が連結部材61の第1連結部62に対して、芯出しされた状態で圧入されることによって、
図5に示す軸装置60が製造されている。
【0035】
図4に示すように、本例の軸装置60は、管状の駆動ローラー43と、連結部材61と、駆動ローラー43と連結部材61とを芯出しされた状態に連結する前述の連結機構70とを備える。
【0036】
連結機構70は、駆動ローラー43と第1連結部62とを連結させるための第1キー部材71と、駆動ローラー43と第1連結部62とを連結させるための第2キー部材72とを備える。
【0037】
第1連結部62は、第1キー部材71と嵌合可能な第1被嵌合部の一例としての第1孔部621と、第2キー部材72と嵌合可能な第2被嵌合部の一例としての第1切り欠き部622とを有する。また、駆動ローラー43は、第1キー部材71と嵌合可能な第3被嵌合部の一例としての第2孔部433と、第2キー部材72と嵌合可能な第4被嵌合部の一例としての第2切り欠き部434とを有する。
【0038】
第1キー部材71は、第1孔部621と第2孔部433との両方に対して軸方向ADの両面で嵌合される。これにより、駆動ローラー43と第1連結部62とが軸方向ADに抜け止めされた状態で連結される。
【0039】
第2キー部材72は、第1切り欠き部622と第2切り欠き部434との両方に対して周方向CDの両面で嵌合される。これにより、駆動ローラー43と第1連結部62とが回り止めされた状態で連結される。
【0040】
第1キー部材71は、圧入方向の先端部がテーパー面などの先細り形状に形成されている。第2キー部材72は、連結部材61と別体としているが、一体でもよい。
図6に示すように、第1切り欠き部622は、第1連結部62の端縁から軸方向ADに所定の長さに亘って切り欠かれるとともに、第2キー部材72を嵌合可能に構成される。第1切り欠き部622は、周方向CDの寸法が、嵌合時の向きにある第2キー部材72の周方向CDの寸法よりも極僅かに大きい。これにより、第2キー部材は、周方向CDの両面が、第1切り欠き部622に対して嵌合可能である。第1切り欠き部622は、軸方向ADの寸法が、嵌合時の向きにある第2キー部材72の軸方向ADの寸法よりも隙間ができる程度に大きい。第1切り欠き部622は、第2キー部材72が圧入されるキー溝である。
【0041】
また、第2切り欠き部434は、駆動ローラー43の端縁から軸方向ADに所定の長さに亘って切り欠かれるとともに、第2キー部材72を嵌合可能に構成される。第2切り欠き部434は、周方向CDの寸法が、嵌合時の向きにある第2キー部材72の周方向CDの寸法よりも極僅かに大きい。これにより、第2キー部材72は、周方向CDの両面が、第2切り欠き部434に対して嵌合可能である。第2切り欠き部434は、軸方向ADの寸法が、嵌合時の向きにある第2キー部材72の軸方向ADの寸法よりも隙間ができる程度に大きい。このように、第2キー部材72は、その周方向CDの両面が、第1切り欠き部622および第2切り欠き部434に対して圧入されることで、連結部材61と駆動ローラー43との回転方向CDのずれを規制する回り止め機能を有する。なお、第2切り欠き部434は、第2キー部材72が圧入されるキー溝である。
【0042】
図6に示すように、連結部材61は、第1切り欠き部622と第2切り欠き部434とを回転方向CDに位置合わせするために第2切り欠き部434を視認可能な切り欠き状の窓部623を有する。窓部623は、第1切り欠き部622よりも周方向CDの幅が広い幅で第1連結部62の端縁から軸方向ADに第1切り欠き部622と繋がる深さで切り欠かれた切り欠き部である。第2キー部材72を圧入するときに、第1切り欠き部622と第2切り欠き部434とを位置合わせする際に窓部623を介して周方向CDの位置の視認が可能である。
【0043】
図7、
図8に示すように、第1孔部621は、第1連結部62の端縁から軸方向ADに所定距離離れた部分に配置され、第1キー部材71を嵌合可能に構成される。第1孔部621は、軸方向ADの寸法が、嵌合時の向きにある第1キー部材71の軸方向ADの寸法よりも、両者が嵌合可能な程度に極僅かに小さい。また、第1孔部621は、周方向CDの寸法が、嵌合時の向きにある第1キー部材71の周方向CDの寸法より隙間ができる程度に小さい。また、
図8に示すように、第1キー部材71は、圧入方向の先端側の部分に斜面711が形成されることで、先端部側が細い形状を有している。これにより、第1キー部材71を第1孔部621に圧入する圧入作業がし易い。
【0044】
第2孔部433は、駆動ローラー43の端縁から軸方向ADに所定距離離れた部分に配置され、第1キー部材71を嵌合可能に構成される。第2孔部433は、軸方向ADの寸法が、嵌合時の向きにある第1キー部材71の軸方向ADの寸法よりも、両者が嵌合可能な程度に極僅かに小さい。また、第2孔部433は、周方向CDの寸法が、嵌合時の向きにある第1キー部材71の周方向CDの寸法より隙間ができる程度に小さい。よって、第1キー部材71の軸方向ADの両面が、第1孔部621および第2孔部433に対して圧入されることで、連結部材61と駆動ローラー43との軸方向ADのずれが規制される。つまり、第1キー部材71は、その軸方向ADの両面が連結部材61と第1端部432に対して圧入されることで、連結部材61と駆動ローラー43との軸方向ADのずれの進行を抑制し、ひいては連結部材61と駆動ローラー43との連結の外れを防止する外れ防止機能を有する。また、
図6、
図8に示すように、第2キー部材72は、圧入方向の先端側の部分にテーパー面を有する。テーパー面の存在により、第2キー部材72は圧入先の第2切り欠き部434に圧入しやすい先細り形状を有している。これにより、第1キー部材71を第1孔部621に圧入する圧入作業がし易い。
【0045】
第1孔部621は、連結部材61の軸方向ADにおいて窓部623の形成範囲内に位置する。つまり、周方向CDにおいて、窓部623と第1孔部621はオーバーラップ(重複)する位置関係にある。換言すれば、第1孔部621が軸方向ADに位置する範囲が、窓部623が軸方向ADに位置する範囲と重なっている。ここで、駆動ローラー43において第2孔部433は第2切り欠き部434よりも端縁から軸方向ADに離れた位置に設ける必要がある。そのため、連結部材61において窓部623の形成領域と周方向CDに重ならない位置に第1孔部621を設けようとすると、重なる位置に第1孔部621を設ける場合に比べ、連結部材61に対する駆動ローラー43の挿入量を長くする必要がある。この場合、第2切り欠き部434を軸方向ADに長く形成する必要がある。これに対して、第1孔部621が、連結部材61の軸方向ADにおいて窓部623の形成範囲内に位置する構成であれば、第2切り欠き部434を軸方向ADに過度に長くしなくて済む。これにより、連結部材61に対する駆動ローラー43の挿入量が短く済むので、連結部材61の軸方向ADの小型化に繋がる。
【0046】
図4、
図8に示すように、第1キー部材71は、一対(2つ)あり、嵌合のために圧入される方向の軸が同じである。つまり、一対の第1キー部材71は、周方向CDに180度離れて位置する。さらに、換言すれば、一対のキー部材71は、連結部材61または駆動ローラー43の軸心を挟んで対向する位置にある。
【0047】
図7に示すように、第2キー部材72は、一対(2つ)ある。一対の第2キー部材72は、周方向CDの位置が互いに対向する位置関係にある。つまり、第2キー部材72は、周方向CDに180度離れて位置する。
【0048】
図6~
図8に示すように、第1キー部材71と第2キー部材72とは、周方向CDに等間隔となるように配置されている。本実施形態では、抜け防止機能を有する第1キー部材71が2つ(一対)、回転防止機能を有する第2キー部材72が2つ(一対)設けられている。2つの第1キー部材71は、互いに周方向に180度間隔を置いた位置に配置される。2つの第2キー部材72は、それぞれ第1キー部材71に対して周方向CDに90度間隔を置いた位置で、かつ互いに周方向CDに180度間隔を置いた位置に配置される。こうして、第1キー部材71と第2キー部材72は、周方向CDに90度間隔を置いた位置に配置される。
【0049】
図8に示すように、第1キー部材71の長さL1は、第1連結部62の外径D1の1/2から、第1キー部材71が圧入される部分において、第1連結部62の厚さT1と駆動ローラー43の厚さT2との和を差し引いた値よりも短い。すなわち、第1キー部材71の長さL1は、L1<D1/2-(T1+T2)という条件式を満たす長さに設定されている。このため、例えば、2n本(但し、nは自然数)の第1キー部材71が第1連結部62の周方向に一定の角度ごとに配置される構成では、n対の第1キー部材71が互いに対向する位置に配置される。
【0050】
本実施形態では、駆動ローラー43と駆動軸15との連結を解除するためには、第1キー部材71を抜き取る必要がある。しかし、第1キー部材71は、第1孔部621および第2孔部433を介して連結部材61および駆動ローラー43に圧入されているので、圧入状態から抜き取ることは困難である。そのため、本実施形態の第1キー部材71は、駆動ローラー43の筒内に落とし込むことが可能な長さに設定されている。
【0051】
n対(例えば一対(n=1))の第1キー部材71は対向して位置するので、一方の第1キー部材71を管の内側に打ち落とす過程で、対向する他方の先端に当たると、そこから第1キー部材71を打ち落とすまでに約2倍の力が必要になる。この場合、第1キー部材71を最後まで筒内に打ち落とすことが困難である。そのため、第1キー部材71の長さL1を、上記の条件式を満たす長さに設定することで、第1キー部材71を、対向する他方の第1キー部材71の先端に当たる前までに、駆動ローラー43の筒内に打ち落とすことが可能である。
【0052】
<実施形態の作用>
次に軸装置60を備えた印刷装置11の作用を説明する。駆動ローラー43を一対の軸受16を介して一対の支持部材45に支持する。次に
図7に示すように、連結部材61の第2キー部材72を駆動ローラー43の第2切り欠き部434に少し嵌め込んで、駆動ローラー43の第1端部432を、第1連結部62の嵌合穴620の圧入面に至る手前の案内面まで嵌め、連結部材61に仮挿入する。
【0053】
このとき、作業者は、窓部623を通じて、第2キー部材72と第2切り欠き部434とを周方向CDに位置合わせできるので、第2キー部材72を第2切り欠き部434に嵌める作業を効率よく行うことができる。第2キー部材72は、周方向CDの両面で第2切り欠き部434に対して嵌合する。これにより、連結部材61に対して駆動ローラー43は回り止めされた状態で連結される。
【0054】
第1連結部62に駆動ローラー43の第1端部432が圧入されるので、駆動ローラー43と連結部材61は双方の軸心が一致する状態に芯出しされる。
この状態において、第1孔部621と第2孔部433とが軸方向ADと周方向CDとに位置が合っている。作業者は、第1キー部材71を第1孔部621と第2孔部433とに圧入する。第1キー部材71は、第1孔部621と第2孔部433とに対して軸方向ADの両面で嵌合される。第1キー部材71は、駆動ローラー43と連結部材61に対して対向する2箇所に圧入される。この結果、駆動ローラー43と連結部材61は、周方向CDの位置が対向する二位置に圧入された2つの第1キー部材71により軸方向ADにずれないように抜け止めされる。
【0055】
こうして、駆動ローラー43と連結部材61は、周方向CDの2箇所に圧入された2つの第1キー部材71により軸方向ADに抜け止めされるとともに、周方向CDの異なる2箇所に圧入された2つの第2キー部材72により回り止めされる。
【0056】
その後、連結部材61の第2連結部63の嵌合穴631に、その穴径よりも外径が若干小さい駆動軸15の一端部を嵌入する。次に、第2連結部63の外周面側から複数のねじ64を螺着して複数箇所で、駆動軸15と連結部材61とを固定する。なお、軸装置60の支持部材45への組み付けは、駆動ローラー43と連結部材61とを連結させる前に行ってもよいし、連結させた後に行ってもよいし、駆動ローラー43と駆動軸15とを連結部材61を介して連結させた後に行ってもよい。
【0057】
駆動軸15の他端部には、歯車17及び回転検出器47の符号板471が同軸上に固定される。そして、搬送モーター42の出力軸の回転出力が不図示の動力伝達機構を介して伝達されることで歯車17が回転する。この歯車17の回転によって駆動軸15と共に駆動ローラー43が回転する。このとき、駆動ローラー43は連結部材61に対して芯出しされているので、ほとんど偏心することなく回転する。この結果、ローラー対41の挟持力(ニップ力)の変動が小さく抑えられた状態で媒体Mを搬送することができる。このため、ローラー対41に挟持されて搬送される媒体Mの搬送位置精度が高く確保され、印刷品質の高い印刷が行われる。
【0058】
ただし、公差等の原因で連結部材61と駆動ローラー43とのうち少なくとも一方が僅かに偏心する場合がある。この僅かな偏心があるまま偏心回転を繰り返すと、偏心回転時の偏った負荷により連結部材61と駆動ローラー43との少なくとも一方に、連結が外れる方向の力が加わる場合がある。このような力が加わっても、連結部材61と駆動ローラー43とは第1キー部材71により抜け止めされているので、両者の連結が軸方向ADの外れ方向に変位したり、ひいては外れることを回避できる。
【0059】
<軸装置60の連結解除方法>
軸装置60のメンテナンス時、あるいは駆動ローラー43の交換時は、軸装置60の分解が必要な場合がある。本実施形態では、第1キー部材71と第2キー部材72とが圧入されていても、駆動ローラー43と連結部材61との連結を比較的簡単に取り外すことができる。
【0060】
図9に示すように、作業者は、工具を用いて第1キー部材71の頭部を、外側から叩く。叩かれた第1キー部材71は、連結部材61及び駆動ローラー43の筒内へ相対変位する。例えば、第1キー部材71の長さL1は、第1連結部62の外径D1の1/2から、第1連結部62の厚さT1と駆動ローラー43の厚さT2との和を差し引いた値よりも短い。よって、2つの第1キー部材71が、例えば、対向する位置(例えば180度)に配置されていても、それぞれ対向する他方の第1キー部材71が邪魔になることなく、
図10に示すように、第1キー部材71を駆動ローラー43の筒内に打ち落とすことができる。よって、軸装置60の分解を比較的簡単に行うことができる。
【0061】
以上、詳述したように上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)印刷装置11は軸装置60を備える。軸装置60は、軸方向ADに並ぶ第1軸部材の一例である駆動ローラー43及び第2軸部材の一例である駆動軸15と、連結部材61とを備える。連結部材61は、駆動ローラー43と連結可能な第1連結部62と、駆動軸15と連結可能な第2連結部63と、を有する。さらに、軸装置60は、駆動ローラー43と第1連結部62とを連結させるための第1キー部材71と、駆動ローラー43と第1連結部62とを連結させるための第2キー部材72とを備える。駆動ローラー43は、第1連結部62及び第2連結部63を含む連結部材61を介して、駆動軸15と連動して回転方向CDに回転可能である。第1連結部62は、第1キー部材71と嵌合可能な第1被嵌合部の一例である第1孔部621と、第2キー部材72と嵌合可能な第2被嵌合部の一例である第1切り欠き部622とを有する。駆動ローラー43は、第1キー部材71と嵌合可能な第3被嵌合部の一例である第2孔部433と、第2キー部材72と嵌合可能な第4被嵌合部の一例である第2切り欠き部434とを有する。第1キー部材71は、第1孔部621と第2孔部433との両方に対して軸方向ADの両面で嵌合される。第2キー部材72は、第1孔部621と第2孔部433との両方に対して回転方向CDの両面で嵌合される。
【0062】
この構成によれば、第1キー部材71が、第1孔部621と第2孔部433との両方に対して軸方向ADの両面で嵌合することで、駆動ローラー43と第1連結部62とが軸方向ADに抜け止めされた状態で連結される。また、第2キー部材72が、第1切り欠き部622と第2切り欠き部434との両方に対して回転方向CDの両面が嵌合することで、駆動ローラー43と第1連結部62とが回り止めされた状態で連結される。よって、駆動ローラー43と連結部材61との軸方向ADと回転方向CDとの両方向のずれを抑制できる。したがって、駆動ローラー43と連結部材61とが公差等の範囲内で偏心回転した場合に偏った負荷によって軸方向ADの成分をもつ力が加わっても、駆動ローラー43と連結部材61とが連結される部分で軸方向にずれにくくなる。この結果、軸ずれに起因して駆動ローラー43の偏心度合が助長されたり、さらに偏心した状態で継続使用されても、連結の外れ等が誘発されることを回避できる。よって、駆動ローラー43の公差範囲内の偏心回転が繰り返し行われることで連結部材61と駆動ローラー43との外れ方向のずれの進行を抑制したり、両者の連結の外れを回避できたりする。
【0063】
(2)第1被嵌合部は、駆動ローラー43の端縁から軸方向ADに所定距離離れた部分に配置され、第1キー部材71を嵌合可能な第1孔部621である。第3被嵌合部は、第1連結部62の端縁から軸方向ADに所定距離離れた部分に配置され、第1キー部材71を嵌合可能な第2孔部433である。この構成によれば、第1被嵌合部および第3被嵌合部が孔部621,433であるので、軸方向ADのずれを効果的に抑制できる。例えば、第1被嵌合部と第3被嵌合部を共に切り欠き部とした場合、第1キー部材71を切り欠き部に圧入する際に周方向CDへの相対移動が必要になるので、連結作業が面倒になりやすい。第1被嵌合部と第3被嵌合部が共に孔部621,433であれば、第1キー部材71を第1孔部621と第2孔部433に圧入すればよいので、周方向CDの相対移動が不要になって連結作業が簡単で済む。
【0064】
(3)第2被嵌合部は、第1連結部62の端縁から軸方向ADに所定の長さに亘って切り欠かれるとともに、第2キー部材72を嵌合可能な第1切り欠き部622である。また、第4被嵌合部は、駆動ローラー43の端縁から軸方向ADに所定の長さに亘って切り欠かれるとともに、第2キー部材72を嵌合可能な第2切り欠き部434である。この構成によれば、第2被嵌合部と第4被嵌合部とが共に切り欠き部434,622であるので、軸方向ADに相対移動させることで連結部材61と駆動ローラー43とを回り止めされた状態に連結することができる。よって、回り止め状態に連結する連結作業が簡単で済む。
【0065】
(4)連結部材61は、第1切り欠き部622と第2切り欠き部434とを回転方向CDに位置合わせするために第2切り欠き部434を視認可能な切り欠き状の窓部623を有する。第1孔部621は、連結部材61の軸方向ADにおいて窓部623の形成範囲内に位置する。この構成によれば、第1切り欠き部622と第2切り欠き部434とを位置合わせする際に窓部623を介して確認できるので、位置合わせ作業がし易いうえ、第1孔部621が窓部623の形成範囲内に位置するので、軸装置60を小型化できる。
【0066】
(5)第1キー部材71は、2本で1対であり、嵌合のために圧入する方向の軸が同じである。この構成によれば、一対(2本)の第1キー部材71が対向する位置にあるので、対向する位置にない構成よりも精度が出やすい。
【0067】
(6)第2キー部材72は、2本で1対であり、回転方向CDの位置が互いに対向する位置関係にある。この構成によれば、嵌合された一対(2本)の第2キー部材72が対向する位置にあるので、対向する位置にない構成よりも精度が出やすい。
【0068】
(7)第1キー部材71と第2キー部材72とは、回転方向CDにおいて等間隔となるように配置される。この構成によれば、第1キー部材71と第2キー部材72とが回転方向CDに等角度間隔となるように位置するので、等角度間隔に位置しない構成よりも精度が出やすい。
【0069】
(8)第1キー部材71の長さL1は、第1連結部62の外径D1の1/2から、第1連結部62の厚さT1と駆動ローラー43の厚さT2との和を差し引いた値よりも短い。この構成によれば、2つの第1キー部材71が、例えば、対向する位置(例えば180度)に配置されていても、それぞれ対向する他方の第1キー部材71が邪魔になることなく、第1キー部材71を第1軸部材の一例である駆動ローラー43の筒内に打ち落とすことができる。よって、軸装置60の分解を比較的簡単に行うことができる。
【0070】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
【0071】
・前記実施形態において、第1被嵌合部を、孔部から切り欠き部に変更してもよい。また、第3被嵌合部を、孔部から切り欠き部に変更してもよい。この場合、端縁から軸方向ADに延びる幅広の切り欠き状の案内部を設け、この切り欠き状の案内部から周方向CDに延びる切り欠き部を設ける。例えば、第1被嵌合部と第3被嵌合部との両方が、共に切り欠き部であってもよい。この場合、第1軸部材の一例である駆動ローラー43と連結部材61とのうち一方(例えば連結部材61)の切り欠き部に第1キー部材71を嵌合する。この状態で、第1キー部材71を他方(例えば駆動ローラー43)の窓部に挿し込み、さらに、第1キー部材71と、他方の切り欠き部とを、周方向CDに相対移動させることで、第1キー部材71が軸方向ADの両面で切り欠き部に嵌合する。また、第1被嵌合部~第4被嵌合部のすべてが切り欠き部であってもよい。さらに、第1被嵌合部と第3被嵌合部とが、孔部と切り欠き部との組み合わせであってもよい。
【0072】
・前記実施形態において、第2被嵌合部を、切り欠き部から孔部に変更してもよい。また、第4被嵌合部を、切り欠き部から孔部に変更してもよい。例えば、第2被嵌合部と第4被嵌合部との両方が、共に孔部であってもよい。この場合、第2キー部材72を、第1軸部材の一例である駆動ローラー43の孔部と連結部材61の孔部との両方に圧入することで、第2キー部材72を周方向CDの両面で両方の孔部に対して嵌合する。また、第1被嵌合部~第4被嵌合部のすべてを孔部としてもよい。さらに、第2被嵌合部と第4被嵌合部とが、切り欠き部と孔部との組み合わせであってもよい。
【0073】
・第1キー部材71を1つ、第2キー部材72を2つ設けた構成でもよい。この場合、2つの第2キー部材72を180度ずつの位置に互いに対向する位置に設け、1つの第1キー部材71は、2つの第2キー部材72の間の90度となる位置に設けてもよい。その他、第1キー部材71と第2キー部材72の個数は、適宜設定してもよい。例えば、第1キー部材71と第2キー部材72とを3つ以上の複数個ずつ設けてもよいし、それぞれ2つ以上でかつ異なる数で設けてもよい。また、第1キー部材71が複数で、第2キー部材72が1つの組み合わせでもよい。
【0074】
・第1キー部材71は、軸装置60の分解時に第1軸部材の筒内に打ち落とす前に、対向する位置にある他方の第1キー部材71の先端に当たる長さであってもよい。
前記実施形態及び上記変更例において、特許文献1に開示された芯出し連結機構を備えてもよい。この場合、第1キー部材71によって、芯出し連結機構のねじの緩みを抑制できる。
【0075】
・媒体Mは、用紙に限定されず、合成樹脂製のフィルムや媒体、布、不織布、ラミネート媒体などでもよい。
・印刷装置11は、シリアルプリンターやラインプリンターに限定されず、キャリッジが主走査方向と副走査方向との2方向に移動可能なラテラル式プリンターでもよい。
【0076】
・印刷装置11は、インクジェット式プリンターに限らず、レーザープリンター等の電子写真式プリンター、ドットインパクト式プリンターや熱転写式プリンター、捺染装置、オフセット印刷装置でもよい。例えばオフセット印刷装置における、水ローラー、インキローラー、版胴、ブランケット及び圧胴のうちいずれか1つの回転軸(軸部材の一例)と連結部材とを連結する軸装置に適用できる。
【0077】
・軸装置は、第1軸部材と第2軸部材とを連結する構成であれば、第1軸部材は、駆動ローラー43に限定されない。第1軸部材は、例えば、排出ローラーでもよい。偏心カム等の回転式のカムを回転させる回転軸でもよい。動力を伝達する回転軸でもよい。
【0078】
以下、前記実施形態及び変更例から把握される技術思想を効果と共に記載する。
(A)印刷装置は、軸装置を備えた印刷装置であって、前記軸装置は、軸方向に並ぶ第1軸部材及び第2軸部材と、前記第1軸部材と連結可能な第1連結部及び前記第2軸部材と連結可能な第2連結部を有する連結部材と、前記第1軸部材と前記第1連結部とを連結させるための第1キー部材と、前記第1軸部材と前記第1連結部とを連結させるための第2キー部材と、を備え、前記第1軸部材は、前記第1連結部及び前記第2連結部を含む前記連結部材を介して、前記第2軸部材と連動して回転方向に回転可能であり、前記第1連結部は、前記第1キー部材と嵌合可能な第1被嵌合部と、前記第2キー部材と嵌合可能な第2被嵌合部と、を有し、前記第1軸部材は、前記第1キー部材と嵌合可能な第3被嵌合部と、前記第2キー部材と嵌合可能な第4被嵌合部と、を有し、前記第1キー部材は、前記第1被嵌合部と前記第3被嵌合部との両方に対して前記軸方向の両面で嵌合され、前記第2キー部材は、前記第2被嵌合部と前記第4被嵌合部との両方に対して前記回転方向の両面で嵌合される。
【0079】
この構成によれば、第1キー部材が、第1被嵌合部と第3被嵌合部との両方に対して軸方向の両面で嵌合することで、第1軸部材と第1連結部とが軸方向に抜け止めされた状態で連結される。また、第2キー部材が、第2被嵌合部と第4被嵌合部との両方に対して回転方向の両面が嵌合することで、第1軸部材と第1連結部とが回り止めされた状態で連結される。よって、第1軸部材と連結部材とが公差等の範囲内で繰り返し偏心回転することで、軸方向に成分をもつ外れ方向の力が加わっても、第1軸部材と連結部材は軸方向(外れ方向)にずれにくい。したがって、軸方向のずれに起因して偏心度合が助長されて継続使用するうちに過大な負荷がかかるようになることを抑制できる。例えば、第1軸部材が偏心回転したときに、第1軸部材に作用する過大な負荷を抑制できるので、偏心回転に起因する連結部材と第1軸部材との外れ方向のずれの進行を抑制したり、両者の連結の外れを回避できる。
【0080】
(B)上記印刷装置において、前記第1被嵌合部は、前記第1軸部材の端縁から前記軸方向に所定距離離れた部分に配置され、前記第1キー部材を嵌合可能な第1孔部であり、前記第3被嵌合部は、前記第1連結部の端縁から前記軸方向に所定距離離れた部分に配置され、前記第1キー部材を嵌合可能な第2孔部であってもよい。
【0081】
この構成によれば、第1キー部材の嵌合相手が孔部であるので、軸方向のずれを効果的に抑制できる。例えば、第1被嵌合部と第3被嵌合部を共に切り欠き部とした場合、第1キー部材を切り欠き部に圧入する際に周方向への相対移動が必要になるので、連結作業が面倒になりやすい。第1被嵌合部と第3被嵌合部が共に孔部であれば、第1キー部材を第1孔部と第2孔部に対して径方向に圧入すればよいので、周方向の相対移動を伴わない簡単な連結作業で済む。
【0082】
(C)上記印刷装置において、前記第2被嵌合部は、前記第1連結部の端縁から軸方向に所定の長さに亘って切り欠かれるとともに、前記第2キー部材を嵌合可能な第1切り欠き部であり、前記第4被嵌合部は、前記第1軸部材の端縁から軸方向に所定の長さに亘って切り欠かれるとともに、前記第2キー部材を嵌合可能な第2切り欠き部であってもよい。
【0083】
この構成によれば、第2キー部材の嵌合相手が切り欠き部であるので、連結部材と第1軸部材とを軸方向に相対移動させることで両者を回り止めされた状態に連結することができる。よって、回り止め状態に連結する連結作業が簡単で済む。
【0084】
(D)上記印刷装置において、前記連結部材は、前記第1切り欠き部と前記第2切り欠き部とを前記回転方向に位置合わせするために前記第2切り欠き部を視認可能な切り欠き状の窓部を有し、前記第1孔部は、前記連結部材の前記軸方向において前記窓部の形成範囲内に位置してもよい。
【0085】
この構成によれば、第1切り欠け部と前記第2切り欠け部とを位置合わせする際に窓部を介して確認できるので、位置合わせ作業がし易いうえ、第1孔部が窓部の形成範囲内に位置するので、連結部を小型化できる。
【0086】
(E)上記印刷装置において、前記第1キー部材は、2本で1対であり、圧入する方向の軸が同じであってもよい。
この構成によれば、一対(2本)の第1キー部材が対向するので、対向していない構成よりも精度が出やすい。
【0087】
(F)上記印刷装置において、前記第2キー部材は、2本で1対であり、前記回転方向の位置が互いに対向する位置関係にあってもよい。
この構成によれば、一対(2本)の第2キー部材が対向するので、対向していない構成よりも精度が出やすい。
【0088】
(G)上記印刷装置において、前記第1キー部材と前記第2キー部材とは、前記回転方向において等間隔となるように配置されてもよい。
この構成によれば、第1キー部材と第2キー部材とが回転方向に等間隔となるように位置するので、等間隔に位置しない構成よりも精度が出やすい。
【0089】
(H)上記印刷装置において、前記第1キー部材の長さは、前記第1連結部の外径の1/2から前記第1連結部の厚さと前記第1軸部材の厚さとの和を差し引いた値よりも短くてもよい。
【0090】
この構成によれば、第1キー部材を第1軸部材の筒内に打ち落とすことができる。よって、軸装置の分解を比較的簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0091】
11…印刷装置、12…支持台、13…筐体部、15…第2軸部材の一例としての駆動軸、16…軸受、17…歯車、20…支持部、21…第1の支持部、22…第2の支持部、23…第3の支持部、24…吸引機構、25…搬送装置、30…給送部、31…ロール体、32…ロール体支持部、33…保持部、34…給送モーター、35…回転検出器、40…搬送部、41…ローラー対、42…搬送モーター、421…出力軸、43…第1軸部材の一例としての駆動ローラー、431…ローラー部、432…第1端部、433…第3被嵌合部の一例としての第2孔部、434…第4被嵌合部の一例としての第2切り欠き部、435…ねじ孔、44…従動ローラー、45…支持部材、46…変更部、47…回転検出部、50…印刷部、51…ガイド軸、52…キャリッジ、53…印刷ヘッド、60…軸装置、61…連結部材、62…第1連結部、621…第1被嵌合部の一例としての第1孔部、622…第2被嵌合部の一例としての第1切り欠き部、623…窓部、63…第2連結部、631…嵌合穴、64…ねじ、70…連結機構、71…第1キー部材、711…斜面、72…第2キー部材、100…制御部、471…符号板、472…透光部、473…センサー、M…媒体、FD…搬送方向、X…幅方向(走査方向)、Y…搬送方向、Z…鉛直方向、AD…軸方向、CD…回転方向(周方向)、L1…長さ、D1…外径、T1…厚さ、T2…厚さ。