(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058762
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】慣性計測装置、及び慣性計測装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01C 19/5783 20120101AFI20240422BHJP
G01P 15/08 20060101ALI20240422BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20240422BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G01C19/5783
G01P15/08 102A
H05K1/14 E
H05K1/14 A
H01L29/84 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166059
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 佳邦
(72)【発明者】
【氏名】茅野 岳人
【テーマコード(参考)】
2F105
4M112
5E344
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105AA03
2F105AA06
2F105BB03
2F105BB17
2F105CD13
4M112AA02
4M112GA01
5E344AA02
5E344AA08
5E344BB02
5E344BB03
5E344CC05
5E344CD14
5E344DD02
5E344EE06
(57)【要約】
【課題】慣性センサーデバイスの特性が劣化することを抑えることが可能な慣性計測装置、及び慣性計測装置の製造方法を提供する。
【解決手段】慣性センサーデバイス10が搭載された第1基板と、第1基板とともに慣性センサーデバイス10を収納する筐体と、慣性センサーデバイス10と筐体との間に充填された充填部材と、を有する慣性センサーモジュール100と、慣性センサーデバイス10からの信号を処理する処理回路20が搭載された第2基板22と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性センサーデバイスが搭載された第1基板と、前記第1基板とともに前記慣性センサーデバイスを収納する筐体と、前記慣性センサーデバイスと前記筐体との間に充填された充填部材と、を有する慣性センサーモジュールと、
前記慣性センサーデバイスからの信号を処理する処理回路が搭載された第2基板と、
を備える、慣性計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の慣性計測装置であって、
前記慣性センサーデバイスは、第1センサーデバイスと、第2センサーデバイスと、を有する、慣性計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の慣性計測装置であって、
前記慣性センサーデバイスは、第1センサーデバイスと、第2センサーデバイスと、第3センサーデバイスと、を有する、慣性計測装置。
【請求項4】
請求項3に記載の慣性計測装置であって、
前記第1センサーデバイス、及び、前記第2センサーデバイスは、前記第1基板に対し垂直に配置され、前記充填部材により覆われる、慣性計測装置。
【請求項5】
請求項4に記載の慣性計測装置であって、
前記第1センサーデバイスは、前記第1基板に第1中継基板を介して垂直に配置され、
前記第2センサーデバイスは、前記第1基板に第2中継基板を介して垂直に配置され、
前記第3センサーデバイスは、前記第1基板に平行に実装される、慣性計測装置。
【請求項6】
請求項1に記載の慣性計測装置であって、
前記慣性センサーデバイスは、加速度センサーデバイスを有する、慣性計測装置。
【請求項7】
請求項1に記載の慣性計測装置であって、
前記第1基板は、前記慣性センサーデバイスの搭載面とは反対側の面に第1接続端子を有し、
前記第2基板は、前記第1接続端子と接続される第2接続端子を有する、慣性計測装置。
【請求項8】
請求項1に記載の慣性計測装置であって、
前記第2基板は、外部機器と接続されるコネクターを備える、慣性計測装置。
【請求項9】
請求項1に記載の慣性計測装置であって、
前記処理回路を収納する凹部を有するベースを備える、慣性計測装置。
【請求項10】
請求項1に記載の慣性計測装置であって、
前記慣性センサーモジュールを2つ以上備える、慣性計測装置。
【請求項11】
第1基板と筐体との間の空間において、前記第1基板上に慣性センサーデバイスを配置し、前記空間を充填部材で充填する工程と、
前記慣性センサーデバイスからの信号を処理する処理回路が搭載された第2基板を準備する工程と、
前記第1基板と前記第2基板とを電気的に接続する工程と、
を有する、慣性計測装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の慣性計測装置の製造方法であって、
前記第1基板と前記第2基板とを電気的に接続する工程の前に、前記第1基板に設けられた第1接続端子を用いて前記慣性センサーデバイスの特性を検査する工程を有する、慣性計測装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性計測装置、及び慣性計測装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1つの基板に、慣性センサーや処理回路などの制御ICが配置されたセンサーユニットの構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、同じ基板に慣性センサーや制御ICが配置されているため、制御ICで発生したノイズが慣性センサーに伝わり、慣性センサーの特性に影響を及ぼす恐れがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
慣性計測装置は、慣性センサーデバイスが搭載された第1基板と、前記第1基板とともに前記慣性センサーデバイスを収納する筐体と、前記慣性センサーデバイスと前記筐体との間に充填された充填部材と、を有する慣性センサーモジュールと、前記慣性センサーデバイスからの信号を処理する処理回路が搭載された第2基板と、を備える。
【0006】
慣性計測装置の製造方法は、第1基板と筐体との間の空間において、前記第1基板上に慣性センサーデバイスを配置し、前記空間を充填部材で充填する工程と、前記慣性センサーデバイスからの信号を処理する処理回路が搭載された第2基板を準備する工程と、前記第1基板と前記第2基板とを電気的に接続する工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】慣性センサーモジュールの構成を示す斜視図。
【
図4】慣性センサーモジュールの一部の構成を示す平面図。
【
図5】慣性センサーモジュールの裏側の構成を示す斜視図。
【
図6】処理回路を搭載した第2基板の構成を示す平面図。
【
図17】変形例の慣性計測装置の構成を示す斜視図。
【
図19】変形例の慣性センサーデバイスの構成を示す平面図。
【
図20】変形例の慣性センサーデバイスの構成を示す側面図。
【
図21】変形例の慣性センサーデバイスの構成を示す側面図。
【
図22】変形例の慣性センサーデバイスの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の各図においては、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸、及びZ軸として説明する。X軸に沿う方向を「X方向」、Y軸に沿う方向を「Y方向」、Z軸に沿う方向を「Z方向」とし、矢印の方向が+方向であり、+方向と反対の方向を-方向とする。なお、+Z方向を「上」又は「上方」又は「表側」、-Z方向を「下」又は「下方」又は「裏側」ということもあり、+Z方向及び-Z方向から見ることを平面視あるいは平面的ともいう。また、Z方向+側の面を「上面」又は「表面」、これと反対側となるZ方向-側の面を「下面」又は「裏面」として説明する。
【0009】
まず、
図1及び
図2を参照しながら、慣性計測装置1000の構成を説明する。
【0010】
図1に示すように、慣性計測装置1000は、例えば、自動車、農業機械、建設機械、ロボット、及びドローンなどの移動体の姿勢や挙動を検出する慣性計測装置である。慣性計測装置1000は、慣性センサーデバイス10を有する慣性センサーモジュール100と、慣性センサーデバイス10からの信号を処理する処理回路20が搭載された第2基板22と、処理回路20を収納するベース300と、を備えている。なお、処理回路20と第2基板22とを合わせて処理基板200と称する。処理基板200は後述の外部コネクター21を備えていてもよい。
【0011】
図2に示すように、慣性計測装置1000の第2基板22は、裏面200bに、処理回路20と、外部機器と電気的に接続するためのコネクターとしての外部コネクター21と、が配置されている。
【0012】
ベース300には、処理回路20を収納する凹部31と、外部コネクター21を収納する貫通孔32と、が設けられている。このように、ベース300を備えることにより、処理回路20を外部から保護することが可能となり、処理回路20にダメージが加わることを抑えることができる。また、ベース300は、外部コネクター21にダメージが加わることを抑えることができるとともに、貫通孔32を介して外部機器と接続可能に構成されている。
【0013】
次に、
図3~
図5を参照しながら、慣性センサーモジュール100の構成を説明する。なお、
図4は、
図3に示す慣性センサーモジュール100から筐体12を外した状態を示す平面図である。
図5は、
図4に示す第1基板11を裏面11b側から見た斜視図である。
【0014】
図3及び
図4に示すように、慣性センサーモジュール100は、慣性センサーデバイス10が搭載された第1基板11と、第1基板11とともに慣性センサーデバイス10を収納する筐体12と、慣性センサーデバイス10と筐体12との間に充填された充填部材400(
図9参照)と、を有する。
【0015】
図4に示すように、慣性センサーデバイス10は、第1センサーデバイス10aと、第2センサーデバイス10bと、第3センサーデバイス10cと、を有する。慣性センサーデバイス10は、例えば、角速度を検出するジャイロセンサーである。
【0016】
例えば、第1センサーデバイス10aはX軸回りの角速度を検出するX軸ジャイロセンサーデバイスであり、第2センサーデバイス10bはY軸回りの角速度を検出するY軸ジャイロセンサーデバイスであり、第3センサーデバイス10cはZ軸回りの角速度を検出するZ軸ジャイロセンサーデバイスである。この場合、第1センサーデバイス10aはX軸に対し垂直に配置され、第2センサーデバイス10bはY軸に対し垂直に配置され、第3センサーデバイス10cはZ軸に対し垂直に配置される。
【0017】
ここで、後述の
図22と同様に、第1センサーデバイス10aに設けられた振動ジャイロセンサー素子が検出軸となるX軸の延在方向と直交するように配置され、第2センサーデバイス10bに設けられた振動ジャイロセンサー素子が検出軸となるY軸の延在方向と直交するように配置されていてもよいし、第3センサーデバイス10cに設けられた振動ジャイロセンサー素子が検出軸となるZ軸の延在方向と直交するように配置されていてもよい。第1センサーデバイス10aはX軸方向の加速度を検出するX軸加速度センサーデバイスであり、第2センサーデバイス10bはY軸方向の加速度を検出するY軸加速度センサーデバイスであり、第3センサーデバイス10cはZ軸方向の加速度を検出するZ軸加速度センサーデバイスであってもよい。第1センサーデバイス10a、第2センサーデバイス10b、第3センサーデバイス10cは、互いに異なる検出軸に対応したセンサーデバイスであってもよい。
【0018】
第1センサーデバイス10a、第2センサーデバイス10b、第3センサーデバイス10cは、それぞれ、X軸回りの角速度を検出するX軸ジャイロセンサーデバイス、Y軸回りの角速度を検出するY軸ジャイロセンサーデバイス、Z軸回りの角速度を検出するZ軸ジャイロセンサーデバイス、X軸方向の加速度を検出するX軸加速度センサーデバイス、Y軸方向の加速度を検出するY軸加速度センサーデバイス、及びZ軸方向の加速度を検出するZ軸加速度センサーデバイスのいずれかであってもよい。
【0019】
例えば、第1センサーデバイス10aはX軸方向の加速度を検出するX軸加速度センサーデバイスであり、第2センサーデバイス10bはY軸方向の加速度を検出するY軸加速度センサーデバイスであり、第3センサーデバイス10cはZ軸回りの角速度を検出するZ軸ジャイロセンサーデバイスであってもよい。さらに、第1センサーデバイス10a、第2センサーデバイス10b、第3センサーデバイス10cは、複数の検出軸を有していてもよい。
【0020】
例えば、第1センサーデバイス10a、第2センサーデバイス10b、第3センサーデバイス10cの少なくともいずれかは、X軸回りの角速度及びY軸回りの角速度を検出するジャイロセンサーデバイスであってもよいし、X軸回りの角速度、Y軸回りの角速度及びZ軸回りの角速度を検出するジャイロセンサーデバイスであってもよい。
【0021】
また、例えば、第1センサーデバイス10a、第2センサーデバイス10b、第3センサーデバイス10cの少なくともいずれかは、X軸方向の加速度及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサーデバイスであってもよいし、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度及びZ軸方向の加速度を検出する加速度センサーデバイスであってもよい。
【0022】
第1センサーデバイス10a及び第2センサーデバイス10bは、例えば、第1基板11に対し垂直に配置され(
図8参照)、充填部材400によって覆われている。このように、慣性センサーデバイス10が充填部材400で覆われているので、慣性センサーデバイス10のセンサー特性が変化することを抑えることができる。
【0023】
充填部材400は、例えば、260℃程度の耐熱性を有する、熱硬化型のエポキシ系の樹脂材料である。なお、充填部材400は、エポキシ系の樹脂材料に限定されず、ウレタン樹脂を用いるようにしてもよい。充填部材400は、硬化後の硬度が、JIS7215-1986のデュロメータ硬さ試験におけるタイプDデュロメータで、80D以上であることが好ましい。
【0024】
なお、慣性センサーデバイス10は、ジャイロセンサーデバイスや加速度センサーデバイスに限定されず、例えば、速度、圧力、変位、姿勢、又は重力等を検知するセンサーデバイスであってもよい。
【0025】
筐体12は、例えば、アルミニウム(Al)で構成されている。これにより、十分に硬質な容器となる。また、アルミニウムに限定されず、他の金属やセラミックスを用いるようにしてもよい。筐体12を備えることにより、慣性センサーデバイス10を、例えば、塵、埃、湿気、紫外線、衝撃等から保護することができる。
また、第1基板11の線膨張係数をa、充填部材400の線膨張係数をb、筐体12の線膨張係数をcとしたときに、3者の線膨張係数が数式(1)の関係性となることが好ましい。
【0026】
a≒b>>c ……… 式(1)。
【0027】
このように、筐体12や充填部材400に、熱膨張係数の小さい材料を用いるので、第1基板11の熱膨張や収縮も小さくなり、慣性計測装置1000の特性を向上できる。
例えば、上記の好適例における材質では、第1基板11はガラスエポキシ基板で線膨張係数aは40ppm/℃であり、充填部材400はエポキシ接着剤で線膨張係数aは41ppm/℃であり、筐体12はアルミニウム製で23ppm/℃となり、数式(1)の関係性となっていることが解る。
【0028】
図5に示すように、第1基板11の裏面11b側、言い換えれば、第1基板11の慣性センサーデバイス10の搭載面としての表面11aとは反対側の面には、慣性センサーデバイス10と処理基板200との間でデータを送受するための第1接続端子13が複数配置されている。慣性センサーデバイス10は、第1基板11に設けられた不図示の配線により第1接続端子13と接続されている。
【0029】
次に、
図6及び
図7を参照しながら、処理基板200の構成を説明する。なお、
図6は、
図2に示す処理基板200を裏面200b側から見た平面図である。
図7は、
図2に示す処理基板200を表面200a側から見た斜視図である。
【0030】
図6に示すように、第2基板22の裏面200b側には、慣性センサーデバイス10からの信号を処理する処理回路20と、外部機器とデータを送受するための外部コネクター21と、が配置されている。
【0031】
処理回路20は、慣性センサーデバイス10から出力される検出信号が入力され、検出信号に基づく計測データを外部コネクター21から他の装置に出力する。処理回路20は、慣性センサーデバイス10の駆動や慣性計測装置1000の各部を制御する。また、処理回路20は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部等を内蔵する。さらに、処理回路20は、慣性センサーデバイス10からの検出信号に基づいて、慣性センサーモジュール100の姿勢、速度、角度等を算出する演算を行ってもよい。
【0032】
図7に示すように、第2基板22の表面200a側には、慣性センサーモジュール100と処理回路20との間でデータを送受するための第2接続端子23が複数配置されている。したがって、第2接続端子23は、第2基板22の一方の面である表面200a側に設けられ、第2基板22の他方の面である裏面200b側には外部コネクター21が設けられる。即ち、第2接続端子23と外部コネクター21は、第2基板22において互いに異なる面に設けられる。処理回路20は、第2基板22に設けられた不図示の配線により第2接続端子23と接続されている。また、表面200aから裏面200bに貫通するスリット24が、第2基板22の端部側に設けられている。スリット24は、第2基板22に、慣性センサーモジュール100を固定する際の案内溝として用いられる。
【0033】
以上のように、処理回路20が搭載された第2基板22が、慣性センサーデバイス10が搭載された第1基板11とは別体で構成されているので、処理回路20からノイズが発生した場合でも、ノイズが第1基板11やこれに搭載された慣性センサーデバイス10に伝わることを抑えることができる。また、第1基板11と筐体12との間において慣性センサーデバイス10が充填部材400で充填されていることにより、センサー特性が変化することを抑えることができる。よって、慣性センサーデバイス10の特性が劣化することを抑えることができる。また、慣性センサーデバイス10から駆動振動を発生した場合では、第1基板11と筐体12との間において慣性センサーデバイス10が充填部材400で充填されているので、慣性センサーデバイス10からの駆動振動が第2基板22やこれに搭載された処理回路20、さらには慣性計測装置1000の外部に伝わるのを抑制できる。
【0034】
次に、
図8~
図16を参照しながら、慣性計測装置1000の製造方法を説明する。
【0035】
まず、
図8に示す工程では、センサーデバイス10a,10b,10cが搭載された第1基板11を準備する。
【0036】
次に、
図9に示す工程では、筐体12の中に充填部材400を供給する。また、筐体12には、第2基板22のスリット24に嵌め込むための爪12aが設けられている。
【0037】
ここで、爪12aの長さをLとし、第1基板11の厚みをt1(
図8参照)とし、第2基板22の厚みをt2(
図13参照)とした場合、1.3×t1<L<t1+t2の式が成り立つように、長さLを決めることが望ましい。このように長さLを設定することにより、筐体の爪12aを、第2基板22に嵌め込むことができると共に、第2基板22の厚みt2の中に納めることができる。
【0038】
充填部材400は、例えば、260℃程度の耐熱性を有する、熱硬化型のエポキシ系の樹脂材料である。なお、充填部材400は、エポキシ系の樹脂材料に限定されず、ウレタン樹脂を用いるようにしてもよい。第1基板11と筐体12との間に充填部材400を充填することで、慣性センサーデバイス10は、外からの応力の影響をほぼ受けない構造となっており、センサー特性はほとんど変化しない。
【0039】
次に、
図10に示す工程では、センサーデバイス10a,10b,10cが搭載された第1基板11と、充填部材400の入った筐体12とを、合わせる。
【0040】
なお、第1基板11には、筐体12の爪12aが嵌る凹部15aが、対向する側面の2箇所に設けられている。また、第1基板11には、筐体12と第1基板11との間に隙間を空けるための凹部15bが、凹部15aとは異なる方向の、対向する側面の2箇所に設けられている。
【0041】
ここで、第1基板11の凹部15bの窪み量をW1とし、筐体12の厚みをRとした場合、W1≧2Rの式が成り立つように、窪み量W1を決めることが望ましい。このような窪み量W1に設定することにより、第1基板11と筐体12との間に隙間W2を設けることができる。よって、充填部材400を熱硬化させた際に発生するガスを、筐体12の中から外部に排出させることができる。
【0042】
筐体12の爪12aに、第1基板11の凹部15aを嵌め込むようにして、第1基板11を、充填部材400で満たされた筐体12に挿入する。次に、恒温槽で充填部材400を熱硬化させる。この際、第1基板11と筐体12との間に隙間W2を設けたことにより、発生するガスを効率よく排出することができる。
【0043】
以上により、
図11に示すように、第1基板11と筐体12との間の空間に、充填部材400で充填された慣性センサーモジュール100が完成する。なお、筐体12や充填部材400に、熱膨張係数の小さい材料を用いるので、第1基板11の熱膨張や収縮も小さくなり、慣性センサーデバイス10の振動漏れを抑制することができる。また、慣性センサーデバイス10に加速度センサーデバイスを用いた場合には、ヒステリシス特性を小さくすることができる。
【0044】
次に、
図12に示すように、複数の慣性センサーデバイス10の特性をまとめて検査する。具体的には、第1基板11に設けられた第1接続端子13と、検査基板500に設けられたソケット(図示せず)とを接触させて、例えば、慣性センサーデバイス10の温度特性やノイズ特性を検査する。
【0045】
このように、慣性センサーデバイス10の特性を検査するので、慣性計測装置1000が完成する前に、慣性センサーデバイス10の不良を取り除くことができる。
【0046】
次に、
図13に示すように、処理回路20及び外部コネクター21が搭載された第2基板22、つまり、処理基板200を準備する。
【0047】
次に、
図14に示すように、第1基板11と第2基板22とを電気的に接続する。具体的には、慣性センサーモジュール100と処理基板200とを、爪12aをスリット24に嵌めながら合わせる。そして、第1基板11に設けられた第1接続端子13と、第2基板22に設けられた第2接続端子23とを、例えば、はんだ実装することにより、電気的に接続される。
【0048】
次に、
図15に示すように、慣性センサーモジュール100を取り付けた処理基板200と、ベース300とを、接着剤を用いて接着する。以上により、
図16に示すように、慣性計測装置1000が完成する。
【0049】
以上述べたように、本実施形態の慣性計測装置1000は、慣性センサーデバイス10が搭載された第1基板11と、第1基板11とともに慣性センサーデバイス10を収納する筐体12と、慣性センサーデバイス10と筐体12との間に充填された充填部材400と、を有する慣性センサーモジュール100と、慣性センサーデバイス10からの信号を処理する処理回路20が搭載された第2基板22と、を備える。
【0050】
この構成によれば、第1基板11に慣性センサーデバイス10が搭載され、第2基板22に処理回路20が搭載され、更に、慣性センサーデバイス10を有する第1基板11と筐体12との間に充填部材400が充填されているので、処理回路20からノイズが発生した場合でも、ノイズが慣性センサーデバイス10に伝わることを抑えることができる。よって、慣性センサーデバイス10の特性が劣化することを抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態の慣性計測装置1000において、慣性センサーデバイス10は、第1センサーデバイス10aと、第2センサーデバイス10bと、第3センサーデバイス10cと、を有することが好ましい。
【0052】
この構成によれば、第1センサーデバイス10a、第2センサーデバイス10b、及び第3センサーデバイス10cが充填部材400により覆われるので慣性センサーデバイス10のセンサー特性が変化することを抑えることができる。また、第1センサーデバイス10a、第2センサーデバイス10b、第3センサーデバイス10cが充填部材400により覆われるので、第1センサーデバイス10a、第2センサーデバイス10b、第3センサーデバイス10cを所定の位置関係に固定できる。第1センサーデバイス10aはX軸回りの角速度を検出するX軸ジャイロセンサーデバイスであり、第2センサーデバイス10bはY軸回りの角速度を検出するY軸ジャイロセンサーデバイスであり、第3センサーデバイス10cはZ軸回りの角速度を検出するZ軸ジャイロセンサーデバイスであってもよい。
【0053】
なお、第1センサーデバイス10a、第2センサーデバイス10b、及び第3センサーデバイス10cのうち1つを省略して慣性センサーデバイス10は2つのセンサーデバイスを有していてもよいし、1以上のセンサーデバイスを追加して慣性センサーデバイス10は4つ以上のセンサーデバイスを有していてもよい。この場合、例えば、第1センサーデバイス10a及び第2センサーデバイス10bが充填部材400により覆われるので慣性センサーデバイス10のセンサー特性が変化することを抑えることができる。例えば、第1センサーデバイス10aはZ軸回りの角速度を検出するZ軸ジャイロセンサーデバイスであり、第2センサーデバイス10bはX軸方向の加速度、Y軸方向の加速度及びZ軸方向の加速度を検出する加速度センサーデバイスであってもよいし、第1センサーデバイス10aはZ軸回りの角速度を検出するZ軸ジャイロセンサーデバイスであり、第2センサーデバイス10bはX軸回りの角速度、Y軸回りの角速度及びZ軸回りの角速度を検出するとともにX軸方向の加速度、Y軸方向の加速度及びZ軸方向の加速度を検出する加センサーデバイスであってもよい。
【0054】
また、本実施形態の慣性計測装置1000において、第1センサーデバイス10a及び第2センサーデバイス10bは、第1基板11に対し垂直に配置され、充填部材400により覆われることが好ましい。この構成によれば、第1センサーデバイス10a、第2センサーデバイス10bが第1基板11に垂直に配置され、充填部材400で覆われているので、慣性センサーデバイス10のセンサー特性が変化することを抑えることができる。第1センサーデバイス10a及び第2センサーデバイス10bが、第1基板11に水平な方向より垂直な方向に長い形状であったとしても、充填部材400により堅牢に固定できる。
【0055】
また、本実施形態の慣性計測装置1000において、慣性センサーデバイス10は、加速度センサーデバイスを有することが好ましい。この構成によれば、加速度センサーデバイスを有するので、加速度を検出できる。これにより、慣性センサーユニット1は、加速度だけでなく、重力や動き、振動、衝撃などの大きさを演算して出力することも可能である。
【0056】
また、本実施形態の慣性計測装置1000において、第1基板11は、慣性センサーデバイス10の搭載面とは反対側の面に第1接続端子13を有し、第2基板22は、第1接続端子13と接続される第2接続端子23を有することが好ましい。この構成によれば、第1基板11と第2基板22とが、第1接続端子13及び第2接続端子23を介して接続されているので、慣性センサーデバイス10からの信号を、処理回路20で処理することができる。
【0057】
また、本実施形態の慣性計測装置1000において、第2基板22は、外部機器と接続される外部コネクター21を備えることが好ましい。この構成によれば、第2基板22が外部コネクター21を備えているので、外部機器とデータを送受することができる。また、外部コネクター21は、慣性センサーデバイス10が搭載される第1基板11とは異なる第2基板22を設けることで、外部コネクター21に印加される振動などが慣性センサーモジュール100に影響するのを抑制できる。
【0058】
また、本実施形態の慣性計測装置1000は、処理回路20を収納する凹部31を有するベース300を備えることが好ましい。この構成によれば、ベース300を備えるので、処理回路20を外部から保護することが可能となり、処理回路20にダメージが加わることを抑えることができる。
【0059】
また、本実施形態の慣性計測装置1000の製造方法は、第1基板11と筐体12との間の空間において、第1基板11上に慣性センサーデバイス10を配置し、空間を充填部材400で充填する工程と、慣性センサーデバイス10からの信号を処理する処理回路20が搭載された第2基板22を準備する工程と、第1基板11と第2基板22とを電気的に接続する工程と、を有する。
【0060】
この方法によれば、第1基板11に慣性センサーデバイス10を配置し、第2基板22に処理回路20を配置し、更に、第1基板11と筐体12との間の空間に充填部材400を充填するので、処理回路20からノイズが発生した場合でも、ノイズが慣性センサーデバイス10に伝わることを抑えることができる。よって、慣性センサーデバイス10の特性が劣化することを抑えることができる。
【0061】
また、本実施形態の慣性計測装置1000の製造方法は、第1基板11と第2基板22とを電気的に接続する工程の前に、第1基板11に設けられた第1接続端子13を用いて慣性センサーデバイス10の特性を検査する工程を有することが好ましい。この方法によれば、慣性センサーデバイス10の特性を検査するので、慣性計測装置1000が完成する前に、慣性センサーデバイス10あるいは慣性センサーモジュール100の不良を取り除くことができる。
【0062】
以下、上記した実施形態の変形例を説明する。
【0063】
上記した実施形態の慣性計測装置1000の構成に限定されず、例えば、
図17及び
図18に示す構成にしてもよい。
図17は、変形例の慣性計測装置1000Aの構成を示す斜視図である。
図18は、
図17に示す慣性計測装置1000Aの処理基板200Aの構成を示す斜視図である。
【0064】
図17に示すように、変形例の慣性計測装置1000Aは、2つの慣性センサーモジュール100A,100Bを備えている。つまり、複数の慣性センサーデバイス10を複数用いた、所謂、マルチIMU(Inertial Measurement Unit)として機能する。なお、各慣性センサーモジュール100A,100Bの構成は、上記した慣性センサーモジュール100と同様の構成である。また、処理基板200Aは、第2基板22の平面サイズが大きくなり、端子数が多くなるものの、処理基板200の構成と同様の構成である。
【0065】
このような、変形例の慣性計測装置1000Aによれば、2個の慣性センサーモジュール100A,100Bから得られた各計測値に基づいて、センサー特性を平均化することが可能となり、センサーのノイズを小さくすることができる。なお、慣性センサーモジュール100A,100Bの数量は、2個であることに限定されず、3個以上配置するようにしてもよい。
【0066】
処理回路20は、慣性センサーモジュール100A,100Bからの信号を処理する。処理回路20は、慣性センサーモジュール100A,100Bの各計測値を用いて演算する演算部を備える。また、処理回路20は、慣性計測装置1000Aの各部、特に、2つの慣性センサーモジュール100A,100Bの駆動を制御する。処理回路20の演算部は、慣性センサーモジュール100A,100Bから得られた各計測値としての慣性データの平均値を演算する。演算される慣性データは角速度や加速度であってもよい。
【0067】
なお、一般的に、慣性センサーモジュール100A,100Bにより出力される信号は、組み立て時のずれ等による複数の検出軸に対するミスアライメントを有する。このため、慣性計測装置1000Aは、慣性センサーモジュール100A,100Bの信号に対して、予め決定された回転行列等の補正係数を適用するミスアライメント補正を実行してもよい。この際に、慣性センサーモジュール100A,100Bの検出軸に対する信号を、互いに直交する3軸の信号になるように変換してもよい。ここで、互いに直交する3軸は、慣性計測装置1000Aの外形に対して設定されてもよい。
【0068】
以上のように、変形例の慣性計測装置1000Aは、慣性センサーモジュール100A,100Bを2つ以上備えることが好ましい。この構成によれば、慣性センサーモジュール100A,100Bを2つ以上備えるので、複数の慣性センサーデバイスを用いて1つの特性を出力する、所謂、マルチIMUとして機能させることができる。
【0069】
また、上記したように、第1センサーデバイス10a及び第2センサーデバイス10bは、第1基板11に対し、単体で垂直に配置されている。垂直に配置する手法は、
図19~
図22に示すようにしてもよい。
図19~
図21に示す、変形例の慣性計測装置1000B(慣性センサーモジュール100C)のセンサーデバイス1010a,1010bは、中継基板1500a,1500bに実装された状態で、第1基板11上に配置されている。
【0070】
具体的には、
図20に示すように、第1中継基板1500aは、第1センサーデバイス1010aよりも一回り大きいサイズの長方形状の基板であり、第1基板11に対して垂直に配置される。第1中継基板1500aとしては、ガラスエポキシ基板などのリジット基板を用いる。第1中継基板1500aの表面には、第1センサーデバイス1010aが実装されている。
【0071】
第1中継基板1500bの裏面には、複数本のピンヘッダー1041が実装されている(
図21参照)。ピンヘッダー1041は、2枚の基板間を接続するための金属製の棒状部品であり、ピンの末端は第1基板11のビアホールに挿通され、ハンダ付けされる。第1中継基板1500bは、複数本のピンヘッダー1041により、第1基板11に立設した状態で実装される。
【0072】
また、複数本のピンヘッダー1041は、第1中継基板1500aと第1基板11との間の電気的な配線も兼ねている。詳しくは、第1センサーデバイス1010aの駆動電圧や、検出信号は、複数本のピンヘッダー1041を介して第1基板11に送受信される。つまり、第1センサーデバイス1010aは、第1中継基板1500aを介して第1基板11に電気的に接続される。
【0073】
このように、変形例の慣性計測装置1000Bにおいて、第1センサーデバイス1010aは、第1基板11に第1中継基板1500aを介して垂直に配置され、第2センサーデバイス1010bは、第1基板11に第2中継基板1500bを介して垂直に配置され、第3センサーデバイス10cは、第1基板11に平行に実装されることが好ましい。この構成によれば、第1、第2センサーデバイス1010a,1010bが第1基板11に中継基板1500a,1500bを介して垂直に配置される。例えば、第1センサーデバイス1010aはX軸回りの角速度を検出するX軸ジャイロセンサーであり、第2センサーデバイス1010bはY軸回りの角速度を検出するY軸ジャイロセンサーデバイスであり、第3センサーデバイス1010cはZ軸回りの角速度を検出するZ軸ジャイロセンサーデバイスである。この場合、第1センサーデバイス1010a及び第1中継基板1500aはX軸に対し垂直に配置され、第2センサーデバイス1010b及び第2中継基板1500bはY軸に対し垂直に配置され、第3センサーデバイス1010cはZ軸に対し垂直に配置される。ここで、後述の
図22と同様に、第1センサーデバイス1010aに設けられた振動ジャイロセンサー素子が検出軸となるX軸の延在方向と直交するように配置され、第2センサーデバイス1010bに設けられた振動ジャイロセンサー素子が検出軸となるY軸の延在方向と直交するように配置されていてもよいし、第3センサーデバイス1010cに設けられた振動ジャイロセンサー素子が検出軸となるZ軸の延在方向と直交するように配置されていてもよい。
【0074】
また、上記したように、第1基板11に、センサーデバイス10a,10b,1010a,1010bを配置することに限定されず、
図22に示すようにしてもよい。
図22は、変形例の第1センサーデバイス1037aの構成を示す斜視図である。
図22に示すように、変形例の第1センサーデバイス1037aは、縦型パッケージを備えた第1センサーデバイス1037aである。
【0075】
図22に示すように、変形例の第1センサーデバイス1037aは、例えば、振動ジャイロセンサー素子1050が縦に配置されている。縦方向とは、振動ジャイロセンサー素子1050が、検出軸となるX軸の延在方向と直交するように配置されていることをいう。第1センサーデバイス1037aの実装面1043には、複数の実装端子1044が設けられている。図示しない第2センサーデバイス1037bも、第1センサーデバイス1037aと同じ構成としてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10…慣性センサーデバイス、10a…第1センサーデバイス、10b…第2センサーデバイス、10c…第3センサーデバイス、11…第1基板、11a…表面、11b…裏面、12…筐体、12a…爪、13…第1接続端子、15a,15b…凹部、20…処理回路、21…外部コネクター、22…第2基板、23…第2接続端子、24…スリット、31…凹部、32…貫通孔、100,100A…慣性センサーモジュール、200…処理基板、200a…表面、200b…裏面、200A…処理基板、300…ベース、400…充填部材、500…検査基板、1000,1000A…慣性計測装置、1010a…第1センサーデバイス、1010b…第2センサーデバイス、1037a…第1センサーデバイス、1037b…第2センサーデバイス、1041…ピンヘッダー、1043…実装面、1044…実装端子、1050…振動ジャイロセンサー素子、1500a…第1中継基板、1500b…第2中継基板。