(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005878
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B41J2/01 203
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106305
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥爾
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB03
2C056EB07
2C056EB35
2C056EC03
2C056EC07
2C056EC42
2C056EC77
2C056FA02
2C056FA10
2C056HA38
(57)【要約】
【課題】吐出タイミングの調整を適切に実行可能な新規技術を提供する。
【解決手段】画像形成装置において、コントローラ65は、吐出ヘッド31によるインク液滴の吐出を制御し、更には、記録媒体に対する吐出ヘッドの相対移動を制御するように構成される。コントローラは、設定パラメータに従う速度で吐出ヘッドが相対移動するように、吐出ヘッドの相対移動を制御する。コントローラは、速度検出器により検出された相対速度としての検出速度に基づき、インク液滴の吐出タイミングに関する遅延量を決定し、吐出ヘッドが、基準タイミングから遅延量だけ時間的に遅れた吐出タイミングで、インク液滴を吐出するように、吐出ヘッドに対する駆動信号を生成する。遅延量は、吐出タイミングの前回遅延量、及び、設定パラメータの少なくとも一方に基づいて制限された範囲内で、基準速度に対する検出速度の比に応じた時間に決定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク液滴の吐出により、記録媒体に画像を形成するように構成される吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドを、前記記録媒体に対し相対移動させるように構成される移動機構と、
前記記録媒体に対する前記吐出ヘッドの相対速度を検出するように構成される速度検出器と、
前記吐出ヘッドによる前記インク液滴の吐出を制御し、更には、前記移動機構を通じて前記記録媒体に対する前記吐出ヘッドの相対移動を制御するように構成されるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
設定パラメータに従う速度で前記吐出ヘッドが相対移動するように、前記吐出ヘッドの前記相対移動を制御し、
前記インク液滴の吐出タイミングを指定する駆動信号を、前記吐出ヘッドに入力することにより、前記吐出ヘッドによる前記インク液滴の吐出を制御し、
前記速度検出器により検出された前記相対速度としての検出速度に基づき、前記インク液滴の吐出タイミングに関する遅延量を決定し、前記吐出ヘッドが、基準タイミングから前記遅延量だけ時間的に遅れた吐出タイミングで、前記インク液滴を吐出するように、前記駆動信号を生成し、
前記遅延量は、吐出タイミングの前回遅延量、及び、前記設定パラメータの少なくとも一方に基づいて制限された範囲内で、基準速度に対する前記検出速度の比に応じた時間に決定される画像形成装置。
【請求項2】
前記基準タイミングは、前記吐出ヘッドの位置に応じて定まる請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
エンコーダ信号として、前記吐出ヘッドの変位に応じた信号を出力するエンコーダ
を備え、
前記コントローラは、前記エンコーダ信号に対して前記遅延量に応じた処理を加えて前記駆動信号を生成する請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定パラメータは、前記吐出ヘッドの速度プロファイルを定義し、
前記速度プロファイルは、加速区間及び定速区間、並びに、前記定速区間及び減速区間の少なくとも一方を含み、
前記コントローラは、前記速度プロファイルに従って、前記加速区間では、前記吐出ヘッドが前記記録媒体に対して相対的に所定速度まで加速し、前記加速区間に続く前記定速区間では、前記吐出ヘッドが前記記録媒体に対して相対的に前記所定速度で定速運動し、前記定速区間に続く前記減速区間では、前記吐出ヘッドが前記記録媒体に対して相対的に停止するまで減速するように、前記吐出ヘッドの前記相対移動を制御し、
前記インク液滴の吐出が、前記加速区間及び前記定速区間、並びに、前記定速区間及び前記減速区間の少なくとも一方において実行される請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記遅延量が、前記加速区間及び前記定速区間、並びに、前記定速区間及び前記減速区間の少なくとも一方において、一律の規則で、前記比に基づき前記制限された範囲内で決定される請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記設定パラメータは、複数の時点のそれぞれにおいて実現されるべき前記吐出ヘッドの相対速度である目標速度を定義し、
前記遅延量の上限値及び下限値の少なくとも一方が、前記設定パラメータから特定される現時点に対応する前記目標速度に基づいて決定される請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記上限値が、前記目標速度に基づいて決定される請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記遅延量の上限値及び下限値の少なくとも一方が、前記前回遅延量に基づいて決定される請求項1記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記下限値が、前記前回遅延量に基づいて決定される請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記下限値が、前記前回遅延量より所定量小さい値に決定される請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記所定量が、前記インク液滴の吐出から次の前記インク液滴の吐出準備に必要な時間を前記基準タイミングの時間間隔から減算した値に対応する請求項10記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記吐出ヘッドは、前記駆動信号が入力される度に、前記インク液滴を吐出するように動作し、
前記コントローラは、前記駆動信号の前記吐出ヘッドに対する入力タイミングを、前記遅延量に応じて調整することにより、前記吐出ヘッドによる前記インク液滴の前記吐出タイミングを制御するように構成される請求項1~請求項11のいずれか一項記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置として、用紙を副走査方向に搬送する一方、インク液滴を吐出する吐出ヘッドを主走査方向に搬送することにより、吐出ヘッドの下方に位置する用紙に画像を形成するインクジェットプリンタが知られている。
【0003】
このインクジェットプリンタでは、例えば、吐出ヘッドの変位に応じて出力されるリニアエンコーダからのエンコーダ信号に基づき、吐出ヘッドの駆動信号が生成される。吐出ヘッドの移動速度に基づいた駆動信号の調整により、インク液滴の吐出タイミングが、調整される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
インク液滴は、吐出ヘッドから下方への吐出速度、及び、吐出ヘッドの移動速度に応じた軌跡で、用紙に着弾する。吐出ヘッドの移動速度が高いほど、インク液滴は、吐出されてから用紙に着弾するまでに、吐出ヘッドの移動方向に移動する。
【0005】
吐出タイミングの調整は、吐出ヘッドの移動速度に応じて変化するインク液滴の吐出から着弾までのインク液滴の飛行距離の変化に応じたインク液滴の着弾地点の理想地点からのずれを抑制するために行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、繰返しのインク液滴の吐出に際し、吐出ヘッドが吐出を完了してから次の吐出を開始するまでには、吐出準備のための時間が必要である。一方、スループット向上のために、吐出ヘッドの第一の吐出から第二の吐出までに予め用意される時間は、多くない。すなわち、用意される時間は、吐出準備に関する必要最低限の時間に、多少の余裕量を付加した時間である。
【0008】
そのため、従来技術では、吐出タイミングの調整により、次の吐出準備に必要な時間を確保できないケースが多々生じていた。次のインク液滴の吐出タイミングまでに、吐出準備が完了しないケースでは、用紙に形成される画像の品質が、ドット抜けや印字ズレの発生によって劣化する。
【0009】
そこで、本開示の一側面によれば、画像形成装置において、吐出タイミングの調整によって次回吐出までの時間が短くなることに起因する画像品質への好ましくない影響を抑えながら、吐出タイミングの調整を適切に実行可能な新規技術を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一側面によれば、画像形成装置が提供される。画像形成装置は、吐出ヘッドと、移動機構と、速度検出器と、コントローラと、を備える。吐出ヘッドは、インク液滴の吐出により、記録媒体に画像を形成するように構成される。
【0011】
移動機構は、吐出ヘッドを、記録媒体に対し相対移動させるように構成される。速度検出器は、記録媒体に対する吐出ヘッドの相対速度を検出するように構成される。コントローラは、吐出ヘッドによるインク液滴の吐出を制御し、更には、移動機構を通じて記録媒体に対する吐出ヘッドの相対移動を制御するように構成される。
【0012】
コントローラは、設定パラメータに従う速度で吐出ヘッドが相対移動するように、吐出ヘッドの相対移動を制御する。コントローラは、インク液滴の吐出タイミングを指定する駆動信号を、吐出ヘッドに入力することにより、吐出ヘッドによるインク液滴の吐出を制御する。
【0013】
コントローラは更に、速度検出器により検出された相対速度としての検出速度に基づき、インク液滴の吐出タイミングに関する遅延量を決定し、吐出ヘッドが、基準タイミングから遅延量だけ時間的に遅れた吐出タイミングで、インク液滴を吐出するように、駆動信号を生成する。
【0014】
遅延量は、吐出タイミングの前回遅延量、及び、設定パラメータの少なくとも一方に基づいて制限された範囲内で、基準速度に対する検出速度の比に応じた時間に決定される。
【0015】
吐出タイミングの調整によって次回吐出までの時間が短くなる事象は、例えば、遅延量が前回遅延量よりも短くなることにより生じる。遅延量が短くなることで、吐出タイミングが早まるためである。
【0016】
遅延量が、制限された範囲内で決定されることによれば、次回吐出までの時間が短くなることに起因する画像品質への好ましくない影響を抑えることができる。特に、吐出タイミングの前回遅延量、及び、設定パラメータの少なくとも一方に基づいて、遅延量の範囲を制限することによれば、遅延を設ける主たる目的であるインク液滴の着弾点の制御に制約が生じるのを抑えつつ、適切に、遅延量の変動による画像品質低下への影響を抑えることができる。従って、この画像形成装置によれば、吐出タイミングの調整を適切に実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】画像形成装置の構成を表すブロック図である。
【
図5】ヘッドコントローラの詳細構成を表すブロック図である。
【
図6】遅延設定器が実行する設定処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態の画像形成装置1は、インクジェットプリンタとして構成される。この画像形成装置1は、プロセッサ11と、メモリ13と、通信インタフェース(I/F)15と、ユーザインタフェース(I/F)17と、ASIC20とを備え、これらがバス5を介して接続された構成にされる。
【0019】
プロセッサ11は、メモリ13に格納されたコンピュータプログラムに従う処理を実行し、画像形成装置1の各部を統括制御する。例えば、プロセッサ11は、外部から入力された印刷指令に基づく画像を、記録媒体としての用紙Pに形成するための処理を実行する。メモリ13は、ROM、RAM、及びEEPROMを含むことができ、コンピュータプログラム及び各種設定情報を記憶することができる。
【0020】
通信インタフェース15は、パーソナルコンピュータ等の外部装置と通信可能な構成にされる。ユーザインタフェース17は、ユーザにより操作可能な操作部及びユーザに向けて各種情報を表示可能な表示部を備える。印刷指令は、通信インタフェース15又はユーザインタフェース17を通じて、外部装置又はユーザから入力される。
【0021】
画像形成装置1は、記録ヘッド31と、キャリッジ33と、キャリッジ(CR)モータ35と、リニアエンコーダ37と、を更に備える。記録ヘッド31は、インク液滴を吐出するように構成される吐出ヘッド、所謂インクジェットヘッドである。記録ヘッド31は、キャリッジ33に搭載され、キャリッジ33と共に
図2に示す主走査方向に移動する。主走査方向は、用紙Pが搬送される副走査方向と直交する方向である。記録ヘッド31は、主走査方向に移動する際、インク液滴の吐出により下方の用紙Pに画像を形成する。
【0022】
CRモータ35は、直流モータであり、キャリッジ33の移動に関する駆動源として使用される。リニアエンコーダ37は、インクリメンタル型の光学式リニアエンコーダであり、キャリッジ33の主走査方向における位置X及び速度Vを検出するために用いられる。
【0023】
記録ヘッド31、キャリッジ33、CRモータ35、及びリニアエンコーダ37は、印刷機構40に設けられる。印刷機構40は、CRモータ35からの動力を受けて、記録ヘッド31を搭載するキャリッジ33を主走査方向に移動させることにより、記録ヘッド31を用紙Pに対して相対移動させる。印刷機構40は、キャリッジ33の通路を規定するガイド軸41を、主走査方向に備える。キャリッジ33は、ガイド軸41に挿通される。
【0024】
キャリッジ33は、ガイド軸41に沿って設けられた無端ベルト43に連結される。無端ベルト43は、ガイド軸41の一端に設置された駆動プーリ45と、ガイド軸41の他端に設置された従動プーリ46と、の間に巻回される。
【0025】
駆動プーリ45は、CRモータ35により回転駆動され、無端ベルト43を回転させる。キャリッジ33は、無端ベルト43の回転を通じて伝達されるCRモータ35の動力により、ガイド軸41に沿って主走査方向に移動する。
【0026】
ガイド軸41の近傍には、エンコーダスケールとしてのリニアスケール48が設けられる。キャリッジ33には、光学センサ49が搭載される。リニアエンコーダ37は、このリニアスケール48及び光学センサ49によって構成される。
【0027】
リニアスケール48は、ガイド軸41に沿って設置される。リニアスケール48は、主走査方向に対応する長尺方向に、所定の間隔で配置されたスリット又はマーク(図示せず)を備える。光学センサ49は、キャリッジ33に固定されており、キャリッジ33と共にリニアスケール48に沿って主走査方向に移動する。
【0028】
光学センサ49は、キャリッジ33の移動時にリニアスケール48のスリット又はマークを読み取り、その読取信号として、キャリッジ33の変位に応じたパルス状のエンコーダ信号を出力する。エンコーダ信号は、キャリッジ33の位置に応じたパルスエッジを含む。
【0029】
画像形成装置1は更に、用紙Pの搬送を実現するために、ラインフィード(LF)モータ51と、ロータリエンコーダ53とを備える(
図1参照)。LFモータ51は、直流モータであり、用紙Pを副走査方向へ搬送する搬送ローラ(図示せず)を回転させるための駆動源として機能する。ロータリエンコーダ53は、インクリメンタル型の光学式ロータリエンコーダであり、搬送ローラの回転量及び回転速度を検出するために用いられる。
【0030】
ASIC20は、例えばプロセッサ、メモリ、及び専用回路を備え、これらの協働により、印刷コントローラ60及び用紙搬送コントローラ69として機能する。印刷コントローラ60は、記録ヘッド31によるインク液滴の吐出を制御し、更には、キャリッジ33の移動を、CRモータ35を通じて制御するように構成される。
【0031】
用紙搬送コントローラ69は、用紙Pの副走査方向への搬送を、LFモータ51を通じて制御するように構成される。用紙搬送コントローラ69は、ロータリエンコーダ53からのエンコーダ信号に基づき、LFモータ51をフィードバック制御する。
【0032】
印刷コントローラ60は、位置検出器61と、速度検出器63と、ヘッドコントローラ65と、モータコントローラ67とを備える。位置検出器61は、リニアエンコーダ37から入力されるエンコーダ信号に基づき、キャリッジ33の位置Xを検出するように構成される。
【0033】
速度検出器63は、リニアエンコーダ37から入力されるエンコーダ信号におけるパルスエッジの発生時間間隔Tvを、キャプチャー値Tvとして計測することにより、キャリッジ33の速度Vを検出するように構成される。速度Vは、キャプチャー値Tvの逆数に対応する。速度Vは、静止する用紙Pに対するキャリッジ33の相対速度ということができる。
【0034】
ヘッドコントローラ65は、記録ヘッド31によるインク液滴の吐出を制御するように構成される。ヘッドコントローラ65は、用紙Pに形成されるべき画像に対するインク液滴の吐出動作を記録ヘッド31に実行させるための駆動信号(以下「ヘッド駆動信号」という)を生成する。ヘッドコントローラ65は、生成したヘッド駆動信号を記録ヘッド31に入力することにより、記録ヘッド31によるインク液滴の吐出を制御する。
【0035】
ヘッド駆動信号は、インク液滴の吐出タイミングを規定する駆動パルスを含む。記録ヘッド31は、ASIC20からのヘッド駆動信号の入力に応じて、対応するノズルから、対応する液滴サイズのインク液滴を吐出するように動作する。
【0036】
モータコントローラ67は、CRモータ35の制御により、キャリッジ33の用紙Pに対する変位を制御するように構成される。モータコントローラ67は、所与の速度プロファイルに従う速度でキャリッジ33が主走査方向に移動するように、CRモータ35を制御する。モータコントローラ67は、CRモータ35をPWM駆動するための駆動信号を、CRモータ35に入力することにより、CRモータ35を制御する。
【0037】
図3は、速度プロファイルの例を示す。画像形成装置1では、用紙Pへの画像形成のために、キャリッジ33が主走査方向において往復動するように、モータコントローラ67がCRモータ35を制御する。
【0038】
図3に示される速度プロファイルは、キャリッジ33の片道分の移動過程における各時点でのキャリッジ33の目標速度Vrを定義する速度プロファイルである。すなわち、この速度プロファイルは、キャリッジ33が停止位置から次の目標停止地点である折返し地点まで移動して停止するまでのキャリッジ33の目標速度Vrを定義する。
【0039】
速度プロファイルは、加速区間、定速区間、及び減速区間のそれぞれの速度プロファイルを含む。加速区間の速度プロファイルは、キャリッジ33が、停止状態から、定速運動時の速度として予め定められた速度Vcに加速するまでのキャリッジ33の目標速度Vrを定義する。
【0040】
加速区間に続く定速区間の速度プロファイルは、区間内一定の目標速度Vr=Vcを定義する。定速区間に続く減速区間の速度プロファイルは、減速開始地点から目標停止地点までのキャリッジ33の目標速度Vrとして、定速運動時の速度Vr=Vcから、速度Vr=0まで減速して停止するまでのキャリッジ33の目標速度Vrを定義する。
【0041】
モータコントローラ67は、このような加速区間、定速区間、及び減速区間を含む速度プロファイルに従って、キャリッジ33が目標速度Vrに応じた速度で移動するように、CRモータ35を制御する。すなわち、加速区間では、キャリッジ33が所定速度V=Vcまで加速し、加速区間に続く定速区間では、キャリッジ33が所定速度V=Vcで定速運動し、続く減速区間では、速度V=0まで減速して停止するように、CRモータ35を制御する。
【0042】
本実施形態において、インク液滴の吐出は、加速区間及び定速区間において行われる。ヘッドコントローラ65による記録ヘッド31の制御により、定速区間だけではなく、キャリッジ33が定速状態に移行するまでの加速区間においても、記録ヘッド31によるインク液滴の吐出動作が実行される。インク液滴の吐出区間は、加速区間の途中から定速区間の終了地点までの区間である。
【0043】
ここで、ムラのない高品質な画像を用紙Pに形成するために必要なインク液滴の吐出動作の詳細を説明する。高品質な画像を用紙Pに形成するためには、用紙Pに等距離間隔でインク液滴が着弾するように、記録ヘッド31からインク液滴が吐出されるのが好ましい。
【0044】
キャリッジ33が理想的に定速状態で移動しているときには、記録ヘッド31から等時間間隔でインク液滴を吐出すると、用紙Pに等距離間隔でインク液滴が着弾する。あるいは、キャリッジ33が理想的に定速状態で移動しているときには、キャリッジ33が所定距離移動する毎に、記録ヘッド31からインク液滴を吐出すると、用紙Pに等距離間隔でインク液滴が着弾する。
【0045】
しかしながら、キャリッジ33が加速しているときには、記録ヘッド31から等時間間隔でインク液滴が吐出されても、あるいは、キャリッジ33が所定距離移動する毎に、記録ヘッド31からインク液滴が吐出されても、インク液滴は、用紙Pに等距離間隔に着弾しない。
【0046】
図4に示すように、移動する記録ヘッド31からインク液滴が吐出されるときのインク液滴の速度ベクトルは、記録ヘッド31から下方へのインク液滴の吐出に関する速度ベクトルと、記録ヘッド31の主走査方向への移動に関する速度ベクトルとの合成ベクトルになる。
【0047】
記録ヘッド31が用紙Pから高さLの位置にあり、記録ヘッド31から下方に速度Vjでインク液滴が吐出される場合、インク液滴は、吐出から時間Tf=L/Vj後に、用紙Pに着弾する。
【0048】
記録ヘッド31が主走査方向に基準速度Vsで移動しているときには、インク液滴は、吐出から着弾までの時間Tfの間に主走査方向に距離Ds=(Vs*Tf)進む。すなわち、インク液滴は、吐出時の記録ヘッド31の位置から距離Ds=(Vs*Tf)だけ主走査方向に進んだ地点で着弾する。
【0049】
一方、記録ヘッド31が主走査方向に基準速度Vsより低い速度Vxで移動しているとき、インク液滴は、吐出から着弾までの時間Tfの間に主走査方向に距離Dsより短い距離Dx=(Vx*Tf)だけ進む。
【0050】
すなわち、記録ヘッド31から同じ時点又は地点でインク液滴が吐出されても、そのインク液滴の着弾点は、記録ヘッド31が速度Vsで移動しているときと、記録ヘッド31が速度Vxで移動しているときとの間で、距離ΔD=Ds-Dx=(Vs-Vx)*Tf異なる。
【0051】
従って、記録ヘッド31が基準速度Vsで移動している場合に、基準タイミング又は基準地点で吐出されたインク液滴が着弾する地点が、理想の着弾地点であるとの前提を置くと、記録ヘッド31が基準速度Vsより低い速度Vxで走行しているときには、次のように記録ヘッド31にインク液滴を吐出させなければ、インク液滴を理想の着弾地点に着弾させることはできない。
【0052】
すなわち、基準タイミングが到来してから、又は、記録ヘッド31が基準地点を通過してから記録ヘッド31が距離ΔD移動した時点又は地点で、記録ヘッド31にインク液滴を吐出させなければ、インク液滴を理想の着弾地点に着弾させることはできない。
【0053】
この理想的な着弾のためには、記録ヘッド31のインク液滴の吐出タイミングを、速度Vxと基準速度Vsとの比に応じた時間ΔT=ΔD/Vx=(Vs-Vx)・Tf/Vx=(Vs/Vx)・Tf-Tfだけ遅らせる必要がある。基準速度Vsに対応するキャプチャー値をTsで表し、速度Vxに対応するキャプチャー値をTxで表すと、ΔT=(Tx/Ts)・Tf-Tfである。
【0054】
本実施形態によれば、リニアエンコーダ37からのエンコーダ信号を逓倍して生成される逓倍パルスの立ち上がりエッジが基準タイミングに対応する。基準地点は、この基準タイミングにおいて記録ヘッド31が存在する地点に対応する。
【0055】
本実施形態のヘッドコントローラ65は、記録ヘッド31によるインク液滴の吐出タイミングを調整するように、ヘッド駆動信号を生成するために、
図5に示すように、逓倍パルス生成器71、遅延器73、及び遅延設定器75を備える。
【0056】
逓倍パルス生成器71は、リニアエンコーダ37から入力されるエンコーダ信号を逓倍して生成した逓倍パルスを遅延器73に入力するように構成される。遅延器73は、逓倍パルスに基づいてヘッド駆動信号を生成し、生成したヘッド駆動信号を記録ヘッド31に入力するように構成される。
【0057】
遅延器73は、逓倍パルスの入力毎に、具体的には逓倍パルスの立ち上がりエッジ毎に、設定された遅延量だけ逓倍パルスを遅延させるように信号処理して生成した駆動パルスを、ヘッド駆動信号として記録ヘッド31に入力するように構成される。記録ヘッド31は、駆動パルスが入力される度に、インク液滴を吐出するように動作する。
【0058】
遅延設定器75は、速度検出器63により検出されたキャリッジ33の速度Vに基づき、遅延量を設定するように構成される。設定された遅延量に応じて遅延器73から入力される遅延した駆動パルスに基づき、記録ヘッド31は、インク液滴が理想の着弾地点に着弾するように、インク液滴を吐出する。遅延量は、基準タイミング(具体的には逓倍パルスの立ち上がりエッジ)からの吐出タイミングの遅延量に対応する。
【0059】
具体的に、遅延設定器75は、
図6に示す設定処理を繰返し実行することにより、遅延量として現在のキャリッジ33の速度Vに応じた遅延時間Tdを決定し、遅延器73に設定する。これにより、遅延設定器75は、遅延器73に、逓倍パルスの入力毎に、キャリッジ33の速度Vに応じた遅延時間Td遅れたタイミングで、駆動パルスを記録ヘッド31に入力させる。設定処理は、例えば、エンコーダ信号又は逓倍パルスの立ち上がりエッジ毎に実行される。
【0060】
図6に示す設定処理を開始すると、遅延設定器75は、遅延器73に前回設定した遅延時間Tdを、前回遅延時間Tpとして取得する(S110)。この取得のために、遅延設定器75は、遅延器73に設定した遅延時間Tdの履歴を記憶しておくことができる。
【0061】
遅延設定器75は更に、現在のキャリッジ33の速度Vに対応する現在のキャプチャー値Tvに基づいて、遅延時間Tdの標準値Zv=(Vs/V)・Tf-Tf=(Tv/Ts)・Tf-Tfを算出する(S120)。
【0062】
時間Tfは、上述したように記録ヘッド31によりインク液滴が吐出されてから、インク液滴が着弾するまでの時間に対応する。基準速度Vsは、キャリッジ33の移動過程における最大速度である定速時の速度Vc以上で定められる一定速度であり、時間Tsは、基準速度Vsに対応するキャプチャー値である。
【0063】
標準値Zvの算出後、遅延設定器75は、現在の目標速度Vrに対応する現在の目標キャプチャー値Trに基づき、目標速度Vrに対応した遅延時間である飽和遅延時間Tm=(Vs/Vr)・Tf-Tf=(Tr/Ts)・Tf-Tfを算出する(S130)。
【0064】
その後、遅延設定器75は、飽和遅延時間Tmに基づいて遅延時間Tdの上限値Zmax=A*Tmを設定する(S140)。係数Aは、例えばA=1であり得る。更に、遅延設定器75は、前回遅延時間Tpに基づいて遅延時間Tdの下限値Zminを、式Zmin=Tp-Yに従い設定する(S150)。
【0065】
値Yは、ゼロより大きい正の値である。上式によれば、下限値Zminは、ゼロを下限に、前回遅延時間Tpよりも小さい値に設定される。上限値Zmax及び下限値Zminは、遅延器73に設定される遅延時間Tdを、上限値Zmaxから下限値Zminまでの範囲内に制限するためのものである。
【0066】
上限値Zmax及び下限値Zminの設定後、遅延設定器75は、遅延時間Tdの標準値Zvが上限値Zmaxを超えているか否かを判断する(S160)。すなわち、遅延設定器75は、標準値Zvが、不等式Zv>Zmaxを満足するかを判断する(S160)。
【0067】
遅延設定器75は、標準値Zvが上限値Zmaxを超えていると判断すると(S160でYes)、遅延器73に対して、遅延時間Tdとして、上限値Zmaxを設定する(S165)。これにより遅延器73は、目標速度Vrに対応する遅延時間Zmaxだけ基準タイミングから遅れたタイミングで記録ヘッド31にインク液滴を吐出させるように、ヘッド駆動信号を記録ヘッド31に入力する。
【0068】
一方、遅延設定器75は、標準値Zvが上限値Zmax以下であると判断すると(S160でNo)、標準値Zvが下限値Zmin未満であるか否かを判断する。すなわち、標準値Zvが、不等式Zv<Zminを満足するかを判断する(S170)。
【0069】
遅延設定器75は、標準値Zvが下限値Zmin未満であると判断すると(S170でYes)、遅延器73に対して、遅延時間Tdとして、下限値Zminを設定する(S175)。これにより遅延器73は、前回遅延時間Tpよりも短い遅延時間Zminだけ基準タイミングから遅れたタイミングで記録ヘッド31にインク液滴を吐出させるように、ヘッド駆動信号を記録ヘッド31に入力する。
【0070】
遅延設定器75は、標準値Zvが上限値Zmax以下かつ下限値Zmin以上であると判断すると(S170でNo)、遅延器73に対して、遅延時間Tdとして、標準値Zvを設定する(S180)。これにより遅延器73は、キャリッジ33の現在の速度Vに対応した遅延時間Zvだけ基準タイミングから遅れたタイミングで記録ヘッド31にインク液滴を吐出させるように、ヘッド駆動信号を記録ヘッド31に入力する。
【0071】
本実施形態によれば、このように遅延設定器75が、記録ヘッド31の吐出タイミングを、逓倍パルスに基づく基準タイミングから、キャリッジ33の検出速度V、目標速度Vr及び前回遅延時間Tpを考慮した吐出タイミングに変更するように、記録ヘッド31の駆動パルスを生成する。従って、検出されるキャリッジ33の速度Vに大きな変化があるときでも、次のインク液滴の吐出準備に失敗して印刷画像の品質が劣化するのを抑制することができる。
【0072】
ここで、吐出準備に失敗する事象の詳細を、
図7を用いて説明する。記録ヘッド31からのインク液滴の吐出動作に関し、記録ヘッド31がインク液滴の吐出を完了してから次の吐出を開始するまでには、吐出準備のための時間Rが必要である。吐出準備に必要な時間Rには、例えば各画素の制御データを転送する時間や、インク供給に必要な時間が含まれる。
【0073】
遅延時間Tdの変化が小さいときには、先行するインク液滴の吐出タイミングW1から次のインク液滴の吐出タイミングW2までの時間間隔の変化幅は小さい。これに対し、遅延時間Tdが、前回遅延時間Tpよりも大きく縮小する場合には、先行するインク液滴の吐出タイミングW2から次のインク液滴の吐出タイミングW3までの時間が、遅延時間Tdの縮小分、大きく縮小する。
【0074】
インク液滴の吐出間隔が、遅延時間Tdの縮小に応じた量だけ縮小するため、遅延時間Tdが大きく縮小すると、吐出間隔が、吐出準備に必要な時間よりも短くなる場合がある。この場合には、吐出準備が完了しないうちに、次のインク液滴の吐出タイミングW3が到来するタイミング違反が生じるため、記録ヘッド31は、必要なインク液滴を適切に吐出することができない。これにより、用紙Pにはドット抜け等の事象が発生し、用紙Pに形成される印刷画像の品質が劣化する。
【0075】
遅延時間Tdが大きく変化しても吐出準備に必要な時間が十分に確保されるように画像形成装置1を設計すると、当然のことながら、印刷にかかるスループットが低下する。このため、本実施形態では、遅延時間Tdの下限値Zminを、前回遅延時間Tpを考慮して設定することにより、タイミング違反の発生を抑制する。
【0076】
上述のように下限値Zminは、遅延時間Tdが、前回遅延時間Tpから、値Yより大きくは縮小しないように、遅延時間Tdの変動を制御するパラメータである。値Yは、吐出準備に必要な時間Rを、基準タイミングの発生時間間隔である逓倍パルスの発生時間間隔Hから減算した値(H-R)より小さい値に定められ得る。
【0077】
遅延時間Tdが(Tp-(H-R))であるとき、次のインク液滴の吐出タイミングは、吐出準備完了と同時に到来する。上記時間Rには、余裕量R0を加算することができる。例えば、値Yは、値(H-(R+R0))に定められ得る。
【0078】
値Yは、発生時間間隔Hとして、S150の処理実行時点で判別可能な直前の逓倍パルスの発生時間間隔を用いて算出され得る。すなわち、S150における下限値Zminの算出に用いられる値Yは、非固定値であり得て、S150における下限値Zminの算出時に、算出され得る。
【0079】
余裕量R0は、固定値であり得る。吐出準備に必要な時間Rも、同様に固定値であり得る。固定値(R+R0)は、想定される吐出準備に必要な時間の最大値を加味して、それ以上の値に定められ得る。
【0080】
吐出準備に必要な時間Rは、関数により算出されてもよい。例えば、吐出準備に必要な時間Rは、コルゲートディレイ等を考慮して、キャリッジ33の主走査方向の位置Xを変数に有する関数で計算され得る。
【0081】
このように下限値Zminが設定されることで、本実施形態では、タイミング違反の発生を抑えるように、遅延時間Tdが設定される。
【0082】
本実施形態では、上述の通り、遅延時間Tdの上限値Zmaxが目標速度Vrに基づいて定められる。従って、速度検出器63により検出される速度Vの誤差に大きな変動が生じることに影響されて、遅延時間Tdが大きく変動するのを抑制することができる。
【0083】
結果として、本実施形態では、タイミング違反の発生を抑制することができる他、タイミング違反を抑制するために遅延時間Tdが大きく制限されることにより、インク液滴の着弾点の理想的な着弾点からの差異が大きくなるのを抑制することができる。
【0084】
速度Vの誤差の発生原因には、リニアスケール48の汚れが挙げられる。リニアスケール48が、インクやグリス等で汚れている場合、光学センサ49が、リニアスケール48のスリット又はマークを正しく読み取ることができない。
【0085】
この読取の失敗により、検出されるキャリッジ33の速度Vは、実速度とは乖離して、大きく低下する。検出される速度Vの低下は、スリット又はマーカの読取失敗により、キャプチャー値Tvが増大することに起因する。
【0086】
本実施形態によれば、リニアスケール48の汚れにより、見かけ上のキャリッジ33の速度Vが一時的に大きく低下して、遅延時間Tdの標準値Zvが大きく上昇しても、目標速度Vrに応じた上限値Zmaxにより、遅延時間Tdが適切に設定される。
【0087】
キャリッジ33の速度制御が精度よく行われている場合、キャリッジ33の実速度Vは、目標速度Vrに近い値を示すために、遅延時間Tdがキャリッジ33の実際の速度Vから大きく乖離せずに適切に設定される。
【0088】
従って、本実施形態によれば、リニアエンコーダ37の汚れ等に起因したみかけ上の速度変動の影響を抑えて、適切な吐出タイミングでインク液滴を用紙Pに吐出可能であり、検出誤差に起因した印刷画像の品質低下を抑制することができる。
【0089】
付言すると、本実施形態では、遅延時間Tdの設定規則が、加速区間及び定速区間において一律である。従って、区間の境界で遅延時間Tdが急峻に変化するのを抑制することができる。結果として、本実施形態によれば、区間境界での遅延時間Tdの急峻な変化により、タイミング違反が生じるのも抑制することができる。
【0090】
以上には、本実施形態の画像形成装置1の構成を説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【0091】
例えば、上限値Zmax及び下限値Zminは、両者とも目標速度Vrに基づいて定められ得る。例えば、遅延時間Tdが、目標速度Vrに対応する飽和遅延時間Tmを中心した所定幅の範囲で設定されるように、上限値Zmax及び下限値Zminは、定められてもよい。上限値Zmaxは、A*Tm+Cに定められてもよく、下限値Zminは、A*Tm-Cに定められてもよい。
【0092】
あるいは、上限値Zmax及び下限値Zminは、両者とも前回遅延時間Tpに基づいて定められてもよい。例えば、遅延時間Tdが、前回遅延時間Tpを中心した所定幅の範囲で設定されるように、上限値Zmax及び下限値Zminは、定められてもよい。上限値Zmaxは、固定値Y0を用いて、Tp+Y0に定められてもよく、下限値Zminは、Tp-Y0に定められてもよい。
【0093】
この他、インク液滴の吐出区間は、加速区間の途中から減速区間の途中までの区間に定められてもよいし、定速区間の始点又は途中から、減速区間の途中までの区間に定められてもよい。この吐出区間に対しても、上述のように上限値Zmax及び下限値Zminを設定することができる。
【0094】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0095】
[本明細書が開示する技術思想]
本明細書は、以下の技術思想を開示すると理解されてよい。
[項目1]
インク液滴の吐出により、記録媒体に画像を形成するように構成される吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドを、前記記録媒体に対し相対移動させるように構成される移動機構と、
前記記録媒体に対する前記吐出ヘッドの相対速度を検出するように構成される速度検出器と、
前記吐出ヘッドによる前記インク液滴の吐出を制御し、更には、前記移動機構を通じて前記記録媒体に対する前記吐出ヘッドの相対移動を制御するように構成されるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
設定パラメータに従う速度で前記吐出ヘッドが相対移動するように、前記吐出ヘッドの前記相対移動を制御し、
前記インク液滴の吐出タイミングを指定する駆動信号を、前記吐出ヘッドに入力することにより、前記吐出ヘッドによる前記インク液滴の吐出を制御し、
前記速度検出器により検出された前記相対速度としての検出速度に基づき、前記インク液滴の吐出タイミングに関する遅延量を決定し、前記吐出ヘッドが、基準タイミングから前記遅延量だけ時間的に遅れた吐出タイミングで、前記インク液滴を吐出するように、前記駆動信号を生成し、
前記遅延量は、吐出タイミングの前回遅延量、及び、前記設定パラメータの少なくとも一方に基づいて制限された範囲内で、基準速度に対する前記検出速度の比に応じた時間に決定される画像形成装置。
[項目2]
前記基準タイミングは、前記吐出ヘッドの位置に応じて定まる項目1記載の画像形成装置。
[項目3]
エンコーダ信号として、前記吐出ヘッドの変位に応じた信号を出力するエンコーダ
を備え、
前記コントローラは、前記エンコーダ信号に対して前記遅延量に応じた処理を加えて前記駆動信号を生成する項目2記載の画像形成装置。
[項目4]
前記設定パラメータは、前記吐出ヘッドの速度プロファイルを定義し、
前記速度プロファイルは、「加速区間及び定速区間」、並びに、「前記定速区間及び減速区間」、の少なくとも一方を含み、
前記コントローラは、前記速度プロファイルに従って、前記加速区間では、前記吐出ヘッドが前記記録媒体に対して相対的に所定速度まで加速し、前記加速区間に続く前記定速区間では、前記吐出ヘッドが前記記録媒体に対して相対的に前記所定速度で定速運動し、前記定速区間に続く前記減速区間では、前記吐出ヘッドが前記記録媒体に対して相対的に停止するまで減速するように、前記吐出ヘッドの前記相対移動を制御し、
前記インク液滴の吐出が、前記加速区間及び前記定速区間、並びに、前記定速区間及び前記減速区間の少なくとも一方において実行される項目1~項目3のいずれか一項記載の画像形成装置。
[項目5]
前記遅延量が、前記加速区間及び前記定速区間、並びに、前記定速区間及び前記減速区間の少なくとも一方において、一律の規則で、前記比に基づき前記制限された範囲内で決定される項目4記載の画像形成装置。
[項目6]
前記設定パラメータは、複数の時点のそれぞれにおいて実現されるべき前記吐出ヘッドの相対速度である目標速度を定義し、
前記遅延量の上限値及び下限値の少なくとも一方が、前記設定パラメータから特定される現時点に対応する前記目標速度に基づいて決定される項目1~項目5のいずれか一項記載の画像形成装置。
[項目7]
前記上限値が、前記目標速度に基づいて決定される項目6記載の画像形成装置。
[項目8]
前記上限値が、仮に前記遅延量の制限がない環境で前記検出速度が前記目標速度に一致するときに前記比に応じて決定される前記遅延量に対応した値に決定される項目6記載の画像形成装置。
[項目9]
前記遅延量の上限値及び下限値の少なくとも一方が、前記前回遅延量に基づいて決定される項目1~項目5のいずれか一項記載の画像形成装置。
[項目10]
前記下限値が、前記前回遅延量に基づいて決定される項目9記載の画像形成装置。
[項目11]
前記下限値が、前記前回遅延量より所定量小さい値に決定される項目10記載の画像形成装置。
[項目12]
前記所定量が、前記インク液滴の吐出から次の前記インク液滴の吐出準備に必要な時間を前記基準タイミングの時間間隔から減算した値に対応する項目11記載の画像形成装置。
[項目13]
前記吐出ヘッドは、前記駆動信号が入力される度に、前記インク液滴を吐出するように動作し、
前記コントローラは、前記駆動信号の前記吐出ヘッドに対する入力タイミングを、前記遅延量に応じて調整することにより、前記吐出ヘッドによる前記インク液滴の前記吐出タイミングを制御するように構成される項目1~項目12のいずれか一項記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0096】
1…画像形成装置、5…バス、11…プロセッサ、13…メモリ、15…通信インタフェース、17…ユーザインタフェース、20…ASIC、31…記録ヘッド、33…キャリッジ、35…CRモータ、37…リニアエンコーダ、40…印刷機構、41…ガイド軸、43…無端ベルト、45…駆動プーリ、46…従動プーリ、48…リニアスケール、49…光学センサ、51…LFモータ、53…ロータリエンコーダ、60…印刷コントローラ、61…位置検出器、63…速度検出器、65…ヘッドコントローラ、67…モータコントローラ、69…用紙搬送コントローラ、71…逓倍パルス生成器、73…遅延器、75…遅延設定器。