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特開2024-58780予測装置、予測方法およびコンピュータプログラム
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  • 特開-予測装置、予測方法およびコンピュータプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058780
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】予測装置、予測方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240422BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240422BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20240422BHJP
   E03B 7/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/00 300
G06Q10/04
E03B7/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166087
(22)【出願日】2022-10-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】保坂 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】野津田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】田中 準也
(72)【発明者】
【氏名】中村 優徳
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC06
5L049CC15
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】 水道管などの埋設管の更新計画の策定に用い易く、かつ、計画の策定の根拠について説明し易い情報を出力できる技術を提供する。
【解決手段】 予測装置の取得部は、予測対象の埋設管の属性を表す属性情報を取得する。予測部は、年数予測モデルと、予測対象の埋設管の属性情報とを用いて、予測対象の埋設管の予測使用年数を算出する。年数予測モデルは、埋設管における布設から破損までの使用年数を表す実績使用年数情報と当該埋設管の属性情報との関係データを機械学習することにより生成され、予測対象の埋設管の属性情報を入力とし埋設管の予測使用年数を出力する。予測部は、さらに、予測使用年数と、予測対象の埋設管の属性情報に含まれる布設時期を表す布設時期情報とを用いて、予測対象の埋設管が破損すると予測される時期を予測破損時期として算出する。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測対象の埋設管の属性を表す属性情報を取得する取得部と、
埋設管における布設から破損までの使用年数を表す実績使用年数情報と当該埋設管の属性情報との関係データを機械学習することにより生成され前記予測対象の埋設管の属性情報を入力とし埋設管における布設から破損までの予測される使用年数を予測使用年数として出力する年数予測モデルと、前記予測対象の埋設管の属性情報とを用いて、前記予測対象の埋設管の予測使用年数を算出し、さらに、当該予測使用年数と、前記予測対象の埋設管の属性情報に含まれる布設時期を表す布設時期情報とを用いて、前記予測対象の埋設管が破損すると予測される時期を予測破損時期として算出する予測部と、
前記予測破損時期を暦年あるいは年度を用いて表す予測破損時期情報を出力する出力部と
を備える予測装置。
【請求項2】
前記年数予測モデルは、算出した予測使用年数の根拠の説明をも出力する説明可能なモデルであり、
前記出力部は、前記予測破損時期情報に加えて、前記年数予測モデルから出力された根拠の説明を含む情報をも出力する
請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
前記取得部が埋設管の属性情報として取得し得る情報には複数の種類があり、
年数予測モデルの生成に用いる埋設管の属性情報の種類の相違による複数種の年数予測モデルが用意されており、
前記予測部は、それら複数種の年数予測モデルの中から、前記取得部により取得された前記予測対象の埋設管の属性情報の種類に応じた年数予測モデルを選択し、選択した当該年数予測モデルと、前記取得部により取得された前記予測対象の埋設管の属性情報とを用いて、前記予測対象の埋設管の予測使用年数を算出する
請求項1に記載の予測装置。
【請求項4】
前記取得部が取得する前記予測対象の埋設管の属性情報は、埋設管の劣化に関係する要素を表す劣化関連情報を少なくとも含み、
前記年数予測モデルは、埋設管の実績使用年数情報と当該埋設管の劣化関連情報を含む属性情報との関係データを機械学習することにより生成されており、
前記予測部は、前記取得部により取得された劣化関連情報を含む属性情報と、前記年数予測モデルとを用いて、前記予測対象の埋設管の予測使用年数を算出する
請求項1に記載の予測装置。
【請求項5】
前記取得部が取得する前記予測対象の埋設管の属性情報は、当該埋設管の内部を流れている流体に関し予め定められた期間における前記流体の状態を表す情報を含む
請求項1に記載の予測装置。
【請求項6】
説明可能なモデルである年数予測モデルは、埋設管の実績使用年数情報と当該埋設管の属性情報との因果分析技術により得られた因果関係についての情報をも機械学習することにより生成されており、当該年数予測モデルから出力される予測使用年数の根拠の説明に、予測使用年数と埋設管の属性情報との因果関係に関する説明が含まれている
請求項2に記載の予測装置。
【請求項7】
コンピュータによって、
予測対象の埋設管の属性を表す属性情報を取得し、
埋設管における布設から破損までの使用年数を表す実績使用年数情報と当該埋設管の属性情報との関係データを機械学習することにより生成され前記予測対象の埋設管の属性情報を入力とし埋設管における布設から破損までの予測される使用年数を予測使用年数として出力する年数予測モデルと、前記予測対象の埋設管の属性情報とを用いて、前記予測対象の埋設管の予測使用年数を算出し、さらに、当該予測使用年数と、前記予測対象の埋設管の属性情報に含まれる布設時期を表す布設時期情報とを用いて、前記予測対象の埋設管が破損すると予測される時期を予測破損時期として算出し、
前記予測破損時期を暦年あるいは年度を用いて表す予測破損時期情報を出力する
予測方法。
【請求項8】
予測対象の埋設管の属性を表す属性情報を取得する処理と、
埋設管における布設から破損までの使用年数を表す実績使用年数情報と当該埋設管の属性情報との関係データを機械学習することにより生成され前記予測対象の埋設管の属性情報を入力とし埋設管における布設から破損までの予測される使用年数を予測使用年数として出力する年数予測モデルと、前記予測対象の埋設管の属性情報とを用いて、前記予測対象の埋設管の予測使用年数を算出し、さらに、当該予測使用年数と、前記予測対象の埋設管の属性情報に含まれる布設時期を表す布設時期情報とを用いて、前記予測対象の埋設管が破損すると予測される時期を予測破損時期として算出する処理と、
前記予測破損時期を暦年あるいは年度を用いて表す予測破損時期情報を出力する処理と
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管などの埋設管を交換(更新)する更新時期についての情報提供に関わる技術である。
【背景技術】
【0002】
ライフラインの一つである水道には水道水を持続的に供給することが求められている。しかしながら、水道管は経年劣化することから、老朽化に因る水道管の損傷によって漏水や水道管の破裂というような事故が発生することがある。このような事故は、水道水の持続的な安定供給の妨げになる。このため、そのような事故の発生を防止するために、古い水道管を順次新しい水道管に交換(更新)する工事が行われている。
【0003】
なお、特許文献1には、埋設管が埋設されてから、当該埋設管の腐食深さが許容腐食深さに達すると推定されるまでの埋設期間を算出することが示されている。さらに、特許文献1には、その算出した埋設期間から、埋設管が実際に埋設されていた埋設期間を差し引くことにより、許容腐食深さに到達するまでの残りの期間を算出することが示されている。特許文献2には、水道施設における管路の漏水事故リスクを管路属性に基づいて評価する技術が示されている。特許文献3には、水道管網を区分した複数のエリアに関する漏水調査計画の立案に際し、計画を立てる際に用いるエリアごとの漏水量を推測する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-56224号公報
【特許文献2】特開2021-140332号公報
【特許文献3】特開2015-94665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
埋設されている水道管の劣化状況を表す情報(指標)として、特許文献1~3では、埋設管の腐食深さや、管路の漏水事故リスクや、エリアにおける漏水量が用いられている。水道管の更新工事の計画を立てる際に、そのような水道管の劣化状況を表す情報を用いて水道管の更新時期を定めたとする。このように定められた水道管の更新時期について、当該更新時期を定めた根拠として、上述したような埋設管の腐食深さや漏水事故リスクや漏水量を表す数値が提示されても、例えば更新計画を策定している人にはいつ更新するべきかその根拠が分かりづらいという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するために考え出された。すなわち、本発明の主な目的は、水道管などの埋設管の更新計画の策定に用い易く、かつ、計画の策定の根拠について説明し易い情報を出力できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る予測装置は、その一態様として、
予測対象の埋設管の属性を表す属性情報を取得する取得部と、
埋設管における布設から破損までの使用年数を表す実績使用年数情報と当該埋設管の属性情報との関係データを機械学習することにより生成され前記予測対象の埋設管の属性情報を入力とし埋設管における布設から破損までの予測される使用年数を予測使用年数として出力する年数予測モデルと、前記予測対象の埋設管の属性情報とを用いて、前記予測対象の埋設管の予測使用年数を算出し、さらに、当該予測使用年数と、前記予測対象の埋設管の属性情報に含まれる布設時期を表す布設時期情報とを用いて、前記予測対象の埋設管が破損すると予測される時期を予測破損時期として算出する予測部と、
前記予測破損時期を暦年あるいは年度を用いて表す予測破損時期情報を出力する出力部と
を備える。
【0008】
また、本発明に係る予測方法は、その一態様として、
コンピュータによって、
予測対象の埋設管の属性を表す属性情報を取得し、
埋設管における布設から破損までの使用年数を表す実績使用年数情報と当該埋設管の属性情報との関係データを機械学習することにより生成され前記予測対象の埋設管の属性情報を入力とし埋設管における布設から破損までの予測される使用年数を予測使用年数として出力する年数予測モデルと、前記予測対象の埋設管の属性情報とを用いて、前記予測対象の埋設管の予測使用年数を算出し、さらに、当該予測使用年数と、前記予測対象の埋設管の属性情報に含まれる布設時期を表す布設時期情報とを用いて、前記予測対象の埋設管が破損すると予測される時期を予測破損時期として算出し、
前記予測破損時期を暦年あるいは年度を用いて表す予測破損時期情報を出力する。
【0009】
さらに、本発明に係るコンピュータプログラムは、その一態様として、
予測対象の埋設管の属性を表す属性情報を取得する処理と、
埋設管における布設から破損までの使用年数を表す実績使用年数情報と当該埋設管の属性情報との関係データを機械学習することにより生成され前記予測対象の埋設管の属性情報を入力とし埋設管における布設から破損までの予測される使用年数を予測使用年数として出力する年数予測モデルと、前記予測対象の埋設管の属性情報とを用いて、前記予測対象の埋設管の予測使用年数を算出し、さらに、当該予測使用年数と、前記予測対象の埋設管の属性情報に含まれる布設時期を表す布設時期情報とを用いて、前記予測対象の埋設管が破損すると予測される時期を予測破損時期として算出する処理と、
前記予測破損時期を暦年あるいは年度を用いて表す予測破損時期情報を出力する処理と
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水道管などの埋設管の更新計画の策定に用い易く、かつ、計画の策定の根拠について説明し易い情報を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る第1実施形態の予測装置の構成を説明する図である。
図2】予測破損時期情報を表示装置に表示する態様の一例を説明する図である。
図3】算出された予測使用年数の根拠の説明を表示装置に表示する態様の一例を説明する図である。
図4】算出された予測使用年数に関する情報を表示装置に表示する態様の一例を説明する図である。
図5】予測破損時期情報を地図に重畳させて表示装置に表示する態様の一例を表す図である。
図6】第1実施形態の予測装置における動作の一例を説明するフローチャートである。
図7】第2実施形態を説明する図である。
図8】その他の実施形態を説明する図である。
図9】本発明に係るその他の実施形態の予測装置の構成を表すブロック図である。
図10】その他の実施形態における予測装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施形態を、図面を用いて説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態の予測装置の構成を説明する図である。この予測装置1は、埋設管が破損する時期を予測する装置である。埋設管とは、地中などに埋設されている配管である。埋設管には、水道管、下水道管渠、ガス管などという如く、複数の種類があるが、ここでは、埋設管の一種である水道管を例にして、予測装置の構成について説明する。また、ここでの「埋設管(水道管)が破損する」とは、水道管の劣化に因り水道管にひび割れや穴開きなどの損傷が生じてしまった状態になったこととする。
【0014】
予測装置1は、コンピュータ装置であり、情報源3と、データベース4と、入力装置5と、表示装置7とに接続されている。また、予測装置1は、必要に応じてプリンタ8に接続可能になっている。入力装置5は、キーボードやマウスなどにより構成され、ユーザによる操作に応じて予測装置1に情報を入力する装置である。表示装置7は、文字や画像によって情報を画面に表示する装置である。プリンタ8は、文字や画像、図形などのデータをコンピュータから受け取り、紙などに印刷する装置である。
【0015】
情報源3は、予測装置1が実行する処理に用いる情報を提供可能な情報源である。情報源3の具体例を挙げると、水道管を管理しているシステムのコンピュータ装置やデータベースが挙げられる。このような情報源3から予測対象の水道管に関する情報が予測装置1に提供される。データベース4は、記憶装置であり、データベース4には、情報源3から予測装置1に提供された情報や、入力装置5によって予測装置1に入力された情報などが格納されている。
【0016】
予測装置1は、演算装置10と、記憶装置40とを備えている。記憶装置40は、データや、コンピュータプログラム(以下、プログラムとも称する)41を記憶する記憶媒体を備えている。記憶装置には、磁気ディスク装置や、半導体メモリ素子などの複数の種類があり、さらに、半導体メモリ素子には、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの複数の種類があるというように、多数の種類がある。予測装置1が備える記憶装置40の種類は1つに限定されるものではない。コンピュータ装置には複数種の記憶装置が備えられることが多い。ここでは、予測装置1に備えられる記憶装置40の種類や数は限定されず、その説明は省略される。また、予測装置1に複数種の記憶装置40が備えられる場合には、それらをまとめて記憶装置40と称することとする。
【0017】
演算装置10は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサにより構成される。当該演算装置10は、記憶装置40に記憶されているプログラム41を読み出して実行することにより、当該プログラム41に基づいた様々な機能を持つことができる。ここでは、演算装置10は、水道管が破損する時期を予測する破損時期予測処理に関わる機能部として、取得部11と、予測部12と、出力部13とを有している。
【0018】
取得部11は、予測対象の水道管の属性を表す属性情報を取得する。ここで取得する水道管の属性情報は、水道管の使用年数の予測に用いられる。ここでは、水道管の使用年数とは、水道管が埋設されてから当該水道管が破損するまでの年数である。水道管の破損の主な原因は劣化である。つまり、劣化により水道管にひび割れや穴開きなどの損傷が生じる。水道管の使用年数は、水道管における劣化の進行速度が関係する。このことから、取得部11が取得する水道管の属性情報は、水道管の劣化の進行速度に関与すると想定される情報(以下、劣化関連情報とも称する)を含む。換言すれば、劣化関連情報とは、水道管の劣化に関係する要素を表す情報である。
【0019】
例えば、取得部11が取得する水道管の属性情報は、布設場所情報と布設時期情報を含み、さらに、劣化関連情報として、配管サイズ情報と、管種情報と、用途情報と、埋設されている土壌の情報とを含む。布設場所情報は、水道管が埋設されている場所を表す住所と管路延長を含む情報である。具体例を挙げると、布設場所情報に含まれる住所の情報は、△△区○○○町三丁目1地先というような住所の情報である。布設場所情報に含まれる管路延長の情報は、管路距離300メートルというような管路長さの情報である。なお、予測対象の水道管の住所は、例えば、予測対象の水道管における長さ半分の位置に対応する住所とするというような予め定められたルールに基づいた住所とする。布設時期情報とは、水道管が埋設された時期を表す情報であり、例えば、暦年(例えば西暦)あるいは年度により表される情報である。
【0020】
配管サイズ情報は、水道管のサイズを表す情報であり、例えば、口径や管厚(肉厚)を間接的あるいは直接的に表す情報を含む。管種情報は、水道管の材料により水道管を分類する種別情報である。水道管の管種の具体例としては、例えば、ダクタイル鋳鉄管、ステンレス鋼管、ポリエチレン管などが挙げられる。用途情報は、水道管の用途を表す情報であり、管内を流れる水道水の水圧や水量や水流に関係する情報である。埋設されている土壌の情報とは、例えば、砂、シルト、粘土というような情報である。また、土壌の情報として、水分量や酸性度などを表す土質を表す情報が含まれていてもよい。
【0021】
さらに、属性情報には、劣化関連情報として、水道管を流れる水道水の水質(例えば、塩素などの成分の含有率)を表す情報が含まれていてもよい。さらに、属性情報には、劣化関連情報として、水道管への作用が考えられる要素の情報(例えば、水道管が道路に埋設されている場合には当該道路の交通量の情報や、水道管を流れる水道水の水圧や水量や水流の情報)が含まれていてもよい。なお、水道管を流れる水道水の水質や、水圧、水量というような水道水の状態を表す情報は、何らかの原因でもって変動することが考えられることから、例えば、水質や水圧や水量を連続的あるいは断続的に(例えば一日1回)測定し、当該測定データが保持されていてもよい。そして、その測定データから、例えば、直近の予め定めた期間(例えば3カ月間)の平均値が算出される。この平均値が、水道管の内部を流れている流体(水道水)に関し予め定められた期間における流体(水道水)の状態を表す情報として、属性情報に含まれてもよい。つまり、予測対象の水道管の属性情報は、水道管の内部を流れている水道水に関し予め定められた期間における水道水の状態を表す情報を含んでもよい。
【0022】
上述したような水道管の属性情報は、例えば、水道事業体に構築されている水道管の管理システムのデータベースや、水道事業体の職員が使用しているパソコン(パーソナルコンピュータ)などに接続されているデータベースに電子データでもって保持されている。このような水道事業体が用いているデータベース(つまり、情報源3)から、例えばユーザによる入力装置5の操作に応じて又は予め定められた時間間隔ごとに予測装置1が水道管の属性情報を読み出してデータベース4に格納する。データベース4においては、水道管の属性情報は、水道管を識別する管識別情報に関連付けられている。
【0023】
取得部11は、ユーザによる入力装置5の操作によって、破損時期予測処理の開始が要求され、また、予測対象の水道管に対応する管識別情報が予測装置1に入力された場合に、管識別情報を用いて、データベース4から予測対象の水道管の属性情報を取得する。取得部11が取得する属性情報は、前述したような複数種の属性情報の中から取得対象の情報として予め定められた属性情報であり、ここでは、少なくとも1つの劣化関連情報と、布設時期情報とを含む。
【0024】
例えば、水道事業体ごとに保持している水道管の属性情報が異なる場合が考えられる。このような場合には、水道事業体ごとに、取得部11が取得する水道管の属性情報の種類が定められる。そして、取得部11は、予測対象の水道管を管理している水道事業体に応じた種類の属性情報を取得する。なお、このような場合には、例えば、水道管を識別する管識別情報には、管理している水道事業体を表す情報、あるいは水道事業体を運営する市町村を表す情報が含まれる。また、取得部11は、予測対象の水道管が複数であって予測対象の水道管のそれぞれに対応する複数の管識別情報が入力された場合には、それら予測対象の水道管の属性情報をまとめてデータベース4から取得する。
【0025】
予測部12は、予測対象の水道管が破損する時期を予測する。すなわち、予測部12は、まず、予測対象の水道管の予測使用年数を算出する。予測使用年数とは、水道管が埋設されてから当該水道管が破損するまでの予測される年数である。予測部12は予測使用年数の算出にAI(Artificial Intelligence)技術を用いる。すなわち、予測部12は、AI技術によって生成された年数予測モデルを用いて、予測対象の水道管の予測使用年数を算出する。年数予測モデルとは、予測対象の水道管の属性情報を入力とし、当該予測対象の水道管の予測使用年数を出力とするモデルであり、次のような教師データを機械学習することにより生成される。年数予測モデルの生成に用いられる教師データは、水道管の実績使用年数と当該水道管の属性情報とが関連付けられているデータ(実績使用年数と水道管の属性情報との関係データ)である。水道管の実績使用年数とは、水道管が布設されてから当該水道管が実際に破損するまでの年数である。この実績使用年数に関連付けられる属性情報は、その実際に破損した水道管の属性情報であり、少なくとも1つの劣化関連情報を含む。年数予測モデルの入力となる予測対象の水道管の属性情報は、年数予測モデルの機械学習に用いられた教師データの属性情報に含まれる種類の属性情報であり、布設場所情報と、布設時期情報と、少なくとも1つの劣化関連情報とを含む。
【0026】
例えば、水道事業体によって保持している水道管の属性情報の種類が異なることが考えられ、この場合、年数予測モデルの生成(学習)に用いることができる属性情報の種類が水道事業体によって異なる場合がある。このような場合には、例えば、水道事業体ごと(換言すればエリアごと)の複数種の年数予測モデルが生成される。つまり、年数予測モデルの生成に用いる水道管の属性情報の種類の相違による複数種の年数予測モデルが用意される。このように、予測部12が予測使用年数の算出に用いる年数予測モデルが複数種用意されている場合がある。この場合には、予測部12は、複数種の年数予測モデルの中から、予測使用年数の算出に用いる年数予測モデルとして、予測対象の水道管の属性情報に含まれている情報の種類に応じた年数予測モデルを選択する。そして、予測部12は、選択した年数予測モデルと、予測対象の水道管の属性情報とを用いて、予測対象の水道管の予測使用年数を算出する。
【0027】
なお、年数予測モデルを生成する手法には複数種の手法がある。上述したように水道事業体ごとに年数予測モデルが用意される場合に、同じ生成手法で生成された年数予測モデルが水道事業体ごとに用意されてもよいが、同じ生成手法で生成された年数予測モデルが水道事業体ごとに用意されるのではなく、次のように水道事業体に応じた生成手法で生成された年数予測モデルが用意されてもよい。つまり、まず、水道事業体ごとに、生成手法が異なる複数の年数予測モデルが生成され、その生成された複数の年数予測モデルのそれぞれによって実際に予測使用年数を算出させる。この算出処理では、実績使用年数の情報が得られている水道管の属性情報を年数予測モデルに入力する。そして、年数予測モデルから出力された出力結果と、実績使用年数とが比較され、比較結果に基づいて水道事業体に合っていると判断された生成手法で生成された年数予測モデルがその水道事業体に対応する年数予測モデルとして用いられる。
【0028】
ところで、AI技術の一つとして、説明可能なAI(Artificial Intelligence)がある。説明可能なAIとは、モデルから算出の結果だけを出力するのではなく、その結果が算出された根拠の説明をも出力可能なAI技術である。ここでは、年数予測モデルは、その説明可能なAI技術を用いて生成される説明可能なモデルである。これにより、年数予測モデルは、予測対象の水道管の属性情報の入力によって、予測使用年数を出力するだけでなく、その予測使用年数を出力した根拠を説明する情報をも出力する。なお、説明可能なAI技術には複数の種類が有り、ここで採用する説明可能なAI技術の種類は限定されないので、その説明は省略される。
【0029】
さらに、予測部12は、予測対象の水道管に関し、年数予測モデルから出力された予測使用年数と、属性情報に含まれている布設時期情報とを用いて、予測対象の水道管が破損してしまうと予測される時期(ここでは、予測破損時期とも称する)を算出する。つまり、予測部12は、布設時期情報に含まれる布設時期(布設年)に予測使用年数を加算することにより、予測破損時期を算出する。具体的には、例えば、予測対象の水道管の布設時期が西暦1975年であり、予測使用年数が52年である場合には、西暦1975年に52年を加算することにより、予測破損時期が西暦2027年であると予測部12は算出する。なお、属性情報に含まれている布設時期情報の布設時期が暦年ではなく、年度により表されている場合には、予測部12により算出される予測破損時期も年度により表されることとなる。
【0030】
このように、予測部12は、予測対象の水道管に関し、破損すると予測される予測破損時期を暦年あるいは年度により表す態様でもって算出する。算出された予測破損時期の情報は、対応する水道管の管識別情報、属性情報、予測使用年数の情報および予測使用年数が算出された根拠の説明の情報が関連付けられている状態でデータベース4に格納される。
【0031】
出力部13は、予測部12により算出された予測破損時期を表す予測破損時期情報を出力する。例えば、出力部13は、ユーザによる入力装置5の操作によって予測破損時期情報の表示要求と、予測破損時期情報を表示してほしい水道管(つまり、表示対象の水道管)を特定する情報とが予測装置1に入力された場合には、出力部13は、表示装置7に、表示対象の水道管の予測破損時期情報を表示させる。つまり、出力部13は、表示装置7の表示動作を制御する機能を持つ。例えば、予測破損時期情報の表示に用いる表示テンプレートが予測装置1に与えられており、出力部13は、その表示テンプレートを用いて、表示対象の水道管における予測破損時期情報を表示装置7の画面に表示する。表示テンプレートの態様は限定されるものではないが、図2にはその一例が表されている。図2の例では、表示テンプレートは表の態様であり、当該表においては、表示対象の水道管における予測破損時期情報が当該水道管の属性情報や予測使用年数の情報に関連付けられて表されている。第1実施形態では、前述したように、予測使用年数の算出に用いる年数予測モデルは説明可能なモデルである。このため、算出した予測使用年数の根拠の説明が年数予測モデルから出力される。この根拠の説明は、予測使用年数の情報に関連付けられてデータベース4に格納されている。出力部13は、予測使用年数の情報を表示装置7に表示する場合には、その根拠の説明も表示装置7に出力し当該表示装置7に表示させてもよい。例えば、その根拠の説明は、図2に表されるような表に組み込まれて表示されたり、図3に表されるようにポップアップ表示されたりする。
【0032】
なお、出力部13は、複数の水道管に関する予測破損時期情報を含む情報を図2のような表で表示する場合に、ユーザによる入力装置5の操作により入力された要求に応じてそれら情報をソートする機能を備えていてもよい。つまり、出力部13は、複数の予測対象の水道管に関する予測破損時期情報を含む情報を、ユーザからの要求に応じて、予測破損時期の順に並べたり、布設年度の古い順に並べたり、予め区分けされた地域ごとにまとめて表示してもよい。
【0033】
また、出力部13は、図4に表されるような表示態様でもって水道管に関する予測破損時期情報の根拠の説明を表示装置7に表示してもよい。図4の例では、説明が要求された水道管(図4の例では、管識別情報:Ab-fmwの水道管)について、年数予測モデルから出力された根拠の説明の情報が表やグラフを用いて表されている。つまり、表示装置7には、年数予測モデルが水道管の予測使用年数の算出に用いた水道管の特徴量の情報が表の態様でもって表示されると共に、対象の水道管(例えば管識別情報:Ab-fmwの水道管)の予測使用年数に影響を与えている特徴量の関与の度合い(重要度)が表示されている。さらに、図4の例では、表示装置7には、それら表やグラフに表されている事項に基づいた根拠の説明が文章により表されている。
【0034】
出力部13が予測破損時期情報を表示装置7に表示する別の態様の一例として、図5に表されるような地図30に予測破損時期情報を重畳させる表示態様がある。図5の例では、地図30において、表示対象の水道管が埋設されている道路部分に、当該水道管の予測破損時期を表す色やパターンの情報が重畳されている。つまり、水道管の予測破損時期が西暦2025年までの期間内である場合には、予測破損時期を表す情報はAパターンの色あるいはハッチングであると定められ、水道管の予測破損時期が西暦2026年~2030年の期間内である場合には、予測破損時期を表す情報はBパターンの色あるいはハッチングであると定められるという如く、予測破損時期を表す色やハッチングが定められている。地図30において、表示対象の水道管が埋設されている道路部分に、予め定められた色やハッチングによって表される水道管の予測破損時期の情報が重畳されている。なお、図5に表されるように、地図30に水道管の予測破損時期の情報が重畳される場合には、出力部13には、ユーザによる入力装置5の操作により、表示したい水道管(表示対象の水道管)が埋設されている地域を表す情報が入力される。これにより、出力部13は、表示対象の水道管が埋設されている地域を含む地図30を表示装置7に表示できる。
【0035】
出力部13は、ユーザによる入力装置5の操作により、予測破損時期情報を印刷する指示が予測装置1に入力された場合には、出力部13は、その要求された印刷対象の予測破損時期情報をプリンタ8により印刷させる。
【0036】
第1実施形態の予測装置1は上記のように構成されている。次に、予測装置1における破損時期予測処理の動作の一例を、図6を参照しながら説明する。図6は、予測装置1における破損時期予測処理の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0037】
例えば、ユーザによる入力装置5の操作によって、破損時期予測処理を開始する要求が予測装置1に入力されると、取得部11がその処理開始の要求を受け取る(図6におけるステップ101)。この処理開始の要求には、予測対象の水道管に対応する管識別情報が関連付けられている。取得部11は、その管識別情報を用いて、予測対象の水道管の属性情報をデータベース4から取得する(ステップ102)。
【0038】
その後、予測部12が、予測対象の水道管の予測使用年数を算出する(ステップ103)。第1実施形態では、予測使用年数の算出にAI技術による年数予測モデルが用いられる。つまり、予測部12は、予測対象の水道管の属性情報を年数予測モデルに入力することにより当該年数予測モデルによる算出動作により予測使用年数を算出する。
【0039】
然る後に、予測部12は、予測対象の水道管に関し、属性情報に含まれている布設時期情報と、予測使用年数とを加算することにより、暦年あるいは年度により表される予測破損時期を算出する(ステップ104)。予測部12は、そのように算出された予測破損時期の情報をデータベース4に格納する。データベース4に格納されている予測破損時期の情報には、対応する水道管の管識別情報、属性情報、予測使用年数の情報および予測使用年数が算出された根拠の説明の情報などが関連付けられている。
【0040】
このように破損時期予測処理が実行される。このような処理により算出された予測破損時期情報の表示要求と、表示対象の水道管を特定する情報とがユーザによる入力装置5の操作によって予測装置1に入力された場合には、出力部13が、表示装置7に、表示対象の水道管の予測破損時期情報を表示させる。
【0041】
第1実施形態の予測装置1は、前述したように、AI技術による年数予測モデルを用いて予測使用年数を算出する。その年数予測モデルは、水道管の実績使用年数の情報と当該水道管の属性情報(布設場所情報と布設時期情報と少なくとも1つの劣化関連情報を含む属性情報)との関係データを機械学習することにより生成される。つまり、第1実施形態では、予測使用年数の算出のために、水道管の破損そのものではなく、水道管の実績使用年数と属性情報との関係が着目されている。これにより、第1実施形態では、年数予測モデルは、予測対象の水道管の管識別情報および属性情報の入力を受けて予測使用年数(水道管が埋設されてから破損すると予測されるまでの年数)を出力できる。
【0042】
さらに、予測部12は、予測対象の水道管の布設時期を表す布設年(暦年)あるいは布設年度に予測使用年数を加算することにより、暦年あるいは年度により表される予測破損時期(予測対象の水道管が破損してしまうと予測される時期)の情報を算出する。この算出された予測破損時期の情報が予測破損時期情報として出力部13により出力される。この予測破損時期情報は、暦年あるいは年度により表される情報であることから、例えば水道管の更新工事の時期を決定する際に、そのまま用いることができる。つまり、予測破損時期情報は、水道管の更新計画の策定に用い易い情報である。また、予測破損時期情報は暦年あるいは年度により表される情報であることから、当該予測破損時期情報を提示することにより、水道管を更新しなければならない時期を分かり易く伝えることができる。つまり、予測破損時期情報は、当該情報を用いて策定した水道管の更新計画における水道管の更新時期について説明し易い情報である。
【0043】
さらにまた、第1実施形態では、予測破損時期の算出に用いた予測使用年数を算出する年数予測モデルは、説明可能なモデルであることから、算出した予測使用年数の根拠の説明が年数予測モデルから出力される。予測装置1の出力である予測破損時期情報を用いて水道管の更新計画が策定された場合に、その更新計画についての説明に年数予測モデルから出力された説明が利用されることにより、当該更新計画の納得性を高めることができる。
【0044】
なお、年数予測モデルを機械学習により生成する際に、因果分析技術により得られた水道管の実績使用年数情報と当該水道管の属性情報との因果関係についての情報をも機械学習させてもよい。これにより、説明可能なモデルである年数予測モデルから出力される予測使用年数の根拠の説明に、予測使用年数と埋設管の属性情報との因果関係に関する説明が含まれ、このことは、算出される予測使用年数や予測破損時期に対する納得性(信頼性)をより高めることができる。
【0045】
また、予測装置1は、図1の点線に表されるような端末装置6と接続してもよい。端末装置6は、通信機能と表示機能を備えた情報機器であり、ここでは、具体例として、スマートフォンやタブレット端末などの可搬型情報機器が挙げられる。予測装置1が端末装置6と接続する場合には、出力部13は次のような機能を備えていてもよい。すなわち、出力部13は、端末装置6から予測破損時期情報の要求と当該要求対象の水道管を特定する情報とを受け取った場合には、その要求に応じた要求対象の水道管の予測破損時期情報を端末装置6に返信(出力)する。なお、第1実施形態では、水道管の予測破損時期情報を受け取ることが許可された端末装置6(あるいはユーザ)が記憶装置40などに予め登録されている。この登録情報と予め定められた認証手法とによって端末装置6(あるいはユーザ)の認証処理が予測装置1により実行される。出力部13は、その認証処理により認証された端末装置6(あるいはユーザ)に予測破損時期情報を出力する。
【0046】
さらに、予測装置1は、図1の点線に表されるような別のコンピュータ装置(例えばサーバ)9と接続してもよい。予測装置1がコンピュータ装置9と接続する場合には、出力部13は、さらに次のような機能を備えていてもよい。すなわち、出力部13は、コンピュータ装置9から予測破損時期情報の要求と当該要求対象の水道管を特定する情報とを受け取った場合には、その要求に応じた要求対象の水道管の予測破損時期情報をコンピュータ装置9に返信(出力)する。コンピュータ装置9は、例えば、受け取った予測破損時期情報を用いて、将来の管路更新の事業量や事業費の推計を含む水道管の更新計画を生成する。なお、予測破損時期情報が出力される出力先であるコンピュータ装置9は、例えば、端末装置6と同様に、認証処理により認証されたコンピュータ装置である。
【0047】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態の説明で出てきた構成部分と同様な機能の構成部分には同一符号を付し、その重複部分の説明は省略する。
【0048】
第2実施形態では、第1実施形態で説明した予測装置1における取得部11と予測部12と出力部13が、図7に表されるように、計画策定装置20に組み込まれている。すなわち、計画策定装置20は、水道管の更新計画を策定する機能を備えたコンピュータ装置であり、プロセッサにより構成される演算装置25と、記憶装置26とを備える。記憶装置26は、データやプログラム27を記憶する記憶媒体を備えている。演算装置25は、プログラム27を実行することにより、当該プログラム27に基づいた様々な機能を持つことができる。この演算装置25の機能の一部として、破損時期予測処理に関わる取得部11と予測部12と出力部13が計画策定装置20に備えられている。つまり、計画策定装置20は、埋設管が破損する時期(予測破損時期)を予測する予測装置としても機能する装置である。第2実施形態における取得部11と予測部12と出力部13の機能(構成)は第1実施形態における取得部11と予測部12と出力部13の機能(構成)と同様である。
【0049】
演算装置25は、機能部として、さらに、計画部28を備えている。計画部28は、予測部12により算出された予測破損時期を用いて、水道管の更新工事の計画(更新計画)を生成する。計画部28が更新計画を生成する手法の一例として、AI技術を用いることが挙げられる。更新計画を生成するAI技術には様々な種類があり、計画部28に採用されるAI技術の種類は限定されず、その説明は省略される。
【0050】
計画部28は、生成した水道管の更新計画をデータベース4に格納する。このようにデータベース4に格納された水道管の更新計画は、ユーザによる入力装置5の操作により表示装置7の表示が要求された場合には、計画策定装置20によって表示装置7に表示される。この表示装置7における表示態様は限定されず、その説明は省略される。
【0051】
第2実施形態における計画策定装置20(換言すれば予測装置)は第1実施形態の予測装置1と同様の機能を備えていることから、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、計画策定装置20では、予測部12により算出された予測破損時期を用いて水道管の更新計画を計画部28により生成する。予測破損時期は、暦年あるいは年度により表される情報である。このことから、例えば、計画策定装置20の計画部28は、水道管の腐食度合いの情報を用いて計画を生成する場合に比べて、水道管の更新時期を決定する処理において、水道管の更新時期を暦年や年度に変換するというような負荷を小さくすることができる。
【0052】
なお、計画部28は、予測部12による予測破損時期だけでなく、水道管に関する影響度や耐震度などの情報をも考慮して、水道管の更新工事の計画を生成してもよい。影響度とは、水道管からの大量の漏水や水道管の破裂というような大きな事故が発生してしまった場合の影響の度合いを表す情報である。この影響度は、例えば、水道管の属性情報に含まれる用途情報や流量の情報を用いて計画部28が算出する。また、耐震度は、水道管の耐震性についての情報であり、例えば、水道管の材料や埋設されている地盤の種類などにより定まる。水道管の耐震度は、例えば、水道管の属性情報の一つとして、情報源3(例えば水道管を管理しているシステムのコンピュータ装置やデータベース)から取得される。
【0053】
<その他の実施形態>
本発明は、第1や第2の実施形態に限定されず、様々な実施の態様を採り得る。例えば、第1や第2の実施形態では、予測部12が用いる年数予測モデルとして、例えば水道事業体ごとに複数の年数予測モデルが用意されている例を示している。これに代えて、例えば、何れの水道事業体からも取得できる共通の属性情報の種類を年数予測モデルの生成に用いることにより、水道事業体によらない共通の年数予測モデルが生成されてもよい。この場合には、予測部12は、その共通の年数予測モデルに共通の種類の属性情報を入力することにより、当該年数予測モデルによって予測使用年数を算出する。
【0054】
また、第1や第2の実施形態では、予測部12が用いる年数予測モデルは、説明可能なAI技術を用いて生成されるモデルであって予測使用年数の根拠の説明を出力するモデルである。これに代えて、年数予測モデルは、説明可能なモデルでなくともよい。この場合には、算出した予測使用年数の根拠の説明は年数予測モデルから出力されないが、次のような情報が参考情報として提示されてもよい。その参考情報とは、例えば、水道管の属性情報に表されている要素(例えば埋設されている土壌の土質)が水道管の使用年数に与える影響について予め判明している事項の説明が含まれている。
【0055】
さらに、第1や第2の実施形態では、埋設管である水道管を例にして予測装置の構成を説明しているが、例えば、下水道管渠やガス管というような他の種類の埋設管における予測破損時期の算出に関しても、第1や第2の実施形態と同様の予測装置を適用することができる。
【0056】
さらに、第1実施形態の予測装置1は、図8に表されるような解析部15を備えていてもよい。なお、図8に表される予測装置1においても記憶装置40を備え、また、演算装置10は取得部11と予測部12と出力部13を備えているが、図8では、それらの図示が省略されている。
【0057】
解析部15は、予測部12により算出された算出結果や水道管の属性情報を用いて、例えば地域ごとに、複数の水道管の劣化に関する事項を解析する機能を備える。この解析結果は、解析に用いた情報と関連付けられてデータベース4に格納される。また、解析部15による解析結果は、出力部13の機能によって、表示装置7に表示可能となっている。この表示の一例が図8に表されている。さらに、解析部15は、計画策定装置20に備えられていてもよい。
【0058】
図9は、本発明に係るその他の実施形態の予測装置の構成を表すブロック図である。この予測装置50は、例えばコンピュータ装置であり、コンピュータプログラムを実行することにより、次のような機能部を持つことができる。すなわち、予測装置50は、取得部51と、予測部52と、出力部53とを備える。
【0059】
取得部51は、予測対象の埋設管の属性を表す属性情報を取得する。予測部52は、年数予測モデルと、予測対象の埋設管の属性情報とを用いて、予測対象の埋設管の予測使用年数を算出する。予測使用年数とは、埋設管における布設から破損までの予測される使用年数である。年数予測モデルは、埋設管における布設から破損までの使用年数を表す実績使用年数情報と当該埋設管の属性情報との関係データを機械学習することにより生成され、予測対象の埋設管の属性情報を入力とし埋設管の予測使用年数を出力する。予測部52は、さらに、予測使用年数と、予測対象の埋設管の属性情報に含まれる布設時期を表す布設時期情報とを用いて、予測対象の埋設管が破損すると予測される時期を予測破損時期として算出する。出力部53は、予測破損時期を暦年あるいは年度を用いて表す予測破損時期情報を出力する。
【0060】
次に、予測装置50における動作の一例を、図10を参照しながら説明する。図10は、予測装置50の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0061】
例えば、取得部51が予測対象の埋設管の属性を表す属性情報を取得すると(ステップ201)、その属性情報と年数予測モデルとを用いて、予測部52が予測使用年数を算出する(ステップ202)。さらに、予測部52は、算出した予測使用年数と、予測対象の埋設管の属性情報に含まれる布設時期を表す布設時期情報とを用いて、予測破損時期を算出する(ステップ203)。然る後に、例えば、予測破損時期の出力が要求された場合に、出力部53が予測破損時期情報を出力する(ステップ204)。予測破損時期情報は、予測破損時期を暦年あるいは年度を用いて表す情報である。
【0062】
予測装置50は、上述したように、実績使用年数情報と埋設管の属性情報との関係データを機械学習することにより生成された年数予測モデルを用いて予測使用年数を算出する。さらに、予測装置50は、その算出した予測使用年数と布設時期情報とを用いて予測破損時期を出力し、さらにまた、予測破損時期を暦年あるいは年度を用いて表す予測破損時期情報を出力する。この予測破損時期情報は、暦年あるいは年度を用いて表されるものであるから、埋設管の更新計画の策定に用い易く、かつ、計画の策定の根拠について分かり易い情報である。つまり、予測装置50は、埋設管の更新計画の策定に用い易く、かつ、計画の策定の根拠について説明し易い情報を出力できる。
【符号の説明】
【0063】
1,50 予測装置
11,51 取得部
12,52 予測部
13,53 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10