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  • 特開-ヘミング加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058788
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ヘミング加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 19/08 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B21D19/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166099
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】593114810
【氏名又は名称】株式会社サンテック
(74)【代理人】
【識別番号】100107113
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 健一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光俊
(57)【要約】
【課題】ヘミング加工後に大きな曲げRの加工すると板金にしわが生じてしまっていた。これを回避するためには板厚を大きくするか、ヘミング加工を行わず端面に保護樹脂を設けるしかなかった。
【解決手段】R曲げを行う部分に直線状に切れ目13を入れる。次に、板金の縁をヘミング加工を行いヘミング加工部分12aを形成する。次に、R曲げ中心14に基づきR曲げ加工を行うことによりコーナ部を形成する。予め切れ目13を入れておくことにより、R曲げ加工を行ってもコーナ部のヘミング加工部分にしわがよらない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金を用意し、当該板金についてヘミング加工を行う曲げ箇所のうち、コーナ部を形成するためのR曲げを行う部分について切れ目を入れる第1工程と、
前記板金の縁を前記曲げ箇所についてヘミング加工を行う第2工程と、
前記R曲げを行う部分についてR曲げ加工を行う第3工程とを備えるヘミング加工方法。
【請求項2】
前記第1工程における前記切れ目の長さは、前記R曲げの大きさに対応していることを特徴とする請求項1記載のヘミング加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板金の端を折り返してふち取り加工を行うヘミング(hemming)加工方法に関し、特に、コーナ部を形成するR曲げ部についてのヘミング加工の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘミング加工は、板金の端を折り返してふち取り加工を行うものであり、薄い板材の端面の仕上げとして行われる。ヘミング加工方法及びヘミング加工装置を開示する先行技術として特許文献1乃至4がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-70030公報「金属板の成形方法、それに用いるローラおよび装置」 ローラを転動させて行うローラ式ヘミング加工に関し、従来の円筒面からなるローラとは異なる形状のローラを開示する。曲げ加工の自由度が大きく、回転軸の姿勢(向き)を複雑に変化させ得るロボット等は必ずしも必要ではなくなる。
【特許文献2】特開2022-15443公報「ロールヘミング加工方法及びロールヘミング装置」 曲げローラの近傍に先行押えローラを設けることにより、アウタパネルの外周縁において、アウタパネルの板外面がインナパネル側へ僅かに折れ曲がる面ダレ等の品質不具合を低減することを開示する。
【特許文献3】特許第3451592号公報「ヘミング加工方法及び装置」 アウタパネルの縁部に設けたヘムフランジをインナパネルの縁部に向けて予備曲げした後、この予備曲げしたヘムフランジにさらに加圧力を加えて本曲げすることにより、アウタパネルのヘムフランジを折り返してインナパネルの縁部を挟持させるヘミング加工方法において、上記ヘムフランジのコーナ部を加工するに際し、予備曲げの初期時に、このコーナ部の一部領域のみを局部的に加圧して変形せしめ、その後の上記コーナ部の曲げに伴う肉余りによって生じるしわを上記一部領域に集中して成長させる。
【特許文献4】特許第5285463号公報「ヘミング装置」 ヘミング装置を、先端部で前記加圧ローラを回転自在に支持する支持アームと、この支持アームの基端部に軸支され、前記基端部の回りに前記支持アームを回転させるモータと、前記モータを前記ロボットに固定する支持ヘッドと、を備え、前記モータの回転トルクで前記加圧ローラの押圧力を制御するようにした。シンプルな構成となり、追従性がよく、しかも、部品点数が少なくてコンパクトなヘミング装置を提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3の段落0003に記載されているように、板金のヘミング加工においてコーナ部の処理が問題となる。
【0005】
昨今、金属製のオフィス製品において、デザイン上の観点から緩やかな曲面を構成に含めることが多くなってきている。これにより板金加工において曲げRを大きくすることが多くなってきている。ここで、Rは曲げ半径に対応しており、曲げRが大きいほど曲面が緩やかになる。このときの課題として薄板化した時の端面の処理があった。具体的には、ヘミング加工後に大きな曲げRの加工すると板金にしわが生じてしまっていた。このため、ヘミング加工に代えて端面に保護樹脂を入れることが行われていた。ヘミング加工を行わない場合は板金の板厚を大きくしていた。いずれにしても、薄板に大きな曲げRの加工を施す場合はヘミング加工が使用できなかった。
【0006】
特許文献1は、ヘミング加工に使用するローラに関する発明であり、同文献中にはコーナー部や曲げRについて特段の記載はない。
【0007】
特許文献2は、先行押えローラに関する発明であり、同文献中にはコーナー部や曲げRについて特段の記載はない。
【0008】
特許文献3は、一般に、ヘムフランジのコーナ部の加工において、コーナ部をインナパネルの縁部側に折り曲げてゆくと必然的に肉余りが生じ、この肉余りによって多数のしわが発生するという課題を挙げ、これを解決するために、従来、コーナ部の肉取りを行なっていたと記載している。しかし、このやり方はコーナ部のしわの発生を防止することができるものの、本曲げを行なわないことにより生じるコーナ部とインナパネルとのすきまをシール剤や塗料等で埋めるといった特別な配慮が別途必要となると指摘している(段落003乃至005)。そして、この課題を解決するために、引用文献3の発明により、ヘムフランジのコーナ部を予備曲げするに際し、初期時に、このコーナ部の一部領域のみを局部的に加圧して変形せしめることにより、コーナ部の肉余りによるしわをこの領域に集中して発生・成長させるとしている(段落0020)。
【0009】
特許文献3の発明は、コーナ部の肉余りによるしわをこの領域に集中させることで外観上の見映えを向上させているが、しわが無くなったわけではない。
【0010】
特許文献4は、ロボットに取り付けた加圧ローラをアンビルに載置したワークに押圧しながら加工するヘミング装置を開示する。同文献の段落0043及び図9によれば波型のしわが生じている。
【0011】
特許文献1乃至4の発明では、薄板化した時の端面の処理の課題、すなわち、ヘミング加工後に大きな曲げRの加工をすると板金にしわが生じてしまうという問題を解決できない。
【0012】
この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ヘミング加工後に曲げ加工を行ったときに、そのコーナ部に生じるしわを軽減することのできるヘミング加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係るヘミング加工方法は、
板金を用意し、当該板金についてヘミング加工を行う曲げ箇所のうち、コーナ部を形成するためのR曲げを行う部分について切れ目を入れる第1工程と、
前記板金の縁を前記曲げ箇所についてヘミング加工を行う第2工程と、
前記R曲げを行う部分についてR曲げ加工を行う第3工程とを備えるものである。
【0014】
前記第1工程における前記切れ目の長さは、前記R曲げの大きさに対応している。例えば、90度曲げのコーナ部を形成する場合、その90度円弧の長さと略同程度の長さとする。これより多少長くてもよく、あるいはしわが生じない程度に多少短くしてもよい。60度や45度といった他の角度についても同様である。前記切れ目の幅は短くてよく、例えばレーザーで切断する場合はそのビーム幅約0.2mm程度である。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、前記第1工程で所定の位置に切れ目を設けることにより、ヘミング加工後に曲げ加工を行ったときに、そのコーナ部に生じるしわを軽減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】発明の実施の形態に係るヘミング加工方法の説明図である。第1工程において展開した板金に切れ目を入れた状態を示す。
図2】発明の実施の形態に係るヘミング加工方法の説明図である。第2工程において板金の端部を曲げてヘミング加工した状態、及び、コーナ部のR曲げ処理の位置を示す。
図3】発明の実施の形態に係るヘミング加工方法の説明図である。第3工程においてR曲げ処理を行った状態を示す。
図4】発明の実施の形態に係るヘミング加工方法により製造した物品(一例)の斜視図(写真)を示す。
図5図4のコーナ部の拡大図(写真)を示す。
図6図5のコーナ部のさらなる拡大図(略平面図、写真)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態に係るヘミング加工方法について説明を加える。
【0018】
<第1工程>
材料の板金1を用意し、図1に示すように、そのR曲げを行う部分aにファイバーレーザーで直線状に切れ目(スリット)13を入れる。その長さはR曲げの大きさ、具体的にはR曲げを行う部分aの長さに対応している(後述)。材料である板金の一例をあげると、厚さ0.8mmの金属板でその材質は例えばSPCC(冷間圧延鋼板)である。説明の便宜上、同図では1つのコーナ部を構成する部材のみを示しているが、これに限定されない。必要な大きさ、コーナ部の数に応じて適切な大きさの部材を使用できる。
【0019】
板金1の縁はヘミング加工を行う曲げ部分12である。ヘミング曲げ箇所(折り曲げ線)11を点線で示している。矢印はヘミング曲げの方向を示す。符号bは曲げ部分12の大きさである。例えば、bの長さは6mmあるいは9mm程度であるが、これに限定されない。
【0020】
同図の例では、切れ目13はヘミング曲げ箇所(折り曲げ線)11と同様に直線状である。切れ目13はヘミング曲げ箇所(折り曲げ線)11の延長上に位置する(両者は略同一直線上にある)。
【0021】
後述の第3工程でコーナ部のR曲げ加工が行われる。図2にR曲げ中心14を示す。R曲げ中心14は、切れ目13の概ね中点位置で切れ目13と交差する。
【0022】
符号aの長さと曲げ半径Rの一例をあげると、コーナ部2の半径Rが30mmのとき、切れ目13の長さは55mm程度である。ファイバーレーザーの切断幅がそのまま切れ目13の幅となる。切断幅は0.5mm以下程度である。実測したところ、切断幅(レーザー径)は約0.2mmであった。この例では、切れ目13をコーナ部2の長さ(R30で90度曲げる場合、90度円弧の長さは47mm程度)よりも少し長めにしているが、これに限定されない。コーナ部2の長さと略同じ、あるいはコーナ部2にしわが発生しない程度において、それよりも短くしてもよい。
【0023】
<第2工程>
板金1のヘミング曲げ部分12を、ヘミング曲げ箇所(折り曲げ線)11で折り返してヘミング加工を行う。図2はヘミング加工後の状態を示す。縁に折り返されたヘミング加工部分12aが形成される。
【0024】
<第3工程>
図2のR曲げ中心14に基づきR曲げ加工を行うことによりコーナ部2を形成する。図3は第3工程後のコーナ部2を示す。発明の実施の形態によれば、符号cの部分にしわが発生しない。
【0025】
<第4工程>
仕上げのためにコーナ部2を含む部分にバフがけを行う。なお、第4工程は省略することもできる。
【0026】
発明の実施の形態に係るヘミング加工方法により実際に製造した物品の一例を図4乃至図6に示す。これらの写真からわかるように、コーナー部にしわが認められない。図6の拡大写真では切れ目13が多少認められる。
【0027】
発明の実施の形態によれば、ヘミング加工後に曲げ加工を行ったときに、そのコーナ部に生じるしわを軽減することのできた。
【0028】
ヘミング加工に代えて端面に保護樹脂を入れるといったことが不要になり、一体加工による部品点数、工数及びコストを削減することができた。
【0029】
しわを軽減するために板金の板厚を大きくことが不要になり、薄板利用による軽量化及びコスト削減を実現できた。
【符号の説明】
【0030】
1 板金
11 ヘミング曲げ箇所(折り曲げ線)
12 金属板の縁のヘミング曲げ部分
12a ヘミング加工部分
13 切れ目(スリット)
14 R曲げ中心
2 ヘミング加工された後にR曲げ処理されたコーナ部
a ヘミング曲げ長さ
b 曲げ部分の長さ
c コーナ部のヘミング加工部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6