(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058790
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】シャント抵抗器およびシャント抵抗器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01C 13/00 20060101AFI20240422BHJP
H01C 1/144 20060101ALI20240422BHJP
H01C 17/28 20060101ALI20240422BHJP
H01C 17/232 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H01C13/00 J
H01C1/144
H01C17/28
H01C17/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166113
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】大澤 亮
【テーマコード(参考)】
5E028
5E032
【Fターム(参考)】
5E028BA21
5E028BB01
5E028CA12
5E028JA11
5E028JA12
5E028JB03
5E032BA21
5E032BB01
5E032CA12
5E032CC11
5E032TA11
5E032TB02
5E032TB05
(57)【要約】
【課題】所望の抵抗温度特性を満たすことができるシャント抵抗器が提供される。
【解決手段】シャント抵抗器1は、抵抗体5の両端に接続する一対の電極6,7を備える。一対の電極6,7は、一対の電圧検出部20,21を有し、一対の電圧検出部20,21の間の抵抗体5に穴70が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流検出に用いられるシャント抵抗器であって、
抵抗体と、
前記抵抗体の両端に接続する一対の電極と、を備え、
前記一対の電極は、それぞれ前記抵抗体に隣接する一対の電圧検出部を有し、
前記一対の電圧検出部の間の前記抵抗体に穴を設けた、シャント抵抗器。
【請求項2】
前記シャント抵抗器は、電流の一部が迂回して流れる迂回電流流路部を備え、
前記迂回電流流路部は、前記抵抗体の一部および前記一対の電極の一部からなり、
前記電圧検出部は、前記迂回電流流路部の前記一対の電極に設けられ、
前記穴は前記迂回電流流路部の前記抵抗体に設けられている、請求項1に記載のシャント抵抗器。
【請求項3】
前記迂回電流流路部は、前記シャント抵抗器の長さ方向に平行な面に設けられた突出部である、請求項2に記載のシャント抵抗器。
【請求項4】
前記シャント抵抗器は、前記電極と電気的に接続し、前記一対の電圧検出部の所定の位置にそれぞれ設けられた一対の電圧検出端子を備え、
前記穴は、前記シャント抵抗器の使用温度範囲に対して所定の抵抗温度特性範囲を満たす位置および大きさで設けられ、且つ、前記一対の電圧検出端子の接続位置を通る直線上にかかる位置および大きさで設けられた、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のシャント抵抗器。
【請求項5】
抵抗体と、前記抵抗体の両端に接続し、かつ前記抵抗体に隣接する一対の電圧検出部を有する一対の電極と、を備えたシャント抵抗器の製造方法であって、
前記一対の電圧検出部の間の前記抵抗体に穴を設ける工程を含み、
前記穴の位置および大きさによって抵抗温度特性を調整する、シャント抵抗器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗器およびシャント抵抗器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シャント抵抗器は、電流検出用途に広く用いられている。このようなシャント抵抗器は、板状の抵抗体と、抵抗体の両端に接合された板状の電極と、を備えている。このような抵抗体は、銅・ニッケル系合金、銅・マンガン系合金、鉄・クロム系合金、ニッケル・クロム系合金などの合金で構成されており、このような電極は、銅などの高導電性金属から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなシャント抵抗器では、温度変動の影響が小さい電流検出を可能とするために、抵抗温度係数(TCR)ができるだけ0に近いことが要請されている。抵抗温度係数(TCR)とは、温度変化による抵抗値の変化の割合を示す指標であり、抵抗温度係数(TCR)が0に近づくほど抵抗値の変化が小さくなる。シャント抵抗器のTCRを改善するために、例えば、マンガニン(登録商標)などのTCRが小さい合金が抵抗体の材料として使用されている。しかしながら、抵抗体材料の選定によるTCRの調整(改善)には限界がある。
【0005】
特許文献1は、突出部の突出量を調整することによってTCRを調整するシャント抵抗器を開示している。しかしながら、特許文献1で開示されたシャント抵抗器では、突出部の突出量によってTCRを調整するため、ロット毎または単体毎に製品の外形寸法が変わってしまう問題がある。
【0006】
特許文献1で開示されたシャント抵抗器では、材料ロット毎の特性ばらつき、突出部の寸法ばらつき、電圧検出端子を接続するときの位置ばらつきによって、ロット毎または単体毎でTCRにばらつきが生じてしまう場合がある。例えば、材料ロット毎の特性ばらつきによってTCRにばらつきが生じても、TCRを調整するために、後から突出部の寸法や電圧検出端子の位置を容易に調整することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、製品のサイズ寸法を変えることなく、TCRを容易に調整することができる、すなわち所望の抵抗温度特性を満たすことができるシャント抵抗器を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、所望の抵抗温度特性を満たすことができるシャント抵抗器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、電流検出に用いられるシャント抵抗器が提供される。シャント抵抗器は、抵抗体と、前記抵抗体の両端に接続する一対の電極と、を備え、前記一対の電極は、それぞれ前記抵抗体に隣接する一対の電圧検出部を有し、前記一対の電圧検出部の間の前記抵抗体に穴を設けた。
【0010】
一態様では、前記シャント抵抗器は、電流の一部が迂回して流れる迂回電流流路部を備え、前記迂回電流流路部は、前記抵抗体の一部および前記一対の電極の一部からなり、前記電圧検出部は、前記迂回電流流路部の前記一対の電極に設けられ、前記穴は前記迂回電流流路部の前記抵抗体に設けられている。
一態様では、前記迂回電流流路部は、前記シャント抵抗器の長さ方向に平行な面に設けられた突出部である。
一態様では、前記シャント抵抗器は、前記電極と電気的に接続し、前記一対の電圧検出部の所定の位置にそれぞれ設けられた一対の電圧検出端子を備え、前記穴は、前記シャント抵抗器の使用温度範囲に対して所定の抵抗温度特性範囲を満たす位置および大きさで設けられ、且つ、前記一対の電圧検出端子の接続位置を通る直線上にかかる位置および大きさで設けられた。
【0011】
一態様では、抵抗体と、前記抵抗体の両端に接続し、かつ前記抵抗体に隣接する一対の電圧検出部を有する一対の電極と、を備えたシャント抵抗器の製造方法が提供される。シャント抵抗器の製造方法は、前記一対の電圧検出部の間の前記抵抗体に穴を設ける工程を含み、前記穴の位置および大きさによって抵抗温度特性を調整する。
【発明の効果】
【0012】
抵抗体に形成された穴を備えるシャント抵抗器は、所望の抵抗温度特性を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】シャント抵抗器の一実施形態を示す図である。
【
図2】シャント抵抗器の他の実施形態を示す図である。
【
図4】穴の直径を変えたときの温度変化によるシャント抵抗器の抵抗値の変化率を示すグラフである。
【
図5】
図5(a)はシャント抵抗器の突出部側面から穴までの距離を示す図であり、
図5(b)は突出部側面から穴までの距離を変えたときの温度変化によるシャント抵抗器の抵抗値の変化率を示すグラフである。
【
図6】
図6(a)乃至
図6(g)は、抵抗体に形成された穴の変形例を示す図である。
【
図7】シャント抵抗器の他の実施形態を示す図である。
【
図8】シャント抵抗器の他の実施形態を示す図である。
【
図9】比較例に係るシャント抵抗器と、本実施形態に係るシャント抵抗器と、の違いを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。以下で説明する複数の実施形態において、特に説明しない一実施形態の構成は、他の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、シャント抵抗器の一実施形態を示す図である。
図1に示すように、シャント抵抗器1は、所定の厚みと幅を有する抵抗合金板材からなる抵抗体5と、第1方向における抵抗体5の両端(すなわち、両側接続面)5a,5bに接続された高導電性金属からなる一対の電極6,7と、を備えている。
【0016】
電極6は、抵抗体5の一端(一方の接続面)5aに接合する接合面6aを有しており、電極7は、抵抗体5の他端(他方の接続面)5bに接合する接合面7aを有している。電極6,7には、シャント抵抗器1を検出する電流の経路へ接続する際に、ねじなどで固定するためのボルト穴8,9がそれぞれ形成されている。
【0017】
上記第1方向は、抵抗体5の長さ方向であり、シャント抵抗器1の長さ方向に相当する。シャント抵抗器1の長さ方向は、電極6、抵抗体5、および電極7がこの順に配置される方向である。この第1方向に垂直な方向は、第2方向である。第2方向は、シャント抵抗器1の幅方向である。
図1に示すように、電極6,7は、同一の構造を有しており、抵抗体5に関して対称的に配置されている。
【0018】
抵抗体5の両端5a,5bのそれぞれは、電極6,7のそれぞれに溶接(例えば、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接、または、ろう接)などの手段によって接合されている。抵抗体5の材質の例として、Cu-Mn系合金、Cu-Ni系合金、Ni-Cr系合金、Fe-Cr系合金などの低抵抗合金材を挙げることができる。電極6,7の材質の例として、銅(Cu)を挙げることができる。このような構造および材料で構成されたシャント抵抗器1は、概ね10μΩから500μΩの抵抗値を有している。
【0019】
一対の電極6,7は、それぞれ抵抗体5に隣接する一対の電圧検出部20,21を有している(
図1の網掛け参照)。電圧検出部20,21は、シャント抵抗器1の第2方向に沿って延びている。
【0020】
シャント抵抗器1は、電圧検出部20,21上の所定の位置に配置された一対の電圧検出端子38,39を備えている。本実施形態では、電圧検出端子38,39は、電圧検出部20,21の表面からそれぞれ垂直に延びる導電性のピンである。例えば、電圧検出端子38,39は、溶接や圧着などの手法により、電圧検出部20,21にそれぞれ接続されている。
【0021】
電圧検出端子38,39のそれぞれに導線(例えば、アルミワイヤー)を接続する手段や、回路基板に形成したスルーホールに電圧検出端子38,39を挿通して、回路基板に形成した配線と導通接続する手段等により、電圧検出端子38,39の間の電圧が測定される。このような構成により、シャント抵抗器1に流れる電流を検出するための電圧を測定することができる。
【0022】
図1に示すように、シャント抵抗器1は、一対の電圧検出部20,21の間の抵抗体5に形成された穴70を備えている。穴70は、シャント抵抗器1の側面1aから離間して配置されている。穴70を形成することにより、シャント抵抗器1の抵抗温度係数(TCR)を調整することができる。
【0023】
穴70は、貫通した穴であってもよく、または抵抗体5の表面に形成された窪みであってもよい。本実施形態では、穴70は貫通した穴である。穴70は、一対の電圧検出端子38,39の接続位置を通る直線上に配置されている。言い換えれば、一対の電圧検出端子38,39および穴70は、シャント抵抗器1の第1方向に沿って一直線上に配列されている。穴70は、例えば、ドリル、パンチ、レーザーなどの手段によって形成可能である。このような手段によって、穴70の位置および大きさを容易に変更可能であり、ロット毎および単体毎に、シャント抵抗器1のTCRを容易に調整することができる。
【0024】
図2は、シャント抵抗器の他の実施形態を示す図である。
図2に示すように、シャント抵抗器1は、シャント抵抗器1の側面1aに形成された突出部11と、シャント抵抗器1の側面1bに形成された凹部12と、を有している。
【0025】
突出部11は、側面1aから外側に延びており、凹部12は、側面1bから内側に(シャント抵抗器1の中心部に向かって)延びている。突出部11と凹部12は、共に同じ方向(第2方向)に延びている。突出部11および凹部12は、上から見たとき(第1方向および第2方向の両方に垂直な方向からみたとき)、矩形状の形状を有している。
【0026】
側面1aは、第1方向に平行なシャント抵抗器1の面であり、電極6の側面6cと、電極7の側面7cと、を有している。側面1bは、第1方向に平行なシャント抵抗器1の面であり、かつ側面1aの反対側の面である。側面1bは、電極6の側面6bと、電極7の側面7bと、を有している。側面6b,7bは、側面6c,7cに平行な面である。本実施形態では、突出部11と凹部12は同じ寸法である。
【0027】
図3は、突出部の拡大図である。
図3に示すように、シャント抵抗器1は、電流の一部が迂回して流れる迂回電流流路部80を備えている。
図3に示す実施形態では、迂回電流流路部80は、抵抗体5の一部および一対の電極6,7のそれぞれの一部から構成されており、突出部11に相当する。電圧検出部20,21は、迂回電流流路部80(すなわち、突出部11)の一対の電極6,7に設けられており、穴70は、迂回電流流路部80(すなわち、突出部11)の抵抗体5に設けられている。
【0028】
図4は、穴の直径を変えたときの温度変化によるシャント抵抗器の抵抗値の変化率を示すグラフである。
図4の横軸は、シャント抵抗器1の温度を示し、
図4の縦軸は、シャント抵抗器1の抵抗値変化率をしている。
図4に示すグラフは、穴70が形成されていないシャント抵抗器1の抵抗値変化率と、4種類(具体的には、φ1.25mm、φ1.0mm、φ0.75mm、φ0.5mm)の直径を有する穴70が形成されたシャント抵抗器1の抵抗値変化率と、を示している。
【0029】
図4に示すシャント抵抗器1の抵抗値変化率の変動幅から明らかなように、シャント抵抗器1は、穴70を形成することで温度変化による抵抗値変化率の変動幅を調整することができる。すなわち、
図4に示す実験結果は、穴70を形成することにより、抵抗温度係数(TCR)を調整することができることを示しており、穴70を有するシャント抵抗器1は、所望の抵抗温度特性を満たすことができる。
【0030】
さらに、
図4に示す実験結果は、穴70の直径を変えることにより、TCRを調整することが可能であることを示している。例えば、
図4において、シャント抵抗器1の使用温度範囲が-25℃~+100℃の範囲内である場合、穴径φ1.0mmを有する穴70を形成することにより、抵抗値変化率の変動幅をより小さくすることができ、電流検出精度を向上させることができる(抵抗値変化率:±0.01%以内)。例えば、
図4において、シャント抵抗器1の使用温度範囲が-50℃~+125℃の範囲内である場合、穴径φ0.75mmを有する穴70を形成することにより、抵抗値変化率の変動幅をより小さくすることができ、電流検出精度を向上させることができる(抵抗値変化率:±0.04%以内)。
【0031】
図5(a)はシャント抵抗器の突出部側面から穴までの距離を示す図であり、
図5(b)は突出部側面から穴までの距離を変えたときの温度変化によるシャント抵抗器の抵抗値の変化率を示すグラフである。
図5(b)の横軸は、シャント抵抗器1の温度を示し、
図5(b)の縦軸は、シャント抵抗器1の抵抗値変化率をしている。
【0032】
図5(b)に示すように、突出部11の突出部側面11aから穴70までの距離PLH(
図5(a)参照)を調整することにより、TCRを調整することができる。
図5(b)に示すグラフにおいて、一点鎖線で示す曲線は、距離PLHが1.5mmであるときのシャント抵抗器1の抵抗値変化率を示し、点線で示す曲線は、距離PLHが2.0mmであるときのシャント抵抗器1の抵抗値変化率を示し、実線で示す曲線は、距離PLHが2.5mmであるときのシャント抵抗器1の抵抗値変化率を示している。
【0033】
図5(b)に示す実験結果から明らかなように、穴70の直径を調整するのみならず、距離PLHを調整することによっても、TCRの調整が可能である。したがって、穴70をシャント抵抗器1の使用温度範囲に対して所定の抵抗温度特性範囲を満たす位置および大きさで設けることにより、シャント抵抗器1の電流検出精度を向上させることができる。なお、この場合であっても、穴70は、一対の電圧検出端子38,39の接続位置を通る直線上にかかる位置および大きさで設けられることが好ましい。
【0034】
ここで、穴70が貫通した穴である場合、穴70の大きさは、第1方向および/または第2方向における長さを意味するが、穴70が窪みである場合、穴70の大きさは、第1方向および/または第2方向における長さのみならず、穴70の深さをも含む。
【0035】
図6(a)乃至
図6(g)は、抵抗体に形成された穴の変形例を示す図である。穴70は、
図6(a)に示すような円形状には限定されず、様々な形状を有してもよい。例えば、穴70は四角形状を有してもよく(
図6(b)参照)、シャント抵抗器1の第1方向と平行に延びる長穴であってもよい(
図6(c)参照)。一実施形態では、穴70は、シャント抵抗器1の第2方向と平行に延びてもよい。
【0036】
図6(d)に示すように、穴70は、抵抗体5の一部および電極7(または電極6)の一部に形成されてもよい。言い換えれば、穴70は、抵抗体5と電極6(または電極7)との境界部分に形成されてもよい。
【0037】
図6(e)に示すように、穴70は、抵抗体5の一部および電極6,7の一部に形成された、第1方向と平行に延びる長穴であってもよい。
図6(f)に示すように、複数の穴70が形成されてもよく、この場合、穴70は、抵抗体5と電極6(および電極7)との境界部分に形成されてもよい(
図6(g)参照)。複数の穴70を形成する場合、穴70の数は、必ずしも、電圧検出端子38,39の数に対応している必要はない。
【0038】
穴70を形成する工程は、シャント抵抗器1の製造工程に組み込まれている。シャント抵抗器1の製造方法は、一対の電圧検出部20,21の間の抵抗体5に穴70を設ける工程を含み、穴70の位置および大きさによって抵抗温度係数(TCR)を調整する。
【0039】
穴70を形成する工程は、電極6,7、抵抗体5、および電圧検出端子38,39の形成後に行われ、ロット毎または単体毎にTCRを実測し、実測された値に基づいて穴70をシャント抵抗器1の使用温度範囲に対して所定の抵抗温度特性範囲を満たす位置および大きさで設けることが望ましい。こうすることで、材料ロット毎の特性ばらつき、突出部の寸法ばらつき、電圧検出端子を接続するときの位置ばらつきなどにより、ロット毎または単体毎でTCRにばらつきがあったとしても、ばらつきに関係なく容易に調整することが可能である。
【0040】
図7は、シャント抵抗器の他の実施形態を示す図である。
図7に示すように、シャント抵抗器1は、一対の電極6,7に形成された一対のスリット90,91を有している。これらスリット90,91のそれぞれは、シャント抵抗器1の側面1aから側面1bに向かって延びており、迂回電流流路部80は、スリット90,91の間の領域に形成されている。本実施形態においても、電圧検出部20,21(および電圧検出端子38,39)は迂回電流流路部80に形成されており、穴70は電圧検出端子38,39の間に形成されている。
【0041】
図8は、シャント抵抗器の他の実施形態を示す図である。
図8に示すように、シャント抵抗器1は、一対の電極6,7の中央部分に形成された一対のスリット90,91を有してもよい。この場合であっても、迂回電流流路部80は、スリット90,91の間の領域に形成されている。本実施形態においても、電圧検出部20,21(および電圧検出端子38,39)は迂回電流流路部80に形成されており、穴70は電圧検出端子38,39の間に形成されている。
【0042】
図9は、比較例に係るシャント抵抗器と、本実施形態に係るシャント抵抗器と、の違いを説明するための図である。
図9に示す比較例として、特許文献1(特開2021-176195号公報)を挙げることができる。
【0043】
図9に示すように、比較例に係るシャント抵抗器の場合、スリットによってTCRを大きく調整する場合、幅W3を広くし、長さt4を長くする必要があり、結果として、スリットの大きさに伴って迂回する電流の流路が制限され、抵抗値も大きく変動してしまう。本実施形態に係るシャント抵抗器1の場合、電圧検出端子38,39の間に穴70を形成することにより、迂回する電流の流路を確保しつつ(矢印参照)、抵抗値の変動を抑え、TCRを調整することができる。さらに、穴70の大きさによって、容易にTCRの変動幅を変化させることができる。
【0044】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 シャント抵抗器
1a 側面
1b 側面
5 抵抗体
5a,5b 両端
6,7 電極
6a 接合面
6b 側面
6c 側面
7a 接合面
7b 側面
7c 側面
8,9 ボルト
11 突出部
11a 突出部側面
12 凹部
20,21 電圧検出部
38,39 電圧検出端子
70 穴
80 迂回電流流路部
90,91 スリット