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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058793
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】飛行体及び飛行体の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/82 20060101AFI20240422BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240422BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B64C27/82
B64C27/08
B64C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166118
(22)【出願日】2022-10-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4(2022)年10月4日、イノベーション・ジャパン2022大学見本市&ビジネスマッチングOnlineのウェブサイト(https://innovationjapan-jst-nedo.jst.go.jp/exhibitor/un20220109.html)にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】下ノ村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】リカルド ロザレス マルチネス
(57)【要約】
【課題】第1回転翼による飛行体の前進以外の動作の補助、又は、第1回転翼だけでは実現困難な動作を実現する。
【解決手段】開示の飛行体は、飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、前記飛行体本体に設けられた、前記第1回転翼とは異なる駆動装置と、を備え、前記駆動装置は、それぞれが回転軸心回りに回転する複数の第2回転翼を備え、前記複数の第2回転翼それぞれは、前記揚力の発生方向に交差する第1平面における推力を発生させる第1向きと、前記第1向きとは異なる第2向きと、の間で、前記回転軸心の向きを変更可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体本体と、
揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、
前記飛行体本体に設けられた、前記第1回転翼とは異なる駆動装置と、
を備え、
前記駆動装置は、それぞれが回転軸心回りに回転する複数の第2回転翼を備え、
前記複数の第2回転翼それぞれは、前記揚力の発生方向に交差する第1平面における推力を発生させる第1向きと、前記第1向きとは異なる第2向きと、の間で、前記回転軸心の向きを変更可能である
飛行体。
【請求項2】
前記回転軸心が前記第2向きを向く前記複数の第2回転翼は、ヨー方向の力を発生させて、前記飛行体を旋回させる
請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記第1向きは、前記第1平面に平行な向きであり、
前記第2向きは、前記回転軸心を、前記第1向きから、前記第1平面に交差する軸心回りに回動させたときの向きを含む
請求項1に記載の飛行体。
【請求項4】
前記第1向きは、前記第1平面に平行な向きであり、
前記第2向きは、前記回転軸心を、前記第1向きから、前記第1平面に平行な軸心回りに回動させたときの向きを含む
請求項1に記載の飛行体。
【請求項5】
前記第1向きは、前記複数の第2回転翼それぞれの回転軸心が前記飛行体の重心に向く向きである
請求項3又は請求項4に記載の飛行体。
【請求項6】
前記複数の第2回転翼から前記飛行体の重心までの長さは、前記第1回転翼から前記重心までの長さよりも、大きい、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項7】
飛行体本体と、
揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、
前記飛行体本体に設けられた、前記第1回転翼とは異なる駆動装置と、
を備え、
前記駆動装置は、ヨー方向の力を発生させる複数の第2回転翼を備える
飛行体。
【請求項8】
飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、を備える飛行体に取り付けられる駆動装置であって、
それぞれが回転軸心回りに回転する複数の第2回転翼を備え、
前記複数の第2回転翼それぞれは、前記揚力の発生方向に交差する第1平面における推力を発生させる第1向きと、前記第1向きとは異なる第2向きと、の間で、前記回転軸心の向きを変更可能である
駆動装置。
【請求項9】
飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、を備える飛行体に取り付けられる駆動装置であって、
ヨー方向の力を発生させる複数の第2回転翼を備える
駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行体及び飛行体の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドローンとも呼ばれる、マルチロータ型の飛行体が知られている。この飛行体は、揚力発生用の複数の回転翼を有する。この飛行体は、高所での作業などの作業用途に用いられることがある。
【0003】
この飛行体の機体は、回転翼が軸心回りに回転することで軸心方向に発生する揚力によって浮上する。また、この飛行体は、機体の傾きと回転翼の回転速度のバランスとを制御することで、軸心方向に交差する平面内(例えば水平面内)の指定された方向に移動することができる。
【0004】
また、特許文献1は、上昇下降用プロペラと前進用プロペラとを備える航空機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-100396号公報
【発明の概要】
【0006】
特許文献1に記載の航空機は、一般的なマルチロータ型の飛行体が備える上昇下降用プロペラのほかに、前進用プロペラを備えている。すなわち、特許文献1は、飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、前記飛行体本体に設けられた、前記第1回転翼とは異なる駆動装置と、を備える飛行体を開示している。しかし、第1回転翼とは異なる駆動装置として、単に前進用プロペラを備えるだけでは、飛行体の前進が補助されるにすぎない。
【0007】
したがって、第1回転翼による飛行体の前進以外の動作の補助、又は、第1回転翼だけでは実現困難な動作を実現するための駆動装置が望まれる。
【0008】
本開示のある側面は、飛行体である。開示の飛行体は、飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、前記飛行体本体に設けられた、前記第1回転翼とは異なる駆動装置と、を備え、前記駆動装置は、それぞれが回転軸心回りに回転する複数の第2回転翼を備え、
前記複数の第2回転翼それぞれは、前記揚力の発生方向に交差する第1平面における推力を発生させる第1向きと、前記第1向きとは異なる第2向きと、の間で、前記回転軸心の向きを変更可能である。
【0009】
他の観点からみた飛行体は、飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、前記飛行体本体に設けられた、前記第1回転翼とは異なる駆動装置と、を備え、前記駆動装置は、ヨー方向の力を発生させる複数の第2回転翼を備える。
【0010】
本開示の他の側面は、駆動装置である。開示の駆動装置は、飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、を備える飛行体に取り付けられる駆動装置であって、それぞれが回転軸心回りに回転する複数の第2回転翼を備え、前記複数の第2回転翼それぞれは、前記揚力の発生方向に交差する第1平面における推力を発生させる第1向きと、前記第1向きとは異なる第2向きと、の間で、前記回転軸心の向きを変更可能である。
【0011】
他の観点からみた駆動装置は、飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、を備える飛行体に取り付けられる駆動装置であって、ヨー方向の力を発生させる複数の第2回転翼を備える。
【0012】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る飛行体の平面概略図である。
図2図2は、飛行体の正面概略図である。
図3図3は、駆動装置の平面概略図である。
図4図4は、第2回転翼が第2向きになった飛行体の平面概略図である。
図5図5は、第2回転翼によるヨー方向の力の発生を示す説明図である。
図6図6は、第2回転翼による水平面所望方向の推力の発生を示す図である。
図7図7は、変形例に係る飛行体の平面概略図である。
図8図8は、変形例に係る飛行体の正面概略図である。
図9図9は、変形例にかかる第2回転翼による上方及び下方の力の発生を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1.飛行体及び飛行体の駆動装置の概要>
【0015】
(1)実施形態に係る飛行体は、飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、前記飛行体本体に設けられた、前記第1回転翼とは異なる駆動装置と、を備え得る。前記駆動装置は、それぞれが回転軸心回りに回転する複数の第2回転翼を備え得る。前記複数の第2回転翼それぞれは、前記揚力の発生方向に交差する第1平面における推力を発生させる第1向きと、前記第1向きとは異なる第2向きと、の間で、前記回転軸心の向きを変更可能であり得る。回転軸心の向きが第1の向きである第2回転翼によって、第1平面における推力を発生させることができる。また、第2回転翼の回転軸心の向きを変更して第2向きにすることで、前記推力とは異なる力を飛行体に生じさせることができる。したがって、当該異なる力によって、第1回転翼による飛行体の前進以外の動作の補助、又は、第1回転翼だけでは実現困難な動作を実現することができる。
【0016】
(2)前記回転軸心が前記第2向きを向く前記複数の第2回転翼は、ヨー方向の力を発生させて、前記飛行体を旋回させるのが好ましい。この場合、第2回転翼によって、飛行体を旋回させることができる。
【0017】
(3)前記第1向きは、前記第1平面に平行な向きであり、前記第2向きは、前記回転軸心を、前記第1向きから、前記第1平面に交差する軸心回りに回動させたときの向きを含み得る。この場合、第2向きを、第1平面に交差する軸心回りの回動で変更することができる。
【0018】
(4)前記第1向きは、前記第1平面に平行な向きであり、前記第2向きは、前記回転軸心を、前記第1向きから、前記第1平面に平行な軸心回りに回動させたときの向きを含み得る。この場合、第2向きを、第1平面に平行な軸心回りの回動で変更することができる。
【0019】
(5)前記第1向きは、前記複数の第2回転翼それぞれの回転軸心が前記飛行体の重心に向く向きであるのが好ましい。
【0020】
(6)前記複数の第2回転翼から前記飛行体の重心までの長さは、前記第1回転翼から前記重心までの長さよりも、大きいのが好ましい。
【0021】
(7)実施形態に係る飛行体は、飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、前記飛行体本体に設けられた、前記第1回転翼とは異なる駆動装置と、を備え得る。前記駆動装置は、ヨー方向の力を発生させる複数の第2回転翼を備えるのが好ましい。この場合、駆動装置によって、ヨー方向の力を発生させて、飛行体を旋回させることができる。
【0022】
(8)実施形態に係る駆動装置は、飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、を備える飛行体に取り付けられる駆動装置であって、それぞれが回転軸心回りに回転する複数の第2回転翼を備え、前記複数の第2回転翼それぞれは、前記揚力の発生方向に交差する第1平面における推力を発生させる第1向きと、前記第1向きとは異なる第2向きと、の間で、前記回転軸心の向きを変更可能である。
【0023】
(9)実施形態に係る駆動装置は、飛行体本体と、揚力を発生させるように前記飛行体本体に設けられた第1回転翼と、を備える飛行体に取り付けられる駆動装置であって、ヨー方向の力を発生させる複数の第2回転翼を備える。
【0024】
<2.飛行体及び飛行体の駆動装置の例>
【0025】
本実施の形態に係る飛行体1は、一例として、ドローンとも呼ばれる、マルチロータ型の飛行体である。詳しくは、図1及び図2を参照して、飛行体1は、1又は複数の第1回転翼11を有する。第1回転翼11は、回転軸心11A回りに回転することによって揚力を発生させる。図1及び図3のようにX軸、Y軸、Z軸が設定された場合、それぞれの軸の方向をX方向、Y方向、及びZ方向とし、回転軸心11Aの方向をZ方向とする。Z方向は、典型的には、上下方向(垂直方向)である。X軸及びY軸を有するXY平面(第1平面)は、Z方向に効果する面であり、典型的には、水平面である。第1回転翼11は、水平面において回転する水平回転翼であり得る。
【0026】
第1回転翼11は、発生させた揚力によって、飛行体1に対してZ方向の推進力Lを与える。第1回転翼11は、飛行体1に対して、Z方向を垂直とし、風入側の面を上向き、風出側の面を下向きとして設けられている。すなわち、第1回転翼11は、風出方向W1が下向きとなるように飛行体1に対して設けられている。そのため、飛行体1に与えられる推進力Lは上向きの力である。飛行体1は、推進力Lによって上昇する。また、第1回転翼11の回転数を下げる又は第1回転翼11を停止させることで、重力によって、飛行体1を下降させることができる。また、複数の第1回転翼11のいずれかの回転数を下げると、飛行体1は、XY平面において、回転数を下げた第1回転翼11の方向へ進行することができる。つまり、飛行体は、第1回転翼11によって、上昇及び下降することができるとともに、上下方向に交差する方向(水平面の方向)に移動することができる。
【0027】
飛行体1は、飛行体本体10を備える。以下では、飛行体本体10を、単に、本体という。第1回転翼11は、本体10に設けられている。本体10は、支持部13を有している。支持部13は、本体10の重心C1から離れる方向(径外方向)に延び、その先端に第1回転翼11を支持している。本体10の重心C1は、飛行体1の重心と一致している。つまり、飛行体1の重心C1と言える。
【0028】
本体10は、複数の支持部13を有し、各支持部13が、第1回転翼11を支持している。つまり、複数の第1回転翼11が支持部13により支持され、支持部13を介して本体10に設けられている。複数の第1回転翼11は、すべて、風出方向W1が下向きとなるように本体10に設けられている。
【0029】
好ましくは、本体10には、3つ以上の第1回転翼11が設けられている。一例として、本体10には、6つの第1回転翼11が設けられている。好ましくは、6つの第1回転翼11は、本体10の重心C1を中心とする仮想的な円11Bの周上に等間隔に配置されている。つまり、各支持部13は、60°間隔で重心C1を中心に放射状に円11Bの径外方向に伸び、その先端に第1回転翼11を支持している。
【0030】
6つの第1回転翼11が重心C1を中心とした円11B上に等間隔に配置されることによって、各第1回転翼11で発生した揚力が推進力Lとして飛行体1にバランスよく与えられるとともに、推進力Lの制御が容易になる。
【0031】
飛行体1は、本体10に設けられた駆動装置2を備える。駆動装置2は、第1回転翼11とは別に設けられており、第1回転翼11による飛行体1の動きを補助したり、第1回転翼11とは独立して、飛行体1に動きを与えたりする。駆動装置2は、第1回転翼11の動作中に動作してもよいし、第1回転翼11の停止中に動作してもよい。
【0032】
駆動装置2は、第1回転翼11とともに、又は第1回転翼11とは独立して、Z方向に交差するXY平面(第1平面)における推進力(推力)を本体10に与えることができる。実施形態に係る駆動装置2は、一例として、XY平面における全方位のうちの任意の方向への推力を発生させることができる。すなわち、駆動装置2は、全方位推進ユニットであり得る。
【0033】
駆動装置2は、図3に示す駆動装置2の重心C2が本体10の重心C1と一致するように本体10に取り付けられている。すなわち、駆動装置2の重心C2もまた、飛行体1の重心C1と一致している。
【0034】
駆動装置2は、本体10に後付けされるものであってもよいし、本体10と一体的に設けられていてもよい。さらに、駆動装置2は、本体10に着脱可能であってもよい。
【0035】
図2を参照して、駆動装置2は、本体10への装着部16を備える。本体10への装着部16の取り付け方法は特定の方法に限定されない。例えば、装着部16の上面と本体10の下面とが接着剤で接着されてもよいし、ボルトで接続されてもよい。
【0036】
飛行体1は、後述のハンドルなどの被操作体Hを回転操作する際に、被操作体を保持するための操作部19を備える。操作部19は、一例として、装着部16から下方に延びる複数の当接体によって、被操作体Hを径方向外側から挟み込むよう構成されている。操作部19によって被操作体Hを保持した状態で、飛行体1が旋回(回転)すると、被操作体Hを回転させることができる。操作部19は、飛行体1の着地用の脚部としても機能し得る。
【0037】
駆動装置2は、第1回転翼11とは異なる複数の第2回転翼12を有する。第2回転翼12それぞれは、回転軸心12A回りに回転することによって、飛行体1を動作させる力を発生させる。
【0038】
第2回転翼12それぞれは、回転軸心12Aの向きを変更可能である。複数の第2回転翼12それぞれは、独立して、回転軸心12Aの向きを変更可能であるのが好ましいが、複数の第2回転翼12が同期して、回転軸心12Aの向きを変更可能であってもよい。ここで、「同期して向きを変更」とは、複数の第2回転翼12が、同時に同じ角度ほど向きが変更されることを言う。回転軸心12Aの向きの変更は、例えば、2次元平面内において行われてもよいし、3次元的に行われてもよい。2次元平面内での回転軸心12Aの向きの変更は、例えば、図1及び図2のXY平面(水平面)での回転軸心12Aの向きの変更である。XY平面での回転軸心12Aの向きの変更は、例えば、図1及び図2に示すZ方向の回動軸心R1回りに、第2回転翼12を回動させることによって実現される。回動軸心R1は、XY平面(第1平面)に交差する。回動軸心R1は、例えば、XY平面(第1平面)に直交する。
【0039】
2次元平面での回転軸心12Aの向きの変更は、垂直面内での向きの変更であってもよい。垂直面は、XY平面に直交する任意の面であり、例えば、XZ平面又はYZ平面である。3次元的な回転軸心12Aの向きの変更及び垂直面での回転軸心12Aの向きの変更については、後述の変形例において説明される。
【0040】
回転軸心12Aの向きは、少なくとも90度又はそれより大きい角度の範囲で変更可能であるのが好ましく、180度又はそれより大きい角度の範囲で変更可能であってもよく、360度の角度の範囲で変更可能であってもよい。変更可能な角度の範囲は、2次元平面内における角度範囲であってもよいし、3次元空間における角度範囲であってもよい。
【0041】
図1図3は、第2回転翼12の回転軸心12Aが、初期向き(第1向き)に向いている状態を示す。ここでの初期向きは、一例として、3つの第2回転翼12それぞれが、回転軸心12A回りに回転することによって、重心C1に向かう推進力F1,F2,F3(推力F1,F2,F3)を生じさせる向きである。推力F1,F2,F3は、XY平面(第1平面における力である。すなわち、初期向きは、XY平面に平行な向きであって、回転軸心12Aが、重心C2に向く向きである。初期向きにおいて、回転軸心12Aの方向は、Z方向に直交する方向である。Z方向が垂直であるため、回転軸心12Aの方向は水平方向である。その場合、第2回転翼12は、垂直回転翼である。垂直回転翼は、垂直面において回転する回転翼である。
【0042】
実施形態において、複数の第2回転翼12それぞれは、初期向き(第1向き)と、初期向きとは異なる第2向きとの間で、回転軸心12Aの向きを変更可能に設けられている。回転軸心12Aの向きの変更の例については後述される。
【0043】
第2回転翼12は、例えば、ダクテッドファンである。図2の第2回転翼12の拡大図を参照して、ダクテッドファンである第2回転翼12は、円筒形のダクト121と、その中に配置されている回転体122と、を有する。回転体122は、例えば、プロペラである。回転体122は、駆動部18に接続されている。駆動部18はモータ123を含む。回転体122は、モータ123の回転に従って回転軸心12A回りに回転する。
【0044】
第2回転翼12は、回転体122がダクト121に覆われているために衝撃に強い。そのため、後述するように、第2回転翼12を第1回転翼11よりも飛行体1の重心から遠い位置に配置しても、他の物体との接触による衝撃に強くなる。また、ダクテッドファンは比較的出力が強いため、第2回転翼12を小型化できる。その結果、飛行体1全体の小型化が図られる。
【0045】
駆動装置2が備える複数の第2回転翼12は、初期向きにおいて、それぞれ、異なる方向への推進力を発生させるよう配置されている。各第2回転翼12は、支持部14により支持されている。図3に示すように、各支持部14は、装着部16から、放射状に延びて設けられている。支持部14は、基端14Aが装着部16に接合され、他端14Bが第2回転翼12を支持している。なお、図3は、各第2回転翼12が、初期向きにある状態を示しており、各第2回転翼12から発生した推力F1,F2,F3は重心C2を向いている。
【0046】
駆動装置2は、好ましくは、3つ以上の第2回転翼12を備え得る。3つ以上の第2回転翼12は、一例として、3つの第2回転翼12である。図3に示すように、3つの第2回転翼12は、装着部16の重心C2を中心とした、仮想的な円12Bの周上に等間隔に配置されている。つまり、各支持部14は、120°間隔で重心C2を中心に、放射状に装着部16から円12Bの径外方向に伸び、その先端に第2回転翼12を支持している。
【0047】
第2回転翼12は、初期向きにおいて、風出する空気流が、第1回転翼11、又は、第1回転翼11が風出する空気流に重ならない位置に設置されている。第2回転翼12の風出する空気流が、第1回転翼11、又は、第1回転翼11が風出する空気流に重ならないことは、第2回転翼12の風出方向W2の先に、第1回転翼11も、第1回転翼11が風出する空気流も位置しないことを指す。これにより、第2回転翼12から風出された空気流が、第1回転翼11にも、第1回転翼11が風出する空気流にも接触しない。そのため、第1回転翼11が発生させる揚力への影響を抑えることができる。
【0048】
第2回転翼12は、一例として、第1回転翼11よりも、飛行体1の重心C1から遠い位置にあり、初期向きにおいて、風出方向W2の向きが飛行体1の重心C1へ向かう向きと逆向きになる。第2回転翼12が第1回転翼11よりも飛行体1の重心C1から遠い位置に配置されることは、第2回転翼12の配置される円12Bの半径が、第1回転翼11の配置された円11Bの半径より大きいことを指す。図1に示すように、円11Bの半径は、第1回転翼11と飛行体1の重心C1との長さL1に等しい。また、図3に示すように、円12Bの半径は、第2回転翼12と飛行体1の重心C1との長さL2に等しい。
【0049】
好ましくは、第2回転翼12は、6つの第1回転翼11の回転時にそれぞれの第1回転翼11の先端111が描く6つの円11Dの外接円11Cの外側に配置されている。これにより、第2回転翼12から風出された空気流が、第1回転翼11にも、第1回転翼11が風出する空気流にも接触しない。そのため、第1回転翼11が発生させる揚力への影響を抑えることができる。また、第1回転翼11から風出された空気流が、第2回転翼12にも、第2回転翼12が風出する空気流にも接触しない。そのため、第2回転翼12が発生させる推力への影響を抑えることができる。
【0050】
好ましくは、第2回転翼12は、初期向きにおいて、第2回転翼12から風出される空気流が第1回転翼11から遠ざかる向きに流れるよう設けられている。一例として、初期向きは、複数の第2回転翼12それぞれの回転軸心12Aが、飛行体1の重心C1に向く向きである。これにより、第2回転翼12の風出方向W2が飛行体1の重心C1へ向かう向きと逆向きになる。これにより、第2回転翼12から風出された空気流が、第1回転翼11にも、第1回転翼11が風出する空気流にも接触しない。そのため、第1回転翼11が発生させる揚力への影響を抑えることができる。
【0051】
なお、第2回転翼12それぞれは、回転軸心方向を同一とする複数の回転体を備えていてもよい。
【0052】
第2回転翼12の向きを変更可能にするため、図2に示すように、第2回転翼12は、Z方向の回動軸心R1回りに回動自在に支持部14に支持されている。回動軸心R1は、第2回転翼12の回転軸心12Aに交わる位置に設定される。第2回転翼12は、回動軸心R1方向の両側(上下方向両側)において回動自在に支持されている。回動自在な第2回転翼12は、モータ等の回動駆動部143によって回動され、回転軸心12Aの向きが変更される。第2回転翼12は、回動軸心R1回りに360度回動自在に支持され得るが、90度だけ回動自在であってもよく、180度回動だけ自在であってもよい。
【0053】
回動駆動部143は、一例として、支持部14の先端14Bに取り付けられ、第2回転翼12を下方から回動自在に支持する。第2回転翼12の上部は、上部支持体142に対して回動自在に取り付けられている。上部支持体142は、第2回転翼12を上方から回動自在に支持する。上部支持体142は、連結部141を介して、支持部14に接続されている。
【0054】
飛行体1は、初期向きにおいて、3つの第2回転翼12それぞれから与えられる推進力F1,F2,F3の合力を用いて、XY平面(第1平面内)内での全方位のうちの任意の方向の移動、すなわち水平方向の移動、を実現し得る。飛行体1は、駆動装置2を制御するコントローラ30を有する。コントローラ30による駆動装置2の制御は、駆動装置2による推進力の方向を指定された方向とする方向制御を含む。また、コントローラ30による制御は、複数の第2回転翼12の回転軸心12Aの向きを変更するため回動駆動部143を制御することを含む。
【0055】
初期向きにおいて、複数の第2回転翼12それぞれの回転軸心12Aが、飛行体1の重心C1を向いている。したがって、複数の第2回転翼12それぞれは、飛行体1の重心C1に向かう力F1,F2,F3を発生させることができる。駆動装置2の制御は、第2回転翼12が初期向きにあるときに、力F1,F2,F3の合力である推進力の方向を指定された方向とするために必要な推進力F1,F2,F3を計算し、推進力F1,F2,F3を調整することを含む。推進力F1,F2,F3を調整することは、複数の第2回転翼12それぞれの出力を調整することを含む。推進力F1,F2,F3の大きさのバランスを調整することで、水平面全方位のうちの任意の方向への推進力が、推進力F1,F2,F3の合力として得られる。なお、推進力F1,F2,F3のいずれかはゼロでもよい。
【0056】
コントローラ30は、フライトコントローラとも呼ばれる、CPU(Central Processing Unit)やメモリなどからなる制御装置である。本体10に駆動装置2が装着されることで、本体10に含まれるCPUに駆動装置2に含まれるCPUが接続されてコントローラ30を形成してもよい。すなわち、コントローラ30による制御は、第1回転翼11の回転制御を含んでもよい。
【0057】
コントローラ30は、回動駆動部143を制御して、第2回転翼12を、図1図3に示す初期向き(第1向き)の状態から、図4に示す第2向きの状態に変更させることができる。図4に示す状態は、飛行体1を上方からみて、第2回転翼12を、初期向きから、反時計回りに90度回動させた状態である。図4に示す状態において、複数の第2回転翼12それぞれは、図5に示す状態S1のように、力F1A,F2A,F3Aを発生させる。力F1A,F2A,F3Aの方向は、力F1,F2,F3の方向から反時計回りに90度回転した方向である。また、力F1A,F2A,F3Aの方向は、前述の仮想的な円12Bの接線方向でもある。すなわち、力F1A,F2A,F3Aの方向は、飛行体1のヨー方向である。なお、ここでは、一例として、力F1A,F2A,F3Aの大きさは、全て同じとする。
【0058】
第2回転翼12によって発生した力F1A,F2A,F3Aは、ヨー方向の力であるため、全体として、飛行体1を、その重心C2(重心C1)回りに旋回させる力になる。図5の状態S1においては、力F1A,F2A,F3Aは、飛行体1を時計回りCWに旋回させる。
【0059】
また、第2向きは、図5に示す状態S2における、第2回転翼12の向きであってもよい。コントローラ30は、回動駆動部143を制御して、第2回転翼12を、図1図3に示す初期向き(第1向き)の状態から、時計回りに90度回動させて、図5の状態S2のように、力F1B,F2B,F3Bを発生させることもできる。状態S2は、状態S1から、第2回転翼12を180度回動させた状態でもある。力F1B,F2B,F3Bは、力F1A,F2A,F3Aとは逆方向のヨーイングの力であるため、全体として、飛行体1を、その旋回中心(重心C1,C2)回りに反時計回りCCWに旋回させる力になる。
【0060】
飛行体1が旋回動作(回動動作)可能であることで、飛行体1によって、回動操作が必要な作業を実施させることができる。回動操作が必要な操作は、例えば、バルブの開閉ハンドルの開閉操作である。実施形態に係る飛行体1は、一例として、開閉ハンドルの手動回動操作で開閉されるバルブを、開閉操作することができる。例えば、飛行体1は、第1回転翼11(及び必要であれば第2回転翼12)による推進力によって、図2に示すハンドルHの位置へ飛行し、飛行体1が備える操作部19によって、ハンドルHを保持させる。飛行体1がハンドルHを保持した状態で、第2回転翼12によって飛行体1を回動させると、ハンドルHを回動させて、バルブを開操作又は閉じ操作を行うことができる。なお、第2回転翼12による飛行体1の回動中においては、第1回転翼11は回転停止していてもよい。飛行体1がハンドルHを安定的に保持している場合、第1回転翼11による揚力がなくても、飛行体1はハンドルHを保持した状態を維持できる。
【0061】
なお、飛行体1の旋回(回動)は、第1回転翼11それぞれの回転数を制御することによっても実現可能ではあるが、実施形態に係る駆動装置2が備える第2回転翼12によって実現する方が、大きなトルクを得ることができ、開閉ハンドル操作などの大きなトルクを必要とする回動操作に好適である。すなわち、第2回転翼12は、第1回転翼11よりも、旋回中心(重心C1,C2)から離れた位置にあるため、大きなトルクを容易に得ることができる。例えば、第2回転翼12による旋回の場合、第1回転翼11による旋回に比べて10倍程度のトルクを得ることができる。また、第2回転翼12を構成するダクテッドファンは、小型でありつつも高出力であるため、かかる観点からも大きなトルクを得ることができる。
【0062】
第2回転翼12の回動軸心R1回りの回動は、飛行体1を旋回させるように第2回転翼12の向きを変更することを目的とするものに限られない。例えば、図6に示すように、第2回転翼12を回動軸心R1回りに回動させて、複数の第2回転翼12全てを、XY平面における特定の方向に向けてもよい。すなわち、図6における第2回転翼12の向きが第2向きであってもよい。図6において、複数の第2回転翼12それぞれは、同じ方向に力F1C,F2C,F3Cを発生させる。力F1C,F2C,F3Cの方向は、XY平面における方向である。したがって、飛行体1には、力F1C,F2C,F3Cの合力である推力FCがXY平面の方向に発生する。第2回転翼12による推力FCの方向を、第1回転翼11による推力の方向と一致させることで、当該方向の飛行を第2回転翼12によって補助することができる。これにより、飛行体1は、より高速に飛行することができる。力F1C,F2C,F3Cは、XY平面又はXYZ3次元空間の全方位(又はその一部の方位)における任意の方向に発生させ得る。この場合、駆動装置2は、2次元平面又は3次元空間の全方位(又はその一部の方位)における推力を発生可能な全方位(又はその一部の方位)推進ユニットを構成し得る。駆動装置2は、推力ベクタリングシステムと呼ばれてもよい。
【0063】
また、第1回転翼11は、飛行体1の姿勢を安定させるために用いられ、第2回転翼12によって、XY平面の方向への推進力を得てもよい。第1回転翼11によってXY面方向の推進力を得る場合、複数の第1回転翼11のいずれかの回転数を低下させることになるため、推進方向側が下がるように、飛行体1の姿勢が傾く。このため、第1回転翼11によってXY面方向の推進力を得る場合、飛行体1の姿勢が制約され、飛行体1の姿勢を、例えば水平に維持したまま、XY面方向に飛行することができない。これに対して、本実施形態では、第1回転翼11は、飛行体1の姿勢を水平に維持するように揚力を発生させておき、第2回転翼12によって、XY面の所望の方向への推力を発生させることができる。
【0064】
また、複数の第1回転翼11それぞれの回転数制御によって、飛行体1を所望の方向に傾けておいた上で、その方向とは別の方向のより大きな推力を第2回転翼12によって発生させて、当該別の方向に飛行体1を飛行させることができる。この場合、第2回転翼12が発生する推力が、第1回転翼11が発生する推力よりも大きければよい。これにより、飛行体1が傾いた方向とは別の方向に飛行体1を飛行させることができ、飛行中における飛行体1の姿勢の自由度が高まる。
【0065】
図7図9は、飛行体1の変形例を示している。変形例に係る飛行体1も、向きを変更可能な第2回転翼12を備える。変形例においては、第2回転翼12の向きは、3次元的に変更可能である。換言すると、第2回転翼12の向きは、水平面及び垂直面において変更可能である。なお、第2回転翼12の向きは、水平面においては変更できないが、垂直面においてだけ変更可能であってもよい。なお、変形例において特に説明しない点については、図1図8についての説明が援用される。なお、図7及び図8において、第2回転翼12の回転軸心12Aは、初期向き(第1向き)を向いている。
【0066】
第2回転翼12の回転軸心12Aの向きを3次元的に変更可能にするため、図7及び図8に示すように、複数の第2回転翼12それぞれは、Z方向の第1回動軸心R1回りに回動自在であるだけでなく、XY平面の面内方向の第2回動軸心R2回りに回動自在に支持部14に支持されている。第2回動軸心R2は、XY平面(第1平面)平行である。図7及び図8において、第2回動軸心R2は、第1回動軸心R1に直交する方向に設定されている。また、第2回動軸心R2は、第2回転翼12を支持する支持部14の延設方向(重心C1,C2を中心とする円の径方向)に直交するように設定されている。
【0067】
第2回転翼12を第2回動軸心R2回りに回動させるため、支持部14は、装着部16側の第1部材14Dと、第1部材14Dの先端に設けられた関節部146を介して第1部材14Dに取り付けられた第2部材14Eと、を備える。関節部146は、第2部材14Eを、第1部材14Dに対して、第2回動軸心R2回りに回動自在にする。
【0068】
第1部材14Dは、装着部16から径外方向に放射状に延設されている。図7及び図8において、第2部材14Eは、第2回動軸心R2が設けられた第1部材14Dの先端からさらに径外方向に延設されている。第2部材14Eの先端には、第2回転翼12が支持されている。第2回転翼12は、第2部材14Eに対して、第1回動軸心R1回りに回動自在に支持されている。第2回転翼12は、Z方向の両側(上下方向両側)において回動自在に支持されている。第2回転翼12は、モータ等の回動駆動部143によって第1回動軸心R1回りに回動される。また、第2回転翼12は、モータ等の回動駆動部147によって、第2回動軸心R2回りに回動される。第2回転翼12を両回動軸心R1,R2回りに回動させることで、第2回転翼12の回転軸心12Aの向きを3次元的に変更することができる。また、第2回転翼12を第2回動軸心R2回りに回動させることで、第2回転翼12の回転軸心12Aの向きを垂直面において変更することができる。なお、第2回転翼12は、第2回動軸心R2回りに180度回動自在に支持され得るが、90度だけ回動自在であってもよく、360度回動自在であってもよい。回動駆動部143,147は、コントローラ30によって制御される。
【0069】
コントローラ30は、例えば、第2回動駆動部147を制御して、第2回転翼12を、図7及び図8に示す初期向き(第1向き)の状態から、図9に示す第2向きの状態に変更させることができる。
【0070】
図9は、第2回転翼12を第2回動軸心R2回りに回動させた2つの状態S3,S4を示している。図9の状態S3は、第2部材14Eが起立するように、第2部材14Eを第2回動軸心R2回りに90度回動させた状態である。また、図9の状態S4は、第2部材14Eが垂下するように、第2部材14Eを第2回動軸心R2回りに90度回動させた状態である。
【0071】
図9に示す状態S3では、複数の第2回転翼12の回転軸心12Aは、第2向きであるZ方向を向いており、下向きの力FDを発生させる。また、図9に示す状態S4では、複数の第2回転翼12の回転軸心12Aは、第2向きであるZ方向(状態S3とは逆向き)を向いており、上向きの力FEを発生させる。
【0072】
状態S3は、飛行体1の下降速度を大きくするため、又は飛行体1の姿勢を安定させながら下降するために有利である。例えば、第1回転翼11だけを備える飛行体の場合、下降のための推進力を発生できないため、下降の最大速度は、重力による自由落下によって生じる速度である。ただし、飛行体の姿勢を安定させつつ下降するには、第1回転翼11を回転させて、姿勢を安定させるための揚力Lを得る必要がある。この揚力Lのため、下降の速度は、自由落下による速度よりも小さくなる。したがって、第1回転翼11だけを備える飛行体の下降は、緩やかであり、急速な下降が困難である。これに対して、本実施形態の飛行体1の場合、状態S3になった第2回転翼12によって、下降のための推力を発生させることができるため、下降速度を大きくできる。しかも、第1回転翼11による揚力Lを発生させて飛行体1の姿勢を安定させながら、その揚力Lを打ち消す大きな下方推力FDを第2回転翼12によって発生させることで、安定的に飛行体1を下降させることができる。
【0073】
状態S4は、飛行体1の上昇速度を大きくするために有利である。第1回転翼11による揚力Lとともに、第2回転翼12による揚力FEを発生させることで、第1回転翼11だけで上昇するよりも高速に上昇することができる。
【0074】
第2回転翼12を第2回動軸心R2回りに回動させた状態は、初期向きから90度回動させた状態S3,S4に限られず、第2回転翼12を第2回動軸心R2回りに任意の角度で回動させた状態であってもよい。例えば、状態S3において発生する力FDの方向が斜め下方を向くように複数の第2回転翼12の向きを変更すると、飛行体1の姿勢を安定させつつ、飛行体1を斜め下方に高速に移動させることができる。同様に、状態S4において発生する力FEの方向が斜め上方を向くように複数の第2回転翼12の向きを変更すると、飛行体1の姿勢を安定させつつ、飛行体1を斜め上方に高速に移動させることができる。
【0075】
さらに、第2回転翼12を、第1回動軸心R1及び第2回動軸心R2回りに所望の角度ほど回動させることで、複数の第2回転翼12によって発生する推進力を、XYZ3次元空間における所望の方向に向けることができる。なお、第2回転翼12の回転軸心12Aは、3次元空間の全方位における任意の方向に向くことができるのが好ましいが、3次元空間の全方位における一部の方位における任意の方向に向くことができるものであってもよい。
【0076】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 :飛行体
2 :駆動装置
10 :飛行体本体
11 :第1回転翼
11A :回転軸心
11B :円
11C :外接円
11D :円
12 :第2回転翼
12A :回転軸心
12B :円
13 :支持部
14 :支持部
14A :基端
14B :他端
14D :第1部材
14E :第2部材
16 :装着部
18 :駆動部
19 :操作部
30 :コントローラ
111 :先端
121 :ダクト
122 :回転体
123 :モータ
141 :連結部
142 :上部支持体
143 :回動駆動部
146 :関節部
147 :第2回動駆動部
C1 :重心
C2 :重心
CCW :反時計回り
CW :時計回り
H :被操作体(ハンドル)
R1 :第1回動軸心
R2 :第2回動軸心
S1 :状態
S2 :状態
S3 :状態
S4 :状態
W1 :風出方向
W2 :風出方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9