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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005881
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】容器の封緘方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 51/16 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B65B51/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106309
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】592256140
【氏名又は名称】兼子電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】兼子 敏
【テーマコード(参考)】
3E094
【Fターム(参考)】
3E094AA01
3E094BA11
3E094BA12
3E094BA20
3E094CA40
3E094DA10
3E094FA12
3E094HA02
3E094HA08
3E094HA13
(57)【要約】
【課題】封緘部分が剥がれたり破断したりし難い容器の封緘方法、封緘速度が速く装置のコストを低減することができる容器の封緘方法およびステープラや封緘テープを用いない容器の封緘方法を提供する。
【解決手段】第1容器部20の第1フランジ26から突出した各第1突出部27と第2容器部30の第2フランジ36から突出した各第2突出部37とを相互に嵌合する。ベルトコンベア53によって容器1を矢印F2で示す方向へ搬送し、回転する加圧ローラ51と受け部材52とによって各第1突出部27および各第2突出部37を押し潰して塑性変形させ、その塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態にする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂により成形された第1容器部と、
熱可塑性樹脂により成形された第2容器部と、
前記第1容器部の周縁から張り出した第1フランジと、
前記第2容器部の周縁から張り出した第2フランジと、
前記第1フランジから突出した中空の第1突出部と、
前記第2フランジから突出した中空の第2突出部と、を備えており、
前記第1突出部および前記第2突出部を相互に嵌合することにより、前記第1容器部および前記第2容器部を封緘する容器の封緘方法であって、
加圧ローラおよび受け部材を相対向させて配置し、
前記第1突出部および前記第1突出部を相互に嵌合する嵌合工程と、
前記嵌合工程の後に、前記第1フランジが前記加圧ローラの外周面と対向しており、前記第2フランジが前記受け部材と対向した状態にて、前記加圧ローラによって前記第1フランジを加圧しながら当該加圧ローラを当該第1フランジの長手方向に沿って相対的に転動させることにより、相互に嵌合された前記第1突出部および前記第2突出部を押し潰して塑性変形させ、その塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態にする封緘工程と、
を有することを特徴とする容器の封緘方法。
【請求項2】
前記第1突出部は、
前記第1フランジから突出した相対向する平板状の一対の第1側壁と、
前記一対の第1側壁の先端間に形成された第1天壁と、を有し、
前記第2突出部は、
前記第2フランジから突出した相対向する平板状の一対の第2側壁と、
前記一対の第2側壁の先端間に形成された第2天壁と、を有し、
前記一対の第1側壁と前記第1フランジとの各境界は、それぞれ前記第1フランジと前記第1容器部との第1境界に対して平行であり、
前記一対の第2側壁と前記第2フランジとの各境界は、それぞれ前記第2フランジと前記第2容器部との第2境界に対して平行であり、
前記塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態は、
前記一対の第1側壁および前記一対の第2側壁がそれぞれ外方に屈曲し、かつ、当該屈曲した一対の第1側壁のうち、前記第1フランジとの境界部分が屈曲した第1屈曲部が、当該屈曲した第2側壁のうち、前記第2フランジとの境界部分が屈曲した第2屈曲部に嵌合しており、
さらに、当該屈曲した一対の第2側壁のうち、前記第2天壁との境界部分が屈曲した第3屈曲部が、当該屈曲した一対の第1側壁のうち、前記第1天壁との境界部分が屈曲した第4屈曲部に嵌合している状態であることを特徴とする請求項1に記載の容器の封緘方法。
【請求項3】
前記第1フランジのうち、前記第1境界と前記第1突出部との間には、前記第1フランジを破断するための第1破断線が前記第1フランジの長手方向に沿って形成されており、
前記第2フランジのうち、前記第2境界と前記第2突出部との間には、前記第2フランジを破断するための第2破断線が前記第2フランジの長手方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項2に記載の容器の封緘方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂により成形された容器の封緘方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の容器の封緘方法として、蓋と容器本体との合わせ面を超音波溶着、ステープラなどによって接合する封緘方法が提案されている(特許文献1)。また、上記の合わせ面を封緘テープによって接合する封緘方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-37369号公報
【特許文献2】特開2021-104817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱可塑性樹脂により成形された鶏卵容器やペットボトルなどの容器は、樹脂資源(プラスチック資源)の再利用に供するため、使い終わったときに容器を潰して嵩を減らすことができるように、薄肉に成形されている。
しかし、ペットボトルの場合は、形状が円柱または四角柱であり、中身が詰まっているため、薄肉でも剛性を確保し易いが、鶏卵容器の場合は、形状が特殊であるため、剛性を確保し難い。例えば、多数個(例えば、10個)の鶏卵を収容した鶏卵容器は、かなりの重量になるため、手で掴んだ箇所の周囲に大きな応力が掛かる。これにより、鶏卵をパッケージングして販売店に運送するメーカーでは、大量の鶏卵容器をラックに段積みするために、鶏卵容器を掴んで持ち上げたときに封緘部分が剥がれるという事態が頻発している。
また、超音波溶着を使った封緘方法は、超音波溶着装置によって封緘対象部位を1つずつ溶着して行くため、封緘速度が遅いし、装置のコストが高いため、容器の製造コストが高くなるという問題がある。
また、ステープラや封緘テープを用いる封緘方法は、ステープラや封緘テープを用いる分、容器の製造コストが高くなるという問題がある。特に、鶏卵のような相対的に価格の安い商品を収容する容器では、ステープラや封緘テープの費用が鶏卵の価格に占める割合が大きくなり、鶏卵の価格上昇の大きな要因になってしまうため、極力使わないようにしたい。
しかも、容器を処分する際に、ステープラや封緘テープが残っているため、樹脂資源の再利用に供することができないので、カーボンニュートラルという国際的な取り組みにも適合しない。
なお、容器を処分するときにステープラを外す、あるいは、封緘テープが貼着された部分を切り取る方法も考えられるが、手間が掛かるため、そのような方法は普及し難い。
【0005】
そこで、本願発明は、上記の諸問題を解決するために創出されたものであって、封緘部分が剥がれ難く、かつ、封緘速度が速く、装置のコストを低減することができ、さらに、ステープラや封緘テープを用いない容器の封緘方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1発明)
上述した目的を達成するため、本願の第1発明に係る容器の封緘方法は、
熱可塑性樹脂により成形された第1容器部(20:図2)と、
熱可塑性樹脂により成形された第2容器部(30)と、
第1容器部(20)の周縁(20a)から張り出した第1フランジ(26)と、
第2容器部(30)の周縁(30a)から張り出した第2フランジ(36)と、
第1フランジ(26)から突出した中空の第1突出部(27)と、
第2フランジ(36)から突出した中空の第2突出部(37)と、を備えており、
第2突出部(37)および第2突出部(37)を相互に嵌合することにより、第1容器部(20)および第2容器部(30)を封緘する容器(1)の封緘方法であって、
加圧ローラ(51:図4))および受け部材(52)を相対向させて配置し、
第1突出部(27)および第2突出部(37)を相互に嵌合する嵌合工程と、
嵌合工程の後に、第1フランジ(26)が加圧ローラ(51)の外周面(51a:図4(B))と対向しており、第2フランジ(36)が受け部材(52)と対向した状態にて、加圧ローラ(51)によって第1フランジ(26)を加圧しながら当該加圧ローラ(51)を当該第1フランジ(26)の長手方向に沿って相対的に転動させることにより、相互に嵌合された第1突出部(27)および第2突出部(37)を押し潰して塑性変形させ、その塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態にする封緘工程と、
を有することを特徴とする。
【0007】
(第1発明の効果)
本願の第1発明によれば、封緘工程では、相互に嵌合された第1突出部および第2突出部を押し潰して塑性変形させ、その塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態にすることができるため、封緘部分が剥がれ難い容器の封緘方法を提供することができる。
しかも、本願の第1発明によれば、加圧ローラによって第1フランジを加圧しながら当該加圧ローラを当該第1フランジの長手方向に沿って相対的に転動させることにより、相互に嵌合された第1突出部および第2突出部を押し潰して塑性変形させ、その塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態にすることができるため、封緘速度が速く、装置のコストを低減することができる容器の封緘方法を提供することができる。
さらに、本願の第1発明によれば、ステープラや封緘テープを用いない容器の封緘方法を提供することができる。
【0008】
(第2発明)
本願の第1発明に係る容器の封緘方法は、前述した第1発明に係る容器の封緘方法において、
第1突出部(27)は、
第1フランジ(26)から突出した相対向する平板状の一対の第1側壁(27b,27c:図5(A)、図6(A))と、
一対の第1側壁(27b,27c)の先端間に形成された第1天壁(27f)と、を有し、
第2突出部(37)は、
第2フランジ(36)から突出した相対向する平板状の一対の第2側壁(37b,37c:図5(A)、図6(B))と、
一対の第2側壁(37b,37c)の先端間に形成された第2天壁(37f:図6(B))と、を有し、
一対の第1側壁(27b,27c)と第1フランジ(26)との各境界は、それぞれ第1フランジ(26)と第1容器部(20)との第1境界(20a:図2(A))に対して平行であり、
一対の第2側壁(37b,37c)と第2フランジ(36)との各境界は、それぞれ第2フランジ(36)と第2容器部(30)との第2境界(30a:図2(A))に対して平行であり、
塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態は、
一対の第1側壁(27b,27c)および一対の第2側壁(37b,37c)がそれぞれ外方に屈曲し、かつ、当該屈曲した一対の第1側壁(27b,27c)のうち、第1フランジ(26)との境界部分が屈曲した第1屈曲部(27g,27h:図6(D))が、当該屈曲した第2側壁(37b,37c)のうち、第2フランジ(36)との境界部分が屈曲した第2屈曲部(37g,37h:図6(D)))に嵌合しており、
さらに、当該屈曲した一対の第2側壁(37b,37c)のうち、第2天壁(37f)との境界部分が屈曲した第3屈曲部(37i,37j:図6(D))が、当該屈曲した一対の第1側壁(27b,27c)のうち、第1天壁(27f)との境界部分が屈曲した第4屈曲部(27i,27j:図6(D))に嵌合している状態であることを特徴とする。
【0009】
(第2発明の効果)
本願の第2発明によれば、塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態は、一対の第1側壁および一対の第2側壁がそれぞれ外方に屈曲し、かつ、当該屈曲した一対の第1側壁のうち、第1フランジとの境界部分が屈曲した第1屈曲部が、当該屈曲した第2側壁のうち、第2フランジとの境界部分が屈曲した第2屈曲部に嵌合しており、さらに、当該屈曲した一対の第2側壁のうち、第2天壁との境界部分が屈曲した第3屈曲部が、当該屈曲した一対の第1側壁のうち、第1天壁との境界部分が屈曲した第4屈曲部に嵌合している状態であるため、第1突出部および第2突出部の相互の嵌合力を強くすることができるので、封緘部分が、より一層剥がれ難い容器の封緘方法を提供することができる。
【0010】
(第3発明)
本願の第3発明に係る容器の封緘方法は、前述した第2発明に係る容器の封緘方法において、
第1フランジ(26)のうち、第1境界(20a:図2(A))と第1突出部(27)との間には、第1フランジ(26)を破断するための第1破断線(3:図2(A))が第1フランジ(26)の長手方向に沿って形成されており、
第2フランジ(36)のうち、第2境界(30a:図2(A))と第2突出部(37)との間には、第2フランジ(36)を破断するための第2破断線(4:図2(A))が第2フランジ(36)の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0011】
(第3発明の効果)
本願の第3発明によれば、第1フランジのうち、第1フランジと第1容器部との第1境界と第1突出部との間には、第1フランジを破断するための第1破断線が第1フランジの長手方向に沿って形成されており、第2フランジのうち、第2フランジと第2容器部との第2境界と第2突出部との間には、第2フランジを破断するための第2破断線が第2フランジの長手方向に沿って形成されているため、第1突出部および第2突出部の相互に嵌合された封緘部分を破壊しなくても、第1破断線および第2破断線に沿って第1フランジおよび第2フランジを破断すれば、容器を容易に開封することができる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、封緘部分が剥がれ難く、かつ、封緘速度が速く装置のコストを低減することができ、さらに、ステープラや封緘テープを用いない容器の封緘方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る容器の斜視図である。
図2】(A)は図1に示す容器の展開図であり、(B)は(A)を前方から見た説明図である。
図3】(A)は第1容器部を第2容器部に被せる様子を示す説明図であり、(B)は第1容器部を第2容器部に被せた状態を示す説明図である。
図4】封緘工程を示す説明図であり、(A)は加圧ローラおよび受け部材と容器の配置関係を後方から見た説明図、(B)は加圧ローラおよび受け部材と容器の配置関係を右方から見た説明図である。
図5】(A)は相互に嵌合された第1突出部および第2突出部を上方から見た拡大図であり、(B)は(A)のA-A矢視断面図である。
図6】(A)は図5(A)のB-B矢視断面図のうち、第1突出部の断面図、(B)は第2突出部の断面図、(C)は相互に嵌合された第1突出部および第2突出部の断面図、(D)は塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態を示す断面図である。
図7】(A)は実験方法を示す説明図であり、(B)は相互に嵌合された第1突出部および第2突出部の拡大平面図、(C)は(B)のC-C矢視断面の拡大図である。
図8】(A)は測定方法を示す平面図であり、(B)は測定方法を側面から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る容器の封緘方法の実施形態として、鶏卵を収容する容器の封緘方法について図を参照しつつ説明する。
[容器の構造]
図1に示すように、容器1は、第1容器部20と第2容器部30とを有する。容器1は、熱可塑性樹脂製シートを真空成形または圧空成形することにより成形されており、第1容器部20および第2容器部30は、連続成形されている。第2容器部30には、鶏卵5(図3)を収容するための収容部31が形成されている。図示の例では、第2容器部30には、2個の鶏卵を5列収容するための10個の収容部31が形成されている。第1容器部20は、上壁21と、左側壁22(図2)と、右側壁23と、後壁24と、前壁25とを有し、前後に長い箱状に形成されている。図3に示すように、第2容器部30の各収容部31に鶏卵5を収容すると、鶏卵5の上部が第2容器部30から突出するが、第1容器部20を第2容器部30に被せることにより、第2容器部30から突出した各鶏卵5が第1容器部20によって覆われ、包装された状態になる。
【0015】
図2に示すように、第1容器部20の周縁からフランジ形状の第1フランジ26が張り出しており、第2容器部30の周縁からフランジ形状の第2フランジ36が張り出している。第1フランジ26および第2フランジ36は、長手方向の左端同士が接続されており、その接続された部分が回動部2を形成している。図3に示すように、回動部2はヒンジの役割をしており、回動部2を回動中心にして第1容器部20を回動させることにより、第1容器部20を第2容器部30の上に被せることができる。このとき、第1フランジ26および第2フランジ36は相互に対向した状態になる。
【0016】
図1ないし図3に示すように、第1フランジ26の上面から中空の複数の第1突出部27が突出しており、図2および図3に示すように、第2フランジ36の上面から中空の複数の第2突出部37が突出している。各第1突出部27は、第1フランジ26と第1容器部20との境界である第1境界20aに沿って配置されており、各第2突出部37は、第2フランジ36と第2容器部30との境界である第2境界30aに沿って配置されている。図3(A)に示すように、第1容器部20を第2容器部30の上方に回動させた状態において、各第1突出部27および各第2突出部37は、相互に対向した位置に形成されている。図3(B)に示すように、各第2突出部37は、それぞれ対向する第1突出部27に挿入されることにより、各第1突出部27および各第2突出部37は相互に嵌合された状態になる。
【0017】
[第1突出部および第2突出部の構造]
次に、第1突出部27および第2突出部37の構造について図を参照しつつ説明する。
図5に示すように、第1突出部27および第2突出部37は、それぞれ水平断面形状が長孔に形成されている。図5(A)に示すように、第1突出部27は、水平断面形状が長孔の第1周壁27aを有する。第1周壁27aは、第1フランジ26に形成された長孔形状の第1孔27kの周縁から上方に立ち上がり形成されている。図5(A)および図6(A)に示すように、第1周壁27aは、左右に相対向する平板状の一対の第1長側壁27b,27cと、前後に相対向する円弧状の一対の第1短側壁27d,27e(図5(A))と、第1周壁27aの先端を塞ぐように形成された第1天壁27f(図6(A))とを有する。
【0018】
図5(A)に示すように、第2突出部37は、水平断面形状が長孔の第2周壁37aを有する。第2周壁37aは、第2フランジ36に形成された長孔形状の第2孔37kの周縁から上方に立ち上がり形成されている。図5(A)および図6(B)に示すように、第2周壁37aは、左右に相対向する平板状の一対の第2長側壁37b,37cと、前後に相対向する円弧状の一対の第2短側壁37d,37e(図5(A))と、第2周壁37aの先端を塞ぐように形成された第2天壁37f(図6(B))とを有する。第1周壁27aおよび第2周壁37aは、それぞれ第1フランジ26および第2フランジ36に対してθ度内側に傾斜している。このように、第1周壁27aおよび第2周壁37aがそれぞれ内側に傾斜しているため、第2突出部37を上端から第1突出部27の第1孔27kに容易に挿入することができるので、第1突出部27および第2突出部37を相互に容易に嵌合することができる。
また、第1突出部27を形成している一対の第1長側壁27b,27cと第1フランジ26との各境界は、それぞれ第1フランジ26と第1容器部20との第1境界20a(図2(A)、図5(A))に対して平行である。また、第2突出部37を形成している一対の第2長側壁37b,37cと第2フランジ36との各境界は、それぞれ第2フランジ36と第2容器部30との第2境界30a(図2(A))に対して平行である。
【0019】
図2に示すように、第1フランジ26のうち、第1境界20aと各第1突出部27との間には、封緘された容器1を開封する際に第1フランジ26を破断するための第1破断線3が第1フランジ26の長手方向に沿って形成されている。また、第2フランジ36のうち、第2境界30aと各第2突出部37との間には、封緘された容器1を開封する際に第2フランジ36を破断するための第2破断線4が第2フランジ36の長手方向に沿って形成されている。第1破断線3および第2破断線4は、容器1を封緘した際に相対向する位置に形成されている。封緘された容器1を開封するときは、相互に重なった第1フランジ26および第2フランジ36の長手方向の一端を摘まみ、その摘まんだ部分を他端へ引くようにすると、第1フランジ26および第2フランジ36が、第1破断線3および第2破断線4に沿って破断され、容器1が開封される。第1長側壁27b,27cは、本発明の第1側壁の一例であり、第2長側壁37b,37cは、本発明の第2側壁の一例である。
【0020】
[容器の封緘方法]
次に、容器1の封緘方法について図を参照しつつ説明する。
図4に示すように、本実施形態の封緘方法は、加圧ローラ51、受け部材52およびベルトコンベア53を備えた封緘装置50を用いて容器1を封緘する。加圧ローラ51の外周面51aは、平坦に形成されており、第1フランジ26の短手方向の幅D(図6(A))相当の幅、あるいは、その幅Dよりも充分に広い幅を有する。受け部材52の上面52aは、平坦に形成されており、少なくとも、加圧ローラ51の外周面51aの幅を有し、その全長は、第1フランジ26の長手方向の幅W(図4(B))よりも充分に長い。加圧ローラ51の外周面51aおよび受け部材52の上面52aは相対向しており、加圧ローラ51の外周面51aと受け部材52の上面52aとの間には、相互に重なった第1フランジ26および第2フランジ36の厚さ程度の隙間が形成されている。
加圧ローラ51からの圧力を受ける受け部材52は固定されており、加圧ローラ51は、モータ(図示せず)によって図4(B)において矢印F1にて示す方向に回転する。ベルトコンベア53は、受け部材52の長手方向に沿って設けられており、容器1を矢印F2で示す方向、つまり、加圧ローラ51による加圧位置へ搬送する。
【0021】
(収容工程)
図3(A)に示すように、第2容器部30の各収容部31に鶏卵5を収容する。鶏卵5の収容は、機械によって自動的に行っても良いし、人が手作業で行っても良い。
(嵌合工程)
図3に示すように、回動部2を回動中心にして第1容器部20を回動させ、相対向する各第1突出部27および各第2突出部37を相互に嵌合させる(図6(C))。これにより、各鶏卵5が容器1に包装(パッケージング)された状態になる。
【0022】
(封緘工程)
図4(B)に示すように、嵌合工程の後に、容器1は、ベルトコンベア53により、第2フランジ36の下面を受け部材52の上面52aと対向させた状態で、矢印F2で示す方向に搬送される。そして、相互に重なった第1フランジ26および第2フランジ36は、加圧ローラ51の外周面51aおよび受け部材52の上面52aによって挾持されながら矢印F2にて示す方向へ搬送され、相互に嵌合された各第1突出部27および各第2突出部37は、前方に配置されているものから順番に、加圧ローラ51の外周面51aから受ける圧力によって押し潰されて塑性変形し、図6(D)に示すように、塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態になる。
【0023】
塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態とは、図6(D)に示すように、第1突出部27の一対の第1長側壁27b,27cおよび第2突出部37の一対の第2長側壁37b,37cがそれぞれ外方に屈曲し、かつ、当該屈曲した一対の第1長側壁27b,27cのうち、第1フランジ26との境界部分が屈曲して形成された第1屈曲部27g,27hが、当該屈曲した第2長側壁37b,37cのうち、第2フランジ36との境界部分が屈曲して形成された第2屈曲部37g,37hに嵌合している(食い込んでいる)状態である。さらに、当該屈曲した一対の第2長側壁37b,37cのうち、第2天壁37fとの境界部分が屈曲して形成された第3屈曲部37i,37jが、当該屈曲した一対の第1長側壁27b,27cのうち、第1天壁27fとの境界部分が屈曲して形成された第4屈曲部27i,27jに嵌合している(食い込んでいる)状態である。換言すると、加圧によって塑性変形した第1突出部27および第2突出部37は、塑性変形した部分が外方に広がった形状、いわゆる茸形状を呈しており、屈曲した部分同士が相互に強力に食い込んだ状態である。
このように、相互に嵌合された第1突出部27および第2突出部37を加圧ローラ51によって押し潰して塑性変形させることにより、第1突出部27および第2突出部37の嵌合状態を解除し難くなり、容器1の封緘が完了する。なお、加圧ローラ51の回転速度を調節することにより、封緘速度を調節することができる。また、加圧ローラ51の外周面51aと受け部材52の上面52aとの間に形成された隙間の大きさを調節することにより、加圧ローラ51による加圧力を調節することができる。
【0024】
[実験]
次に、本願発明者が行った容器の封緘に関する実験について図7および図8を参照しつつ説明する。以下、相互に嵌合された第1突出部27および第2突出部37を押し潰して塑性変形させる部位を封緘部位という。
最初に、本願発明者は、第1突出部27および第2突出部37の形状の違いが、第1突出部27および第2突出部37の嵌合状態、つまり、封緘状態に与える影響について実験した。先ず、図7に示すように、第1突出部27および第2突出部37の水平断面形状がそれぞれ円形である場合の実験を行った。第1フランジ26および第2フランジ36の板厚は、0.14mmであり、第1突出部27および第2突出部37の肉厚も0.14mmである。また、図7(C)に示す第1突出部27の内壁の高さHは3.0mmであり、内壁下端の直径φ1は3.0mmである。第2突出部の内壁の高さは3.0mmであり、内壁下端の直径は2.72mm(=3.0mm-0.14mm×2)である。また、第1突出部27および第2突出部37の第1フランジ26および第2フランジ36に対する傾き角θは、それぞれ3度である。
【0025】
7(A)に示すように、第1突出部27および第2突出部37を相互に嵌合し、相互に重なった第1フランジ26および第2フランジ36を受け部材52の上面52aに乗せ、平坦な加圧面60aを有する平板60を受け部材52に向けて下降させ、相互に嵌合された第1突出部27および第2突出部37を加圧して塑性変形させた。その結果、第1突出部27および第2突出部37は、上下方向の2箇所で屈曲(二段折れ)し、かつ、相互に嵌合された位置が一定しなかった。さらに、1つの屈曲が小さいため、相互に嵌合された部分の径方向の長さが短くなり、第1フランジ26を第2フランジ36から剥離すると、比較的容易に第1突出部27および第2突出部37の嵌合状態が解除された。つまり、封緘の効果が小さかった。
【0026】
次に、本願発明者は、図5に示したように、第1突出部27および第2突出部37の水平断面形状をそれぞれ長孔に成形して上記の実験を行った結果、第1突出部27および第2突出部37が上下方向の2箇所で屈曲(二段折れ)することなく、かつ、相互に嵌合された部分が一定した。しかも、1つの屈曲が大きいため、相互に嵌合された部分の径方向の長さが長くなり、第1フランジ26を第2フランジ36から剥離しても、容易に第1突出部27および第2突出部37の嵌合状態が解除されなかった。つまり、封緘の効果が大きかった。この結果から、本願発明者は、第1突出部27および第2突出部37の水平断面形状が円形よりも長孔の方が封緘に適していることが分かった。また、第1突出部27および第2突出部37が、それぞれ相対向する一対の平板形状の側壁を有することが、封緘の効果を高めていると推測した。
しかし、第1フランジ26および第2フランジ36の長手方向に沿って配置された複数の封緘部位のうち、長手方向の中央付近において嵌合力が不足する封緘部位が発生した。これは、平板60を下降させる際に平板60の前後を押圧したために、平板60が下死点近くで僅かに上方に撓み、各第1突出部27および第2突出部37を均一に加圧できなかったことが原因であると推測した。
【0027】
そこで、本願発明者は、前述したように、加圧ローラ51およぶ受け部材52を用いて、相互に嵌合された第1突出部27および第2突出部37を加圧すると、各封緘部位において各第1突出部27および第2突出部37を均一に加圧することができるため、嵌合力が不足する封緘部位が発生することはなかった。
【0028】
本願発明者は、封緘の効果を数値化するための測定を行った。以下の説明では、相互に嵌合された第1突出部27および第2突出部37の嵌合状態を解除するために必要な力を封緘力と称する。
この測定では、測定装置として図8に示す係止部材70および手動バネ秤80を用いた。係止部材70は、剛性の高い板状に形成されており、凹形状の係止部71と、係止孔73とを有する。この実験では、係止部材70は、バネ用ステンレス鋼の一種であるSUS301製で厚さ0.25mmである。
図8(B)に示すように、加圧によって塑性変形した第1突出部27と第2突出部37の周縁における第1フランジ26と第2フランジ36との間に係止部材70の係止部71を挿入した。そして、係止部材70の係止孔73に手動バネ秤80のフック81を挿通し、そのフック81の先端を係止部材70の下面74に係止した。続いて、手動バネ秤80を上方に引っ張り、第1フランジ26が第2フランジ36から剥離され、第1突出部27および第2突出部37の嵌合状態が解除された、つまり、封緘が解かれた瞬間に手動バネ秤80が示した重さを封緘力として記録した。
【0029】
この測定で用いた試験片は、容器1と同じ材質であり、板厚は0.14mmであり、第1突出部27および第2突出部37の肉厚も0.14mmである。また、第1突出部27および第2突出部37の第1フランジ26および第2フランジ36に対する傾き角θは、それぞれ3度である。また、第1突出部27および第2突出部37の水平断面形状がそれぞれ円形の場合の第1突出部27の内壁の高さH(図7(C))は3.0mmであり、内壁下端の直径φ1は3.0mmである。第2突出部の内壁の高さは3.0mmであり、内壁下端の直径は2.72mm(=3.0mm-0.14mm×2)である。
また、図5(A)に示すように、第1突出部27および第2突出部37の水平断面形状がそれぞれ長孔の場合において、第1長側壁27b,27cおよび第2長側壁37b,37cの長さ、つまり、長孔の直線部の長さをLとする。また、第1短側壁27d,27eの各径をφ2とする。
【0030】
(測定結果)
1.第1突出部27および第2突出部37の水平断面形状がそれぞれ円形の場合。
第1突出部27および第2突出部37の加圧を10回行った。その結果、前述したように、第1突出部27および第2突出部37は、上下方向の2箇所で屈曲(二段折れ)し、かつ、相互に嵌合された位置が一定しなかった。各回の測定結果は、400g~800g、平均値600gであった。
【0031】
2.第1突出部27および第2突出部37の水平断面形状がそれぞれ長孔の場合。
(1)L=2.0mm、φ2=3.0mmの場合。
第1突出部27および第2突出部37の加圧を10回行い、各回の測定結果は、600g~850g、平均値725gであった。
(3)L=4.0mm、φ2=3.0mmの場合。
第1突出部27および第2突出部37の加圧を10回行い、各回の測定結果は、500g~1.2kg、平均値850gであった。
(4)L=6.0mm、φ2=3.0mmの場合。
第1突出部27および第2突出部37の加圧を5回行い、各回の測定結果は、900g~1.2kg、平均値1.05kgであった。
(5)L=6.0mm、φ2=3.5~3.6mm(平均値3.55mm)の場合。
φ2を3.5~3.6mmの範囲で変更しながら、第1突出部27および第2突出部37の加圧を5回行い、各回の測定結果は、900g~1.0kg、平均値950gであった。
(6)L=8.0mm、φ2=3.0~3.5mm(平均値3.25mm)の場合。
φ2を3.0~3.5mmの範囲で変更しながら、第1突出部27および第2突出部37の加圧を10回行い、各回の測定結果は、900g~1.3kg、平均値1.1kgであった。
(7)L=10.0mm、φ2=3.0~3.8mmの場合。
φ2を3.0~3.8mmの範囲で変更しながら、第1突出部27および第2突出部37の加圧を10回行い、各回の測定結果は、1.0kg~1.2kg、平均値1.1kgであった。
(8)L=12.0mm、φ2=3.4~3.6mmの場合。
φ2を3.4~3.6mmの範囲で変更しながら、第1突出部27および第2突出部37の加圧を10回行い、各回の測定結果は、700g~1.2kg、平均値950ggであった。
【0032】
(結論)
上記の測定結果から、封緘力は、第1突出部27および第2突出部37の水平断面形状が長孔の方が円形よりも高いことが分かった。また、封緘力は、長孔の直線部の長さLが長い方が高いことも分かった。一方、直線部の長さLが10mmになるまでは、長さLに比例して封緘力が増加したが、長さLが12mmになったときは、10mmのときよりも封緘力がやや減少した。また、直線部の長さLが10mmの場合にφ2を3.0~3.8mmの範囲で変更した場合でも、封緘力の変化が小さかった。これらから、(L/φ2)=2.6~3.3の範囲の長孔が形成されるように第1突出部27および第2突出部37を成形することにより、高い封緘力を得ることができると結論した。
【0033】
[実施形態の効果]
(1)上述した実施形態に係る容器の封緘方法によれば、封緘工程では、相互に嵌合された第1突出部27および第2突出部37を押し潰して塑性変形させ、その塑性変形した部分同士が相互に嵌合された状態にすることができるため、封緘部分が剥がれたり破断したりし難い。
【0034】
(2)特に、相互に嵌合された第1突出部27および第2突出部37を押し潰して塑性変形させることにより、第1突出部27の一対の第1長側壁27b,27cおよび第2突出部37の一対の第2長側壁37b,37cがそれぞれ外方に屈曲し、かつ、当該屈曲した一対の第1長側壁27b,27cのうち、第1フランジ26との境界部分が屈曲した第1屈曲部27g,27hが、当該屈曲した第2長側壁37b,37cのうち、第2フランジ36との境界部分が屈曲した第2屈曲部37g,37hに嵌合しており、さらに、当該屈曲した一対の第2長側壁37b,37cのうち、第2天壁37fとの境界部分が屈曲した第3屈曲部37i,37jが、当該屈曲した一対の第1長側壁27b,27cのうち、第1天壁27fとの境界部分が屈曲した第4屈曲部27i,27jに嵌合している状態にすることができる。
従って、第1突出部27および第2突出部37の相互の嵌合力を強くすることができるので、容器1をより一層確実に封緘することができる。
【0035】
(3)しかも、前述した実施形態に係る容器の封緘方法によれば、回転する加圧ローラ51によって第1フランジ26を長手方向に沿って加圧するため、超音波溶着による封緘方法と比較して封緘速度が速く、かつ、装置のコストを低減することができる。
【0036】
(4)さらに、前述した実施形態に係る容器の封緘方法によれば、封緘のためのステープラや封緘テープが不要である。
【0037】
〈他の実施形態〉
(1)前述した実施形態では、回転する加圧ローラ51の外周面51aと、受け部材52の上面52aとの間で、第1突出部27および第2突出部37を押し潰して塑性変形させたが、第1フランジ26および第2フランジ36を受け部材52の上面52aに配置し、第1フランジ26の上を長手方向に沿って加圧ローラ51を転動させることにより、第1突出部27および第2突出部37を押し潰して塑性変形させることもできる。この方法を実施する場合は、加圧ローラ51を転動させながら移動させる装置を用いる。また、複数個の容器1を長手方向に沿って配置し、各容器1の第1フランジ26および第2フランジ36を配置することができる長さの上面52aを有する受け部材52を用意し、加圧ローラ51を各第1フランジ26の長手方向に沿って転動させることにより、1回の工程で、複数の容器1を効率良く封緘することができる。
このように、加圧ローラ51を第1フランジ26を加圧しながら当該第1フランジ26の長手方向に沿って相対的に転動させることができれば、前述した実施形態の封緘方法でも良いし、上記の封緘方法でも良い。
【0038】
(2)第1容器部20および第2容器部30の境界に形成された回動部2の長手方向に沿って破断線を形成しても良い。
(3)前述した各実施形態では、鶏卵容器を封緘する方法を説明したが、鶏卵容器以外の容器、例えば、総菜、野菜、魚介類、弁当、ピザ、菓子、文房具、日用品などを収容する容器についても、本願発明に係る容器の封緘方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 容器
2 回動部
3 第1破断線
4 第2破断線
20 第1容器部
20a 第1境界(周縁)
26 第1フランジ
27 第1突出部
27b,27c 第1長側壁(第1側壁)
27f 第1天壁
27g,27h 第1屈曲部
27i,27j 第4屈曲部
30 第2容器部
30a 第2境界(周縁)
36 第2フランジ
37 第2突出部
37b,37c 第2長側壁(第2側壁)
37f 第2天壁
37g,37h 第2屈曲部
37i,37j 第3屈曲部
51 加圧ローラ
51a 外周面
52 受け部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8