(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058825
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20240422BHJP
B43K 25/02 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B43K3/00 N
B43K25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166180
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 楓
(72)【発明者】
【氏名】栗山 諒介
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宏
【テーマコード(参考)】
2C041
【Fターム(参考)】
2C041AA01
2C041AB06
2C041CC01
(57)【要約】
【課題】軸筒の外周面があたかも織物等で作製されているような感覚を付与することができ、外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する筆記具を提供する。
【解決手段】中心軸に沿って軸方向に延びる軸筒1と、軸筒1の内部に配置される筆記部材と、を備え、軸筒1は、軸筒1の外周面から径方向外側に突出する繊維形突起6を有し、繊維形突起6は、外周面に並んで複数設けられ、各繊維形突起6は、径方向外側から見て所定方向に延び、所定方向と直交する幅方向に並んで配置される複数のリブ部と、幅方向に隣り合うリブ部間、またはリブ部の幅方向の端部に配置されて所定方向に延びる段差部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って軸方向に延びる軸筒と、
前記軸筒の内部に配置される筆記部材と、を備え、
前記軸筒は、前記軸筒の外周面から径方向外側に突出する繊維形突起を有し、
前記繊維形突起は、前記外周面に並んで複数設けられ、
各前記繊維形突起は、
径方向外側から見て所定方向に延び、前記所定方向と直交する幅方向に並んで配置される複数のリブ部と、
前記幅方向に隣り合う前記リブ部間、または前記リブ部の前記幅方向の端部に配置されて前記所定方向に延びる段差部と、を有する、
筆記具。
【請求項2】
前記繊維形突起は、前記所定方向の両端部よりも前記両端部間に位置する中間部分における径方向外側への突出量が大きい、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記繊維形突起は、前記幅方向の両端部よりも前記両端部間に位置する中間部分における径方向外側への突出量が大きい、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項4】
複数の前記リブ部は、
前記繊維形突起の前記幅方向の外側の端部に配置される外側リブ部と、
前記外側リブ部よりも前記幅方向の内側に配置される内側リブ部と、を含み、
前記内側リブ部は、前記外側リブ部よりも径方向外側への突出量が大きい部分を有する、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項5】
前記内側リブ部は、前記幅方向に並んで複数設けられる、
請求項4に記載の筆記具。
【請求項6】
複数の前記内側リブ部は、径方向外側への突出量が互いに異なる、
請求項5に記載の筆記具。
【請求項7】
複数の前記内側リブ部は、
複数の前記内側リブ部のうち、前記所定方向の中央部における径方向外側への突出量が最も大きい第1内側リブ部と、
前記所定方向の中央部における径方向外側への突出量が前記第1内側リブ部よりも小さい第2内側リブ部と、を含み、
前記第2内側リブ部の前記所定方向の端部における径方向外側への突出量が、前記第1内側リブ部の前記所定方向の端部における径方向外側への突出量よりも大きい、
請求項5に記載の筆記具。
【請求項8】
複数の前記繊維形突起は、
軸方向に延びる軸方向突起と、
周方向に延びる周方向突起と、を含み、
前記軸方向突起と前記周方向突起とが、軸方向及び周方向の少なくとも一方向において交互に配列する、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項9】
複数の前記繊維形突起は、
軸方向に延びる軸方向突起と、
周方向に延びる周方向突起と、を含み、
前記軸方向突起は、前記周方向突起よりも径方向外側への突出量が大きい、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項10】
複数の前記繊維形突起は、
軸方向に延び、互いに形状が異なる複数種類の軸方向突起と、
周方向に延び、互いに形状が異なる複数種類の周方向突起と、を含む、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項11】
前記繊維形突起は、その表面にシボ加工面を有する、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項12】
前記軸筒は、前記軸筒の外周面に配置されて軸方向に延びるパーティングラインを有し、
複数の前記繊維形突起は、周方向に延びる周方向突起を複数含み、
複数の前記周方向突起のうち少なくとも1つは、前記パーティングライン上に位置する、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項13】
前記パーティングラインは、軸方向に延びるシボ加工面を有する、
請求項12に記載の筆記具。
【請求項14】
前記軸筒に径方向外側から対向して配置され、軸方向に延びるクリップをさらに備え、
複数の前記繊維形突起は、径方向から見て前記クリップと重なり軸方向に延びる軸方向突起を含む、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項15】
前記軸筒の外周面に嵌合するグリップ部をさらに備え、
前記繊維形突起は、前記軸筒の外周面のうち、前記グリップ部に覆われる部分以外の部分に配置される、
請求項1または2に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばボールペンなどの筆記具として、樹脂製等の軸筒と、軸筒の内部に配置される替芯等の筆記部材と、軸筒の外周面に嵌合するゴム製等のグリップ部と、を備えたものが知られている。特許文献1に記載の筆記具は、グリップ部に滑り止め用の凹溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の筆記具においては、よりデザイン性を高めたり、より使用感を向上したりする点に改善の余地があった。
また、軸筒の外周面があたかも実際の織物等で作製されているような、視覚的及び触覚的な感覚を付与することが難しかった。
【0005】
本発明は、軸筒の外周面があたかも織物等で作製されているような感覚を付与することができ、外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する筆記具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0007】
〔本発明の態様1〕
中心軸に沿って軸方向に延びる軸筒と、前記軸筒の内部に配置される筆記部材と、を備え、前記軸筒は、前記軸筒の外周面から径方向外側に突出する繊維形突起を有し、前記繊維形突起は、前記外周面に並んで複数設けられ、各前記繊維形突起は、径方向外側から見て所定方向に延び、前記所定方向と直交する幅方向に並んで配置される複数のリブ部と、前記幅方向に隣り合う前記リブ部間、または前記リブ部の前記幅方向の端部に配置されて前記所定方向に延びる段差部と、を有する、筆記具。
【0008】
本発明の筆記具では、軸筒の外周面に繊維形突起が複数設けられている。各繊維形突起は、所定方向に延びる複数のリブ部と、幅方向に隣接するリブ部間またはリブ部の幅方向の端部に配置される段差部と、を有している。このような構成とされた複数の繊維形突起によって、軸筒の外周面が、あたかも実際の糸で織り込まれた織物や布地、あるいはイグサなどで織り込まれた畳等(以下、織物等と省略する)により作製されているような感覚を、使用者等に与えることができる。
【0009】
詳しくは、複数のリブ部及び段差部によって、繊維形突起の陰影を、織物等の要素である糸やイグサなどの陰影と近似させることができる。このため、筆記具の使用者等に、軸筒の外周面があたかも織物等で構成されているような、視覚的な感覚を付与することができる。
【0010】
また、筆記具の使用者等が繊維形突起を指先などで触ったときに、複数のリブ部及び段差部によって、あたかも実際の織物等の表面を触ったときのような、触覚的な感覚を付与することができる。具体的には、例えば、糸やイグサなどの表面の繊維が所定の方向に延びているかのような、方向性のある感触を得ることができる。
【0011】
また、軸筒の外周面は、筆記具の使用時に、使用者の手のうち人差し指の付け根と親指の付け根との間に位置する「指間」に接触する。この筆記具では、繊維形突起が設けられることにより、指間における軸筒の触り心地も良好なものとすることができる。
【0012】
以上より本発明によれば、軸筒の外周面があたかも実際の織物等で作製されているような感覚を付与することができ、外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する。
【0013】
〔本発明の態様2〕
前記繊維形突起は、前記所定方向の両端部よりも前記両端部間に位置する中間部分における径方向外側への突出量が大きい、態様1に記載の筆記具。
【0014】
〔本発明の態様3〕
前記繊維形突起は、前記幅方向の両端部よりも前記両端部間に位置する中間部分における径方向外側への突出量が大きい、態様1または2に記載の筆記具。
【0015】
この場合、繊維形突起の形状を、実際の織物等を構成する糸やイグサなどの露出部分の形状と、より近似させることができる。軸筒の外周面があたかも実際の織物等で作製されているような、視覚的及び触覚的な感覚をより安定して付与することができる。デザイン性を高めたり使用感を向上したりできる作用効果が、より顕著なものとなる。
【0016】
〔本発明の態様4〕
複数の前記リブ部は、前記繊維形突起の前記幅方向の外側の端部に配置される外側リブ部と、前記外側リブ部よりも前記幅方向の内側に配置される内側リブ部と、を含み、前記内側リブ部は、前記外側リブ部よりも径方向外側への突出量が大きい部分を有する、態様1から3のいずれか1つに記載の筆記具。
【0017】
この場合、繊維形突起は、幅方向の外端部に位置する外側リブ部に比べて、幅方向の内側に位置する内側リブ部が径方向外側に大きく突出する。これにより、繊維形突起の形状を、実際の織物等を構成する糸やイグサなどの露出部分の形状と、より近似させることができる。よって上述した作用効果がより顕著なものとなる。
【0018】
〔本発明の態様5〕
前記内側リブ部は、前記幅方向に並んで複数設けられる、態様4に記載の筆記具。
【0019】
〔本発明の態様6〕
複数の前記内側リブ部は、径方向外側への突出量が互いに異なる、態様5に記載の筆記具。
【0020】
この場合、繊維形突起が、幅方向に並ぶ複数の内側リブ部を有しており、各内側リブ部の径方向外側への突出量(すなわち高さ寸法)が互いに異なっている。これにより、繊維形突起の形状を、実際の織物等を構成する糸やイグサなどの露出部分の形状と、より近似させることができる。よって上述した作用効果がより顕著なものとなる。
【0021】
〔本発明の態様7〕
複数の前記内側リブ部は、複数の前記内側リブ部のうち、前記所定方向の中央部における径方向外側への突出量が最も大きい第1内側リブ部と、前記所定方向の中央部における径方向外側への突出量が前記第1内側リブ部よりも小さい第2内側リブ部と、を含み、前記第2内側リブ部の前記所定方向の端部における径方向外側への突出量が、前記第1内側リブ部の前記所定方向の端部における径方向外側への突出量よりも大きい、態様5または6に記載の筆記具。
【0022】
この場合、繊維形突起が有する複数の内側リブ部のうち、第1内側リブ部と第2内側リブ部の傾斜及び形状が、互いに異なる。これにより、繊維形突起の形状を、実際の織物等を構成する糸やイグサなどの露出部分の形状と、より近似させることができる。よって上述した作用効果がより顕著なものとなる。
【0023】
〔本発明の態様8〕
複数の前記繊維形突起は、軸方向に延びる軸方向突起と、周方向に延びる周方向突起と、を含み、前記軸方向突起と前記周方向突起とが、軸方向及び周方向の少なくとも一方向において交互に配列する、態様1から7のいずれか1つに記載の筆記具。
【0024】
この場合、例えば、軸方向突起が経糸、周方向突起が緯糸として作用(機能)し、これらが交互に織り込まれているような、視覚的及び触覚的な感覚を軸筒に付与することができる。軸筒の外周面が、あたかも実際の織物等で構成されているような感覚を、より効果的に付与できる。
【0025】
〔本発明の態様9〕
複数の前記繊維形突起は、軸方向に延びる軸方向突起と、周方向に延びる周方向突起と、を含み、前記軸方向突起は、前記周方向突起よりも径方向外側への突出量が大きい、態様1から8のいずれか1つに記載の筆記具。
【0026】
この場合、例えば、軸方向突起が経糸、周方向突起が緯糸として作用(機能)する。軸方向突起の突出量が周方向突起の突出量よりも大きくされているため、軸筒の外周面において、緯糸(周方向突起)よりも経糸(軸方向突起)を、視覚的及び触覚的により強調することができる。このため、デザインの自由度をより高めたり、触り心地をより良くしたりすることが可能となる。
【0027】
〔本発明の態様10〕
複数の前記繊維形突起は、軸方向に延び、互いに形状が異なる複数種類の軸方向突起と、周方向に延び、互いに形状が異なる複数種類の周方向突起と、を含む、態様1から9のいずれか1つに記載の筆記具。
【0028】
この場合、例えば、軸方向突起が経糸、周方向突起が緯糸として作用(機能)する。軸方向突起が複数種類設けられ、周方向突起が複数種類設けられていると、軸筒の外周面があたかも実際の織物等で形成されているような、視覚的及び触覚的な感覚をより効果的に付与することができる。
【0029】
〔本発明の態様11〕
前記繊維形突起は、その表面にシボ加工面を有する、態様1から10のいずれか1つに記載の筆記具。
【0030】
この場合、繊維形突起の表面がシボ加工面を有するため、繊維形突起に、より細やかなつや消し状の陰影を付与したり、さらさらとした気持ち良い感触を付与したりすることができる。このため、よりデザイン性を高めたり、より使用感を向上したりすることが可能となる。
【0031】
〔本発明の態様12〕
前記軸筒は、前記軸筒の外周面に配置されて軸方向に延びるパーティングラインを有し、複数の前記繊維形突起は、周方向に延びる周方向突起を複数含み、複数の前記周方向突起のうち少なくとも1つは、前記パーティングライン上に位置する、態様1から11のいずれか1つに記載の筆記具。
【0032】
パーティングラインは、例えば、樹脂製の軸筒を一対の金型間において射出成形する場合に、一対の金型同士の対向面(分割面)に沿って、軸筒の外周面に軸方向に延びて配置される。上記構成と異なり、例えば、パーティングライン上に軸方向に延びる繊維形突起(軸方向突起)が配置されている場合には、射出成形後に一対の金型同士を離間させるときに、パーティングライン上の軸方向突起が金型に擦れて、毟れたりバリになったりすることがある。
【0033】
一方、上記構成のように、パーティングライン上に周方向に延びる周方向突起が位置している場合には、周方向突起が延びる方向に沿うように一対の金型同士が離間されるため、上述のような毟れやバリ等の不具合を抑えることができる。このため、軸筒の外周面に、製造上必要なパーティングラインを設けつつも、パーティングライン上で織物等の模様が途切れたり不自然になったりすることを抑制でき、デザイン性をより高めることが可能になる。
【0034】
〔本発明の態様13〕
前記パーティングラインは、軸方向に延びるシボ加工面を有する、態様12に記載の筆記具。
【0035】
この場合、軸筒の外周面に、製造上必要なパーティングラインを設けつつも、パーティングラインを目立たなくすることができる。このため、デザイン性をより高めることが可能となる。
【0036】
〔本発明の態様14〕
前記軸筒に径方向外側から対向して配置され、軸方向に延びるクリップをさらに備え、複数の前記繊維形突起は、径方向から見て前記クリップと重なり軸方向に延びる軸方向突起を含む、態様1から13のいずれか1つに記載の筆記具。
【0037】
この場合、クリップを利用して、筆記具を使用者の衣服などのポケット等に引っ掛けて保持したり、あるいはポケット等から取り外したりする際に、クリップと軸方向突起との間でポケット等の生地が滑りやすくされ、かつ、この生地が安定して挟持される。筆記具をポケット等に引っ掛けやすく、また取り外しやすいため、使用感が良い。
【0038】
〔本発明の態様15〕
前記軸筒の外周面に嵌合するグリップ部をさらに備え、前記繊維形突起は、前記軸筒の外周面のうち、前記グリップ部に覆われる部分以外の部分に配置される、態様1から14のいずれか1つに記載の筆記具。
【0039】
この場合、グリップ部によって筆記時などの滑り止め機能が得られ、かつ、繊維形突起がグリップ部によって塞がれることはない。このため、上述した作用効果がより安定して得られる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の前記態様の筆記具によれば、軸筒の外周面があたかも織物等で作製されているような感覚を付与することができ、外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、第1、第2実施形態の筆記具を示す側面図であり、軸筒の外周面に配置される繊維形突起及びパーティングライン等の図示は省略している。
【
図2】
図2は、第1実施形態の筆記具の軸筒の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII部を拡大して示す図であり、具体的には、複数の繊維形突起のうち第1軸方向突起を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV部を拡大して示す図であり、具体的には、複数の繊維形突起のうち第2軸方向突起を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図2のV部を拡大して示す図であり、具体的には、複数の繊維形突起のうち第1周方向突起を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図2のVI部を拡大して示す図であり、具体的には、複数の繊維形突起のうち第2周方向突起を示す平面図である。
【
図7】
図7は、繊維形突起の一例を示す斜視図であり、具体的には、
図3の第1軸方向突起を表す。
【
図8】
図8は、
図3のVIII-VIII断面を示す断面図である。
【
図30】
図30は、第1実施形態の変形例の筆記具の軸筒の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
【
図31】
図31は、第2実施形態の筆記具の軸筒の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
【
図32】
図32は、
図31のXXXII部を拡大して示す図であり、具体的には、繊維形突起(軸方向突起)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の筆記具10について、
図1~
図29を参照して説明する。本実施形態の筆記具10は、例えばボールペン等であり、具体的には、ノック式ボールペン等である。
【0043】
図1に示すように、筆記具10は、中心軸Oを中心とする概略円柱状をなしている。筆記具10は、中心軸Oに沿って延びる軸筒1と、軸筒1の内部に配置される筆記部材2と、軸筒1の外周面に嵌合するグリップ部3と、クリップ4と、付勢部材(図示省略)と、ノック機構(図示省略)と、押込み部5と、を備える。軸筒1、筆記部材2、グリップ部3、付勢部材、ノック機構及び押込み部5は、中心軸Oを共通軸として互いに同軸に配置されている。
【0044】
本実施形態で用いる方向の定義について、説明する。
本実施形態では、筆記具10の中心軸Oが延びる方向、つまり中心軸Oに沿う方向を、軸方向と呼ぶ。軸方向において、筆記部材2のペン先を構成するチップ21と、押込み部5とは、互いに異なる位置に配置されている。軸方向のうち、押込み部5からチップ21へ向かう方向を前側と呼び、チップ21から押込み部5へ向かう方向を後側と呼ぶ。このため、軸方向は前後方向と言い換えてもよい。各図において軸方向(前後方向)は、Y軸方向に相当する。前側は-Y側に相当し、後側は+Y側に相当する。
【0045】
中心軸Oと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Oから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。各図において径方向は、Z軸方向に相当する。径方向内側は-Z側に相当し、径方向外側は+Z側に相当する。
【0046】
中心軸O回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。各図において周方向は、X軸方向に相当する。本実施形態では、筆記具10を後側(+Y側)から見て、中心軸Oを中心とする反時計回りの方向である周方向一方側が、+X側に相当し、中心軸Oを中心とする時計回りの方向である周方向他方側が、-X側に相当する。
【0047】
筆記具10の各構成要素について、説明する。
図1に示すように、軸筒1は、中心軸Oを中心とする円筒状であり、軸方向に延びる。軸筒1は、例えばポリカーボネート等を主成分とする樹脂製である。軸筒1は、例えば、複数の筒状部材を螺着、嵌合及び接着するなどにより組み合わせて構成されている。特に図示しないが、軸筒1の各構成部材は、一対の金型と中子との間に溶融した樹脂材料を射出し固化させる、いわゆる射出成形等により作製される。
【0048】
軸筒1は、例えば無色の透明な部材により構成される部分を有する。また軸筒1は、例えば黒色等の不透明な部材により構成される部分を有していてもよい。すなわち、軸筒1は、透明な部材及び不透明な部材の少なくともいずれかを備えている。なお、前記透明な部材は、所定の色が付与された透明な部材であってもよい。本実施形態において「透明」とは、「半透明」を含む概念である。より詳しくは、筆記具10を径方向外側から見て、軸筒1の内部に収容される筆記部材2が、軸筒1を通して目視により透けて見える場合を「透明」と呼ぶ。また、前記不透明な部材は、黒色以外の所定の色が付与された不透明な部材であってもよい。
【0049】
軸筒1は、前軸1aと、前軸1aの後側に配置される後軸1bと、を有する。前軸1a及び後軸1bは、それぞれ円筒状をなしており、軸方向に並んで配置される。前軸1aの後端部と後軸1bの前端部とは、螺着等により着脱可能に固定されている。
【0050】
前軸1aの前端部は、前側へ向かうに従い縮径するテーパ筒状である。前軸1aの前端部は、テーパ筒部と言い換えてもよい。前軸1aは、テーパ筒部に配置されて前側に開口する前端開口部1cを有する。後軸1bは、後軸1bの後端部に配置されて後側に開口する後端開口部1dを有する。
【0051】
また前軸1aは、前軸1aの軸方向の後端部に配置される雄ネジ部(図示省略)を有する。この雄ネジ部は、後述するグリップ部3よりも後側に突出する。後軸1bは、後軸1bの軸方向の前端部に配置される雌ネジ部(図示省略)を有する。この雌ネジ部は、前軸1aの雄ネジ部と螺着される。
【0052】
図2は、後軸1b(軸筒1)の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
図2に示すように、後軸1bすなわち軸筒1は、軸筒1の外周面に配置される繊維形突起6及びパーティングラインPLを有する。具体的に、繊維形突起6及びパーティングラインPLは、後軸1bの外周面の少なくとも一部に配置される。なお
図1においては、繊維形突起6及びパーティングラインPLの図示を省略している。繊維形突起6及びパーティングラインPLの詳細な構成については、別途後述する。
【0053】
筆記部材2は、替芯またはレフィル等と言い換えてもよい。
図1において、筆記部材2は、軸筒1の内部に着脱可能に取り付けられる。筆記部材2は、軸筒1を複数のパーツ(本実施形態では前軸1aと後軸1b)に分解することにより、軸筒1の内部から取り外して交換可能である。
【0054】
図1に示すように、筆記部材2は、チップ21と、チップ21の後端部に接続されるインク貯留筒(図示省略)と、を有する。チップ21は、チップ21の前端部に配置されるボールと、ボールを保持するホルダーと、を有する。
【0055】
本実施形態では、筆記具10がノック式ボールペンである。このため筆記部材2は、チップ21が軸筒1の前端開口部1cから前側に突出する使用位置と、チップ21を含めた筆記部材2全体が軸筒1内に収納される収納位置と、の間で軸方向に移動可能である。
【0056】
特に図示しないが、インク貯留筒は、軸筒1の内部に配置される。インク貯留筒は、中心軸Oを中心とする筒状であり、軸方向に延びる。インク貯留筒の内部には、例えばゲルインク等のインクと、インクの後側に配置されてインクの蒸発や逆流(後側への流動)を抑えるグリスと、が収容される。インク貯留筒は、カートリッジ等と言い換えてもよい。
【0057】
グリップ部3は、例えばエラストマーやゴム等の弾性変形可能な弾性部材により構成される。ただしこれに限らず、グリップ部3は、弾性部材以外の樹脂部材等により構成されていてもよい。グリップ部3は、中心軸Oを中心とする円筒状であり、軸方向に延びる。グリップ部3は、前軸1aの外周面に嵌合する。具体的に、グリップ部3は、前軸1aの外周面のうち、軸方向において前端部(テーパ筒部)と後端部(雄ネジ部)との間に位置する部分に嵌合する。
【0058】
クリップ4は、軸筒1の軸方向の後端部に接続され、軸筒1の外周面よりも径方向外側に突出する。具体的に、クリップ4は、後軸1bの外周面の後端部に接続されており、この接続部分から前側に向けて、軸方向に延びている。クリップ4は、後軸1bすなわち軸筒1の外周面に、径方向外側から対向して配置される。クリップ4の一部は、軸筒1の外周面に接触していてもよい。クリップ4は、後軸1bが有する複数の構成部材のうちの1つと、単一の部材により一体に形成されていてもよい。クリップ4は、弾性変形可能な樹脂製または金属製等である。
【0059】
クリップ4を利用することにより、使用者は、筆記具10を衣服などのポケット等に引っ掛けて保持することができる。また、クリップ4が設けられることで、筆記具10が机上等において意図せず転がるようなことが抑えられる。
【0060】
特に図示しないが、付勢部材は、例えば圧縮コイルバネ等である。付勢部材は、中心軸Oを中心とする螺旋状をなす。付勢部材は、軸筒1の内部に配置され、筆記部材2を後側へ向けて付勢する。本実施形態では付勢部材が、前軸1aの内部に収容される。
【0061】
押込み部5は、中心軸Oを中心とする筒状であり、軸方向に延びる。押込み部5は、例えば、後端部が閉じられた有頂筒状等である。押込み部5は、軸筒1の後端開口部1d内に挿入される。押込み部5の少なくとも一部(後端部)は、後端開口部1dから後側に突出する。
【0062】
特に図示しないが、ノック機構は、軸筒1の内部に設けられる。使用者が、付勢部材の付勢力に抗して押込み部5を前側へ押し込み、この押し込みを解除する操作(ノック操作)を行うことにより、ノック機構は、筆記部材2を上述した使用位置と収納位置とに切り替え可能に構成されている。詳しくは、使用者がノック操作を一回行う毎に、筆記部材2は、使用位置と収納位置とに交互に軸方向に移動する。本実施形態のノック機構としては、従来のノック式ボールペンが備える、例えば回転カム等を含むノック機構の構造を採用することができる。
【0063】
次に、
図2~
図29を参照し、繊維形突起6及びパーティングラインPLについて、詳細に説明する。
図2に示すように、繊維形突起6及びパーティングラインPLは、軸筒1のうち後軸1bの外周面に配置されている。後軸1bは、透明な部材により構成されていてもよく、不透明な部材により構成されていてもよい。
【0064】
特に図示しないが、繊維形突起6及びパーティングラインPLは、軸筒1のうち前軸1aの外周面にも配置されていてもよい。ただしこの場合、繊維形突起6及びパーティングラインPLは、前軸1aの外周面のうち、グリップ部3が嵌合する部分以外の部分(例えばテーパ筒部など)に配置される。
すなわち、繊維形突起6及びパーティングラインPLは、軸筒1の外周面のうち、グリップ部3に覆われる部分以外の部分に配置される。
【0065】
本実施形態では、繊維形突起6及びパーティングラインPLは、後軸1bを射出成形する際に用いられる図示しない一対の金型の内面の形状が転写されることにより、後軸1bの外周面に形成される。詳しくは、後軸1bを射出成形するための一対の金型の内面には、レーザー加工によって図示しない精密な凹状の彫刻(レーザー彫刻)が施されており、このレーザー彫刻の凹形状が、射出成形時に後軸1bの外周面に凸形状(前記凹形状が反転した形状)として転写される。これにより、軸筒1の外周面には、精密な凸状の繊維形突起6が形成される。
【0066】
このため、繊維形突起6は、軸筒1の外周面から径方向外側に突出して設けられている。なお、前記「外周面」とは、詳しくは、軸筒1の外周面のうち繊維形突起6及びパーティングラインPLが配置される部分以外の部分を指しており、本実施形態ではこの部分を繊維形突起6及びパーティングラインPLと区別して、ベース面または基準面等と呼ぶ場合がある。ベース面(基準面)は、例えば、隣り合う繊維形突起6間や、隣り合う繊維形突起6とパーティングラインPLとの間に配置される。
【0067】
ベース面は、後軸1bを射出成形するための一対の金型の内面のうち、レーザー加工が施されていない部分、すなわちレーザー非加工部分の形状が、射出成形時に後軸1bの外周面に転写されることにより形成される。なお、後軸1bの外周面に成形されたベース面は、前記レーザー非加工部分が転写されているため、艶のある光沢面とされている。
【0068】
図2~
図6の各図に示すモノクロ画像は、後軸1b成形用の金型内面にレーザー加工する際のレーザー強度(レーザー出力)を、白黒の濃淡によって表している。各図のモノクロ画像に表されるように、金型内面におけるレーザー加工部分のレーザー強度は、段階的にまたは徐々に(グラデーション状に)変化させられており、これにより金型の内面には、精密なレーザー彫刻(精密彫刻)が施される。
【0069】
金型内面のレーザー加工部分の形状は、反転されてそのまま後軸1bの外周面に転写される。このため、
図2~
図6の各図に示すモノクロ画像は、後軸1bの外周面(ベース面)から繊維形突起6が径方向外側に突出する突出量を、白黒の濃淡によって表している、とも言える。すなわち、繊維形突起6の突出量は、繊維形突起6の各部において、段階的にまたは徐々に(グラデーション状に)変化させられている。
【0070】
より詳しくは、各図に示すモノクロ画像において、白黒の濃淡が濃い部分(黒色100%に近い部分)ほど、繊維形突起6の突出量は大きくなる。また、白黒の濃淡が薄い部分(白色100%に近い部分、言い換えると黒色0%に近い部分)ほど、繊維形突起6の突出量は小さくなる。
【0071】
軸筒1の外周面(ベース面)から繊維形突起6が径方向外側へ突出する突出量の最大値(最大突出寸法)は、例えば、100μm以下である。本実施形態では、繊維形突起6の最大突出寸法が、例えば50μm程度である。より詳しくは、
図2のモノクロ画像に示す繊維形突起6において、最も濃淡が濃い部分(黒色100%)での突出量が50μm程度(最大突出量)に相当し、最も濃淡が薄い部分(黒色0%)での突出量が0μm程度に相当する。
【0072】
図2に示すように、繊維形突起6は、後軸1b(軸筒1)の外周面に並んで複数設けられる。複数の繊維形突起6は、軸方向(Y軸方向)に延びる軸方向突起6A,6Bと、周方向(X軸方向)に延びる周方向突起6C,6Dと、を含む。
【0073】
軸方向突起6A,6Bは、複数設けられる。複数の軸方向突起6A,6Bは、第1軸方向突起6Aと、第1軸方向突起6Aとは形状が異なる第2軸方向突起6Bと、を含む。また、周方向突起6C,6Dは、複数設けられる。複数の周方向突起6C,6Dは、第1周方向突起6Cと、第1周方向突起6Cとは形状が異なる第2周方向突起6Dと、を含む。
すなわち、複数の繊維形突起6は、軸方向に延び、互いに形状が異なる複数種類の軸方向突起6A,6Bと、周方向に延び、互いに形状が異なる複数種類の周方向突起6C,6Dと、を含む。
【0074】
第1軸方向突起6Aと第2軸方向突起6Bとは、軸方向において、交互に並んで配置される。軸方向に沿って配列する軸方向突起6A,6Bの列は、周方向に並んで複数列設けられている。周方向に隣り合う一対の軸方向突起6A,6Bの列のうち、一方の列の軸方向突起6A,6Bと、他方の列の軸方向突起6A,6Bとは、軸方向の位置が互いにずらされている。
【0075】
特に図示しないが、周方向に並ぶ複数の軸方向突起6A,6Bの列のうち、少なくとも1つの軸方向突起6A,6Bの列は、径方向から見て、クリップ4と重なって配置される。すなわち、複数の繊維形突起6は、径方向から見てクリップ4と重なり軸方向に延びる軸方向突起6A,6Bを含む。
【0076】
第1周方向突起6Cと第2周方向突起6Dとは、軸方向において、交互に並んで配置される。軸方向に沿って配列する周方向突起6C,6Dの列は、周方向に並んで複数列設けられている。周方向に隣り合う一対の周方向突起6C,6Dの列のうち、一方の列の周方向突起6C,6Dと、他方の列の周方向突起6C,6Dとは、軸方向の位置が互いにずらされている。
【0077】
また、軸方向突起6A,6Bと周方向突起6C,6Dとは、軸方向及び周方向の少なくとも一方向において、交互に配列する。本実施形態においては、軸方向突起6A,6Bと周方向突起6C,6Dとが、軸方向において交互に配列し、かつ、周方向において交互に配列する。
【0078】
図2のモノクロ画像で白黒の濃淡として表すように、本実施形態では、軸方向突起6A,6Bの径方向外側(+Z側)への突出量が、周方向突起6C,6Dの径方向外側への突出量よりも大きい。すなわち、周方向突起6C,6Dによってイメージされる周方向に沿う模様に比べて、軸方向突起6A,6Bによってイメージされる軸方向に沿う模様が、より強調されたデザインとされている。
【0079】
ここで、各繊維形突起6(6A~6D)に共通する詳細な構成等について、説明する。
繊維形突起6は、その表面にシボ加工面を有する。シボ加工面は、すりガラス状(曇りガラス状)または梨地状の面であり、所定値以上の表面粗さを有する。シボ加工面は、例えば、マット(艶消し)加工面等と言い換えてもよい。本実施形態では、繊維形突起6の表面全体に、シボ加工面が形成されている。
【0080】
詳しくは、後軸1b成形用の金型の内面にレーザー加工を施すことにより、金型内面のレーザー加工部分は、レーザー彫刻のデザインよりも細かな微視的な観点において、その表面が所定値以上の表面粗さに荒らされている。後軸1bを射出成形する際、金型内面のレーザー加工部分が転写されて繊維形突起6が形成されるため、繊維形突起6の表面は、微視的な観点において所定値以上の表面粗さに荒らされており、よってシボ加工面となる。
【0081】
繊維形突起6は、軸筒1の外周面を正面に見て(つまり径方向外側から見て)、所定方向に延びている。すなわち、径方向外側から見て、繊維形突起6の所定方向の寸法は、所定方向と直交する幅方向の寸法よりも大きい。このため、各繊維形突起6(6A~6D)において、所定方向を長手方向と呼び、幅方向を短手方向と呼んでもよい。
【0082】
具体的に、複数種類の繊維形突起6A~6Dのうち、軸方向突起6A,6Bにおいては、所定方向がY軸方向(軸方向)に相当し、幅方向がX軸方向(周方向)に相当する。また、周方向突起6C,6Dにおいては、所定方向がX軸方向(周方向)に相当し、幅方向がY軸方向(軸方向)に相当する。
【0083】
また、繊維形突起6の所定方向の寸法は、例えば、2mm以下である。本実施形態では、繊維形突起6の所定方向の寸法が、1.5mm以下であり、具体的には、1.1~1.2mm程度である。
繊維形突起6の幅方向の寸法は、例えば、1.5mm以下である。本実施形態では、繊維形突起6の幅方向の寸法が、1mm以下であり、具体的には、0.5~0.6mm程度である。
【0084】
図3~
図6の各図に示すように、本実施形態において繊維形突起6(6A~6D)は、繊維形突起6の所定方向(長手方向)の中心に位置し、所定方向と垂直な方向(面方向)に広がる図示しない仮想面(対称面)に関して、面対称の形状を有する。
【0085】
また、
図3及び
図4に示す軸方向突起6A,6Bは、繊維形突起6の幅方向(短手方向)の中心に位置し、幅方向と垂直な方向(面方向)に広がる図示しない仮想面(対称面)に関して、面対称の形状を有する。
【0086】
また、
図5及び
図6に示す周方向突起6C,6Dは、繊維形突起6の幅方向(短手方向)の中心に位置し、幅方向と垂直な方向(面方向)に広がる図示しない仮想面に関して、非面対称形状とされている。
【0087】
図3~
図6の各図においてモノクロ画像の濃淡で示すように、各繊維形突起6(6A~6D)は、所定方向(長手方向)の両端部における径方向外側(+Z側)への突出量に比べて、所定方向の両端部間に位置する中間部分における径方向外側への突出量が、大きくされている。なお、
図3の繊維形突起6(第1軸方向突起6A)を模式的な斜視図として示す
図7を参照することにより、上記構成をより直感的に理解できる。
具体的に、各繊維形突起6(6A~6D)は、所定方向の両端部から中央部へ向かうに従い径方向外側への突出量が大きくなり、所定方向の中央部において前記突出量が最大となる。
【0088】
図3~
図7に示すように、各繊維形突起6は、径方向外側から見て所定方向に延び、幅方向に並んで配置される複数のリブ部7と、幅方向に隣り合うリブ部7間、またはリブ部7の幅方向の端部に配置されて所定方向に延びる段差部8と、を有する。
本実施形態において、繊維形突起6が有する複数のリブ部7は、幅方向に互いに隣接して配置される。具体的に、幅方向に隣り合うリブ部7同士は、互いに対向する幅方向の端部同士が接続されている。また、段差部8は、繊維形突起6に複数設けられる。各段差部8は、各リブ部7の幅方向を向く側面に配置されている。
【0089】
複数のリブ部7のうち少なくとも1つは、所定方向(長手方向)の両端部から中央部へ向かうに従い、径方向外側へ向けた突出量が大きくなる。本実施形態では、各繊維形突起6(6A~6D)が備えるリブ部7のすべてが、所定方向の両端部から中央部へ向かうに従い、前記突出量が大きくなる。
【0090】
なお、特に図示しないが、複数のリブ部7の中には、所定方向の全長にわたって前記突出量が一定とされたものが含まれていてもよい。また、複数のリブ部7の中には、所定方向の両端部から中央部へ向かうに従い、前記突出量が小さくなるものが含まれていてもよい。
【0091】
複数のリブ部7は、繊維形突起6の幅方向の外側の端部に配置される外側リブ部7Aと、外側リブ部7Aよりも幅方向の内側に配置される内側リブ部7Bと、を含む。
外側リブ部7Aは、繊維形突起6の幅方向の外側の両端部に、一対設けられる。内側リブ部7Bは、幅方向に並んで複数設けられる。幅方向に隣り合う内側リブ部7B同士は、互いに形状が異なる。複数の内側リブ部7Bは、径方向外側への突出量が互いに異なる。
【0092】
内側リブ部7Bは、外側リブ部7Aよりも径方向外側への突出量が大きい部分を有する。内側リブ部7Bの径方向外側へ向けた突出量の最大値(最大突出寸法)は、外側リブ部7Aの径方向外側へ向けた突出量の最大値よりも大きい。
このため、各繊維形突起6(6A~6D)は、幅方向(短手方向)の両端部(外側リブ部7A)における径方向外側(+Z側)への突出量に比べて、幅方向の両端部間に位置する中間部分(内側リブ部7B)における径方向外側への突出量が、大きくされている。
【0093】
複数の内側リブ部7Bは、複数の内側リブ部7Bのうち、所定方向(長手方向)の中央部における径方向外側への突出量が最も大きい第1内側リブ部7B1と、所定方向の中央部における径方向外側への突出量が第1内側リブ部7B1よりも小さい第2内側リブ部7B2と、を含む。
【0094】
ここで、
図8~
図13に示す各断面図は、
図3の第1軸方向突起6AのVIII-VIII断面~XIII-XIII断面を表している。
図3、
図7、及び
図8~
図13に示すように、第1軸方向突起6Aが有する複数の内側リブ部7Bは、第1内側リブ部7B1と、第2内側リブ部7B2と、さらに第3内側リブ部7B3と、を含む。第3内側リブ部7B3は、所定方向の中央部における径方向外側への突出量が、第1内側リブ部7B1よりも小さく、第2内側リブ部7B2よりも大きい。
【0095】
第1軸方向突起6Aにおいて、第1内側リブ部7B1は、複数の内側リブ部7Bのうち、幅方向の中央部に配置される。また、第2内側リブ部7B2は、複数の内側リブ部7Bのうち、幅方向の端部に配置される。また、第3内側リブ部7B3は、幅方向において、第1内側リブ部7B1と第2内側リブ部7B2との間に配置される。
【0096】
第1軸方向突起6Aは、1つの第1内側リブ部7B1と、2つの第2内側リブ部7B2と、2つの第3内側リブ部7B3と、を有する。すなわち、第1軸方向突起6Aは、内側リブ部7Bを計5つ有する。
【0097】
図11に示すように、第1軸方向突起6Aの所定方向の端部においては、複数のリブ部7のうち、第2内側リブ部7B2の径方向外側(+Z側)へ向けた突出量が、最も大きくされている。すなわち、第2内側リブ部7B2の所定方向の端部における径方向外側への突出量は、第1内側リブ部7B1、第3内側リブ部7B3及び外側リブ部7Aの各所定方向の端部における径方向外側への突出量よりも大きい。
【0098】
また、
図12に示すように、第1軸方向突起6Aの所定方向の端部と中央部との間に位置する所定の部分においては、複数のリブ部7のうち、第3内側リブ部7B3の径方向外側へ向けた突出量が、最も大きくされている。
また、
図13に示すように、第1軸方向突起6Aの所定方向の中央部においては、複数のリブ部7のうち、第1内側リブ部7B1の径方向外側へ向けた突出量が、最も大きくされている。
【0099】
第1軸方向突起6Aが備える複数のリブ部7(7A,7B)は、幅方向の寸法が互いに同一である。
【0100】
また、
図14~
図19に示す各断面図は、
図4の第2軸方向突起6BのXIV-XIV断面~XIX-XIX断面を表している。
図4及び
図14~
図19に示すように、第2軸方向突起6Bが有する複数の内側リブ部7Bは、第1内側リブ部7B1と、第2内側リブ部7B2と、さらに第3内側リブ部7B3と、を含む。第3内側リブ部7B3は、所定方向の中央部における径方向外側への突出量が、第1内側リブ部7B1よりも小さく、第2内側リブ部7B2よりも大きい。
【0101】
第2軸方向突起6Bにおいて、第3内側リブ部7B3は、複数の内側リブ部7Bのうち、幅方向の中央部に配置される。また、第2内側リブ部7B2は、複数の内側リブ部7Bのうち、幅方向の端部に配置される。また、第1内側リブ部7B1は、幅方向において、第3内側リブ部7B3と第2内側リブ部7B2との間に配置される。
【0102】
第2軸方向突起6Bは、1つの第3内側リブ部7B3と、2つの第2内側リブ部7B2と、2つの第1内側リブ部7B1と、を有する。すなわち、第2軸方向突起6Bは、内側リブ部7Bを計5つ有する。
【0103】
図17に示すように、第2軸方向突起6Bの所定方向の端部においては、複数のリブ部7のうち、第2内側リブ部7B2の径方向外側(+Z側)へ向けた突出量が、最も大きくされている。すなわち、第2内側リブ部7B2の所定方向の端部における径方向外側への突出量は、第1内側リブ部7B1、第3内側リブ部7B3及び外側リブ部7Aの各所定方向の端部における径方向外側への突出量よりも大きい。
【0104】
また、
図18に示すように、第2軸方向突起6Bの所定方向の端部と中央部との間に位置する所定の部分においては、複数のリブ部7のうち、第3内側リブ部7B3の径方向外側へ向けた突出量が、最も大きくされている。
また、
図19に示すように、第2軸方向突起6Bの所定方向の中央部においては、複数のリブ部7のうち、第1内側リブ部7B1の径方向外側へ向けた突出量が、最も大きくされている。
【0105】
第2軸方向突起6Bが備える複数のリブ部7(7A,7B)は、幅方向の寸法が互いに同一である。
【0106】
また、
図20~
図24に示す各断面図は、
図5の第1周方向突起6CのXX-XX断面~XXIV-XXIV断面を表している。
図5及び
図20~
図24に示すように、第1周方向突起6Cが有する複数の内側リブ部7Bは、第1内側リブ部7B1と、第2内側リブ部7B2と、を含む。
【0107】
第1周方向突起6Cは、2つの第1内側リブ部7B1と、2つの第2内側リブ部7B2と、を有する。すなわち、第1周方向突起6Cは、内側リブ部7Bを計4つ有する。
第1周方向突起6Cにおいて、第1内側リブ部7B1及び第2内側リブ部7B2(4つの内側リブ部7B)は、幅方向に沿って-Y側(前側)へ向けて、第1内側リブ部7B1、第2内側リブ部7B2、第1内側リブ部7B1、第2内側リブ部7B2、の順に交互に並んで配置される。
【0108】
また、第1周方向突起6Cが有する複数(2つ)の第1内側リブ部7B1は、幅方向の寸法が互いに異なる。また、第1周方向突起6Cが有する複数(2つ)の第2内側リブ部7B2は、幅方向の寸法が互いに異なる。
【0109】
図22に示すように、第1周方向突起6Cの所定方向の端部においては、複数のリブ部7の各径方向外側(+Z側)へ向けた突出量が、互いに同じである。
【0110】
また、
図23に示すように、第1周方向突起6Cの所定方向の端部と中央部との間に位置する所定の部分においては、内側リブ部7Bの径方向外側へ向けた突出量が、外側リブ部7Aの径方向外側へ向けた突出量よりも大きくされている。また
図23において、第1内側リブ部7B1の径方向外側へ向けた突出量と、第2内側リブ部7B2の径方向外側へ向けた突出量とは、互いに同じである。
【0111】
また、
図24に示すように、第1周方向突起6Cの所定方向の中央部においては、複数のリブ部7のうち、第1内側リブ部7B1の径方向外側へ向けた突出量が、最も大きくされている。
【0112】
また、
図25~
図29に示す各断面図は、
図6の第2周方向突起6DのXXV-XXV断面~XXIX-XXIX断面を表している。
図6及び
図25~
図29に示すように、第2周方向突起6Dが有する複数の内側リブ部7Bは、第1内側リブ部7B1と、第2内側リブ部7B2と、を含む。
【0113】
第2周方向突起6Dは、2つの第1内側リブ部7B1と、2つの第2内側リブ部7B2と、を有する。すなわち、第2周方向突起6Dは、内側リブ部7Bを計4つ有する。
第2周方向突起6Dにおいて、第1内側リブ部7B1及び第2内側リブ部7B2(4つの内側リブ部7B)は、幅方向に沿って-Y側(前側)へ向けて、第2内側リブ部7B2、第1内側リブ部7B1、第2内側リブ部7B2、第1内側リブ部7B1、の順に交互に並んで配置される。
【0114】
また、第2周方向突起6Dが有する複数(2つ)の第1内側リブ部7B1は、幅方向の寸法が互いに異なる。また、第2周方向突起6Dが有する複数(2つ)の第2内側リブ部7B2は、幅方向の寸法が互いに異なる。
【0115】
図27に示すように、第2周方向突起6Dの所定方向の端部においては、複数のリブ部7の各径方向外側(+Z側)へ向けた突出量が、互いに同じである。
【0116】
また、
図28に示すように、第2周方向突起6Dの所定方向の端部と中央部との間に位置する所定の部分においては、内側リブ部7Bの径方向外側へ向けた突出量が、外側リブ部7Aの径方向外側へ向けた突出量よりも大きくされている。また
図28において、第1内側リブ部7B1の径方向外側へ向けた突出量と、第2内側リブ部7B2の径方向外側へ向けた突出量とは、互いに同じである。
【0117】
また、
図29に示すように、第2周方向突起6Dの所定方向の中央部においては、複数のリブ部7のうち、第1内側リブ部7B1の径方向外側へ向けた突出量が、最も大きくされている。
【0118】
図3~
図7等に示すように、各繊維形突起6(6A~6D)において、複数の段差部8は、幅方向に隣り合うリブ部7間に配置されて所定方向に延びる内側段差部8Aと、繊維形突起6の幅方向の端部に配置されて所定方向に延びる外側段差部8Bと、を含む。
内側段差部8Aは、幅方向に隣り合うリブ部7同士の各突出量の差分に応じて形成されている。また、外側段差部8Bは、外側リブ部7Aの幅方向の外側を向く側面に形成されている。
【0119】
また
図7に示すように、複数の段差部8には、所定方向へ向かうに従い径方向(Z軸方向)の寸法が変化するもの、及び、所定方向の全長にわたって径方向の寸法が一定とされているもの、のうち少なくとも1つが含まれる。
【0120】
図2に示すように、パーティングラインPLは、後軸1b(軸筒1)の外周面に配置され、軸方向に延びる。
図2に示す符号Cは、パーティングラインPLの周方向の中心線Cを表している。パーティングラインPLの周方向の寸法は、例えば、1mm以下である。本実施形態では、パーティングラインPLの周方向の寸法が、0.5mm以下であり、具体的には、0.3~0.4mm程度である。
【0121】
パーティングラインPLは、後軸1bの外周面に、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態においてパーティングラインPLは、周方向に等ピッチで一対設けられる。すなわち、一対のパーティングラインPLは、軸筒1の中心軸Oを中心として、互いに180°回転対称となる位置に配置される。
【0122】
各パーティングラインPLは、後軸1bを射出成形するための図示しない一対の金型同士の対向面(分割面)に沿って形成される。詳しくは、パーティングラインPLは、後軸1b成形用の金型の内面のうち、周方向の端部に配置されて軸方向に延びるレーザー非加工部分の形状が、射出成形時に後軸1bの外周面に転写されることにより形成される。
本実施形態では、後軸1bの外周面に成形されたパーティングラインPLは、前記レーザー非加工部分が転写されているため、艶のある光沢面とされている。
【0123】
以上説明した本実施形態の筆記具10では、軸筒1の外周面に繊維形突起6が複数設けられている。各繊維形突起6は、所定方向に延びる複数のリブ部7と、幅方向に隣接するリブ部7間またはリブ部7の幅方向の端部に配置される段差部8と、を有している。このような構成とされた複数の繊維形突起6によって、軸筒1の外周面が、あたかも実際の糸で織り込まれた織物や布地、あるいはイグサなどで織り込まれた畳等(以下、織物等と省略する)により作製されているような感覚を、使用者等に与えることができる。
【0124】
詳しくは、複数のリブ部7及び段差部8によって、繊維形突起6の陰影を、織物等の要素である糸やイグサなどの陰影と近似させることができる。このため、筆記具10の使用者等に、軸筒1の外周面があたかも織物等で構成されているような、視覚的な感覚を付与することができる。
【0125】
また、筆記具10の使用者等が繊維形突起6を指先などで触ったときに、複数のリブ部7及び段差部8によって、あたかも実際の織物等の表面を触ったときのような、触覚的な感覚を付与することができる。具体的には、例えば、糸やイグサなどの表面の繊維が所定の方向に延びているかのような、方向性のある感触を得ることができる。
【0126】
また特に図示しないが、軸筒1の外周面は、筆記具10の使用時に、使用者の手のうち人差し指の付け根と親指の付け根との間に位置する「指間」に接触する。この筆記具10では、繊維形突起6が設けられることにより、指間における軸筒1の触り心地も良好なものとすることができる。
【0127】
以上より本実施形態によれば、軸筒1の外周面があたかも実際の織物等で作製されているような感覚を付与することができ、外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する。
【0128】
また本実施形態において、繊維形突起6は、所定方向の両端部よりも前記両端部間に位置する中間部分における径方向外側への突出量が大きい。
また、繊維形突起6は、幅方向の両端部よりも前記両端部間に位置する中間部分における径方向外側への突出量が大きい。
この場合、繊維形突起6の形状を、実際の織物等を構成する糸やイグサなどの露出部分の形状と、より近似させることができる。軸筒1の外周面があたかも実際の織物等で作製されているような、視覚的及び触覚的な感覚をより安定して付与することができる。デザイン性を高めたり使用感を向上したりできる作用効果が、より顕著なものとなる。
【0129】
また本実施形態では、繊維形突起6の複数のリブ部7が、外側リブ部7Aと、内側リブ部7Bと、を含み、内側リブ部7Bは、外側リブ部7Aよりも径方向外側への突出量が大きい部分を有する。
この場合、繊維形突起6は、幅方向の外端部に位置する外側リブ部7Aに比べて、幅方向の内側に位置する内側リブ部7Bが径方向外側に大きく突出する。これにより、繊維形突起6の形状を、実際の織物等を構成する糸やイグサなどの露出部分の形状と、より近似させることができる。よって上述した作用効果がより顕著なものとなる。
【0130】
また本実施形態では、繊維形突起6が、幅方向に並ぶ複数の内側リブ部7Bを有しており、各内側リブ部7Bの径方向外側への突出量(すなわち高さ寸法)が互いに異なっている。これにより、繊維形突起6の形状を、実際の織物等を構成する糸やイグサなどの露出部分の形状と、より近似させることができる。よって上述した作用効果がより顕著なものとなる。
【0131】
また本実施形態では、複数の内側リブ部7Bが、所定方向の中央部における径方向外側への突出量が最も大きい第1内側リブ部7B1と、所定方向の中央部における径方向外側への突出量が第1内側リブ部7B1よりも小さい第2内側リブ部7B2と、を含んでおり、第2内側リブ部7B2の所定方向の端部における径方向外側への突出量が、第1内側リブ部7B1の所定方向の端部における径方向外側への突出量よりも大きい。
この場合、繊維形突起6が有する複数の内側リブ部7Bのうち、第1内側リブ部7B1と第2内側リブ部7B2の傾斜及び形状が、互いに異なる。これにより、繊維形突起6の形状を、実際の織物等を構成する糸やイグサなどの露出部分の形状と、より近似させることができる。よって上述した作用効果がより顕著なものとなる。
【0132】
また本実施形態では、複数の繊維形突起6は、軸方向に延びる軸方向突起6A,6Bと、周方向に延びる周方向突起6C,6Dと、を含んでおり、軸方向突起6A,6Bと周方向突起6C,6Dとが、軸方向及び周方向の少なくとも一方向において交互に配列する。
この場合、例えば、軸方向突起6A,6Bが経糸、周方向突起6C,6Dが緯糸として作用(機能)し、これらが交互に織り込まれているような、視覚的及び触覚的な感覚を軸筒1に付与することができる。軸筒1の外周面が、あたかも実際の織物等で構成されているような感覚を、より効果的に付与できる。
【0133】
また本実施形態において、軸方向突起6A,6Bは、周方向突起6C,6Dよりも径方向外側への突出量が大きい。
この場合、軸筒1の外周面において、緯糸(周方向突起6C,6D)よりも経糸(軸方向突起6A,6B)を、視覚的及び触覚的により強調することができる。このため、デザインの自由度をより高めたり、触り心地をより良くしたりすることが可能となる。
【0134】
また本実施形態では、複数の繊維形突起6が、互いに形状が異なる複数種類の軸方向突起6A,6Bと、互いに形状が異なる複数種類の周方向突起6C,6Dと、を含む。
この場合、軸筒1の外周面があたかも実際の織物等で形成されているような、視覚的及び触覚的な感覚をより効果的に付与することができる。
【0135】
また本実施形態では、繊維形突起6が、その表面にシボ加工面を有する。
上記構成のように、繊維形突起6の表面がシボ加工面を有すると、繊維形突起6に、より細やかなつや消し状の陰影を付与したり、さらさらとした気持ち良い感触を付与したりすることができる。このため、よりデザイン性を高めたり、より使用感を向上したりすることが可能となる。
【0136】
また本実施形態において、複数の繊維形突起6は、径方向から見てクリップ4と重なり軸方向に延びる軸方向突起6A,6Bを含む。
この場合、クリップ4を利用して、筆記具10を使用者の衣服などのポケット等に引っ掛けて保持したり、あるいはポケット等から取り外したりする際に、クリップ4と軸方向突起6A,6Bとの間でポケット等の生地が滑りやすくされ、かつ、この生地が安定して挟持される。筆記具10をポケット等に引っ掛けやすく、また取り外しやすいため、使用感が良い。
【0137】
また本実施形態において、繊維形突起6は、軸筒1の外周面のうち、グリップ部3に覆われる部分以外の部分に配置される。
この場合、グリップ部3によって筆記時などの滑り止め機能が得られ、かつ、繊維形突起6がグリップ部3によって塞がれることはない。このため、上述した作用効果がより安定して得られる。
【0138】
ここで、第1実施形態の変形例について、
図30を参照して説明する。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0139】
図30は、第1実施形態の変形例の筆記具10の軸筒1の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
図30に示すように、この変形例では、複数の周方向突起6C,6Dのうち少なくとも1つが、パーティングラインPL上に位置する。図示の例では、複数の周方向突起6C,6Dのうち少なくとも第1周方向突起6Cが、パーティングラインPLを周方向(X軸方向)に跨ぐように配置され、パーティングラインPLと交差して延びる。また、パーティングラインPL上に位置する周方向突起6C,6Dは、軸方向(Y軸方向)に並んで複数設けられている。
【0140】
また、パーティングラインPLは、軸方向に延びるシボ加工面9を有する。シボ加工面9は、すりガラス状(曇りガラス状)または梨地状の面であり、所定値以上の表面粗さを有する。シボ加工面9は、例えば、マット(艶消し)加工面等と言い換えてもよい。シボ加工面9は、後軸1bを射出成形する際、金型内面のレーザー加工部分が転写されることにより形成される。図示の例では、シボ加工面9が、軸方向に並んで複数設けられる。
パーティングラインPLに交差する周方向突起6C,6Dと、シボ加工面9とは、軸方向において交互に配列する。
【0141】
上記変形例の構成と異なり、例えば、パーティングラインPL上に軸方向に延びる繊維形突起6(軸方向突起6A,6B)が配置されている場合には、射出成形後に一対の金型同士を離間させるときに、パーティングラインPL上の軸方向突起6A,6Bが金型に擦れて、毟れたりバリになったりすることがある。
【0142】
一方、上記変形例の構成のように、パーティングラインPL上に周方向に延びる周方向突起6C,6Dが位置している場合には、周方向突起6C,6Dが延びる方向に沿うように一対の金型同士が離間されるため、上述のような毟れやバリ等の不具合を抑えることができる。このため、軸筒1の外周面に、製造上必要なパーティングラインPLを設けつつも、パーティングラインPL上で織物等の模様が途切れたり不自然になったりすることを抑制でき、デザイン性をより高めることが可能になる。
【0143】
また、パーティングラインPLがシボ加工面9を有するので、軸筒1の外周面に、製造上必要なパーティングラインPLを設けつつも、パーティングラインPLを目立たなくすることができる。このため、デザイン性をより高めることが可能となる。
【0144】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の筆記具20について、
図1及び
図31~
図37を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態と同様である。
【0145】
図31は、第2実施形態の筆記具20の軸筒1の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
図31に示すように、本実施形態の筆記具20は、前述の実施形態で説明した筆記具10とは、繊維形突起6の形状や配置等が異なる。
【0146】
図31及び
図32の各図に示すモノクロ画像は、後軸1b成形用の金型内面にレーザー加工する際のレーザー強度(レーザー出力)を、白黒の濃淡によって表している。また、
図31及び
図32の各図に示すモノクロ画像は、後軸1bの外周面(ベース面)から繊維形突起6が径方向外側に突出する突出量を、白黒の濃淡によって表している。
【0147】
図31に示すように、本実施形態では、後軸1bの外周面に設けられる複数の繊維形突起6が、軸方向に延びる複数の軸方向突起6Eを含む。軸方向に互いに間隔をあけて配置される軸方向突起6Eの列は、周方向に並んで複数列設けられている。周方向に隣り合う一対の軸方向突起6Eの列のうち、一方の列の軸方向突起6Eと、他方の列の軸方向突起6Eとは、軸方向の位置が互いにずらされている。
【0148】
また本実施形態において、複数の軸方向突起6Eは、周方向へ向かうに従い軸方向に向けて延びる傾斜した列をなしている、とも言える。
具体的に、
図31に示す例では、パーティングラインPLの周方向一方側(+X側)に配置される複数の軸方向突起6Eが、周方向一方側へ向かうに従い前側(-Y側)に向けて延びる傾斜した列を構成する。前記傾斜した列は、軸方向に並んで複数列設けられている。
【0149】
また、パーティングラインPLの周方向他方側(-X側)に配置される複数の軸方向突起6Eは、周方向他方側へ向かうに従い前側(-Y側)に向けて延びる傾斜した列を構成する。前記傾斜した列は、軸方向に並んで複数列設けられている。
【0150】
図32に示すように、本実施形態においても繊維形突起6(軸方向突起6E)は、径方向外側(+Z側)から見て所定方向(Y軸方向)に延び、幅方向(X軸方向)に並んで配置される複数のリブ部7と、幅方向に隣り合うリブ部7間、またはリブ部7の幅方向の端部に配置されて所定方向に延びる段差部8と、を有する。
【0151】
複数のリブ部7は、繊維形突起6(6E)の幅方向の外側の両端部に配置される一対の外側リブ部7Aと、外側リブ部7Aよりも幅方向の内側に配置される1つの内側リブ部7Bと、を含む。すなわち、軸方向突起6Eは、リブ部7を計3つ有する。
【0152】
図33~
図37に示す各断面図は、
図32の軸方向突起6EのXXXIII-XXXIII断面~XXXVII-XXXVII断面を表している。
図35に示すように、軸方向突起6Eの所定方向の端部においては、複数のリブ部7の各径方向外側(+Z側)へ向けた突出量が、互いに同じである。
【0153】
また、
図36に示すように、軸方向突起6Eの所定方向の端部と中央部との間に位置する所定の部分においては、内側リブ部7Bの径方向外側へ向けた突出量が、外側リブ部7Aの径方向外側へ向けた突出量よりも大きくされている。すなわち本実施形態においても、内側リブ部7Bは、外側リブ部7Aよりも径方向外側への突出量が大きい部分を有する。
【0154】
また、
図37に示すように、軸方向突起6Eの所定方向の中央部においては、複数のリブ部7の各径方向外側へ向けた突出量が、互いに同じである。
【0155】
以上説明した本実施形態の筆記具20においても、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0156】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0157】
前述の第1、第2実施形態では、径方向外側から見て、繊維形突起6(6A~6E)がそれぞれ、所定方向に延びている例を挙げたが、これに限らない。具体的に、本発明においては、繊維形突起6が備えるリブ部7及び段差部8が、それぞれ所定方向に延びていればよい。このため、特に図示しないが、繊維形突起6は、径方向外側から見て、所定方向の寸法と幅方向の寸法とが同一であってもよい。あるいは、繊維形突起6は、径方向外側から見て、幅方向の寸法が所定方向の寸法より大きくてもよい。
【0158】
また、前述の第1、第2実施形態では、筆記具10,20としてノック式ボールペンを例に挙げたが、これに限らない。筆記具10,20は、ノック式ボールペン以外のボールペンや、あるいは、ボールペン以外のペンであってもよい。
【0159】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の筆記具によれば、軸筒の外周面があたかも織物等で作製されているような感覚を付与することができ、外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0161】
1…軸筒、2…筆記部材、3…グリップ部、4…クリップ、6(6A~6E)…繊維形突起、6A,6B,6E…軸方向突起、6C,6D…周方向突起、7…リブ部、7A…外側リブ部、7B…内側リブ部、8…段差部、9…パーティングラインのシボ加工面、10,20…筆記具、7B1…第1内側リブ部、7B2…第2内側リブ部、O…中心軸、PL…パーティングライン