(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058826
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B43K3/00 F
B43K3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166181
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗山 諒介
(72)【発明者】
【氏名】山田 楓
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宏
(57)【要約】
【課題】外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する筆記具を提供する。
【解決手段】中心軸に沿って軸方向に延びる軸筒1と、軸筒1の内部に配置される筆記部材と、を備え、軸筒1は、軸筒1の外周面に配置されるベース面11と、軸筒1の外周面に配置され、ベース面11よりも径方向外側に突出する凸部6と、を有し、ベース面11は、その表面に光沢面を有し、凸部6は、その表面にシボ加工面を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って軸方向に延びる軸筒と、
前記軸筒の内部に配置される筆記部材と、を備え、
前記軸筒は、
前記軸筒の外周面に配置されるベース面と、
前記軸筒の外周面に配置され、前記ベース面よりも径方向外側に突出する凸部と、を有し、
前記ベース面は、その表面に光沢面を有し、
前記凸部は、その表面にシボ加工面を有する、
筆記具。
【請求項2】
前記凸部は、前記外周面に複数設けられ、
複数の前記凸部は、軸方向に延びる軸方向凸部を含む、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記軸方向凸部は、複数設けられ、
複数の前記軸方向凸部には、周方向、軸方向、または、周方向へ向かうに従い軸方向に向けて延びる傾斜方向に並んで配置される軸方向凸部群が含まれる、
請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
1つまたは複数の前記軸方向凸部群を含む配列により、前記軸筒の外周面に所定の模様が表現される、
請求項3に記載の筆記具。
【請求項5】
前記軸筒は、前記軸筒の外周面に配置されて軸方向に延びるパーティングラインを有し、
前記軸方向凸部は、複数設けられ、
複数の前記軸方向凸部のうち少なくとも1つは、前記パーティングライン上に位置する、
請求項2に記載の筆記具。
【請求項6】
前記軸筒に径方向外側から対向して配置され、軸方向に延びるクリップをさらに備え、
前記軸方向凸部は、複数設けられ、
複数の前記軸方向凸部のうち少なくとも1つは、径方向から見て前記クリップと重なる、
請求項2に記載の筆記具。
【請求項7】
前記凸部は、
前記凸部のうち前記ベース面からの突出量が最も大きい第1突出部と、
前記突出量が前記第1突出部よりも小さい第2突出部と、を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項8】
前記凸部は、前記外周面に複数設けられ、
複数の前記凸部は、
複数の前記凸部のうち前記ベース面からの突出量が最も大きい第1凸部と、
前記突出量が前記第1凸部よりも小さい第2凸部と、を含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項9】
前記凸部は、前記外周面に複数設けられ、
複数の前記凸部は、繊維形状の外観を有する複数の繊維形凸部を含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項10】
前記軸筒の外周面に嵌合するグリップ部をさらに備え、
前記凸部は、前記軸筒の外周面のうち、前記グリップ部に覆われる部分以外の部分に配置される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばボールペンなどの筆記具として、樹脂製等の軸筒と、軸筒の内部に配置される替芯等の筆記部材と、軸筒の外周面に嵌合するゴム製等のグリップ部と、を備えたものが知られている。特許文献1に記載の筆記具は、グリップ部に滑り止め用の凹溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の筆記具においては、よりデザイン性を高めたり、より使用感を向上したりする点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する筆記具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0007】
〔本発明の態様1〕
中心軸に沿って軸方向に延びる軸筒と、前記軸筒の内部に配置される筆記部材と、を備え、前記軸筒は、前記軸筒の外周面に配置されるベース面と、前記軸筒の外周面に配置され、前記ベース面よりも径方向外側に突出する凸部と、を有し、前記ベース面は、その表面に光沢面を有し、前記凸部は、その表面にシボ加工面を有する、筆記具。
【0008】
本発明の筆記具は、軸筒の外周面に、ベース面と、ベース面よりも突出する凸部とが設けられている。ベース面は、艶の有る光沢面を有し、凸部は、艶の無い(つや消しの)シボ加工面を有する。このため、軸筒の外周面に、ベース面と凸部とにより、高低差や光の反射の違いを利用した様々なデザインを付与することが可能になる。
【0009】
具体的に、本発明によれば、軸筒の外周面に、単なる印刷や転写等では得られない、従来に無い材質の質感や、コントラストがより強調された立体感のあるグラフィック表現など、バリエーション豊かで美観に優れたデザインを付与することが可能となる。
【0010】
また、筆記具の使用者等が軸筒の外周面を指先などで触ったときに、軸筒の外周面から突出する凸部に、指先等が接触しやすくされている。凸部はシボ加工面を有するため、さらさらとした気持ち良い感触が得られやすく、また、突出したシボ加工面により、滑り止め効果も得られる。
【0011】
また、軸筒の外周面は、筆記具の使用時に、使用者の手のうち人差し指の付け根と親指の付け根との間に位置する「指間」に接触する。この筆記具では、軸筒の外周面から突出した凸部にシボ加工面が設けられることにより、指間における軸筒の触り心地も良好なものとすることができる。
【0012】
以上より、本発明の筆記具によれば、外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する。
【0013】
〔本発明の態様2〕
前記凸部は、前記外周面に複数設けられ、複数の前記凸部は、軸方向に延びる軸方向凸部を含む、態様1に記載の筆記具。
【0014】
〔本発明の態様3〕
前記軸方向凸部は、複数設けられ、複数の前記軸方向凸部には、周方向、軸方向、または、周方向へ向かうに従い軸方向に向けて延びる傾斜方向に並んで配置される軸方向凸部群が含まれる、態様2に記載の筆記具。
【0015】
この場合、軸筒の外周面に、軸方向に延びる軸方向凸部が設けられるため、軸筒にシャープでスタイリッシュなデザイン等を付与しやすくなり、デザイン性がより高められる。また、筆記具の使用時などに、軸方向凸部(軸方向凸部群)によって、特に周方向への滑り止め効果が得られやすくなる。
【0016】
〔本発明の態様4〕
1つまたは複数の前記軸方向凸部群を含む配列により、前記軸筒の外周面に所定の模様が表現される、態様3に記載の筆記具。
【0017】
この場合、1つまたは複数の軸方向凸部群によって、特に周方向への滑り止め効果が得られつつ、例えば、図柄、図形、文字、記号等の所定の模様を軸筒の外周面に付与することができる。したがって、筆記具の使用感及びデザイン性がより高められる。
【0018】
〔本発明の態様5〕
前記軸筒は、前記軸筒の外周面に配置されて軸方向に延びるパーティングラインを有し、前記軸方向凸部は、複数設けられ、複数の前記軸方向凸部のうち少なくとも1つは、前記パーティングライン上に位置する、態様2から4のいずれか1つに記載の筆記具。
【0019】
パーティングラインは、例えば、樹脂製の軸筒を一対の金型間において射出成形する場合に、一対の金型同士の対向面(分割面)に沿って、軸筒の外周面に軸方向に延びて配置される。
本発明の上記構成では、軸筒の外周面に、製造上必要なパーティングラインを設けつつ、このパーティングライン上にも軸方向凸部を配置している。このため、例えばパーティングライン上において、軸筒の外周面上の模様が途切れたり不自然になったりすることを抑制でき、デザイン性をより高めることが可能になる。
【0020】
〔本発明の態様6〕
前記軸筒に径方向外側から対向して配置され、軸方向に延びるクリップをさらに備え、前記軸方向凸部は、複数設けられ、複数の前記軸方向凸部のうち少なくとも1つは、径方向から見て前記クリップと重なる、態様2から5のいずれか1つに記載の筆記具。
【0021】
この場合、クリップを利用して、筆記具を使用者の衣服などのポケット等に引っ掛けて保持したり、あるいはポケット等から取り外したりする際に、クリップと軸方向凸部との間でポケット等の生地が滑りやすくされ、かつ、この生地が安定して挟持される。筆記具をポケット等に引っ掛けやすく、また取り外しやすいため、使用感が良い。
【0022】
〔本発明の態様7〕
前記凸部は、前記凸部のうち前記ベース面からの突出量が最も大きい第1突出部と、前記突出量が前記第1突出部よりも小さい第2突出部と、を有する、態様1から6のいずれか1つに記載の筆記具。
【0023】
この場合、凸部が、高低差を有する第1突出部及び第2突出部を備えるため、軸筒により立体感のある自由度の高いデザインを付与することができる。
【0024】
〔本発明の態様8〕
前記凸部は、前記外周面に複数設けられ、複数の前記凸部は、複数の前記凸部のうち前記ベース面からの突出量が最も大きい第1凸部と、前記突出量が前記第1凸部よりも小さい第2凸部と、を含む、態様1から7のいずれか1つに記載の筆記具。
【0025】
この場合、ベース面からの突出量(高さ寸法)が互いに異なる複数種類の凸部(第1凸部及び第2凸部)が設けられることで、軸筒により立体感のある自由度の高いデザインを付与することができる。
【0026】
〔本発明の態様9〕
前記凸部は、前記外周面に複数設けられ、複数の前記凸部は、繊維形状の外観を有する複数の繊維形凸部を含む、態様1から8のいずれか1つに記載の筆記具。
【0027】
この場合、軸筒の外周面に複数の繊維形凸部が設けられることによって、軸筒の外周面が、あたかも実際の糸で織り込まれた織物や布地、あるいはイグサなどで織り込まれた畳等により作製されているような視覚的及び触覚的な感覚を、筆記具の使用者等に与えることができる。筆記具の外観のデザイン性や使用感を、より高めることができる。
【0028】
〔本発明の態様10〕
前記軸筒の外周面に嵌合するグリップ部をさらに備え、前記凸部は、前記軸筒の外周面のうち、前記グリップ部に覆われる部分以外の部分に配置される、態様1から9のいずれか1つに記載の筆記具。
【0029】
この場合、グリップ部によって筆記時などの滑り止め機能が得られ、かつ、凸部がグリップ部によって塞がれることはない。このため、上述した作用効果がより安定して得られる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の前記態様の筆記具によれば、外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、第1~第3実施形態の筆記具を示す側面図であり、軸筒の外周面に配置される凸部及びパーティングライン等の図示は省略している。
【
図2】
図2は、第1実施形態の筆記具の軸筒の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の筆記具の軸筒の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態の筆記具の軸筒の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
【
図5】
図5は、
図4のV部を拡大して示す図であり、具体的には、繊維形凸部(軸方向凸部)を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図5のVII-VII断面を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図5のVIII-VIII断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の筆記具10について、
図1及び
図2を参照して説明する。本実施形態の筆記具10は、例えばボールペン等であり、具体的には、ノック式ボールペン等である。
【0033】
図1に示すように、筆記具10は、中心軸Oを中心とする概略円柱状をなしている。筆記具10は、中心軸Oに沿って延びる軸筒1と、軸筒1の内部に配置される筆記部材2と、軸筒1の外周面に嵌合するグリップ部3と、クリップ4と、付勢部材(図示省略)と、ノック機構(図示省略)と、押込み部5と、を備える。軸筒1、筆記部材2、グリップ部3、付勢部材、ノック機構及び押込み部5は、中心軸Oを共通軸として互いに同軸に配置されている。
【0034】
本実施形態で用いる方向の定義について、説明する。
本実施形態では、筆記具10の中心軸Oが延びる方向、つまり中心軸Oに沿う方向を、軸方向と呼ぶ。軸方向において、筆記部材2のペン先を構成するチップ21と、押込み部5とは、互いに異なる位置に配置されている。軸方向のうち、押込み部5からチップ21へ向かう方向を前側と呼び、チップ21から押込み部5へ向かう方向を後側と呼ぶ。このため、軸方向は前後方向と言い換えてもよい。各図において軸方向(前後方向)は、Y軸方向に相当する。前側は-Y側に相当し、後側は+Y側に相当する。
【0035】
中心軸Oと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Oから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。各図において径方向は、Z軸方向に相当する。径方向内側は-Z側に相当し、径方向外側は+Z側に相当する。
【0036】
中心軸O回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。各図において周方向は、X軸方向に相当する。本実施形態では、筆記具10を後側(+Y側)から見て、中心軸Oを中心とする反時計回りの方向である周方向一方側が、+X側に相当し、中心軸Oを中心とする時計回りの方向である周方向他方側が、-X側に相当する。
【0037】
筆記具10の各構成要素について、説明する。
図1に示すように、軸筒1は、中心軸Oを中心とする円筒状であり、軸方向に延びる。軸筒1は、例えばポリカーボネート等を主成分とする樹脂製である。軸筒1は、例えば、複数の筒状部材を螺着、嵌合及び接着するなどにより組み合わせて構成されている。特に図示しないが、軸筒1の各構成部材は、一対の金型と中子との間に溶融した樹脂材料を射出し固化させる、いわゆる射出成形等により作製される。
【0038】
軸筒1は、例えば無色の透明な部材により構成される部分を有する。また軸筒1は、例えば黒色等の不透明な部材により構成される部分を有していてもよい。すなわち、軸筒1は、透明な部材及び不透明な部材の少なくともいずれかを備えている。なお、前記透明な部材は、所定の色が付与された透明な部材であってもよい。本実施形態において「透明」とは、「半透明」を含む概念である。より詳しくは、筆記具10を径方向外側から見て、軸筒1の内部に収容される筆記部材2が、軸筒1を通して目視により透けて見える場合を「透明」と呼ぶ。また、前記不透明な部材は、黒色以外の所定の色が付与された不透明な部材であってもよい。
【0039】
軸筒1は、前軸1aと、前軸1aの後側に配置される後軸1bと、を有する。前軸1a及び後軸1bは、それぞれ円筒状をなしており、軸方向に並んで配置される。前軸1aの後端部と後軸1bの前端部とは、螺着等により着脱可能に固定されている。
【0040】
前軸1aの前端部は、前側へ向かうに従い縮径するテーパ筒状である。前軸1aの前端部は、テーパ筒部と言い換えてもよい。前軸1aは、テーパ筒部に配置されて前側に開口する前端開口部1cを有する。後軸1bは、後軸1bの後端部に配置されて後側に開口する後端開口部1dを有する。
【0041】
また前軸1aは、前軸1aの軸方向の後端部に配置される雄ネジ部(図示省略)を有する。この雄ネジ部は、後述するグリップ部3よりも後側に突出する。後軸1bは、後軸1bの軸方向の前端部に配置される雌ネジ部(図示省略)を有する。この雌ネジ部は、前軸1aの雄ネジ部と螺着される。
【0042】
図2は、後軸1b(軸筒1)の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
図2に示すように、後軸1bすなわち軸筒1は、軸筒1の外周面に配置されるベース面11と、軸筒1の外周面に配置され、ベース面11よりも径方向外側に突出する凸部6と、パーティングラインPLと、を有する。具体的に、凸部6及びパーティングラインPLは、後軸1bの外周面の少なくとも一部に配置される。なお
図1においては、凸部6及びパーティングラインPLの図示を省略している。ベース面11、凸部6及びパーティングラインPLの詳細な構成については、別途後述する。
【0043】
筆記部材2は、替芯またはレフィル等と言い換えてもよい。
図1において、筆記部材2は、軸筒1の内部に着脱可能に取り付けられる。筆記部材2は、軸筒1を複数のパーツ(本実施形態では前軸1aと後軸1b)に分解することにより、軸筒1の内部から取り外して交換可能である。
【0044】
図1に示すように、筆記部材2は、チップ21と、チップ21の後端部に接続されるインク貯留筒(図示省略)と、を有する。チップ21は、チップ21の前端部に配置されるボールと、ボールを保持するホルダーと、を有する。
【0045】
本実施形態では、筆記具10がノック式ボールペンである。このため筆記部材2は、チップ21が軸筒1の前端開口部1cから前側に突出する使用位置と、チップ21を含めた筆記部材2全体が軸筒1内に収納される収納位置と、の間で軸方向に移動可能である。
【0046】
特に図示しないが、インク貯留筒は、軸筒1の内部に配置される。インク貯留筒は、中心軸Oを中心とする筒状であり、軸方向に延びる。インク貯留筒の内部には、例えばゲルインク等のインクと、インクの後側に配置されてインクの蒸発や逆流(後側への流動)を抑えるグリスと、が収容される。インク貯留筒は、カートリッジ等と言い換えてもよい。
【0047】
グリップ部3は、例えばエラストマーやゴム等の弾性変形可能な弾性部材により構成される。ただしこれに限らず、グリップ部3は、弾性部材以外の樹脂部材等により構成されていてもよい。グリップ部3は、中心軸Oを中心とする円筒状であり、軸方向に延びる。グリップ部3は、前軸1aの外周面に嵌合する。具体的に、グリップ部3は、前軸1aの外周面のうち、軸方向において前端部(テーパ筒部)と後端部(雄ネジ部)との間に位置する部分に嵌合する。
【0048】
クリップ4は、軸筒1の軸方向の後端部に接続され、軸筒1の外周面よりも径方向外側に突出する。具体的に、クリップ4は、後軸1bの外周面の後端部に接続されており、この接続部分から前側に向けて、軸方向に延びている。クリップ4は、後軸1bすなわち軸筒1の外周面に、径方向外側から対向して配置される。クリップ4の一部は、軸筒1の外周面に接触していてもよい。クリップ4は、後軸1bが有する複数の構成部材のうちの1つと、単一の部材により一体に形成されていてもよい。クリップ4は、弾性変形可能な樹脂製または金属製等である。
【0049】
クリップ4を利用することにより、使用者は、筆記具10を衣服などのポケット等に引っ掛けて保持することができる。また、クリップ4が設けられることで、筆記具10が机上等において意図せず転がるようなことが抑えられる。
【0050】
特に図示しないが、付勢部材は、例えば圧縮コイルバネ等である。付勢部材は、中心軸Oを中心とする螺旋状をなす。付勢部材は、軸筒1の内部に配置され、筆記部材2を後側へ向けて付勢する。本実施形態では付勢部材が、前軸1aの内部に収容される。
【0051】
押込み部5は、中心軸Oを中心とする筒状であり、軸方向に延びる。押込み部5は、例えば、後端部が閉じられた有頂筒状等である。押込み部5は、軸筒1の後端開口部1d内に挿入される。押込み部5の少なくとも一部(後端部)は、後端開口部1dから後側に突出する。
【0052】
特に図示しないが、ノック機構は、軸筒1の内部に設けられる。使用者が、付勢部材の付勢力に抗して押込み部5を前側へ押し込み、この押し込みを解除する操作(ノック操作)を行うことにより、ノック機構は、筆記部材2を上述した使用位置と収納位置とに切り替え可能に構成されている。詳しくは、使用者がノック操作を一回行う毎に、筆記部材2は、使用位置と収納位置とに交互に軸方向に移動する。本実施形態のノック機構としては、従来のノック式ボールペンが備える、例えば回転カム等を含むノック機構の構造を採用することができる。
【0053】
次に、
図2を参照し、ベース面11、凸部6及びパーティングラインPLについて、詳細に説明する。
図2に示すように、ベース面11、凸部6及びパーティングラインPLは、軸筒1のうち後軸1bの外周面に配置されている。後軸1bは、透明な部材により構成されていてもよく、不透明な部材により構成されていてもよい。
【0054】
特に図示しないが、ベース面11、凸部6及びパーティングラインPLは、軸筒1のうち前軸1aの外周面にも配置されていてもよい。ただしこの場合、凸部6は、前軸1aの外周面のうち、グリップ部3が嵌合する部分以外の部分(例えばテーパ筒部など)に配置される。
すなわち、凸部6は、軸筒1の外周面のうち、グリップ部3に覆われる部分以外の部分に配置される。
【0055】
本実施形態では、ベース面11及び凸部6は、後軸1bを射出成形する際に用いられる図示しない一対の金型の内面の形状が転写されることにより、後軸1bの外周面に形成される。詳しくは、後軸1bを射出成形するための一対の金型の内面には、レーザー加工によって図示しない精密な凹状の彫刻(レーザー彫刻)が施されており、このレーザー彫刻の凹形状が、射出成形時に後軸1bの外周面に凸形状(前記凹形状が反転した形状)として転写される。これにより、軸筒1の外周面には、精密な凸状の突起である凸部6が形成される。
【0056】
このため、凸部6は、軸筒1の外周面から径方向外側に突出して設けられている。なお本実施形態においては、後述する複数の凸部6のうち少なくとも1つが、パーティングラインPL上に配置されている。
【0057】
パーティングラインPLは、後軸1b(軸筒1)の外周面に配置され、軸方向に延びる。
図2に示す符号Cは、パーティングラインPLの周方向の中心線Cを表している。パーティングラインPLの周方向の寸法は、例えば、1mm以下である。本実施形態では、パーティングラインPLの周方向の寸法が、0.6mm以下であり、具体的には、0.2~0.4mm程度である。
【0058】
パーティングラインPLは、後軸1bの外周面に、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態においてパーティングラインPLは、周方向に等ピッチで一対設けられる。すなわち、一対のパーティングラインPLは、軸筒1の中心軸Oを中心として、互いに180°回転対称となる位置に配置される。
【0059】
各パーティングラインPLは、後軸1bを射出成形するための図示しない一対の金型同士の対向面(分割面)に沿って形成される。詳しくは、パーティングラインPLは、後軸1b成形用の金型の内面のうち、周方向の端部に配置されて軸方向に延びる端縁部分の形状が、射出成形時に後軸1bの外周面に転写されることにより形成される。
本実施形態では、後軸1bの外周面に成形されたパーティングラインPLは、金型内面にレーザー彫刻されたレーザー加工部分が転写されているため、その表面に凸部6が形成されている。
【0060】
ベース面11は、基準面等と言い換えてもよい。ベース面11は、後軸1bを射出成形するための一対の金型の内面のうち、レーザー加工が施されていない部分、すなわちレーザー非加工部分の形状が、射出成形時に後軸1bの外周面に転写されることにより形成される。なお、後軸1bの外周面に成形されたベース面11は、前記レーザー非加工部分が転写されているため、艶のある光沢面とされている。すなわち、ベース面11は、その表面に光沢面を有する。ベース面11は、例えば、中心軸Oを中心とする図示しない仮想円筒の外周面の一部を構成するように形成される。ベース面11は、後軸1b(軸筒1)の外周面のうち、隣り合う凸部6間などに配置される。
【0061】
軸筒1の外周面(ベース面11)から凸部6が径方向外側へ突出する突出量の最大値(最大突出寸法)は、例えば、100μm以下である。凸部6の突出量は、後軸1b成形用の金型内面にレーザー加工する際のレーザー強度(レーザー出力)を適宜調整することにより設定される。本実施形態では、凸部6の最大突出寸法が、例えば50μm程度である。また凸部6の突出量は、(1つの)凸部6の全域にわたって略一定である。
【0062】
凸部6は、その表面にシボ加工面を有する。シボ加工面は、すりガラス状(曇りガラス状)または梨地状の面であり、所定値以上の表面粗さを有する。シボ加工面は、例えば、マット(艶消し)加工面等と言い換えてもよい。本実施形態では、凸部6の表面全体に、シボ加工面が形成されている。
【0063】
詳しくは、後軸1b成形用の金型の内面にレーザー加工を施すことにより、金型内面のレーザー加工部分は、レーザー彫刻のデザインよりも細かな微視的な観点において、その表面が所定値以上の表面粗さに荒らされている。後軸1bを射出成形する際、金型内面のレーザー加工部分が転写されて凸部6が形成されるため、凸部6の表面は、微視的な観点において所定値以上の表面粗さに荒らされており、よってシボ加工面となる。
【0064】
凸部6は、後軸1b(軸筒1)の外周面に複数設けられる。複数の凸部6は、軸方向(Y軸方向)に延びる軸方向凸部6A,6Bを含む。軸方向凸部6A,6Bは、複数設けられる。特に図示しないが、複数の軸方向凸部6A,6Bのうち少なくとも1つは、径方向から見てクリップ4と重なる。
【0065】
複数の軸方向凸部6A,6Bは、軸方向に延びる第1軸方向凸部6Aと、軸方向に延び、第1軸方向凸部6Aとは形状または寸法が異なる第2軸方向凸部6Bと、を含む。第1軸方向凸部6A及び第2軸方向凸部6Bは、それぞれ、複数設けられる。
【0066】
複数の第1軸方向凸部(軸方向凸部)6Aには、周方向へ向かうに従い軸方向に向けて延びる傾斜方向に並んで配置される軸方向凸部群61,62が含まれる。なお上記「傾斜方向」とは、
図2に示すように軸筒1の外周面を径方向外側(+Z側)から見て、周方向(X軸方向)及び軸方向(Y軸方向)に対して傾斜する方向であることを意味する。
【0067】
より詳しくは、複数の第1軸方向凸部6Aには、周方向一方側(+X側)へ向かうに従い前側(-Y側)に向けて延びる傾斜方向に並んで配置される右下がり軸方向凸部群61と、周方向他方側(-X側)へ向かうに従い前側(-Y側)に向けて延びる傾斜方向に並んで配置される左下がり軸方向凸部群62と、が含まれる。各軸方向凸部群61,62はそれぞれ、複数の第1軸方向凸部6Aが各傾斜方向に配列することにより構成される。
【0068】
なお、右下がり軸方向凸部群61を、一の軸方向凸部群61または第1の軸方向凸部群61と呼び、左下がり軸方向凸部群62を、他の軸方向凸部群62または第2の軸方向凸部群62と呼んでもよい。
また、右下がり軸方向凸部群61が延びる傾斜方向を、一の傾斜方向または第1の傾斜方向と言い換えてもよい。左下がり軸方向凸部群62が延びる傾斜方向を、他の傾斜方向または第2の傾斜方向と言い換えてもよい。
【0069】
右下がり軸方向凸部群61は、互いに軸方向及び周方向に間隔をあけて、複数設けられる。複数の右下がり軸方向凸部群61同士は、互いに平行に配置される。左下がり軸方向凸部群62は、互いに軸方向及び周方向に間隔をあけて、複数設けられる。複数の左下がり軸方向凸部群62同士は、互いに平行に配置される。
【0070】
右下がり軸方向凸部群61と左下がり軸方向凸部群62とは、互いに交差する。右下がり軸方向凸部群61及び左下がり軸方向凸部群62は、互いの交差部分に配置される、1つまたは複数の共通する軸方向凸部6Aを有する。
【0071】
本実施形態において、上記交差部分に配置される1つまたは複数の軸方向凸部6Aと、上記交差部分以外の部分に配置される他の軸方向凸部6Aとは、互いに軸方向寸法が異なる。すなわち、複数の軸方向凸部6Aには、互いに軸方向寸法が異なる複数種類の軸方向凸部6Aが含まれる。
【0072】
1つまたは複数の軸方向凸部群61,62を含む配列により、軸筒1の外周面には、所定の模様が表現される。上記「所定の模様」には、例えば、図柄、図形、文字、記号等が含まれる。
図2に示すように本実施形態では、軸筒1の外周面に、軸方向凸部群61,62を含む配列により、菱形を組み合わせた構造体の模様が表現されている。より詳しくは、軸方向凸部群61,62及び後述する第2軸方向凸部6Bを含む配列によって、幾何学系の構成と奥行きを備えた立体的なデザイン(所定の模様)が、軸筒1の外周面に表現されている。
【0073】
第2軸方向凸部6Bの軸方向寸法は、第1軸方向凸部6Aの軸方向寸法よりも大きい。また、第2軸方向凸部6Bの周方向寸法は、第1軸方向凸部6Aの周方向寸法よりも大きい。第2軸方向凸部6Bは、周方向に並んで複数設けられる。周方向に隣り合う一対の第2軸方向凸部6B間には、複数の第1軸方向凸部6Aが配置されている。
【0074】
複数の第2軸方向凸部(軸方向凸部)6Bのうち少なくとも1つは、パーティングラインPL上に位置する。詳しくは、複数の第2軸方向凸部6Bのうち、中心軸Oを中心として互いに180°回転対称となる位置に配置される一対の第2軸方向凸部6Bが、一対のパーティングラインPL上に配置されている。
【0075】
以上説明した本実施形態の筆記具10は、軸筒1の外周面に、ベース面11と、ベース面11よりも突出する凸部6とが設けられている。ベース面11は、艶の有る光沢面を有し、凸部6は、艶の無い(つや消しの)シボ加工面を有する。このため、軸筒1の外周面に、ベース面11と凸部6とにより、高低差や光の反射の違いを利用した様々なデザインを付与することが可能になる。
【0076】
具体的に、本実施形態によれば、軸筒1の外周面に、単なる印刷や転写等では得られない、従来に無い材質の質感や、コントラストがより強調された立体感のあるグラフィック表現など、バリエーション豊かで美観に優れたデザインを付与することが可能となる。
【0077】
また、筆記具10の使用者等が軸筒1の外周面を指先などで触ったときに、軸筒1の外周面から突出する凸部6に、指先等が接触しやすくされている。凸部6はシボ加工面を有するため、さらさらとした気持ち良い感触が得られやすく、また、突出したシボ加工面により、滑り止め効果も得られる。
【0078】
また、軸筒1の外周面は、筆記具10の使用時に、使用者の手のうち人差し指の付け根と親指の付け根との間に位置する「指間」に接触する。この筆記具10では、軸筒1の外周面から突出した凸部6にシボ加工面が設けられることにより、指間における軸筒1の触り心地も良好なものとすることができる。
【0079】
以上より、本実施形態の筆記具10によれば、外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する。
【0080】
また本実施形態では、凸部6は、軸筒1の外周面に複数設けられ、複数の凸部6は、軸方向に延びる軸方向凸部6A,6Bを含む。また、軸方向凸部6A,6Bは複数設けられ、複数の軸方向凸部6Aには、軸方向凸部群61,62が含まれる。
この場合、軸筒1の外周面に、軸方向に延びる軸方向凸部6A,6Bが設けられるため、軸筒1にシャープでスタイリッシュなデザイン等を付与しやすくなり、デザイン性がより高められる。また、筆記具10の使用時などに、軸方向凸部6A(軸方向凸部群61,62)及び軸方向凸部6Bによって、特に周方向への滑り止め効果が得られやすくなる。
【0081】
また本実施形態では、1つまたは複数の軸方向凸部群61,62を含む配列により、軸筒1の外周面に所定の模様が表現される。
この場合、1つまたは複数の軸方向凸部群61,62によって、特に周方向への滑り止め効果が得られつつ、例えば、図柄、図形、文字、記号等の所定の模様を軸筒1の外周面に付与することができる。したがって、筆記具10の使用感及びデザイン性がより高められる。
【0082】
また本実施形態では、複数の軸方向凸部6Bのうち少なくとも1つが、パーティングラインPL上に位置する。
パーティングラインPLは、本実施形態のように樹脂製の軸筒1を一対の金型間において射出成形する場合に、一対の金型同士の対向面(分割面)に沿って、軸筒1の外周面に軸方向に延びて配置される。
本実施形態の上記構成では、軸筒1の外周面に、製造上必要なパーティングラインPLを設けつつ、このパーティングラインPL上にも軸方向凸部6Bを配置している。このため、例えばパーティングラインPL上において、軸筒1の外周面上の模様が途切れたり不自然になったりすることを抑制でき、デザイン性をより高めることが可能になる。
【0083】
また本実施形態では、複数の軸方向凸部6A,6Bのうち少なくとも1つが、径方向から見てクリップ4と重なる。
この場合、クリップ4を利用して、筆記具10を使用者の衣服などのポケット等に引っ掛けて保持したり、あるいはポケット等から取り外したりする際に、クリップ4と軸方向凸部6A,6Bとの間でポケット等の生地が滑りやすくされ、かつ、この生地が安定して挟持される。筆記具10をポケット等に引っ掛けやすく、また取り外しやすいため、使用感が良い。
【0084】
また本実施形態において、凸部6は、軸筒1の外周面のうち、グリップ部3に覆われる部分以外の部分に配置される。
この場合、グリップ部3によって筆記時などの滑り止め機能が得られ、かつ、凸部6がグリップ部3によって塞がれることはない。このため、上述した作用効果がより安定して得られる。
【0085】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の筆記具20について、
図1及び
図3を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態と同様である。
【0086】
図3は、第2実施形態の筆記具20の軸筒1の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
図3に示すように、本実施形態の筆記具20は、前述の実施形態で説明した筆記具10とは、凸部6の形状、配置、及び、凸部6の各部分における突出量等が異なる。
【0087】
本実施形態においても、凸部6は、後軸1b(軸筒1)の外周面に複数設けられる。複数の凸部6は、軸方向(Y軸方向)に延びる軸方向凸部6Cを含む。軸方向凸部6Cは、複数設けられる。複数の軸方向凸部6Cは、周方向に並んで配置される。特に図示しないが、複数の軸方向凸部6Cのうち少なくとも1つは、径方向から見てクリップ4と重なる。
【0088】
各軸方向凸部6Cは、環状部63と、線状部64と、を有する。
環状部63は、例えば多角形状をなしており、本実施形態では六角形状をなす。ただしこれに限らず、環状部63は、例えば円形状、楕円形状、長円形状等であってもよい。環状部63の内側には、ベース面11の一部が配置される。環状部63は、軸方向凸部6Cに、軸方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
【0089】
本実施形態において、線状部64は、軸方向に延びる直線状をなしている。ただしこれに限らず、線状部64は、例えば曲線状、折れ線状、波線状等であってもよい。あるいは、線状部64は、中心軸Oに対して傾斜する方向に延びる直線状等であってもよい。線状部64は、軸方向凸部6Cに、軸方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
【0090】
環状部63と線状部64とは、軸方向において交互に並んで配置される。また、軸方向に隣り合う環状部63と線状部64とは、互いの軸方向の端部同士(対向する端部同士)が接続されている。
【0091】
本実施形態において、周方向に隣り合う軸方向凸部6Cは、互いの環状部63同士が周方向に並んで配置され、また、互いの線状部64同士が周方向に並んで配置されている。ただしこれに限らず、特に図示しないが、周方向に隣り合う軸方向凸部6Cは、互いの環状部63と線状部64とが周方向に並んで配置されていてもよい。
【0092】
ここで、
図3は、後軸1b成形用の金型内面にレーザー加工する際のレーザー強度(レーザー出力)を、モノクロ画像の白黒の濃淡(黒、灰、白)によって表している図でもある。
図3のモノクロ画像に表されるように、金型内面におけるレーザー加工部分のレーザー強度は、各部において異なる。
【0093】
金型内面のレーザー加工部分の形状は、反転されてそのまま後軸1bの外周面に転写される。このため、
図3に示すモノクロ画像は、後軸1bの外周面(ベース面11)から凸部6が径方向外側に突出する突出量を、白黒の濃淡によって表している、とも言える。
具体的に、
図3に示すモノクロ画像において、白黒の濃淡が濃い部分(黒色部分)ほど、凸部6の突出量は大きくなる。
【0094】
本実施形態において、凸部6(軸方向凸部6C)は、凸部6のうちベース面11からの突出量が最も大きい第1突出部65と、前記突出量が第1突出部65よりも小さい第2突出部66と、を有する。本実施形態では、第1突出部65の前記突出量が、例えば50μm程度である。また、第2突出部66の前記突出量が、例えば25μm程度である。
【0095】
第1突出部65は、
図3のモノクロ画像において、黒色で示される部分である。本実施形態では第1突出部65が、軸方向凸部6Cの軸方向全長にわたって配置されている。すなわち、第1突出部65は、軸方向凸部6Cの環状部63及び線状部64にわたって配置されている。
【0096】
第2突出部66は、
図3のモノクロ画像において、灰色で示される部分である。本実施形態では第2突出部66が、軸方向凸部6Cのうち環状部63に配置されている。
なお、
図3のモノクロ画像において、白色で示される部分は、ベース面11である。
【0097】
第2突出部66は、第1突出部65のうち環状部63に位置する部分(本実施形態では六角形の部分)の形状を、軸方向にずらしたような形状に形成されている。具体的に、本実施形態では第2突出部66が、第1突出部65の環状部63の前端部(六角形のうち前側に位置する2辺)の形状を、後側(+Y側)にずらして前記前端部に隣接配置したように形成される部分と、第1突出部65の環状部63の後端部(六角形のうち後側に位置する2辺)の形状を、後側にずらして前記後端部に隣接配置したように形成される部分と、を含む。
【0098】
また本実施形態では、パーティングラインPL上に凸部6が位置していない。このため、パーティングラインPLの表面は、ベース面11の一部により構成される。すなわち、前述の第1実施形態では、パーティングラインPLの表面(凸部6の表面)がシボ加工面とされていたのに対し、本実施形態では、パーティングラインPLの表面(ベース面11の表面)が光沢面とされている。
【0099】
以上説明した本実施形態の筆記具20においても、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
さらに本実施形態では、凸部6(軸方向凸部6C)が、高低差を有する第1突出部65及び第2突出部66を備えるため、軸筒1により立体感のある自由度の高いデザインを付与することができる。
【0100】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態の筆記具30について、
図1及び
図4~
図10を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態と同様である。
【0101】
図4は、第3実施形態の筆記具30の軸筒1の外周面を展開して示す平面図、及び、この平面図の一部を拡大して示す拡大図である。
図4に示すように、本実施形態の筆記具30は、前述の実施形態で説明した筆記具10,20とは、凸部6の形状、配置、及び、凸部6の各部分における突出量等が異なる。
【0102】
本実施形態においても、凸部6は、後軸1b(軸筒1)の外周面に複数設けられる。複数の凸部6は、軸方向(Y軸方向)に延びる軸方向凸部6Eを含む。軸方向凸部6Eは、複数設けられる。特に図示しないが、複数の軸方向凸部6Eのうち少なくとも1つは、径方向から見てクリップ4と重なる。
【0103】
図4及び
図5の各図に示すモノクロ画像は、後軸1b成形用の金型内面にレーザー加工する際のレーザー強度(レーザー出力)を、白黒の濃淡によって表している。各図のモノクロ画像に表されるように、金型内面におけるレーザー加工部分のレーザー強度は、段階的にまたは徐々に(グラデーション状に)変化させられており、これにより金型の内面には、精密なレーザー彫刻(精密彫刻)が施される。
【0104】
また、
図4及び
図5の各図に示すモノクロ画像は、後軸1bの外周面(ベース面)から凸部6が径方向外側に突出する突出量を、白黒の濃淡によって表している。すなわち、凸部6の突出量は、凸部6の各部において、段階的にまたは徐々に(グラデーション状に)変化させられている。
【0105】
より詳しくは、各図に示すモノクロ画像において、白黒の濃淡が濃い部分(黒色100%に近い部分)ほど、凸部6の突出量は大きくなる。また、白黒の濃淡が薄い部分(白色100%に近い部分、言い換えると黒色0%に近い部分)ほど、凸部6の突出量は小さくなる。
【0106】
軸筒1の外周面(ベース面11)から凸部6が径方向外側へ突出する突出量の最大値(最大突出寸法)は、例えば、100μm以下である。本実施形態では、凸部6の最大突出寸法が、例えば50μm程度である。より詳しくは、
図4及び
図5のモノクロ画像に示す凸部6において、最も濃淡が濃い部分(黒色100%)での突出量が50μm程度(最大突出量)に相当し、最も濃淡が薄い部分(黒色0%)での突出量が0μm程度に相当する。
【0107】
図4に示すように、複数の軸方向凸部6Eは、軸方向に互いに間隔をあけて配置される軸方向凸部6Eの列を含む。前記軸方向凸部6Eの列は、周方向に並んで複数列設けられている。周方向に隣り合う一対の軸方向凸部6Eの列のうち、一方の列の軸方向凸部6Eと、他方の列の軸方向凸部6Eとは、軸方向の位置が互いにずらされている。
【0108】
また本実施形態において、複数の軸方向凸部6Eは、周方向へ向かうに従い軸方向に向けて延びる傾斜した列を含んでいる、とも言える。すなわち、前述の第1実施形態と同様に、本実施形態においても、複数の軸方向凸部6Eには、周方向へ向かうに従い軸方向に向けて延びる傾斜方向に並んで配置される軸方向凸部群61,62が含まれる。
【0109】
具体的に、
図4に示す例では、パーティングラインPLの周方向一方側(+X側)に配置される軸方向凸部6Eの傾斜した列(右下がり軸方向凸部群61)が、周方向一方側へ向かうに従い前側(-Y側)に向けて延びている。前記軸方向凸部6Eの傾斜した列は、軸方向に並んで複数列設けられている。
【0110】
また、パーティングラインPLの周方向他方側(-X側)に配置される軸方向凸部6Eの傾斜した列(左下がり軸方向凸部群62)は、周方向他方側へ向かうに従い前側(-Y側)に向けて延びている。前記軸方向凸部6Eの傾斜した列は、軸方向に並んで複数列設けられている。
【0111】
本実施形態では、右下がり軸方向凸部群61と左下がり軸方向凸部群62とが、周方向に交互に並んで配置されることにより、軸筒1の外周面に、複数の凸部6によるヘリンボーン柄(所定の模様)が付与されている。
【0112】
図5に示すように、本実施形態において凸部6(軸方向凸部6E)は、径方向外側(+Z側)から見て所定方向(Y軸方向)に延び、所定方向と直交する幅方向(X軸方向)に並んで配置される複数のリブ部7と、幅方向に隣り合うリブ部7間、またはリブ部7の幅方向の端部に配置されて所定方向に延びる段差部8と、を有する。
本実施形態において、凸部6(6E)が有する複数のリブ部7は、幅方向に互いに隣接して配置される。具体的に、幅方向に隣り合うリブ部7同士は、互いに対向する幅方向の端部同士が接続されている。また、段差部8は、凸部6(6E)に複数設けられる。各段差部8は、各リブ部7の幅方向を向く側面に配置されている。
【0113】
なお本実施形態では、凸部6(6E)の所定方向の寸法が、幅方向の寸法よりも大きい。このため、凸部6(6E)において、所定方向を長手方向と呼び、幅方向を短手方向と呼んでもよい。
【0114】
図5においてモノクロ画像の濃淡で示すように、凸部6(6E)は、所定方向(長手方向)の両端部における径方向外側(+Z側)への突出量に比べて、所定方向の両端部間に位置する中間部分における径方向外側への突出量が、大きくされている。具体的に、凸部6(6E)は、所定方向の両端部から中央部へ向かうに従い径方向外側への突出量が大きくなり、所定方向の中央部において前記突出量が最大となる。
【0115】
複数のリブ部7のうち少なくとも1つは、所定方向(長手方向)の両端部から中央部へ向かうに従い、径方向外側へ向けた突出量が大きくなる。本実施形態では、凸部6(6E)が備えるリブ部7のすべてが、所定方向の両端部から中央部へ向かうに従い、前記突出量が大きくなる。
【0116】
なお、特に図示しないが、複数のリブ部7の中には、所定方向の全長にわたって前記突出量が一定とされたものが含まれていてもよい。また、複数のリブ部7の中には、所定方向の両端部から中央部へ向かうに従い、前記突出量が小さくなるものが含まれていてもよい。
【0117】
複数のリブ部7は、凸部6(6E)の幅方向の外側の両端部に配置される一対の外側リブ部7Aと、外側リブ部7Aよりも幅方向の内側に配置される1つの内側リブ部7Bと、を含む。すなわち、軸方向凸部6Eは、リブ部7を計3つ有する。
【0118】
図6~
図10に示す各断面図は、
図5の軸方向凸部6EのVI-VI断面~X-X断面を表している。
図8に示すように、軸方向凸部6Eの所定方向の端部においては、複数のリブ部7の各径方向外側(+Z側)へ向けた突出量が、互いに同じである。
【0119】
また、
図9に示すように、軸方向凸部6Eの所定方向の端部と中央部との間に位置する所定の部分においては、内側リブ部7Bの径方向外側へ向けた突出量が、外側リブ部7Aの径方向外側へ向けた突出量よりも大きくされている。すなわち本実施形態において、内側リブ部7Bは、外側リブ部7Aよりも径方向外側への突出量が大きい部分を有する。
【0120】
また、
図10に示すように、軸方向凸部6Eの所定方向の中央部においては、複数のリブ部7の各径方向外側へ向けた突出量が、互いに同じである。
【0121】
図5及び
図9に示すように、凸部6(6E)において、複数の段差部8は、幅方向に隣り合うリブ部7間に配置されて所定方向に延びる内側段差部8Aと、凸部6(6E)の幅方向の端部に配置されて所定方向に延びる外側段差部8Bと、を含む。
内側段差部8Aは、幅方向に隣り合うリブ部7同士の各突出量の差分に応じて形成されている。また、外側段差部8Bは、外側リブ部7Aの幅方向の外側を向く側面に形成されている。
【0122】
複数の段差部8には、所定方向へ向かうに従い径方向(Z軸方向)の寸法が変化するもの、及び、所定方向の全長にわたって径方向の寸法が一定とされているもの、のうち少なくとも1つが含まれる。本実施形態では、各段差部8の径方向寸法が、所定方向へ向かうに従い変化する。
【0123】
本実施形態の凸部6(6E)は、上述のような構成を備えたことにより、繊維形状の外観を有している。このため軸方向凸部6Eは、繊維形凸部6Eと言い換えてもよい。すなわち、本実施形態において複数の凸部6は、繊維形状の外観を有する複数の繊維形凸部6Eを含む。
【0124】
以上説明した本実施形態の筆記具30においても、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
さらに本実施形態では、軸筒1の外周面に複数の繊維形凸部6Eが設けられることによって、軸筒1の外周面が、あたかも実際の糸で織り込まれた織物や布地、あるいはイグサなどで織り込まれた畳等により作製されているような視覚的及び触覚的な感覚を、筆記具30の使用者等に与えることができる。筆記具30の外観のデザイン性や使用感を、より高めることができる。
【0125】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0126】
前述の第1、第3実施形態では、複数の軸方向凸部6A,6Eには、周方向へ向かうに従い軸方向に向けて延びる傾斜方向に並んで配置される軸方向凸部群61,62が含まれる例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、複数の軸方向凸部には、周方向に並んで配置される軸方向凸部群が含まれていてもよい。あるいは、複数の軸方向凸部には、軸方向に並んで配置される軸方向凸部群が含まれていてもよい。
【0127】
また、前述の第1~第3実施形態では、軸筒1の外周面に配置される複数の凸部6(6A,6B,6C,6E)のすべてが、軸方向(Y軸方向)に延びている例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、複数の凸部6には、周方向(X軸方向)に延びる周方向凸部が含まれていてもよい。あるいは、複数の凸部6には、周方向へ向かうに従い軸方向に向けて延びる傾斜方向凸部が含まれていてもよい。
【0128】
また、特に図示しないが、軸筒1の外周面に設けられる複数の凸部6は、複数の凸部6のうちベース面11からの突出量が最も大きい第1凸部と、前記突出量が前記第1凸部よりも小さい第2凸部と、を含んでいてもよい。
この場合、ベース面11からの突出量(高さ寸法)が互いに異なる複数種類の凸部6(第1凸部及び第2凸部)が設けられることで、軸筒1により立体感のある自由度の高いデザインを付与することができる。
【0129】
また、特に図示しないが、軸筒1の外周面に設けられる複数の凸部6は、第1凸部と、前記第1凸部とはシボ加工面の表面粗さまたは表面性状が異なる第2凸部と、を含んでいてもよい。
この場合、シボ加工面の表面粗さまたは表面性状が互いに異なる複数種類の凸部6(第1凸部及び第2凸部)が設けられることで、軸筒1によりバリエーション豊かで自由度の高いデザインを付与することができる。
【0130】
また、前述の第1~第3実施形態では、筆記具10,20,30としてノック式ボールペンを例に挙げたが、これに限らない。筆記具10,20,30は、ノック式ボールペン以外のボールペンや、あるいは、ボールペン以外のペンであってもよい。
【0131】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の筆記具によれば、外観が良好とされてデザイン性を高めることができ、かつ触り心地が良く使用感が向上する。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0133】
1…軸筒、2…筆記部材、3…グリップ部、4…クリップ、6…凸部、6A,6B,6C,6E…軸方向凸部、6E…繊維形凸部、10,20,30…筆記具、11…ベース面、61,62…軸方向凸部群、65…第1突出部、66…第2突出部、O…中心軸、PL…パーティングライン