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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058828
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
B60H1/00 102H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166183
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝臣
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA52
3L211DA10
3L211DA12
(57)【要約】
【課題】2つの部材の連結状態が適切であるか否かを容易に確認することが可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置は、第1流路および第2流路が形成された空調ケースと、前記第1流路の開度を変化させる第1ドア50と、前記第2流路の開度を変化させる第2ドア60と、を備え、前記第1ドア50は軸部53を有し、前記第2ドア60は、前記軸部53が挿入されて前記軸部53を支持する筒状の軸支部62を有し、前記軸支部62には、前記軸部53の先端53aを露出させる露出部Eが形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路および第2流路が形成された空調ケースと、
前記第1流路の開度を変化させる第1ドアと、
前記第2流路の開度を変化させる第2ドアと、を備え、
前記第1ドアは軸部を有し、
前記第2ドアは、前記軸部が挿入されて前記軸部を支持する筒状の軸支部を有し、
前記軸支部には、前記軸部の先端を露出させる露出部が形成されている、車両用空調装置。
【請求項2】
前記露出部は、前記軸支部の長手方向における端部に設けられた貫通孔であり、
前記軸部の前記先端は前記貫通孔から突出する、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記軸部の前記先端の、前記貫通孔からの突出量は、0.5mm以上である、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第1ドアと前記第2ドアとで、色が異なっている、請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記露出部は、前記軸支部の周壁に設けられた貫通孔である、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
第1流路および第2流路が形成された空調ケースと、
前記第1流路における冷風用開口および加熱用開口の開口割合と、前記第2流路における冷風用開口および加熱用開口の開口割合と、を変化させるエアミックスドア装置と、を備え、
前記エアミックスドア装置は、前記第1流路に対応する第1シャフトと、前記第2流路に対応する第2シャフトと、を有し、
前記第1シャフトは軸部を有し、
前記第2シャフトは、前記軸部が挿入されて前記軸部を支持する筒状の軸支部を有し、
前記軸支部の周壁には、前記軸部の先端を露出させる貫通孔が形成されている、車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両には、車室内の温度や湿度を調節する車両用空調装置が搭載されている。このような車両用空調装置は、送風ファンによって送風された空気をエバポレータによって除湿及び冷却し、冷却した空気の一部を加熱することで、所定の温度の調和空気を生成するように構成されている。車両用空調装置においては、連結された2つの部材によって、2つの流路の開度を変化させる構造が採用される場合がある。たとえば特許文献1の図5には、運転席側エアミックスドア321の回動軸321aが、助手席側エアミックスドア322の孔部322bに挿入された構造が開示されている。このような構造により、2つのドア321、322が連結されている。また、2つのドア321、322は、2つの流路に対応して設けられており、それぞれの開度を変更させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5965172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、回動軸および孔部の位置関係を外部から視認することが難しい。このため、回動軸が孔部に適切に挿入されたか否かの確認が容易ではなかった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、2つの部材の連結状態が適切であるか否かを容易に確認することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の態様1に係る車両用空調装置は、第1流路および第2流路が形成された空調ケースと、前記第1流路の開度を変化させる第1ドアと、前記第2流路の開度を変化させる第2ドアと、を備え、前記第1ドアは軸部を有し、前記第2ドアは、前記軸部が挿入されて前記軸部を支持する筒状の軸支部を有し、前記軸支部には、前記軸部の先端を露出させる露出部が形成されている。
【0007】
本発明の態様2は、態様1に係る車両用空調装置であって、前記露出部は、前記軸支部の長手方向における端部に設けられた貫通孔であり、前記軸部の前記先端は前記貫通孔から突出する。
【0008】
本発明の態様3は、態様2に係る車両用空調装置であって、前記軸部の前記先端の、前記貫通孔からの突出量は、0.5mm以上である。
【0009】
本発明の態様4は、態様1から3のいずれかに係る車両用空調装置であって、前記第1ドアと前記第2ドアとで、色が異なっている。
【0010】
本発明の態様5は、態様1または4に係る車両用空調装置であって、前記露出部は、前記軸支部の周壁に設けられた貫通孔である。
【0011】
本発明の態様6に係る車両用空調装置は、第1流路および第2流路が形成された空調ケースと、前記第1流路における冷風用開口および加熱用開口の開口割合と、前記第2流路における冷風用開口および加熱用開口の開口割合と、を変化させるエアミックスドア装置と、を備え、前記エアミックスドア装置は、前記第1流路に対応する第1シャフトと、前記第2流路に対応する第2シャフトと、を有し、前記第1シャフトは軸部を有し、前記第2シャフトは、前記軸部が挿入されて前記軸部を支持する筒状の軸支部を有し、前記軸支部の周壁には、前記軸部の先端を露出させる貫通孔が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、2つの部材の連結状態が適切であるか否かを容易に確認することが可能な車両用空調装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の要部を前後方向から見た図である。
図2図1のII-II断面矢視図である。
図3図2のIII方向矢視図である。
図4図3に示される部材の一部を分解した図である。
図5図3のV方向矢視図である。
図6図1に示されるヒータ下流切替部の斜視図である。
図7図6の第1ドアの斜視図である。
図8図6の第2ドアの斜視図である。
図9】第2実施形態に係る車両用空調装置の概略図である。
図10図9の駆動部に含まれる第1シャフトおよび第2シャフトの図である。
図11図10の第1シャフトおよび第2シャフトを分解した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本実施形態の車両用空調装置について図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の車両用空調装置Dの概略を示す図である。図2は、図1のII-II断面矢視図である。
図1および図2に示すように、車両用空調装置Dは、空調ケース1と、エバポレータ2と、エアミックスダンパ装置3と、ヒータコア4と、ロータリーダンパ5と、補助加熱器6と、ヒータ下流切替部7と、を備えている。なお、これらの構成要素の一部を、車両用空調装置Dが備えていなくてもよい。例えば、補助加熱器6等を省略してもよい。
【0015】
空調ケース1は、車両の左右方向に並べて配置された第1部材10、第2部材20、および第3部材30を含んでいる。空調ケース1は、これらの部材10~30以外の部材を含んでいてもよい。図2に示すように、空調ケース1の内部には、冷却流路1aおよび加熱流路1bが形成されている。冷却流路1aにはエバポレータ2が設置されている。エバポレータ2は、車両に搭載される冷凍サイクルの一部である。エバポレータ2は、不図示のブロワにより冷却流路1a内に供給された空気を冷却および除湿して冷風を生成する。加熱流路1bにはヒータコア4が設置されている。ヒータコア4は、エバポレータ2によって冷却および除湿された冷風を加熱することによって、暖風を生成する。
【0016】
車両用空調装置Dは、冷風と暖風とを混合して調和空気を生成し、車両の内部に設けられた複数の吹出口に送り出すように構成されている。冷風及び暖風の混合比率を変化させることで、調和空気の温度を調整することができる。また、本実施形態の車両用空調装置Dは、冷風および暖風を混合する混合部を、複数備えている。より具体的には、車両用空調装置Dは、第1混合部1c1および第2混合部1c2を備える。第1混合部1c1および第2混合部1c2において、互いに温度が異なる2種類の調和空気を生成することができる。以下、第1混合部1c1および第2混合部1c2を区別しない場合には、単に混合部1cと称する場合がある。
【0017】
本実施形態の車両用空調装置Dは、2つの混合部1c(第1混合部1c1および第2混合部1c2)に対応するように、2つのエアミックスダンパ装置3が設けられている。2つのエアミックスダンパ装置はそれぞれ、駆動部3aおよびエアミックスダンパ3bを有している。
【0018】
エアミックスダンパ装置3は、エバポレータ2にて生成された冷風の、加熱流路1bへの供給量を調節するように構成されている。具体的には、駆動部3aは、エアミックスダンパ3bを上下に移動させる。これにより、冷風用開口1hと加熱用開口1iとの開口割合を調節することができる。
【0019】
冷風用開口1hは、エバポレータ2から混合部1cへと、冷風を直接流動させる経路の入り口である。加熱用開口1iは、冷風を、加熱流路1bを経由して混合部1cへと流動させる経路の入り口である。冷風用開口1hおよび加熱用開口1iの開口割合を調節することで、混合部1cにおける冷風と暖風との混合割合が調節される。これにより、調和空気の温度が調節される。詳細な説明は省略するが、加熱流路1b、冷風用開口1h、加熱用開口1i等も、2つの混合部1cに対応するように、それぞれ2つ設けられている。
【0020】
ヒータコア4は、2つの加熱流路1bに跨って配置されている。したがって、2つの加熱流路1bに流入した冷風を、1つのヒータコア4によって加熱することができる。下側の加熱流路1bには、補助加熱器6が設けられている。補助加熱器6は、ヒータコア4によって一度加熱された冷風を、追加で加熱することができる。
【0021】
また、空調ケース1には、車内の複数の吹出口にそれぞれ連通する複数の吐出開口(デフロスタ開口1d、ベント開口1e、ヒート開口1f、等)が設けられている。これらの吐出開口は、第1混合部1c1または第2混合部1c2の下流側に位置している。これらの吐出開口には、第1混合部1c1または第2混合部1c2において生成された調和空気が供給される。
【0022】
デフロスタ開口1dは、車両のウィンドウに対して調和空気を供給する。ベント開口1eは、乗員の顔に向けて調和空気を供給する。ヒート開口1fは、乗員の足元に対して調和空気を供給する。図3は、図2のIII方向矢視図である。ベント開口1eには、図3に示すように、運転席側の吹出口に通じる第1ベント開口部1e1と、助手席側の吹出口に通じる第2ベント開口部1e2と、が含まれる。第1混合部1c1から第1ベント開口部1e1に向かう流路を第1流路raといい、第1混合部1c1から第2ベント開口部1e2に向かう流路を第2流路rbという。ロータリーダンパ5は、第1ベント開口部1e1および第2ベント開口部1e2に向けて調和空気を供給するか否かを切り替え可能に構成されている。
【0023】
ロータリーダンパ5は、空調ケース1の内部に、回動可能に収容されている。本実施形態におけるロータリーダンパ5は、第1混合部1c1に位置しており、調和空気を複数の吐出開口(デフロスタ開口1d、ベント開口1e等)の少なくとも1つに選択的に案内する機能を有する。図3に示すように、本実施形態のロータリーダンパ5は、車両の左右方向に並ぶ第1ドア50および第2ドア60を有している。第1ドア50および第2ドア60のうち、一方が運転席側に配置され、他方が助手席側に配置される。第1ドア50は第1流路raの開度を変化させることが可能であり、第2ドア60は第2流路rbの開度を変化させることが可能である。なお、本明細書において、「開度を変化させる」ことには、開度を0~100%の間で段階的に変化させることに加えて、開度を0%(閉塞状態)または100%(全開状態)に選択することも含む。
【0024】
図3図4に示すように、第1ドア50は、第1ドア本体部51と、一対の軸部52、53と、を有する。第1ドア本体部51は、一対の側壁51a、51bを有している。第2ドア60は、第2ドア本体部61と、軸支部62と、軸部63と、を有する。第2ドア本体部61は、一対の側壁61a、61bを有している。第1ドア本体部51の外周縁の一部には、弾性部材54が設けられている。第2ドア本体部61の外周縁の一部には、弾性部材64が設けられている。弾性部材54、64は、第1ドア50、第2ドア60が空調ケース1に対して回動する際に、空調ケース1の内部に形成された隔壁に当接して弾性変形する。弾性部材54、64は、選択されていない吐出開口に向けた流路をシールする役割を有する。これにより、第1混合部1c1から選択されていない吐出開口に向けて調和空気が流動することを抑制できる。
【0025】
第1ドア50の軸部52、53は、ロータリーダンパ5の回動軸方向(車両の左右方向)に延び、一対の側壁51a、51bからそれぞれ左右方向における外側に向けて突出している。第2ドア60の軸支部62および軸部63は、一対の側壁61a、61bからそれぞれ左右方向における外側に向けて突出している。軸部53の外周面には、左右方向に延びる複数の凹部53bが形成されている。軸支部62には、軸部53が軸支部62に挿入されたときに、凹部53bの内側に入り込む複数の凸部62bが形成されている。凹部53bおよび凸部62bが係合することで、第1ドア50および第2ドア60は一体となって回動する。
【0026】
車両用空調装置Dの組み立て時には、第1ドア50の軸部53が、第2ドア60の軸支部62に挿入する工程が行われる。ここで、軸部53が軸支部62に挿入された際に、挿入量が不充分であると、ロータリーダンパ5が正常に動作しない可能性がある。特に、軸部53と軸支部62との間にはグリースが塗布される場合がある。グリースの粘性が、軸部53を軸支部62に挿入する際の抵抗となり、軸支部62への軸部53の挿入が不充分となりやすい。
【0027】
そこで本実施形態では、軸部53が軸支部62に正常に挿入されたことを容易に確認可能とするために、軸部53の先端53aを露出させる露出部Eが、軸支部62に形成されている。具体的には、図4図5に示すように、軸支部62の長手方向における端部に貫通孔62aが形成されており、この貫通孔62aが露出部Eとして機能する。すなわち、軸部53が軸支部62に正常に挿入された場合、貫通孔62aから軸部53の先端53aが露出する。この先端53aを視認することで、作業者は、組付けが正常に行われたか否かを確認できる。
【0028】
本願発明者が鋭意検討したところ、軸部53の先端53aを貫通孔62aから0.5mm以上突出させることで、作業者による先端53aの視認が容易となることが判った。したがって、貫通孔62aからの先端53aの突出量X(図5参照)を0.5mm以上とするとよい。また、第1ドア50および第2ドア60の色を異ならせることで、作業者による先端53aの視認が容易となる。したがって、例えば第1ドア50および第2ドア60を形成する樹脂の着色を異ならせること等により、両者の色を異ならせるとよい。
【0029】
組付けを確認するための露出部Eは、ロータリーダンパ5の第1ドア50および第2ドア60に限られず、他の部位にも適用することができる。例えば本実施形態では、ヒータ下流切替部7にも、露出部Eが設けられている。
【0030】
図6に示すように、ヒータ下流切替部7は、左右方向に並べられた第1ドア70および第2ドア80を有している。詳細な図示は省略するが、第1ドア70および第2ドア80は、第2混合部1c2からヒート開口1fに向かう流路の開度を変更するように構成されている。より具体的には、第1ドア70および第2ドア80のうち、一方は運転席側に配置され、他方は助手席側に配置されている。流路は、左右方向において第1流路、第2流路に分かれており、第1ドア70および第2ドア80はそれぞれの開度を変化させる。
【0031】
図7に示すように、第1ドア70は、本体部71と、軸部72と、を有している。図8に示すように、第2ドア80は、本体部81と、筒状の軸支部82と、を有している。軸部72は軸支部82に挿入される。軸支部82の周壁には貫通孔82aが形成されている。第1ドア70および第2ドア80が適切に組付けられている場合、軸部72の先端72aが、貫通孔82aを通して露出する。このため、作業者は、貫通孔82aを通して軸部72の先端72aが視認できるか否かに基づいて、第1ドア70および第2ドア80が正常に組付けられているか否かを確認することができる。
【0032】
軸支部82の周壁に形成された貫通孔82aを露出部Eとして用いる場合においても、軸部72の先端72aが露出部Eを通して0.5mm以上の長さで視認可能であることが好ましい。したがって、軸部72の長手方向における貫通孔82aの長さも、0.5mm以上であることが好ましい。また、第1ドア70および第2ドア80の色を異ならせることで、露出部Eを通じた軸部72の先端72aの視認性を向上させてもよい。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の車両用空調装置Dは、第1流路raおよび第2流路rbが形成された空調ケース1と、第1流路raの開度を変化させる第1ドア50と、第2流路rbの開度を変化させる第2ドア60と、を備える。第1ドア50は軸部53を有し、第2ドア60は、軸部53が挿入されて軸部53を支持する筒状の軸支部62を有する。そして軸支部62には、軸部53の先端53aを露出させる露出部E(貫通孔62a)が形成されている。この構成によれば、第1ドア50および第2ドア60が空調ケース1に対して適切に組付けられている場合、軸部53の先端53aを貫通孔62aから視認できる。逆に、組付けが適切ではない場合、軸部53の先端53aが視認されなくなるため、作業者は容易に組付け状態を確認することができる。したがって、組み立て性を向上させることができる。
【0034】
本実施形態の露出部Eは、軸支部62の長手方向における端部に設けられた貫通孔62aであり、貫通孔62aから軸部53の先端53aが突出する。貫通孔62aからの軸部53の先端53aの突出量Xは、0.5mm以上であってもよい。第1ドア50と第2ドア60とで、色が異なっていてもよい。これらの構成によれば、作業者がより容易に組付け状態を確認することが可能である。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。本実施形態では、いわゆる2層流HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)に露出部Eを適用した例を説明する。図9に示すように、本実施形態の車両用空調装置DAは、空調ケース100と、第1吸気口101と、第2吸気口102と、ブロワ103と、複数のセパレータ104と、エバポレータ105と、2つのエアミックスドア装置106と、ヒータコア107と、を有している。空調ケース100は、第1混合部100c1と、第2混合部100c2と、複数の開口(デフロスタ開口108、ヒート開口109、等)と、フィルタ110と、を有している。
【0036】
空調ケース100の内部は、セパレータ104によって、上層と下層とに分かれている。2層流HVACでは、上層に外気F1を流し、外気F1を用いて調和空気を生成し、車室内の上方の空間に向けて調和空気を供給する。また、下層に再循環空気F2を流し、再循環空気F2を用いて調和空気を生成し、車室内の下方の空間に向けて調和空気を供給する。以下、より詳しく説明する。
【0037】
第1吸気口101は空調ケース100内に外気F1を取り込む。取り込まれた外気F1は、フィルタ110を通過後、ブロワ103によって、図9の矢印f1に沿って流動する。より具体的には、セパレータ104の上側の流路を通過し、エバポレータ105によって冷却され、上側のエアミックスドア装置106に到達する。エアミックスドア装置106は、駆動部106aと、スライドドア106bと、を有している。駆動部106aはスライドドア106bを上下にスライドさせる。これにより、エバポレータ105からヒータコア107を介さずに第1混合部100c1に向かう経路100aの入り口(冷風用開口)と、エバポレータ105からヒータコア107を介して第1混合部100c1に向かう経路100bの入り口(加熱用開口)と、の開口割合を調節することができる。これにより、第1混合部100c1において、外気F1を主体とした調和空気を得ることができる。外気F1を主体とした調和空気は、デフロスタ開口108等から、車室内の上側に空間に向けて供給される。
【0038】
第2吸気口102は、再循環空気F2(車室内の空気)を空調ケース100内に取り込む。取り込まれた再循環空気F2は、フィルタ110を通過後、ブロワ103によって、図9の矢印f2に沿って流動する。より具体的には、セパレータ104の下側の流路を通過し、エバポレータ105によって冷却され、下側のエアミックスドア装置106に到達する。下側のエアミックスドア装置106においても、冷風用開口と加熱用開口との開口割合が調節され、第2混合部100c2において、再循環空気F2を主体とした調和空気が得られる。再循環空気F2を主体とした調和空気は、ヒート開口109等から、車室内の下側の空間に向けて供給される。
【0039】
エアミックスドア装置106の駆動部106aは、図10図11に示すように、第1シャフト120と、第2シャフト130と、を有している。第1シャフト120および第2シャフト130は左右に並べて配置されている。詳細な図示は省略するが、空調ケース100内には運転席側と助手席側とで左右に分かれて流路が形成されており、それぞれの流路(第1流路および第2流路)に対応して左右一対のスライドドア106bが設けられている。第1流路に対応するスライドドア106bが第1シャフト120によって駆動され、第2流路に対応するスライドドア106bが第2シャフト130によって駆動される。つまり、第1シャフト120によって第1流路における冷風用開口および加熱用開口の開口割合が変化し、第2シャフト130によって第2流路における冷風用開口および加熱用開口の開口割合が変化する。
【0040】
第1シャフト120は、第1本体部121と、一対の第1ギア部122と、軸部123と、を有する。第1シャフト120が回転すると、第1ギア部122によって、第1流路に対応するスライドドア106bが上下にスライド移動する。第2シャフト130は、第2本体部131と、一対の第2ギア部132と、軸支部133と、を有する。第2シャフト130が回転すると、第2ギア部132によって、第2流路に対応するスライドドア106bが上下にスライド移動する。
【0041】
図11に示すように、第1シャフト120の軸部123は、第2シャフト130の軸支部133に挿入される。軸支部133は筒状であり、周壁には貫通孔133aが形成されている。この貫通孔133aが、露出部Eとして機能する。つまり、第1シャフト120および第2シャフト130の組付け状態が適切であれば、軸部123の先端123aが、貫通孔133aを通して視認される。逆に、組付けが適切ではない場合、軸部123の先端123aが視認されなくなるため、作業者は容易に組付け状態を確認することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の車両用空調装置DAは、第1流路および第2流路が形成された空調ケース100と、第1流路における冷風用開口および加熱用開口の開口割合と、第2流路における冷風用開口および加熱用開口の開口割合と、を変化させるエアミックスドア装置106と、を備える。エアミックスドア装置106は、第1流路に対応する第1シャフト120および第2流路に対応する第2シャフト130を有する。第1シャフト120は軸部123を有し、第2シャフト130は、軸部123が挿入されて軸部123を支持する筒状の軸支部133を有する。そして、軸支部133の周壁には、軸部123の先端123aを露出させる露出部Eとしての貫通孔133aが形成されている。このような構成により、第1実施形態と同様に、組み立て性を向上させることができる。
【0043】
本実施形態においても、軸部123の先端123aが露出部Eを通して0.5mm以上の長さで視認可能であることが好ましい。したがって、左右方向における貫通孔133aの長さも、0.5mm以上であることが好ましい。また、第1シャフト120および第2シャフト130の色を異ならせることで、露出部Eを通じた軸部123の先端123aの視認性を向上させてもよい。
【0044】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0045】
例えば、第1実施形態の車両用空調装置Dは、2つの混合部(第1混合部1c1および第2混合部1c2)を備えていた。しかしながら、車両用空調装置Dが備える混合部の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0046】
また、第1実施形態では、軸部53の凹部53bおよび軸支部62の凸部62bが係合することで、第1ドア50および第2ドア60が一体となって回動した。しかしながら、第1ドア50および第2ドア60が独立して回動するように構成されてもよい。この場合、軸部53および軸支部62に凹部53b、凸部62bを設けず、第1ドア50および第2ドア60をそれぞれ回動させる複数のアクチュエータを設ければよい。このような構成においても、軸部53の先端53aおよび軸支部62の貫通孔62a(露出部E)により、第1ドア50および第2ドア60の組付け状態を容易に視認することができる。
【0047】
同様に、第2実施形態の第1シャフト120および第2シャフト130についても、一体となって回動してもよいし、独立して回動してもよい。つまり、第1流路における冷風用開口および加熱用開口の開口割合と、第2流路における冷風用開口および加熱用開口の開口割合と、が同じであってもよいし、異なってもよい。
【0048】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
例えば、第2実施形態において説明した第1シャフト120および第2シャフト130の構造を、第1実施形態の車両用空調装置Dに適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…空調ケース 50…第1ドア 53…軸部 53a…先端 60…第2ドア 62…軸支部 62a…貫通孔 70…第1ドア 72…軸部 72a…先端 80…第2ドア 82…軸支部 82a…貫通孔 100…空調ケース 106…エアミックスドア装置 106a…駆動部 106b…スライドドア 120…第1シャフト 123…軸部 123a…先端 130…第2シャフト 133…軸支部 133a…貫通孔 D、DA…車両用空調装置 E…露出部 ra…第1流路 rb…第2流路
図1
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図11