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特開2024-5883固化材液、地盤改良体及び同改良体の築造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005883
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】固化材液、地盤改良体及び同改良体の築造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/06 20060101AFI20240110BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C09K17/06 P
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106313
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000133881
【氏名又は名称】株式会社テノックス
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】村山 篤史
(72)【発明者】
【氏名】藤橋 俊則
(72)【発明者】
【氏名】磯野 泰佑
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 瑞貴
【テーマコード(参考)】
2D040
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040CA01
2D040CA03
2D040CA10
2D040CB03
4H026CA01
4H026CA06
4H026CB03
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】環境保護に貢献できる固化材液を提供すること。
【解決手段】土壌と攪拌混合される固化材液であって、セメント又はセメント系固化材と、水と、二酸化炭素を用いて製造された炭酸カルシウムと、を含む。前記炭酸カルシウムは、二酸化炭素を含有する排ガスを用いて製造されたものであるのが好ましく、さらに、コンクリート系廃棄物を原料として製造されたものであるのが好ましい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌と攪拌混合される固化材液であって、セメント又はセメント系固化材と、水と、二酸化炭素を用いて製造された炭酸カルシウムと、を含むことを特徴とする、固化材液。
【請求項2】
前記炭酸カルシウムは、二酸化炭素を含有する排ガスを用いて製造されたものである、請求項1に記載の固化材液。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムは、コンクリート系廃棄物を原料として製造されたものである、請求項1又は2に記載の固化材液。
【請求項4】
前記セメント又はセメント系固化材と前記炭酸カルシウムとの合計質量に対する前記炭酸カルシウムの質量の比が0%より大きく10%以下である、請求項1又は2に記載の固化材液。
【請求項5】
前記セメント又はセメント系固化材と前記炭酸カルシウムとの合計質量に対する前記水の質量の比が60~100%である、請求項1又は2に記載の固化材液。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の固化材液と土壌との攪拌混合物が固化したものである、地盤改良体。
【請求項7】
前記固化材液において、前記セメント又はセメント系固化材と前記炭酸カルシウムとの合計質量に対する前記炭酸カルシウムの質量の比が0%より大きく10%以下である、請求項6に記載の地盤改良体。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の固化材液を地盤内に注入し、地盤内の土壌と前記固化材液とを攪拌混合することを特徴とする、地盤改良体の築造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良に適する固化材液に関するものである。また、本発明は、前記固化材液を用いて形成される地盤改良体に関するものである。さらに本発明は、前記地盤改良体の築造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固化材液を注入しながら地盤内の土壌と固化材液とを攪拌混合して地盤改良体を築造することは公知である(特許文献1等)。固化材液の典型例は、セメント又はセメント系固化材と、水と、を含む混合物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭58-29374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固化材液には様々な特性が求められるが、環境保護に貢献できることも重要な要素である。
【0005】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、環境保護に貢献できる固化材液を提供しようとするものである。
【0006】
本発明はまた、前記固化材液を用いて築造される地盤改良体と、該地盤改良体の築造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る固化材液は、土壌と攪拌混合される固化材液であって、セメント又はセメント系固化材と、水と、二酸化炭素を用いて製造された炭酸カルシウムと、を含むことを特徴とする(請求項1)。
【0008】
本発明の固化材液は、土壌と攪拌混合されることで、地盤の改良に貢献する。本発明の固化材液には、構成要素として、二酸化炭素を用いて製造された炭酸カルシウムが含まれる。このため、固化材液を土壌と攪拌混合することで、炭酸カルシウムに固定されている二酸化炭素が、改良された土壌内に封じ込められる。これにより、地球温暖化の原因である二酸化炭素の大気中への排出が抑制される。また、従来の固化材液と比べて、炭酸カルシウムの含有量分だけはセメント又はセメント系固化材の使用量を減らせるので、セメント又はセメント系固化材の製造時に発生する二酸化炭素も削減できる。少なくともこれら二つの要因により、本発明の固化材液は環境保護に貢献できる。
【0009】
実施の一形態として、前記炭酸カルシウムは、二酸化炭素を含有する排ガスを用いて製造されたものである態様としてもよい(請求項2)。この場合、排ガス中の二酸化炭素の大気中への放出量を削減できるので、環境保護への貢献が大きい。排ガスとしては、化石燃料の燃焼排ガスと、廃棄物の燃焼排ガスの、少なくともいずれかを含むものが挙げられる。
【0010】
実施の一形態として、前記炭酸カルシウムは、コンクリート系廃棄物を原料として製造されたものである態様としてもよい(請求項3)。この場合、コンクリート系廃棄物を有効利用でき、産業廃棄物の削減に貢献できる利点がある。
【0011】
実施の一形態として、前記セメント又はセメント系固化材と前記炭酸カルシウムとの合計質量に対する前記炭酸カルシウムの質量の比が0%より大きく10%以下である態様としてもよい(請求項4)。この実施の一形態によれば、炭酸カルシウムを含まない従来の固化材液を用いて築造される地盤改良体の強度とほぼ同等の強度が得られることが、試験によって確認できた。
【0012】
実施の一形態として、前記セメント又はセメント系固化材と前記炭酸カルシウムとの合計質量に対する前記水の質量の比が60~100%である態様としてもよい(請求項5)。試験によれば、前記比が60%未満である場合には、固化材液の流動性が不十分であり、ポンプによる圧送性が悪かった。また、前記比が100%を超えると、固化材液の水分が多過ぎであり、固化性が悪い。前記比が60~100%であれば圧送性にも固化性にも問題がないことが試験により確認できた。
【0013】
本発明に係る地盤改良体は、前記固化材液と前記土壌との攪拌混合物が固化したものであることを特徴とする(請求項6)。
【0014】
地盤改良体の実施の一形態として、前記固化材液において、前記セメント又はセメント系固化材と前記炭酸カルシウムとの合計質量に対する前記炭酸カルシウムの質量の比が0%より大きく10%以下である態様としてもよい(請求項7)。この実施の一形態によれば、炭酸カルシウムを含まない従来の固化材液を用いて築造される地盤改良体の強度とほぼ同等の強度が得られることが、試験によって確認できた。
【0015】
本発明の地盤改良体の築造方法は、前記固化材液を地盤内に注入し、地盤内の土壌と前記固化材液とを攪拌混合することを特徴とする(請求項8)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の一形態に係る固化材液の構成図である。
図2】本発明の固化材液の実施例の、流動性試験の結果の一覧表である。
図3】本発明の固化材液の実施例による地盤改良体の、強度試験の結果の一覧表である。
図4図3中の現場A(室内)におけるエコタンカル(登録商標、以下同じ)使用の固化材液による地盤改良体の強度のグラフである。
図5図3中の現場B(室内)におけるエコタンカル使用の固化材液による地盤改良体の強度のグラフである。
図6図3中の現場B(室内)におけるTAKEcite(登録商標、以下同じ)使用の固化材液による地盤改良体の強度のグラフである。
図7図3中の現場B(現場)におけるエコタンカル使用の固化材液による地盤改良体の強度のグラフである。
図8図3中の現場B(現場)におけるTAKEcite使用の固化材液による地盤改良体の強度のグラフである。
図9図3中の現場B(現場)におけるエコタンカル使用(5%、10%)の地盤改良体について、強度と地中深さ(深度)の分布を示すグラフである。
図10図3中の現場B(現場)におけるTAKEcite使用(5%、10%)の地盤改良体について、強度と地中深さ(深度)の分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明の実施の一形態に係る固化材液は、土壌と攪拌混合されることにより、地盤の改良に貢献可能な固化材液である。この固化材液は、図1に示すように、セメント又はセメント系固化材Cと、水Wと、二酸化炭素を用いて製造された炭酸カルシウム(CaCO)と、を含むことを特徴とする。固化材液は、改良すべき地盤内に注入され、土壌と攪拌混合されて固化又は硬化することで、地盤改良体を形成する。
【0019】
固化材液には、構成要素として、二酸化炭素を用いて製造された炭酸カルシウムが含まれる。このため、固化材液を土壌と攪拌混合することで、炭酸カルシウムに固定されている二酸化炭素が、改良された土壌内に封じ込められる。これにより、地球温暖化の原因である二酸化炭素の大気中への排出が抑制される。また、炭酸カルシウムを含まない従来の固化材液と比べて、炭酸カルシウムの含有量分だけはセメント又はセメント系固化材の使用量を減らせるので、セメント又はセメント系固化材の製造時に発生する二酸化炭素も削減できる。少なくともこれら二つの要因により、本発明の固化材液は環境保護に貢献できる。
【0020】
一般に、炭酸カルシウムには、重質炭酸カルシウムと軽質炭酸カルシウムがあるが、本実施の一形態の固化材液を構成する炭酸カルシウムは、軽質炭酸カルシウムである。すなわち、本実施の一形態の炭酸カルシウムは、二酸化炭素を用いて製造された炭酸カルシウムであり、具体例としては、石灰乳又は石灰水に二酸化炭素を吹き込んで生じた沈殿物を乾燥、粉砕して製造されるものである。
【0021】
炭酸カルシウムは、二酸化炭素を含有する排ガスを用いて製造されたものが好適である。この場合、排ガスを炭酸カルシウムの製造に用いることで、排ガス中の二酸化炭素の大気中への放出量を削減できるので、環境保護への貢献が大きい。排ガスの具体例としては、化石燃料の燃焼排ガスや、廃棄物の燃焼排ガスを挙げることができる。
【0022】
また、炭酸カルシウムは、セメント由来のものであることが好ましく、例えば、コンクリート系廃棄物を用いて製造されたものが好適である。コンクリート系廃棄物を有効利用でき、産業廃棄物の削減に貢献できるからである。具体的には、次のようにして炭酸カルシウムを製造できる。セメント微粒子を含むコンクリート系廃棄物を、セメント含有液と固形分とに固液分離する。そして、分離されたセメント含有液に二酸化炭素を吹き込む。これにより、セメント含有液に含まれるカルシウムが二酸化炭素と反応し、セメント微粒子の表面で炭酸カルシウムを晶出させる。この方法において、セメント含有液に吹き込む二酸化炭素は、前記の通り、化石燃料の燃焼排ガスや、廃棄物の燃焼排ガスに含まれるものを利用するとよい。
【0023】
固化材液の実施の一形態として、セメント又はセメント系固化材Cと炭酸カルシウムとの合計質量に対する炭酸カルシウムの質量の比(CaCO(kg)/[C(kg)+CaCO(kg)]。以下、この比を「炭酸カルシウム含有率」という。)が、0%より大きく10%以下である態様としてもよい。この実施の一形態によれば、炭酸カルシウムを含まない従来の固化材液を用いて築造される地盤改良体の強度とほぼ同等の強度が得られることが、試験によって確認できた。
【0024】
実施の一形態として、前記セメント又はセメント系固化材と前記炭酸カルシウムとの合計質量に対する前記水の質量の比(W(kg)/[C(kg)+CaCO(kg)]。以下、この比を「水・セメント比」という。)が60~100%である態様としてもよい。試験によれば、水・セメント比が60%未満である場合には、固化材液の流動性が不十分であり、ポンプによる圧送性が悪かった。また、水・セメント比が100%を超えると、固化材液の水分が多過ぎであり、固化性が悪い。水・セメント比が60~100%であれば圧送性にも固化性にも問題がないことが試験により確認できた。試験の結果は後述する。
【0025】
固化材液と土壌との攪拌混合物が固化することで、地盤改良体となる。すなわち、固化材液を地盤内に注入し、地盤内の土壌と固化材液とを攪拌混合することで地盤改良体が築造される。土壌と固化材液の混合比や混合量は、地盤改良体に求められる強度(施工目的に応じて異なる)や施工性、土質等を勘案して、適宜に決定される。
【0026】
地盤改良体の築造は、周知のように、推進機構に取り付けられた掘削ロッドによって行われる。掘削ロッドは、掘削翼及び攪拌翼を有する正逆両方向に回転自在なロッドである。掘削ロッドには固化材液の流路が形成され、この固化材液流路は、掘削ロッドの下端に形成された固化材液吐出口に連通する。推進機構によって掘削ロッドが地盤内へと回転掘進され、掘削ロッドの回転掘進時又は回転引き抜き時に、ポンプで圧送される固化材液が固化材液吐出口から吐出される。これにより、掘削ロッドの攪拌翼で地中の土壌と固化材液とが攪拌混合される。土壌と固化材液との攪拌混合物が地中で固化したものが地盤改良体である。
【0027】
以下、固化材液の流動性と、固化材液によって改良された地盤(地盤改良体)の強度について、試験の内容と結果を説明する。固化材液の流動性の試験はPロート試験法により行い、地盤改良体の強度試験は、一軸圧縮試験法によって行った。
【0028】
Pロート試験について説明する。Pロート試験の対象となる固化材液(試験用固化材液)として、炭酸カルシウム含有率が0%、0.5%、1%、2%、5%、10%、20%、50%、100%、200%、300%、400%のいずれかであり、且つ、水・セメント比が50%、60%、70%、80%、100%、120%のいずれかである固化材液を準備した。試験用固化材液の作製に使用したセメントは普通ポルトランドセメントであり、使用した炭酸カルシウムは、日本コンクリート工業株式会社製のエコタンカルである。
【0029】
エコタンカルの原材料は、大気中に放出されるはずであったボイラー排ガス中の二酸化炭素と、コンクリート二次製品工場内で発生する高アルカリの排水であることから、エコタンカルは環境にやさしい製品であるとされている。また、エコタンカルには1kg当たりにつき約440gの二酸化炭素が固定化されているといわれている。さらに、エコタンカルは化学反応による製造であり、製造過程では不純物が入らないので、純度が97~99%と高純度であるとされている。
【0030】
炭酸カルシウム含有率と水・セメント比とが前記数値の組み合わせとされた各試験用固化材液についてPロート試験を行い、固化材液の流下時間を測定した。その結果が図2に示されている。炭酸カルシウム含有率が0%のものは本発明の固化材液の実施例ではなく、比較例である。
【0031】
図2における測定数値の単位は秒であり、この数値が13秒以下であれば、ポンプ圧送可能な流動性を有する固化材液であることになる。測定数値が13秒より大きいものはポンプ圧送が困難であるため、使用に適さない。固化材液は地盤内にポンプで圧送されるので、ポンプ圧送可能な流動性を有することは固化材液の必須条件である。
【0032】
次に、一軸圧縮試験について説明する。図3には、一軸圧縮試験の結果が示されている。この試験に用いる固化材液も、普通ポルトランドセメントを使用して作製した。固化材液を構成する炭酸カルシウムとしては、前記と同様のエコタンカルと、TAKEciteと、を使用した。TAKEciteは、タケ・サイト株式会社製のリサイクル石灰であり、生コンクリート工場から排出されるスラッジを原料として製造されたものであると言われている。
【0033】
エコタンカル使用の固化材液もTAKEcite使用の固化材液も、それぞれ、炭酸カルシウム含有率が0%と5%と10%のものを準備した。炭酸カルシウム含有率が5%と10%のものが本発明の固化材液の実施例であり、炭酸カルシウム含有率が0%のものは比較例である。また、エコタンカル使用の固化材液は、炭酸カルシウム含有率が20%と100%のものも準備した。いずれの試験用固化材液も、水・セメント比は60%とした。
【0034】
各固化材液を土壌と攪拌混合して固化させたものが、一軸圧縮試験の対象となる試験用地盤改良体である。固化材液と土壌の混合割合は、固化材液におけるセメントと炭酸カルシウムとの合計質量が、土壌1mに対して300kgとなる割合とした。前述の通り、水・セメント比は60%としたので、固化材液に含まれる水の質量は180kgである。一軸圧縮試験の現場は現場Aと現場Bの二か所であり、現場Aでは室内での試験のみ、現場Bでは室内での試験と実際の工事現場での試験とを行った。
【0035】
固化材液と攪拌混合した土壌は、現場Aの土壌が凝灰質粘土であった。現場B(室内及び現場)の土壌はシルトと細砂とシルト質砂であり、シルトは地中深さ3.4~5.0mの土質、細砂は地中深さ5.0~11.0mの土質、シルト質砂は地中深さ11.0~16.0mの土質である。現場B(室内)の試験結果は、現場B(現場)で採集した土壌を室内で固化材液と攪拌混合して得られた地盤改良体についてのものである。一方、現場B(現場)の試験結果は、実際の工事現場で地盤内に固化材液を注入しながら土壌と攪拌混合して得られた地盤改良体についてのものである。
【0036】
各試験用地盤改良体について一軸圧縮強度を測定した。その結果が図3の上半分に示されている。図3の上半分における測定数値の単位はN/mmである。
【0037】
図3の下半分は、図3の上半分の測定数値を比率化したものである。すなわち、炭酸カルシウム(エコタンカル又はTAKEcite)含有率0%の固化材液(従来の固化材液)による測定数値を基準値(1.00)とし、実施例の各固化材液による測定数値を前記基準値に対する比として表示したものである。図3の下半分を参照することで、実施例の各固化材液による一軸圧縮強度が相対的に評価し易くなる。
【0038】
図3中の、現場Aにおけるエコタンカル使用の試験用地盤改良体の一軸圧縮強度を図4にグラフ化した。同様に、現場B(室内)におけるエコタンカル使用の試験用地盤改良体の一軸圧縮強度を図5にグラフ化し、現場B(室内)におけるTAKEcite使用の試験用地盤改良体の一軸圧縮強度を図6にグラフ化した。また、現場B(現場)におけるエコタンカル使用の試験用地盤改良体の一軸圧縮強度を図7にグラフ化し、現場B(現場)におけるTAKEcite使用の試験用地盤改良体の一軸圧縮強度を図8にグラフ化した。
【0039】
さらに、現場B(現場)におけるエコタンカル使用(5%、10%)の試験用地盤改良体について、一軸圧縮強度と地中深さ(深度)の分布を図9にグラフ化し、同じく現場B(現場)におけるTAKEcite使用(5%、10%)の試験用地盤改良体について、一軸圧縮強度と地中深さ(深度)の分布を図10にグラフ化した。図9及び図10は、現場B(現場)の各試験用地盤改良体について、コアボーリングにより60個所超の地中深さ地点で試料を採取し、各試料について一軸圧縮試験により強度を確認し、その結果を深度方向の強度分布図としてグラフ化したものである。図9図10には、それぞれ、比較例として、エコタンカル不使用(炭酸カルシウム含有率0%)、TAKEcite不使用(炭酸カルシウム含有率0%)の場合の一軸圧縮強度と地中深さ(深度)の分布も含まれている。
【0040】
図2図10より次のことが言える。
【0041】
(1)図2より、炭酸カルシウム含有率が0%より大きく10%以下であり、且つ、水・セメント比が60~100%であれば、ポンプ圧送可能であるので、固化材液に必要な流動性を満たす。
【0042】
(2)図3の現場A(室内)の数値と図4より、炭酸カルシウム含有率が20%以上になると、地盤改良体が強度不足になる。
【0043】
(3)図3の現場B(室内及び現場)の数値より、炭酸カルシウム含有率が10%までであれば、改良土壌の強度に大幅な低下は見られない。図3中の炭酸カルシウム含有率10%の場合の数値と、同20%の場合の数値から推測すると、炭酸カルシウム含有率が10%を超えると地盤改良体の強度が徐々に低下するものと考えられる。
【0044】
(4)図5図8より、炭酸カルシウム含有率が10%までであれば、土壌の土質がシルト、細砂、シルト質砂のいずれの場合でも、地盤改良体の強度に大幅な低下は見られず、炭酸カルシウム含有率0%の場合とほぼ同等の強度が得られる。
【0045】
(5)図9及び図10より、炭酸カルシウム含有率が5%又は10%の場合、地中深さ(深度)にかかわらず、炭酸カルシウム含有率が0%のものに比べて、地盤改良体の強度に大きな見劣りはないと言える。特に、図9を参照すれば、炭酸カルシウム含有率が5%の場合には、地中深さによっては、0%の場合よりもむしろ強度が向上する場合があると言える。
【0046】
(6)上記試験結果より、固化材(セメント又はセメント系固化材)の一部(質量比で10%まで)を炭酸カルシウムに置き換えても、地盤改良体の強度は低下しないと言える。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
C セメント又はセメント系固化材
W 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10