(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058841
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ポリオール組成物、ポリウレタン組成物、及びポリウレタン発泡体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/18 20060101AFI20240422BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240422BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240422BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240422BHJP
【FI】
C08G18/18
C08G18/00 F
C08L75/04
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166200
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】下島 健
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫生
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK031
4J002CK041
4J002DA057
4J002ED048
4J002EW046
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4J034RA15
(57)【要約】
【課題】第2級アミン系触媒を含有し、かつ長期保管した場合でも、ポリウレタン発泡体を施工する際の硬化速度が一定以上であるエアゾール用ポリオール組成物を提供すること。
【解決手段】ポリオール化合物及び触媒を含有するエアゾール用ポリオール組成物であって、前記触媒の含有量が、前記ポリオール化合物100質量部に対して、15質量部以上であり、前記触媒が、第2級アミン系触媒を含み、前記第2級アミン系触媒の含有量が、前記ポリオール化合物100質量部に対して、0.03~5質量部である、エアゾール用ポリオール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物及び触媒を含有するエアゾール用ポリオール組成物であって、
前記触媒の含有量が、前記ポリオール化合物100質量部に対して、15質量部以上であり、
前記触媒が、第2級アミン系触媒を含み、
前記第2級アミン系触媒の含有量が、前記ポリオール化合物100質量部に対して、0.03~5質量部である、エアゾール用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記第2級アミン系触媒の含有量が、触媒全量基準で25質量%以下である、請求項1に記載のエアゾール用ポリオール組成物。
【請求項3】
リン酸エステルをさらに含有する、請求項1又は2に記載のエアゾール用ポリオール組成物。
【請求項4】
固体難燃剤をさらに含有する、請求項1又は2に記載のエアゾール用ポリオール組成物。
【請求項5】
前記固体難燃剤が赤燐系難燃剤を含む、請求項4に記載のエアゾール用ポリオール組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のエアゾール用ポリオール組成物を封入した、エアゾール容器。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のエアゾール用ポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物とを備える、ポリウレタン組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のポリウレタン組成物から形成される、ポリウレタン発泡体。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のエアゾール用ポリオール組成物が内部に封入された第1の容器と、前記ポリイソシアネート組成物が内部に封入された第2の容器とを備える、混合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物、該ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを備えるポリウレタン組成物、及び該ポリウレタン組成物から形成されたポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン発泡体(ポリウレタンフォーム)は、自動車、鉄道車輌、船舶などの乗り物、建築物などにおいて断熱材として使用されている。ポリウレタン発泡体には、別々の容器に充填されたポリオール組成物とポリイソシアネート組成物を混合して発泡体を形成する2液型ポリウレタンが広く使用される。
2液型ポリウレタンは、例えば、特許文献1~5に開示されるような、各液を比較的簡単な構成で容器から吐出させ混合させることが可能なエアゾール容器で使用されることがある。2液型ポリウレタンがエアゾール容器で使用される場合、一方の容器にポリオール化合物と低沸点化合物が、他方の容器にポリイソシアネート化合物と低沸点化合物が充填される。各容器からは、低沸点化合物の蒸気圧により、ポリオール液剤及びポリイソシアネート液剤をそれぞれ吐出させ、それらを混合することで、ポリウレタン発泡体を形成する。
このようなエアゾール容器に使用されるポリオール組成物は、ポリウレタン発泡体を施工する際に発生する欠損部分を補充するのに好適に使用されることが多い。また、エアゾール用ポリオール組成物は、ポリイソシアネートとの反応性を良好とし、一定以上の硬化速度を得る観点から、アミン系触媒、特にイミダゾール系などの第2級アミン系触媒を含有していることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/067139号
【特許文献2】特開2021-155506号公報
【特許文献3】国際公開第2021/193871号
【特許文献4】国際公開第2021/193872号
【特許文献5】国際公開第2012/034492号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエアゾール用ポリオール組成物は、長期間に渡って保管をした場合には、時間経過と共に、組成物中でアミン系触媒と低沸点化合物とが反応することでアミン系触媒が失活し、ポリウレタン発泡体を施工する際の硬化速度が低下して液だれが発生する問題がある。また、このように硬化速度が低下した場合には、ポリウレタン発泡体に良好な不燃性を付与することが困難となることが多い。
そこで、本発明は、初期のみならず、長期保管した場合でも、ポリウレタン発泡体を施工する際の硬化速度が一定以上であるエアゾール用ポリオール組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の構成を有することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の[1]~[9]を提供する。
[1]ポリオール化合物及び触媒を含有するエアゾール用ポリオール組成物であって、前記触媒の含有量が、前記ポリオール化合物100質量部に対して、15質量部以上であり、前記触媒が、第2級アミン系触媒を含み、前記第2級アミン系触媒の含有量が、前記ポリオール化合物100質量部に対して、0.03~5質量部である、エアゾール用ポリオール組成物。
[2]前記第2級アミン系触媒の含有量が、触媒全量基準で25質量%以下である、[1]に記載のエアゾール用ポリオール組成物。
[3]リン酸エステルをさらに含有する、[1]又は[2]に記載のエアゾール用ポリオール組成物。
[4]固体難燃剤をさらに含有する、[1]又は[2]に記載のエアゾール用ポリオール組成物。
[5]前記固体難燃剤が赤燐系難燃剤を含む、[4]に記載のエアゾール用ポリオール組成物。
[6][1]又は[2]に記載のエアゾール用ポリオール組成物を封入した、エアゾール容器。
[7][1]又は[2]に記載のエアゾール用ポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物とを備える、ポリウレタン組成物。
[8][7]に記載のポリウレタン組成物から形成される、ポリウレタン発泡体。
[9][1]又は[2]に記載のエアゾール用ポリオール組成物が内部に封入された第1の容器と、前記ポリイソシアネート組成物が内部に封入された第2の容器とを備える、混合システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、初期のみならず、長期保管した場合でも、ポリウレタン発泡体を施工する際の硬化速度が一定以上であるエアゾール用ポリオール組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】混合システムの一実施形態を示す模式図である。
【
図2】混合システムの別の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[ポリオール組成物]
本発明のポリオール組成物は、エアゾール用ポリオール組成物であり、ポリオール化合物及び触媒を含有する。本発明のポリオール組成物は、後述するとおり、ポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物と混合してポリウレタン発泡体を製造するために使用される。以下、より詳細に説明する。
【0009】
<触媒>
本発明のポリオール組成物は、触媒を含有する。触媒としては、少なくとも、第2級アミン系触媒を含有する。
【0010】
(第2級アミン系触媒)
本発明のポリオール組成物は、第2級アミン系触媒を含有する。第2級アミン系触媒は、通常は樹脂化触媒として使用されるものである。第2級アミン系触媒を含有することで、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応性が良好となり、初期の硬化速度を一定以上とすることができる。そのため、良質なポリウレタン発泡体を形成することができる。
ここで、第2級アミン系触媒とは、第2級アミンを1個以上含む触媒をいう。第2級アミンは、窒素原子に水素原子が1個結合しているアミンである。
第2級アミン系触媒としては、イミダゾール系触媒であることが好ましい。
イミダゾール系触媒は、好ましくは1位および2位がそれぞれ独立に炭素数8以下のアルキル基で置換されたイミダゾールであり、アルキル基は好ましくは炭素数6以下、より好ましくは炭素数4以下である。イミダゾール系触媒の好適な具体例は、下記一般式(1)で表される。
【0011】
【化1】
(一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。)
【0012】
一般式(1)におけるR1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基はそれぞれ直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
R1及びR2のアルキル基又はアルケニル基の炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなり、ポリオール組成物中のイミダゾール系触媒の含有量が一定以下の場合には、ハイドロフルオロオレフィン等の低沸点化合物の影響を受けにくくなる。一方、R1及びR2のアルキル基の炭素数が前記上限値以下であると、極端に立体障害が大きくならないためポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応を速やかに進行させることが可能になり、良質なポリウレタン発泡体を形成しやすくなる。
これらの観点から、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0013】
一般式(1)で表されるイミダゾール系触媒としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられ、中でも、HFO-1234zeなどのハイドロフルオロオレフィン(HFO)存在下での触媒の活性を向上させる観点と反応を速やかに進行させる観点から、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが好ましい。また、安定性をより高める観点からは1,2-ジメチルイミダゾールがより好ましい。
【0014】
本発明のポリオール組成物における第2級アミン系触媒の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.03~5質量部である。第2級アミン系触媒の含有量が0.03質量部未満である場合、後述する触媒の総量自体が少なくなる要因となりうることで、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とが十分反応しなくなり、施工時に液だれなどの問題が発生して、良質なポリウレタン発泡体を形成することが難しくなる。また、第2級アミン系触媒の含有量が5質量部を超える場合、HFO、特にHFO-1234zeなどの低沸点化合物と第2級アミン系触媒とが反応して副生成物が多く発生して、長期保管後にポリウレタン発泡体を施工する際の硬化速度を一定以上に維持できなくなり、ポリウレタン発泡体に良好な不燃性を付与することが難しくなる。以上の観点を踏まえると、第2級アミン系触媒の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.05~4質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましい。
【0015】
(第2級アミン系触媒以外の樹脂化触媒)
本発明のポリオール組成物は、樹脂化触媒として、金属系触媒(樹脂化金属系触媒)を含有してもよい。樹脂化金属系触媒としては、鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどからなる金属塩が挙げられ、好ましくは鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどからなる有機酸金属塩であり、中でも、ビスマス系触媒が好ましい。金属系触媒としては、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫バーサテート、ビスマストリオクテート、ビスマストリス(2-エチルへキサノエート)、ジオクチル酸スズ、ジオクチル酸鉛などが挙げられ、中でもビスマストリオクテートが好ましい。
【0016】
ポリオール組成物中の樹脂化金属系触媒の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、5~12質量部が更に好ましい。樹脂化金属系触媒の含有量がこれら下限値以上であるとウレタン結合が形成しやすくなり、反応が速やかに進行する。一方、樹脂化金属系触媒の含有量がこれら上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなる。
【0017】
樹脂化触媒の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、1~25質量部が好ましく、3~20質量部がより好ましく、6~15質量部が更に好ましい。樹脂化触媒の含有量がこれら下限値以上であるとウレタン結合が形成しやすくなり、反応が速やかに進行する。一方、これら上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなる。
【0018】
(三量化触媒)
本発明のポリオール組成物は、三量化触媒を含有してもよい。三量化触媒を含有することで、ポリオール組成物をポリイソシアネート組成物と混合した際に、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が反応して三量化し、イソシアヌレート環の生成が促進されるため、ポリウレタン発泡体に優れた不燃性を付与することができる。三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩、トリエチルモノメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用できる。アンモニウム塩としては、2,2-ジメチルプロパン酸などカルボン酸のアンモニウム塩が挙げられ、より具体的にはカルボン酸4級アンモニウム塩が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、カルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸4級アンモニウム塩から選択される1種又は2種以上が好ましく、中でもカルボン酸4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0019】
三量化触媒の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、2~25質量部が好ましく、5~20質量部がより好ましく、8~15質量部が更に好ましい。三量化触媒の含有量がこれら下限値以上であるとポリイソシアネート化合物の三量化が起こりやすくなり、得られるポリウレタン発泡体の不燃性が向上する。一方、三量化触媒の含有量が前記上限値以下であると反応の制御がし易くなる。
【0020】
本発明のポリオール組成物における触媒の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、15質量部以上である。なお、ここでいう触媒の含有量とは、ポリオール組成物に含有される触媒の総量である。
触媒の含有量が15質量部未満である場合、触媒の含有量が不十分となり、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との硬化反応を十分進行させることができないため、初期の硬化速度を一定以上とすることが難しくなる。特に、ポリオール組成物を長期保管させた後にポリウレタン発泡体を施工する際の硬化速度が低下しやすくなる。こうした観点を踏まえると、触媒の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、18質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。
また、低沸点化合物、特にHFO-1234zeなどのHFOと反応する触媒の量を抑制し、ポリオール組成物の長期保管後においても硬化速度を維持する観点から、触媒の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、45質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。
【0021】
触媒として、三量化触媒と樹脂化触媒とを併用する場合は、三量化触媒に対する樹脂化触媒の量(樹脂化触媒の量/三量化触媒の量)は、特に限定されないが、好ましくは0.1~2.2、より好ましくは0.3~2であり、さらに好ましくは0.35~1.5である。樹脂化触媒の量が上記下限値以上であると、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応性を良好にしやすくなる。他方、樹脂化触媒の量が上記上限値以下であると、触媒に占める三量化触媒の割合が一定以上となり、優れた不燃性をポリウレタン発泡体に付与しやすくなる。
【0022】
本発明のポリオール組成物における、触媒全量基準の第2級アミン系触媒の含有量(以下、「第2級アミン系触媒の含有率」ともいう)は、25質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。第2級アミン系触媒の含有率が上記上限値以下であることで、全触媒に占める第2級アミン系触媒の割合が一定以下となり、ポリオール組成物を長期保管した場合でも、ポリウレタン発泡体を施工する際の硬化速度を一定以上に維持することができる。また、第2級アミン系触媒の含有率の下限は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応性を良好として良質なポリウレタン発泡体を得る観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。
【0023】
<ポリオール化合物>
本発明のポリオール組成物は、ポリウレタン発泡体の原料となるポリオール化合物を含有する。ポリオール化合物としては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。ポリオール化合物は、通常、常温(23℃)、常圧(1気圧)で液体となる。
【0024】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0025】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、及びクレゾールノボラック等が挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、及びジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオール等のアルカンジオールが挙げられる。
【0026】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、及びα-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0027】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、及び多価アルコールの変性ポリオール又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0028】
多価アルコールの変性ポリオールとしては、例えば、原料の多価アルコールにアルキレンオキサイドを反応させて変性したもの等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン及びトリメチロールプロパン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト-ス、メチルグルコシド及びその誘導体等の四~八価のアルコール、フロログルシノール、クレゾール、ピロガロール、カテコ-ル、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、及び1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン等のポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)が挙げられる。
【0029】
多価アルコールの変性方法は特に限定されないが、アルキレンオキサイド(以下、「AO」ともいう)を付加させる方法が好適に用いられる。AOとしては、炭素数2~6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、「EO」ともいう)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、「PO」ともいう)、1,3-プロピレオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、及び1,4-ブチレンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも性状や反応性の観点から、PO、EO及び1,2-ブチレンオキサイドが好ましく、PO及びEOがより好ましい。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0030】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0031】
本発明に使用するポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールが好ましい。中でも、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)等の芳香族環を有する多塩基酸と、ビスフェノールA、エチレングリコール、及び1,2-プロピレングリコール等の2価アルコールとを脱水縮合して得られる芳香族系ポリエステルポリオールがより好ましい。また、水酸基を2個有するポリオールが好ましい。
【0032】
ポリオール化合物の水酸基価は、20~300mgKOH/gが好ましく、30~250mgKOH/gがより好ましく、50~220mgKOH/gがさらに好ましい。ポリオール化合物の水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール組成物の粘度が下がりやすく、取り扱い性等の観点で好ましい。一方、ポリオール化合物の水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタン発泡体の架橋密度が上がることにより強度が高くなる。
なお、ポリオール化合物の水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0033】
本発明のポリオール組成物中のポリオール化合物の含有量は、好ましくは15~80質量%、より好ましくは20~70質量%、更に好ましくは25~55質量%である。ポリオール化合物の含有量が前記下限値以上であるとポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくなるため好ましい。一方、ポリオール化合物の含有量が上記上限値以下であると、ポリオール組成物の粘度が高くなりすぎないため取扱い性の観点で好ましい。
【0034】
<リン酸エステル>
本発明におけるポリオール組成物は、リン酸エステルを含有することが好ましい。
リン酸エステルは、難燃剤として機能するものであり、リン酸エステルを含有することで、吐出流速、混合性などを殆ど低下させることなく、ポリウレタン発泡体の不燃性を良好にしやすくなる。リン酸エステルは、一般的に液状難燃剤である。なお、液状難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)にて液体となる難燃剤である。
【0035】
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェートなどのトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどの芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェートなどの酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0036】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェートなどの芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0037】
リン酸エステルは、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール化合物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタン発泡体の不燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
【0038】
ポリオール組成物がリン酸エステルを含む場合、リン酸エステルの含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、5~100質量部が好ましく、10~80質量部がより好ましく、20~70質量部がさらに好ましく、35~65質量部がより更に好ましい。リン酸エステルの含有量をこれら下限値以上とすることで、リン酸エステルを含有させる効果を発揮しやすくなる。また、上限値以下とすることで、リン酸エステルによって、ポリウレタン発泡体の発泡が阻害されたりすることもない。
【0039】
<フィラー>
本発明のポリオール組成物は、フィラーを含有することが好ましい。フィラーを含有させることで、ポリウレタン発泡体の難燃性などの各種性能を向上させやすくなる。フィラーは、固体難燃剤を含むことが好ましい。フィラーとして固体難燃剤を使用することで、ポリウレタン発泡体に高い難燃性能を付与できる。なお、固体難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体となる難燃剤である。
固体難燃剤としては、赤燐系難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、針状フィラー等が挙げられる。
【0040】
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤燐と樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などとを混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0041】
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸類と周期表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩類が挙げられる。
リン酸類は、特に限定されないが、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸などのモノリン酸類でもよいし、ピロリン酸、ポリリン酸等であってもよい。
周期表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
前記脂肪族アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物としては、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0042】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、亜リン酸アルミニウム、第三リン酸アルミニウム等のモノリン酸塩類、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから1種もしくは2種以上を使用することができる。本発明においては、第三リン酸アルミニウムが好ましい。
【0043】
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0044】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記した中では、臭素化芳香環含有芳香族化合物が好ましく、中でも、ヘキサブロモベンゼンなどのモノマー系有機臭素化合物が好ましい。
【0045】
本発明で使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0046】
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましいアンチモン含有難燃剤は三酸化アンチモンである。
【0047】
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましい金属水酸化物は水酸化アルミニウムである。
【0048】
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、珪素系フィラー、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
これらの針状フィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。なお、当該アスペクト比は、走査型電子顕微鏡で針状フィラーを観察してその長さと幅を測定して求めることができる。
【0050】
本発明において使用する固体難燃剤は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。2種以上を併用して使用する場合、例えば、針状フィラーとして、チタン酸カリウムウィスカー及びホウ酸アルミニウムウィスカーを含有するなど、同じ分類の固体難燃剤を2種以上使用してもよいし、赤燐系難燃剤及び針状フィラーを含有するなど、異なる分類の固体難燃剤を1種以上ずつ使用してもよい。
固体難燃剤を含有する場合の固体難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール化合物100質量部に対して、例えば30~120質量部、好ましくは40~100質量部、より好ましくは50~90質量部、更に好ましくは60~85質量部である。固体難燃剤の含有量を上記範囲内とすることで、固形分を必要以上に増加させることなく、固体難燃剤の沈降を防止し、その分散性を良好にできる。
【0051】
本発明で使用する固体難燃剤は、赤燐系難燃剤を含むことが好ましい。固体難燃剤として赤燐系難燃剤を含む場合、赤燐系難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール化合物100質量部に対して、10~60質量部が好ましく、15~50質量部がより好ましく、20~40質量部が更に好ましく、25~35質量部がよりさらに好ましい。赤燐系難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、ポリウレタン発泡体に良好な不燃性を付与することが可能になる。また、上記上限値以下とすることで、ポリオール組成物を吐出させる際の取り扱い性などが良好になる。
【0052】
本発明で使用する固体難燃剤としては、ポリウレタン発泡体により優れた不燃性を付与しやすくする観点から、赤燐系難燃剤に加え、赤燐系難燃剤以外の固体難燃剤を含有することが好ましい。赤燐系難燃剤以外の固体難燃剤としては、上記したものから適宜選択するとよいが、臭素含有難燃剤及びホウ素含有難燃剤から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、臭素含有難燃剤及びホウ素含有難燃剤をいずれも含有することがより好ましい。
【0053】
また、ポリオール組成物は、フィラーとして沈降防止剤を含有してもよい。沈降防止剤を使用することにより、ポリオール組成物に分散された固体難燃剤等の沈殿を防止できるため、固体難燃剤等が吐出されやすくなり、不燃性の高いポリウレタン発泡体を形成しやすくなる。また、沈降防止剤の使用により、赤燐系難燃剤などのフィラーを均一に分散させやすくなる。
【0054】
沈降防止剤としては、特に限定はないが、例えば、カーボンブラック、粉状シリカ、有機クレー等から選択される一種又は二種以上を使用することが好ましく、これらの中では粉状シリカがより好ましい。
沈降防止剤に使用するカーボンブラックは、ファーネス法、チャンネル法、サーマル法等の方法で製造されたものを使用することができる。カーボンブラックは、市販品を適宜選択して使用すればよい。
また、粉状シリカとしては、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカゲルなどを使用できる。これらの中では、フュームドシリカが好ましい。フュームドシリカとしては、日本アエロジル社のアエロジル(登録商標)などを使用できる。
【0055】
ポリオール組成物中の沈降防止剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、1~6質量部が好ましく、1.5~5.5質量部がより好ましく、2~5質量部がさらに好ましく、2.5~4.5質量部がより更に好ましい。沈降防止剤の含有量が上記下限値以上であると、赤燐系難燃剤などのフィラーがポリオール組成物内で沈殿することが防止され、ポリオール組成物の吐出性が良好となる。また、沈降防止剤の含有量が上記上限値以下であると、ポリオール組成物の粘度が過剰に高くならないため、吐出性を良好にしやすくなる。
【0056】
フィラーとしては、上記固体難燃剤以外の無機充填剤を使用してもよい。固体難燃剤以外の無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、シリカバルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、各種磁性粉、フライアッシュ、シリカアルミナ繊維、及びジルコニア繊維等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
本発明のポリオール組成物がフィラーを含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、ポリオール化合物100質量部に対し30~130質量部が好ましく、40~110質量部がより好ましく、55~95質量部が更に好ましく、65~90質量部がより更に好ましい。フィラーの含有量が前記下限値以上であることにより、該ポリオール組成物から形成されるポリウレタン発泡体の難燃性などの各種性能を向上させやすくなる。また、フィラーの含有量が前記上限値以下であることにより、該ポリオール組成物の粘度を一定以下に抑えることができ、取り扱い性が良好になる。
【0058】
<低沸点化合物>
本発明のポリオール組成物は、低沸点化合物を含有することが好ましい。低沸点化合物は、その蒸気圧によりポリオール組成物をエアゾール容器から吐出させると共に、ポリオール組成物を吐出する際に気化することで、ポリオール組成物や後述するポリウレタン組成物を発泡させるものである。低沸点化合物は、ポリオール組成物の吐出量を高める観点から、1気圧における沸点(以下、単に「沸点」ともいう)が10℃以下であることが好ましい。低沸点化合物の沸点が10℃以下であると、ポリオール組成物を、例えばエアゾール容器内に充填した場合に、容器内の蒸気圧が十分高められ、該組成物を十分に吐出させることができる。こうした吐出性の観点から、低沸点化合物は、沸点が0℃以下のものが好ましく、-10℃以下のものがより好ましく、-15℃以下のものがさらに好ましい。ここで、低沸点化合物の沸点は、低沸点化合物単体の沸点を意味し、例えば、低沸点化合物が他の化合物と共沸する場合において、その共沸する沸点を意味するものではない。
【0059】
低沸点化合物の種類は、その蒸気圧によりポリオール組成物を吐出させることが可能であれば特に制限されず、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、炭化水素、エーテル化合物、無機系ガスなどを使用できる。これらの中でも、環境負荷を低減する観点、吐出性、混合性を良好にする観点から、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、炭化水素、エーテル化合物、無機系ガスなどが好適に使用することができ、さらにその中でも、低沸点化合物としてハイドロフルオロオレフィン(HFO)を含むことが好ましい。HFOは、低沸点化合物として単独で使用してもよいし、無機系ガスなどのHFO以外の低沸点化合物と組み合わせて使用してもよい。ポリオール組成物において、低沸点化合物のうちHFOの含有量は、50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましい。
【0060】
低沸点化合物のHFOとしては、上記の通り、沸点が0℃以下のものが好ましく、-10℃以下のものがより好ましく、-15℃以下のものがさらに好ましい。また、HFOの沸点は、特に限定されないが、取扱い性、保管性などの観点から、-50℃以上が好ましく、-35℃以上がより好ましく、-25℃以上がさらに好ましい。
低沸点化合物のHFOとしては、例えば、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)などが挙げられる。HFOは、水素、フッ素、及び炭素からなる化合物でもよいが、塩素をさらに含むハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよい。
HFOは、上記の中でも、吐出性を良好にする観点などから、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)が好ましい。なお、一般的に、HFO、例えばHFO-1234zeは、樹脂化触媒として含有される第2級アミン系触媒と反応しやすく、第2級アミン系触媒を失活させることがあるが、本発明では、上記した通り、第2級アミン系触媒の含有量を一定以下とすると、第2級アミン系触媒との反応が限定的となり、第2級アミン系触媒の失活を抑制することができる。
【0061】
炭化水素としては、エタン、プロパン、イソブタン、ノルマルブタンなどの各種ブタンなどの炭素数1~4の炭化水素が挙げられる。また、炭素数1~4の炭化水素としては、例えば、プロパンとブタン類とを主成分とするLPG(液化石油ガス)なども好適な具体例として挙げられる。
エーテル化合物としては、ジメチルエーテルなどが挙げられる。
無機系ガスとしては、窒素、二酸化炭素、アルゴンガスなどが挙げられ、これらの中では、窒素が好ましい。
【0062】
ポリオール組成物における低沸点化合物の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは10~120質量部であり、より好ましくは20~100質量部であり、さらに好ましくは30~70質量部である。ポリオール組成物における低沸点化合物の含有量が上記下限値以上であると、エアゾール容器内の蒸気圧を一定以上となり、ポリオール組成物の吐出性を良好にできる。また、ポリオール組成物における低沸点化合物の含有量が上記上限値以下であると、エアゾール容器内の蒸気圧が適切になり、取扱い性、保管性などが向上する。
【0063】
ポリオール組成物におけるHFOの含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは10~110質量部であり、より好ましくは20~90質量部であり、さらに好ましくは30~65質量部である。ポリオール組成物におけるHFOの含有量が上記下限値以上であると、エアゾール容器内の蒸気圧を一定以上となり、ポリオール組成物の吐出性を良好にできる。また、ポリオール組成物におけるHFOの含有量が上記上限値以下であると、エアゾール容器内の蒸気圧が適切になり、取扱い性、保管性などが向上する。
【0064】
<整泡剤>
本発明のポリオール組成物は、整泡剤を含有してもよい。整泡剤は、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とから得られるポリウレタン組成物の発泡性を向上させる。
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。これらの整泡剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
整泡剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~8質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。整泡剤の含有量がこれら下限値以上であるとポリウレタン組成物を発泡させやすくなり、均質なポリウレタン発泡体を得やすくなる。また、整泡剤の含有量がこれら上限値以下であると製造コストと得られる効果のバランスが良好になる。
【0065】
<その他の成分>
ポリオール組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤などの添加剤を含むことができる。
【0066】
[容器]
本発明の容器は、上記したポリオール組成物を封入した容器である。該容器は、低沸点化合物の蒸気圧によりポリオール組成物を吐出させることが可能なエアゾール容器である。エアゾール容器は、例えば、ポリオール組成物が充填される容器本体と、容器本体の上部をシールするキャップ部を備え、キャップ部に設けられたボタンなどが押されることで弁などが開いて内圧が開放され、低沸点化合物の蒸気圧によりキャップ部に設けられた吐出口からポリオール組成物が吐出する。
容器内にポリオール組成物を封入する方法は特に限定されないが、低沸点化合物以外の各成分を、ディスパーなどを用いて必要に応じて混合した後、容器内部に充填して容器を密閉し、次いで低沸点化合物を充填する。低沸点化合物の充填は、例えば、容器のキャップ部に備えられた弁を開けて、低沸点化合物を容器内部に注入することで行うことができる。
【0067】
容器からポリオール組成物を吐出する際には、ポリオール組成物を構成する各成分が均一に混合されている状態で吐出する。ポリオール組成物を構成する各成分を均一に混合するために、吐出前に容器を十分に振盪するとよい。容器の振盪は、例えば容器を手で持って上下に振ることにより行うことができる。ポリオール組成物を均一に混合する方法は、前記した方法に限定されるものではない。また、吐出する際の容器の温度は、例えば10℃以上40℃以下が好ましい。10℃以上であると、液温が一定程度高いため吐出が良好となり、40℃以下であると容器の破裂などが防止される。
【0068】
[ポリウレタン組成物]
本発明のポリウレタン組成物は、ポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物を含有するポリイソシアネート組成物とを備える。すなわち、上記した本発明のポリオール組成物は、2液型ポリウレタンのポリオール組成物として使用するものであって、ポリイソシアネート化合物を含有するポリイソシアネート組成物と混合させポリウレタン組成物として使用する。ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とは、後述するようにイソシアネートインデックスが所定の範囲になる質量割合で混合させるとよい。
ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを混合して得られたポリウレタン組成物は、反応し、かつ上記したポリオール組成物に含有される低沸点化合物、又は後述するポリイソシアネート組成物に含有される低沸点化合物などによって、発泡することでポリウレタン発泡体となる。
【0069】
<ポリイソシアネート組成物>
本発明のポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系などの各種ポリイソシアネート化合物を用いることができる。好ましくは、取扱の容易さ、反応の速さ、得られるポリウレタン発泡体の物理特性が優れていること、および低コストであることなどから、液状ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。液状MDIとしては、クルードMDI(ポリメリックMDIともいう)が挙げられる。液状MDIの具体的な市販品としては、「44V-10」,「44V-20」(住化コベストロウレタン株式会社製)、「ミリオネートMR-200」(日本ポリウレタン工業)などが挙げられる。また、ウレトンイミン含有MDI(例えば、市販品として「ミリオネートMTL」:日本ポリウレタン工業製)などでもよい。また、ポリイソポリシアネート化合物内のイソシアネート活性基の一部を水酸基含有化合物と反応させ、予めポリオールとの親和性を高めた処置を施したものを使用してもよい。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよく、併用するポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート化合物は限定なく使用可能である。
【0070】
本発明のポリウレタン組成物のイソシアネートインデックスは、100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、2000以上がさらに好ましい。イソシアネートインデックスがこれら下限値以上であると、ポリオール化合物に対するポリイソシアネート化合物の量が過剰になりポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合が生成しやすくなる結果、ポリウレタン発泡体の不燃性が向上する。
また、ポリウレタン組成物のイソシアネートインデックスは、好ましくは600以下であり、より好ましくは550以下であり、さらに好ましくは500以下である。イソシアネートインデックスがこれら上限値以下であると、得られるポリウレタン発泡体の不燃性と製造コストとのバランスが良好になる。
イソシアネートインデックス(INDEX)は、以下の方法にて算出される。
【0071】
INDEX=ポリイソシアネート化合物の当量数÷(ポリオール化合物の当量数+水の当量数)×100
ここで、
ポリイソシアネート化合物の当量数=ポリイソシアネート化合物の使用部数×NCO含有率(%)×100/NCO分子量
ポリオール化合物の当量数=OHV×ポリオール化合物の使用部数÷KOHの分子量、OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)、
水の当量数=水の使用部数×水のOH基の数/水の分子量
である。なお上記式において、使用部数の単位は重量(g)であり、NCO基の分子量は42、NCO含有率はポリイソシアネート化合物中のNCO基の割合を質量%で表したものであり、上記式の単位換算の都合上KOHの分子量は56100とし、水の分子量は18、水のOH基の数は2とする。
【0072】
ポリイソシアネート組成物は、上記したポリイソシアネート化合物に加えて、低沸点化合物を含有することが好ましい。ポリイソシアネート組成物は、低沸点化合物を含有することで、ポリイソシアネート化合物をエアゾール容器から容易に吐出させることができる。ポリイソシアネート組成物に含有される低沸点化合物としては、ポリオール組成物に含有される低沸点化合物として上述したものを特に制限なく使用することができる。なお、ポリイソシアネート組成物で使用する低沸点化合物は、ポリオール組成物に使用する低沸点化合物と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ポリイソシアネート組成物中に含有する低沸点化合物としては、HFO、炭素数1~4の炭化水素、エーテル化合物、無機系ガスなどが好適に使用することができ、さらにその中でも、低沸点化合物としてハイドロフルオロオレフィン(HFO)を含むことが好ましい。HFOは、無機系ガスなどのHFO以外の低沸点化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0073】
HFOは、低沸点化合物として単独で使用してもよいが、HFOと無機系ガスとを併用することがより好ましく、HFOと窒素とを併用することがさらに好ましい。HFOと共に、無機系ガスを含むことにより、ポリイソシアネート化合物の吐出量を多くすることができるため、より不燃性に優れたポリウレタン発泡体を形成することができる。
ポリイソシアネート組成物において、HFOと無機系ガスと併用する場合、HFOに対する無機系ガスの含有量比は、0.5/10~10/10であることが好ましく、0.7/10~5/10であることがより好ましく、1/10~3/10であることがさらに好ましい。HFOに対する無機系ガスの含有量比が上記下限値以上であると、ポリイソシアネート組成物を充填した容器内の蒸気圧が高まるため、ポリイソシアネート化合物の吐出量が一定以上となり、不燃性に優れたポリウレタン発泡体を形成しやすくなる。また、HFOに対する無機系ガスの含有量比が上記上限値以下であると、ポリイソシアネート化合物の吐出量が適切に制御され、良質なポリウレタン発泡体を形成することができる。
【0074】
ポリイソシアネート組成物における低沸点化合物の含有量は、ポリイソシアネート化合物100質量部に対し、0.5~10質量部が好ましく、1~7質量部がより好ましく、3~5質量部がさらに好ましい。低沸点化合物の含有量が上記下限値以上であると、ポリイソシアネート組成物を充填した容器内の蒸気圧が高まるため、ポリイソシアネート化合物の吐出量が一定以上となり、不燃性に優れたポリウレタン発泡体を形成しやすくなる。また、低沸点化合物の含有量が上記上限値以下であると、ポリイソシアネート化合物の吐出量が適切に制御され、良質なポリウレタン発泡体を形成することができる。
【0075】
なお、ポリイソシアネート組成物は、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料などの添加剤を適宜含むことができる。
【0076】
[混合システム]
本発明は、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを混合するための混合システムも提供する。
図1に示すように、混合システム10は、ポリオール組成物が内部に封入された第1の容器11と、ポリイソシアネート組成物が内部に封入された第2の容器12とを備える。第1の容器11、第2の容器12はいずれもエアゾール容器(スプレー缶)である。
第1の容器11に封入されたポリオール組成物は、ポリオール組成物に含有される低沸点化合物の蒸気圧により吐出されるとよい。第2の容器12に封入されたポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート組成物に含有される低沸点化合物の蒸気圧により吐出されるとよい。なお、第1の容器11内部では、低沸点化合物は一部が気化して気相を形成する。第2の容器12内部においても同様である。
第1及び第2の容器11、12から吐出されたポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物は、混合しながら低沸点化合物などにより発泡し、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とが反応することで、ポリウレタン発泡体を形成する。
【0077】
混合システム10は、混合器13を備えるとよい。第1及び第2の容器11、12それぞれの吐出口11A、12Aは、供給ライン11B、12Bを介して混合器13に接続される。第1及び第2の容器11、12から吐出されたポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物は、それぞれ供給ライン11B、12Bを介して混合器13に供給され、これらは混合器13にて混合される。混合器13で混合されたポリオール組成物とポリイソシアネート組成物は、噴射器などにより、施工対象面に吹き付けられるとよい。
【0078】
混合器13は、いわゆるスタテックミキサーと呼ばれる静止型混合器であることが好ましい。静止型混合器は、駆動部のない混合器であって、流体が管体内部を通過することで、流体が混合されるものである。静止型混合器は、例えば、
図1に示すように管体13Aの内部にミキサーエレメント13Bが配置されたものが挙げられる。ミキサーエレメント13Bとしては、螺旋状に形成されたもの、複数の邪魔板が形成されたものなどがある。
静止型混合器は、噴射器の機能を兼ね備えたものでもよく、その場合、
図1に示すように管体13A内部で混合されたポリオール組成物とポリイソシアネート組成物の混合物を管体の先端13Cから噴射するとよい。なお、
図1では、第1及び第2の容器11、12から吐出されたポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物が混合器に導入される態様を示しているが、混合システム10は、混合器に導入される前段の位置に、吐出用ガンや治具などを備えていてもよい。
【0079】
混合器に導入される前段の位置に、吐出用ガンを備えた態様の一例として、
図2に混合システム20を示す。混合システム20は、第1の容器11と第2の容器12と、供給ライン11B及び12Bと、吐出用ガン14と、混合器13とを備える。第1の容器11と第2の容器12については上記説明したとおりであり、それぞれポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物を収容している。第1及び第2の容器から、ポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物が、それぞれ供給ライン11B、12Bを介して吐出用ガン14に送液される。吐出用ガン14はレバー14Aを備えており、送液のON-OFF機構を有する。具体的には、レバー14Aを引くと、ポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物が混合器13に送液され、レバー14Aを離すと混合器13への送液が停止される。吐出用ガン14を備える混合システム20を用いることで、必要に応じて送液を行うことができるため、ポリウレタン発泡体を形成する際の作業性が向上する。
【0080】
本発明では、ポリウレタン組成物から形成されるポリウレタン発泡体は、様々な用途で使用可能であるが、断熱材として使用することが好ましい。ポリウレタン発泡体は、多数の気泡を有するので、それにより断熱効果を有する。
ポリウレタン発泡体は、特に、乗り物または建築物の断熱材として使用することがより好ましい。乗り物としては、鉄道車輌、自動車、船舶、航空機などが挙げられる。
また、本発明では、エアゾール容器を用いて、簡単な構成で、ポリウレタン発泡体を形成できる。また、容器を用いて発泡体を形成できるため、例えば、ポリウレタン発泡体が欠損している箇所の補充など、施工対象面が比較的小さい場合に特に好適である。したがって、例えば、既設の耐熱材が劣化、損傷などした箇所に吹き付けて補修する補修用途に使用することが好ましい。勿論、そのような用途に限定されず、新設の耐熱材を形成するために使用してもよい。
【0081】
本発明のポリウレタン組成物は、ポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物それぞれを30℃で2週間放置した後、混合してポリウレタン発泡体を作製した際、作製したポリウレタン発泡体が、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/m2にて10分間加熱したときの総発熱量が8MJ以下であることが好ましい。総発熱量は、7MJ以下であることがより好ましく、6.5MJ以下であることがさらに好ましい。ポリウレタン発泡体の上記総発熱量が上記上限値以下であると、ポリオール組成物を長期保管した後であっても、ポリウレタン発泡体の不燃性が優れたものとなる。
なお、本発明のポリウレタン発泡体の上記総発熱量は、いずれも、コーンカロリーメーター試験により測定され、詳細には実施例に記載の方法で測定することができる。
【実施例0082】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0083】
[評価方法]
実施例、比較例では、ポリオール組成物の硬化速度、及びポリウレタン発泡体の不燃性を以下の評価方法により評価した。
【0084】
<初期硬化速度>
各実施例、比較例で得られた第1のエアゾール容器からポリオール組成物を吐出させ、第2のエアゾール容器から吐出させたポリイソシアネート組成物と、スタティックミキサーで混合したうえで、下記の吹付条件のもとで、石膏ボードにポリウレタン発泡体の厚みが30mm以下となるように吹き付けた。吹き付け後の表面硬化時間(タックフリータイム)を測定し、その測定値を、初期硬化速度とした。
(吹付条件)
・第1及び第2のエアゾール容器の加温温度:30℃。すなわち、第1及び第2のエアゾール容器を30℃に維持した状態で、上記吹き付けを実施した。
・基材:石膏ボード(厚み12.5mm)
・基材温度:5℃±1℃
・環境温度:5℃±1℃
【0085】
また、初期硬化速度について、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
◎:30秒未満
〇:30秒以上60秒未満
×:60秒以上
【0086】
<初期不燃性>
各実施例及び比較例で得られた第1のエアゾール容器からポリオール組成物を吐出させ、第2のエアゾール容器から吐出させたポリイソシアネート組成物と、スタティックミキサーで混合したうえで、石膏ボードに吹き付けてポリウレタン発泡体を得た。なお、吹付条件は、初期硬化速度を評価する試験と同様にした。
以上の方法により得られた発泡体から、10cm×10cm×5cmになるようにコーンカロリーメーター試験用サンプルを切り出し、ISO-5660に準拠し、放射熱強度50kW/m2にて10分間加熱したときの総発熱量を測定した。該測定値に基づき、以下の評価基準で初期不燃性を評価した。
(評価基準)
◎:加熱開始から10分の時点で、6.5MJ以下であった。
〇:加熱開始から10分の時点で、6.5MJ超8MJ以下であった。
×:加熱開始から10分の時点で、8MJ超であった。
【0087】
<経時後の硬化速度>
各実施例、比較例で得られた第1のエアゾール容器を、30℃で2週間放置した。放置後、ポリオール組成物を第1のエアゾール容器から吐出させ、第2のエアゾール容器から吐出させたポリイソシアネート組成物と、スタティックミキサーで混合したうえで、石膏ボードにポリウレタン発泡体の厚みが30mm以下となるように吹き付けた。なお、吹付条件は、初期硬化速度を評価する試験と同様にした。
吹き付け後の表面硬化時間(タックフリータイム)を測定し、その測定値を、経時後の硬化速度とした。
【0088】
また、経時後の硬化速度について、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
◎:30秒未満
〇:30秒以上60秒未満
×:60秒以上
【0089】
<経時後の不燃性>
各実施例、比較例で得られた第1及び第2のエアゾール容器を、30℃で2週間放置した。放置後、ポリオール組成物を第1のエアゾール容器から吐出させ、第2のエアゾール容器から吐出させたポリイソシアネート組成物と、スタティックミキサーで混合したうえで、石膏ボードに吹き付けてポリウレタン発泡体を得た。なお、吹付条件は、初期硬化速度を評価する試験と同様にした。
以上の方法により得られた発泡体から、10cm×10cm×5cmになるようにコーンカロリーメーター試験用サンプルを切り出し、ISO-5660に準拠し、放射熱強度50kW/m2にて10分間加熱したときの総発熱量を測定した。該測定値に基づき、以下の評価基準で経時後の不燃性を評価した。
(評価基準)
◎:加熱開始から10分の時点で、6.5MJ以下であった。
〇:加熱開始から10分の時点で、6.5MJ超8MJ以下であった。
×:加熱開始から10分の時点で、8MJ超であった。
【0090】
[使用材料]
各実施例及び比較例においては、以下の材料を使用した。
【0091】
<ポリオール化合物>
・フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
<触媒>
・三量化触媒:カルボン酸4級アンモニウム塩(有効成分量45質量%、エチレングリコールによる希釈物)(エボニック ジャパン社製、製品名:DABCO TMR-7)
・樹脂化触媒1:ビスマストリオクテート(有効成分量85質量%、シェファードケミカル社製、製品名:Bicat 8210)
・樹脂化触媒2:1,2-ジメチルイミダゾール(有効成分量70質量%、花王社製、製品名:カオライザー No.390)
<液状難燃剤>
・リン酸エステル:トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学工業社製、製品名:TMCPP)
<フィラー>
・赤燐(燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140)
・ホウ酸亜鉛(早川商事社製、製品名:Firebreak ZB)
・臭素含有難燃剤、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール社製、製品名:SAYTEX 8010)
・沈降防止剤:フュームドシリカ(日本アエロジル社製、製品名:アエロジルR967S)
<低沸点化合物>
・HFO-1234ze(ハネウエル社製、製品名:ソルティスGBA) 沸点-19℃
・窒素 沸点-195.8℃
<ポリイソシアネート化合物>
・MDI(住化コベストロウレタン社製、製品名:44V-20)
【0092】
[実施例1]
表1の配合に従い、低沸点化合物以外の成分を1000mlポリプロピレンビーカーに測りとり、ディスパーを用いて1500rpmで5分間混合させた後、エアゾール容器に移し、バキューム式クリンパーを用いて封入した後、さらに低沸点化合物を充填させ、内部にポリオール組成物が封入された第1のエアゾール容器を得た。
同様に表1の配合に従い、ポリイソシアネート化合物と共に、さらに低沸点化合物を別のエアゾール容器に充填させ、ポリイソシアネート組成物が封入された第2のエアゾール容器を得た。得られた第1及び第2のエアゾール容器を用いて各評価試験を実施した。
【0093】
[実施例2]
ポリオール組成物の組成を表1に記載したとおり変更し、かつ、初期及び経時後の不燃性の評価を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、第1のエアゾール容器、第2のエアゾール容器を作製して、ポリウレタン発泡体を得た。各評価結果を表1に示す。
【0094】
[実施例3~4、比較例1~5]
ポリオール組成物の組成を表1に記載したとおり変更した以外は、実施例1と同様に実施した。各評価結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
※表1中の各触媒の含有量は、製品としての質量部である。なお、触媒総量は、正味分の各触媒の含有量(製品としての質量部から溶媒分を除いた分)を合算したものである。
【0096】
以上の実施例から明らかな通り、本発明の要件を満たすエアゾール用ポリオール組成物は、初期のみならず長期保管後においても、ポリウレタン発泡体を施工する際の硬化速度を一定以上に維持することができていた。また、実施例1、3、4に示す通り、固体難燃剤をポリオール組成物に配合することで不燃性に優れたポリウレタン発泡体を形成することができた。
これに対し、比較例で作製したエアゾール用ポリオール組成物は、触媒の総含有量が所定量未満であるか、若しくは第2級アミン系触媒の量が所定量を超えるため、長期保管後において、ポリウレタン発泡体を施工する際の硬化速度が大幅に低下した。さらに各比較例では、固体難燃剤を実施例1、3、4と同様に配合しても、不燃性に優れたポリウレタン発泡体を形成することができなかった。