(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058849
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】対基板作業機及びそのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166215
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴幸
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353BB03
5E353EE02
5E353GG01
5E353HH66
5E353JJ21
5E353JJ42
5E353JJ52
5E353JJ54
5E353KK02
5E353KK03
5E353KK22
5E353LL04
5E353QQ06
5E353QQ08
(57)【要約】
【課題】装置構成を変更せずに対基板作業機のメンテナンス作業を容易にかつ安全に行うための技術を提供する。
【解決手段】対基板作業機は、作業実施装置と、カメラと、制御装置と、光拡散部材取付部と、を備える。作業実施装置は、基板に対して所定の対基板作業を実施する。カメラは、撮像部と、LED照明部と、を有する。撮像部は、基板、基板に実装される部品及び作業実施装置の少なくとも1つを撮像対象として撮像動作を行う。LED照明部は、撮像部が撮像動作を行うときに点灯して撮像対象に照明光を照射する。制御装置は、作業実施装置及びカメラの動作を制御する。カメラは、照明光を拡散させるための光拡散部材が取付け可能となっていると共に、作業実施装置が停止した状態でLED照明部を点灯可能に構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して所定の対基板作業を実施する作業実施装置と、
前記基板、前記基板に実装される部品及び前記作業実施装置の少なくとも1つを撮像対象として撮像動作を行う撮像部と、前記撮像部が前記撮像動作を行うときに点灯して前記撮像対象に照明光を照射するLED照明部と、を有するカメラと、
前記作業実施装置及び前記カメラの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記カメラは、前記照明光を拡散させるための光拡散部材が取付け可能となっていると共に、前記作業実施装置が停止した状態で前記LED照明部を点灯可能に構成されている、対基板作業機。
【請求項2】
前記光拡散部材は、前記照明光を透過させて拡散する光拡散レンズを含む、請求項1に記載の対基板作業機。
【請求項3】
前記光拡散部材は、板状の支持体と、前記支持体の中央部に支持されるとともに前記照明光を透過させて拡散する光拡散レンズと、前記支持体の外周部に形成された第1の取付用構造部と、を含み、
前記カメラの前面側において前記第1の取付用構造部に対応した位置には、第2の取付用構造部が形成されており、
前記第1の取付用構造部及び前記第2の取付用構造部を用いることで、前記光拡散部材が前記カメラに着脱可能に取り付けられる、請求項1に記載の対基板作業機。
【請求項4】
前記第1の取付用構造部は複数のねじ挿通孔であり、前記第2の取付用構造部は複数の雌ねじ孔であり、複数の前記ねじ挿通孔を介して、複数の雄ねじが複数の前記雌ねじ孔にそれぞれ螺着可能となっている、請求項3に記載の対基板作業機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記光拡散部材の前記カメラからの外し忘れを検知する機能を有する、請求項3に記載の対基板作業機。
【請求項6】
前記支持体において前記光拡散レンズの周囲の領域には、光不透過部が形成され、
前記制御装置は、前記カメラで撮像した画像に基づき、前記照明光が当っている範囲の広狭を判別することによって、前記光拡散部材の外し忘れを検知する、請求項5に記載の対基板作業機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記光拡散部材の外し忘れを検知しているときには、前記カメラ以外の装置の停止状態を維持する制御を行う、請求項6に記載の対基板作業機。
【請求項8】
前記対基板作業機は、移動可能なヘッドで吸着した前記部品を前記基板に実装する作業を実施する部品実装機であり、
前記カメラは、前記ヘッドに搭載されるとともに、前記基板の上方から前記基板に付されたマークを撮像するマークカメラである、請求項1~7のいずれかに記載の対基板作業機。
【請求項9】
前記部品実装機は、上面に開口部を有するとともにその下面側に各種機器が配置されているテーブルと、前記開口部に設置されたウェハエキスパンド装置とを有する、請求項8に記載の対基板作業機。
【請求項10】
基板に対して所定の対基板作業を実施する作業実施装置と、
前記基板、前記基板に実装される部品、及び前記作業実施装置の少なくとも1つを撮像対象として撮像動作を行う撮像部と、前記撮像部が前記撮像動作を行うときに点灯して前記撮像対象に照明光を照射するLED照明部と、を有するカメラと、
前記作業実施装置及び前記カメラの動作を制御する制御装置と、を備えており、
前記カメラは、前記照明光を拡散させるための光拡散部材が取付け可能となっている対基板作業機においてメンテナンスを行う方法であって、
前記作業実施装置の動作が停止した状態で前記カメラに前記光拡散部材を取付ける工程と、
前記作業実施装置の動作が停止した状態で前記LED照明部を点灯する工程と、
前記作業実施装置の動作が停止し、かつ、前記LED照明部が点灯した状態で、前記対基板作業機にメンテナンス作業を実施する工程と、
を備える、対基板作業機のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、対基板作業機及びそのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な対基板作業機が知られている。この種の対基板作業機は、基板に対して所定の作業を実施する作業実施装置などを筐体内に備えている。ところで、対基板作業機をメンテナンスする際に作業機内部が暗いと、作業者の手元がよく見えない。このため、メンテナンス作業がしにくい場合がある。そこで、特許文献1に開示された従来技術では、作業機外部から内部を確認できるように鏡やテレビカメラを設けるとともに、筐体内を照らすための照明器具を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の対基板作業機では、メンテナンス作業を容易にかつ安全に行うために、鏡、テレビカメラ、照明器具を追加で設ける必要があり、装置構成の変更を余儀なくされる。このため、装置の製造コストが高くなる等の問題があった。
【0005】
そこで本明細書は、装置構成を変更せずに対基板作業機のメンテナンス作業を容易にかつ安全に行うための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、作業実施装置と、カメラと、制御装置と、を備えた対基板作業機を開示する。作業実施装置は、基板に対して所定の対基板作業を実施する。カメラは、撮像部と、LED照明部と、を有する。撮像部は、基板、基板に実装される部品及び作業実施装置の少なくとも1つを撮像対象として撮像動作を行う。LED照明部は、撮像部が撮像動作を行うときに点灯して撮像対象に照明光を照射する。制御装置は、作業実施装置及びカメラの動作を制御する。カメラは、照明光を拡散させるための光拡散部材が取付け可能となっていると共に、作業実施装置が停止した状態でLED照明部を点灯可能に構成されている。上述した構成によると、カメラに光拡散部材を取付け、カメラのLED照明部から照射される照明光を利用してメンテナンス作業を行うことができる。これによって、装置構成を大きく変更せずに対基板作業機のメンテナンス作業を容易にかつ安全に行うことができる。
【0007】
また、本明細書は、作業実施装置と、カメラと、制御装置と、を備えた対基板作業機にメンテナンスを行う方法を開示する。作業実施装置は、基板に対して所定の対基板作業を実施する。カメラは、撮像部と、LED照明部と、を有する。撮像部は、基板、基板に実装される部品及び作業実施装置の少なくとも1つを撮像対象として撮像動作を行う。LED照明部は、撮像部が撮像動作を行うときに点灯して撮像対象に照明光を照射する。制御装置は、作業実施装置及びカメラの動作を制御する。カメラは、照明光を拡散させるための光拡散部材が取付け可能となっている。メンテナンスを行う方法は、作業実施装置の動作が停止した状態でカメラに光拡散部材を取付ける工程と、作業実施装置の動作が停止した状態でLED照明部を点灯する工程と、作業実施装置の動作が停止し、かつ、LED照明部が点灯した状態で、対基板作業機にメンテナンス作業を実施する工程と、を備える。この方法によっても、上記した対基板作業機と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の対基板作業機を具体化した実施例の部品実装機を示す概略平面図である。
【
図2】実施例の部品実装機を示す部分概略正面図である。
【
図3】実施例においてマークカメラに光拡散部材を装着する前の状態を示す側面図である。
【
図4】実施例の部品実装機に使用する光拡散部材を示す平面図である。
【
図5】実施例においてマークカメラに光拡散部材を装着した状態を示す側面図である。
【
図6】実施例においてマークカメラに光拡散部材を装着した状態を示す底面図である。
【
図7】別の実施例においてマークカメラに光拡散部材を装着した状態を示す部分側面図である。
【
図8】別の実施例においてマークカメラに光拡散部材を装着した状態を示す部分側面図である。
【
図9】別の実施例においてマークカメラに光拡散部材を装着した状態を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示する対基板作業機では、光拡散部材は、照明光を透過させて拡散する光拡散レンズを含んでいてもよい。このような構成によると、LED照明部からの照明光を好適に拡散することができる。
【0010】
本明細書に開示する対基板作業機では、光拡散部材は、板状の支持体と、支持体の中央部に支持されるとともに照明光を透過させて拡散する光拡散レンズと、支持体の外周部に形成された第1の取付用構造部と、を含んでいてもよい。カメラの前面側において第1の取付用構造部に対応した位置には、第2の取付用構造部が形成されていてもよい。第1の取付用構造部及び第2の取付用構造部を用いることで、光拡散部材がカメラに着脱可能に取り付けられていてもよい。このような構成によると、カメラへの光拡散部材の着脱を容易に行うことができる。
【0011】
本明細書に開示する対基板作業機では、第1の取付用構造部は複数のねじ挿通孔であり、第2の取付用構造部は複数の雌ねじ孔であり、複数のねじ挿通孔を介して、複数の雄ねじが複数の雌ねじ孔にそれぞれ螺着可能となっていてもよい。
【0012】
本明細書に開示する対基板作業機では、制御装置は、光拡散部材のカメラからの外し忘れを検知する機能を有していてもよい。このような構成によると、カメラに光拡散部材が取付けられた状態で対基板作業が実施されることを防止することができる。
【0013】
本明細書に開示する対基板作業機では、支持体において光拡散レンズの周囲の領域には、光不透過部が形成されてもよい。制御装置は、カメラで撮像した画像に基づき、照明光が当っている範囲の広狭を判別することによって、光拡散部材の外し忘れを検知してもよい。このような構成によると、光拡散部材の外し忘れを検知するための構成を付加することなく、光拡散部材の外し忘れを検知することができる。
【0014】
本明細書に開示する対基板作業機では、制御装置は、光拡散部材の外し忘れを検知しているときには、カメラ以外の装置の停止状態を維持する制御を行ってもよい。このような構成によると、カメラに光拡散部材が取付けられた状態で対基板作業が実施されることを確実に防止することができる。
【0015】
本明細書に開示する対基板作業機では、対基板作業機は、移動可能なヘッドで吸着した部品を基板に実装する作業を実施する部品実装機であってもよい。カメラは、ヘッドに搭載されるとともに、基板の上方から基板に付されたマークを撮像するマークカメラであってもよい。
【0016】
本明細書に開示する対基板作業機では、部品実装機は、上面に開口部を有するとともにその下面側に各種機器が配置されているテーブルと、開口部に設置されたウェハエキスパンド装置とを有していてもよい。
【0017】
(実施例1)
以下、本発明に係る部品実装機11(対基板作業機の一例)の一実施例について図面を参照して説明する。
図1は実施例1の部品実装機11の概略平面図、
図2は部品実装機11の部分概略正面図である。なお、
図1~
図2では、部品実装機11を簡略化して描いている。また、図中には、XYZ座標が定義されている。
図3は、マークカメラ36に光拡散部材71を装着する前の状態を示す側面図である。
【0018】
図1に示す部品実装機11は、対基板作業機の一種であって、基板1に対して複数種類の部品2(ダイ2b及びSMD2a)を実装するための装置である。
【0019】
部品実装機11は、コンベア21、XYロボット26、ヘッドユニット31、マークカメラ36、パーツカメラ41、ノズルステーション42、部品フィーダ46、ダイ供給装置51、制御装置61、等を備えている。
【0020】
コンベア21は、基板1を装置内の作業位置に搬入すると共に、部品実装後の基板1を作業位置から搬出する作業を実施するための装置(作業実施装置の一例)である。コンベア21は、基板1を下方から支持する支持装置(図示省略)と、コンベア駆動用の駆動装置(図示省略)とを備えている。コンベア21は、基板1をX軸の負方向から正方向に(
図1の左側から右側に)搬送する。
【0021】
XYロボット26は、ヘッドユニット31をX方向及びY方向に移動させることにより、部品フィーダ46及びダイ供給装置51の上方と基板1の上方との間で、部品実装ヘッド32を移動させる移動機構である。XYロボット26は、ヘッドユニット31をY方向にスライド移動させるY軸スライダ27と、ヘッドユニット31をX方向にスライド移動させるX軸スライダ28と、を備えている。ヘッドユニット31は、X軸スライダ28に支持されている。XYロボット26は、筐体(図示省略)の内部に収容されると共に、基板1の上方に配置されている。
【0022】
ヘッドユニット31は、部品実装ヘッド32で吸着した部品2を基板1へ装着する作業を実施する可動ユニット(作業実施装置)である。ヘッドユニット31は、部品実装ヘッド32と、マークカメラ36とを備えている。部品実装ヘッド32は、図示しないホルダを介してヘッドユニット31の下面側に取り付けられている。部品実装ヘッド32は、複数の吸着ノズル33を備えている。複数の吸着ノズル33は、部品実装ヘッド32に着脱可能に支持されている。複数の吸着ノズル33は、部品実装ヘッド32に収容されたアクチュエータ(図示省略)によって上下方向(図面Z方向)に昇降されると共に、部品2を先端に吸着可能に構成されている。
【0023】
マークカメラ36は、ヘッドユニット31に搭載されており、部品実装ヘッド32と共に移動可能に構成されている。マークカメラ36は、部品実装ヘッド32の近傍に配置されており、コンベア21により作業位置に搬入されてきた基板1の上方に移動して、その基板1に付されたマークを撮像対象として撮像する。
図2、
図3に示すように、マークカメラ36は、カメラ本体37と、撮像部38と、LED照明部39と、を有している。撮像部38は、矩形箱状のカメラ本体37の上面中央部に設置されている。撮像部38は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を用いて構成されている。LED照明部39は、カメラ本体37の内部における複数箇所に配置されており、撮像部38が撮像動作を行うときに点灯して撮像対象に照明光L1を照射する。カメラ本体37は、下面側に円形状の外形を有するフランジ部37bを有している。フランジ部37bの中央部には、カメラ本体37の内外を連通する開口37aが形成されている。LED照明部39の発した照明光L1は、開口37aを介してマークカメラ36の外方に放射される。
【0024】
パーツカメラ41は、コンベア21の脇に配置された支持台であるテーブル22に上向きに設けられている。パーツカメラ41は、部品実装ヘッド32の移動経路の下方位置に設けられており、部品実装ヘッド32によって吸着された部品2を撮像対象として下方から撮像する。パーツカメラ41も、カメラ本体、撮像部、LED照明部等(いずれも図示省略)を有している。パーツカメラ41の撮像部38も、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を用いて構成されている。
【0025】
ノズルステーション42は、テーブル22においてパーツカメラ41のすぐ横に設けられている。ノズルステーション42は、複数の吸着ノズル33を保管している。部品実装ヘッド32に保持された吸着ノズル33は、ノズルステーション42に保管されている吸着ノズル33と自動的に交換される。
【0026】
各々の部品フィーダ46は、複数の部品2(SMD2a)を収容している。部品フィーダ46は、フィーダ保持部47に着脱可能に取り付けられ、ヘッドユニット31へ部品2を供給する。部品フィーダ46の具体的な構成は限定されない。例えば、テープ上に複数の部品2を収容するテープ式フィーダ、トレイ上に複数の部品2を収容するトレイ式フィーダ、又は、容器内に複数の部品2をランダムに収容するバルク式フィーダのいずれであってもよい。
【0027】
ダイ供給装置51は、ダイシングシート3上に貼着された1枚のウェハをダイシングして形成したダイ2bを供給するための装置であって、ウェハ収容部52と、移動機構53と、ウェハエキスパンド装置54と、を備えている。ダイ供給装置51から供給されるダイ2bは、部品実装ヘッド32で吸着されて基板1に実装される。ウェハ収容部52は、ウェハ1が貼着されたダイシングシート3を保持するリング状のウェハフレーム4を複数収容する。ダイシングシート3は、エキスパンド可能な材料により形成されたシートであり、その上面側には複数のダイ2bが貼着されている。ウェハ収容部52は、図示しないマガジンと昇降機構とを備えており、マガジン内に収容されているウェハフレーム4をウェハエキスパンド装置54に対して供給する。移動機構53は、ウェハエキスパンド装置54の上方位置に設けられており、ウェハ収容部52とウェハエキスパンド装置54との間で、ウェハフレーム4を移動させる。移動機構53は、ウェハフレーム4をクランプした状態で一対のガイドレール55上を移動するように構成されている。
【0028】
図2に示すように、テーブル22は上面に開口部22aを有し、開口部22aの上側には 円環状のウェハエキスパンド装置54が設置されている。ウェハエキスパンド装置54は、ウェハフレーム4を固定した状態でダイシングシート3を拡張し、ダイ2b同士の間隔を拡げるために使用する装置である。テーブル22の下面側には、各種機器57が配置されている。このような機器57の一例である突き上げ機構58は、ウェハエキスパンド装置54の直下に配置されている。突き上げ機構58は、ウェハエキスパンド装置54によってエキスパンドされたウェハを下方から突き上げるための機構である。ウェハエキスパンド装置54によってウェハを突き上げることで、ダイ2bを吸着ノズル33が容易にピックアップできる。テーブル22の下面側には、その他の機器57として、例えば、ポッドチェンジャーやノズルチェンジャーなどが配置されている。
【0029】
制御装置61は、部品実装機11内の各部(即ち作業実施装置やカメラ等)の動作を制御する装置であり、例えばCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。制御装置61は、CPUのほかに、ROM、HDD、RAM、入出力インタフェースなどを備えている。これらはバスを介して相互に通信可能に接続されている。制御装置61は、コンベア21、XYロボット26、ヘッドユニット31、マークカメラ36、パーツカメラ41、ノズルステーション42、部品フィーダ46、ダイ供給装置51等と通信可能に接続されている。制御装置61は、各部を制御して、部品2の基板1への実装、基板1や部品2等を撮像対象とした撮像動作、基板1の搬送、各種情報の表示等を実行する。また、制御装置61は、撮像動作により得た画像データに基づく画像認識処理なども実行する。
【0030】
図3に示すように、本実施例のマークカメラ36は、装置のメンテナンス時に使用する構造物を一時的に取付け可能な構成を備えている。具体的には、マークカメラ36は、メンテナンスを行うときに照明光L1を拡散させるための光拡散部材71(
図3、
図4参照)を取り付けることが可能な光拡散部材取付部76を備えている。
【0031】
図4に示すように、本実施例の光拡散部材71は、支持体72と、光拡散レンズ73と、ねじ挿通孔74と、を含む。支持体72は、マークカメラ36の開口37aを全体的に覆うことができる大きさの矩形板状の部材であって、光を透過しない材料を用いて形成されている。支持体72の中央部には、円形状のレンズ取付孔75が形成されている。レンズ取付孔75には、照明光L1を透過させて拡散するための光拡散レンズ73が支持されている。光拡散レンズ73としては、従来公知の市販品を使用することができる。なお、支持体72において光拡散レンズ73を包囲する領域が光不透過部72aであることを示すために、
図4,6では便宜上ハッチングを用いて表している。支持体72の外周部における離間した4箇所(即ち4つのコーナー部)には、それぞれねじ挿通孔74(第1の取付用構造部の一例)が形成されている。各々のねじ挿通孔74は、支持体72の厚さ方向に沿って形成され、支持体72の上面及び下面を貫通している。
【0032】
一方、マークカメラ36の前面側にあるフランジ部37bにおいて各々のねじ挿通孔74に対応した位置には、光拡散部材取付部としての雌ねじ孔76(第2の取付用構造部の一例)がそれぞれ形成されている。即ちフランジ部37bにおける離間した4箇所には、4つの雌ねじ孔76が形成されている。そして、複数の雄ねじ77が、複数のねじ挿通孔74を介して複数の雌ねじ孔76にそれぞれ螺着されるようになっている。これらによって、光拡散部材71がマークカメラ36の前面側に着脱可能に取り付けられる。
【0033】
ここで、部品実装機11の稼働時の動作について簡単に説明する。なお、光拡散部材71は、部品実装機11の稼働時にはまだ取り付けられていない。制御装置61は、まずコンベア21を駆動し、基板1を装置内の作業位置に搬入させる。次に、制御装置61は、ヘッドユニット31を基板1上に移動させ、マークカメラ36を駆動して基板1に付されたマークを撮像させる。そして、制御装置61は、マークカメラ36で撮像された撮像データに基づく画像認識処理を実行して、作業位置に搬入された基板1の詳細な位置を認識する。制御装置61は、XYロボット26を駆動してヘッドユニット31を部品吸着位置まで移動させ、ヘッドユニット31の吸着ノズル33に部品2を吸着させる。具体的にいうと、SMD2aを吸着する場合には、ヘッドユニット31を部品フィーダ46の上方まで移動させる。ダイ2bを吸着する場合には、ヘッドユニット31をウェハエキスパンド装置54の上方まで移動させる。その後、制御装置61はヘッドユニット31をパーツカメラ41の上方を通過させながら基板1まで移動させると共に、その移動の途中でパーツカメラ41を駆動させて部品2を撮像し、その部品2の状態をチェックする。部品実装位置までヘッドユニット31を移動させると、制御装置61は吸着ノズル33を下降させ、吸着していた部品2を開放する。この動作により基板1に部品2が実装される。全ての部品2の実装が完了したら、制御装置61はコンベア21を駆動し、基板1を作業位置から搬出させる。
【0034】
次に、部品実装機11における非稼働時に実施されるメンテナンス作業について説明する。メンテナンス作業は、通常、筐体の一部を空けた状態で行われる。制御装置61には、筐体の一部が開状態になったことを検知した信号が入力され、この信号入力を契機として制御装置61は、マークカメラ36以外の装置の停止状態を維持する制御を行う。一方、マークカメラ36については通電状態が維持されているため、撮像部38及びLED照明部39は動作可能な状態を維持している。作業者は、複数の雄ねじ77を用いて光拡散部材71をマークカメラ36に対して取り付ける。取り付けが完了したら、マークカメラ36を動作させてLED照明部39から照明光L1を照射し、この状態でメンテナンス作業を実施する。照明光L1は、光拡散部材71の光拡散レンズ73を通過することで拡散され、筐体内の比較的広い範囲が明るく照らされる。例えば、メンテナンス作業の対象がウェハエキスパンド装置54及びその下方にある各種機器57である場合には、作業者はヘッドユニット31を手動で動かして、マークカメラ36をウェハエキスパンド装置54の直上に位置させる。そしてマークカメラ36を動作させると共に、拡散された照明光L1を照射することにより、手元を明るくした状態でウェハエキスパンド装置54及び各種機器57のメンテナンス作業を行う。メンテナンス作業が終了したら、光拡散部材71をマークカメラ36から取り外し、筐体を閉じたうえで部品実装作業を再開する。
【0035】
なお、メンテナンス作業の終了後に、光拡散部材71の外し忘れに気付かないまま、部品実装作業を再開することが考えられる。このような事態を未然に防ぐために、部品実装機11の制御装置61は、光拡散部材71の外し忘れを検知する機能を有している。具体的には、非稼働時であってもマークカメラ36は動作しており、マークカメラ36は下方にある撮像エリアに照明光L1を当てながら撮像動作を行っている。例えば、光拡散部材71を外した状態では、撮像エリアが全体的に明るくなっている。これに対し、光拡散部材71を外し忘れた状態では、光拡散レンズ73を通過した光が当っている部分は丸く明るくなっている反面、その周囲の部分は暗くなっている。制御装置61は、マークカメラ36からの撮像データに基づいて画像認識処理を行い、照明光L1が当っている範囲の広狭を判別する。このような判別により、光拡散部材71の外し忘れを検知することができる。そして、外し忘れを検知したときに、制御装置61はマークカメラ36以外の装置の停止状態を維持する制御を行う。
【0036】
以上説明したように、本実施例の部品実装機11では、光拡散部材71がマークカメラ36に対して取り付け可能となっている。従って、メンテナンス作業時に、マークカメラ36のLED照明部39を光源として利用することができ、光拡散部材71を通過して拡散された照明光L1によって作業者の手元を明るく照らすことができる。よって、部品実装機11のメンテナンス作業を容易にかつ安全に行うことができる。また、従来技術とは異なり、部品実装機11の筐体内に鏡、テレビカメラ、照明器具等を追加で常設する必要はなく、装置の製造コストが増加することを抑制することができる。なお、光拡散部材71は着脱可能であるため、メンテナンス作業を行わないときにはマークカメラ36から取り外すことができる。このため、稼動時においてマークカメラ36の本来の機能に影響を与えることがない。
【0037】
本実施例の部品実装機11に使用される光拡散部材71は、複数の雄ねじ77を用いてマークカメラ36に取付ける。このため、光拡散部材71をマークカメラ36に対して比較的簡単に着脱することができる。また、光拡散部材71自体は電気的な構成を含まない簡単な構造であって、かつ安価に製造できるものであるため、これを用いたとしても装置の製造コストが増加することを抑制することができる。
【0038】
本実施例の部品実装機11では、制御装置61は、光拡散部材71の外し忘れを検知する機能を有する。すなわち、制御装置61は、マークカメラ36の撮像した画像に基づき、光拡散部材71の外し忘れを検知する。また、制御装置61は、光拡散部材71の外し忘れを検知しているときには、マークカメラ36以外の装置の停止状態を維持する制御を行う。したがって、メンテナンス作業の終了後に光拡散部材71を付けたままの状態で部品実装作業を再開することを未然に防ぐことができる。また、部品実装作業が再開されないことで、作業者に光拡散部材71の外し忘れを気付かせることができる。
【0039】
以上、実施例1について説明したが具体的な態様は上記実施例1に限定されるものではない。上記の実施例1では、照明光L1を透過させて拡散する光拡散レンズ73を採用したが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、照明光L1を透過させて拡散する非レンズ構造の光拡散部材を採用してもよい。あるいは、他の実施例では、照明光L1を反射させて拡散する光拡散部材を採用してもよい。
【0040】
上記の実施例1では、部品実装機11は、2種類の部品2(SMD2aとダイ2b)を供給するために、部品フィーダ46とウェハエキスパンド装置54とを備えるものであったが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、部品実装機11は部品フィーダ46及びウェハエキスパンド装置54のいずれか一方のみを備えるものであってもよい。
【0041】
上記の実施例1では、第1の取付用構造部74としての複数のねじ挿通孔74を光拡散部材71側に形成し、第2の取付用構造部76としての複数の雌ねじ孔76をマークカメラ36側に形成し、複数の雄ねじ77を用いてねじ止めすることで、光拡散部材71をマークカメラ36に取り付けたが、この構成に限定されるものではない。例えば、
図7に示す他の実施例では、光拡散部材71Aが略コ字状の回動部材81を備えている。回動部材81の固定端81aは、光拡散部材71Aの下面側の外縁部に回動可能に軸支されている。回動部材81の自由端81bは、光拡散部材71Aの上面側の外縁部に係止可能となっている。この構成によると、回動部材81の回動操作によって、光拡散部材71Aをマークカメラ36に着脱可能に取り付けることができる。また、ねじ止め方式に比べて簡単にかつワンタッチで着脱することができる。
【0042】
また、
図8に示す他の実施例では、光拡散部材71Bが係止片82を備えている。係止片82は、光拡散部材71Bの外縁部に一体形成されている。係止片82は光拡散部材71Bの厚さ方向に延びており、その先端には爪部82aが設けられている。一方、マークカメラ36のフランジ部37bの外周面には、爪部82aが係止可能な凹部83が形成されている。この構成によると、爪部82aを凹部83に係止させる操作によって、光拡散部材71Bをマークカメラ36に着脱可能に取り付けることができる。
【0043】
また、
図9に示す他の実施例では、光拡散部材71Cが第1永久磁石片84を備えており、マークカメラ36のフランジ部37bが第1永久磁石片84に対応する位置に第2永久磁石片85を備えている。第1永久磁石片84と第2永久磁石片85との間には、磁気的な吸引力が働く。この構成によると、第1永久磁石片84を第2永久磁石片85に磁着させる操作によって、光拡散部材71Cをマークカメラ36に着脱可能に取り付けることができる。
【0044】
上記の実施例1では、装置の非稼働時に行うメンテナンス作業時のときのみ光拡散部材71をマークカメラ36に取り付け、部品実装作業を行う装置稼働時には光拡散部材71をマークカメラ36から取り外すようにしたが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、光拡散部材71をマークカメラ36の近傍に常時装着しておき、メンテナンス作業のときのみ使用位置に移動させ、それ以外のときには邪魔にならない退避位置に退避させておくように構成してもよい。
【0045】
上記の実施例1では、既存のマークカメラ36を光源として利用すると共にそのマークカメラ36に光拡散部材71を取り付けたが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、既存のパーツカメラ41を光源として利用すると共にそのパーツカメラ41に光拡散部材71を取り付けてもよい。あるいは、既存の側面カメラがある場合には、その側面カメラを光源として利用すると共に、光拡散部材71を取り付けてもよい。なお、これらカメラのなかでは、上方から下方に向けて照明光L1を照射可能なマークカメラ36を選択することが好ましい。
【0046】
上記の実施例1では、対基板作業機が部品実装作業を実施する部品実装機11である例を示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、対基板作業機が、基板1にはんだペースト等の印刷作業(対基板作業の他の例)を実施する印刷機であってもよい。あるいは、対基板作業機が、基板1に対して実装済み部品の実装位置検査作業(対基板作業の他の例)を実施する検査機であってもよい。印刷機も検査機も通常はカメラを備えているため、その既存のカメラを光源として利用すると共にそのカメラに光拡散部材71を取り付けてもよい。
【0047】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0048】
本明細書では、請求項5において「請求項3に記載の対基板作業機」を「請求項1~4のいずれか一項に記載の対基板作業機」に変更した技術思想や、請求項7において「請求項6に記載の対基板作業機」を「請求項5又は6に記載の対基板作業機」に変更した技術思想や、請求項9において「請求項8に記載の対基板作業機」を「請求項1~8のいずれか一項に記載の対基板作業機」に変更した技術思想も開示されている。
【符号の説明】
【0049】
1: 基板
2: 部品
2a: SMD
2b: ダイ
11: 対基板作業機としての部品実装機
22: テーブル
22a: 開口部
31: 作業実施装置としてのヘッドユニット
32: ヘッドとしての部品実装ヘッド
36: カメラとしてのマークカメラ
38: 撮像部
39: LED照明部
54: ウェハエキスパンド装置
57: 機器
61: 制御装置
71、71A、71B、71C: 光拡散部材
72: 支持体
72a: 光不透過部
73: 光拡散レンズ
74: 光拡散部材取付部(第1の取付用構造部)としてのねじ挿通孔
76: 第2の取付用構造部としての雌ねじ孔
L1: 照明光