(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058854
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】音響装置および自動火災報知設備
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240422BHJP
G10K 9/12 20060101ALN20240422BHJP
G10K 9/13 20060101ALN20240422BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G10K9/12 E
G10K9/13 101J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166228
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正幸
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA06
5G405AA08
5G405AD02
5G405AD06
5G405CA11
5G405CA23
(57)【要約】
【課題】鳴動に関する動作試験機能を備えた音響装置および自動火災報知設備を得る。
【解決手段】モータ、ベル、および鳴動機構を有し、外部から駆動電圧がモータに印加されることで鳴動機構が駆動し、ベルを鳴動させる音響装置であって、外部から動作試験用電圧が印加された状態を検出する第1回路、および動作試験用電圧が印加された際にモータもしくは鳴動機構が動作試験用電圧に応じた正常な挙動を示すか否かを検出する第2回路を含む動作確認回路をさらに有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ、ベル、および鳴動機構を有し、外部から駆動電圧が前記モータに印加されることで前記鳴動機構が駆動し、前記ベルを鳴動させる音響装置であって、
外部から動作試験用電圧が印加された状態を検出する第1回路、および前記動作試験用電圧が印加された際に前記モータもしくは前記鳴動機構が前記動作試験用電圧に応じた正常な挙動を示すか否かを検出する第2回路を含む動作確認回路
をさらに有する音響装置。
【請求項2】
前記第2回路は、前記動作試験用電圧として前記駆動電圧よりも小さい電圧値が印加された際に、前記動作試験用電圧に対応する微少電流が前記モータに流れること、もしくは前記鳴動機構のベルが鳴動しない程度の微少またはゆっくりとした駆動を検出することで前記正常な挙動を示したと判断する
請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記第2回路は、前記動作試験用電圧としてあらかじめ決められたパルス幅を有する電圧が印加された際に、前記動作試験用電圧に対応する微少電流が前記モータに流れることを検出することで前記正常な挙動を示したと判断する
請求項1に記載の音響装置。
【請求項4】
前記第2回路は、前記動作試験用電圧として前記駆動電圧と同等の電圧値が印加された際に前記電圧値を低下させるための減流抵抗が設けられており、低下させた電圧値に対応する微少電流が前記モータに流れることを検出することで前記正常な挙動を示したと判断する
請求項1に記載の音響装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された音響装置を複数備えるとともに、
複数の前記音響装置のそれぞれに対して、火災監視時には前記駆動電圧を印加することで前記音響装置の前記ベルを鳴動させ、動作試験時には前記動作試験用電圧を印加することで前記動作確認回路による検出処理を実行させる火災受信機
をさらに備える自動火災報知設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動作試験機能を備えた音響装置、および動作試験機能を備えた音響装置を含む自動火災報知設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
受信機、発信機、中継器、音響装置、感知器等を備えて構成され、火災から防火対象である建物などの内部にいる人々を守る自動火災報知設備がある(例えば、非特許文献1参照)。自動火災報知設備では、感知器が熱や煙を感知することで、受信機に対して火災信号を送信する。火災信号を受信した受信機は、火災発生場所に応じて、警報を発し、音響装置を鳴動させ、防火対象内にいる人に火災の発生を知らせている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】能美防災株式会社 ホームページ、自動火災報知設備(URL:https://www.nohmi.co.jp/product/materiel/fid.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような自動火災報知設備は、防火対象の用途・規模に応じて、設置基準が定められており、さらに、定期的に法定点検を実施する義務もある。自動火災報知設備に含まれている音響装置に備えられた非常ベルに関しては、法定点検として、半年に1回の鳴動確認、年に1回の鳴動確認および音圧確認が義務づけられている。
【0005】
非常ベルの鳴動確認、音圧確認を行うに当たっては、施設利用者に配慮する必要があるため、音の出る作業は、夜間や休日の作業となることが多い。従って、点検者の健全な労働環境の確保、および残業削減を図るために、夜間や休日の作業量を削減することが強く望まれる。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、鳴動に関する動作試験機能を備えた音響装置および自動火災報知設備を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る音響装置は、モータ、ベル、および鳴動機構を有し、外部から駆動電圧がモータに印加されることで鳴動機構が駆動し、ベルを鳴動させる音響装置であって、外部から動作試験用電圧が印加された状態を検出する第1回路、および動作試験用電圧が印加された際にモータもしくは鳴動機構が動作試験用電圧に応じた正常な挙動を示すか否かを検出する第2回路を含む動作確認回路をさらに有するものである。
【0008】
本開示に係る自動火災報知設備は、本開示に係る音響装置を複数備えるとともに、複数の音響装置のそれぞれに対して、火災監視時には駆動電圧を印加することで音響装置のベルを鳴動させ、動作試験時には動作試験用電圧を印加することで動作確認回路による検出処理を実行させる火災受信機をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、鳴動に関する動作試験機能を備えた音響装置および自動火災報知設備を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る音響装置を含む自動火災報知設備の全体構成図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る音響装置の機能ブロック図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る自動火災報知設備において実行される鳴動確認方法に関する一連処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の音響装置および自動火災報知設備の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る音響装置および自動火災報知設備は、所望のタイミングで外部から印加された動作試験用電圧に基づいて、音響装置に断線異常あるいは動作異常がないかを自動で判断する機能を備えていることを技術的特徴とするものである。
【0012】
実施の形態1.
まず始めに、システムの全体像について説明する。
図1は、本開示の実施の形態1に係る音響装置を含む自動火災報知設備の全体構成図である。火災受信機10は、信号線SG1を介して、アドレッサブル発信機20、火災感知器31、32、感知器用中継器40、および防排煙制御用中継器50と接続されている。
【0013】
感知器用中継器40には、火災感知器が複数台接続されている。
図1では、2台の火災感知器41、42を例示している。また、防排煙制御用中継器50には、防火戸51、排煙機52、シャッタ53、およびたれ壁54が接続されている。
【0014】
また、火災受信機10は、信号線SG2を介して、音響装置61、62、および音響装置用中継器70と接続されている。さらに、音響装置用中継器70には、音響装置が複数台接続されている。
図1では、2台の音響装置71、72を例示している。
【0015】
ここで、火災感知器31、32、および火災感知器41、42は、あらかじめ設定されたそれぞれの火災監視エリアにおいて火災の発生を感知する複数の火災感知器に相当する。
【0016】
また、防火戸51、排煙機52、シャッタ53、およびたれ壁54は、複数の火災感知器のそれぞれの感知結果と連動して動作し、火災、煙等の拡散を防止するために機能する。
【0017】
また、音響装置61、62、および音響装置71、72は、あらかじめ設定されたそれぞれの地区において火災の発生を報知する複数の地区音響装置に相当する。
【0018】
複数の火災感知器のそれぞれは、個々の火災感知器を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。そして、複数の火災感知器のそれぞれは、自身に割り付けられたアドレス情報を含めた情報として、火災関連情報を火災受信機10に対して送信することができる。一方、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の火災感知器に対して必要な情報を送信することができる。
【0019】
また、複数の端末設備のそれぞれにも、個々の端末設備を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。従って、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の端末設備を稼働させる指令を送信することができる。
【0020】
さらに、複数の音響装置のそれぞれにも、個々の音響装置を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。従って、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の音響装置を鳴動させる指令を送信することができる。
【0021】
このような構成により、火災受信機10は、あらかじめ決められた種々の火災監視エリアに設置されている複数の火災感知器、およびアドレッサブル発信機20から火災関連情報を収集する。そして、火災受信機10は、収集した火災関連情報に基づいて、火災警報を行い、端末設備群を作動させることができる。
【0022】
さらに、火災受信機10は、収集した火災関連情報に基づいて、警報が必要な地区に設置された音響装置のベルを鳴動させることができる。なお、複数の音響装置のそれぞれは、どの火災感知器の感知結果と連動して鳴動動作するかがあらかじめ規定されている。
【0023】
また、図示は省略しているが、火災受信機10は、収集した火災関連情報に基づいて、移報信号を出力し、消火設備を起動して消火作業を開始したり、非常放送装置により火災報知あるいは避難誘導を行ったり、ネットワークを介して上位装置に対して火災関連情報を伝送したりすることができる。
【0024】
なお、本実施の形態1では、
図1に基づいて、自動火災報知設備における地区音響装置に対して鳴動確認機能を実施するための動作について具体的に説明するが、本開示に係る動作試験対象は、地区音響装置には限定されない。
図1では図示を省略したが、主音響装置の鳴動確認に対しても、所望のタイミングで鳴動確認機能を実行させることが考えられる。
【0025】
このような構成を備えた自動火災報知設備に含まれている音響装置は、法定点検として鳴動確認および音圧確認を行うことが義務づけられている。現段階では、法定点検時にベルを鳴動させて試験を行う必要がある。
【0026】
ただし、法定点検以外のときに、所望のタイミングで、ベルを鳴動させずに、または小音、短時間でベルを鳴動させて鳴動に関する試験ができれば、法定点検前に異常が発見でき、法定点検前の修繕や法定点検時の修繕に備えることができる。さらに、法定点検時にも、音響装置から発生する音量を抑制した上で、音響装置に断線異常あるいは動作異常がないかを容易に検出できれば、点検者の作業量を低減できることが期待できる。
【0027】
そこで、所望のタイミングで、鳴動確認機能を実施できる構成を備えた音響装置および自動火災報知設備について、詳細に説明する。
図2は、本開示の実施の形態1に係る音響装置の機能ブロック図である。
図2に示した音響装置200は、
図1に示した地区音響装置、あるいは図示を省略した主音響装置に相当する。
【0028】
音響装置200は、モータ201、鳴動機構202、ベル203、および動作確認回路204を備えている。外部から駆動電圧がモータ201に印加されることで、鳴動機構202が駆動し、ベル203を鳴動させる。例えば、鳴動機構202は、ギアとゴングを有し、モータ201の動作によりゴングを駆動させて、ゴングでベル203を打ちつけることで、ベル203を鳴動させる。さらに、本実施の形態1に係る音響装置200は、鳴動確認機能を実施するための動作確認回路204を備えている。
【0029】
動作確認回路204は、第1回路204aおよび第2回路204bを含んで構成されている。第1回路204aは、外部から動作試験用電圧が印加された状態を検出し、確認結果を出力する検出処理を実行する回路である。具体的には、第1回路204aは、動作確認時において火災監視時に駆動電圧を受信する配線経路と同じ経路を介して印加される動作試験用電圧が、許容電圧範囲内で受電できたか否かを確認し、確認結果を出力する。
【0030】
また、第2回路204bは、外部から動作試験用電圧が印加された際にモータ201が動作試験用電圧に応じた正常な挙動を示すか否かを検出し、確認結果として出力する検出処理を実行する回路である。具体的には、以下のような手法1~手法3が考えられる。
【0031】
手法1として、第2回路204bは、動作試験用電圧として、通常の監視動作時に印加される駆動電圧よりも小さい電圧値が印加された際に、動作試験用電圧に対応する微少電流がモータ201に流れることを検出することで正常な挙動を示したと判断することができる。
【0032】
手法2として、第2回路204bは、動作試験用電圧としてあらかじめ決められたパルス幅を有する電圧が印加された際に、動作試験用電圧に対応する微少電流がモータに流れることを検出することで正常な挙動を示したと判断することができる。
【0033】
手法3として、第2回路204bは、動作試験用電圧として駆動電圧と同等の電圧値が印加された際に電圧値を低下させるための減流抵抗が設けられており、低下させた電圧値に対応する微少電流がモータ201に流れることを検出することで正常な挙動を示したと判断することができる。
【0034】
手法4として、第2回路204bは、動作試験用電圧としてあらかじめ決められたパルス幅を有する電圧が印加された際に、鳴動機構202がベル203を鳴動させない程度に微少の駆動あるいはゆっくりとした駆動をしたかを検出することで、正常な挙動を示したと判断することができる。
【0035】
第2回路204bは、手法1~手法4のいずれかの動作試験を実施した場合には、確認結果を出力することができる。微少電流を流すような電圧を動作試験用電圧として用いることやベル203を鳴動させない鳴動機構202の駆動方法で、第2回路204bは、音響装置から発生する音量を抑制した上で、モータ201に電流が流れるか否か、あるいは鳴動機構202が動作するか否かを確認することができる。
【0036】
図1の構成において、音響装置61あるいは音響装置62の動作試験時には、火災受信機10が、動作試験対象の音響装置に対して動作試験用電圧を印加することができる。また、
図1の構成において、音響装置71あるいは音響装置72の動作試験時には、音響装置用中継器70が、火災受信機10からの指令に基づいて、動作試験対象の音響装置に対して動作試験用電圧を印加することができる。
【0037】
すなわち、動作試験用電圧は、火災受信機10あるいは音響装置用中継器70から動作試験対象の音響装置に印加させることができる。そして、火災受信機10あるいは音響装置用中継器70は、動作試験用電圧を印加した返答として、動作試験対象の音響装置から確認結果を受信することができる。
【0038】
また、確認結果は、火災受信機10内にデータ履歴として蓄積することができる。また、火災受信機10は、必要に応じてデータ履歴、確認結果をサーバーに保存させる、あるいは、客先にメールなどで通知することもできる。
【0039】
また、自動火災報知設備の納入メーカは、外部から火災受信機10にアクセスして、確認結果を取得することができる。あるいは、自動火災報知設備の納入メーカは、必要に応じて外部から火災受信機10にアクセスして、所望のタイミングで鳴動確認機能を実行させた上で確認結果を取得することもできる。
【0040】
また、鳴動確認機能の起動方法としては、法定点検と同様に、現地で火災受信機10を操作するか、あるいは感知器を試験発報させて連動動作させてもよいし、ネットワークを介して遠隔で手動起動または定期的に自動起動としてもよい。
【0041】
次に、フローチャートを用いて、本開示に係る自動火災報知設備において実行される一連処理について説明する。
図3、本開示の実施の形態1に係る自動火災報知設備において実行される鳴動確認方法に関する一連処理を示したフローチャートである。
図3では、火災受信機10から音響装置200の鳴動確認を実施する場合を具体例として説明する。
【0042】
まず初めに、ステップS301において、火災受信機10は、動作試験対象である音響装置200に対して、動作試験用電圧を印加する。火災受信機10は、通常の火災監視時には、感知器等による感知結果に応じて、音響装置200を鳴動させる必要があると判断した場合には、ベル203による鳴動を行うために、音響装置200に対して駆動電圧を印加する。
【0043】
一方、火災受信機10は、所望のタイミングで音響装置200の動作試験を行う際には、ステップS301により、音響装置200に対して動作試験用電圧を印加することとなる。
【0044】
次に、ステップS302において、音響装置200内の動作確認回路204は、動作試験用電圧に応じて、第1回路あるいは第2回路を用いて動作確認機能を実施し、確認結果を火災受信機10に返答する。
【0045】
次に、ステップS303において、火災受信機10は、動作試験用電圧を印加して動作確認機能を実施させた返答として、音響装置200から確認結果を受信するとともに、記憶処理、通知処理など、必要な処理を実施する。
【0046】
以上のように、本実施の形態1によれば、音響装置から発生する音量を抑制した上で、所望のタイミングで音響装置の動作確認機能を実施することができる。このような機能を活用することで、法定点検前に音響関連の断線異常あるいは動作異常が発見でき、法定点検前の修繕や法定点検時の修繕に備えることができる。
【0047】
また、ベルを実際に鳴動させた試験を行う必要がある法定点検時においても、音響関連の断線異常あるいは動作異常を発見するために、本開示の実施の形態1に係る音響装置の動作確認機能を有効活用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 火災受信機、61、62、71、72、200 音響装置、70 音響装置用中継器、201 モータ、202 鳴動機構、203 ベル、204 動作確認回路、204a 第1回路、204b 第2回路。