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  • 特開-部品実装機及び部品実装方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058857
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】部品実装機及び部品実装方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166231
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 伸弥
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353DD11
5E353DD12
5E353DD14
5E353EE25
5E353GG01
5E353HH51
5E353JJ11
5E353JJ21
5E353JJ28
5E353JJ48
5E353KK02
5E353KK21
5E353LL04
5E353LL06
5E353QQ01
(57)【要約】
【課題】部品の実装効率を向上させ得る技術を提供する。
【解決手段】部品実装機は、部品供給位置に供給された部品を保持する部品保持部と、部品保持部を第1のストロークで昇降可能に保持するヘッドと、ヘッドを第2のストロークで昇降可能に保持するとともに、水平方向に移動させるヘッド駆動機構と、ヘッドの移動する経路を制御する移動経路制御部と、を備える。移動経路制御部は、部品の実装位置に向かう所定の経路において、実装済み部品の上端が、第1の下端よりも下方に位置する場合に、ヘッドを第2のストロークの最下点に維持した状態で、所定の経路に沿ってヘッドを移動させ、実装済み部品の上端が、第2の下端よりも下方に位置する場合に、所定の経路に沿ってヘッドを移動させ、実装済み部品の上端が、第2の下端よりも上方に位置する場合に、迂回経路に沿ってヘッドを移動させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を基板上の実装位置に実装する部品実装機であって、
部品供給位置に供給された前記部品を保持する部品保持部と、
前記部品保持部を第1のストロークで昇降可能に保持するヘッドと、
前記ヘッドを第2のストロークで昇降可能に保持するとともに、前記基板に対して水平方向に移動させるヘッド駆動機構と、
前記ヘッドが前記基板に沿って前記部品供給位置から前記実装位置に向かって移動する経路を制御する移動経路制御部と、
を備え、
前記移動経路制御部は、
前記部品供給位置から前記実装位置に向かう所定の経路において、前記基板上に既に実装されている実装済み部品の上端が、前記ヘッドが前記第2のストロークの最下点であり且つ前記部品保持部が前記第1のストロークの最上点であるときの前記部品保持部に保持された前記部品の下端である第1の下端よりも下方に位置する場合に、前記ヘッドを前記第2のストロークの最下点に維持した状態で、前記所定の経路に沿って前記ヘッドを移動させ、
前記実装済み部品の前記上端が、前記第1の下端よりも上方に位置すると共に、前記ヘッドが前記第2のストロークにおける最上点であり且つ前記部品保持部が前記第1のストロークの最上点であるときの前記部品保持部に保持された前記部品の下端である第2の下端よりも下方に位置する場合に、前記部品保持部に保持された前記部品の下端が前記実装済み部品の前記上端より高くなるように前記ヘッドを上昇させた状態で、前記所定の経路に沿って前記ヘッドを移動させ、
前記実装済み部品の前記上端が、前記第2の下端よりも上方に位置する場合に、前記実装済み部品を迂回する迂回経路に沿って前記ヘッドを移動させる、
部品実装機。
【請求項2】
前記部品保持部によって保持された前記部品の下面および/もしくは側面を所定の撮像位置で撮像可能な撮像部をさらに備え、
前記所定の経路は、前記撮像位置を経由して前記実装位置に向かう経路である、
請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記迂回経路は、平面視した前記基板の外形の外側を通過する外部経路を含む、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記迂回経路は、前記基板を搬送する基板搬送方向に直線的に移動する経路と前記基板搬送方向に直交する方向に直線的に移動する経路とによって構成される単動経路である、請求項1から3のいずれか一項に記載の部品実装機。
【請求項5】
部品実装機によって部品を基板上の実装位置に実装する部品実装方法であって、
前記部品実装機は、
部品供給位置に供給された前記部品を保持する部品保持部と、
前記部品保持部を第1のストロークで昇降可能に保持するヘッドと、
前記ヘッドを第2のストロークで昇降可能に保持するとともに、前記基板に対して水平方向に移動させるヘッド駆動機構と、
前記ヘッドが前記基板に沿って前記部品供給位置から前記実装位置に向かって移動する経路を制御する移動経路制御部と、
を備え、
前記部品実装方法は、
前記部品供給位置から前記実装位置に向かう所定の経路において、前記基板上に既に実装されている実装済み部品の上端が、前記ヘッドが前記第2のストロークの最下点であり且つ前記部品保持部が前記第1のストロークの最上点であるときの前記部品保持部に保持された前記部品の下端である第1の下端よりも下方に位置する場合に、前記ヘッドを前記第2のストロークの最下点に維持した状態で、前記所定の経路に沿って前記ヘッドを移動させる工程と、
前記実装済み部品の前記上端が、前記第1の下端よりも上方に位置すると共に、前記ヘッドが前記第2のストロークにおける最上点であり且つ前記部品保持部が前記第1のストロークの最上点であるときの前記部品保持部に保持された前記部品の下端である第2の下端よりも下方に位置する場合に、前記部品保持部に保持された前記部品の下端が前記実装済み部品の前記上端より高くなるように前記ヘッドを上昇させた状態で、前記所定の経路に沿って前記ヘッドを移動させる工程と、
前記実装済み部品の前記上端が、前記第2の下端よりも上方に位置する場合に、前記実装済み部品を迂回する迂回経路に沿って前記ヘッドを移動させる工程と、
を備える、
部品実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、部品を基板に実装する技術に関する。詳しくは、部品実装機のヘッドの移動経路を決定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回路基板の上面と、ヘッドに対して最上点までストロークしたノズルの下端との距離である最大離間距離に基づいて、ノズルの下端に吸着した部品を回路基板上の実装位置まで搬送する際のヘッドの移動経路を決定する部品実装機が開示されている。回路基板に先に装着されている部品がある場合は、回路基板に先に装着されている部品の高さと、最大離間距離と、後に装着される部品(すなわち、ノズルの下端に吸着する部品)の高さと、に基づいてヘッドの移動経路が決定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015-173947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部品実装機の中には、基板に対してヘッドが昇降可能となっているものがある。ヘッドを昇降することで、回路基板に先に装着されている部品と、回路基板に後に装着される部品との干渉を回避することができる場合がある。特許文献1では、ノズルの昇降については考慮されているものの、ヘッドの昇降について何ら考慮されていない。本明細書は、ノズルに加え、ヘッドも昇降可能な部品実装機において、部品の実装効率を向上させ得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する技術は、部品を基板上の実装位置に実装する部品実装機によって具現化される。部品実装機は、部品供給位置に供給された前記部品を保持する部品保持部と、前記部品保持部を第1のストロークで昇降可能に保持するヘッドと、前記ヘッドを第2のストロークで昇降可能に保持するとともに、前記基板に対して水平方向に移動させるヘッド駆動機構と、前記ヘッドが前記基板に沿って前記部品供給位置から前記実装位置に向かって移動する経路を制御する移動経路制御部と、を備えてもよい。前記移動経路制御部は、前記部品供給位置から前記実装位置に向かう所定の経路において、前記基板上に既に実装されている実装済み部品の上端が、前記ヘッドが前記第2のストロークの最下点であり且つ前記部品保持部が前記第1のストロークの最上点であるときの前記部品保持部に保持された前記部品の下端である第1の下端よりも下方に位置する場合に、前記ヘッドを前記第2のストロークの最下点に維持した状態で、前記所定の経路に沿って前記ヘッドを移動させ、前記実装済み部品の前記上端が、前記第1の下端よりも上方に位置すると共に、前記ヘッドが前記第2のストロークにおける最上点であり且つ前記部品保持部が前記第1のストロークの最上点であるときの前記部品保持部に保持された前記部品の下端である第2の下端よりも下方に位置する場合に、前記部品保持部に保持された前記部品の下端が前記実装済み部品の前記上端より高くなるように前記ヘッドを上昇させた状態で、前記所定の経路に沿って前記ヘッドを移動させ、前記実装済み部品の前記上端が、前記第2の下端よりも上方に位置する場合に、前記実装済み部品を迂回する迂回経路に沿って前記ヘッドを移動させてもよい。
【0006】
上記の部品実装機は、実装済み部品の上端が第1の下端よりも下方に位置する場合に、ヘッドを第2のストロークの最下点に維持した状態で、ヘッドを所定の経路に沿って実装位置まで移動させる。このため、ヘッドを第2のストロークの最下点に維持することによって、実装位置において部品保持部を降下させる距離を低減することができる。これにより、部品の実装効率を上げることができる。また、部品実装機は、実装済み部品の上端が第2の下端よりも下方に位置する場合に、部品の下端が実装済み部品の上端より高くなるようにヘッドを上昇させた状態で、所定の経路に沿ってヘッドを実装位置まで移動させる。このように、上記の部品実装機は、実装済み部品の上端が第2の下端よりも下方に位置していれば、実施済み部品の上端が第1の下端よりも下方に位置している場合と同じ所定の経路に沿ってヘッドを実装位置まで移動させることができる。このため、部品の実装効率を上げることができる。
【0007】
また、本明細書が開示する部品を実装する方法についても、新規で有益である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1、2に係る部品実装機の概略構成を示す図。
図2】実施例1、2に係る部品実装機の概略構成を示す図。
図3図1のIII-III線における断面図。
図4】移動経路制御処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する部品実装機は、前記部品保持部によって保持された前記部品の下面および/もしくは側面を所定の撮像位置で撮像可能な撮像部をさらに備えてもよい。その場合、前記所定の経路は、前記撮像位置を経由して前記実装位置に向かう経路であってもよい。このような構成によると、部品の実装効率を上げつつ、部品の下面および/もしくは側面を撮像することができる。
【0011】
本明細書に開示する部品実装機では、迂回経路は、平面視した基板の外形の外側を通過する外部経路を含んでもよい。このような構成によると、ヘッドが基板の上方を通過する構成に比較して、迂回経路を移動する部品と実装済み部品の干渉をより確実に防止することができる。
【0012】
本明細書に開示する部品実装機では、迂回経路は、基板を搬送する基板搬送方向に直線的に移動する経路と基板搬送方向に直交する方向に直線的に移動する経路とによって構成される単動経路であってもよい。このような構成によると、迂回経路について迂回経路を移動する部品と実装済み部品の干渉が生じるか否かを容易に判断することができる。
【0013】
(第1実施例)
図面を参照して、実施例に係る部品実装機10について説明する。部品実装機10は、導体の配線を有する回路基板2に、電子部品4を実装する装置である。部品実装機10は、電子部品装着装置やチップマウンタとも称される。通常、部品実装機10は、はんだ印刷機及び基板検査機といった他の基板作業機と共に併設され、一連の実装ラインを構成する。また、本実施例では、部品4は、様々な種類の電子部品を含む。そのため、部品4は、様々なサイズ(すなわち、幅、奥行き、高さ)を有する。以下では、回路基板2は、単に基板2と記載し、電子部品4は単に部品4と記載する。
【0014】
図1図3を参照して、部品実装機10の構成について説明する。部品実装機10は、部品フィーダ12と、部品廃棄ボックス13と、フィーダ保持部14と、ヘッド16と、ヘッド駆動機構30と、ヘッド移動装置18と、基板コンベア20と、撮像部40と、制御部26と、タッチパネル24と、トレイユニット50と、を備える。
【0015】
部品フィーダ12は、フィーダ保持部14に着脱可能に取り付けられる。部品フィーダ12は、テープ上に収容された複数の部品4を供給するテープ式フィーダである。部品フィーダ12に搭載されたテープは、部品4を+Y方向に搬送する。部品フィーダ12の+Y方向側の先端部まで搬送された部品4は、後述するノズル6によって吸着され、実装位置P2へ実装される。このように、部品フィーダ12は、部品4を部品供給位置P1に供給する。部品廃棄ボックス13は、異常が生じた部品4を収容するためのボックスである。
【0016】
特に図3に示されるように、トレイユニット50は、トレイ56上に収容された複数の部品4を供給するトレイ式フィーダである。なお、変形例では、トレイユニット50に代えて、容器内にランダムに収容された複数の部品4を供給するバルク式フィーダが採用されてもよい。
【0017】
トレイユニット50は、Y方向に延びる一対のパレット移動シャトル52と、トレイパレット54と、を備える。一対のパレット移動シャトル52は、トレイパレット54を+Y方向に搬送する。トレイパレット54の上面には、トレイ56が配置される。トレイユニット50の+Y方向側の先端部までトレイ56が搬送されると、当該トレイ56上に配置された複数の部品4のそれぞれは、後述するノズル6によって吸着され、実装位置P2へ実装される。このように、トレイユニット50は、部品4を部品供給位置P1に供給する。
【0018】
特に図2に示されるように、ヘッド16は、ヘッド駆動機構30に保持される。ヘッド駆動機構30は、Y軸スライダ32とX軸スライダ34を備えている。Y軸スライダ32は、基板2に対してY方向に移動可能に取付けられており、駆動装置(図示省略)によって駆動されることで基板2に対してY方向に移動する。X軸スライダ34は、Y軸スライダ32に対してX方向に移動可能に取付けられており、駆動装置(図示省略)によって駆動されることでY軸スライダ32に対してX方向に移動する。X軸スライダ34にはヘッド16が保持されている。X軸スライダ34及びY軸スライダ32が駆動されることで、ヘッド16は、X方向及びY方向(すなわち、基板2に対して水平方向)に移動することができる。
【0019】
ヘッド駆動機構30は、さらに、X軸スライダ34に対してZ方向に移動可能に取付けられたZ軸スライダ36を備えている。Z軸スライダ36は、駆動装置(図示省略)によって駆動されることでX軸スライダ34に対してZ方向に移動する。Z軸スライダ36がZ方向に移動すると、Z軸スライダ36に取付けられたヘッド16もZ方向に移動する。これによって、ヘッド16は、第2のストロークS2で昇降する。
【0020】
ヘッド16は、ノズル装着孔17内に収容されたノズル6(部品保持部の一例)を有する。ノズル6は、ノズル装着孔17に沿って、第1のストロークS1で昇降する。すなわち、ヘッド16は、ノズル装着孔17に、ノズル6を第1のストロークS1で昇降可能に保持する。ノズル6は、部品供給位置P1に供給された部品4を上方から吸着することによって、部品4を保持する。ノズル6によって部品4を保持した状態で、ヘッド16が基板2に対して水平方向に移動する。ヘッド16が、部品4を実装する基板2上の位置である実装位置P2の上方に到達すると、ノズル6が第1のストロークS1に沿って降下する。これにより、部品4が基板2上に接近し、実装位置P2に部品4が実装される。なお、変形例では、ノズル6は、ヘッド16の外面に沿って、第1のストロークS1で昇降するように保持されてもよい。
【0021】
特に図3に示されるように、基板コンベア20は、基板2の搬入、位置決め及び搬出を行う装置である。一例ではあるが、本実施例の基板コンベア20は、一対のベルトコンベアと、回路基板2を下方から支持する支持装置(図示省略)とを有する。図3に示され得るように、基板コンベア20は、基板2を、基板搬送方向D1に搬送する。これにより、新たな基板2に対して、部品4を実装することができる。
【0022】
制御部26は、CPU及び記憶装置を備えるコンピュータを用いて構成されている。制御部26は、例えば、外部の管理装置(図示省略)から送信される生産プログラムに基づいて、部品実装機10の各部の動作を制御する。制御部26は、例えば、ノズル6の高さ、X軸スライダ34とY軸スライダ32とZ軸スライダ36のそれぞれの位置を制御する。詳細は図4を参照して説明するが、制御部26は、さらに、ヘッド16が基板2に沿って部品供給位置P1から実装位置P2に向かって移動する経路を制御する。
【0023】
撮像部40は、部品フィーダ12と基板コンベア20(詳細には、一対の基板コンベア20のうち部品フィーダ12側に設置される基板コンベア20)との間に配置されている。撮像部40は、カメラと光源(図示省略)を備えている。撮像部40のカメラは、その撮像方向が上方に向かうように配置されており、部品4を吸着した状態のノズル6を下方から撮像する。すなわち、カメラは、ノズル6が電子部品4を吸着したとき、ノズル6に吸着された電子部品4の下面を撮影する。撮像部40のカメラには、例えばCCDカメラが用いられる。光源は、LEDにより構成されており、ノズル6に吸着された部品4の下面(撮像面)を照明する。撮像部40によって撮像された画像の画像データは、制御部26のメモリ(図示省略)に記憶される。タッチパネル24は、作業者に部品実装機10の各種の情報を提供する表示装置であると共に、作業者からの指示や情報を受け付ける入力装置である。
【0024】
図2を参照して、ノズル6に保持された部品4の下端4Bと、基板2に既に実装されている実装済み部品(いわゆる、先付け部品)5の上端5Tとの位置関係について説明する。例えば、実装済み部品5の上端5Tが部品4の下端4Bよりも上方に位置する状況で、ヘッド16が実装済み部品5の上方を通過すると、部品4が実装済み部品5と干渉してしまう。ノズル6を第1のストロークS1における最上点まで上昇させると、部品4の下端4Bは、第1の下端B1まで上昇する。実装済み部品5の上端5Tが第1の下端B1よりも下方に位置する場合、ノズル6を最上点まで上昇させると、ヘッド16が実装済み部品5の上方を通過しても、部品4は、実装済み部品5と干渉しない。
【0025】
さらに、実装済み部品5の上端5Tが、第1の下端B1よりも上方に位置する場合、ノズル6を第1のストロークS1における最上点まで上昇させた状態で、さらにヘッド16を第2のストロークS2における最上点まで上昇させると、部品4の下端4Bは、第2の下端B2まで上昇する。実装済み部品5の上端5Tが第2の下端B2よりも下方に位置すれば、部品4は、実装済み部品5と干渉しない。
【0026】
図3を参照して、部品供給位置P1と実装位置P2との位置関係について説明する。先に述べたように、部品フィーダ12の+Y方向側の先端に位置する部品4は、ノズル6によって吸着され、実装位置P2に実装される。すなわち、部品フィーダ12のテープ毎に、部品供給位置P1が設けられる。本実施例では、部品フィーダ12に含まれる3つのテープフィーダのうち、中央のテープフィーダに配置された部品4Fの実装経路について主に説明する。
【0027】
例えば、部品フィーダ12上の部品供給位置P1から実装位置P2に延びる直線経路R10(所定の経路の一例)に沿ってヘッド16を最短距離で移動させることによって、ヘッド16の移動距離を低減することができる。しかしながら、直線経路R10には、実装済み部品5が存在する場合がある。その場合、直線経路R10に沿って移動するヘッド16は、実装済み部品5の上方を通過する。図2を参照して説明したように、直線経路R10上に位置する実装済み部品5の上端5Tが部品4Fの下端4Bよりも上方に位置する場合、ヘッド16が直線経路R10に沿って移動すると、実装済み部品5と部品4Fとが干渉する。
【0028】
実装済み部品5と部品4Fとの干渉を回避するため、ヘッド16は、迂回経路R20に沿って移動することができる。迂回経路R20は、第1の迂回経路R21と、第2の迂回経路R22と、第3の迂回経路R23と、を含む。迂回経路R20では、ヘッド16は、実装済み部品5の上方を通過しない。このため、実装済み部品5の上端5Tが、部品4Fの下端4Bよりも上方に位置する場合であっても、実装済み部品5と部品4Fとの干渉を回避することができる。
【0029】
図3に示されるように、迂回経路R20は、平面視した基板2の外縁の外側を通過する外部経路(例えば、第1の迂回経路R21、第2の迂回経路R22)を含む。これにより、ヘッド16が基板2の上方を通過する構成に比較して、迂回経路R20を移動する部品4Fと部品5の干渉をより確実に防止することができる。
【0030】
さらに、迂回経路R20の第1の迂回経路R21および第3の迂回経路R23は、基板搬送方向D1に沿って直線的に移動する経路である。また、迂回経路R20の第2の迂回経路R22は、基板搬送方向D1に直交する方向に沿って直線的に移動する経路である。すなわち、迂回経路R20は、X方向及びY方向に移動する経路によって構成される単動経路である。これにより、基板搬送方向D1に対して傾斜する斜め方向に移動する経路によって実装済み部品5を迂回する構成に比して、比較的に簡易な制御で実装済み部品5を迂回することができる。また、迂回経路として直線的に移動する経路を採用することで、部品4Fと実装済み部品5との干渉が回避できているか否かの確認を容易に行うことができる。例えば、図3に示すように、実装済み部品5を迂回して部品4Fを基板2に実装する場合、迂回経路R20によって実装済み部品5と部品4Fとの干渉を回避できているか否かを確認する必要がある。ここで、実装済み部品5が実装されている位置(x1,y1)と、実装済み部品5のサイズ(d5x(X方向の寸法)、d5y(Y方向の寸法))は既知である。また、部品4Fの実装位置(x2,y2)と、部品4Fのサイズ(d4x(X方向の寸法)、d4y(Y方向の寸法))も既知である。図3に示す迂回経路R20のように、基板2の外側を+X方向に移動し、次いで、+Y方向に移動し、最後に-X方向に移動する迂回経路R20については、次の式y1+d5y/2<y2-d4y/2を満足すれば、部品5と干渉することなく部品4Fを実装位置(x2,y2)に実装することができると判断することができる。あるいは、y2-d4y/2-Δy<y<y2+d4y/2+Δyとなる領域に、所定の高さの実装済み部品5が存在するか否かで、迂回経路R20が実装済み部品5との干渉を回避できているか否かを判断することができる。このように、部品4F,5の実装位置と寸法を用いて、迂回経路について部品4Fと部品5の干渉が生じるか否かを容易に判断することができる。
【0031】
図4を参照して、制御部26が実行する移動経路制御処理について説明する。制御部26は、移動経路制御処理によって決定された移動経路に基づいて、ヘッド駆動機構30の移動経路を制御する。以下では、移動経路を決定する対象となる部品を「対象部品」と記載し、対象部品の実装位置を「対象実装位置」と記載し、部品供給位置P1から対象実装位置に延びる直線経路を「対象直線経路」と記載する。
【0032】
まず、制御部26は、管理装置(図示省略)から、実装部品情報を受信する(S10)。ここで、実装部品情報は、基板2上に実装される全ての部品の識別情報、実装位置P2、サイズ(すなわち、幅、奥行き、高さ)を含む。
【0033】
次に、制御部26は、管理装置から実装順序を受信する(S12)。実装順序は、部品の識別情報と実装順とが関連付けられた情報である。
【0034】
制御部26は、S12で受信した実装順序に従って、対象部品の移動経路を決定する。制御部26は、対象直線経路上に、実装済み部品(例えば、実装済み部品5)があるか否かを判断する(S20)。具体的には、制御部26は、S10で受信した実装部品情報とS12で受信した実装順序とに基づいて、対象直線経路上に、対象部品よりも先の実装順序を有する先付け部品の実装位置があるか否かを判断する。制御部26は、対象直線経路上に先付け部品の実装位置がある場合(S20でYES)、対象直線経路上に実装済み部品があると判断して、S22に進む。一方、制御部26は、対象直線経路上に先付け部品の実装位置がない場合(S20でNO)、対象直線経路上に実装済み部品がないと判断して、S60に進む。
【0035】
S60では、制御部26は、対象部品の移動経路として、対象直線経路(例えば、直線経路R10)を選択する。これにより、対象直線経路上に実装済み部品がない場合、ヘッド16は、最短距離で部品供給位置P1から対象実装位置まで移動することができる。
【0036】
S22では、制御部26は、S20で対象直線経路上にあると判断された実装済み部品の高さを取得する。具体的には、制御部26は、S10で管理装置から受信した実装部品情報から、S20で先付け部品として判断された部品の高さ(例えば、高さ5H)に関する情報を取得する。これにより、制御部26は、実装済み部品の上端の高さを取得することができる。
【0037】
S30では、制御部26は、実装済み部品の上端が、第1の下端(例えば、第1の下端B1)よりも下方にあるか否かを判断する。具体的には、制御部26は、第1のストロークS1の最上点まで上昇させたノズル6の下端の高さから、対象部品の高さ(例えば、高さ4H)を減じることによって、第1の下端を算出する。実装済み部品の上端が第1の下端B1よりも上方にある場合(S30でNO)、制御部26は、S40に進む。実装済み部品の上端が第1の下端B1よりも下方にある場合(S30でYES)、制御部26は、S32に進む。
【0038】
S32では、制御部26は、ノズル6の高さを調整する。具体的には、制御部26は、実装済み部品の上端よりも対象部品の下端(例えば、下端4B)が上方に位置するように、ノズル6を第1のストロークS1に上昇させる。これにより、ヘッド16が対象直線経路を移動しても(S60)、対象部品と実装済み部品とが干渉することを回避することができる。
【0039】
S40では、制御部26は、実装済み部品の上端が、第2の下端B2よりも下方にあるか否かを判断する。実装済み部品の上端が第2の下端B2よりも上方にある場合(S40でNO)、制御部26は、S50に進む。実装済み部品の上端が第2の下端B2よりも下方にある場合(S40でYES)、制御部26は、S42に進む。
【0040】
S42では、制御部26は、ヘッド16の高さを調整する。具体的には、制御部26は、まず、ノズル6が第1のストロークS1における最上点にない場合に、ノズル6を第1のストロークS1における最上点に上昇させる。さらに、制御部26は、対象部品の下端(例えば、下端4B)が実装済み部品の上端よりも高くなるように、ヘッド16を第2のストロークS2で上昇させる。これにより、ヘッド16が対象直線経路を移動しても(S60)、対象部品と実装済み部品とが干渉することを回避することができる。
【0041】
S50では、制御部26は、迂回経路(例えば、迂回経路R20)を選択する。これにより、実装済み部品の上端が第2の下端B2よりも上方にある場合であっても、対象部品と実装済み部品とが干渉することを回避して、対象部品を対象実装位置に実装することができる。なお、迂回経路により対象部品と実装済み部品との干渉が回避できているか否かの判断は、既述した方法により行うことができる。
【0042】
(本実施例の効果)
本実施例の部品実装機10は、実装済み部品5の上端5Tが第1の下端B1よりも下方に位置する場合(S30でYES)に、ヘッド16の高さを調整することなく(すなわち、ヘッド16を第2のストロークS2の最下点に維持した状態で)、ヘッド16を直線経路R10に沿って移動させる。これにより、部品実装機10は、ヘッド16を実装位置まで直線経路R10に沿って最短距離で移動させることができる。ヘッド16を第2のストロークS2の最下点に維持することによって、実装位置P2においてノズル6を降下させる距離を低減することができる。これにより、部品の実装効率を上げることができる。また、部品実装機10は、実装済み部品5の上端5Tが第2の下端B2よりも下方に位置する場合に、部品4の下端4Bが上端5Tより高くなるようにヘッド16を上昇させた状態で、直線経路R10に沿ってヘッドを移動させる。これにより、部品実装機10は、ヘッド16を実装位置P2まで直線経路R10に沿って最短距離で移動させることができるため、ヘッド16の移動距離が低減される。さらに、部品実装機10は、実装済み部品5の上端5Tが第2の下端B2よりも下方に位置していれば、実装済み部品5の上端5Tが第1の下端B1よりも下方に位置している場合と同じ直線経路R10に沿ってヘッドを実装位置まで移動させることができる。その結果、部品の実装効率を上げることができる。
【0043】
(第2実施例)
図3を参照して第2実施例の部品実装機10について説明する。本実施例では、トレイ56に配置される複数の部品4のうち、最も+Y方向側かつ+X方向側に位置する部品4Sの実装経路について主に説明する。図3に破線で示されるように、第2の実施例の部品実装機10は、トレイ56上の部品供給位置P1で吸着された部品4Sを、撮像準備経路R2に沿って撮像位置P3に移動させ、部品4の下面を撮像部40のカメラで撮像した後、実装位置P2に移動させる。すなわち、第2実施例の部品実装機10は、第1実施例の部品実装機10と、ヘッド16を移動させる経路が異なる。第2実施例の部品実装機10は、トレイ56上の部品4Sの部品供給位置P1から実装位置P2に延びる直線経路ではなく、撮像位置P3を経由して実装位置P2へ向かう経路を選択する。しかしながら、その他の点については、第2実施例の部品実装機10は、第1実施例の部品実装機10と同様の構成を有する。
【0044】
本実施例の部品実装機10では、撮像位置P3から実装位置P2に部品4Sが供給される。撮像位置P3から実装位置P2に延びる直線経路R12に沿ってヘッド16を最短距離で移動させることによって、ヘッド16の移動距離を低減することができる。しかしながら、直線経路R12に実装済み部品5が存在する場合、直線経路R12に沿って移動するヘッド16は、実装済み部品5の上方を通過し、部品4と実装済み部品5との干渉の可能性が発生する。第2実施例の制御部26は、ヘッド16が撮像位置P3から実装位置P2に向かって移動する経路を制御する。
【0045】
第2実施例の制御部26は、図4の移動経路制御処理を実行する。この際、第2実施例の制御部26は、S20において、撮像位置P3から実装位置P2まで延びる直線経路(例えば直線経路R12)上に実装済み部品(例えば、実装済み部品5)があるか否かを判断する。すなわち、本実施例では、撮像位置P3から対象実装位置に延びる直線経路が「対象直線経路」に相当する。第2実施例の制御部26が実行する移動経路制御処理におけるその他の処理については、第1実施例の移動経路制御処理と同様である。本実施例の部品実装機10によれば、下面を撮像した部品4を実装する効率を向上させることができる。本実施例では、撮像準備経路R2および直線経路R12が、「所定の経路」の一例である。
【0046】
実施例で説明した部品実装機10に関する留意点を以下に述べる。本明細書では、部品供給位置P1から実装位置P2に部品4を移動させる第1実施例と、撮像位置P3を経由して部品供給位置P1から実装位置P2に部品4を移動させる第2実施例とを、別々の実施例として記載した。しかしながら、変形例では、例えば、実装する部品ごとに、部品供給位置P1から実装位置P2に移動する経路と、撮像位置P3を経由して部品供給位置P1から実装位置P2に移動する経路と、が割り当てられてもよい。その場合、例えば、実装部品情報に、部品の識別情報に関連付けて、部品の撮像の有無を表す情報が含まれていてもよい。制御部26は、撮像有りの情報が含まれる場合に、撮像位置P3から実装位置P2に移動する直線経路R12に基づいて移動経路制御処理を実行し、撮像有りの情報が含まれない場合に、部品供給位置P1から実装位置P2に移動する直線経路R10に基づいて移動経路処理を実行してもよい。さらに、別の変形例では、部品4の下面の撮像をする必要がない場合、第1実施例の部品実装機10は、撮像部40を備えなくてもよい。
【0047】
上述した実施例では、撮像部40は、その撮像方向が上方に向かうように配置される。しかしながら、変形例では、撮像部40は、撮像方向が上方に向かうカメラに加え、部品4の側面を撮像するカメラをさらに備えてもよい。その場合、撮像部40は、撮像位置P3において、部品4の下面に加え、側面をさらに撮像してもよい。また、さらなる変形例では、撮像部40は、部品4の側面のみを撮像してもよい。その場合、撮像部40は、撮像方向が上方に向かうカメラを備えなくてもよい。
【0048】
また、上述した実施例では、部品実装機10の制御部26が、移動経路処理によって、ヘッド駆動機構30の移動経路を決定したが、本変形例では、例えば、外部の管理装置が、移動経路処理を実行してもよい。その場合、管理装置は、移動経路処理によって生成された部品実装プログラムを、部品実装機10に送信してもよい。その場合、部品実装機10の制御部26は、管理装置から受信した部品実装プログラムに基づいて、ヘッド駆動機構30を移動させてもよい。
【0049】
さらに、上述した実施例では、ノズル6によって部品4を吸着したが、このような構成に限定されず、部品実装機10は、例えば、ノズル6に代えて、部品4を把持するチャックを備えてもよい。
【0050】
また、上述した実施例では、迂回経路R20は、外部経路(例えば、第1の迂回経路R21、第2の迂回経路R22)を含むが、迂回経路R20は、基板2上の経路であってもよい。
【0051】
さらに、上述した実施例では、迂回経路R20は、基板搬送方向D1に沿って直線的に移動する経路と、基板搬送方向D1に直交する方向に沿って直線的に移動する経路と、によって構成される単動経路である。しかしながら、迂回経路R20は、基板搬送方向D1に対して傾斜する斜め方向に移動する経路を含む経路であってもよい。
【0052】
また、上述した実施例では、制御部26は、図4のS32においてノズル6の高さを調整した後に、S42においてヘッド16の高さを調整する。しかしながら、変形例では、制御部26は、ヘッド16の高さを調整した後に、ノズル6の高さを調整してもよい。
【0053】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0054】
2:回路基板
4:電子部品
4B:下端
4H:高さ
5:実装済み部品
5T:上端
6:ノズル
10:部品実装機
12:部品フィーダ
14:フィーダ保持部
16:ヘッド
17:ノズル装着孔
18:ヘッド移動装置
20:基板コンベア
24:タッチパネル
26:制御部
30:ヘッド駆動機構
32:Y軸スライダ
34:X軸スライダ
36:Z軸スライダ
40:撮像部
50:トレイユニット
52:パレット移動シャトル
54:トレイパレット
56:トレイ
B1:第1の下端
B2:第2の下端
D1:基板搬送方向
P1:部品供給位置
P2:実装位置
P3:撮像位置
R10、R12:直線経路
R2:撮像準備経路
R20:迂回経路
R21:第1の迂回経路
R22:第2の迂回経路
R23:第3の迂回経路
S1:第1のストローク
S2:第2のストローク
図1
図2
図3
図4