(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058859
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】珈琲抽出残渣含有樹脂組成物およびそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240422BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240422BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20240422BHJP
C08L 55/02 20060101ALI20240422BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240422BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240422BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20240422BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/00
C08L1/00
C08L55/02
B33Y80/00
B33Y70/00
B29C64/314
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166235
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】榊 陽一郎
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F213AA13
4F213AA24
4F213AA28
4F213AA45
4F213AB06
4F213AB07
4F213AB09
4F213AB11
4F213AB12
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL23
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4F213WL96
4J002AB01Y
4J002BN15Z
4J002CF05X
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4J002FD076
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4J002FD100
4J002FD167
4J002FD200
4J002GC00
4J002GL00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】バイオマス度が高く廃棄時の環境負荷が少なく、それでいてポリカーボネート樹脂が本来備える諸特性を極力低下させずに、複雑な形状の成形品の成形に不可欠なウエルド強度特性に優れた珈琲抽出残渣含有樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂(A)50~90重量%、ポリエステル系樹脂(B)1~30重量%、および、珈琲抽出残渣(C)1~40重量%を含有することを特徴とする、珈琲抽出残渣含有樹脂組成物に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)50~90重量%、ポリエステル系樹脂(B)1~30重量%、および、珈琲抽出残渣(C)1~40重量%を含有することを特徴とする、珈琲抽出残渣含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル系樹脂(B)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート、および、ポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上のポリエステル系樹脂である、請求項1に記載の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、ゴム強化スチレン系樹脂(D)を含み、その含有量が20質量%以下である、請求項1または2に記載の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤及び衝撃性改良剤からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1または2に記載の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物を含む成形品。
【請求項6】
射出成形または3Dプリンタにより成形された請求項5に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珈琲抽出残渣含有樹脂組成物およびそれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、缶入り珈琲、珈琲自動販売機、インスタント珈琲等が大量に消費され、これらの製品の生産工場や、大手チェーンカフェ等において、珈琲抽出残渣が大量に発生している。該残渣は、これまで、埋め立て、焼却等によって廃棄処分されることが多いが、発生量の増大と環境問題に対する関心の高まりに伴い、このような方法による処分が困難になりつつある。珈琲抽出残渣の有効利用は環境問題の見地からも今後の重要な課題となっている。
【0003】
他方、これまでにない有用なバイオ由来材料、すなわち、バイオマス度(植物化度)が高く二酸化炭素排出量の削減や化石原料の低減など環境性能に優れ、廃棄時の環境負荷が少ない環境調和型の材料を開発しようとする新たな試みがある。これまでの珈琲抽出残渣のバイオマス材としての有効活用策としては、例えば、特許文献1には、天然有機物抽出残渣を含むオレフィン系樹脂からなる食品トレーが開示されている。特許文献2および特許文献3には、珈琲抽出残渣を充填材とする熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-281917
【特許文献2】特開平5-277460
【特許文献3】特開2010-138238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載された樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂等の耐熱温度、衝撃強度が低いベース樹脂を使用することから、十分な耐熱温度、衝撃強度が得られず、その用途としては、食品トレーや、フィルム状、板状等の簡単な形状の成形品に限られている。
【0006】
また、複雑な形状の成形品では、製品設計上、金型に複数の金型ゲートが存在する。このため金型内の溶融樹脂が合流する部分にウエルドと呼ばれる線状の模様が現れ、成形品の強度低下が課題となるが、特許文献1~3にはその解決手段は記載されていない。
【0007】
本発明は、バイオマス度が高く廃棄時の環境負荷が少なく、それでいてポリカーボネート樹脂が本来備える諸特性を極力低下させずに、複雑な形状の成形品の成形に不可欠なウエルド強度特性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリカーボネート樹脂(A)、ポリエステル系樹脂(B)に、珈琲抽出残渣(C)を特定量配合することにより、バイオマス度が高く廃棄時の環境負荷が少なく、それでいてポリカーボネート樹脂が本来備える耐熱温度や衝撃強度等の諸特性を極力低下させずに、複雑な形状の成形に不可欠なウエルド強度を向上させ得る珈琲抽出残渣含有樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明(1)は、ポリカーボネート樹脂(A)50~90重量%、ポリエステル系樹脂(B)1~30重量%、および、珈琲抽出残渣(C)1~40重量%を含有することを特徴とする、珈琲抽出残渣含有樹脂組成物である。
【0010】
本発明(2)は、前記ポリエステル系樹脂(B)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート、および、ポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上のポリエステル系樹脂である本発明(1)に記載の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物である。
【0011】
本発明(3)は、さらに、ゴム強化スチレン系樹脂(D)を含み、その含有量が20質量%以下である本発明(1)または(2)に記載の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物である。
【0012】
本発明(4)は、さらに、熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤及び衝撃性改良剤からなる群から選択される1種以上を含有する本発明(1)~(3)のいずれかに記載の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物である。
【0013】
本発明(5)は、本発明(1)~(4)のいずれかに記載の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物を含む成形品である。
【0014】
本発明(6)は、射出成形または3Dプリンタにより成形された本発明(5)に記載の成形品である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物は、バイオマス度が高く廃棄時の環境負荷が少ない環境調和型材料であり、成形品の外観が良好でバイオマス特有の材料由来の意匠性も付与できる材料である。しかも、ポリカーボネート樹脂が本来備える耐熱温度や衝撃強度等の諸特性を極力低下させずに、それでいて複雑な形状の成形にとって不可欠なウエルド強度特性を向上させた材料であって、射出成形、押出成形、3Dプリンタ等様々な生産等に適用出来るほか、幅広い用途に好適に使用することが出来るため、工業的利用価値が極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0017】
本発明の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)50~90重量%、ポリエステル系樹脂(B)1~30重量%、および、珈琲抽出残渣(C)1~40重量%を含有することを特徴とする。
【0018】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造された芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0019】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0020】
これらは、単独または2種類以上混合して使用できるが、ハロゲンで置換されていない方が燃焼時に懸念される当該ハロゲンを含むガスの環境への排出防止の面から好ましい。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′-ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0021】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプテン、2,4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゾール、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-エタンおよび2,2-ビス-[4,4-(4,4′-ジヒドロキシジフェニル)-シクロヘキシル]-プロパンなどが挙げられる。
【0022】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量には特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000~100000、より好ましくは15000~30000、さらに好ましくは17000~26000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。上記粘度平均分子量の測定方法は、ポリカーボネート樹脂を、塩化メチレンを溶媒として0.5質量%の溶液とし、キャノンフェンスケ型粘度管を用い温度20℃で比粘度(ηsp)を測定し、濃度換算により極限粘度〔η〕を求め下記のSCHNELLの式から算出する。
〔η〕=1.23×10-4M0.83
【0023】
本発明で使用するポリエステル系樹脂(B)は、特に限定はないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0024】
ポリブチレンアジペート-co-テレフタレートとしては、BDO(1.4-BG)、テレフタル酸、アジピン酸を原料とする、石油由来の生分解性を有する芳香族ポリエステル(加水分解型)であって、脂肪族ポリエステルの優れた分解性能と芳香族ポリエステルの優れた機械的特性を兼ね備える材料であり、例えば、WANGO社製PBAT A400等が挙げられる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとして芳香族ポリエステル、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルからなるエステル-エーテル型またはエステル-エステル型のマルチブロック共重合体であり、例えば、ペルプレンP-30B、ペルプレンP-40B、ペルプレンP-55B、ペルプレンP-70B、ペルプレンP-90B、ペルプレンP-40BU、ペルプレンP-40U、ペルプレンP-48U、ペルプレンP-55U、ペルプレンP-75M、ペルプレンP-150M(いずれも東洋紡績社製)、ハイトレル3046、ハイトレル4047、ハイトレル4767、ハイトレル5557、ハイトレルG3548L、ハイトレルHTR8171、ハイトレルHTR8206(いずれも東レデュポン株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
ポリエステル系樹脂(B)は単独で用いてもよく、複数の樹脂成分を共重合又は混合することで組み合わせて使用してもよい。
【0026】
ポリエステル系樹脂(B)の配合量は、樹脂組成物中の1~30質量%である。該配合量は、5~28質量%が好ましく、10~25質量%がより好ましい。
【0027】
本発明で使用する珈琲抽出残渣(C)は、珈琲豆をミルなどでパウダー状に粉砕したものを、珈琲として抽出したあとの残渣物である。珈琲抽出残渣は、カフェイン等アルカロイド類が含まれているため、防腐性及び殺虫性が高く、また珈琲特有の臭気とこれら多成分の複合作用により、悪臭に対する消臭剤としての作用を有する。珈琲抽出残渣としては、例えば、タリーズ製珈琲抽出残渣として入手することができる。また、珈琲抽出残渣は、多くの水分を含有しており、造粒時に樹脂の分解を引き起こす恐れがあることから、予め乾燥したものを用いる。乾燥方法としては、珈琲抽出残渣中の水分を取り除くものであれば特に制限は無いが、一般的な熱風循環式の乾燥設備などで、乾燥温度110~140℃、乾燥時間2~4時間程度である。より好ましくは、乾燥温度130℃、乾燥時間2時間である。
【0028】
珈琲抽出残渣(C)の水分量は、30%未満が好ましく、10%未満がより好ましく、5%未満がさらに好ましい。30%以上では、成形加工性が不足する可能性がある。水分量は、乾燥前後の重量を測定することにより測定することができる。
【0029】
珈琲抽出残渣(C)は、混合してポリマー・バインダーで処理できる任意成分と併用してもよい。このような任意成分としては、例えば、木材チップまたはパウダー、炭酸カルシウム、タルクまたはセラミックス粉末、アルミニウム、銅などの金属粉末(静電気除去剤)、活性炭、ゼオライト粒子などの機能性材料などが挙げられる。
【0030】
珈琲抽出残渣(C)の配合量は、樹脂組成物中の1~40質量%である。該配合量は、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
【0031】
本発明においては、さらに、ゴム強化スチレン系樹脂(D)を含んでいても良い。ゴム含有スチレン系樹脂としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、ハイインパクト・ポリスチレン樹脂(HIPS)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。好ましいゴム含有スチレン系樹脂の例としては、ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体成分がグラフト共重合したグラフト共重合体を含むものが挙げられ、さらに好ましくは塊状重合によって作られるABS樹脂が挙げられる。塊状重合によって作られるABS樹脂としては、例えば、日本エイアンドエル株式会社製 サンタックAT-05等が挙げられる。
【0032】
ゴム強化スチレン系樹脂(D)の配合量は、樹脂組成物中、0~20質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。ゴム含有スチレン系樹脂(D)の配合量が1質量%未満の場合、成形加工性が不足し、20質量%を超えると、耐熱性が低下する可能性がある。
【0033】
本発明の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物は、さらに、熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤及び衝撃性改良剤からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0034】
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤および/またはフェノール系酸化防止剤などが挙げられるが、リン系酸化防止剤を含むことが好ましい。リン系酸化防止剤としては、下記亜リン酸エステル構造を有する亜リン酸エステル化合物が好ましく、例えば、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表わされる化合物が挙げられる。
【0035】
【0036】
一般式(1):
【化2】
(式中、R
1は、炭素数1~20のアルキル基を示し、aは、0~3の整数を示す)
【0037】
一般式(1)において、R1は、炭素数1~20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。
【0038】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
【0039】
一般式(2):
【化3】
(式中、R
2、R
3、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基又はフェニル基を示す。R
4は、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:-CHR
7-(ここで、R
7は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1~8のアルキレン基又は式:*-COR
8-(ここで、R
8は、単結合又は炭素数1~8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。)
【0040】
一般式(2)において、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
【0041】
ここで、炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基、i-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5~8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1-メチルシクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-メチル-4-i-プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α-メチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0042】
R2、R3及びR5としては、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基又は炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基が好ましい。特に、R2及びR5としては、それぞれ独立して、t-ブチル基、t-ペンチル基、t-オクチル基等のt-アルキル基、シクロヘキシル基又は1-メチルシクロヘキシル基が好ましい。特に、R3としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、t-ブチル基又はt-ペンチル基がより好ましい。
【0043】
R6としては、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基がより好ましい。
【0044】
一般式(2)において、R4は、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、R4としては、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0045】
一般式(2)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:-CHR7-で表される基を示す。ここで、式:-CHR7-中のR7は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基を示す。炭素数1~8のアルキル基及び炭素数5~8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xとしては、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等で置換されたメチレン基が好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0046】
一般式(2)において、Aは、炭素数1~8のアルキレン基又は式:*-COR8-で表される基を示す。炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*-COR8-におけるR8は、単結合又は炭素数1~8のアルキレン基を示す。R8を示す炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。R8は、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*-COR8-における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
【0047】
一般式(2)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。炭素数1~8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7~12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α-メチルベンジルオキシ基、α,α-ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
【0048】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-4,8-ジ-t-ブチル-2,10-ジメチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-4,8-ジ-t-ブチル-2,10-ジメチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野にポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
【0049】
一般式(3):
【化4】
(式中、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。)
【0050】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトは、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP-36(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。
【0051】
【0052】
(式中、R11~R18は、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基またはアルケニル基を示す。R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18とは、互いに結合して環を形成していても良い。R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す。d~gは、それぞれ独立して、0~5の整数である。X1~X4は、それぞれ独立に、単結合または炭素原子を示す。X1~X4が単結合である場合、R11~R22のうち、当該単結合に繋がった官能基は一般式(4)から除外される)
【0053】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトが挙げられる。これは、Dover Chemical社製、商品名「Doverphos(登録商標) S-9228」、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP-45」(ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)として商業的に入手可能である。
【0054】
また、上記一般式(1)~(4)で表される化合物に代えて、あるいは、上記一般式(1)~(4)で表される何れかの化合物に加えて、下記一般式(5)で表される化合物を使用しても良い。
【0055】
一般式(5):
【化6】
(式中、R
23~R
26は炭素数1~20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
【0056】
一般式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、[1,1´-ビフェニル]-4,4-ジイルビス[ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェノキシ)フォスフィン] 等が挙げられ、例えば、BASF社製のイルガフォスP-EPQ(商品名)、クラリアントジャパン(株)製のサンドスタブP-EPQ(商品名)が商業的に入手可能である。
【0057】
酸化防止剤の配合量は、樹脂組成物中、1質量%以下が好ましく、0.02~0.8質量%がより好ましい。酸化防止剤の配合量が1質量%を超えると、衝撃強度が低下する可能性がある。また、酸化防止剤の配合量が0.02質量%未満では、色相の向上効果が不十分となる可能性がある。
【0058】
また、本発明に係る樹脂組成物には、リン系酸化防止剤に代えて、または、リン系酸化防止剤とともに、フェノール系酸化防止剤を配合しても良い。
【0059】
フェノール系酸化防止剤としては、下記一般式(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0060】
一般式(6):
【化7】
(一般式6において、R
23は炭素数1~20のアルキル基、又はアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
【0061】
その他のフェノール系酸化防止剤としては、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、及びテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記フェノール系酸化防止剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0062】
なかでも、上記一般式(6)で表される化合物であるn-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好適であり、例えば、ADEKA社製、商品名「アデカスタブAO-50」として商業的に入手可能である。
【0063】
フェノール系酸化防止剤の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂からなる樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以下が好ましい。
【0064】
本発明の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物には、効果を損なわない範囲で、前述した成分以外の紫外線吸収剤、顔料、充填剤、流動改良剤等の添加剤を配合しても良い。
【0065】
本発明の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)、ポリエステル系樹脂(B)及び珈琲抽出残渣(C)を混合し、必要に応じて、ゴム強化スチレン系樹脂(D)、前記各種添加剤を混合する製造方法を例示することができる。本発明が目的とする珈琲抽出残渣含有樹脂組成物を得ることができる限り、その製造方法は特に制限されることはなく、各成分の種類及び量を適宜調整することができる。成分の混合方法も特に制限されることはなく、例えば、タンブラー、及びリボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法を例示できる。これらの方法により、珈琲抽出残渣含有樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。
【0066】
本発明の成形品は、前述した本発明の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物を含むことを特徴とする。本発明の成形品の製造方法は、目的とする成形品を得ることができる限り、特に限定されないが、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法、3Dプリンタ等により珈琲抽出残渣含有樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
【0067】
本発明の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物の用途は特に限定されないが、電気・電子機器用、生活資材用および建材用等の用途などが挙げられる。本発明の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物から得た成形品は高いウエルド強度を有するため、ウエルド部を有する成形品にも好適に適用することができる。
【0068】
以上のように、本発明の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例0069】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ質量基準である。
【0070】
原料として以下のものを使用した。
1.(A)ポリカーボネート樹脂:
ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化ポリカーボネート株式会社製SDポリカ200-13、以下PCと略記)
2.(B)ポリエステル樹脂:
2-1 ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート
WANGO社製PBAT A400(商品名)、以下PEs1と略記)
2-2 ポリエステル系熱可塑性エラストマー
東洋紡株式会社製ペルプレンP-150M(商品名)、以下PEs2と略記)
3.(C)珈琲抽出残渣
(タリーズ製珈琲抽出残渣、以下バイオマスと略記)
4.(D)ゴム強化スチレン系樹脂:塊状重合法ABS樹脂
(日本エイアンドエル株式会社製サンタックAT-05、以下ABSと略記)
5.(E)酸化防止剤:
以下の式で表される、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト
【0071】
【化8】
(BASF社製イルガフォス168(商品名)、以下(AO)と略記)
6.(F)離型剤:
グリセリンモノステアレート
(理研ビタミン株式会社製リケマールS-100A(商品名)、以下(MR)と略記)
【0072】
実施例1~11及び比較例1~3
表1に示す配合成分および配合比率にて、各種配合成分をタンブラーで混合し、37mm径の二軸押出機(芝浦機械株式会社製TEM37SS)を用いて、シリンダ温度210℃にて溶融混練し、各種ペレットを得た。以下に示す方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0073】
<引張物性>
各種ペレットを、熱風循環式棚式オーブンで90℃、4時間以上乾燥し、射出成形機(ファナック株式会社製ROBOSHOT S2000i100A)を用い、シリンダ温度220℃、金型温度50℃、ISO試験法に準じた厚み4mmのダンベル型試験片を作製した。得られた試験片を用いてISO 527に準じて引張試験を実施した。
【0074】
<ウエルド強度>
各種ペレットを、熱風循環式棚式オーブンで90℃、4時間以上乾燥し、射出成形機(ファナック株式会社製ROBOSHOT S2000i100A)を用い、シリンダ温度220℃、金型温度50℃、ISO試験法に準じた厚み4mmのダンベル型試験片で、中央付近にウエルドを有する試験片を作製した。得られた試験片を用いて、引張速度を5mm/分とした以外は、ISO 527に準じて引張試験を実施した。
【0075】
<生産性>
二軸押出機で溶融混練し、ペレット作製までの工程において、押出機先端から出てくるストランドの状態を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
〇:ストランドは安定しており、ペレット作製が可能
△:ストランドの乱れや切れが発生することが時々あるものの、ペレット作製は可能
×:ストランドの乱れや切れが頻発し、ペレット作製が困難(造粒困難)
【0076】
【0077】
表1に示したように、実施例1~11の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物は、ウエルド特性、生産性に優れることを確認できた。一方、比較例1~2の樹脂組成物は、生産性に劣り、造粒することができなかった。また、比較例3の樹脂組成物では、生産性には問題はなかったものの、ウエルド特性は大きく劣っていた。
本発明の珈琲抽出残渣含有樹脂組成物は、バイオマス度が高く廃棄時の環境負荷が少ない環境調和型材料であり成形品の外観が良好でバイオマス特有の材料由来の意匠性も付与できる材料である。しかも、ポリカーボネート樹脂が本来備える耐熱温度や衝撃強度等の諸特性を極力低下させずに、それでいて複雑な形状の成形にとって不可欠なウエルド強度特性を向上させた材料であって、射出成形、押出成形、3Dプリンタ等様々な生産等に適用出来るほか、幅広い用途に好適に使用することが出来るため、工業的利用価値が極めて高い。