(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005886
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】アンクランプアーム及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 31/117 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B23B31/117 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106320
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【弁理士】
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】天野 真仁
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032AA02
(57)【要約】
【課題】他部材との干渉を回避できるアンクランプアーム及び工作機械を提供する。
【解決手段】アンクランプアーム50は右支点部63、左支点部64、カムフォロア54、押圧部57,58を備える。右支点部63と左支点部64は主軸ヘッド内に回転可能に支持される。カムフォロア54は主軸ヘッドの移動に連動して立柱に設けたカム面に接触して外力を受ける。押圧部57,58はカムフォロア54が外力を受けて右支点部63と左支点部64を中心に回転することで、主軸内に設けたドローバのピンを押圧又は非押圧する。押圧部57,58は、右支点部63及び左支点部64とカムフォロア54の間に位置し、右支点部63及び左支点部64と押圧部57,58は、主軸の軸方向と交差する直線上に位置し、カムフォロア54は右支点部63及び左支点部64から立柱側に離れた場所に位置する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を装着する主軸と、前記主軸の内部に設け且つ前記工具を前記主軸に固定又は解除する工具把持機構と、前記主軸を回転可能に保持する主軸ヘッドと、前記主軸ヘッドを移動可能に支持する立柱とを備えた工作機械の前記主軸ヘッド内に回転可能に支持され、前記工具把持機構による前記工具の固定又は解除を操作するアンクランプアームにおいて、
前記主軸ヘッド内にて回転可能に支持される支点部と、
前記主軸ヘッドの移動に連動して前記立柱に設けた接触部に接触して外力を受ける力点部と、
前記力点部が前記外力を受けて前記支点部を中心に回転することで、前記工具把持機構を押圧又は非押圧し前記工具把持機構による前記工具の固定又は解除を操作する作用点部と
を備え、
前記作用点部は、前記支点部と前記力点部の間に位置し、
前記支点部と前記作用点部は、前記主軸の軸方向と交差する直線上に位置し、
前記力点部は、前記支点部から前記立柱側に離れた場所に位置すること
を特徴とするアンクランプアーム。
【請求項2】
前記軸方向は水平方向であること
を特徴とする請求項1に記載のアンクランプアーム。
【請求項3】
前記接触部にはカムが設けられ、
前記力点部には前記カムに摺動するローラが設けられたこと
を特徴とする請求項1又は2に記載のアンクランプアーム。
【請求項4】
前記支点部は、前記立柱の前記主軸ヘッドが移動する側の移動面から前記主軸側に離間する位置に配置し、
前記力点部は、前記主軸ヘッドの移動に連動して前記立柱の前記移動面に設けた前記接触部に接触して前記外力を受けること
を特徴とする請求項1又は2に記載のアンクランプアーム。
【請求項5】
前記作用点部と前記力点部の間には、前記直線と交差する方向で前記作用点部側から前記立柱側に延びる延設部を設けたこと
を特徴とする請求項1又は2に記載のアンクランプアーム。
【請求項6】
工具を装着する主軸と、前記主軸の内部に設け且つ前記工具を前記主軸に固定又は解除する工具把持機構と、前記主軸を回転可能に保持する主軸ヘッドと、前記主軸ヘッドを移動可能に支持する立柱と、前記主軸ヘッド内に回転可能に支持され、前記工具把持機構による前記工具の固定又は解除を操作するアンクランプアームとを備えた工作機械において、
前記アンクランプアームは、
前記主軸ヘッド内にて回転可能に支持される支点部と、
前記主軸ヘッドの移動に連動して前記立柱に設けた接触部に接触して外力を受ける力点部と、
前記力点部が前記外力を受けて前記支点部を中心に回転することで、前記工具把持機構を押圧又は非押圧し前記工具把持機構による前記工具の固定又は解除を操作する作用点部と
を備え、
前記作用点部は、前記支点部と前記力点部の間に位置し、
前記支点部と前記作用点部は、前記主軸の軸方向と交差する直線上に位置し、
前記力点部は、前記支点部から前記立柱側に離れた場所に位置すること
を特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンクランプアーム及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は自動工具交換装置を開示する。自動工具交換装置は工作機械の工具交換を行う。工作機械は主軸ヘッド内にアンクランプレバーを回転自在に設ける。アンクランプレバーは上下方向に延びる直線状で、下部に支点部、上部にカム面、支点部とカム面との間に押圧部を備える。支点部は主軸ヘッド内に設けた支持軸に回動可能に取り付ける。押圧部は主軸内に設けたドローバのピンに当接する。カム面は立柱内部に設けたカムフォロアの下方に位置する。主軸ヘッドが上昇すると、主軸とカムフォロアとの距離が縮まり、カムフォロアにアンクランプレバーのカム面が当接する。カム面に沿ってカムフォロアが摺動することでカム面は前方に移動し、アンクランプレバーは支持軸を中心に揺動する。アンクランプレバーの押圧部はドローバのピンを前方に押し込む。ドローバはバネ力に抗して前進し、ドローバは主軸に装着する工具ホルダのクランプを解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のアンクランプレバーは上下方向に延びる直線状なので、支点部、押圧部、カム面が上下方向に並ぶ。主軸ヘッド内において、主軸に対して支点部側とは反対側の領域が狭く、カム面の前方には主軸ヘッドを移動させるボールネジ等の他部材が位置する。カム面と他部材との間の距離が短い場合、アンクランプレバーが支点部を中心に前側に揺動したとき、カム面が他部材と干渉する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、他部材との干渉を回避できるアンクランプアーム及び工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のアンクランプアームは、工具を装着する主軸と、前記主軸の内部に設け且つ前記工具を前記主軸に固定又は解除する工具把持機構と、前記主軸を回転可能に保持する主軸ヘッドと、前記主軸ヘッドを移動可能に支持する立柱とを備えた工作機械の前記主軸ヘッド内に回転可能に支持され、前記工具把持機構による前記工具の固定又は解除を操作するアンクランプアームにおいて、前記主軸ヘッド内にて回転可能に支持される支点部と、前記主軸ヘッドの移動に連動して前記立柱に設けた接触部に接触して外力を受ける力点部と、前記力点部が前記外力を受けて前記支点部を中心に回転することで、前記工具把持機構を押圧又は非押圧し前記工具把持機構による前記工具の固定又は解除を操作する作用点部とを備え、前記作用点部は、前記支点部と前記力点部の間に位置し、前記支点部と前記作用点部は、前記主軸の軸方向と交差する直線上に位置し、前記力点部は、前記支点部から前記立柱側に離れた場所に位置することを特徴とする。アンクランプアームの力点部は支点部から立柱側に離れた位置に配置する。故に主軸ヘッドの移動に連動してアンクランプアームが回転したときに、力点部は干渉領域を回避できる。干渉領域とは、主軸に対して支点部側とは反対側の領域であって、他部材と干渉する可能性のある領域である。アンクランプアームの作用点部は、支点部と力点部の間に位置するので、支点部と力点部を結ぶ腕部分と、支点部と作用点部を結ぶ腕部分とを一つの形状内に集約できる。故にこれら2つの腕部分が別形状で成り立つ構成と比較して、アンクランプアームをコンパクトに設計できる。「工具」とは、工具を保持する工具ホルダを含む概念である。なお、力点部は支点部から立柱側に離れ且つ主軸の軸方向と直交する方向に離れた場所に位置してもよい。
【0007】
請求項2のアンクランプアームが適用される工作機械の主軸の前記軸方向は水平方向でもよい。軸方向は水平方向なので、アンクランプアームが設けられる工作機械は横形である。横形の工作機械では、主軸の上側に干渉領域が位置する場合がある。この場合、支点部を主軸の下方に配置することで、力点部を干渉領域から立柱側に離れた位置に配置できる。
【0008】
請求項3のアンクランプアームが適用される工作機械の前記接触部にはカムが設けられ、前記力点部には前記カムに摺動するローラが設けられてもよい。主軸ヘッドの移動に伴い、アンクランプアームの力点部に設けられたローラが、立柱側に設けられたカムを摺動することによって、アンクランプは支点部を中心に良好に回転できる。
【0009】
請求項4のアンクランプアームの前記支点部は、前記立柱の前記主軸ヘッドが移動する側の移動面から前記主軸側に離間する位置に配置し、前記力点部は、前記主軸ヘッドの移動に連動して前記立柱の前記移動面に設けた前記接触部に接触して前記外力を受けるようにしてもよい。接触部を立柱の移動面に設けた構成では、アンクランプアームを立柱の外側に配置する必要がある。支点部を立柱の移動面から主軸側に離間する位置に配置することで、アンクランプアームを立柱の外側に配置した状態で、力点部を接触部に接触させることができる。故にアンクランプアームは、力点部が接触部に接触して外力を受けることで、支点部を中心に揺動でき、力点部は干渉領域を回避できる。
【0010】
請求項5のアンクランプアームの前記作用点部と前記力点部の間には、前記直線と交差する方向で前記作用点部側から前記立柱側に延びる延設部を設けてもよい。故にアンクランプアームは、作用点部と力点部の間に延設部を備えるので、力点部を支点部から立柱側に離れた位置に容易に配置できる。
【0011】
請求項6の工作機械は、工具を装着する主軸と、前記主軸の内部に設け且つ前記工具を前記主軸に固定又は解除する工具把持機構と、前記主軸を回転可能に保持する主軸ヘッドと、前記主軸ヘッドを移動可能に支持する立柱と、前記主軸ヘッド内に回転可能に支持され、前記工具把持機構による前記工具の固定又は解除を操作するアンクランプアームとを備えた工作機械において、前記アンクランプアームは、前記主軸ヘッド内にて回転可能に支持される支点部と、前記主軸ヘッドの移動に連動して前記立柱に設けた接触部に接触して外力を受ける力点部と、前記力点部が前記外力を受けて前記支点部を中心に回転することで、前記工具把持機構を押圧又は非押圧し前記工具把持機構による前記工具の固定又は解除を操作する作用点部とを備え、前記作用点部は、前記支点部と前記力点部の間に位置し、前記支点部と前記作用点部は、前記主軸の軸方向と交差する直線上に位置し、前記力点部は、前記支点部から前記立柱側に離れた場所に位置することを特徴とする。故に工作機械は請求項1と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】工作機械1(シャッタ103:閉)の斜視図。
【
図4】工作機械1(マガジンカバー省略)の斜視図。
【
図5】工作機械1(マガジンカバー省略)の右側面図。
【
図6】主軸ヘッド6の一部を断面で示した立柱5周辺の右側面図。
【
図7】
図6の状態からアンクランプアーム50が前方に揺動した状態を示す図。
【
図12】主軸7がY軸ATC原点まで上昇した状態を示す図。
【
図13】主軸7がATC位置に後進した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を説明する。以下説明は図中に矢印で示す左右、上下、前後を使用する。工作機械1の左右方向、上下方向、前後方向は夫々工作機械1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。
図1に示す工作機械1は後述の主軸7(
図2,
図6参照)が前後方向(Z軸方向)に延びる横形であり、後述の立柱5がX軸方向とZ軸方向に移動する。
【0014】
図1~
図7を参照し、工作機械1の構造を説明する。
図1,
図2に示すように、工作機械1はベース2、立柱5、主軸ヘッド6、主軸7(
図2,
図6参照)、制御箱8、回転テーブル9、X軸移動機構11、Z軸移動機構12、Y軸移動機構13(
図6参照)、ATC装置30(
図4参照)、マガジンカバー10等を備える。ベース2はZ軸方向に長い平面視略矩形状の鉄製土台である。X軸移動機構11はベース2上面後部に設け、キャリッジ15をX軸方向に移動可能に支持する。Z軸移動機構12はキャリッジ15上面に設け、立柱5をZ軸方向に移動可能に支持する。
【0015】
立柱5は上下方向に延びる立柱である。立柱5は貫通口5A(
図4参照)を備える。貫通口5Aは正面視縦長矩形状であり、立柱5の前面と後面を前後方向に貫通する。枠カバー20は立柱5前面に取り付ける。枠カバー20は正面視縦長矩形状の枠体であり、立柱5と後述の主軸ヘッド6の間の隙間を外方から覆う。Y軸移動機構13は立柱5の前面5B(
図6,
図7参照)に設け、主軸ヘッド6を立柱5の前面5Bに沿ってY軸方向に移動可能に支持する(
図6参照)。故に立柱5は主軸ヘッド6を移動可能に支持する。X軸移動機構11、Z軸移動機構12、Y軸移動機構13は例えばガイド、ボールネジ、モータを備え、モータの動力で対象部品(キャリッジ15、立柱5、主軸ヘッド6)をガイドに沿って移動する。
【0016】
主軸ヘッド6はZ軸方向に延び、前端側は略円柱状、後端側は略直方体状である。工作機械1は加工領域とATC領域を備える(
図5参照)。Y軸方向において、主軸ヘッド6は加工領域とATC領域の間を移動可能である。加工領域はY軸原点よりもベース2側(下側)の空間に設ける。Y軸原点とはY軸の機械座標が0の位置である。加工領域は回転テーブル9上面に固定されたワークの加工を行う領域である。ATC領域はY軸原点に対して加工領域とは反対側(上側)の空間に設ける。ATC領域はATC装置30により工具交換を行う領域である。ATC領域は加工領域の上側で且つZ軸方向にて加工領域と重なる位置に設ける。
【0017】
主軸ヘッド6は上部カバー28と鎧カバー85を備える。上部カバー28は正面視略矩形状の金属板である。上部カバー28下端部は主軸ヘッド6上面後端部に固定する。
上部カバー28は主軸ヘッド6上面後端部から上方に延出する。上部カバー28は主軸ヘッド6と一体して上下動することで、立柱5前面の主軸ヘッド6よりも上側の領域を前方から常時覆う。鎧カバー85は主軸ヘッド6下面後端部に吊り下げた状態で固定する。鎧カバー85は複数の金属板を上下方向に並べて備え、主軸ヘッド6の高さに応じて上下方向にテレスコピックに伸縮することで、立柱5前面の主軸ヘッド6よりも下側の領域を前方から常時覆う。
【0018】
図6に示すように、主軸7は主軸ヘッド6内に設け、主軸ヘッド6と同軸且つZ軸方向に延びる。主軸ヘッド6は主軸7を回転可能に支持する。主軸ヘッド6は主軸モータ26を保持する。主軸モータ26の出力軸26Aは前方に延び、カップリング25を介して主軸7後端部と同軸上に連結する。主軸ヘッド6内には、アンクランプアーム50を設ける。アンクランプアーム50は主軸7に装着する工具ホルダ90のクランプ(把持)の固定と解除を行う。アンクランプアーム50の具体的形状と動作は後述する。
【0019】
主軸7は工具装着穴40、ホルダ把持部41、ドローバ42を備える。工具装着穴40は主軸7前端部に設ける(
図1,
図6参照)。工具装着穴40は主軸7前端部に向けて拡径する略円錐状のテーパ穴である。ホルダ把持部41は工具装着穴40の奥側(後端側)に設ける。ドローバ42は主軸7の軸穴に同軸上に挿入し且つ前後方向に移動自在に設ける。主軸7は後端側の外周面にガイド穴44を設ける。ガイド穴44は主軸7の軸方向に平行に延びる長穴であり、軸方向に直交する方向に貫通する。ドローバ42は後端部にピン43を備える。ピン43はドローバ42の軸方向に直交する方向に延び、主軸7のガイド穴44を介して主軸7の外側に突出する。ガイド穴44はピン43を軸方向に平行にガイドする。
【0020】
工具ホルダ90は工具装着穴40に着脱自在に装着する。工具ホルダ90は一端側に工具91を保持し、他端側にテーパ部92とプルスタッド93を備える。テーパ部92は工具装着穴40に対応する略円錐状であり、工具91側とは反対側に離間する方向に縮径する。プルスタッド93はテーパ部92頂上部からテーパ部92から離れる方向に突出する。テーパ部92は主軸7の工具装着穴40に密着して装着する。工具装着穴40にテーパ部92が装着すると、ホルダ把持部41はプルスタッド93を把持する。その状態で、ホルダ把持部41が図示外のバネで後方に引っ張られることにより、プルスタッド93の把持がロックされる。主軸7の軸穴内にてドローバ42がホルダ把持部41を前方に押圧すると、ホルダ把持部41はバネ力に抗して前方に移動し、プルスタッド93の把持が解除される。
【0021】
図4に示すように、ベース2は後部に一対の支持部材17,18を備える。支持部材17,18は左右方向に互いに離間し且つ上方に延び、制御箱8を下方から支持する。制御箱8は内部に制御盤(図示略)を収納する。制御盤は工作機械1の動作を制御する。
図1,
図4,
図5に示すように、ベース2は上面前側に固定台16を設ける。回転テーブル9は固定台16上に回転可能に支持される。回転テーブル9は主軸ヘッド6前方に位置する。回転テーブル9は上面にワーク(図示略)を治具(図示略)で固定し、Y軸方向に平行な回転軸を中心に360°回転及び位置決め可能である。
【0022】
図4に示すように、ベース2は上面前側で且つ左右両側に一対の支持柱21,22を備える。支持柱21はベース2上面右側から上方に延び且つ上部が左方に略90°屈曲する。支持柱22はベース2上面左側から上方に延び且つ上部が右方に略90°屈曲する。連結板23は正面視略矩形状であり、支持柱21と22の互いに対向する夫々の上部の間に固定する。
【0023】
ATC装置30は連結板23前面に固定する。ATC装置30は支持柱21,22により、主軸ヘッド6上方に支持する。
図4,
図5に示すように、ATC装置30は工具マガジン31、減速機32、マガジンモータ33等を備える。工具マガジン31はマガジンベース37と複数のグリップアーム38を備える。マガジンベース37は略円盤状であり、Z軸方向に平行な一軸線を中心に連結板23前面にて回転可能に支持する。減速機32とマガジンモータ33はマガジンベース37に取り付ける。マガジンモータ33の出力軸(図示略)は減速機32を介してマガジンベース37の回転軸(図示略)と接続する。故にマガジンモータ33の動力は減速機32を介してマガジンベース37の回転軸に伝達する。複数のグリップアーム38はマガジンベース37外周部に沿って並び、径方向外側に向けて放射状に延びる。グリップアーム38の先端部は、工具ホルダ90を水平に寝かせた姿勢で、工具ホルダ90に直交する方向から工具ホルダ90を把持する。工具マガジン31の工具交換位置は工具マガジン31の最下部の位置である。主軸7と工具交換を行うグリップアーム38は工具マガジン31の回転により工具交換位置に割り出される
【0024】
図1~
図3に示すように、マガジンカバー10は、支持柱21,22の夫々の上部の前面に固定する。マガジンカバー10は箱状であり工具マガジン31の周囲を覆う。マガジンカバー10は切粉と切削液の飛沫が工具マガジン31に付着するのを防止する。マガジンカバー10の底壁101には開口102を設ける。開口102は底面視矩形状であり、工具マガジン31の工具交換位置の直下に位置する。開口102にはシャッタ103を設ける。シャッタ103は制御盤の制御により開口102を開閉する。
【0025】
図6,
図7を参照し、アンクランプアーム50の形状を説明する。アンクランプアーム50は右側面視上下逆の略L字状に形成し、下から順に二股部51、アーム部52、カムフォロア支持部53、カムフォロア54を備える。
【0026】
二股部51は正面視下方に向けて左右両側に分離する二股状である。二股部51は中央部60、右側部61と左側部62を備える。中央部60は二股部51の上部を形成し且つ左右方向に延びる。右側部61は中央部60右端部から垂下し、下部に右支点部63を備える。右支点部63は右側部61下部から前側にて斜め下方に右側面視半円弧状に膨出する。右支点部63は支持穴631を備える。支持穴631は右側面視円形状であり、右支点部63の中央を左右方向に貫通する。右側部61は前面上側に段部611を備える。段部611は前方に突出し、その前面に正面視円形状の押圧部57を備える。
【0027】
左側部62は中央部60左端部から垂下し、下部に左支点部64を備える。左支点部64は左側部62下部から前側にて斜め下方に左側面視半円弧状に膨出する。左支点部64は支持穴641を備える。支持穴641は左側面視円形状であり、左支点部64を左右方向に貫通する。左側部62は前面上側に段部621を備える。段部621は前方に突出し、その前面に正面視円形状の押圧部58を備える。押圧部57,58の材質は限定しないが、例えば樹脂、ゴム等の弾性部材を用いてもよい。支持穴631,641には、主軸ヘッド6内に設けた支点軸45(
図6参照)が左右方向に挿入する。右側部61の左面と左側部62の右面との左右方向の離間幅は、主軸7の外径よりも長い。
【0028】
アーム部52は、二股部51の中央部60の上部から後方(立柱5側)に向けて延びる。アーム部52は右側面視前後方向の略中間部にて略V字状に鈍角に折れ曲がる。アーム部52は斜め方向部65、横方向部66、角柱部55、係止ピン56を備える。斜め方向部65は、二股部51の中央部60上部から後ろ側にて斜め上方に傾斜して延設する。横方向部66は斜め方向部65後端部から後方に略水平に延設する。角柱部55は、斜め方向部65と横方向部66の連結部分の上側に設け、該連結部分の左右両面から左右両側に突出する。係止ピン56は角柱部55左端面から左方に突出する。係止ピン56には、引っ張りバネ72の一端部が係止する。引っ張りバネ72の他端部は主軸ヘッド6内に固定する。引っ張りバネ72は、係止ピン56を後方に常時引っ張る。引っ張りバネ72はコイルバネでもよい。
【0029】
カムフォロア支持部53は、横方向部66後端部から後ろ側にて斜め上方に突出する。カムフォロア支持部53は、カムフォロア54を回転可能に支持する。カムフォロア支持部53は正面視略U字状であり、下側部67、右支持部68、左支持部69を備える。下側部67はアーム部52の横方向部66後端部から後ろ側にて斜め上方に傾斜し且つ左右方向に延びる。右支持部68は下側部67右端部から斜め上方に突出する。右支持部68は上部に支持穴681を備える。支持穴681は右側面視円形状であり右支持部68上部を左右方向に貫通する。左支持部69は下側部67左端部から斜め上方に突出する。左支持部69は上部に支持穴(図示略)を備える。該支持穴は、右支持部68の支持穴681と同一形状である。右支持部68と左支持部69は左右方向にて互いに対向する。
【0030】
カムフォロア54は回転軸541を備える。回転軸541はカムフォロア54の中心部の軸穴(図示略)を左右方向に貫通する。回転軸541右端部は右支持部68の支持穴681に挿入固定し、回転軸541左端部は左支持部69の支持穴(図示略)に挿入固定する。カムフォロア54は右支持部68と左支持部69の間に配置し回転軸541を中心に回転する。
【0031】
図6,
図7を参照し、主軸ヘッド6内におけるアンクランプアーム50の配置について説明する。主軸ヘッド6は内側底部に支点軸45を備える。支点軸45は丸棒であり、主軸7下方にてX軸方向に延設する。二股部51の右側部61と左側部62は、主軸7の右側と左側に配置する。右支点部63と左支点部64は主軸7よりも下方に配置する。支点軸45は、右支点部63の支持穴631と左支点部64の支持穴641を左右方向に挿通する。故にアンクランプアーム50は支点軸45を中心に揺動自在である。押圧部57,58は、右支点部63と左支点部64の上方に位置する。押圧部57,58は、主軸7のガイド穴44から突出するピン43の両端部に対して後方から接触する。
【0032】
斜め方向部65は、二股部51上部から斜め上方に傾斜し、干渉領域M(
図6,
図9参照)の直下まで延びる。干渉領域Mは、主軸7に対して右支点部63及び左支点部64とは反対側の上側の空間であって、上部カバー28、ATC装置30、支持柱21,22の夫々の上部等、他部材と干渉する可能性のある領域である。横方向部66は、干渉領域M直下を立柱5前面側に向けて延びる。故にアーム部52は干渉領域Mを回避できる(
図6参照)。
【0033】
図6に示すように、カム固定台501は立柱5前面上部に設ける。カム固定台501は前側にY軸方向に平行な固定面を有する。カム部材80は該固定面にネジで固定する。カム部材80のカム面81は前方に対向配置する。カム面81は下方から上方に向かうに従って前方に向けて緩やかに傾斜する傾斜面である。主軸ヘッド6が加工領域に位置するとき、カムフォロア支持部53が支持するカムフォロア54は、干渉領域Mよりも後方で且つカム面81の下方に位置する。引っ張りバネ72(
図8参照)は、係止ピン56を立柱5前面側に向けて常時引っ張る。故にアンクランプアーム50は支点軸45を中心に右側面視時計回りに常時付勢される。
【0034】
工作機械1のATC動作を説明する。
図10~
図13は、工具ホルダ90と支持柱21の図示を省略する。本実施例はATC動作における主軸7の位置を説明するため、主軸ヘッド6の移動を主軸7の移動として説明する。
図10に示すように、ワーク加工中、主軸7は加工領域内に位置する。マガジンカバー10のシャッタ103は閉じた状態である(
図2参照)。主軸7の工具装着穴40には、現工具を保持する工具ホルダ90のテーパ部92が装着する。ホルダ把持部41は工具ホルダ90のプルスタッド93を把持しバネ力でロックされる(
図6参照)。
【0035】
制御盤のCPUはNCプログラムの工具交換指令を読込む。
図11に示すように、主軸7はZ軸において回転テーブル9上のワークと治具(図示略)に工具91が接触しない位置まで後退する。マガジンカバー10のシャッタ103が開く(
図3参照)。工具交換位置のグリップアーム38が開口102を介して下方に露出する。工具交換位置のグリップアーム38は工具ホルダ90を把持しない空の状態である。
【0036】
主軸7は上昇を開始し、Y軸ATC原点に向けて移動する。Y軸ATC原点とは、Y軸方向においてATC原点と同一座標の位置であって、ATC原点の前方である。ATC原点とは、ATC領域内に設ける工具交換時の基準点であり、工具マガジン31が回転可能な位置である。
図12に示すように、主軸7の上昇により、主軸7に装着した工具ホルダ90はマガジンカバー10の開口102を介して、工具交換位置のグリップアーム38に下方から押し込まれる。主軸7がY軸ATC原点に到達すると、グリップアーム38は工具ホルダ90を把持する。
【0037】
一方、主軸7の上昇に伴い、カムフォロア54はカム面81下部に接触し、カム面81を上側に向けて摺動する(
図7参照)。引っ張りバネ72はアンクランプアーム50を右側面視時計回りに常時付勢する。故にカムフォロア54はカム面81に密着する。カムフォロア54はカム面81を上方に摺動するにつれて前方に移動する。故にアンクランプアーム50は支点軸45を中心に、引っ張りバネ72のバネ力に抗して右側面視反時計回りに揺動する。押圧部57,58はドローバ42のピン43の両端に後方から接触し、ドローバ42を前方に押圧する。本実施形態は、グリップアーム38を右側方から見たとき、右支点部63と左支点部64の支点中心とピン43の右面(押圧部57,58の夫々の前面)を、上下方向に延びる直線上に配置するので、押圧部57,58はピン43の両端を主軸7と平行に押圧できる。ドローバ42はホルダ把持部41を前方に付勢する。ホルダ把持部41はプルスタッド93のロックを解除する。工具ホルダ90は主軸7の工具装着穴40から取り外し可能となる。
【0038】
グリップアーム38が主軸7に装着する工具ホルダ90を挟持した状態で、主軸7はY軸ATC原点からATC位置に後退する(
図13参照)。工具ホルダ90は工具装着穴40から抜ける。その後、工具マガジン31は回転し、次工具を保持する工具ホルダを把持するグリップアーム38を工具交換位置に割り出して位置決めする。次工具とは、工具交換指令が指定する次に主軸7に装着する工具である。次工具の工具ホルダ90のテーパ部92は、主軸7の工具装着穴40の前方に位置する。
【0039】
主軸7はATC位置からY軸ATC原点に向けて前進する(
図12参照)。工具ホルダ90のテーパ部92は工具装着穴40に挿入し、ホルダ把持部41はプルスタッド93を把持する。カムフォロア54はカム面81を上方から下方に摺動する。カムフォロア54は後方に移動するので、アンクランプアーム50は支点軸45を中心に右側面視時計回りに揺動する。押圧部57,58はピン43の両端から後方に離れ、ドローバ42の前方への押圧を解除する。ドローバ42はホルダ把持部41の前方への付勢を解除するので、ホルダ把持部41はプルスタッド93の把持をロックする。これでATC動作が完了したので、主軸7は加工領域まで下降し、次のワーク加工に進む。
【0040】
以上説明にて、ホルダ把持部41とドローバ42は本発明の工具把持機構の一例である。右支点部63及び左支点部64は本発明の支点部の一例である。カムフォロア54は本発明の力点部の一例、及びローラの一例である。押圧部57,58は本発明の作用点部の一例である。立柱5前面上部に固定したカム部材80は本発明の接触部の一例である。立柱5の前面5Bは本発明の移動面の一例である。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の工作機械1は主軸7、ホルダ把持部41、ドローバ42、主軸ヘッド6、立柱5、アンクランプアーム50を備える。立柱5は主軸ヘッド6を移動可能に支持する。主軸ヘッド6は主軸7を回転可能に保持する。主軸7は工具ホルダ90を装着する。ホルダ把持部41とドローバ42は、主軸7内に設け且つ工具ホルダ90を主軸7に固定又は解除する。アンクランプアーム50は、主軸ヘッド6内に回転可能に支持され、主軸ヘッド6の移動に連動してドローバ42のピン43を押圧又は非押圧することで、ホルダ把持部41による工具ホルダ90の固定又は解除を操作する。アンクランプアーム50は右支点部63、左支点部64、カムフォロア54、押圧部57,58を備える。右支点部63及び左支点部64は主軸ヘッド6内に設けた支点軸45に回転可能に支持される。カムフォロア54は主軸ヘッド6の移動に連動して立柱5に設けたカム面81に接触して外力を受ける。押圧部57,58はカムフォロア54が外力を受けて右支点部63と左支点部64を中心に回転することで、ドローバ42のピン43を押圧又は非押圧する。このようなアンクランプアーム50において、右支点部63及び左支点部64、押圧部57,58、カムフォロア54の順に配置し、右支点部63及び左支点部64と押圧部57,58は、主軸7の軸方向と交差する直線上に配置し、カムフォロア54は右支点部63及び左支点部64から立柱5側に離れた位置に配置する。
【0042】
故に主軸ヘッド6の移動に連動してアンクランプアーム50が回転したときに、カムフォロア54は干渉領域Mを回避できるので、他部材と干渉する可能性を低減できる。アンクランプアーム50は、下から上に向かって、右支点部63及び左支点部64、押圧部57,58、カムフォロア54の順に配置するので、右支点部63及び左支点部64からカムフォロア54までの腕部分と、右支点部63及び左支点部64から押圧部57,58までの腕部分とを一つの形状内に集約できる。故にこれら2つの腕部分が別形状で成り立つ構成と比較して、アンクランプアーム50をコンパクトに設計できる。
【0043】
工作機械1は横形なので主軸7の軸方向は水平方向である。干渉領域Mは主軸7の上側に位置するATC装置30、上部カバー28等の他部材を含む領域である。アンクランプアーム50の右支点部63及び左支点部64は主軸7下方に配置する。故にアンクランプアーム50は、右支点部63及び左支点部64の上方に押圧部57,58を配置できると共に、カムフォロア54を右支点部63及び左支点部64から立柱5側に離れた位置に配置できる。故にカムフォロア54は干渉領域Mを回避できる。
【0044】
主軸ヘッド6の上下動に伴い、カムフォロア54はカム面81を摺動する。カム面81を摺動することでカムフォロア54は外力を受けるので、アンクランプアーム50は右支点部63及び左支点部64を中心に滑らかに且つ安定して揺動できる。
【0045】
右支点部63及び左支点部64は、立柱5前面から前方に離間する位置に配置する。カムフォロア54は、主軸ヘッド6の上下動に連動して立柱5前面に設けたカム面81に摺動して外力を受ける。故にアンクランプアーム50はカムフォロア54がカム面81に接触して外力を受けることで、右支点部63及び左支点部64を中心に揺動できる。
【0046】
アンクランプアーム50は、押圧部57,58とカムフォロア54との間にアーム部52を備える。アーム部52は斜め方向部65と横方向部66を備える。斜め方向部65は押圧部57,58側から立柱5前面側に向かって斜め上方に延び、横方向部66は斜め方向部65の上端部から立柱5側である後方に延びる。故にアンクランプアーム50はカムフォロア54を右支点部63及び左支点部64から立柱5側に離れた位置に容易に配置できる。
【0047】
本発明は上記実施形態に限らず各種変形が可能である。上記実施形態の工作機械1は横形であるが、主軸の軸方向が上下方向である立形でもよい。工作機械1はX軸移動機構11の上にZ軸移動機構12を備えるが、X軸移動機構11とZ軸移動機構12の上下の位置を逆にしてもよい。工作機械1は立柱5がX軸方向とZ軸方向に移動する立柱が、ベース2に対して立柱5の位置を固定し、ワークを支持するテーブルをX軸方向とZ軸方向に移動させてもよい。
【0048】
上記実施形態は、アンクランプアーム50の力点部にカムフォロア54、立柱5前面上部にカム部材80を設け、主軸ヘッド6の上下動に伴い、カムフォロア54がカム部材80のカム面81を摺動するが、例えばカムフォロアとカム部材を相互に入れ替えた構成としてもよい。
【0049】
アンクランプアーム50は下側に二股部51を備えるが、二股状に分かれていなくてもよい。二股部51は右側部61と左側部62の夫々の下部に2つの右支点部63と左支点部64を備え、夫々の全面に2つの押圧部57,58を備えるが、支点部と押圧部の数は一つでも複数でもよい。
【0050】
アンクランプアーム50のアーム部52は、斜め方向部65と横方向部66の2つの部位からなるが、二股部51の中央部60の上部から後方(立柱5側)に向けて延びていれば形状は限定しない。例えば、アーム部52は略中間部にて略V字状に鈍角に折れ曲がるが、滑らかに湾曲していてもよい。二股部51の中央部60の上部から後方に屈曲してそのまま立柱5側に延びていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 工作機械
5 立柱
5B 前面
6 主軸ヘッド
7 主軸
41 ホルダ挟持部
42 ドローバ
43 ピン
50 アンクランプアーム
52 アーム部
54 カムフォロア
57,58 押圧部
63 右支点部
64 左支点部
65 方向部
66 横方向部
80 カム部材
90 工具ホルダ
91 工具