(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058862
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】制御装置、システム、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/0453 20230101AFI20240422BHJP
H04W 72/54 20230101ALI20240422BHJP
【FI】
H04W72/04 132
H04W72/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166243
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 将人
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067DD34
5K067EE02
5K067EE10
5K067FF16
5K067JJ11
(57)【要約】
【課題】品質判定基準に基づいて無線リソースを適切に割当てることが可能な制御装置、システム、方法、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本開示に係る制御装置11は、使用可能な全ての上り無線リソースを決定する決定部111と、端末13から基地局12に送信された上り信号の上り品質判定基準に基づいて全ての上り無線リソースのうちから所定の上り無線リソースを選択し、端末13から基地局12に次の上り信号を送信するための上り無線リソースとして所定の上り無線リソースを割当てる制御部112と、を備え、上り品質判定基準は、上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および上り信号の上りスループット値である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用可能な全ての上り無線リソースを決定する決定部と、
端末から基地局に送信された上り信号の上り品質判定基準に基づいて前記全ての上り無線リソースのうちから所定の上り無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための上り無線リソースとして前記所定の上り無線リソースを割当てる制御部と、
を備え、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号の上りスループット値である、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記上りビットエラー率が所定の上りエラー率以上、且つ、前記上りスループット値が所定の上りスループット値未満である場合、前記所定の上り無線リソースを選択し割当てる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記上りビットエラー率が前記所定の上りエラー率以上、且つ、前記上りスループット値が前記所定の上りスループット値以上である場合、前記所定の上り無線リソースを選択し割当てない、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記上り品質判定基準は、前記基地局ごとに要求される、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記決定部は、使用可能な全ての下り無線リソースを決定し、
前記制御部は、前記基地局から前記端末に送信された下り信号の下り品質判定基準に基づいて前記全ての下り無線リソースのうちから所定の下り無線リソースを選択し、前記基地局から前記端末に次の下り信号を送信するための下り無線リソースとして前記所定の下り無線リソースを割当て、
前記下り品質判定基準は、前記下り信号の誤り訂正前の下りビットエラー率および前記下り信号の下りスループット値である、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記上り無線リソースの周波数と前記下り無線リソースの周波数とは、同一の周波数である、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
基地局と、前記基地局と通信する端末と、前記基地局を制御する制御装置と、を備え、
前記端末は、
無線リソースを使用して上り信号を前記基地局に送信する端末送信部を有し、
前記基地局は、
前記上り信号の上り品質判定基準を算出する基地局算出部と、
前記上り品質判定基準を前記制御装置に通知する基地局通知部と、を有し、
前記制御装置は、
使用可能な全ての無線リソースを決定する決定部と、
前記上り品質判定基準に基づいて前記全ての無線リソースのうちから所定の無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための無線リソースとして前記所定の無線リソースを割当てる制御部と、を有し、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号のスループット値である、
システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記上りビットエラー率が所定の上りエラー率以上、且つ、前記上りスループット値が所定の上りスループット値未満である場合、前記所定の無線リソースを選択し割当てる、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
使用可能な全ての無線リソースを決定することと、
端末から基地局に送信された上り信号の上り品質判定基準に基づいて前記全ての無線リソースのうちから所定の無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための無線リソースとして前記所定の無線リソースを割当てることと、
を備え、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号の上りスループット値である、
方法。
【請求項10】
使用可能な全ての無線リソースを決定することと、
端末から基地局に送信された上り信号の上り品質判定基準に基づいて前記全ての無線リソースのうちから所定の無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための無線リソースとして前記所定の無線リソースを割当てることと、
をコンピュータに実行させ、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号の上りスループット値である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、システム、方法、及びプログラムに関し、特に、品質判定基準に基づいて無線リソースを適切に割当てることが可能な制御装置、システム、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ローカル5Gシステムにおいて、基地局への無線周波数の割当て方法は、セルごとに要求されるスループット値に基づいて必要な無線リソース量を算出し、当該無線リソース量に基づいて最適な無線周波数を割当てることが一般的である。しかしながら、システムの運用開始後に電波環境の変化によって、最初に割当てた無線周波数のままでは干渉が発生し、スループット値が低下するという課題があった。なお、電波環境の変化は、例えば、自システム内における無線周波数の繰り返し使用による干渉や、隣接他システムからの同一無線周波数による干渉によって引き起こされる。
【0003】
上記課題の解決策として、特許文献1には、品質判定基準として信号対干渉波比(SIR:Signal Interference Ratio)を測定し、当該SIRが閾値を下回った場合、最初に割当てた無線周波数から干渉の影響が少ない無線周波数へ再割当てを行うことが記載されている。しかしながら、SIRはマルチパスフェージングの影響により大きく変動するため、SIRが閾値を下回った場合でも、スループット値は低下せずに維持できていることがある。そのため、特許文献1に記載の方法では、スループット値が維持できているにも関わらず、不必要に無線周波数の再割当て(変更)を行う可能性がある。そして、無線周波数の再割当て中は通信断となりスループット値が低下するため、さらなる改善が必要とされる。
【0004】
特許文献2には、品質判定基準としてエラー指標が記載されている。具体的には、特許文献2の0100段落には「エラー指標には、例えば、各通信フレームに対するCRC(Cyclic Redundancy Check)で検出されたエラーの割合であるCRCエラー率、通信フレームのロス等を回復するための再送の回数、フレーム送信及び再送時のRTS(Request to Send)送信回数、帰属及び帰属解除を繰り返している端末数を採用することができる」と記載されている。
【0005】
特許文献3の0066段落には、「AP-aにおけるスループットは、帯域幅bとプライマリチャネルcとチャネルを共用するAPの関係によって決まるので、AP-aにおける帯域幅bとプライマリチャネルcに応じたスループットを評価する効用関数Uを用い、効用関数Uに応じて帯域幅bとプライマリチャネルcを選択する必要がある」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-141571号公報
【特許文献2】特開2017-85421号公報
【特許文献3】特開2017-175204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のとおり、システムの運用開始後に、SIRに基づいて最初に割当てた無線周波数の再割当てを行う場合、SIRは閾値を下回るが、スループット値は維持できていることがある。このような場合、不必要に無線周波数の再割当てを行い、かえってスループット値を低下させてしまうという課題があった。
【0008】
本開示の目的は、上述した課題を解決する制御装置、システム、方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る制御装置は、
使用可能な全ての上り無線リソースを決定する決定部と、
端末から基地局に送信された上り信号の上り品質判定基準に基づいて前記全ての上り無線リソースのうちから所定の上り無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための上り無線リソースとして前記所定の上り無線リソースを割当てる制御部と、
を備え、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号の上りスループット値である。
【0010】
本開示に係るシステムは、
基地局と、前記基地局と通信する端末と、前記基地局を制御する制御装置と、を備え、
前記端末は、
無線リソースを使用して上り信号を前記基地局に送信する端末送信部を有し、
前記基地局は、
前記上り信号の上り品質判定基準を算出する基地局算出部と、
前記上り品質判定基準を前記制御装置に通知する基地局通知部と、を有し、
前記制御装置は、
使用可能な全ての無線リソースを決定する決定部と、
前記上り品質判定基準に基づいて前記全ての無線リソースのうちから所定の無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための無線リソースとして前記所定の無線リソースを割当てる制御部と、を有し、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号のスループット値である。
【0011】
本開示に係る方法は、
使用可能な全ての無線リソースを決定することと、
端末から基地局に送信された上り信号の上り品質判定基準に基づいて前記全ての無線リソースのうちから所定の無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための無線リソースとして前記所定の無線リソースを割当てることと、
を備え、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号の上りスループット値である。
【0012】
本開示に係るプログラムは、
使用可能な全ての無線リソースを決定することと、
端末から基地局に送信された上り信号の上り品質判定基準に基づいて前記全ての無線リソースのうちから所定の無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための無線リソースとして前記所定の無線リソースを割当てることと、
をコンピュータに実行させ、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号の上りスループット値である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、品質判定基準に基づいて無線リソースを適切に割当てることが可能な制御装置、システム、方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に係る制御装置を例示するブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係るシステムを例示するブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る制御装置の動作を例示するフローチャートである。
【
図4】実施の形態2に係るシステムを例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明を省略する。
【0016】
[実施の形態1]
<概要>
図1は、実施の形態1に係る制御装置を例示するブロック図である。
図1では、説明の都合上、基地局および端末も記載する。
【0017】
図1に示すように、実施の形態1に係るシステム10は、基地局12と、基地局12と通信する端末13と、基地局12を制御する制御装置11と、を備える。
【0018】
端末13は、無線リソースを使用して上り信号を基地局12に送信する端末送信部131を有する。無線リソースとは、例えば、無線周波数のことである。また、無線周波数を、略して、周波数と称することもある。
【0019】
基地局12は、基地局算出部121と基地局通知部122とを有する。基地局算出部121は、上り信号の上り品質判定基準を算出する。ここで、上り品質判定基準は、上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および上り信号のスループット値である。よって、基地局算出部121は、上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率を算出する。また、基地局算出部121は、上り信号のスループット値を測定する。
【0020】
基地局通知部122は、上り品質判定基準を制御装置11に通知する。上り品質判定基準は、例えば、基地局12ごとに要求される。上り信号は、端末13から受信し取得する。
【0021】
制御装置11は、決定部111と制御部112とを有する。決定部111は、使用可能な全ての無線リソースを決定する。制御部112は、基地局12から通知された上り品質判定基準に基づいて全ての無線リソースのうちから所定の無線リソースを選択する。その後、制御部112は、端末13から基地局12に次の上り信号を送信するための無線リソースとして、選択した所定の無線リソースを割当てる。
【0022】
制御部112は、上りビットエラー率が所定の上りエラー率以上、且つ、上りスループット値が所定の上りスループット値未満である場合、所定の上り無線リソースを選択し、次の上り信号を送信するための無線リソースとして割当てる。
【0023】
なお、制御部112は、上りビットエラー率が所定の上りエラー率以上、且つ、上りスループット値が所定の上りスループット値以上である場合、所定の上り無線リソースを選択し割当てない。
【0024】
また、制御装置11は、上り信号だけでなく、下り信号に対応してもよい。
具体的には、決定部111は、使用可能な全ての下り無線リソースを決定する。
【0025】
制御部112は、基地局12から端末13に送信された下り信号の下り品質判定基準に基づいて全ての下り無線リソースのうちから所定の下り無線リソースを選択する。制御部112は、基地局12から端末13に次の下り信号を送信するための下り無線リソースとして、選択された所定の下り無線リソースを割当てる。
【0026】
下り品質判定基準は、下り信号の誤り訂正前の下りビットエラー率および下り信号の下りスループット値である。下りビットエラー率は、端末13で算出される。端末13は、算出した下りビットエラー率を、基地局12を経由して制御装置11に通知する。下りスループット値は、端末13で測定される。端末13は、測定した下りスループット値を、基地局12を経由して制御装置11に通知する。
【0027】
また、上り無線リソースの周波数と下り無線リソースの周波数とは、同一の周波数であってもよい。
【0028】
ここで、上り無線リソースおよび/または下り無線リソースを「無線リソース」と称することもある。また、上り信号および/または下り信号を「信号」と称することもある。また、上り品質判定基準および/または下り品質判定基準を「品質判定基準」と称することもある。また、上りビットエラー率および/または下りビットエラー率を「ビットエラー率」と称することもある。また、上りスループット値および/または下りスループット値を「スループット値」と称することもある。
【0029】
<詳細な構成>
図2は、実施の形態1に係るシステムを例示するブロック図である。
図2では、実施の形態1に係るシステムとしてローカル5Gシステムを例に挙げて説明する。ただし、実施の形態1は、これには限定されず、ローカル5Gシステム以外のシステムに適用してもよい。また、
図2では、時分割複信(TDD:TDD Time Division Duplex)を例に挙げて説明する。ただし、実施の形態1は、これには限定されず、例えば、周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)に適用してもよい。
【0030】
図2に示すように、ローカル5Gシステム(システム10)は、ネットワーク管理システム(NMS:Network Management System)14とコアネットワークサーバ15を備える。ネットワーク管理システム14は、ネットワーク全体の制御、および監視を行う。コアネットワークサーバ15は、端末13との間で行われる通信ユーザデータの送受信処理や通信の確立を行う。
【0031】
システム10は、複数の基地局12と、基地局12と無線通信する複数の端末13と、を備える。この例では、複数の基地局12は、基地局12a、基地局12bおよび基地局12cである。複数の端末13は、端末13aおよび端末13bである。
【0032】
基地局12aと端末13aとの間は、下り信号および上り信号として周波数f1が割当てられる。基地局12aと端末13bとの間は、上り信号として周波数f1が割当てられる。自システム10内における繰り返し周波数の利用による干渉については、基地局12aにおいて、端末13aからの上り信号の周波数f1と、端末13bからの上り信号の周波数f1と、が干渉する。
【0033】
基地局12cと端末13aとの間は、下り信号として周波数f1が割当てられる。基地局12bは、下り信号として周波数f2が割当てられる。自システム10内における繰り返し周波数の利用による干渉については、端末13aにおいて、基地局12aからの下り信号の周波数f1と、基地局12cからの下り信号の周波数f1と、が干渉する。
【0034】
図2に示すCU/DUは、
図1に示す制御装置に相当する。CU/DU11は、データ処理機能を有するセントラルユニット(CU:Central Unit)と、無線信号処理機能を有するディストリビューションユニット(DU:Distributed Unit)と、を有する。基地局12は、無線周波数を使用した無線通信を利用して、端末13との間でユーザデータの送受信を行う。なお、基地局のサービスエリアをセルと称することもある。また、基地局12aのサービスエリアをセルAとし、基地局12bのサービスエリアをセルBとし、基地局12cのサービスエリアをセルCとした。
【0035】
<動作>
図3は、実施の形態1に係る制御装置の動作を例示するフローチャートである。
制御装置の動作の説明においては、上り信号を例に挙げて説明するが、これには限定されない。実施の形態1は、上り信号に限定されず、下り信号にも同様に適用できる。
図3においては簡単のため、「上り」または「下り」の用語を省略する。よって、例えば、ビットエラー率は、上りビットエラー率または下りビットエラー率を示す。なお、ビットエラー率は、誤り訂正前のビットエラー率を示す。
【0036】
図3に示すように、CU/DU11は、基地局12a(セルA)に要求される無線リソース量を算出する(ステップS101)。
【0037】
CU/DU11は、基地局12a対して、最適な周波数f1を割当てるように周波数割当て処理を行う(ステップS102)。その結果、基地局12aは、通信対象である端末13aとの間で周波数f1を使用して、干渉が発生しないようにTDD方式で通信する。
【0038】
しかしながら、周波数リソース(無線リソース)は限られているため、例えば、サービスエリアの拡大に伴って基地局12c(セルC)のようなセルを追加した場合、セルAで使用する周波数と同じ周波数f1がセルCに割当てられる場合がある。この場合、セルCを配置する際に、セルAとの干渉を極力低減する周波数配置を行うが、周波数リソースが限られているため周波数f1が割当てられ、干渉を完全に無くすことは難しい。
【0039】
その結果、セルAの下り信号の送信波とセルCの下り信号の送信波が周波数f1同士で干渉し(
図2参照)、セルAと端末13a間の下り通信に影響を与える。また、セルAにおいて、端末13aの上り信号の送信波と端末13bの上り信号の送信波とが周波数f1同士で干渉し(
図2参照)、セルAと端末13a間の上り通信に影響を与える。その結果、下りのスループット値、および/または、上りのスループット値が低下する。
【0040】
そこで、実施の形態1では、
図3に示すように、セルAが誤り訂正前の上りビットエラー率を算出し、CU/DU11へ通知する。CU/DU11は、セルAから取得した上りビットエラー率と、所定の上りエラー率(予め設定された閾値)と、の比較に基づいて判定1を行う(ステップS103)。
【0041】
ステップS103における判定1の結果、セルAの上りビットエラー率が閾値未満の場合(ステップS103:Nо)、ステップS102において割当てた周波数を変更しない。
【0042】
CU/DU11は、ステップS103における判定1の結果、セルAの上りビットエラー率が閾値以上の場合(ステップS103:Yes)、品質判定基準に基づく判定および周波数の再割当て処理へ移行する。品質判定基準に基づく判定および周波数の再割当て処理は、判定2(ステップS104)、判定3(ステップS105)、および/または、周波数の再割当て(ステップS106)を含む。
【0043】
品質判定基準に基づく判定および周波数の再割当て処理の詳細を説明する。
CU/DU11は、セルAの上りビットエラー率が所定の上りエラー率(閾値)以上の場合(ステップS103:Yes)、運用モードの選択を行う(ステップS104)。CU/DU11は、ステップS104において、上りスループット値の低下前に周波数の変更(周波数の再割当て)を行うか否かを決定する。
【0044】
CU/DU11は、上りスループット値の低下前に周波数の変更を行わないと決定した場合(ステップS104:Nо)、判定3の処理であるステップS105に移行する。CU/DU11は、ステップS105において、上りスループット値と所定の上りスループット値(閾値)との比較を行う。
【0045】
CU/DU11は、上りスループット値が閾値未満の場合(ステップS105:Yes)、周波数の再割当て処理を行う(ステップS106)。CU/DU11は、上りスループット値が閾値以上の場合(ステップS105:Nо)、ステップS103に戻る。
【0046】
CU/DU11は、上りスループット値の低下前に周波数の再割当てを行う場合(ステップS104:Yes)、周波数の再割当て処理を行う(ステップS106)。
【0047】
なお、CU/DU11の処理フローにおいて(
図3参照)、判定1から判定3は所定の閾値に従い判定を行うが、判定のばたつき(チャタリング)を抑制するため、ヒステリシス値を設けてもよい。
【0048】
<効果>
実施の形態1においては、事前に判定2(ステップS104)に示すように、運用モードの選択を行うことで、周波数変更タイミング(周波数の再割当てタイミング)を変更することができる。
【0049】
上りビットエラー率の増加は、上りスループット値に影響を与える。所定のサービス条件において、上りビットエラー率の増加と共に、未だに上りスループット値は低下していないが、上りスループット値に低下の傾向の兆しが見えることがある。そして、上りスループット値に低下の傾向の兆しが見えた段階で、即座に周波数の再割当て処理を行いたい場合がある。このような場合には、判定3(ステップS105)は行わず、周波数の再割当て処理を行う(ステップS106)。すなわち、(ステップS104:Yes)からステップS106の処理を行う。
【0050】
一方、上りビットエラー率が閾値以上であり(ステップS103:Yes)、上りスループット値を確認した後に周波数の再割当て処理を行いたい場合、判定2(ステップS104)をNоとする。すなわち、上りスループット値の低下前に周波数変更しないというモードに運用モードを選択する。その後、判定3(ステップS105)を行い、上りスループット値が閾値未満になった場合(ステップS105:Yes)、周波数の再割当て処理を行う(ステップS106)。これにより、端末13aと基地局12aとの間の通信(
図2参照)を限界まで継続して接続させることができる。
【0051】
<効果>
実施の形態1に係るCU/DU11は、SIRではなく、誤り訂正前のビットエラー率およびスループット値を品質判定基準として使用する。CU/DU11は、品質判定基準に基づいて判定1から判定3の少なくともいずれかを行い、判定結果に基づいて基地局12(セル)の周波数を制御する(
図3参照)。具体的には、CU/DU11は、品質判定基準(誤り訂正前のビットエラー率およびスループット値)に基づいて全ての無線リソースのうちから所定の無線リソースを選択し、端末13と基地局12との間の通信に使用する無線リソースとして所定の無線リソースを割当てる。
【0052】
これにより、不必要な周波数変更を行う回数を低減することができるので、周波数変更による通信断の時間および回数を低減し、周波数利用効率を向上させることができる。
【0053】
その結果、品質判定基準に基づいて無線リソースを適切に割当てることが可能な制御装置、システム、方法、及びプログラムを提供することができる。
【0054】
また、実施の形態1では、制御装置11が無線リソース(周波数)の割当てを制御する。制御装置11は、当該周波数割当て制御をハードウェア(HW:Hard Ware)処理で実行することができるので、品質判定を含む周波数割当てをNMS14で実行する場合と比べて、制御処理時間の短縮することができる。
【0055】
<特徴>
実施の形態1の特徴を以下に記載する。
実施の形態1では、品質判定基準として、SIRではなく、誤り訂正前のビットエラー率およびスループット値を使用する。
品質判定基準の制御フローは、
図3に示すステップS101からステップS106のフローを使用する。
CU/DU11が品質判定を行い、その判定結果に基づいて基地局(セル)の周波数を制御する。
【0056】
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2に係るシステムを例示するブロック図である。
図4は、実施の形態2に係るシステムの詳細を例示するブロック図である。
【0057】
図4に示すように、実施の形態2は実施の形態1と比べて、自システム10内における繰り返し周波数の利用による干渉ではなく、隣接他システム10nからの干渉の影響を低減するように周波数の割当てを行う点が異なる。
【0058】
CU/DU11は、基地局12d(セルD)に要求される無線リソース量を算出する。
【0059】
CU/DU11は、基地局12d対して、最適な周波数として、例えば、周波数f1を割当てるように周波数割当て処理を行う。その結果、基地局12dは、通信対象である端末13cとの間で周波数f1を使用して、干渉が発生しないようにTDD方式で通信する。
【0060】
ここで、隣接他システム10nが構築され、基地局12f(セルF)が追加された場合、セルDで使用する周波数と同じ周波数f1がセルFに割当てられることがある。この場合、セルDまたはセルFは別システムのため、お互いの周波数配置を知ることは難しく、セルDが使用する周波数f1とセルFが使用する周波数f1との間で干渉が発生する。また仮に、お互いの周波数配置を知ることができたとしても、周波数リソースが限られているため、やはり、セルDは周波数f1を使用し、セルFは周波数f1を使用するので、干渉を完全に無くすことは難しい。
【0061】
そのため、セルDの下り信号の送信波とセルFの下り信号の送信波とが干渉し(
図4参照)、セルDと端末13c間の下り通信に影響を与える。また、端末13cの上り信号の送信波と端末13dの上り信号の送信波とが干渉し(
図4参照)、セルDと端末13c間の上り通信に影響を与える。これにより、下り、および/または、上りのスループット値が低下する。
【0062】
この場合、自システム内における繰り返し周波数の利用による干渉(
図2参照)と同様に、
図3に示す制御フローチャートを適応することができる。
【0063】
そこで、実施の形態2では、セルDが誤り訂正前の上りビットエラー率を算出し、CU/DU11へ通知する。CU/DU11は、セルDからの上りビットエラー率と、所定の上りエラー率(予め設定された閾値)と、の比較に基づいて判定1を行う。
【0064】
判定1の結果、セルDの上りビットエラー率が閾値未満の場合、最初に割当てた周波数を変更しない。
【0065】
セルDの上りビットエラー率が閾値以上の場合、周波数の再割当て処理へ移行する。このとき、事前に判定2の運用モードの選択を行うことで、周波数変更タイミングを変更することができる。
【0066】
上りビットエラー率の増加は、上りスループット値に影響を与える。所定のサービス条件において、上りビットエラー率の増加と共に、未だに上りスループット値は低下していないが、上りスループット値に低下の傾向の兆しが見えることがある。そして、上りスループット値に低下の傾向の兆しが見えた段階で、即座に周波数の再割当て処理を行いたい場合がある。このような場合には、判定3は行わず、周波数の再割当て処理を行う。
【0067】
一方、上りビットエラー率が閾値以上であり、上りスループット値を確認した後に周波数の再割当て処理を行いたい場合、判定2をNоとする。すなわち、上りスループット値の低下前に周波数変更しないというモードに運用モードを選択する。その後、判定3を行い、上りスループット値が閾値未満になった場合、周波数の再割当て処理を行う。これにより、端末13cと基地局12dとの間の通信(
図4参照)を限界まで継続して接続させることができる。
【0068】
尚、上記の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、各構成要素の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0069】
上記の実施の形態において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実態のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(具体的にはフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(具体的には光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(具体的には、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM))、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0070】
さらに、動作は特定の順序で描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順序または連続した順序で実行されること、または示されたすべての動作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスクと並列処理が有利な場合がある。同様に、いくつかの特定の実施の形態の詳細が上記の議論に含まれているが、これらは本開示の範囲に対する制限としてではなく、特定の実施の形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施の形態の文脈で説明される特定の特徴は、単一の実施の形態に組み合わせて実装されてもよい。逆に、単一の実施の形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実施の形態で別々にまたは任意の適切な組み合わせで実装されてもよい。
【0071】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0072】
尚、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0073】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
使用可能な全ての上り無線リソースを決定する決定部と、
端末から基地局に送信された上り信号の上り品質判定基準に基づいて前記全ての上り無線リソースのうちから所定の上り無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための上り無線リソースとして前記所定の上り無線リソースを割当てる制御部と、
を備え、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号の上りスループット値である、
制御装置。
(付記2)
前記制御部は、前記上りビットエラー率が所定の上りエラー率以上、且つ、前記上りスループット値が所定の上りスループット値未満である場合、前記所定の上り無線リソースを選択し割当てる、
付記1に記載の制御装置。
(付記3)
前記制御部は、前記上りビットエラー率が前記所定の上りエラー率以上、且つ、前記上りスループット値が前記所定の上りスループット値以上である場合、前記所定の上り無線リソースを選択し割当てない、
付記2に記載の制御装置。
(付記4)
前記上り品質判定基準は、前記基地局ごとに要求される、
付記1に記載の制御装置。
(付記5)
前記決定部は、使用可能な全ての下り無線リソースを決定し、
前記制御部は、前記基地局から前記端末に送信された下り信号の下り品質判定基準に基づいて前記全ての下り無線リソースのうちから所定の下り無線リソースを選択し、前記基地局から前記端末に次の下り信号を送信するための下り無線リソースとして前記所定の下り無線リソースを割当て、
前記下り品質判定基準は、前記下り信号の誤り訂正前の下りビットエラー率および前記下り信号の下りスループット値である、
付記1に記載の制御装置。
(付記6)
前記上り無線リソースの周波数と前記下り無線リソースの周波数とは、同一の周波数である、
付記5に記載の制御装置。
(付記7)
基地局と、前記基地局と通信する端末と、前記基地局を制御する制御装置と、を備え、
前記端末は、
無線リソースを使用して上り信号を前記基地局に送信する端末送信部を有し、
前記基地局は、
前記上り信号の上り品質判定基準を算出する基地局算出部と、
前記上り品質判定基準を前記制御装置に通知する基地局通知部と、を有し、
前記制御装置は、
使用可能な全ての無線リソースを決定する決定部と、
前記上り品質判定基準に基づいて前記全ての無線リソースのうちから所定の無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための無線リソースとして前記所定の無線リソースを割当てる制御部と、を有し、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号のスループット値である、
システム。
(付記8)
前記制御部は、前記上りビットエラー率が所定の上りエラー率以上、且つ、前記上りスループット値が所定の上りスループット値未満である場合、前記所定の無線リソースを選択し割当てる、
付記7に記載のシステム。
(付記9)
使用可能な全ての無線リソースを決定することと、
端末から基地局に送信された上り信号の上り品質判定基準に基づいて前記全ての無線リソースのうちから所定の無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための無線リソースとして前記所定の無線リソースを割当てることと、
を備え、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号の上りスループット値である、
方法。
(付記10)
使用可能な全ての無線リソースを決定することと、
端末から基地局に送信された上り信号の上り品質判定基準に基づいて前記全ての無線リソースのうちから所定の無線リソースを選択し、前記端末から前記基地局に次の上り信号を送信するための無線リソースとして前記所定の無線リソースを割当てることと、
をコンピュータに実行させ、
前記上り品質判定基準は、前記上り信号の誤り訂正前の上りビットエラー率および前記上り信号の上りスループット値である、
プログラム。
【符号の説明】
【0074】
10…システム、自システム
10n…隣接他システム
11、11n…制御装置、CU/DU
111…決定部
112…制御部
12、12a、12b、12c、12d、12e、12f…基地局
121…基地局算出部
122…基地局通知部
13、13a、13b、13c、13d…端末
131…端末送信部
14、14n…ネットワーク管理システム
15、15n…コアネットワークサーバ