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特開2024-58871ポートサンプリングシステム及びラッチ回路装置
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  • 特開-ポートサンプリングシステム及びラッチ回路装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058871
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ポートサンプリングシステム及びラッチ回路装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 15/78 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
G06F15/78 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166252
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 一夫
【テーマコード(参考)】
5B062
【Fターム(参考)】
5B062EE01
5B062EE05
5B062HH07
(57)【要約】
【課題】複数の入力信号を入力するために占有する入力ポートの数を抑制すると共に、マイクロコンピュータのスリープ中に生じた信号をウェイクアップ後に入力することが可能な技術を提供できる。
【解決手段】ポートサンプリングシステムが、マイクロコンピュータと、ラッチ回路装置とを備え、ラッチ回路装置は、入力信号が非アクティブ状態からアクティブ状態になった場合に、当該入力信号をラッチするラッチ回路と、マイクロコンピュータによる読み出し要求に応じて、少なくともラッチ回路から出力される入力信号をサンプリングしてマイクロコンピュータに入力する入力回路とを備え、マイクロコンピュータは、スリープ状態から通常動作状態へ移行するときに、入力回路へ読み出し要求を行い、入力回路から入力された入力信号を読み込み後、ラッチ回路のラッチ状態を解除させると共に、ラッチ回路への入力信号を所定時間非アクティブ状態にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロコンピュータと、外部装置から前記マイクロコンピュータへ入力される入力信号をラッチした後、前記マイクロコンピュータへ入力するラッチ回路装置と、を備えるポートサンプリングシステムであって、
前記ラッチ回路装置は、
前記入力信号が非アクティブ状態からアクティブ状態になった場合に、当該入力信号をラッチするラッチ回路と、
前記マイクロコンピュータによる読み出し要求に応じて、少なくとも前記ラッチ回路から出力される前記入力信号をサンプリングして前記マイクロコンピュータに入力する入力回路と、を備え
前記マイクロコンピュータは、
スリープ状態から通常動作状態へ移行するときに、前記入力回路へ読み出し要求を行い、前記入力回路から入力された前記入力信号を読み込み後、前記ラッチ回路のラッチ状態を解除させると共に、前記ラッチ回路への前記入力信号を所定時間非アクティブ状態にする、
ポートサンプリングシステム。
【請求項2】
前記ラッチ回路に入力される前記入力信号は、非アクティブ状態からアクティブ状態になった場合に前記マイクロコンピュータをウェイクアップさせる信号であり、前記ラッチ回路装置は、前記入力信号が非アクティブ状態からアクティブ状態になった場合に前記マイクロコンピュータをウェイクアップさせる請求項1に記載のポートサンプリングシステム。
【請求項3】
前記ラッチ回路装置は、前記外部装置から受信した前記入力信号を前記ラッチ回路へ入力する接続状態と、前記外部装置から受信した前記入力信号の状態に関わらず前記ラッチ回路へ入力される前記入力信号を非アクティブ状態とする接続解除状態とを切り替える接続解除回路を備え、
前記マイクロコンピュータは、前記接続解除回路に駆動信号を出力することで、前記ラッチ回路への前記入力信号を所定時間非アクティブ状態にする請求項1に記載のポートサンプリングシステム。
【請求項4】
前記ラッチ回路のラッチ状態を解除させるため、前記マイクロコンピュータから出力されるクリア信号を前記駆動信号として兼用する請求項3に記載のポートサンプリングシステム。
【請求項5】
前記マイクロコンピュータは、通常動作状態においても前記入力回路から入力された前記入力信号を読み込んだ場合に、前記ラッチ回路のラッチ状態を解除する請求項1に記載のポートサンプリングシステム。
【請求項6】
前記入力回路は、前記ラッチ回路から読み出された複数の入力信号をシリアル信号に変換し、シリアル通信回線を介して前記マイクロコンピュータへ送信する請求項1~5の何れか1項に記載のポートサンプリングシステム。
【請求項7】
外部装置からマイクロコンピュータへ入力される入力信号が非アクティブ状態からアクティブ状態になった場合に、当該入力信号をラッチするラッチ回路と、
前記マイクロコンピュータによる読み出し要求に応じて、少なくとも前記ラッチ回路から出力される前記入力信号をサンプリングして前記マイクロコンピュータに入力する入力回路と、
前記外部装置から受信した前記入力信号を前記ラッチ回路へ入力する接続状態と、前記
外部装置から受信した前記入力信号の状態に関わらず前記ラッチ回路へ入力される前記入力信号を非アクティブ状態とする接続解除状態とを切り替える接続解除回路と、
を備えるラッチ回路装置。
【請求項8】
前記入力回路は、前記ラッチ回路から読み出された複数の入力信号をシリアル信号に変換し、シリアル通信回線を介して前記マイクロコンピュータへ送信する請求項6に記載のラッチ回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポートサンプリングシステム及びラッチ回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、CPUによりレジスタに設定されたサンプリング周期に基づいて出力ポートの出力レベルを周期的に変化させ、データラッチ部が、出力レベルの変化を起点とし、タイミング信号に基づいて入力ポートに与えられるデータをラッチすると、そのラッチしたデータをデータレジスタに格納する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-171927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば車載装置に用いられるマイクロコンピュータにおいては、装置の多機能化などに伴い、入力される信号の数が増加する傾向にある。しかしながらマイクロコンピュータの入力ポートの数には限りがあり、所要の信号を全て入力できるとは限らないという問題があった。このため複数の入力信号をパラレル/シリアル変換し、シリアル通信路を介してマイクロコンピュータへ入力することも考えられるが、スリープ状態のマイクロコンピュータへの入力を行う場合、マイクロコンピュータをスリープ状態から復帰させ、入力信号を変換してマイクロコンピュータへ入力するまでの間に入力信号の値が変化してしまうことが考えられ、適切に入力が行えるとは限らないという問題があった。
【0005】
本開示の技術は、複数の入力信号をマイクロコンピュータへ入力する場合に、マイクロコンピュータのスリープ中に生じた信号をウェイクアップ後に入力することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示のポートサンプリングシステムは、マイクロコンピュータと、外部装置から前記マイクロコンピュータへ入力される入力信号をラッチした後、前記マイクロコンピュータへ入力するラッチ回路装置と、を備える。
前記ラッチ回路装置は、ラッチ回路と、入力回路と、を備える。前記ラッチ回路は、前記入力信号が非アクティブ状態からアクティブ状態になった場合に、当該入力信号をラッチする。前記入力回路は、前記マイクロコンピュータによる読み出し要求に応じて、少なくとも前記ラッチ回路から出力される前記入力信号をサンプリングして前記マイクロコンピュータに入力する。
前記マイクロコンピュータは、スリープ状態から通常動作状態へ移行するときに、前記入力回路へ読み出し要求を行い、前記入力回路から入力された前記入力信号を読み込み後、前記ラッチ回路のラッチ状態を解除させると共に、前記ラッチ回路への前記入力信号を所定時間非アクティブ状態にする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、複数の入力信号をマイクロコンピュータへ入力する場合に、マイクロコンピュータのスリープ中に生じた信号をウェイクアップ後に入力することが可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ポートサンプリングシステムの構成を示す図である。
図2図2は、入力信号をパラレル/シリアル変換する処理の説明図である。
図3図3は、接続解除回路の一例を示す図である。
図4図4は、ポートサンプリングシステムにおける動作のタイミングを示すタイムチャートである。
図5図5は、比較例としてのポートサンプリングシステムの構成を示す図である。
図6図6は、図5のポートサンプリングシステムにおける動作のタイミングを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0010】
図1は、ポートサンプリングシステム1の構成を示す図である。本実施形態のポートサンプリングシステム1は、マイクロコンピュータ10と、当該マイクロコンピュータ10への入力信号をラッチし、このラッチした入力信号をマイクロコンピュータ10へ送信するラッチ回路装置20とを備える。ラッチ回路装置20は、ラッチ回路21、マルチ入力IC(入力回路)22、及び接続解除回路26を備える。また、ポートサンプリングシステム1は、電源を備えても良いし、外部の電源から電力の供給を受ける構成であってもよい。本実施形態のポートサンプリングシステム1は、車載装置に用いられ、車側のバッテリーから電力の供給を受け、ECU(Electronic Control Unit)から入力信号が入力さ
れる。なお、ポートサンプリングシステム1は、車載装置に用いられるものに限定されない。
【0011】
<マイクロコンピュータ>
マイクロコンピュータ10は、制御部11と、割り込み回路12と、シリアル通信回路13と、出力回路14と、ポートP11~P19とを備える。マイクロコンピュータ10は、これらの構成が1つのICに備えられた所謂ワンチップマイコンである。
【0012】
制御部11は、プロセッサやメモリから構成され、マイクロコンピュータ10における各種の演算処理を統括的に実行する。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing
Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの演算処理手段である。記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)などであり、主記憶部や補助記憶部として用いられる。
【0013】
制御部11は、シリアル通信回路13を介して入力信号の読み出し要求を定期的にラッチ回路装置20へ送信する。また、制御部11は、読み出し要求に応じて読み出された入力信号をマルチ入力IC22からシリアル通信回路13を介して取得し、入力信号に応じた処理を実行する。更に、制御部11は、ウェイクアップ信号やスリープ信号といった割り込み信号に応じて、マイクロコンピュータ10を通常状態又はスリープ状態へ移行させるための処理を行う。なお、スリープ状態への移行については、制御部11がラッチ回路装置20やその他の入力信号によって総合的に判断し移行するようにしてもよい。
【0014】
割り込み回路12は、割り込み信号を受けた場合に、これを制御部11に入力する。例えば、割り込み信号としてウェイクアップ信号を受けた場合、これを制御部11に通知し、スリープ状態から通常状態へ移行するためのウェイクアップ処理を行わせる。また、割り込み信号としてスリープ信号を受けた場合、これを制御部11に通知し、通常状態から
スリープ状態へ移行するためのスリープ処理を行わせる。なお、割り込み回路12は、スリープ中であっても割り込み信号の監視を行う。また、割り込み回路12は、ウェイクアップ信号を受けた場合、電力供給用のリレーを動作させて制御部11やシリアル通信回路13、出力回路14といった各機能部への電力の供給を開始させてもよい。また、割り込み回路12は、制御部11によるスリープ処理が完了した場合に、電力供給用のリレーを開き、制御部11やシリアル通信回路13、出力回路14といった各機能部への電力の供給を停止させてもよい。
【0015】
シリアル通信回路13は、ラッチ回路装置20のマルチ入力IC22との間でシリアル通信を行う。シリアル通信回路13は、マルチ入力IC22から入力信号を受信する受信回路、又はマルチ入力IC22へ信号を送信する送信回路の一形態である。
【0016】
出力回路14は、外部の装置へ信号を出力する回路である。例えば、マイクロコンピュータ10が、マルチ入力IC22から入力信号を受信した場合に、ラッチクリア信号(解除信号)をラッチ回路21へ送り、ラッチ状態を解除させる。
【0017】
ポートP11~P19は、外部の信号線と接続し、マイクロコンピュータ内への信号の入力、又はマイクロコンピュータ内から外部への信号の出力を行う端子である。
【0018】
<ラッチ回路装置>
ラッチ回路装置20は、マイクロコンピュータ10に対する複数の入力信号D1~D9が、ECU等の外部装置から入力される。なお、外部装置は、ECUに限らず、ポートサンプリングシステム1の外部に存在する装置であればよい。入力信号D4~D9は、マイクロコンピュータ10がスリープ状態のときに入力された場合に、ウェイクアップ信号を送出してマイクロコンピュータ10をウェイクアップさせる信号(以下、ウェイクアップ対象信号とも称す)である。図1では、入力信号D1~D3が、信号線L1~L3を介してマルチ入力IC22の入力ポートP21~P23に直接入力される。一方、入力信号D4~D9は、信号線L4~L9及び接続解除回路26を介してラッチ回路21に入力され、ラッチ回路21からマルチ入力IC22のポートP24~P29に入力される。
【0019】
ラッチ回路21は、入力信号が入力された場合に、この入力信号を保持する回路であり、例えば、入力信号が入力されていない状態(非アクティブ状態)がLoであって、入力信号が入力されたことでHiとなった場合に、このHiの状態(アクティブ状態)を保持する。また、ラッチ回路21は、入力信号が入力されていない状態(非アクティブ状態)をHiとし、入力信号が入力されたことでLoとなった場合に、このLoの状態(アクティブ状態)を保持する構成であってもよい。ラッチ回路21は、例えばフリップフロップである。また、ラッチ回路21は、クリア端子211を備え、このクリア端子211がマイクロコンピュータ10の出力ポートP19と接続され、マイクロコンピュータ10が入力信号の受信を完了した際にクリア信号をラッチ回路21へ送信する。ラッチ回路21は、マイクロコンピュータ10の出力ポートP19からクリア端子211にクリア信号を受けた場合に、ラッチ回路21のラッチ状態を解除し、入力信号が入力されていない状態(初期状態)とする解除回路212を備える。
【0020】
マルチ入力IC22は、ポートサンプリング回路23と、CR発振回路24と、シリアル通信回路25と、ポートP21~P29、P31~P34を備えている。マルチ入力IC22は、入力回路の一形態である。
【0021】
ポートサンプリング回路23は、読み出し要求に応じて入力信号D1~D9の読み出しを行う。また、ポートサンプリング回路23は、CR発振回路24によって生成されたクロック信号に基づくタイミングで、入力信号D1~D9の読み出しを行う。マイクロコン
ピュータ10は、シリアル通信回路13を介して定期的に読み出し要求をマルチ入力IC22へ送信するので、ポートサンプリング回路23は、定期的に入力信号D1~D9の読み出しを行う。
【0022】
また、ポートサンプリング回路23は、マイクロコンピュータ10がスリープ状態にあるスリープ期間中に、入力信号D4~D9がラッチ回路21に入力されたことを検出する。即ち本実施形態のポートサンプリング回路23は、検出回路の一形態である。更に、ポートサンプリング回路23は、スリープ期間中に入力信号D4~D9の入力が検出された場合に,マイクロコンピュータ10にウェイクアップ信号を送信する。即ち、ポートサンプリング回路23は、ウェイクアップ回路の一形態である。例えば、ポートサンプリング回路23は、マイクロコンピュータ10がスリープ期間中に、入力信号D4~D9が非アクティブ状態からアクティブ状態になった場合にマイクロコンピュータ10へウェイクアップ信号を送信してマイクロコンピュータをウェイクアップさせる。
【0023】
シリアル通信回路25は、ポートサンプリング回路23によって読み出された入力信号をマイクロコンピュータへ送信する。ここで、入力信号が、マイクロコンピュータ10のスリープ期間中に入力された場合、ウェイクアップ信号に応じてマイクロコンピュータ10がウェイクアップ処理を行い、スリープ状態から復帰したマイクロコンピュータ10へ当該入力信号を送信する。本実施形態のシリアル通信回路25は、送信回路の一形態である。
【0024】
マルチ入力IC22のシリアル通信回路25と、マイクロコンピュータ10のシリアル通信回路13とは、シリアル通信回線30によって接続されている。シリアル通信回線30は、通信線31~35を有し、このうち通信線31~34の一端がマイクロコンピュータ10のポートP11~P14と接続され、他端がマルチ入力IC22のポートP31~P34と接続されている。通信線31は、通信の同期をとるためのクロック信号が、マイクロコンピュータ10から送信される。通信線32は、マイクロコンピュータ10がデータを送信する線、即ち、マルチ入力IC22がデータを受信する線である。通信線33は、マルチ入力IC22がデータを送信する線、即ち、マイクロコンピュータ10がデータを受信する線である。通信線34は、マイクロコンピュータ10が通信相手を示すためにチップセレクト信号を送信する線である。
【0025】
このように本実施形態では、マイクロコンピュータ10とマルチ入力IC22とのシリアル通信のために、4本の通信線31~34を用いたが、この構成に限定されるものではない。例えば通信線31~34の一部を省略してもよい。通信線35は、一端がマイクロコンピュータ10のポートP15と接続され、他端が他のICチップ39に接続されている。通信線31~33は、ICチップ39とも接続され、ICチップ39とマルチ入力IC22とで共用される。通信線35は、マイクロコンピュータ10がICチップ39と通信する場合にチップセレクト信号を送出する線(セレクト用通信線)である。このようにマルチ入力IC22以外のICチップと通信する場合、通信線31~33を共用し、セレクト用通信線をICチップの数だけ追加すればよい。マイクロコンピュータ10は、例えば、通信相手のセレクト用通信線にチップセレクト信号を送信し、チップセレクト信号を受信しているICチップが、通信線31~33を用いてマイクロコンピュータ10と通信する。
【0026】
また、シリアル通信回路25は、入力ポートP21~P29を介して読み出した入力信号をパラレル/シリアル変換する。図2は、入力信号をパラレル/シリアル変換する処理の説明図である。図2に示すように、シリアル通信回路25は、入力ポートP21~P29からパラレルに読み出した入力信号D1~D9を所定の順序でシリアルに並べてシリアル信号42とする。パラレル/シリアル変換する。読み出した入力信号をシリアル信号に
変換し、この返還後のシリアル信号をマイクロコンピュータ10へ通信線33を介して送信する。これにより9種類の入力信号を1本の通信線33を介して1つの入力ポートに入力することができ、複数の入力信号を送信する場合に占有する入力ポートの数を抑制することができる。
【0027】
接続解除回路26は、外部装置から受信した入力信号をラッチ回路21へ入力する際の状態を接続状態と接続解除状態とに切り替える。接続解除回路26は、接続状態の場合、外部装置から受信した入力信号の状態を変更せずにラッチ回路21へ入力する。即ち、外部装置から受信した入力信号がアクティブ状態であればラッチ回路21への入力信号をアクティブ状態とし、受信した入力信号が非アクティブ状態であればラッチ回路21への入力信号を非アクティブ状態とする。一方、接続解除回路26は、接続解除状態の場合、外部装置から受信した入力信号の状態に関わらずラッチ回路21へ入力する入力信号を非アクティブ状態とする。接続解除回路26は、マイクロコンピュータ10から駆動信号を受信した場合に接続解除状態とし、それ以外の場合に接続状態とする。なお、図1に示すように、接続解除回路26は、信号線L19を介してマイクロコンピュータ10のポートP19と接続され、マイクロコンピュータ10からクリア信号が駆動信号として入力される。即ち、クリア信号が駆動信号と兼用されている。
【0028】
図3は、接続解除回路26の一例を示す図である。図3の接続解除回路26は、トランジスタ261を備えている。トランジスタ261は、例えばnpn型であり、コレクタが信号線L4~L9と接続され、エミッタがグランドと接続されている。図3では、トランジスタ261と各信号線L4~L9との接続を一部省略して示したが、トランジスタ261は、複数設けられ、一つの信号線L4~L9毎に一つのトランジスタ261が接続されてもよいし、一つのトランジスタ261が複数の信号線L4~L9毎に接続されてもよい。例えば、一つのトランジスタ261のコレクタを複数の信号線L4~L9と接続してもよい。この場合、或るラインの入力信号が他のラインに回り込まないよう、各信号線L4~L9とトランジスタ261のコレクタとを結ぶラインにダイオード(カソードがトランジスタ261側)を接続してもよい。
【0029】
トランジスタ261のベースは、信号線L19を介してマイクロコンピュータ10のポートP19と接続されている。マイクロコンピュータ10のポートP19からラッチ回路21のラッチ状態をクリアするためのクリア信号41が出力されると、このクリア信号41が駆動信号としてトランジスタ261のベースに入力される。即ち、図1図3の例では、信号線L19が分岐してラッチ回路21と接続解除回路26とに接続され、信号線L
19が共用されている。なお、これに限らず、クリア信号41を出力するポートP19と別に、駆動信号を出力するポートをマイクロコンピュータ10に設けて、当該ポートと接続解除回路26とを接続し、駆動信号を接続解除回路26へ入力する構成としてもよい。
【0030】
トランジスタ261のベースに駆動信号が入力されると、コレクタ-エミッタ間に電流が流れ、信号線L4~L9の入力信号がグランドへ流れることでラッチ回路に入力されなくなり、ラッチ回路21の入力が非アクティブ状態となる。なお、図3では、所謂デジタルトランジスタを用いた接続解除回路26の例を示したが、これに限らず、駆動信号を受けたときにラッチ回路21の入力を非アクティブ状態とするものであれば、他の素子を用いてもよい。また、接続解除回路26は、入力信号がアクティブ状態の場合にLo、非アクティブ状態の場合にHiとなる場合、駆動信号を受けたときに、信号線L4~L9へ基準電圧を印加しラッチ回路21の入力をHi(非アクティブ状態)とする構成であってもよい。
【0031】
<動作>
図4は、ポートサンプリングシステム1における動作のタイミングを示すタイムチャー
トである。図4では横軸が時間の経過を示す。図4において、タイミングT1は、ポートサンプリングシステム1に電源を接続した時点である。例えば、ポートサンプリングシステム1のラッチ回路装置20やマイクロコンピュータ10を備えた車載装置を車輌に搭載し、車載装置と車輛側のバッテリーとを接続したタイミングがT1である。この電源の接続により、ラッチ回路装置20やマイクロコンピュータ10は、初期設定を行う。例えば、マルチ入力IC22のポートP24~P29のうち、どのポートに入力があった場合にマイクロコンピュータ10をウェイクアップさせるか、入力信号D4~D9がLoからHiとなったエッジを有効エッジとするか若しくはHiからLoとなったエッジを有効エッジとするか、又は入力信号D1~D9がどのようになった場合にマイクロコンピュータ10をスリープ状態に移行させるか等の設定情報をレジスタに設定する。
【0032】
初期設定が終了したタイミングT2の後、ラッチ回路装置20及びマイクロコンピュータ10は通常動作を行う。例えば、マイクロコンピュータ10が、シリアル通信回路13を介してマルチ入力IC22へ読み出し要求を行う。読み出し要求を受けたマルチ入力IC22は、入力ポートP21~P29に入力される入力信号の読み出し(サンプリング)を行い、シリアル通信回路25を介して読み出した入力信号をマイクロコンピュータ10へ送信する。入力信号の受信を完了した場合に、マイクロコンピュータ10は出力ポートP19からラッチ回路21のクリア端子211へクリア信号41を送信する。クリア信号41を受信したラッチ回路21は、ラッチしている入力信号のラッチ状態をクリアする。また、クリア信号41を駆動信号として受信した接続解除回路26は、ラッチ回路21の入力を非アクティブ状態とする。この読み出し要求からラッチ回路21のクリアまでの処理は、マイクロコンピュータ10が通常状態の間、即ちスリープ状態となるまでの間、所定の周期で繰り返す。
【0033】
また、マイクロコンピュータ10がスリープ状態となった場合(T3)、マイクロコンピュータ10は、シリアル通信など通常の動作を行わず、マルチ入力IC22が入力ポートP21~P29に入力される入力信号の読み出し(サンプリング)を定期的に行う。そして、マルチ入力IC22は、読み出した入力信号がウェイクアップの条件を満たすか否かを判定する。例えば、マルチ入力IC22は、ウェイクアップ対象信号の何れかが入力された場合に、ウェイクアップ信号をマイクロコンピュータ10へ送信する。このようにウェイクアップ対象信号が入力されると、接続解除回路26の入力及び出力もアクティブ状態となる。更にラッチ回路21の入力及び出力もアクティブ状態となる。
【0034】
ウェイクアップ信号を受信したマイクロコンピュータ10が、ウェイクアップ処理を行ってウェイクアップした場合(T4)、マイクロコンピュータ10及びラッチ回路装置20は、通常動作時と同様に読み出し要求をマルチ入力IC22へ送り、読み出しを完了した時にクリア信号(駆動信号)を出力する。そして、この駆動信号が入力された接続解除回路26が、この駆動信号の立ち上がりエッジE1で動作を接続解除状態とし、入力信号の状態に関わらず接続解除回路26の出力を非アクティブ状態とすることで、ラッチ回路21の入力及び出力を非アクティブ状態とさせる。接続解除回路26は、駆動信号を受けた時点から所定時間接続解除状態とした後、接続状態に切り替える。本例では、駆動信号を受けてコレクタ及びエミッタを介して信号線L4~L9の入力信号がグランドへ流れ、ラッチ回路21に入力されない状態が接続解除状態である。また、駆動信号が接続解除回路26に入力されなくなると、トランジスタ261のコレクタ-エミッタ間に電流が流れなくなり、入力信号がラッチ回路21に入力される状態が接続状態である。なお、本例では、回路内の静電容量や抵抗の影響により駆動信号の立下りエッジE2から遅延して接続状態となる。
【0035】
接続解除回路26が接続状態となると、接続解除回路26の出力が入力と同じ状態となるため、入力信号がアクティブ状態の場合、ラッチ回路21の入力も非アクティブ状態か
らアクティブ状態へ変化し、この状態がラッチ(再ラッチとも称す)され、ラッチ回路21の出力もアクティブ状態となる。
【0036】
一方、図5は、比較例としてのポートサンプリングシステムの構成を示す図、図6は、図5のポートサンプリングシステムにおける動作のタイミングを示すタイムチャートである。図5の比較例は、図1のポートサンプリングシステム1から接続解除回路26を除いた構成である。即ち、比較例では、クリア信号によってラッチ回路21のラッチ状態を解除したタイミングで接続解除状態としない、即ち、ラッチ回路21の入力を非アクティブ状態としない構成である。
【0037】
図6に示すように、比較例の構成において、クリア信号の前後でラッチ回路21の入力が継続してアクティブ状態となっている場合、クリア信号によってラッチ回路21の出力が非アクティブ状態となるが、入力信号の状態に変化がないため、入力信号の状態が再ラッチされず、非アクティブ状態となり、ラッチ回路21の入力と出力が異なってしまう。このため、入力信号が正しくマイクロコンピュータ10へ入力されなくなってしまうことが考えられる。
【0038】
これに対し、本実施形態のポートサンプリングシステム1では、マイクロコンピュータ10からクリア信号(駆動信号)が出力された場合、接続解除回路26がラッチ回路21への入力を所定時間接続解除状態とし、ラッチ回路21の入力を強制的に非アクティブ状態とする。このため、接続状態に復帰した際に入力信号が継続してアクティブ状態であれば、ラッチ回路21の入力が非アクティブ状態からアクティブ状態に変化し、このタイミングで入力信号の状態が再ラッチされるので、ラッチ回路21の入力と出力が一致する。このため、マイクロコンピュータ10は、ウェイクアップしたときの入力信号の状態を読み込めると共に、その後の入力信号の状態も正しく読み込むことができる。
【0039】
<実施形態の効果>
上述のように、本実施形態のポートサンプリングシステム1では、マイクロコンピュータ10のスリープ期間中に入力信号が入力され、ラッチ回路21にラッチされた場合に、マイクロコンピュータ10へウェイクアップ信号を送信してウェイクアップさせ、ウェイクアップ後のマイクロコンピュータ10にラッチした入力信号を送信する。
【0040】
そして、本実施形態のポートサンプリングシステム1は、ラッチされた入力信号をマイクロコンピュータ10が読み込みを完了した場合に、ラッチ回路21のラッチ状態を解除させると共に、ラッチ回路21への入力信号を所定時間非アクティブ状態にする。例えば、ラッチ回路装置20が、外部装置から受信した入力信号をラッチ回路21へ入力する接続状態と、外部装置から受信した入力信号の状態に関わらずラッチ回路21へ入力される入力信号を非アクティブ状態とする接続解除状態とを切り替える接続解除回路26を備え、マイクロコンピュータが、接続解除回路26に駆動信号を出力することで、ラッチ回路21への入力信号を所定時間非アクティブ状態にする。
【0041】
これにより、本実施形態のポートサンプリングシステム1は、ウェイクアップ後にマイクロコンピュータ10へ入力される入力信号の状態を精度良く入力することができる。
【0042】
また、本実施形態のポートサンプリングシステム1は、ラッチ回路21に入力される入力信号D4~D9が、非アクティブ状態からアクティブ状態になった場合にマイクロコンピュータ10をウェイクアップさせる信号(ウェイクアップ対象信号)であり、ラッチ回路装置20は、例えば、マイクロコンピュータ10のスリープ期間中に、入力信号D4~D9が非アクティブ状態からアクティブ状態になった場合にマイクロコンピュータ10をウェイクアップさせる。
【0043】
これにより、本実施形態のポートサンプリングシステム1は、マイクロコンピュータ10がウェイクアップしたときに、ラッチされたウェイクアップ要因の入力信号D4~D9がマイクロコンピュータ10に入力されるため、マイクロコンピュータ10はウェイクアップ要因を確実に認識することができる。
【0044】
本実施形態のポートサンプリングシステム1は、ラッチ回路21から読み出された複数の入力信号をシリアル信号に変換し、シリアル通信回線30を介してマイクロコンピュータ10へ送信する。これにより、本実施形態のポートサンプリングシステム1は、多数の入力信号をマイクロコンピュータ10へ入力する場合でも占有する入力ポートの数を抑制することができる。例えば本実施形態では、4本の通信線31~34でシリアル通信を行っており、マイクロコンピュータ10のポートP11~P14を使用して、9つの入力信号(このうち6つがウェイクアップ対象信号)を送信でき、使用するポートP11~P14の数を5つ抑制している。また、本実施形態のポートサンプリングシステム1は、マルチ入力IC22がシリアル通信線31~34を他のICチップと共用しており、入力信号の伝達のために占有するマイクロコンピュータ10のポートP14が、実質的に1つとなっており、効果的に占有する入力ポートの数を抑制することができる。
【0045】
本実施形態のポートサンプリングシステム1は、マイクロコンピュータ10が通常動作状態の場合においてもマルチ入力IC(入力回路)22から入力された入力信号を読み込んだ場合に、ラッチ回路のラッチ状態を解除する。これにより本実施形態のポートサンプリングシステム1は、通常状態においても前述のスリープ期間中と同様に入力信号をマイクロコンピュータ10へ送ることができ、多数の入力信号をマイクロコンピュータ10へ入力する場合でも占有する入力ポートの数を抑制することができる。
【0046】
本実施形態のポートサンプリングシステム1は、ラッチ回路21のラッチ状態を解除させるため、マイクロコンピュータ10から出力されるクリア信号を駆動信号として兼用する。これにより駆動信号専用のポートや信号線を省略することができ、ポートサンプリングシステム1の簡素化を図ることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 :ポートサンプリングシステム
10 :マイクロコンピュータ
11 :制御部
12 :割り込み回路
13 :シリアル通信回路
14 :出力回路
20 :ラッチ回路装置
21 :ラッチ回路
22 :マルチ入力IC
23 :ポートサンプリング回路
24 :CR発振回路
25 :シリアル通信回路
26 :接続解除回路
30 :シリアル通信回線
39 :ICチップ
41 :クリア信号
42 :シリアル信号
211:クリア端子
212:解除回路
261:トランジスタ
31~35 :通信線
D1~D9 :入力信号
L1~L9 :信号線
P11~P19 :ポート
P21~P29 :ポート
P31~P34 :ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6