(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058873
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】CO2排出権発行装置及び廃タイヤ処理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240422BHJP
G06Q 10/00 20230101ALI20240422BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166254
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】522376461
【氏名又は名称】株式会社グリーンズタイヤジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根田 和彦
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】乾留熱分解油化装置による廃タイヤの処理を促進させることが可能なCO
2排出権発行装置及び廃タイヤ処理システムを提供する。
【解決手段】CO
2排出権発行装置は、廃タイヤを焼却した場合のCO
2排出量と、乾留熱分解油化装置で廃タイヤを無酸素状態で熱分解した場合のCO
2排出量との差であるCO
2削減量を記憶するメモリと、乾留熱分解油化装置で熱分解された廃タイヤの量に応じたCO
2排出権を発行する演算装置とを備えるCO
2排出権発行装置。演算装置は、乾留熱分解油化装置が設置された廃タイヤ処理工場に廃タイヤ供給元から供給された廃タイヤの廃タイヤ供給量を取得し(S14)、メモリに記憶されたCO
2削減量に前記廃タイヤ供給量を乗じた量に相当する前記CO
2排出権を発行する(S15)。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃タイヤを焼却した場合のCO2排出量と、乾留熱分解油化装置で廃タイヤを無酸素状態で熱分解した場合のCO2排出量との差であるCO2削減量を記憶するメモリと、
前記乾留熱分解油化装置で熱分解された廃タイヤの量に応じたCO2排出権を発行する演算装置とを備えるCO2排出権発行装置において、
前記演算装置は、
前記乾留熱分解油化装置が設置された廃タイヤ処理工場に廃タイヤ供給元から供給された廃タイヤの廃タイヤ供給量を取得し、
前記メモリに記憶された前記CO2削減量に前記廃タイヤ供給量を乗じた量に相当する前記CO2排出権を発行することを特徴とするCO2排出権発行装置。
【請求項2】
請求項1に記載のCO2排出権発行装置において、
前記メモリは、前記乾留熱分解油化装置で廃タイヤを熱分解して得られる再生資源を、予め定められた方法で製造した場合の資源生成時CO2排出量を記憶し、
前記演算装置は、
前記乾留熱分解油化装置で生成された前記再生資源の再生資源生成量を取得し、
前記メモリに記憶された前記資源生成時CO2排出量に前記再生資源生成量を乗じた量に相当する前記CO2排出権をさらに発行することを特徴とするCO2排出権発行装置。
【請求項3】
請求項1に記載のCO2排出権発行装置において、
前記演算装置は、発行した前記CO2排出権を前記廃タイヤ供給元に還元することを特徴とするCO2排出権発行装置。
【請求項4】
請求項1に記載のCO2排出権発行装置において、
前記演算装置は、
複数の前記廃タイヤ供給元それぞれから供給された廃タイヤに対応する前記CO2排出権を合算して売却し、
合算して売却した前記CO2排出権の売却益を、複数の前記廃タイヤ供給元に対して、前記CO2排出権の量の比率で還元することを特徴とするCO2排出権発行装置。
【請求項5】
請求項1に記載のCO2排出権発行装置と、
通信ネットワークを通じて前記CO2排出権発行装置に接続された前記廃タイヤ処理工場とを備えることを特徴とする廃タイヤ処理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の廃タイヤ処理システムにおいて、
前記廃タイヤ処理工場は、前記乾留熱分解油化装置で廃タイヤを熱分解して得られる乾留ガスまたは重油を、前記乾留熱分解油化装置の燃料として利用することを特徴とする廃タイヤ処理システム。
【請求項7】
請求項5に記載の廃タイヤ処理システムにおいて、
異なる地域に設置された複数の前記廃タイヤ処理工場のうち、前記廃タイヤ供給元に最も近い前記廃タイヤ処理工場で廃タイヤを回収することを特徴とする廃タイヤ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2排出権発行装置及び廃タイヤ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内で発生する廃タイヤ(使用済みタイヤ)の発生量は、2019年度で年間約100万トンにのぼる。また、廃タイヤの不法投棄が社会問題となっており、地方自治体などが莫大な費用をかけて、不法投棄された廃タイヤの回収及び処分を行っている。
【0003】
従来の廃タイヤの一般的な処理方法は焼却処理であり、これにはCO2の排出を伴う。そこで、廃タイヤを無酸素状態で熱分解し、再生資源(重油、カーボンブラック、鉄くずなど)を生成することによって、廃タイヤを処理する際のCO2排出量を削減できる乾留熱分解油化装置が開発されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3623204号公報
【特許文献2】特開2003-286490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乾留熱分解油化装置が設置された廃タイヤ処理工場の建設には多額の初期投資が必要となるうえ、廃タイヤを効率的に処理するには様々なノウハウが必要になる。これが乾留熱分解油化装置による廃タイヤの処理が促進されない一因である。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、乾留熱分解油化装置による廃タイヤの処理を促進させることが可能なCO2排出権発行装置及び廃タイヤ処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、廃タイヤを焼却した場合のCO2排出量と、乾留熱分解油化装置で廃タイヤを無酸素状態で熱分解した場合のCO2排出量との差であるCO2削減量を記憶するメモリと、前記乾留熱分解油化装置で熱分解された廃タイヤの量に応じたCO2排出権を発行する演算装置とを備えるCO2排出権発行装置において、前記演算装置は、前記乾留熱分解油化装置が設置された廃タイヤ処理工場に廃タイヤ供給元から供給された廃タイヤの廃タイヤ供給量を取得し、前記メモリに記憶された前記CO2削減量に前記廃タイヤ供給量を乗じた量に相当する前記CO2排出権を発行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乾留熱分解油化装置による廃タイヤの処理を促進させることが可能なCO2排出権発行装置及び廃タイヤ処理システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】CO
2排出権発行装置のハードウェア構成図である。
【
図4】メモリに記憶されているデータ例を示す図である。
【
図5】廃タイヤ処理システムの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る廃タイヤ処理システム1を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲を実施形態の記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
【0011】
図1は、廃タイヤ処理システム1の概略構成図である。廃タイヤ処理システム1は、廃タイヤ供給元2A、2B、2C・・・(以下、これらを総称して、「廃タイヤ供給元2」と表記する。)から供給された廃タイヤを、乾留熱分解油化装置10で分解して再生資源(鉄くず、カーボンブラック、重油)を生成すると共に、廃タイヤの処理量に対応するCO
2排出権を発行するシステムである。
図1に示すように、廃タイヤ処理システム1は、廃タイヤ処理工場3A、3B、・・・(以下、これらを総称して、「廃タイヤ処理工場3」と表記する。)と、管理会社4とで構成される。
【0012】
廃タイヤ供給元2は、廃タイヤを回収して処理する組織である。廃タイヤ供給元2の具体例としては、例えば、タイヤメーカ、自動車修理工場、地方自治体などが挙げられる。従来、廃タイヤ供給元2は、回収した廃タイヤを焼却処理していた。そのため、廃タイヤ供給元2には、廃タイヤを焼却処理する際のCO2の排出量の目標値が設定されている。一方、廃タイヤ処理システム1を利用する廃タイヤ供給元2は、回収した廃タイヤを、焼却処理することに代えて、廃タイヤ処理工場3に供給する。
【0013】
廃タイヤ処理工場3には、乾留熱分解油化装置10が設置されている。そして、廃タイヤ処理工場3は、廃タイヤ供給元2から供給された廃タイヤを乾留熱分解油化装置10で処理する工場である。乾留熱分解油化装置10は、廃タイヤを無酸素状態で熱分解して、再生資源を生成する装置である。乾留熱分解油化装置10は、焼却処理より少ないCO
2排出量で、廃タイヤを処理することができる。乾留熱分解油化装置10の詳細は、
図2を参照して後述する。
【0014】
廃タイヤ処理工場3は、例えば、各地域(例えば、都道府県)に分散して配置されている。そして、廃タイヤ供給元2は、異なる地域に設置された複数の廃タイヤ処理工場3のうち、最も近い前記廃タイヤ処理工場3に廃タイヤを供給すればよい。換言すれば、本実施形態に係る廃タイヤ処理システム1は、異なる地域に設置された複数の廃タイヤ処理工場3のうち、廃タイヤ供給元2に最も近い廃タイヤ処理工場3で廃タイヤを回収すればよい。
【0015】
管理会社4は、廃タイヤ処理システム1全体を管理する組織である。まず、管理会社4は、廃タイヤ処理工場3に乾留熱分解油化装置10をリースする。また、管理会社4は、乾留熱分解油化装置10の稼働状況に応じたCO
2排出権を発行する。さらに、管理会社4は、発行したCO
2排出権を処理(例えば、廃タイヤ供給元2への還元、第三者への売却)する。管理会社4には、CO
2排出権発行装置20が設置されている。CO
2排出権発行装置20の詳細は、
図3を参照して後述する。
【0016】
図2は、乾留熱分解油化装置10の概略構成図である。
図2に示すように、乾留熱分解油化装置10は、カートリッジ11と、乾留装置12と、冷却器13と、濾過器14とを主に備える。なお、乾留熱分解油化装置10の構成は、特許文献1、2等に開示されている通り既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0017】
カートリッジ11は、廃タイヤを圧縮した状態で収容する圧力容器である。また、カートリッジ11は、外気を遮断する密閉容器である。さらに、カートリッジ11には、後述する乾留ガスを取り出すためのパイプが接続される。そして、カートリッジ11は、所定の量の廃タイヤが圧縮されて投入され、密閉された状態で乾留装置12に収容される。
【0018】
乾留装置12は、収容したカートリッジ11を無酸素状態で加熱する加熱装置である。乾留装置12は、石油やガスを燃焼させて熱を発生させるものでもよいし、電気を用いて熱を発生させるものでもよい。また、乾留装置12は、乾留熱分解油化装置10で生成された重油や乾留ガスを燃料として利用してもよい。
【0019】
そして、カートリッジ11を収容した状態で乾留装置12に点火すると、カートリッジ11内の廃タイヤが無酸素状態で熱分解される。これにより、廃タイヤは、乾留ガス、カーボンブラック(炭化物)、鉄くず等に分解される。そして、乾留ガスは、カートリッジ11に接続されたパイプを通じて冷却器13に流出する。また、鉄くず及びカーボンブラックは、残留物としてカートリッジ11内に残留する。カートリッジ11内に残留した残留物は、カーボンブラック及び鉄くずに分別され、それぞれが二次加工されて、再生資源として取り出される。
【0020】
冷却器13は、パイプを通じてカートリッジ11から供給される乾留ガスを冷却する装置である。冷却器13によって冷却された乾留ガスは、一部が液化され、残りが気体のままとなる。そして、冷却器13内の液体成分は、パイプを通じて濾過器14に供給される。また、冷却器13内の気体成分は、乾留ガスとして取り出される。取り出された乾留ガスは、パイプを通じて乾留装置12に燃料として供給されてもよいし、再生資源として貯蔵タンクに貯蔵されてもよい。
【0021】
濾過器14は、パイプを通じて冷却器13から供給された液体成分を油水分離すると共に、分離された油成分から不純物を除去(濾過)する装置である。これにより、冷却器13から取り出された液体成分から重油が抽出される。抽出された重油は、パイプを通じて乾留装置12に燃料として供給されてもよいし、再生資源として貯蔵タンクに貯蔵されてもよい。
【0022】
乾留熱分解油化装置10による廃タイヤの処理では、カートリッジ11を加熱する必要があるので、CO2の排出量はゼロではない。しかしながら、廃タイヤを焼却処理する従来の方法と比較すると、乾留熱分解油化装置10のCO2排出量は少ない。また、乾留熱分解油化装置10で再生資源を生成することによって、一般的な方法で再生資源を製造する場合のCO2排出量が削減される。
【0023】
図3は、CO
2排出権発行装置20のハードウェア構成図である。
図4は、メモリ22に記憶されているデータ例を示す図である。CO
2排出権発行装置20は、例えば、PC(Personal Computer)やサーバによって実現される。CO
2排出権発行装置20は、例えば、演算装置の一例であるCPU(Central Processing Unit)21と、メモリ22と、通信I/F23とを主に備える。
【0024】
メモリ22は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはこれらの組み合わせで構成される。CO2排出権発行装置20は、ROMまたはHDDに格納されたプログラムコードをCPU21が読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。RAMは、CPU21がプログラムを実行する際のワークエリアとして用いられる。
【0025】
通信I/F23は、通信ネットワーク6(例えば、インターネット、LAN、またはこれらの組み合わせ)に接続されている。そして、CO2排出権発行装置20は、通信ネットワーク6を介して、廃タイヤ供給元2、廃タイヤ処理工場3、及びCO2排出権取引マーケット5と通信することができる。CO2排出権取引マーケット5とは、例えば、インターネット上でCO2排出権を売買するWEBサイト等を指す。
【0026】
図4(A)に示すように、メモリ22は、CO
2削減量(=A0)、重油生成時CO
2排出量(=B0)、カーボンブラック生成時CO
2排出量(=C0)、鉄くず生成時CO
2排出量(=D0)を記憶している。CO
2削減量、重油生成時CO
2排出量、カーボンブラック生成時CO
2排出量、鉄くず生成時CO
2排出量は、実験やシミュレーション等によって予め定められて、メモリ22に記憶される。以下、重油生成時CO
2排出量、カーボンブラック生成時CO
2排出量、鉄くず生成時CO
2排出量を総称して、「資源生成時CO
2排出量」と表記することがある。
【0027】
CO2削減量は、単位量(例えば、1t、100本など)当たりの廃タイヤを焼却した場合のCO2排出量と、乾留熱分解油化装置10で同量の廃タイヤを無酸素状態で熱分解した場合のCO2排出量との差である。重油生成時CO2排出量は、単位量(例えば、1kl)当たりの重油を予め定められた(一般的な)方法で生成した場合のCO2排出量を示す。カーボンブラック生成時CO2排出量は、単位量(例えば、1t)当たりのカーボンブラックを予め定められた(一般的な)方法で生成した場合のCO2排出量を示す。鉄くず生成時CO2排出量は、単位量(例えば、1t)当たりの鉄くずを予め定められた(一般的な)方法で生成した場合のCO2排出量を示す。
【0028】
また、
図4(B)に示すように、メモリ22は、廃タイヤ供給元テーブルを記憶している。廃タイヤ供給元テーブルは、例えば、供給元ID、廃タイヤ供給量、再生資源生成量、CO
2排出権量を、廃タイヤ供給元2A、2B、2C、・・・毎に1レコードとして記憶している。供給元IDは、廃タイヤ処理システム1に廃タイヤを供給する廃タイヤ供給元2が増える度に、当該廃タイヤ供給元2に付与される。廃タイヤ供給量、再生資源生成量、及びCO
2排出権量は、
図5に示す処理の過程で、順次、廃タイヤ供給元テーブルに記憶される。
【0029】
供給元IDは、廃タイヤ供給元2A、2B、2C、・・・を一意に識別する識別子である。廃タイヤ供給量は、対応する供給元IDで識別される廃タイヤ供給元2から供給された廃タイヤの量(例えば、本数、重量)を示す。再生資源生成量は、対応する供給元IDで識別される廃タイヤ供給元2から供給された廃タイヤを、乾留熱分解油化装置10で処理して生成された再生資源の量(例えば、重量、体積)を示す。再生資源生成量は、重油生成量(=B1、B2、b3)、カーボンブラック生成量(C1、C2、C3、・・・)、鉄くず生成量(=D1、D2、D3、・・・)を含む。CO2排出権量は、対応する供給元IDで識別される廃タイヤ供給元2から供給された廃タイヤを乾留熱分解油化装置10で処理したことによって、削減されたCO2の量(例えば、体積)を示す。
【0030】
なお、メモリ22に記憶されているデータは、ブロックチェーンなどによって、改ざんや偽造がなされていないことが保証されているのが望ましい。具体的には、メモリ22に記憶されているデータは、NFT(Non-Fungible Token)化されているのが望ましい。また、CO2排出権発行装置20は、メモリ22に記憶されているデータを、第三者に閲覧させる機能を有しているのが望ましい。
【0031】
図5は、廃タイヤ処理システム1の処理を示すフローチャートである。
図5に示す処理は、乾留熱分解油化装置10で廃タイヤを処理して再生資源を生成し、廃タイヤの処理量に応じたCO
2排出権を発行し、発行したCO
2排出権またはその売却益を廃タイヤ供給元2に還元する処理である。
【0032】
まず、廃タイヤ供給元2は、回収した廃タイヤを最寄りの廃タイヤ処理工場3に供給する(S11)。次に、廃タイヤ処理工場3は、廃タイヤ供給元2から供給された廃タイヤを、乾留熱分解油化装置10で熱分解して、再生資源を生成する(S12)。そして、廃タイヤ処理工場3は、生成した再生資源を売却する(S13)。なお、ステップS12で生成した再生資源のうち、重油及び乾留ガスは、売却せずに乾留熱分解油化装置10の燃料として利用してもよい。また、再生資源の売却益は、廃タイヤ処理工場3の利益としてもよいし、廃タイヤ供給元2に還元してもよい。
【0033】
次に、廃タイヤ処理工場3は、ステップS11で供給された廃タイヤの廃タイヤ供給量と、ステップS12で生成した再生資源の再生資源生成量とを、供給元IDに紐づけてCO2排出権発行装置20に送信する(S14)。なお、廃タイヤ処理工場3は、タイヤ供給量及び再生資源生成量を、通信ネットワーク6を通じてCO2排出権発行装置20に送信することに代えて、任意の方法(例えば、電子メール、FAX)で管理会社4に通知してもよい。そして、管理会社4のスタッフが通知された情報をCO2排出権発行装置20に入力してもよい。
【0034】
次に、CO
2排出権発行装置20は、廃タイヤ処理工場3から取得したタイヤ供給量及び再生資源生成量を、供給元IDと対応付けて廃タイヤ供給元テーブルに記憶させる。次に、CO
2排出権発行装置20は、
図4に示す情報に基づいて、廃タイヤの処理量に対応する量のCO
2排出権を発行する(S15)。CO
2排出権とは、所定の量(以下、「CO
2排出権量」と表記する。)のCO
2を排出することができる権利を指す。供給元ID=001で示される廃タイヤ供給元2のCO
2排出権量(=E1)は、例えば以下のように演算される。
【0035】
まず、CO2排出権発行装置20は、CO2削減量A0に廃タイヤ供給量A1を乗じた値を、焼却処理に代えて乾留熱分解油化装置10で廃タイヤを処理した場合のCO2排出権量として演算する。また、CO2排出権発行装置は、資源生成時CO2排出量(B0、C0、D0)に対応する再生資源生成量(B1、C1、D1)を乗じた合計値を、乾留熱分解油化装置10で再生資源を生成した場合のCO2排出権量として演算する。さらに、CO2排出権発行装置20は、演算したCO2排出権量の合計値(=E1)を、供給元ID=001に対応付けて、廃タイヤ供給元テーブルに記憶させる。すなわち、CO2排出権量E1は、以下の式1によって演算される。
【0036】
E1=A0×A1+B0×B1+C0×C1+D0×D1 ・・・(式1)
【0037】
次に、CO2排出権発行装置20は、ステップS15で発行したCO2排出権を、対応する廃タイヤ供給元2に還元するか否かを判定する(S16)。CO2排出権そのものを還元するか、CO2排出権の売却益を還元するかは、廃タイヤ供給元2と管理会社4との間で予め取り決められているものとする。
【0038】
そして、CO2排出権発行装置20は、CO2排出権そのものを還元すると判定した場合に(S16:Yes)、ステップS15で発行したCO2排出権を、対応する廃タイヤ供給元2に還元する(S17)。CO2排出権発行装置20は、例えば、ステップS15で演算したCO2排出権量E1を、対応する供給元IDで識別される廃タイヤ供給元2に、通信I/F23を通じて送信する。なお、ステップS17で廃タイヤ供給元2に還元されるCO2排出権は、CO2排出権量E1そのものを含んでいてもよいし、CO2排出権量E1に応じた金額(CO2排出権量E1が多いほど額が大きくなる)を含んでもよい。
【0039】
一方、CO2排出権発行装置20は、CO2排出権の売却益を還元すると判定した場合に(S16:No)、ステップS15で発行したCO2排出権を売却する(S18)。CO2排出権発行装置20は、例えば、ステップS15で演算したCO2排出権量E1の売却情報を、通信I/F23を通じてCO2排出権取引マーケット5に登録する。そして、CO2排出権発行装置20は、CO2排出権取引マーケット5で売却したCO2排出権の売却益を取得する。
【0040】
さらに、CO2排出権発行装置20は、取得した売却益を廃タイヤ供給元2に還元する(S19)。CO2排出権発行装置20は、例えば、廃タイヤ供給元2に還元すべき売却額を出力(例えば、ディスプレイ表示、印刷)する。そして、管理会社4のスタッフは、出力された売却額を、廃タイヤ供給元2に振り込めばよい。
【0041】
なお、ステップS18-S19の処理は、廃タイヤ供給元2毎に個別に実行されてもよいし、複数の廃タイヤ供給元2を纏めて実行されてもよい。すなわち、CO2排出権発行装置20は、複数の廃タイヤ供給元それぞれから供給された廃タイヤに対応するCO2排出権量を合算(=E1+E2+E3)して、CO2排出権取引マーケット5で売却してもよい(S18)。そして、CO2排出権発行装置20は、合算して売却したCO2排出権の売却益を、複数の廃タイヤ供給元2に対して、CO2排出権量の比率(E1:E2:E3)で還元してもよい(S19)。
【0042】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0043】
上記の実施形態のように、廃タイヤ供給量に対応するCO2排出権を発行することによって、乾留熱分解油化装置10で廃タイヤを処理するインセンティブとなる。その結果、乾留熱分解油化装置10による廃タイヤの処理を促進させることができる。
【0044】
また、乾留熱分解油化装置10で再生資源を生成すると、同じ量の資源を一般的な方法で製造した場合に排出されるCO2が削減される。そこで、上記の実施形態のように、乾留熱分解油化装置10で生成した再生資源生成量に対応するCO2排出権をさらに発行することによって、乾留熱分解油化装置10による廃タイヤの処理をさらに促進させることができる。
【0045】
また、上記の実施形態のように、発行したCO2排出権を廃タイヤ供給元2に還元することによって、廃タイヤ供給元2が廃タイヤ処理工場3に廃タイヤを持ち込むメリットを享受することができる。
【0046】
なお、廃タイヤの処理以外にCO2を排出しない廃タイヤ供給元2にとっては、CO2排出権より、CO2排出権の売却益の方がメリットが大きい。しかしながら、小規模の廃タイヤ供給元2では廃タイヤ処理工場3に持ち込める廃タイヤの量に限界があるので、単独で売却できる程度のCO2排出権が得られない場合がある。そこで、上記の実施形態によれば、複数の廃タイヤ供給元2のCO2排出権を合算して売却し、その売却益を分配することによって、小規模の廃タイヤ供給元2にも廃タイヤ処理工場3への廃タイヤの持ち込みを促すことができる。
【0047】
また、上記の実施形態によれば、乾留熱分解油化装置10で廃タイヤを処理して得られる乾留ガスや重油を燃料として利用するので、化石燃料の消費量を削減することができる。
【0048】
さらに、上記の実施形態によれば、廃タイヤ供給元2から廃タイヤ処理工場3への廃タイヤの輸送費用が削減されるので、乾留熱分解油化装置10による廃タイヤの処理がさらに促進される。また、廃タイヤの輸送に必要な化石燃料を削減できるので、さらなるCO2の排出削減に寄与する。
【符号の説明】
【0049】
1…廃タイヤ処理システム、2A,2B,2C…廃タイヤ供給元、3A,3B…廃タイヤ処理工場、4…管理会社、5…CO2排出権取引マーケット、6…通信ネットワーク、10…乾留熱分解油化装置、11…カートリッジ、12…乾留装置、13…冷却器、14…濾過器、20…CO2排出権発行装置、21…CPU、22…メモリ、23…通信I/F