(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058880
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】リフト装置
(51)【国際特許分類】
B66F 7/06 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B66F7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166272
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000161976
【氏名又は名称】京浜精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伏木 正明
(57)【要約】
【課題】リフト装置を小型、軽量化し、メンテナンス性を向上させたリフト装置を提供する。
【解決手段】リフト装置は、一対のアーム(40、50、340、350)を有するパンタ式アーム(12、312)を備えるリフト装置(10)であって、前記一対のアーム(40、50、340、350)の回動中心(L0)上に出力軸(15)の軸方向を一致させて配置される、ケーシング(70)および前記出力軸(15)を有する動力装置(14)を備え、前記動力装置(14)の前記ケーシング(70)が一方の前記アーム(40、340)に固定され、前記出力軸(15)が他方の前記アーム(50、350)に固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のアームを有するパンタ式アームを備えるリフト装置であって、
前記一対のアームの回動中心上に出力軸の軸方向を一致させて配置される、ケーシングおよび前記出力軸を有する動力装置を備え、
前記動力装置の前記ケーシングが一方の前記アームに固定され、前記出力軸が他方の前記アームに固定される、
リフト装置。
【請求項2】
一対のアームを有するパンタ式アームを備えるリフト装置であって、
前記一対のアームの回動中心上に出力軸の軸方向を一致させて配置される、ケーシングおよび前記出力軸を有する動力装置と、前記回動中心上に回動中心を一致させて配置される、前記一対のアームと連動する一対の補助アームと、を備え、
前記動力装置の前記ケーシングが一方の前記補助アームに固定され、前記出力軸が他方の前記補助アームに固定される、
リフト装置。
【請求項3】
前記動力装置はサイクロイド減速機を備え、
前記サイクロイド減速機は、
入力軸の回転中心に対して偏心回転可能な第一外歯歯車と、前記第一外歯歯車の揺動回転から自転成分を取り出す第一ピン体と、前記第一ピン体に連結されて、前記入力軸の回転中心に対して偏心回転可能な第一中間軸と、前記第一中間軸の回転中心に対して偏心回転可能な第二外歯歯車と、前記第二外歯歯車の揺動回転から自転成分を取り出す第二ピン体と、を備え、
前記第二ピン体が取り出す自転成分に基づいて回転する前記出力軸を備える、
請求項1又は2に記載のリフト装置。
【請求項4】
前記第一外歯歯車、及び、前記第二外歯歯車のそれぞれの外歯に対して、噛み合い動作する外ピン又は凸部が、前記ケーシングの内周部に設けられる、
請求項3に記載のリフト装置。
【請求項5】
前記外ピン又は前記凸部の本数が、前記第一外歯歯車、及び、前記第二外歯歯車のそれぞれの外歯の数と、同じか又は少ない、
請求項4に記載のリフト装置。
【請求項6】
前記第一外歯歯車、及び、前記第二外歯歯車が、並列に設けられる、
請求項4に記載のリフト装置。
【請求項7】
前記動力装置はサイクロイド減速機を備え、
前記サイクロイド減速機は、
入力軸の回転中心に対して偏心回転可能な第一外歯歯車と、前記第一外歯歯車の揺動回転から自転成分を取り出す第一ピン体と、前記第一ピン体に連結されて、前記入力軸の回転中心に対して偏心回転可能な第一中間軸と、前記第一中間軸の回転中心に対して偏心回転可能な第二外歯歯車と、前記第二外歯歯車の揺動回転から自転成分を取り出す第二ピン体と、前記第二ピン体に連結されて、前記入力軸の回転中心に対して偏心回転可能な第二中間軸と、前記第二中間軸の回転中心に対して偏心回転可能な第三外歯歯車と、を備え、前記第三外歯歯車の揺動回転から自転成分を取り出す第三ピン体に、前記出力軸が設けられる、
請求項1又は2に記載のリフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンタ式アームにより昇降可能に支持された昇降台を電動で昇降させる昇降装置が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3195567号公報
【特許文献2】特開2018-70361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、リフト装置が大型化し易く、重量が重く、昇降に要する機構が複雑化して、メンテナンス性が悪化する。
本開示の目的は、従来の技術が有する課題を解消し、リフト装置を小型、軽量化し、メンテナンス性を向上させたリフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様は、一対のアームを有するパンタ式アームを備えるリフト装置であって、前記一対のアームの回動中心上に出力軸の軸方向を一致させて配置される、ケーシングおよび前記出力軸を有する動力装置を備え、前記動力装置の前記ケーシングが一方の前記アームに固定され、前記出力軸が他方の前記アームに固定される。
【0006】
本開示の第2の態様は、一対のアームを有するパンタ式アームを備えるリフト装置であって、前記一対のアームの回動中心上に出力軸の軸方向を一致させて配置される、ケーシングおよび前記出力軸を有する動力装置と、前記回動中心上に回動中心を一致させて配置される、前記一対のアームと連動する一対の補助アームと、を備え、前記動力装置の前記ケーシングが一方の前記補助アームに固定され、前記出力軸が他方の前記補助アームに固定される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、リフト装置が小型、軽量化でき、リフト装置のメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係るリフト装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係るリフト装置の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3の動力装置からケーシングの図示を省略した斜視図である。
【
図5】
図5は、サイクロイド減速機を軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図6】
図6は、第一実施形態に係るリフト装置の収納時の状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態に係るリフト装置の斜視図である。
【
図8】
図8は、第三実施形態に係るリフト装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態としてのリフト装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0010】
<第一実施形態>
図1は、第一実施形態に係るリフト装置10の斜視図である。
リフト装置10は、所定の場所に設置されて、物品などを所定の高さまで上昇させる際に用いられる。本実施の形態のリフト装置10は、持ち運び可能なポータブルリフト装置である。リフト装置10は、床面に設置可能なベース板11と、ベース板11に支持される開閉可能なパンタ式アーム12と、パンタ式アーム12に支持される板状の昇降板(昇降台)13と、パンタ式アーム12を駆動する動力装置14と、を備える。
【0011】
パンタ式アーム12は、一対のアーム部材40、50が回動中心L0を中心に回動可能に構成される。パンタ式アーム12は、一対のアーム部材40、50が回動中心L0を中心に回動することにより開閉される。
本実施の形態の説明では、特に説明のない限り、パンタ式アーム12の回動中心L0が延びる方向を前後方向という。また、回動中心L0に直交する水平方向を左右方向という。さらに、回動中心に直交する鉛直方向を上下方向という。詳細には、
図1に示すリフト装置10の手前側を前側という。また、
図1に示すリフト装置10の奥側を後側という。さらに、
図1に示すリフト装置10の手前側に位置する作業者から見て、左側、右側を、リフト装置1の左側、右側という。なお、前後方向は軸方向という場合もある。また、左右方向は幅方向という場合もある。
【0012】
ベース板11は、上下方向に厚みを有する板材である。ベース板11の上面には、回動支持部21が設けられる。回動支持部21は、ベース板11の右端側(幅方向一端側)に設けられる。回動支持部21は、前後方向(軸方向)に一対設けられる。回動支持部21には、パンタ式アーム12の内側アーム部材40の下端部が回動可能に支持される。
【0013】
ベース板11の上面には、左端側(幅方向他端側)に、ガイド支持部22が設けられる。ガイド支持部22は、前後方向に一対設けられる。ガイド支持部22は、前後方向に貫通し、且つ、左右方向に延びる長円状の環状部材である。ガイド支持部22には、パンタ式アーム12の外側アーム部材50の下端部がスライド可能に支持される。
ベース板11には、厚み方向に貫通する掴み孔11aが形成される。掴み孔11aは前後方向に一対形成される。掴み孔11aは、回動支持部21とガイド支持部22との間に形成される。
【0014】
パンタ式アーム12の上方には、昇降板13が支持される。昇降板13は、上下の向きが異なる点以外は、ベース板11と、ほぼ同様に構成される。
詳述すると、昇降板13は、上下方向に厚みを有する板材である。昇降板13の下面には、昇降板13の右端側に回動支持部31が設けられる。回動支持部31は、前後方向に一対設けられる。回動支持部31には、パンタ式アーム12の外側アーム部材50の上端部が回動可能に支持される。
【0015】
昇降板13の下面には、昇降板13の左端側に、ガイド支持部32が設けられる。ガイド支持部32は、前後方向に一対設けられる。ガイド支持部32には、パンタ式アーム12の内側アーム部材40の上端部がスライド可能に支持される。
昇降板13には、厚み方向に貫通する掴み孔13aが形成される。掴み孔13aは前後方向に一対形成される。掴み孔13aは、回動支持部31とガイド支持部32との間に形成される。
なお、下側のベース板11には、右端側に、ベース板11を示す突出延長部11bが設けられるが、上側の昇降板13には、この突出延長部11bは形成されていない。これにより、ベース板11と昇降板13とを区別可能である。
【0016】
パンタ式アーム12は、回動中心L0を中心に回動することにより開閉される。パンタ式アーム12が開閉されることにより、昇降板13はベース板11に対して接近離間する。すなわち、昇降板13が、パンタ式アーム12によりベース板11に対して昇降する。
【0017】
図2は、第一実施形態に係るリフト装置10の分解斜視図である。
本実施の形態のパンタ式アーム12では、一対のアーム部材40、50はそれぞれ梯子形状に形成される。詳細には、パンタ式アーム12は、内側アーム部材(第一アーム部材、アーム)40と、外側アーム部材(第二アーム部材、アーム)50と、を有する。内側アーム部材40と外側アーム部材50とは、それぞれが長手方向中央部の回動中心L0で回動可能に支持される。
【0018】
内側アーム部材40は、上端部前アーム41aと、上端部前アーム41aの下方延長線上に離間して配置される下端部前アーム41bと、上端部前アーム41aおよび下端部前アーム41bに平行に配置される後アーム42と、有する。
【0019】
アーム41a、41b、42は、同様の断面形状を有する金属製の角パイプである。上端部前アーム41aと後アーム42とは、前後方向に延びる複数の接続部材43で接続される。また、下端部前アーム41bと後アーム42とは、前後方向に延びる複数の接続部材43で接続される。接続部材43により、前アーム41a、41bと後アーム42とが一体にされる。接続部材43は回動中心L0を挟んで内側アーム部材40の長手方向両側に配置される。
【0020】
内側アーム部材40の下端部には、前後方向に延びる軸部材46が支持される。軸部材46は、下端部前アーム41bと後アーム42とを貫通した状態で支持される。軸部材46の軸方向両端部には、雄ねじ(不図示)が形成される。軸部材46は、ベース板11の回動支持部21に軸方向内側から挿入され、端部には、ワッシャを介してナット46aが締結される。これにより、軸部材46が回動支持部21に回動可能に支持される。
【0021】
内側アーム部材40の上端部には、前後方向に延びる軸部材47(
図2参照)が支持される。軸部材47は、上端部前アーム41aと後アーム42とを貫通した状態で支持される。アーム41a、42を貫通した軸部材47の軸方向両端部には、ローラ部材48が支持される。ローラ部材48は、昇降板13のガイド支持部32の長孔に軸方向内側から挿入される。ローラ部材48は、ガイド支持部32内を左右方向に移動可能に接続される。
【0022】
内側アーム部材40の軸方向外側には、外側アーム部材50が配置される。外側アーム部材50は、配置位置や、前後方向の幅などが異なるが、内側アーム部材40と基本的な構成はほぼ同様である。
【0023】
外側アーム部材50について詳述すると、外側アーム部材50は、前アーム51と、前アーム51に平行に配置される後アーム52と、有する。
アーム51、52は、内側アーム部材40のアーム41a、41b、42と同様の断面形状を有する金属製の角パイプである。前アーム51と後アーム52とは、前後方向に延びる複数の接続部材53で接続される。接続部材53は接続部材43よりも長い。接続部材53は回動中心L0を挟んで外側アーム部材50の長手方向両側に配置される。接続部材53により前アーム51と後アーム52とが一体にされる。
【0024】
外側アーム部材50の上端部には、前後方向に延びる軸部材56が支持される。軸部材56は、前アーム51と後アーム52とを貫通した状態で支持される。軸部材56の軸方向両端部には雄ねじが形成される。軸部材56は、昇降板13の回動支持部31に挿入され、端部には、ワッシャ56bを介してナット56aが締結される。これにより、軸部材56が回動支持部31に回動可能に支持される。
【0025】
外側アーム部材50の下端部には、前後方向に延びる軸部材57が支持される。軸部材57は、前アーム51と後アーム52とを貫通した状態で支持される。アーム51、52を貫通した軸部材57の軸方向両端部には、ローラ部材58が支持される。ローラ部材58は、ベース板11のガイド支持部22の長孔に軸方向内側から挿入される。ローラ部材58は、ガイド支持部22内を左右方向に移動可能に接続される。
【0026】
内側アーム部材40と外側アーム部材50とは回動可能に接続される。パンタ式アーム12の後方において、内側アーム部材40の後アーム42と、外側アーム部材50の後アーム52との間には、筒状のスペーサ61が配置される。スペーサ61には、スタッドボルト62が挿通される。スタッドボルト62は、後アーム42、52の回動孔を貫通した状態で配置される。スタッドボルト62の両端に形成された雄ねじには、ワッシャ63を介してナット64が締結される。これにより、内側アーム部材40と外側アーム部材50とは回動可能に接続される。内側アーム部材40と外側アーム部材50とは、スタッドボルト62を中心に回動する。スタッドボルト62の軸線が回動中心L0に対応する。
【0027】
ここで、パンタ式アーム12の前方において、回動中心L0上には、動力装置14が配置される。内側アーム部材40の上端部前アーム41aと、下端部前アーム41bと、外側アーム部材50の前アーム51とは、動力装置14により回動可能に支持される。
【0028】
図3は、動力装置14の斜視図である。
図4は、
図3の動力装置14からケーシング70の図示を省略した斜視図である。
本実施形態の動力装置14は、
図4に示すように、正逆回転可能な電動モータ(駆動源)Mと、電動モータMのモータ軸M1(
図5参照)に接続されたサイクロイド減速機80と、サイクロイド減速機80から駆動力が出力される出力軸部(出力軸)15とを有する。
【0029】
電動モータMと、サイクロイド減速機80と、出力軸部15とは、ケーシング70で覆われる。
ケーシング70は、サイクロイド減速機80の一部を収容する矩形枠状のセンターケーシング71を有する。センターケーシング71の後側には、スペーサケーシング72を介してジョイントケーシング73が固定される。ジョイントケーシング73は、センターケーシング71、スペーサケーシング72と共に、センターケーシング71の前側のホルダケーシング75に、ボルト73aにより固定される。ジョイントケーシング73には、円筒状のモータケーシング74が固定される。モータケーシング74はボルト74aによりジョイントケーシング73に固定される。モータケーシング74は有底円筒状であり、内部に電動モータMが収容される。なお、モータケーシング74には図示しない孔が形成されており、電動モータMから延びる図示しない電気配線が導出されている。
【0030】
センターケーシング71の前方には、ホルダケーシング75が支持される。ホルダケーシング75には、回動中心L0を挟んで一対のアーム固定部75aが形成される。アーム固定部75aは、回動中心L0に対して径方向外側に延出する。アーム固定部75aは、角柱状である。アーム固定部75aには、内側アーム部材40の前アーム41a、41bが嵌合可能な凹溝75bが形成される。それぞれの凹溝75bには、前アーム41a、41bが嵌合される。前アーム41a、41bは、軸方向に延びるボルト(固定部材)66(
図2参照)により、アーム固定部75aに固定される。これにより、内側アーム部材40の上端部前アーム41aと下端部前アーム41bとが動力装置14のケーシング70に固定される。
センターケーシング71と、スペーサケーシング72と、ジョイントケーシング73と、モータケーシング74と、ホルダケーシング75とにより、本実施の形態の動力装置14のケーシング70が構成される。
【0031】
出力軸部15は、内側アーム部材40と外側アーム部材50の回動中心L0上に配置される。出力軸部15には、外側アーム部材50の前アーム51が嵌合可能な凹溝15aが形成される。凹溝15aには前アーム51が嵌合される。前アーム51は、軸方向に延びる一対のボルト(固定部材)67(
図2参照)により、出力軸部15に固定される。
【0032】
よって、内側アーム部材40の前アーム41a、41bと外側アーム部材50の前アーム51とが、動力装置14を介して回動中心L0上で回動可能となる。ここで、動力装置14では、出力軸部15がケーシング70に対して回転する。このため、ケーシング70に固定された内側アーム部材40と、出力軸部15に固定された外側アーム部材50とが、動力装置14により相対回転されることになり、動力装置14により開閉される。
【0033】
図5は、サイクロイド減速機80を軸方向に沿って切断した断面図である。
サイクロイド減速機80は、内接式遊星歯形機構と等速度内歯形機構とから成り立つ内接式遊星歯車減速機である。サイクロイド減速機80は、電動モータMと連結され、電動モータMの回転速度を減速して出力する。サイクロイド減速機80は、複数段の減速機構121、122、123を軸方向に備え、1000を超える減速比を実現する。本実施形態のサイクロイド減速機80は、一段目減速機構121と、二段目減速機構122と、三段目減速機構123と、を備え、三段階の減速を行う。具体的には、本実施形態のサイクロイド減速機80では、一例として、6859の減速比を実現する。
以下、本実施形態のサイクロイド減速機80に関して詳述する。
【0034】
電動モータMは、モータ軸M1と、モータ軸M1と一体に回転するロータ(図示略)と、モータケーシング74に固定されたステータ(図示略)とを備える。電動モータMには、図示しない電気配線を介して電力が供給される。電動モータMは、正逆駆動可能に構成される。電動モータMは図示しない操作部からの制御信号により操作される。
【0035】
サイクロイド減速機80は、電動モータMのモータ軸M1に接続される入力軸Xを有する。入力軸Xは、モータ軸M1と同心状に配置される。入力軸Xは、ジョイント部材Yでモータ軸M1と接続される。ジョイント部材Yには、例えば、スプライン(不図示)が形成されており、スプラインにより、モータ軸M1と入力軸Xとが一体に接続される。
【0036】
入力軸Xには、ジョイント部材Yよりも前側において、第1の偏心入力軸83が支持される。第1の偏心入力軸83は、入力軸Xの回動中心L0から偏心する偏心中心を円形の中心とする略円筒体である。第1の偏心入力軸83は、入力軸Xに固定されたスプリングピン81により入力軸Xと一体に回転可能に支持される。第1の偏心入力軸83の前側には、第2の偏心入力軸84が配置される。第2の偏心入力軸84は、入力軸Xの回動中心L0から偏心する偏心中心を円形の中心とする略円筒体である。第2の偏心入力軸84は、第1の偏心入力軸83と同一形状である。第2の偏心入力軸84は、第1の偏心入力軸83に対して位相が180度、異なるように入力軸Xに支持される。第2の偏心入力軸84は、入力軸Xに固定されたスプリングピン82により入力軸Xと一体に回転可能に支持される。
なお、偏心入力軸83、84は、スプリングピン81、82により入力軸Xと一体に回転可能に支持される構成を説明したが、スプリングピン81、82に代えて、単なるピンを固定して偏心入力軸83、84を回転させる構成でもよい。
【0037】
偏心入力軸83、84の外周には、転がり軸受85、86を介して、第一外歯歯車(サイクロイド歯車)87、88が連結される。第一外歯歯車87と第一外歯歯車88とは同一部材である。第一外歯歯車87と第一外歯歯車88とは、偏心入力軸83、84の位相の違いに応じて、180°位相が異なるように支持される。
第一外歯歯車87、88は、それぞれの偏心入力軸83、84の偏心形状により入力軸Xに対して揺動回転可能に連結される。
【0038】
第一外歯歯車87、88の外周部には、それぞれ、外歯87a、88aが形成される。外歯87a、88aは、サイクロイド平行曲線をもとにした歯である。外歯87a、88aは、外周側の第一外ピン89に噛み合って動作する。第一外歯歯車87、88は、偏心入力軸83、84の外周を揺動回転する際に、外歯87a、88aが第一外ピン89と噛合い、偏心入力軸83、84が1回転する毎に、第一外歯歯車87、88が、それぞれ、1歯分の自転を行う。
第一外ピン89は、軸方向に延びる。第一外ピン89は、スペーサケーシング72とジョイントケーシング73とに支持される。第一外ピン89は周方向に等間隔に複数本、配置される。
【0039】
ここで、従来のサイクロイド減速機では、第一外ピン89の数を、外歯歯車の歯の数に1を加えた本数で構成している。例えば、減速比が11の場合には、12本のピンが必要となる。しかしながら、減速比が11以上では、最低6カ所を確保し、これ以上の本数の一部又は全部を省略しても動作が可能であることが判明した。本実施形態では、第一外ピン89は、外歯87a、88aの歯数と同じかそれよりも少ない本数とされる。よって、本実施形態のサイクロイド減速機80では、部品点数を抑制することができる。
【0040】
第一外歯歯車87、88には軸方向に貫通する孔87b、88bが設けられる。孔87b、88bは、それぞれ、周方向に等間隔に複数形成される。孔87b、88bには、転がり軸受91、92を介して、軸方向に延びる第一ピン体93が挿入される。転がり軸受91、92は、孔87b、88bの孔径よりも小径である。第一ピン体93は、同一円周上に等間隔に配列される。第一ピン体93は、第一外歯歯車87、88の軸方向両側に配置された第一中間軸94と第一中間軸95とに支持される。第一中間軸94と第一中間軸95とは軸方向視で円形状である。
【0041】
第一中間軸94は、径方向中央の軸部94aで、内周側の転がり軸受96を介して入力軸Xに回転可能に支持される。また、第一中間軸94は、径方向中央の軸部94aで、外周側の転がり軸受97を介してジョイントケーシング73に回転可能に支持される。
第一中間軸95は、径方向中央の軸部95aで、内周側の転がり軸受98を介して入力軸Xに回転可能に支持される。また、第一中間軸95は、径方向中央の軸部95aで、外周側の転がり軸受99を介してスペーサケーシング72に回転可能に支持される。
【0042】
ここで、外歯歯車87,88において、孔87b、88bの孔径は、転がり軸受91、92の外径よりも大きく、転がり軸受91、92は、それぞれ、孔87b、88bの内周に内接して転動する。
第一中間軸94、95は、第一ピン体93を介して第一外歯歯車87、88からの自転による回転力を受けて、入力軸X上を相対回転する。
部材83~99などにより、一段目減速機構121が構成される。
【0043】
第一中間軸95の軸部95aの前側には、偏心部95bが形成される。偏心部95bは、入力軸Xの回動中心L0から偏心する偏心中心を円形の中心とする略円筒状である。第一中間軸95の軸部95aおよび偏心部95bは、スリーブ軸受101を介して入力軸Xに回転可能に支持される。詳細には、第一中間軸95の軸部95aおよび偏心部95bは、スリーブ軸受101を介して、入力軸Xと同心上に配置された入力軸ピンZに回転可能に支持される。入力軸ピンZは、第二中間軸107に第一中間軸95の軸心位置を保つために設けたピンである。
以下の説明において、入力軸Xという場合には、入力軸Xと回動中心L0が一致する入力軸ピンZも含んだ意味で使用する。
【0044】
偏心部95bの外周には、スリーブ軸受102を介して、第二外歯歯車(サイクロイド歯車)103が連結される。
第二外歯歯車103は、偏心部95bの偏心形状により入力軸Xに対して揺動回転可能に連結される。
【0045】
第二外歯歯車103の外周部には、外歯103aが形成される。外歯103aは、サイクロイド平行曲線をもとにした歯である。外歯103aは、外周側の第二外ピン104に噛み合って動作して、偏心部95bが1回転する毎に、第二外歯歯車103が、1歯分の自転を行う。
第二外ピン104は、軸方向に延びる。第二外ピン104は、センターケーシング71と、スペーサケーシング72とに支持される。第二外ピン104は周方向に等間隔に複数本、配置される。
【0046】
第二外歯歯車103には軸方向に貫通する孔103bが設けられる。孔103bは、周方向に等間隔に複数形成される。孔103bには、スリーブ軸受105が嵌合される。スリーブ軸受105には、軸方向に延びる第二ピン体106が挿入される。第二ピン体106は、スリーブ軸受105の孔径よりも小径である。第二ピン体106は、同一円周上に等間隔に配列される。第二ピン体106は、第二外歯歯車103の軸方向前側に配置された第二中間軸107に支持される。第二中間軸107は軸方向視で円形状である。
【0047】
第二中間軸107は、径方向中央の軸部107aで、入力軸Xに回転可能に支持される。
孔103bに嵌合するスリーブ軸受105の孔径は、第二ピン体106の外径よりも大きく、第二ピン体106は、孔103bのスリーブ軸受105の内周に内接して移動する。
第二中間軸107は、第二ピン体106を介して第二外歯歯車103からの自転による回転力を受けて、入力軸X上を相対回転する。
部材95、101~107などにより、二段目減速機構122が構成される。
【0048】
第二中間軸107の軸部107aの前側には、偏心部107bが形成される。偏心部107bは、入力軸Xの回動中心L0から偏心する偏心中心を円形の中心とする略円筒状である。偏心部107bの前側には、偏心部107bよりも小径で前方に延びる円筒状の軸支持部107cが形成される。軸支持部107cは、軸部107aと同心状に形成されており、偏心していない。
【0049】
偏心部107bの外周には、スリーブ軸受108を介して、第三外歯歯車(サイクロイド歯車)109が連結される。
第三外歯歯車109は、偏心部107bの偏心形状により入力軸Xに対して揺動回転可能に連結される。
【0050】
第三外歯歯車109の外周部には、外歯109aが形成される。外歯109aは、サイクロイド平行曲線をもとにした歯である。外歯109aは、外周側の第三外ピン110に噛み合って動作し、偏心部107bが1回転する毎に、第三外歯歯車109は、1歯分の自転を行う。
第三外ピン110は、軸方向に延びる。第三外ピン110は、ホルダケーシング75とセンターケーシング71とに跨って支持される。第三外ピン110は周方向に等間隔に複数本、配置される。
【0051】
第三外歯歯車109には軸方向に貫通する孔109bが設けられる。孔109bは、周方向に等間隔に複数形成される。孔109bには、軸方向に延びる円柱状の第三ピン体111が挿入される。第三ピン体111は、孔109bの孔径よりも小径である。第三ピン体111は、同一円周上に等間隔に配列される。第三ピン体111は、第三外歯歯車109の後側に配置された後ピン支持部材112と、第三外歯歯車109の前側に配置された出力軸部15とに支持される。
【0052】
後ピン支持部材112は、内周側のスリーブ軸受113を介して第二中間軸107の軸部107aに回転可能に支持される。
出力軸部15は、径方向中央の軸部15bで、第二中間軸107の軸支持部107cに支持される。軸部15bは、スリーブ軸受114を介して軸支持部107cに回転可能に支持される。出力軸部15は、入力軸Xと同心状に配置される。
孔109bの孔径は、第三ピン体111の外径よりも大きく、第三ピン体111は、孔109bの内周に内接して移動する。
出力軸部15は、第三ピン体111を介して第三外歯歯車109からの自転による回転力を受けて、入力軸X上を相対回転する。すなわち、出力軸部15は回動中心L0を中心にして回動する。
部材107~114などにより、三段目減速機構123が構成される。
【0053】
本実施の動力装置14では、電動モータMのモータ軸M1が回転すると、ジョイント部材Yを介して入力軸Xが回転する。
一段目減速機構121では、入力軸Xが回転すると、一体に偏心入力軸83、84が回転し、1段目の第一外歯歯車87、88が揺動回転する。ここで第一外歯歯車87、88が、偏心入力軸83、84の回転方向に揺動回転しようとしても、外歯87a、88aが、固定の第一外ピン89と噛合うことで、第一外ピン89から受ける反力により、第一外歯歯車87、88が偏心入力軸83、84の回転方向とは逆方向に揺動する。具体的には、偏心入力軸83、84が一回転すると、第一外歯歯車87、88が1歯分だけ逆方向にずれる(自転する)。第一外歯歯車87、88の自転により、第一中間軸94、95が第一ピン体93を介して回転する。
【0054】
二段目減速機構122では、第一中間軸95が回転すると、一体に偏心部95bが回転し、第二外歯歯車103が揺動回転する。第二外歯歯車103は、外歯103aが、固定の第二外ピン104と噛合うことで、第二外ピン104から受ける反力により、第一中間軸95の回転方向とは逆方向に揺動する。第二外歯歯車103は、第一中間軸95が一回転すると、第二外歯歯車103が1歯分だけ逆方向にずれる(自転する)。第二外歯歯車103の自転により、第二中間軸107が第二ピン体106を介して回転する。
【0055】
三段目減速機構123では、第二中間軸107が回転すると、一体に偏心部107bが回転し、第三外歯歯車109が揺動回転する。第三外歯歯車109は、外歯109aが、固定の第三外ピン110と噛合うことで、第三外ピン110から受ける反力により、第二中間軸107の回転方向とは逆方向に揺動する。第三外歯歯車109は、第二中間軸107が一回転すると、第三外歯歯車109が1歯分だけ逆方向にずれる(自転する)。第三外歯歯車109の自転により、出力軸部15が第三ピン体111を介して回転する。
サイクロイド減速機80では、一段目と二段目と三段目の合計の減速比により、大きな減速比を得ることができる。
【0056】
したがって、本実施形態のサイクロイド減速機80では、第一外歯歯車87、88、第二外歯歯車103、および、第三外歯歯車109が、並列に設けられる。換言すれば、第一外歯歯車87、88、第二外歯歯車103、および、第三外歯歯車109が、入力軸Xの軸方向に沿って軸方向視で重なるように配置される。よって、サイクロイド減速機80では、軸方向が若干長くなるものの、径方向に大型化することを抑制でき、小型で大きい減速比を得ることができる。特に、サイクロイド減速機80では、軸方向にのみ長くなり易いため、軸状の部材、例えば、本実施形態のような接続部材43、53に沿ってサイクロイド減速機80を配置することにより、リフト装置10に動力装置14をコンパクトに設けることができる。
【0057】
図6は、第一実施形態に係るリフト装置10の収納時の状態を示す斜視図である。
つぎに、本実施形態の作用を説明する。本実態形態では、リフト装置10は、収納時には、例えば、
図6に示すように、パンタ式アーム12が閉じ、ベース板11と昇降板13とが近接した状態で、隙間などに立てかけられて収納される。
【0058】
また、本実施の形態のリフト装置10は小型で軽量化されているため、持ち運び可能である。具体的には、昇降板13とベース板11の掴み孔11a、13aが掴まれるなどして使用場所に持ち運び可能である。
【0059】
リフト装置10では、ベース板11が床面に設置され、図示しない操作部により上昇操作が行われると、動力装置14の電動モータMが回転してパンタ式アーム12が開き方向に回動し、昇降板13が上昇位置に移動する。これにより、例えば、昇降板13上の荷物を高い位置に上昇させたりできる。
【0060】
上昇位置(
図1参照)に移動した状態では、昇降板13から下方に荷重が作用するため、パンタ式アーム12には閉じ方向の力が作用する。このとき、動力装置14では、減速比が十分大きいため、電動モータMの回転抵抗により昇降板13が上昇位置に保持される。
【0061】
操作部の下降操作が行われると、電動モータMが逆の方向に回転し、パンタ式アーム12が閉じ方向に回動し、昇降板13が下降位置に移動する。これにより、例えば、荷物を昇降板13により高い位置から下降させたりできる。
【0062】
下降位置(
図6参照)に移動した状態では、昇降板13とベース板11とが近接した状態でコンパクトな状態となる。本実施形態では、昇降板13とベース板11との間に形成されるデッドスペースを有効利用して、動力装置14を配置できるため、パンタ式アーム12が閉じた状態のリフト装置10をコンパクトにできる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のリフト装置10では、一対のアーム部材40、50を有するパンタ式アーム12を備えるリフト装置10であって、一対のアーム部材40、50の回動中心L0上に出力軸部15の軸方向を一致させて配置される、ケーシング70および出力軸部15を有する動力装置14を備え、動力装置14のケーシング70が一方のアーム部材40に固定され、出力軸部15が他方のアーム部材50に固定される。
この構成によれば、リフト装置10が小型、軽量化でき、リフト装置10のメンテナンス性を向上させることができる。
【0064】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態について説明する。なお、前述の第一実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図7は、第二実施形態に係るリフト装置210の斜視図である。
第二実施形態のリフト装置210では、動力装置14が、パンタ式アーム12の内側アーム部材240および外側アーム部材50に直接固定されない点が、第一実施形態と異なる。
【0066】
詳細には、第二実施形態の内側アーム部材240は、第1実施形態の上端部前アーム41aと下端部前アーム41bとに代えて、一本の前アーム241を有する。内側アーム部材240の前アーム241と、外側アーム部材50の前アーム51とは、後側と同様に、スペーサ61、スタッドボルト62、ワッシャ63、ナット64で締結される。これにより、前アーム241と前アーム51とは回動中心L0上で互いに回動可能に支持される。
【0067】
第二実施形態では、動力装置14は、補助パンタ式アーム243に固定される。補助パンタ式アーム243は、一対の補助アーム244、245を有する。一方の補助アーム244は、上部連結アーム244aと、上部連結アーム244aの下方延長線上に離間して配置される下部連結アーム244bと、を有する。上部連結アーム244aと下部連結アーム244bは、それぞれ、動力装置14のアーム固定部75aに固定される。また、他方の補助アーム245は、出力軸部15に一対のボルト67で固定される。よって、補助アーム244、245が動力装置14を介して回動可能に接続される。
【0068】
ここで、一方の補助アーム244では、上部連結アーム244aと下部連結アーム244bのそれぞれに接続部材43が貫通した状態で、一方の補助アーム244が接続部材43に接続される。また、他方の補助アーム245では、上下両端部に接続部材53が貫通した状態で、他方の補助アーム245が接続部材53に接続される。このとき、補助パンタ式アーム243の回動中心が、パンタ式アーム212の回動中心L0上に配置される。
【0069】
つぎに、本実施形態の作用を説明する。
第二実施形態では、電動モータMが作動すると、補助パンタ式アーム243に回動中心L0を中心とする回動力が伝達される。この回動力は、接続部材43、53を介して、パンタ式アーム212にも伝達される。よって、補助パンタ式アーム243およびパンタ式アーム212が回動中心L0を中心に一体に回動して開閉される。
よって、第二実施形態でも、回動中心L0上に配置された出力軸部15からの駆動力でパンタ式アーム212を開閉可能になっており、リフト装置210をコンパクトにできる。
【0070】
特に、第二実施形態では、接続部材43、53を介して軸方向両側の前アーム241、51および後アーム42,52に回動力が伝達されており、前アーム241、51および後アーム42,52を有するパンタ式アーム212において軸方向でバランスよく駆動力が伝達可能になっている。
【0071】
以上説明したように、本実施形態のリフト装置210では、一対のアーム部材50、240を有するパンタ式アーム212を備えるリフト装置210であって、一対のアーム部材50、240の回動中心L0上に出力軸部15の軸方向を一致させて配置される、ケーシング70および出力軸部15を有する動力装置14と、回動中心L0上に回動中心を一致させて配置される、一対のアーム部材50、240と連動する一対の補助アーム244、245と、を備え、動力装置14のケーシング70が一方の補助アーム244に固定され、出力軸部15が他方の補助アーム245に固定される。
この構成によれば、リフト装置210が小型、軽量化でき、リフト装置210のメンテナンス性を向上させることができる。
【0072】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態について説明する。なお、前述の第一実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図8は、第三実施形態に係るリフト装置310の斜視図である。
第三実施形態のリフト装置310では、パンタ式アーム312の第一アーム部材(アーム)340および第二アーム部材(アーム)350が梯子形状でない点などが第一実施形態とは異なる。
【0074】
すなわち、第三実施形態の第一アーム部材340は、いわば、第一実施形態の内側アーム部材40から、後アーム42と接続部材43とが省略された形状である。また、第二アーム部材350は、いわば、第一実施形態の外側アーム部材50から、後アーム52と接続部材53とが省略された形状である。
【0075】
詳細には、第一アーム部材340の下端部アーム341bの下端には、前後方向に延びる円筒部346が固定される。円筒部346の内部には、回動支持部21に支持される軸部材46(
図1、
図2参照)が貫通した状態で配置される。第一アーム部材340の上端部アーム341aの上端には、前後方向に延びる円筒部347が固定される。円筒部347の内部には、昇降板13のガイド支持部32に接続される軸部材47(
図1、
図2参照)が貫通した状態で配置される。なお、軸部材47の両端にはローラ部材48が支持される。
【0076】
同様に、第二アーム部材350の上端には、前後方向に延びる円筒部356が固定される。円筒部356の内部には、昇降板13の回動支持部31に支持される軸部材56(
図1、
図2参照)が貫通した状態で配置される。第二アーム部材350の下端には、前後方向に延びる円筒部357が固定される。円筒部357の内部には、ベース板11のガイド支持部32に接続される軸部材57(
図1、
図2参照)が貫通した状態で配置される。なお、軸部材47の両端にはローラ部材58が支持される。
【0077】
つぎに、本実施形態の作用を説明する。
第三実施形態では、電動モータMが作動すると、パンタ式アーム312が回動中心L0を中心に回動して開閉される。
よって、第三実施形態でも、回動中心L0上に配置された出力軸部15からの駆動力でパンタ式アーム312を開閉可能になっており、リフト装置310をコンパクトにできる。
【0078】
特に、第三実施形態では、パンタ式アーム312の構成が簡素化されており、リフト装置310を軽量化しやすくなっている。
【0079】
以上説明したように、本実施形態のリフト装置310では、一対のアーム部材340、350を有するパンタ式アーム312を備えるリフト装置310であって、一対のアーム部材340、350の回動中心L0上に出力軸部15の軸方向を一致させて配置される、ケーシング70および出力軸部15を有する動力装置14を備え、動力装置14のケーシング70が一方のアーム部材340に固定され、出力軸部15が他方のアーム部材350に固定される。
この構成によれば、リフト装置310が小型、軽量化でき、リフト装置310のメンテナンス性を向上させることができる。
【0080】
<他の実施形態>
第一乃至第三実施形態では、動力装置14がサイクロイド減速機80を有する構成を例示したが、これに限定されない。大きな減速比を得ることが可能であり、出力軸を回動中心上に配置して、リフト装置10、210、310の昇降板13を昇降させることが可能であれば、サイクロイド減速機以外の減速機を適用することも可能である。
【0081】
第一乃至第三実施形態では、動力装置14が、出力軸部15と電動モータMとを一体に有する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、電動モータMなどは出力軸側に対して着脱される構成でもよい。具体的には、例えば、市販の電動工具などをサイクロイド減速機80に着脱可能に構成して、出力軸部15を駆動させる構成でもよい。
【0082】
第一乃至第三実施形態では、ベース板11が設けられることがリフト装置10、210、310の収容時の保護の点、設置時の安定性の点からは望ましい。しかしながら、ベース板11が省略された構成も可能である。すなわち、例えば、パンタ式アーム12、212、312の下端が床面を直接支持する構成でも良い。
【0083】
第一乃至第三実施形態では、ケーシング70に固定されたケーシング70とは別体の外ピン89、104、110に係合して、外歯歯車87、88、103、109が回転する構成を説明したが、これに限定されない。例えば、外ピン89、104、110に代えて、ケーシング70の内周部に、外ピン89、104、110の機能を有する凸部を設けて、外歯歯車87、88、103、109の外歯87a、88a、103a、109aがこの凸部と噛み合って自転する構成でもよい。
【0084】
第一乃至第三実施形態では、ケーシング70が、5つのケーシング71~75を有する構成を説明したが、ケーシング70の分割構造は任意の構成が可能である。
【0085】
第一乃至第三実施形態では、リフト装置10、210、310では、動力装置14はサイクロイド減速機80を備え、サイクロイド減速機80は入力軸Xの回転中心L0に対して偏心回転可能な第一外歯歯車87、88と、第一外歯歯車87、88の揺動回転から自転成分を取り出す第一ピン体93と、第一ピン体93に連結されて、入力軸Xの回転中心L0に対して偏心回転可能な第一中間軸95と、第一中間軸95の回転中心L0に対して偏心回転可能な第二外歯歯車103と、第二外歯歯車103の揺動回転から自転成分を取り出す第二ピン体106と、第二ピン体106に連結されて、入力軸Xの回転中心L0に対して偏心回転可能な第二中間軸107と、第二中間軸107の回転中心L0に対して偏心回転可能な第三外歯歯車109と、を備え、第三外歯歯車109の揺動回転から自転成分を取り出す第三ピン体111に、出力軸部15が設けられる構成を説明した。
【0086】
しかしながら、サイクロイド減速機80の構成は、これに限定されない。例えば、サイクロイド減速機80の構成は、第二中間軸107や第三外歯歯車109が省略され、第二ピン体106に、出力軸部15が設けられる構成でもよい。また、サイクロイド減速機80の構成は、第三ピン体111に連結されて、入力軸Xの回転中心L0に対して偏心回転可能な第三中間軸と、第三中間軸の回転中心L0に対して偏心回転可能な第四外歯歯車と、を備え、第四外歯歯車の揺動回転から自転成分を取り出す第四ピン体に、出力軸部15が設けられる構成でもよい。すなわち、サイクロイド減速機80の構成は、三段回で減速を行う構成に限定されず、直接、または、他の減速機構が介在して、第二ピン体106が取り出す自転成分に基づいて回転する出力軸部15を備えた複数段の減速を行う構成が可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 リフト装置
12 パンタ式アーム
14 動力装置
15 出力軸部(出力軸)
40 内側アーム部材(アーム、一方のアーム)
50 外側アーム部材(アーム、他方のアーム)
70 ケーシング
80 サイクロイド減速機
87 第一外歯歯車
87a 外歯
88 第一外歯歯車
88a 外歯
89 第一外ピン(外ピン)
93 第一ピン体
95 第一中間軸
103 第二外歯歯車
104 第二外ピン(外ピン)
106 第二ピン体
107 第二中間軸
108 第三外歯歯車
111 第三ピン体
210 リフト装置
212 パンタ式アーム
240 内側アーム部材(アーム、一方のアーム)
244 補助アーム(一方の補助アーム)
245 補助アーム(他方の補助アーム)
312 パンタ式アーム
310 リフト装置
340 第一アーム部材(アーム、一方のアーム)
350 第二アーム部材(アーム、他方のアーム)
L0 回転中心(回動中心)
M 電動モータ
M1 モータ軸
X 入力軸