(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058883
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 2/08 20060101AFI20240422BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20240422BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20240422BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20240422BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20240422BHJP
H01G 4/232 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H01G2/08 A
H01G4/224 200
H01G4/32 305Z
H01G4/32 540
H01G2/10 K
H01G4/228 H
H01G4/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166279
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】森 隆志
(72)【発明者】
【氏名】能勢 卓志
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB05
5E082BC25
5E082CC06
5E082EE07
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG06
(57)【要約】
【課題】フィルムコンデンサにつき、バスバーにおいてモールド樹脂内に埋設される接合基部を工夫して、放熱効率を向上させる。
【解決手段】コンデンサ主要部6は、コンデンサ素子ユニット1とこのユニットの端面電極1aに接合基部2aが接合されたバスバー2とを有する。ユニットの全体と接合基部とがモールド樹脂5で被覆される。モールド樹脂から外部へ露出する状態で接合基部2aの第1の端縁部2a
1から外部接続端子2cが延出される。接合基部2aにおける第1の端縁部2a
1とは別の第2の端縁部2a
2から放熱促進部2eが延出されてモールド樹脂5から外部へ露出する。放熱促進部2eはモールド樹脂5の外表面に沿った姿勢に配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子ユニットと前記コンデンサ素子ユニットの端面電極に接合基部が接合されたバスバーとを有するコンデンサ主要部と、
前記コンデンサ主要部における少なくとも前記コンデンサ素子ユニットの全体と前記接合基部とを被覆するモールド樹脂と、
前記モールド樹脂から露出する状態で前記接合基部の第1の端縁部から延出され、外部端子と接続される外部接続端子とを有するフィルムコンデンサであって、
前記接合基部における前記第1の端縁部とは別の第2の端縁部から延出されて前記モールド樹脂から露出し、外部端子と非接続の放熱促進部が配置されていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記放熱促進部は、前記モールド樹脂の外表面に沿った姿勢に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記モールド樹脂は、前記コンデンサ素子ユニットの全体と前記接合基部とを収容する上面開口型のケースの内部に充填されていて、
前記放熱促進部は、前記ケースにおける側壁板の外表面に近接状態で対面している請求項1または請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記モールド樹脂自身が被覆保護の外装樹脂を構成するケースレス型に構成され、
前記放熱促進部は、前記外装樹脂の外表面上に配置されている請求項1または請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記放熱促進部は、陰陽両極の一対の前記バスバーにおけるそれぞれの前記接合基部から前記コンデンサ素子ユニットの端面電極から離間する方向に突出して設けられている請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子ユニットの端面電極にバスバーの接合基部が接合されてなるコンデンサ主要部と、前記コンデンサ素子ユニットの全体および前記接合基部を被覆するモールド樹脂と、前記接合基部から延出されて前記モールド樹脂から露出する外部接続端子とを有するフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)に搭載されるフィルムコンデンサは、その外部接続端子がインバータ(直流-交流電力変換装置)からのケーブル端子(外部端子)に接続して使用される。近年の車載用のフィルムコンデンサにあっては大電流化や小型化の要求が強くなり、それに伴ってコンデンサの過熱に起因するトラブル対策が課題となってきている。
【0003】
一般的なフィルムコンデンサは樹脂モールドされているため、フィルムコンデンサを冷却するには樹脂の表面に熱伝導シート等を貼り付け、冷却する必要がある。しかし、モールド樹脂を間に介在させた状態での放熱では、樹脂の熱伝達率が非常に低いために、高い放熱効率を得ることができないという問題がある。
【0004】
このような課題に対して、大がかりな構造改良や複雑化を招かずに放熱効率を向上させることが強く求められている。
【0005】
従来より、外装樹脂や外装ケース内のモールド樹脂によって被覆保護されたコンデンサ素子ユニットとバスバーの接合基部とにおいて発生した熱量を、効率良く外部放出するための次のような対策が提案されている。例えば特許文献1に記載のコンデンサは、モールド樹脂から露出し、外部端子に接続される接続端子部が設けられる第1部分と、モールド樹脂に埋没する埋没部と、第1部分から離れて位置し、モールド樹脂から露出する露出部とを有し、コンデンサ素子の電極に接続される接続部が設けられる第2部分とを含むバスバーを備え、インバータ装置側で準備された冷却器を露出部に装着することで、通電時にコンデンサ素子およびバスバーで発生した熱を露出部から外部に放熱(冷却器により吸熱)させることで過熱を生じにくくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の電気自動車産業は目覚ましい発展途上にあり、車載のアッセンブリの配置についても多種多様な仕様が展開されている。特許文献1に記載のコンデンサでは、コンデンサ素子の電極に接続される接続部が設けられる第2部分に露出部を設けている。この場合、露出部の配置位置はコンデンサ素子を被覆するモールド樹脂の上面位置となり、それに合わせて露出部に装着すべき冷却器の配置位置は樹脂の上面に対してさらにその上方から対向する位置となる。
【0008】
しかしながら、露出部に装着すべき冷却器を上記した樹脂の上面の上方位置に配置することができない、あるいは極めて難しい条件の場合があり、事実上、対応不可となっているという現実がある。
【0009】
本発明は、モールド樹脂の外表面を取り巻く空間の特定の範囲に冷却器を配置することが不可能または困難な配置禁止空間が存在する場合であっても、その配置禁止空間を避けて外部への放熱を可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0011】
本発明によるフィルムコンデンサは、
コンデンサ素子ユニットと前記コンデンサ素子ユニットの端面電極に接合基部が接合されたバスバーとを有するコンデンサ主要部と、
前記コンデンサ主要部における少なくとも前記コンデンサ素子ユニットの全体と前記接合基部とを被覆するモールド樹脂と、
前記モールド樹脂から露出する状態で前記接合基部の第1の端縁部から延出され、外部端子と接続される外部接続端子とを有するフィルムコンデンサであって、
前記接合基部における前記第1の端縁部とは別の第2の端縁部から延出されて前記モールド樹脂から露出し、外部端子と非接続の放熱促進部が配置されていることを特徴とする。
【0012】
この構成において、コンデンサ素子ユニットは、コンデンサ素子の単体または複数のコンデンサ素子の集合体をいう。
【0013】
本発明の上記の構成によれば、次のような作用が発揮される。
【0014】
バスバーの接合基部から延出される放熱促進部をモールド樹脂から露出させるに際し、制約がある場合がある。すなわち、冷却器を配置することが不可能または困難なため、モールド樹脂の外表面を取り巻く空間の一部が放熱促進部の配置にとって適切でない場合がある。このような制約のある空間が放熱促進部の配置禁止空間である。
【0015】
このような事態に対応すべく、本発明においては、まず、接合基部から放熱促進部を延出する部位につき、外部接続端子が延出されるところの接合基部の第1の端縁部とは別の第2の端縁部においてモールド樹脂から露出し、外部端子と非接続の放熱促進部を接合基部から延出している。外部端子位置に左右されない第2の端縁部を起点とする放熱促進部をモールド樹脂から露出させることで配置禁止空間を避けて外部に放熱(冷却器に吸熱)させることができる。
【0016】
上記した放熱促進部のモールド樹脂からの露出の形態には、大きく分けて次の2つがある。
【0017】
第1の形態(後述する第1の実施例参照)は、コンデンサ素子ユニットの端面電極(あるいはバスバーの接合基部)に平行なモールド樹脂の面(「平行端面」)を基準において、このモールド樹脂の平行端面に対面することになる空間が前記配置禁止空間となる場合である。モールド樹脂の平行端面はコンデンサ素子の軸線方向に対して垂直の関係にある。この第1の形態の場合、接合基部に対向して配置禁止空間が位置するが、接合基部から放熱促進部を延出する構造において、外部接続端子が延出される第1の端縁部とは別の第2の端縁部から延出させてモールド樹脂の外部へ放熱促進部を露出する構造とする。結果、放熱促進部の配置状態はコンデンサ素子ユニットの筒状外周面(包絡面)に対応するモールド樹脂の筒状外周面に沿った姿勢となり、上記の配置禁止空間は避けられている。
【0018】
放熱促進部のモールド樹脂からの露出の第2の形態(後述する第2の実施例参照)は、コンデンサ素子ユニットの端面電極に面接触状態で接合されたバスバーの接合基部に対して外部接続端子が、次の配置要件を満たす繋ぎ部を介して連接される場合である。その繋ぎ部はコンデンサ素子ユニットの筒状外周面(包絡面)に沿ってあるいはモールド樹脂の筒状外周面に沿って配置され、その先端側が外部接続端子となる配置要件である。第2の形態の場合、バスバーにおける外部接続端子側の第1の繋ぎ部がモールド樹脂の筒状外周面に配置され、この筒状外周面に対面する空間が前記配置禁止空間となる。この場合、放熱促進部の配置はコンデンサ素子ユニットの端面電極に対応するモールド樹脂の平行端面に沿った状態となり、上記の配置禁止空間は避けられている。
【0019】
上記構成の本発明のフィルムコンデンサには、次のようないくつかの好ましい態様ないし変化・変形の態様がある。
【0020】
〔1〕放熱促進部をモールド樹脂の外表面に沿った姿勢に配置することが好ましい。この構成によれば、配置禁止空間を避けながらもフィルムコンデンサの占有容積が必要以上に大きくなるのを防止することができる。
【0021】
〔2〕いわゆるケースモールド型に構成されている場合が含まれる(後述する第1の実施例参照)。すなわち、前記モールド樹脂は、前記コンデンサ素子ユニットの全体と前記接合基部とを収容する上面開口型のケースの内部に充填されていて、前記放熱促進部は、前記ケースにおける側壁板の外表面に近接状態で対面している。
【0022】
モールド樹脂を上面開口型のケース内に充填した仕様のフィルムコンデンサの場合、モールド樹脂はケースの側壁板の内周面に密着した状態となっている。そして、この〔2〕の態様にあっては、バスバーの接合基部の第2の端縁部から延出された放熱促進部がケースの側壁板の外表面に近接状態で対面している。
【0023】
コンデンサ素子ユニットで発生した熱量の一部はバスバーの接合基部から第2の端縁部を介して放熱促進部に伝播し、外部へ放熱(冷却器へと吸熱)される。
【0024】
〔3〕モールド樹脂自身が被覆保護の外装樹脂を構成するケースレス型に構成され、放熱促進部は、外装樹脂の外表面上に配置されている(後述する第2の実施例参照)。この場合、コンデンサ素子ユニットの異極一対の端面電極にそれぞれ接合されている第1および第2の双方のバスバーに対して個別的に放熱促進部を連接し、外装樹脂の外表面上に配置することでコンデンサ素子ユニットからの発熱を外部に放熱させることが可能となる。特に大電流用のフィルムコンデンサに適している。
【0025】
〔4〕前記放熱促進部は、陰陽両極の一対の前記バスバーにおけるそれぞれの前記接合基部からコンデンサ素子ユニットの端面電極から離間する方向に突出して設けられている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、モールド樹脂の外表面を取り巻く空間の特定範囲に冷却器を配置することが不可能または困難な配置禁止空間が存在する場合であっても、その配置禁止空間を避けて外部へ放熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施例のフィルムコンデンサにおけるモールド樹脂充填前のコンデンサ主要部の構成を示す斜視図
【
図2】本発明の第1の実施例におけるモールド樹脂充填後のコンデンサ主要部の構成を示す斜視図
【
図3】本発明の第1の実施例におけるモールド樹脂充填前のコンデンサ主要部を上下反転して斜め上から見たときの構成を示す斜視図
【
図4】本発明の第1の実施例における冷却器取り付け状態のフィルムコンデンサの正面断面図
【
図5】本発明の第2の実施例におけるケースレス型のフィルムコンデンサのコンデンサ主要部の構成を示す斜視図
【
図6】本発明の第2の実施例におけるケースレス型のフィルムコンデンサの構成を示す正面断面図
【
図7】本発明の第2の実施例におけるケースレス型のフィルムコンデンサの構成を示す左側面方向視の斜視図
【
図8】本発明の第2の実施例におけるケースレス型のフィルムコンデンサの構成を示す右側面方向視の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、上記構成の本発明のフィルムコンデンサにつき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0029】
〔第1の実施例〕
図1~
図4において、1はコンデンサ素子ユニット、1a,1bはコンデンサ素子ユニット1の軸方向両端の端面電極で、1aは上側の端面電極、1bは下側の端面電極、1cはコンデンサ素子である。2は上側に位置する第1のバスバー、2aは第1のバスバー2の基部である接合基部、2cは第1のバスバー2の遊端部である外部接続端子、2bは接合基部2aと外部接続端子2cとの間を繋ぐ第1の繋ぎ部、2eは放熱促進部、2dは接合基部2aと放熱促進部2eとの間を繋ぐ第2の繋ぎ部である。3は下側に位置する第2のバスバー、3aは第2のバスバー3の基部である接合基部、3cは第2のバスバー3の遊端部である外部接続端子、3bは接合基部3aと外部接続端子3cとの間を繋ぐ第1の繋ぎ部である。4はケース(樹脂ケース)、5はモールド樹脂、5aはモールド樹脂5の上面、6はコンデンサ主要部である。
【0030】
コンデンサ素子ユニット1は複数個のコンデンサ素子1cを並列配置した状態で構成されている。すなわち、軸方向が上下方向となるように互いに平行にして、全体的に周面で接触するように密接して配列したものとなっている。1dは複数個のコンデンサ素子1cからなるコンデンサ素子ユニット1の筒状外周面(包絡面)である。この筒状外周面(包絡面)1dに対しては、互いに平行な上側の端面電極1aと下側の端面電極1bとが垂直な関係となっている。
【0031】
第1のバスバー2は、コンデンサ素子ユニット1の上側の端面電極1aに対して電気的かつ機械的に接合された接合基部2aと、接合基部2aから遊端部に向けて延出された第1の繋ぎ部2bと、第1の繋ぎ部2bの端部に連接された、外部端子と接続される外部接続端子2cとを有している。第1の繋ぎ部2bはコンデンサ素子ユニット1の接合基部2aから直角に折り曲げられ、筒状外周面(包絡面)1dに沿ってL字状に立ち上がる部分で構成され、さらに第1の繋ぎ部2bの遊端側で3つの舌片状の外部接続端子2cがさらに水平に突出されている。
【0032】
同様に、第2のバスバー3は、コンデンサ素子ユニット1の下側の端面電極1bに対して電気的かつ機械的に接合された接合基部3aと、接合基部3aから遊端部に向けて延出された第1の繋ぎ部3bと、第1の繋ぎ部3bの端部に連接された、別の外部端子と接続される外部接続端子3cとを有している。第1の繋ぎ部3bはコンデンサ素子ユニット1の接合基部3aから直角に折り曲げられ、筒状外周面(包絡面)1dに沿ってL字状に立ち上がる部分で構成され、さらに第1の繋ぎ部3bの遊端側で3つの舌片状の外部接続端子3cがさらに水平に突出されている。
【0033】
第2のバスバー3の第1の繋ぎ部3bの長さは、第1のバスバー2の第1の繋ぎ部2bの長さよりもコンデンサ素子ユニット1(コンデンサ素子1c)の軸方向寸法だけ長くなっている。第2のバスバー3の第1の繋ぎ部3bの上端部分(
図3では下端部分)は、第1のバスバー2の第1の繋ぎ部2bと接近状態で対向し、両者間に絶縁板(図示せず)が介装されている。なお、第2のバスバー3には放熱促進部やその放熱促進部への繋ぎ部は連接されない。
【0034】
コンデンサ素子ユニット1の上側の端面電極1aに第1のバスバー2における接合基部2aが接合され、下側の端面電極1bに第2のバスバー3における接合基部3aが接合されてコンデンサ主要部6が構成されている。コンデンサ主要部6にはケース4やモールド樹脂5は含まれていない。
【0035】
外部接続端子2cへの第1の繋ぎ部2bは水平に展開する接合基部2aの第1の端縁部2a
1から延出されている。そして、この第1の端縁部2a
1とは別の第2の端縁部2a
2(
図4)から別の第2の繋ぎ部2dが延出され、その第2の繋ぎ部2dに放熱促進部2eが連接されている。放熱促進部2eへの第2の繋ぎ部2dは一旦少し上昇し、次いで水平姿勢に折れ曲がっている。その水平姿勢の折れ曲がりの端部に連接された放熱促進部2eがほぼ真下に垂下している。放熱促進部2eの主面は接合基部2aの主面に対してほぼ直交する姿勢となっており、外部端子と非接続となっている。第2の繋ぎ部2dから放熱促進部2eにかかる部分は小さな逆U字状に折り曲げられている。
【0036】
コンデンサ素子ユニット1(複数のコンデンサ素子1cの全体)と上下の接合基部2a,3aとが上面開口型の樹脂製のケース4内に収容され、ケース4の内部に注入したモールド樹脂5が接合基部2aよりやや上方の位置まで充填されている。モールド樹脂5の上面5aはケース4における垂直な側壁板4aの上方開口縁よりやや低い位置で水平面に展開していて、外部接続端子2cへの第1の繋ぎ部2bの途中部および放熱促進部2eへの第2の繋ぎ部2dの途中部がモールド樹脂5の上面5aから外部空間に露出している。
【0037】
一部繰り返しになるが、第1のバスバー2の接合基部2aはほぼ長方形状を呈している。外部接続端子2cへの第1の繋ぎ部2bはその長方形状の接合基部2aの長辺に対応する第1の端縁部2a
1から連接され(
図1、
図4参照)、放熱促進部2eへの第2の繋ぎ部2dはその長方形状の接合基部2aの短辺に対応する第2の端縁部2a
2から連接されている(
図4参照)。
【0038】
板状の放熱促進部2eはケース4における1つの垂直な側壁板4aの外表面にほぼ沿った姿勢で垂下されている。放熱促進部2eと側壁板4aとは少しの隙間をあけて対面している。放熱促進部2eの面積については、前記1つの垂直な側壁板4aの面積に近い広さの面積を確保することができる(図示例では5分の3前後)。
【0039】
板状の放熱促進部2eとその放熱促進部2eへの第2の繋ぎ部2dには、スリット状の切欠き2d1が設けられている。これにより、板金材料から第1のバスバー2を製作するときに、第2の繋ぎ部2dから放熱促進部2eにかけて逆U字状に折り曲げる際の折り曲げ抵抗を軽減し、放熱促進部2eに所期の位置、方向、姿勢を得ることができる。
【0040】
本実施例のフィルムコンデンサは例えば車載機器として電気自動車に搭載され、フレームに固定するとともに、インバータに対して外部接続端子2c,3cからケーブル接続する作業において、外部露出している放熱促進部2eの平坦な板面に熱伝導シート7を貼り付け、さらに熱伝導シート7の表面に冷却器8が載置される。冷却器8の内部は冷却媒体を貯留しつつ流動させる比較的大きな空間となっていて、その空間に連通する流入用と流出用のパイプ9が冷却器8に接続されている。
【0041】
従来例の場合は、モールド樹脂5の上面5aに対向する空間に冷却器8を配置することができず、同空間が配置禁止空間となっていた場合には、露出部から冷却器に放熱(吸熱)させることができず、冷却機能上のネックとなっていた。これに対して本実施例の場合には、そのような環境下の場合には、冷却器8の配置空間としてモールド樹脂5の上面5aに対向する空間を回避し、ケース4の側壁板4aの外表面に近接状態で対面している放熱促進部2eに冷却器8を結合すればよい。これにより、フィルムコンデンサと冷却器8との配置の相互関係の自由度を高めることができる。
【0042】
なお、上記図示例の第1の実施例では、放熱促進部2eを延出する第2の繋ぎ部2dを接合基部2aの第2の端縁部2a2の短辺部分に連接したが、本発明にあっては、その連接の態様は図示例のものに限定するものではない。すなわち、1つの短辺だけからでなく、もう1つの対向する短辺から延出してもよいし、あるいは短辺に代えて長辺から延出してもよいし、1つの短辺と1つの長辺1つとからの延出でも、2つの短辺と1つの長辺からの延出でもかまわない。
【0043】
さらに、上記図示例の放熱促進部を第1のバスバー2に連接させたが、第1のバスバー2に代えて第2のバスバー3に放熱促進部を連接させて形成してもよく、第1のバスバー2と第2のバスバー3の各々に独立して放熱促進部を連接させて形成してもよい。
【0044】
また、コンデンサ素子ユニット1としては、構成するコンデンサ素子1cの個数は任意の複数個でもあるいは単数でもかまわない。
【0045】
〔第2の実施例〕
次に、モールド樹脂自身が被覆保護の外装樹脂を構成するケースレス型のフィルムコンデンサの実施例を説明する。
【0046】
図5~
図8に示すフィルムコンデンサはケースレス型に構成されている。すなわち、コンデンサ素子ユニット1と第1および第2のバスバー2,3の接合基部2a,3aを被覆保護するモールド樹脂5が製品保護用の外装樹脂となっている。第1の実施例で用いたケース(樹脂ケース)4は用いられていない。
【0047】
本実施例の場合、コンデンサ素子ユニット1は1つのコンデンサ素子1cで構成されている。なお、複数個のコンデンサ素子1cの集合で構成してもかまわない。
【0048】
本実施例においては、第1のバスバー2における接合基部2aも第2のバスバー3における接合基部3aもともに放熱促進部2e,3eを有している。
【0049】
第1のバスバー2は次のように構成されている。コンデンサ素子ユニット1(単一のコンデンサ素子1c)の左側の端面電極1aに対して電気的かつ機械的に接合された接合基部2aと、接合基部2aの第1の端縁部2a1から遊端部に向けて延出された第1の繋ぎ部2bと、第1の繋ぎ部2bの端部に連接された外部接続端子2cとを有している。
【0050】
コンデンサ素子ユニット1と第1のバスバー2および第2のバスバー3の主要部はモールド樹脂5で被覆されて保護されている。第1の繋ぎ部2bは接合基部2aからの延長部をほぼ直角に折り曲げてコンデンサ素子ユニット1の筒状外周面(包絡面)1dの平坦部分に沿わせ、それをさらにそのままの平面で延長してモールド樹脂5の外部に露出させて延出し、外部接続端子2cとしている。
【0051】
左側の端面電極1aに接合された接合基部2aの第2の端縁部2a2からモールド樹脂5の内部で端面電極1aから離間する方向に突出して垂直に折り曲げられた第2の繋ぎ部2dの先端部が外装樹脂であるモールド樹脂5の左側の外表面5bから露出し、その露出した先端部からさらに直角に折り曲げられて放熱促進部2eが形成され、その放熱促進部2eがモールド樹脂5の左側の外表面5bに沿う姿勢に配置されている。放熱促進部2eは外部端子と非接続とされ、モールド樹脂5の左側の外表面5bに対して面一となる状態で露出している。接合基部2a、第1の繋ぎ部2b、外部接続端子2c、第2の繋ぎ部2dおよび放熱促進部2eからなる第1のバスバー2は、1枚物の導電板の切り出しと折り曲げによって作製されている。
【0052】
第2のバスバー3は、第1のバスバー2の構造を鏡面対称(鏡像反転)したものとなっている。すなわち、コンデンサ素子ユニット1(単一のコンデンサ素子1c)の右側の端面電極1bに対して電気的かつ機械的に接合された接合基部3aと、接合基部3aの第1の端縁部3a1から遊端部に向けて延出された第1の繋ぎ部3bと、第1の繋ぎ部3bの端部に連接された外部接続端子3cとを有している。第1の繋ぎ部3bは接合基部3aからの延長部をほぼ直角に折り曲げてコンデンサ素子ユニット1の筒状外周面(包絡面)1dの平坦部分に沿わせ、それをさらにそのままの平面で延長してモールド樹脂5の外部に露出させて延出し、外部接続端子3cとしている。
【0053】
右側の端面電極1bに接合された接合基部3aの第2の端縁部3a2からモールド樹脂5の内部で端面電極1bから離間する方向に突出して垂直に折り曲げられた第2の繋ぎ部3dの先端部が外装樹脂であるモールド樹脂5の右側の外表面5cから露出し、その露出した先端部からさらに直角に折り曲げられて放熱促進部3eが形成され、その放熱促進部3eがモールド樹脂5の右側の外表面5cに沿う姿勢に配置されている。放熱促進部3eは外部端子と非接続とされ、モールド樹脂5の右側の外表面5cに対して面一となる状態で露出している。接合基部3a、第1の繋ぎ部3b、外部接続端子3c、第2の繋ぎ部3dおよび放熱促進部3eからなる第2のバスバー3は、1枚物の導電板の切り出しと折り曲げによって作製されている。
【0054】
本実施例のフィルムコンデンサは電気自動車のフレームに固定するとともに、インバータに対して外部接続端子2c,3cからケーブル接続する作業において、外部露出している放熱促進部2e,3eの平坦な板面に熱伝導シート(図示せず)を貼り付け、さらに熱伝導シートの表面に冷却器(図示せず)が載置される。モールド樹脂5の筒状外周面(包絡面)5dの外側にある空間に冷却器を配置することができない環境下でも、フィルムコンデンサと冷却器との配置の相互関係の自由度を高めることができる。
【0055】
なお、上記の第2の実施例では、モールド樹脂5の左右の平坦面にそれぞれ放熱促進部2e,3eを露出させて配置したが、両放熱促進部2e,3eのうちいずれか一方のものを省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、モールド樹脂の外表面を取り巻く空間の一部に放熱促進部と結合されるべき冷却器を配置することが不可能または困難な配置禁止空間が存在する場合であっても、その配置禁止空間を避けて外部への放熱を可能とする技術として有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 コンデンサ素子ユニット
1a 上側の端面電極
1b 下側の端面電極
1c コンデンサ素子
2 第1のバスバー
2a 接合基部
2a1 第1の端縁部
2a2 第2の端縁部
2b 第1の繋ぎ部
2c 外部接続端子
2d 第2の繋ぎ部
2e 放熱促進部
3 第2のバスバー
3a 接合基部
3a1 第1の端縁部
3a2 第2の端縁部
3b 第1の繋ぎ部
3c 外部接続端子
3d 第2の繋ぎ部
3e 放熱促進部
4 ケース(樹脂ケース)
4a ケースの側壁板
5 モールド樹脂
5a,5b モールド樹脂の外表面
6 コンデンサ主要部