IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンリツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-誤り率測定装置および誤り率測定方法 図1
  • 特開-誤り率測定装置および誤り率測定方法 図2
  • 特開-誤り率測定装置および誤り率測定方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058893
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】誤り率測定装置および誤り率測定方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/00 20060101AFI20240422BHJP
   H04L 25/49 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H04L1/00 C
H04L25/49 L
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166294
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】砂山 諒
【テーマコード(参考)】
5K014
5K029
【Fターム(参考)】
5K014GA02
5K014GA03
5K029AA01
5K029EE01
5K029FF02
5K029KK24
5K029KK27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スキップ・オーダード・セット(SKP OS)をフィルタリングしてビット誤り率(BER)測定のオートサーチを実行する誤り率測定装置及び方法を提供する。
【解決手段】誤り率測定装置1は、被測定物の被測定信号から検出した直流平均値によりPAM4信号の中電圧閾値を調整する中電圧閾値調整部、調整した中電圧閾値と同じ値にPAM4信号の高電圧閾値と低電圧閾値を設定する高・低電圧閾値設定部、被測定信号からSKP OSの位置を判定して検出するSKP OS検出部、被測定信号からSKP OSをフィルタリングするSKP OSフィルタ部、位相又は電圧を所定ステップで変更しつつフィルタリングした信号からエラーを検出するエラー検出部及びエラーの検出結果に基づいてエラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置に合わせて位相、PAM4信号の中電圧閾値、高電圧閾値と低電圧閾値の順に調整する位相・電圧閾値調整部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCI Express6規格で定義されるパラメータ値に基づくPAM4信号からなるテスト信号を被測定物(W)に送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返される被測定信号を受信してビット誤り率を測定する誤り率測定装置であって、
前記被測定物から折り返される前記被測定信号の直流平均値を検出し、検出した前記被測定信号の直流平均値により前記PAM4信号の中電圧閾値(Middle Vth)を調整する中電圧閾値調整部(4b)と、
前記PAM4信号の高電圧閾値(Upper Vth)と低電圧閾値(Lower Vth)を、前記中電圧閾値調整部にて調整された前記中電圧閾値と同じ値に設定する高・低電圧閾値設定部(4c)と、
前記被測定信号からSKP OSの位置を判定してSKP OSを検出するSKP OS検出部(4d)と、
前記SKP OS検出部にて検出したSKP OSを前記被測定信号からフィルタリングするSKP OSフィルタ部(4e)と、
位相または電圧を所定ステップで変更しながら前記SKP OSフィルタ部にて前記SKP OSがフィルタリングされた信号からエラーを検出するエラー検出部(4f)と、
前記エラーの検出結果に基づいてエラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置に合わせて位相、前記PAM4信号の中電圧閾値、前記PAM4信号の高電圧閾値と低電圧閾値の順に調整する位相・電圧閾値調整部(4g)と、を備えたことを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項2】
PCI Express6規格で定義されるパラメータ値に基づくテスト信号を被測定物(W)に送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返される被測定信号を受信してビット誤り率を測定する誤り率測定方法であって、
前記被測定物から折り返される前記被測定信号の直流平均値を検出し、検出した前記被測定信号の直流平均値により前記PAM4信号の中電圧閾値(Middle Vth)を調整するステップと、
前記PAM4信号の高電圧閾値(Upper Vth)と低電圧閾値(Lower Vth)を前記調整した中電圧閾値と同じ値に設定するステップと、
前記被測定信号からSKP OSの位置を判定してSKP OSを検出するSKP OSを検出するステップと、
前記検出したSKP OSを前記被測定信号からフィルタリングするステップと、
位相または電圧を所定ステップで変更しながら前記SKP OSがフィルタリングされた信号からエラーを検出するステップと、
前記エラーの検出結果に基づいてエラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置に合わせて位相、前記PAM4信号の中電圧閾値、前記PAM4信号の高電圧閾値と低電圧閾値の順に調整するステップと、を含むことを特徴とする誤り率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物を信号パターン折り返しのステートに遷移させた状態で、PCI Express6規格で定義されるパラメータ値に基づくテスト信号を被測定物に送信し、テスト信号の送信に伴って被測定物から折り返される被測定信号を受信してビット誤り率(以下、BER:Bit Error Rateとも言う)を測定する誤り率測定装置および誤り率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誤り率測定装置は、例えば下記特許文献1に示すように、固定データを含む既知パターンのテスト信号を被測定物に送信し、テスト信号の送信に伴って被測定物から折り返して受信した被測定信号と基準となる参照信号とをビット単位で比較してBERを測定する装置として従来から知られている。
【0003】
ところで、PCI Express6の規格試験において、被測定物としてのレシーバのテストを行う際には、誤り率測定装置からテスト用パターンの信号を被測定物に入力し、折り返された信号のBERを確認する手法が一般的である。このとき、被測定物は、出力するパターンに対して任意の長さのスキップ・オーダード・セット(Skip Ordered Set:SKP OS)を挿入する。
【0004】
ここで、PCI Express6の規格試験においては、スキップ・オーダード・セットをBER測定の対象としないことが定義されている。このため、BERをカウントする誤り率測定装置側では、スキップ・オーダード・セットをBER測定の対象外とするための処理としてスキップ・オーダード・セットをフィルタリングすることが求められる。なお、スキップ・オーダード・セットのフィルタリングを実行するためには、最上位ビット:MSBと最下位ビット:LSBを同時に判定し、PCI Express6の規格で定義される所定のパターンであることを確認する必要がある。
【0005】
一方で、この種の誤り率測定装置では、PAM4信号の電圧閾値、位相の自動調整機能(以下、オートサーチと言う)が一般的に知られている。PAM4信号のオートサーチでは、MSBとLSBそれぞれを独立にBERを測定し、最適な電圧閾値、位相に調整する方法を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-127116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の誤り率測定装置では、スキップ・オーダード・セットを含むPCI Express6の信号をオートサーチする際に正常に動作しなくなるという問題があった。これは、上述したMSBとLSBを同時に判定してスキップ・オーダード・セットをフィルタリングする動作と、MSBとLSBそれぞれを独立にBERを測定する動作とが両立しないためである。
【0008】
さらに説明すると、スキップ・オーダード・セットを含むPCI Express6の信号をオートサーチする際には、はじめにMSB側のBERを参照して調整を開始するが、このときLSB側でもスキップ・オーダード・セットを判定できていないと、MSB単独でBERを測定することができず、オートサーチが失敗してしまうという問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、PCI Express6でスキップ・オーダード・セットをフィルタリングしてオートサーチを実行することができる誤り率測定装置および誤り率測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された誤り率測定装置は、PCI Express6規格で定義されるパラメータ値に基づくPAM4信号からなるテスト信号を被測定物Wに送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返される被測定信号を受信してビット誤り率を測定する誤り率測定装置であって、
前記被測定物から折り返される前記被測定信号の直流平均値を検出し、検出した前記被測定信号の直流平均値により前記PAM4信号の中電圧閾値Middle Vthを調整する中電圧閾値調整部4bと、
前記PAM4信号の高電圧閾値Upper Vthと低電圧閾値Lower Vthを、前記中電圧閾値調整部にて調整された前記中電圧閾値と同じ値に設定する高・低電圧閾値設定部4cと、
前記被測定信号からSKP OSの位置を判定してSKP OSを検出するSKP OS検出部4dと、
前記SKP OS検出部にて検出したSKP OSを前記被測定信号からフィルタリングするSKP OSフィルタ部4eと、
位相または電圧を所定ステップで変更しながら前記SKP OSフィルタ部にて前記SKP OSがフィルタリングされた信号からエラーを検出するエラー検出部4fと、
前記エラーの検出結果に基づいてエラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置に合わせて位相、前記PAM4信号の中電圧閾値、前記PAM4信号の高電圧閾値と低電圧閾値の順に調整する位相・電圧閾値調整部4gと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に記載された誤り率測定方法は、PCI Express6規格で定義されるパラメータ値に基づくテスト信号を被測定物Wに送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返される被測定信号を受信してビット誤り率を測定する誤り率測定方法であって、
前記被測定物から折り返される前記被測定信号の直流平均値を検出し、検出した前記被測定信号の直流平均値により前記PAM4信号の中電圧閾値Middle Vthを調整するステップと、
前記PAM4信号の高電圧閾値Upper Vthと低電圧閾値Lower Vthを前記調整した中電圧閾値と同じ値に設定するステップと、
前記被測定信号からSKP OSの位置を判定してSKP OSを検出するSKP OSを検出するステップと、
前記検出したSKP OSを前記被測定信号からフィルタリングするステップと、
位相または電圧を所定ステップで変更しながら前記SKP OSがフィルタリングされた信号からエラーを検出するステップと、
前記エラーの検出結果に基づいてエラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置に合わせて位相、前記PAM4信号の中電圧閾値、前記PAM4信号の高電圧閾値と低電圧閾値の順に調整するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、PCI Express6の規格試験において、被測定物から折り返される被測定信号からスキップ・オーダード・セットを検出してフィルタリングすることによりオートサーチを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る誤り率測定装置のブロック構成図である。
図2】本発明に係る誤り率測定装置のオートサーチの処理手順を示すフローチャートである。
図3】PAM4信号の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
[本発明の概要について]
本発明に係る誤り率測定装置および誤り率測定方法は、例えば拡張バスや拡張スロットの接続規格として、PCI Express Base Specification Revision 6.0 16 December 2021に示されるPCI Express6(以下、PCIe Gen6規格と言う)に準拠したデバイスを被測定物(DUT)とし、被測定物を信号パターン折り返しのステートに遷移させた状態のリンクトレーニング中において、PCIe Gen6規格で定義されるパラメータ値に基づくテスト信号を被測定物に送信し、このテスト信号の送信に伴って被測定物から折り返して受信した被測定信号のBERを測定するものである。
【0016】
PCIe Gen6のレシーバテストの規格試験においては、所定のパターンでの折り返し信号のBER測定を実行し、このときのBERが一定の値以下であることが成否の条件となる。この時のBER測定ではModified Compliance Pattern(以下MCP)を使用することが定められている。また、PCIe Gen6にはスキップ・オーダード・セット(Skip Ordered Set:以下、SKP OSと言う)と呼ばれるパターンが規定されており、被測定物はMCPに対して任意の長さのSKP OSを挿入することができる。PCIe Gen6のレシーバテストの規格試験では、BERをカウントする誤り率測定装置側でこのSKP OSをBER測定の対象外にする処理としてフィルタリングすることが求められる。被測定物により任意に挿入されるSKP OSを取り除かないと、BER測定の本来の参照パターンであるMCPと同期することができないためである。
【0017】
さらに説明すると、従来の誤り率測定装置によるPAM4信号のSKP OSのフィルタリング機能は、受信信号の最上位ビット(以下、MSBと言う)と最下位ビット(以下、LSBと言う)を同時に判定し、PCIe Gen6規格のTable4-54に定義されるパターンと一致した際に動作する。
【0018】
なお、PAM4信号は、図3に示すように、振幅がシンボルごとに4種類に分けられ、4つの異なる振幅の電圧レベルV1,V2,V3,V4を有し、全体の振幅電圧範囲Hが電圧レベルの高い方から高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3に分けられ、3つのアイパターン開口部による連続した範囲からなる。また、本実施の形態では、図3に示すように、高電圧範囲H1の電圧閾値を高電圧閾値Upper Vth、中電圧範囲H2の電圧閾値を中電圧閾値Middle Vth、低電圧範囲H3の電圧閾値を低電圧閾値Lower Vthとしている。
【0019】
一方、従来の誤り率測定装置におけるPAM4信号のオートサーチは、常にMSBとLSBを独立に同期する思想で実行される。つまり、高電圧閾値Upper Vth、低電圧閾値Lower Vthがどんな値に設定されていようが、MSBの同期を独立に取ることができることを前提としたアルゴリズムになっている。
【0020】
ここで、オートサーチにおいて、MSBのBERを確認しながら中電圧閾値Middle Vthを調整できるのはLSB側の設定がMSBのBERの測定結果に影響を及ぼさないことが前提となっている。つまり、高電圧閾値Upper Vthと低電圧閾値Lower Vthが各アイパターンの中心付近に設定されていない状態でオートサーチを実行すると、位相を調整する際にMSBの同期が取れなくなり、BERを確認できないため、位相の調整に失敗してしまうという問題が生じる。
【0021】
ところで、PCIe Gen6のSKP OSは、PCI Express Base Specification Revision 6.0.1 29 August 2022 P.5558-560の「Table4-54 Control SKP Ordered Set with 1b/1b Encoding」に示すように定義されている。例えば「F0 0F F0 0F F0 0F F0 0F F0 0F F0 0F F0 0F F0 0F F0 0F F0 0F FF F0 00 F0」のように、0とFで構成されたパターンとPayloadでSKP OSが表現される。
【0022】
ここで、SKP OSのパターンの中身に注目すると、「F0 0F F0 0F FF」を所定の回数繰り返した後「FF F0 00 F0」、「Phy Payload」というパターンが続く。「F0 0F F0 0F FF」から「FF F0 00 F0」のパターンに注目した時、これはMSBとLSBが同一のパターンになっている。
【0023】
誤り率測定装置では、上述した0とFで構成されたパターンとPayloadのうちPayloadを無視して0とFのパターンを検出しており、検出したパターンをPAM4シンボルで表現すると、「330000333300003333000033330000333300003333000033330000333300003333000033330000333333330000003300」となる。
【0024】
本発明では、このことに着目し、オートサーチ開始時点でLSBを測定する電圧閾値(高電圧閾値Upper Vth、低電圧閾値Lower Vth)をMSBの電圧閾値(中電圧閾値Middle Vth)と同じ値にすることで、LSBの最適な電圧閾値がわからない状態でも、SKP OSの位置を判定できるようにした。これにより、MSB単独でBERを測定できるようになり、MSBの電圧閾値と位相の最適値調整が行えるようになった。そして、位相の調整が完了すれば、LSB側の電圧閾値の調整を改めて実施することが可能となる。
【0025】
上述したように、SKP OSは、検出しているパターンをPAM4シンボルで表現すると、「0」と「3」のみで構成されているため、高電圧閾値Upper Vthと低電圧閾値Lower Vthを中電圧範囲H2のアイパターンの中心(中電圧閾値Middle Vth)と同じ値に設定すれば少なくともSKP OSを判定することができる。この設定において、PAM4シンボルの「1」と「2」を区別することは当然できない。このため、LSBはパターンと同期することができないが、この設定において「0」と「3」の区別はできるので、SKP OSをフィルタリングすること可能となる。つまり、この処理をオートサーチ中に実施し、SKP OSをフィルタリングできる状態にすれば、MSB単独でBERの測定が可能な状態となり、オートサーチによる位相と各電圧閾値の調整を実行することができる。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態の誤り率測定装置1は、上述したオートサーチによる位相と各電圧閾値の調整を実行するため、設定操作部2、記憶部3、測定部4、表示部5、制御部6を備えて概略構成される。
【0027】
設定操作部2は、オートサーチの開始の指示、被測定物Wへの特定パターンやテスト信号の送信開始や停止の指示、被測定物WのBERの測定開始や停止の指示、特定パターンやテスト信号の設定や編集などを行う際に操作される。
【0028】
記憶部3は、不図示のパターン設定画面の設定情報やパターン編集画面の編集情報に基づく特定パターンの各種情報(規格が定める特定パターンの種類、送信順、送信時間、送信回数などの情報)、既知のテスト信号の情報、被測定物WのBERの測定条件や測定結果に関する各種情報を記憶する。
【0029】
測定部4は、設定操作部2の操作情報や記憶部3の記憶情報に基づく制御部6の制御によりオートサーチや被測定物Wの規格試験を含む各種測定を行うもので、パターン発生部4a、中電圧閾値調整部4b、高・低電圧閾値設定部4c、SKP OS検出部4d、SKP OSフィルタ部4e、エラー検出部4f、位相・電圧閾値調整部4gを備える。
【0030】
パターン発生部4aは、制御部6の制御により、PCIe Gen6規格で定義されるパラメータ値に基づくテスト信号として、MCPからなるパターン信号を発生する。
【0031】
MCPは、PCIe Gen6規格の試験を行う際に、BER測定するためのテスト信号として被測定物Wに送信される。被測定物Wは、信号パターン折り返しのステート(Loopback)に遷移させた状態で、パターン発生部4aからMCPがテスト信号として送信されると、任意の長さのSKP OSを挿入した被測定信号を折り返して誤り率測定装置1に送信する。
【0032】
中電圧閾値調整部4bは、パターン発生部4aからのテスト信号(MCPからなるパターン信号)の送信に伴って被測定物Wから折り返される被測定信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換回路で構成されるA/D変換部4b1を含む。中電圧閾値調整部4bは、被測定信号(入力信号)の直流平均値を取り込んで検出し、検出した被測定信号の直流平均値により、BERを測定せずに中電圧閾値Middle Vthを調整する。
【0033】
高・低電圧閾値設定部4cは、中電圧閾値調整部4bにて中電圧閾値Middle Vthが調整されると、この調整された中電圧閾値Middle Vthと同じ値に高電圧閾値Upper Vthと低電圧閾値Lower Vthを設定する。
【0034】
ここで、上記[本発明の概要]でも説明したように、中電圧閾値調整部4bにて中電圧閾値Middle Vthの調整後、高・低電圧閾値設定部4cにて高電圧閾値Upper Vthと低電圧閾値Lower Vthを中電圧閾値Middle Vthと同じ値に設定することにより、被測定信号に挿入されているSKP OSの位置が判定できるようになる。
【0035】
これにより、SKP OS検出部4dは、中電圧閾値調整部4bのA/D変換部4b1にて変換されたデジタル信号の被測定信号からSKP OSの位置を判定してSKP OSを検出する。
【0036】
SKP OSフィルタ部4eは、SKP OS検出部4eにて検出したSKP OSをデジタル信号の被測定信号からフィルタリングする。
【0037】
エラー検出部4fは、制御部6の制御により、所定ステップで位相や電圧を変更しながらSKP OSフィルタ部4eにてSKP OSがフィルタリングされたデジタル信号の被測定信号からエラーを検出する。エラー検出部4fにてエラーが検出されると、この検出したエラーに基づいてBERが測定される。
【0038】
位相・電圧閾値調整部4gは、所定ステップで位相を変更したときのエラー検出部4fのエラーの検出に基づくBERを確認し、エラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置(BERが最も低い位置を含む)に合わせて位相および各電圧閾値(高電圧閾値Upper Vth、中電圧閾値Middle Vth、低電圧閾値Lower Vth)を調整する。
【0039】
位相・電圧閾値調整部4gは、上記位相調整後に、所定ステップで電圧を変更したときのエラー検出部4fのエラーの検出に基づくMSBのBERを確認し、エラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置(BERが最も低い位置を含む)に合わせて中電圧閾値Middle Vthを調整する。
【0040】
位相・電圧閾値調整部4gは、上記中電圧閾値Middle Vthの調整後に、所定ステップで電圧を変更したときのエラー検出部4fのエラーの検出に基づくLSBのBERを確認し、エラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置(BERが最も低い位置を含む)に合わせて高電圧閾値Upper Vthと低電圧閾値Lower Vthを調整する。
【0041】
表示部5は、例えば装置本体に装備された液晶表示器などで構成される。表示部5は、制御部6の制御により、被測定物Wをパターン信号折り返しのステート(ループバック)に遷移させるための特定パターンの設定を行うパターン設定画面や特定パターンの編集を行うパターン編集画面を表示画面上に表示したり、被測定物Wへのテスト信号の送信に伴って被測定物Wから折り返される入力データのエラーの検出に基づく各種測定の結果を表示する。
【0042】
制御部6は、設定操作部2、記憶部3、測定部4、表示部5の各部を統括制御するもので、設定操作部2の操作情報や記憶部3の記憶情報に基づいて測定部4を制御して図2に示すオートサーチや被測定物Wのエラー検出を含む各種測定を行い、各種測定結果を表示部5に表示制御する。
【0043】
次に、上記のように構成される誤り率測定装置1によるオートサーチの動作について図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0044】
なお、以下に説明するオートサーチを実行するにあたっては、被測定物Wが信号パターン折り返しのステートに遷移した状態で、制御部6の制御により、PCIe Gen6規格で定義されるパラメータ値に基づくテスト信号をパターン発生部4aから発生して被測定物Wに送信し、このテスト信号の送信に伴って被測定物Wから被測定信号が折り返されているものとする。
【0045】
オートサーチにおいて、まず、中電圧閾値調整部4bは、被測定物Wから折り返される被測定信号(入力信号)の直流平均値を取り込んで検出し、検出した被測定信号の直流平均値により、BERを測定せずに中電圧範囲の閾値電圧Middle Vthを調整する(ST1)。
【0046】
次に、高・低電圧閾値調整部4cは、中電圧閾値調整部4bにて調整された中電圧閾値Middle Vthと同じ値に高電圧閾値Upper Vthと低電圧閾値Lower Vthを設定する(ST2)。
【0047】
これにより、SKP OSの位置が判定できるようになり、SKP OS検出部4dがSKP OSを検出し、SKP OSフィルタ部4eがSKP OSをフィルタリングする(ST3)。そして、エラー検出部4fは、SKP OSフィルタ部4eにてSKP OSがフィルタリングされたデジタル信号の被測定信号からエラーを検出する。
【0048】
次に、位相・電圧閾値調整部4gは、所定ステップで位相を変更しながらSKP OSがフィルタリングされた被測定信号のBERを確認し、エラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置(BERが最も低い位置を含む)に合わせて位相を調整する(ST4)。
【0049】
続いて、位相・電圧閾値調整部4gは、所定ステップで電圧を変更しながらSKP OSがフィルタリングされた被測定信号のMSBのBERを確認し、エラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置(BERが最も低い位置を含む)に合わせて中電圧閾値Middle Vthを調整する(ST5)。
【0050】
その後、位相・電圧閾値調整部4gは、所定ステップで電圧を変更しながらSKP OSがフィルタリングされた被測定信号のLSBのBERを確認し、エラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置(BERが最も低い位置を含む)に合わせて高電圧閾値Upper Vthと低電圧閾値Lower Vthを調整する(ST6)。
【0051】
ところで、上述した図2のフローチャートに基づくオートサーチの動作では、SKP OSをフィルタリングした後、エラーフリー区間の中で最もマージンの取れる位置(BERが最も低い位置を含む)に合わせて位相および各電圧閾値(高電圧閾値Upper Vth、中電圧閾値Middle Vth、低電圧閾値Lower Vth)を調整しているが、例えばSKP OSをフィルタリングする前に、中電圧閾値Middle Vthの設定で所定ステップで位相を変更しながらMSB単独のBERを確認し、BERが所定値(設定値)以下になる位相を捜索して粗調整しておいてもよい。
【0052】
このように、本実施の形態では、PCIe Gen6の規格試験において、被測定物から折り返される被測定信号からSKP OSを検出してフィルタリングすることによりオートサーチを実行することができる。具体的には、SKP OSは0と3のみで構成されているため、高電圧閾値Upper Vthと低電圧閾値Lower Vthを中電圧範囲H2のアイパターンの中心と同じ値に設定すれば、少なくともSKP OSを判定することができる。0/3の区別をすることにより、SKP OSをフィルタリングしてオートサーチを実行することができる。
【0053】
以上、本発明に係る誤り率測定装置および誤り率測定方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1 誤り率測定装置
2 設定操作部
3 記憶部
4 測定部
4a パターン発生部
4b 中電圧閾値調整部
4b1 A/D変換部
4c 高・低電圧閾値設定部
4d SKP OS検出部
4e SKP OSフィルタ部
4f エラー検出部
4g 位相・電圧閾値調整部
5 表示部
6 制御部
W 被測定物
H 全体の振幅電圧範囲
H1 高電圧範囲
H2 中電圧範囲
H3 低電圧範囲
V1,V2,V3,V4 振幅の電圧レベル
Upper Vth 高電圧閾値
Middle Vth 中電圧閾値
Lower Vth 低電圧閾値
図1
図2
図3