(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058896
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】医薬品管理装置、医薬品管理用プログラム、及び学習モデルの作成装置
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20240422BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166299
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】518149844
【氏名又は名称】株式会社RYUKYU ISG
(71)【出願人】
【識別番号】510192802
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立国際医療研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】322005219
【氏名又は名称】PDRファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石垣 陸太
(72)【発明者】
【氏名】夜久 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松永 太
(72)【発明者】
【氏名】北村 秀秋
(72)【発明者】
【氏名】梶原 宏則
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 郁里
(72)【発明者】
【氏名】杉原 寛吏
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】医療機関における検査等の医療関連行為の予定が未確定であっても、必要な医薬品を発注することができる技術を提供する。
【解決手段】医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含む教師データを用いた機械学習によって作成された学習モデルにより構築された識別器13と、将来の日程の情報の入力を受け付ける日程入力受付部142と、前記将来の日程を前記識別器に入力し、該識別器から出力される医薬品の種類及び量の情報に基づいて、医薬品の発注情報を作成する発注情報作成部143とを備えることを特徴とする医薬品管理装置11。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含む教師データを用いた機械学習によって作成された学習モデルにより構築された識別器と、
将来の日程の情報の入力を受け付ける日程入力受付部と、
前記将来の日程を前記識別器に入力し、該識別器から出力される医薬品の種類及び量の情報に基づいて、医薬品の発注情報を作成する発注情報作成部と
を備えることを特徴とする医薬品管理装置。
【請求項2】
前記過去の医療関連行為の日程の情報に曜日の情報が含まれており、
前記日程入力受付部が曜日の情報を含む日程の情報の入力を受け付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の医薬品管理装置。
【請求項3】
さらに、
表示部と、
前記発注情報を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記発注情報に含まれる医薬品の種類及び量の情報の編集を受け付ける発注情報編集受付部と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬品管理装置。
【請求項4】
さらに、
前記医療関連行為を行う際に必要な医薬品の種類及び量の情報が収録された医療関連行為データベースと、
前記医療機関において受け付けられた医療関連行為の予約情報が保存された予約情報保存部と
を備え、
前記発注情報編集受付部が、前記予約情報保存部に保存された、予約済みの医療関連行為に必要な医薬品の種類及び量を前記医療関連行為データベースに基づいて特定し、それに対して前記発注情報に含まれる医薬品の種類及び量が不足している場合に、該医薬品の種類及び量を充足させるように該発注情報を修正する
ことを特徴とする請求項3に記載の医薬品管理装置。
【請求項5】
さらに、
前記学習モデルに、前記医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含む教師データを用いた追加の機械学習を行わせることにより学習モデルを更新し、更新した学習モデルにより新たな識別器を構築する学習モデル作成部
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬品管理装置。
【請求項6】
前記医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含む教師データを用いた、前記医療関連行為の日程の情報を入力、前記医薬品の種類及び量の情報を出力とする機械学習によって作成された学習モデルにより構築された識別器が保存されたコンピュータを、
将来の日程の情報の入力を受け付ける日程入力受付部と、
前記将来の日程を前記識別器に入力し、該識別器から出力される医薬品の種類及び量の情報に基づいて、医薬品の発注情報を作成する発注情報作成部
として動作させることを特徴とする医薬品管理プログラム。
【請求項7】
医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報が保存された記憶部と、
前記医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含む教師データを用いた機械学習によって学習モデルを作成する学習モデル作成部と
を備えることを特徴とする学習モデルの作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品を管理するための技術に関し、特に放射性医薬品を管理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関において行われる検査の1つに核医学検査(ラジオアイソトープ(RI)検査とも呼ばれる。)がある。核医学検査は、心臓、脳、呼吸器、腎尿路系、骨関節などの様々な部位における疾患の病態を検査するものである。核医学検査では、微量の放射性同位体を含む医薬品(放射性医薬品)を検査部位に投薬し、そこから発せられる放射線を測定する。
【0003】
放射性医薬品に含まれる放射性同位体から発せられる放射線は時間とともに減少するため、医療機関で長期にわたって保管しておくことはできない。そのため、従来、医療機関では、各診療科で受け付けられた核医学検査の予約を、技師等の担当者が検査日の直前(例えば前日)に確認し、それぞれの検査で使用する医薬品の種類と量を特定して製造元に発注している。
【0004】
上記の通り、核医学検査の対象となる部位は様々であり、検査部位によって使用する放射性医薬品の種類が異なる。また、患者の年齢や体格によって投薬量が異なる。そのため、担当者が医療機関で予定されている核医学検査の内容を確認し、発注する放射性医薬品の種類と量を決定する作業には手間と時間がかかる。
【0005】
特許文献1には放射性医薬品の発注支援装置が記載されている。この発注支援装置は、医療機関で行われる核医学検査の予約が確定すると、その日時と内容を含む予約情報を取得する。そして、予め用意された製品情報テーブルを検索することにより、取得した検査内容に対応する放射性医薬品の種類及び量を特定して発注情報を作成し、製造元に送信する。この発注支援装置を用いると、発注担当者が放射性医薬品の種類や量を特定する作業を行う必要がなく、簡便に且つ誤りなく放射性医薬品を発注することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発注支援装置では、核医学検査の予約情報に基づいて発注する放射性医薬品の種類と量を決定するため、核医学検査の予約が確定した後でなければ発注する放射性医薬品の種類と量を決定することができない。放射性医薬品の製造及び納品には一定の時間を要するため、核医学検査が行われるよりも十分に前のタイミングで核医学検査に使用する医薬品の発注を完了しなければならない。そのため、予め決められた発注時点で核医学検査の枠に空きがあっても該発注時点よりも後に予約を受け付けることができず、核医学検査の枠を有効に活用することができない場合があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、医療機関における検査等の医療関連行為の予定が未確定であっても、必要な医薬品を発注することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る医薬品管理装置は、
医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含む教師データを用いた機械学習によって作成された学習モデルにより構築された識別器と、
将来の日程の情報の入力を受け付ける日程入力受付部と、
前記将来の日程を前記識別器に入力し、該識別器から出力される医薬品の種類及び量の情報に基づいて、医薬品の発注情報を作成する発注情報作成部と
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る医薬品管理装置では、医療機関で過去に行われた医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含むデータ、つまり、当該医療機関における医薬品の使用実績を教師データとする機械学習によって作成された学習モデルにより識別器を構築しておく。この機械学習は、より具体的には、医療関連行為の日程を入力、医薬品の種類及び量を出力とするものである。ここでいう医療関連行為には、医薬品を用いた検査等の医療行為のほか、例えば医療機器のメンテナンスなどが含まれうる。
【0011】
医療機関における医師や技師(これらをまとめて「医師等」と呼ぶ。)の勤務日程は、多くの場合、一定の周期(例えば1週間単位)でパターン化されている。また、医療行為の内容や患者の属性も、医師等のそれぞれに対して定型的であることが多い。さらに、医療機器のメンテナンス等を行う周期も、多くの場合、一定(例えば半年毎や1年毎)である。従って、医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程と、その医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の間には相関がある。本発明に係る医薬品管理装置では、こうした相関を機械学習させることにより学習モデルを作成して識別器を構築する。
【0012】
本発明に係る医薬品管理装置では、まず、使用者が、将来の日程を日程入力受付部に入力する。ここでいう将来の日程とは、医療関連行為で使用されることが見込まれる医薬品を発注する対象の日程である。発注情報作成部は、入力された日程を上記の識別器に入力し、該識別器から出力される医薬品の種類及び量の情報に基づいて医薬品の発注情報を作成する。このように、本発明に係る医薬品管理装置では、医療関連行為の予約情報を用いることなく医薬品の発注情報を作成するため、医療関連行為の予定が未確定であっても、必要な医薬品を発注することができる。また、この時点で予約が受け付けられていない検査枠についても、過去の医療関連行為の実績に基づいて、想定される医療関連行為に必要な医薬品の種類及び量を含む発注情報が作成されるため、核医学検査の枠を有効に活用することができる。
【0013】
本発明に係る医薬品管理装置において、
前記過去の医療関連行為の日程の情報に曜日の情報が含まれており、
前記日程入力受付部が曜日の情報を含む日程の情報の入力を受け付けるものである
ことが好ましい。
【0014】
医療機関では、医師等の勤務日程が1週間単位でパターン化されていることが多い。そのため、多くの場合、医療関連行為において用いられる医薬品の種類や量もこれと同期したパターンを有する。従って、教師データとして用いる過去の医療関連行為の日程の情報に曜日の情報を含めることで、このパターンの学習を含む機械学習を行わせることができる。また、日程入力受付部に、曜日を含む日程の情報を入力することで、より高い精度で発注情報を作成することができる。
【0015】
本発明に係る医薬品管理装置は、さらに、
表示部と、
前記発注情報を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記発注情報に含まれる医薬品の種類及び量の情報の編集を受け付ける発注情報編集受付部と
を備えることが好ましい。
【0016】
上記態様の医薬品管理装置では、イレギュラーな医療行為の予約が受け付けられた場合や、不定期に行われる医療機器の点検を行う場合に、使用者が、それらの医療行為に必要な医薬品の種類や量を適宜に変更することができる。
【0017】
本発明の別の態様に係る医薬品管理プログラムは、
前記医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含む教師データを用いた、前記医療関連行為の日程の情報を入力、前記医薬品の種類及び量の情報を出力とする機械学習によって作成された学習モデルにより構築された識別器が保存されたコンピュータを、
将来の日程の情報の入力を受け付ける日程入力受付部と、
前記将来の日程を前記識別器に入力し、該識別器から出力される医薬品の種類及び量の情報に基づいて、医薬品の発注情報を作成する発注情報作成部
として動作させることを特徴とする。
【0018】
本発明のさらに別の態様に係る学習モデルの作成装置は、
医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報が保存された記憶部と、
前記医療関連行為の日程の情報を入力、前記医薬品の種類及び量の情報を出力とする機械学習によって学習モデルを作成する学習モデル作成部と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る医薬品管理装置等を用いることにより、医療機関における検査等の医療関連行為の予定が未確定であっても、必要な医薬品を発注することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る医薬品管理装置の一実施形態である医療機関サーバを含む、医薬品管理システムの全体構成図。
【
図4】本実施形態における画面表示(傾向)の一例。
【
図5】本実施形態における画面表示(発注)の一例。
【
図6】本実施形態における画面表示(受注済)の一例。
【
図7】本実施形態における画面表示(履歴)の一例。
【
図8】本実施形態における画面表示(分析)の一例。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る医薬品管理装置及び学習モデルの作成装置の実施形態である医療機関サーバと、本発明に係る医薬品管理プログラムの実施形態について、以下、図面を参照して説明する。本実施形態の医薬品管理装置は、特に核医学検査等において用いられる放射性医薬品を管理するために用いられる
【0022】
図1に、本実施形態における医薬品管理システム1の全体構成を示す。本実施形態の医薬品管理システム1は、大別して、医療機関システム10と、受注者装置31で構成されている。
【0023】
医療機関システム10は、医療機関サーバ11と、各診療科が有する診療科端末21を備えている。医療機関サーバ11と診療科端末21とは、医療機関内のネットワークを介して相互に接続されている。また、医療機関サーバ11と受注者装置31とは、インターネットで相互に接続されている。
図1では、診療科端末21として4つの端末(A診療科端末21a、B診療科端末21b、C診療科端末21c、D診療科端末21d)を示しているが、診療科端末21の数は任意に変更可能である。なお、本実施形態の医療機関サーバ11は、本発明における医薬品管理装置としての機能、及び学習モデルの作成装置としての機能を有している。
【0024】
図2に、医療機関サーバ11の要部構成を示す。医療機関サーバ11は、記憶部12と識別器13を有している。記憶部12には、患者情報記憶部121、医療従事者情報記憶部122、実績情報記憶部123、予約情報記憶部124、及び医療関連行為データベース(DB)125が設けられている。
【0025】
患者情報記憶部121には、過去に当該医療機関において診察、検査等の医療行為を受けた患者の情報が保存されている。患者情報には、各患者を識別する識別情報(例えば患者ID)、氏名、住所、電話番号などの情報が含まれうる。
【0026】
医療従事者情報記憶部122には、当該医療機関に勤務する医療従事者(医師、技師、看護師等)の情報が保存されている。医療従事者情報には、各医療従事者を識別する識別情報(例えば従事者ID)、ログインパスワード、属性(医師、技師、看護師等)、氏名、住所、電話番号、勤務する診療科、勤務スケジュールなどの情報が含まれうる。また、識別情報には、後記する医薬品の発注業務の可否を含む、各種の使用権限情報が対応付けられている。なお、この情報には、過去に勤務したことがある者の情報や、将来勤務することが予定されている者の情報、当該医療機関以外の機関(別の医療機関や大学など)に所属する医療従事者(医師、技師、看護師等)の情報も含まれうる。
【0027】
実績情報記憶部123には、当該医療機関の各診療科において過去に行われた医療関連行為の実績情報が保存されている。この情報には、医療関連行為が行われた年月日、曜日、時間帯、当該医療関連行為が行われた診療科、担当した医療従事者の識別情報、医療関連行為の種類、使用機器、当該医療関連行為で使用された医薬品の種類及び量、医療関連行為の対象患者の識別情報などの情報が含まれる。なお、ここでいう医療関連行為には、検査等の医療行為そのもののほか、医療機器の点検等のメンテナンスが含まれる。
【0028】
予約情報記憶部124には、当該医療機関の各診療科で受け付けられた医療関連行為の予約情報が保存されている。この情報には、当該予約の日時、当該予約を受け付けた診療科、当該医療関連行為を担当する医療従事者の識別情報、医療関連行為の種類、使用機器当該医療関連行為の対象患者の識別情報が含まれる。ここでも、医療関連行為の予約には、検査等の医療行為そのものの予約のほか、医療機器の点検等のメンテナンスの予定が含まれる。
【0029】
医療関連行為データベース125は、当該医療機関の各診療科で行われる検査や、医療機器のメンテナンス等の各種の医療関連行為の内容と、各医療関連行為において必要となる医薬品の情報を対応付けたデータベースである。この医療関連行為データベース125には、医療関連行為の種類と医薬品の情報を対応付けた情報だけでなく、例えば、同じ検査であっても、患者の性別や体重によって使用する医薬品の種類や量が異なる場合は、それらの情報(医療関連行為の種類と患者の属性の組み合わせを、医薬品の種類及び量と対応付けた情報)も収録されている。
【0030】
識別器13は、後記の学習モデル作成部141によって作成されたものであり、将来の日程が入力されると、当該日程に対応する医薬品の種類と量の情報を出力するように構成されている。
【0031】
医療機関サーバ11は、また、機能ブロックとして、学習モデル作成部141、日程入力受付部142、発注情報作成部143、表示制御部144、発注情報編集受付部145、発注実行部146、受注済データ取得部147、履歴データ取得部148、及び分析処理部149を備えている。医療機関サーバ11には、一般的なサーバコンピュータやパーソナルコンピュータを用いることができ、それらのコンピュータに予めインストールされた医薬品管理プログラムをプロセッサで実行することにより、これらの機能ブロックが具現化される。医療機関サーバ11には、マウスやキーボードを含む入力部18と、液晶ディスプレイなどからなる表示部19が接続されている。
【0032】
図3に、診療科端末21の要部構成を示す。診療科端末21は、記憶部22を備えている。記憶部22には、患者情報記憶部221、及び医療従事者情報記憶部222が設けられている。患者情報記憶部221には、当該診療科の患者の情報が保存されている。また、医療従事者情報記憶部222には、当該診療科を担当する医療従事者の情報が保存されている。これらに保存される患者の情報や医療従事者の情報の内容は、上記患者情報記憶部121及び医療従事者情報記憶部122に保存されているものと同様である。当該診療科において新規の患者が受け付けられた場合には、適宜、当該患者の情報が入力され、患者情報記憶部221に保存される。また、当該診療科に新たな医療従事者が赴任した場合や医療従事者が退職した場合には、適宜、当該医療従事者の情報が入力又は削除され、医療従事者情報記憶部222の情報が更新される。
【0033】
診療科端末21は、また、機能ブロックとして、予約情報受付部231と情報送信部232を備えている。診療科端末21には、一般的なパーソナルコンピュータやタブレット端末などを用いることができ、それらのコンピュータに予めインストールされた診療科端末用プログラムをプロセッサで実行することにより、これらの機能ブロックが具現化される。診療科端末21には、マウスやキーボードを含む入力部28と、液晶ディスプレイなどからなる表示部29が接続されている。なお、診療科端末21がタブレット端末である場合には、入力部28の機能を兼ね備えた液晶ディスプレイなどの表示部29が用いられる。
【0034】
予約情報受付部231は、当該診療科における医療関連行為の予約を受け付けるものである。具体的には、当該予約の日時、当該予約を受け付けた診療科、当該医療関連行為を担当する医療従事者の識別情報、医療関連行為の種類、使用機器、当該医療関連行為の対象患者の識別情報が含まれる。ここでも、医療関連行為の予約には、検査等の医療行為そのものの予約のほか、医療機器の点検等のメンテナンスの予定が含まれうる。なお、新規の患者を対象とした検査等の医療行為の予約を受け付ける場合には、当該患者の氏名、住所、電話番号などの情報の入力を併せて受け付ける。ここで受け付けられた新規の患者の情報は、順次、患者情報記憶部221に保存される。また、予約情報受付部231は、当該診療科で受け付けられた医療関連行為の結果の情報(例えば、医療関連行為の実施の有無、医薬品の実投与量の情報など)の入力を受け付ける。予約情報受付部231によって受け付けられた医療関連行為の予約の情報及びその結果の情報は順次、記憶部22に保存される。
【0035】
情報送信部232は、患者情報記憶部221又は医療従事者情報記憶部222の情報が更新されると、それらの情報を当該診療科を特定する情報とともに医療機関サーバ11に送信する。医療機関サーバ11では、それらの情報を受け付けると、順次、患者情報記憶部121及び医療従事者情報記憶部122に反映する。また、情報送信部232は、当該診療科において医療関連行為の予約が受け付けられた場合、及び医療関連行為の結果の情報が入力された場合も同様に、それらの情報を医療機関サーバ11に送信する。医療機関サーバ11では、受け付けられた予約の情報を予約情報記憶部124に保存し、医療関連行為の結果の情報を実績情報記憶部123に保存する。
【0036】
受注者装置31は、例えば、医薬品を製造する会社(医薬品製造会社)や、医薬品の製造会社で製造された医薬品を卸売りする会社(医薬品卸売会社)のように、医療機関から医薬品を受注し、それを当該医療機関に納入する者によって用いられる。受注者装置31は、当該会社で製造する医薬品の発注情報を受け付ける。
【0037】
以下、本実施形態の医薬品管理システム1において医薬品を管理する流れを説明する。
【0038】
本実施形態では、まず、医療機関サーバ11で用いる識別器13を作成する。使用者が、識別器13の作成を指示すると、学習モデル作成部141は、実績情報記憶部123から、当該医療機関の各診療科で行われた過去の医療関連行為の実績情報を読み出し、それを教師データとして学習モデルを作成する。教師あり学習の具体的な方法や、学習モデルの元になるアルゴリズムについては、従来知られている種々のものを用いることができる。本実施例では、実績情報として、年月日、曜日、時間帯、診療科、担当した医療従事者、医療関連行為の種類、患者の年齢、性別、及び体重、当該医療関連行為に使用した医薬品の種類及び量の情報を読み出す。なお、医療従事者の情報については、実績情報記憶部123に保存されている医療従事者の識別情報を用いて医療従事者情報記憶部122から必要な情報(医療従事者の氏名、属性(医師、技師等))を読み出し、患者の情報については、実績情報記憶部123に保存されている患者の識別情報を用いて患者情報記憶部121から必要な情報(年齢、性別、及び体重など)を読み出す。そして、日程の情報を入力、医薬品の種類及び量の情報を出力とする機械学習を行って学習モデルを作成する。
【0039】
一般に、医療機関では、各診療科における医師等の医療従事者の勤務スケジュールがパターン化されている。特に、医師等の医療従事者の勤務時間帯は1週間単位でパターン化されていることが多い。また、各医師等が行う医療関連行為の種類や患者の属性(年齢、性別、及び体重)も各医師等に特有であることが多い。さらに、医療関連行為データベース125に保存されているように、医療関連行為で使用する医薬品の種類及び量は、医療関連行為の種類と患者の属性によって決まっている。その他、医療関連行為に含まれうる、検査機器のメンテナンスも通常、一定の周期(半年ごとや1年ごと)で行われる。従って、医療関連行為の実績情報に含まれる、日程の情報と、各医師等が実施した医療関連行為で使用された医薬品の種類及び量との間には相関関係がある。本実施形態では、医療関連行為の実績情報を教師データとする機械学習によって学習モデルを作成する。そして、作成した学習モデルを用いて、日程の情報を入力、医薬品の種類及び量の情報を出力とする識別器13を構築して医療機関サーバ11にインストールする。
【0040】
識別器13がインストールされた医療機関サーバ11の所定の認証画面において、医薬品の発注作業を行おうとする者(技師等の発注担当者)が自らの識別情報とパスワードを用いてログインすると、日程入力受付部142は、入力された識別情報とパスワードが医療従事者情報記憶部122に保存されたものと照合し、その識別情報を有する医療従事者に対して医薬品の発注権限が付与されているかを確認する。
【0041】
識別情報とパスワードが一致し、かつ、医薬品の発注権限が付与されていることを確認すると、日程入力受付部142は、表示部19に医薬品の発注作業を行うための画面を表示する。
図4に表示部19に表示される画面の一例を示す。
【0042】
図4に示す例では画面の上部にメニューと現在の日付が表示される。メニューには、傾向ボタン411、発注ボタン412、受注ボタン413、履歴ボタン414、及び分析ボタン415の5つが用意されている。また、現在の年月日とログイン中の使用者を表示する欄42が設けられている。
【0043】
使用者が傾向ボタン411を押すと、日程入力受付部142は、画面上に日付入力欄を表示し、発注しようとする医薬品の利用日を使用者に入力させる。日付入力欄は、日付表示欄431とカレンダーボタン432で構成されており、カレンダーボタン432を押すと別ウィンドウでカレンダーが表示され、そのカレンダー上で日付を指定すると、指定された年月日及び曜日の情報が日付表示欄431に表示される。
【0044】
使用者が医薬品の利用日を入力すると、日付入力欄の横に開始ボタン44が表示される。使用者が開始ボタン44を押すと、発注情報作成部143は、使用者が入力した医薬品の利用日の情報(年月日及び曜日)を識別器13に入力する。該識別器13から出力された医薬品の利用予測の情報(検査名、診療科、担当医、医薬品名、使用時間帯、患者体重、及び医薬品の発注数を含む情報)は、表示制御部144によって表形式で画面に表示される(
図4における表45)。上記の通り、識別器13は、当該医療機関において過去に行われた医療関連行為の実績、及び該医療関連行為で使用された医薬品の実績に基づいて、医療関連行為の内容及び医薬品の種類と量のパターンや傾向を学習したものである。従って、この表45には、過去の実績に基づいて推定された、当該医療機関における医療関連行為の内容及び医薬品の種類と量の情報などが反映される。
【0045】
このように、本実施形態では、識別器13により出力される情報に基づいて医薬品の発注情報を作成することができるため、医療関連行為の予定が未確定であっても、必要な医薬品を発注することができる。
【0046】
表示制御部144は、識別器13から出力された情報に基づく表45を表示するとともに、照合ボタン46及び準備完了ボタン47を画面に表示する。この時点で使用者が準備完了ボタン47を押すと、発注情報作成部143は、識別器13から出力された情報(表45)を発注予定情報として決定する。
【0047】
一方、使用者が照合ボタン46を押すと、発注情報編集受付部145は、予約情報記憶部124から、その時点で既に受け付けられている予約の情報を読み出す。そして、識別器13から出力された情報と照合する。照合結果は、表示制御部144によって表形式で画面に表示される(
図4における表48)。このとき、発注情報編集受付部145は、受付済みの予約情報から医療関連行為の内容(医療関連行為の種別、患者の属性等の情報)を抽出し、医療関連行為データベース125を参照してそれら医療関連行為のそれぞれに必要な医薬品の種類と量を特定する。そして、識別器13から出力された医薬品の種類に、既に予約が受け付けられた医療関連行為に必要な種類の医薬品が含まれていない場合や、医薬品の量が不足している場合には、それらを充足するように自動的に医薬品の種類及び/又は量を追加した照合結果を作成する。照合時に追加された項目や量は、他の項目や量と異なる形態(着色や点滅など。
図4ではハッチング)で表示される。
【0048】
このように、本実施形態では、識別器13により出力された情報と、既に予約が受け付けられた医療関連行為の情報を照合することにより発注情報を修正することができるため、突発的な検査などの、過去の医療関連行為のパターンと異なる検査等の予約が受け付けられた場合でも、それに応じて適切に発注情報を変更することができる。また、この時点で予約が受け付けられていない検査枠についても、過去の医療関連行為の実績に基づいて、想定される医療関連行為に必要な医薬品の種類及び量が発注されるため、核医学検査の枠を有効に活用することができる。
【0049】
上記の照合を行ったあとに、使用者が準備完了ボタン47を押すと、発注情報作成部143は、上記照合後の情報(既に予約が受け付けられた医療関連行為の内容を踏まえた修正後の情報)を発注予定情報として決定する。
【0050】
発注予定情報の決定後、使用者が発注ボタン412を押すと、
図5に示す画面が表示される。
図5には、上記照合を行った場合に表示される内容(表48と同じもの)を示している。この画面には承認ボタン51が表示されている。使用者が承認ボタン51を押すと、発注実行部146は、画面に表示されている医薬品の種類及び量の情報を受注者装置31に送信する。これにより医薬品の発注作業が完了する。受注者端末31は、医療機関サーバ11からの発注を受け付けると、医薬品毎に受注番号を生成して医療機関サーバ11に送信する。医療機関サーバ11では、受注番号を受信すると、発注実行部146は、発注した医薬品の種類及び量の情報(発注履歴データ)の各医薬品に受注番号を対応付けて実績情報記憶部123に保存する。
【0051】
使用者が、受注ボタン413を押すと、
図6に示す画面が表示される。この画面で使用者がカレンダーボタン62を押して別ウィンドウに表示させたカレンダーから年月日を指定して決定ボタン63を押すと、受注済データ取得部147は、実績情報記憶部123から、その日程に使用が予定されている医薬品の発注履歴データのうち、受注番号が付されたもの(製造会社等における受注が完了したもの。受注済データ)を読み出す。続いて、表示制御部144が、日程表示欄61に使用者が指定した年月日及び曜日を表示し、また、受注済データ取得部147によって読み出された医薬品の受注済データを表形式で表示する(
図6における表64)。発注履歴の表示には、医薬品の種類と量、発注者、発注番号、発注日時、及び納品日時の情報が含まれる。使用者は、この画面を見ることにより、当該日程に使用する予定である医薬品の受注状況及び納品状況を確認することができる。また、既に発注作業を完了したにもかかわらず、この画面に表示されない医薬品が存在する場合に、送信ミスや、製造会社等における受注作業のミスが生じた可能性があることを把握することができる。
【0052】
使用者が、履歴ボタン414を押すと、
図7に示す画面が表示される。この画面には、検索範囲の開始日入力欄71と終了日入力欄72からなる検索範囲指定欄が設けられている。使用者がこれらの欄にそれぞれ年月日を入力し、検索ボタン73を押すと、履歴データ取得部148は、実績情報記憶部123から、使用者が入力した検索範囲の日程における医薬品の受注済データ取得部147を読み出す。このデータは、表示制御部144によって画面に表示される。この一覧は表形式のデータとして表示される(
図7における表76)。使用者は、項目名をクリックすることにより、その項目でデータの並び替えを行うことができる。また、項目指定欄74において項目を指定したり、入力欄75に特定の内容を指定した上で検索ボタン73を押す(例えば担当医の項目を指定し、医師Aを指定して検索する)ことにより、指定した内容のデータのみを抽出することもできる。さらに、ダウンロードボタン77を押すことにより画面に表示中のデータをPDFファイルとしてダウンロードすることもできる。
【0053】
使用者が、分析ボタン415を押すと、
図8に示す画面が表示される。この画面には、分析対象範囲の開始日入力欄81と終了日入力欄82が設けられている。使用者がこれらの欄にそれぞれ年月日を入力し、開始ボタン83を押すと、分析処理部149は、使用者が入力した対象範囲の日程における医療関連行為の実績データを実績情報記憶部123から読み出し、予め決められた統計処理を行う。表示制御部144は、統計処理の結果をグラフとして画面に表示する。統計処理の内容には、当該医療機関において必要なものを任意に設定することができる。
図8では、一例として、医療従事者毎の医療関連行為の件数84、医療従事者毎の医薬品の使用量85、及び診療科毎の医療関連行為の件数86をそれぞれ円グラフ又は棒グラフとして示している。
【0054】
上記実施形態では、学習モデル作成部141が、インストール済みの識別器13に対して更なる機械学習を行わせることにより、一定の周期で、あるいは使用者により指定されたタイミングで識別器13を更新するとよい。例えば、医療機関に勤務する医療従事者の退職や新任が生じると、過去の実績から医療関連行為のパターンに変化が生じる可能性がある。このように、最新の実績データに基づく機械学習によって識別器13を更新することにより、医療機関に勤務する医療従事者に変更が生じた場合でも変更後のパターンに基づいてより正確な医薬品の発注情報を推定することが可能になる。
【0055】
上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。
【0056】
上記実施形態では、発注情報編集受付部145が、予約情報記憶部124から受け付け済みの予約の情報を読み出し、識別器13から出力された情報と照合して、不足している医薬品の種類や量を自動的に修正する構成としたが、使用者が自ら修正するようにしてもよい。その場合には、発注情報編集受付部145が、予約情報記憶部124から読み出した予約情報の一覧を画面に表示して、識別器13から出力された発注情報を使用者に編集させるように構成すればよい。
【0057】
上記実施形態では、医療機関サーバ11において医薬品の発注作業等を行うものとしたが、製造会社等の受注者側が医薬品の受注作業を行うようにしてもよい。その場合には、上記実施形態における医薬品管理プログラムを受注者装置31にインストールしておき、医療機関から提供される実績情報に基づいて識別器を作成して保存しておけばよい。また、医療機関から提供される予約情報を一旦記憶部に保存しておき、識別器から出力されるデータと予約情報を照合して医薬品の種類及び量の情報を含む受注情報を作成すればよい。また、好ましくは、作成した受注情報を医療機関の担当者に電子メール等で送信して承認を得た後で、受注を確定するとよい。あるいは、上記実施形態における医薬品管理プログラムをインストールしたクラウドサーバを設け、医療機関と製造会社等の受注者の両方からアクセス可能な構成を採ることもできる。
【0058】
上記実施形態は、1つの医療機関に1つの医療機関サーバ11を備えることを想定したものであるが、複数の医療機関に共通の医療機関サーバを設けてもよい。その場合には、患者情報、医療従事者情報、予約情報などにそれぞれ医療機関を識別する識別情報を対応づけて保存し、また、医療機関ごとに異なる識別器を登録しておくとよい。
【0059】
上記実施形態では、放射性医薬品を管理することを想定し、医薬品の使用予定日を1日だけ指定して発注情報を作成するように構成したが、一般的な医薬品であって一定の期間、劣化することなく管理可能な医薬品を管理する場合には、複数日を同時に選択して発注情報を作成してもよい。その場合は、発注対象期間の開始日と終了日をそれぞれ入力するように構成すればよい。
【0060】
[態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0061】
(第1項)
本発明の一態様に係る医薬品管理装置は、
医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含む教師データを用いた機械学習によって作成された学習モデルにより構築された識別器と、
将来の日程の情報の入力を受け付ける日程入力受付部と、
前記将来の日程を前記識別器に入力し、該識別器から出力される医薬品の種類及び量の情報に基づいて、医薬品の発注情報を作成する発注情報作成部と
を備えることを特徴とする。
【0062】
(第6項)
本発明の別の一態様に係る医薬品管理プログラムは、
前記医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含む教師データを用いた機械学習によって作成された学習モデルにより構築された識別器が保存されたコンピュータを、
将来の日程の情報の入力を受け付ける日程入力受付部と、
前記将来の日程を前記識別器に入力し、該識別器から出力される医薬品の種類及び量の情報に基づいて、医薬品の発注情報を作成する発注情報作成部
として動作させることを特徴とする。
【0063】
(第7項)
本発明のさらに別の態様に係る学習モデルの作成装置は、
医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報が保存された記憶部と、
前記医療関連行為の日程の情報を入力、前記医薬品の種類及び量の情報を出力とする機械学習によって学習モデルを作成する学習モデル作成部と
を備えることを特徴とする。
【0064】
第1項に係る医薬品管理装置、第6項に係る医薬品管理プログラム、及び第7項に係る学習モデルの作成装置では、医療機関で過去に行われた医療関連行為の日程の情報と、該医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含むデータ、つまり、当該医療機関における医薬品の使用実績を教師データとする機械学習によって作成された学習モデルにより識別器を構築しておく。この機械学習は、より具体的には、医療関連行為の日程を入力、医薬品の種類及び量を出力とするものである。ここでいう医療関連行為には、医薬品を用いた検査等の医療行為のほか、例えば医療機器のメンテナンスなどが含まれうる。
【0065】
医療機関における医師や技師(これらをまとめて「医師等」と呼ぶ。)の勤務日程は、多くの場合、一定の周期(例えば1週間単位)でパターン化されている。また、医療行為の内容や患者の属性も、医師等のそれぞれに対して定型的であることが多い。さらに、医療機器のメンテナンス等を行う周期も、多くの場合、一定(例えば半年毎や1年毎)である。従って、医療機関で行われた過去の医療関連行為の日程と、その医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の間には相関がある。第1項に係る医薬品管理装置では、こうした相関を機械学習させることにより学習モデルを作成して識別器を構築する。
【0066】
第1項に係る医薬品管理装置及び第6項に係る医薬品管理プログラムでは、まず、使用者が、将来の日程を日程入力受付部に入力する。ここでいう将来の日程とは、医療関連行為で使用されることが見込まれる医薬品を発注する対象の日程である。発注情報作成部は、入力された日程を上記の識別器に入力し、該識別器から出力される医薬品の種類及び量の情報に基づいて医薬品の発注情報を作成する。このように、第1項に係る医薬品管理装置及び第6項に係る医薬品管理プログラムでは、医療関連行為の予約情報を用いることなく医薬品の発注情報を作成するため、医療関連行為の予定が未確定であっても、必要な医薬品を発注することができる。
【0067】
(第2項)
第2項に係る医薬品管理装置は、第1項に係る医薬品管理装置において、
前記過去の医療関連行為の日程の情報に曜日の情報が含まれており、
前記日程入力受付部が曜日の情報を含む日程の情報の入力を受け付けるものである。
【0068】
医療機関では、医師等の勤務日程が1週間単位でパターン化されていることが多い。そのため、多くの場合、医療関連行為において用いられる医薬品の種類や量もこれと同期したパターンを有する。 第2項に係る医薬品管理装置では、教師データとして用いる過去の医療関連行為の日程の情報に曜日の情報を含めることで、このパターンの学習を含む機械学習を行わせることができる。また、日程入力受付部に、曜日を含む日程の情報を入力することで、より高い精度で発注情報を作成することができる。
【0069】
(第3項)
第3項に係る医薬品管理装置は、第1項又は第2項に係る医薬品管理装置において、さらに、
表示部と、
前記発注情報を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記発注情報に含まれる医薬品の種類及び量の情報の編集を受け付ける発注情報編集受付部と
を備える。
【0070】
第3項に係る医薬品管理装置では、イレギュラーな医療行為の予約が受け付けられた場合や、不定期に行われる医療機器の点検を行う場合に、使用者が、それらの医療行為に必要な医薬品の種類や量を適宜に変更することができる。
【0071】
(第4項)
第4項に係る医薬品管理装置は、第3項に係る医薬品管理装置において、さらに、
前記医療関連行為を行う際に必要な医薬品の種類及び量の情報が収録された医療関連行為データベースと、
前記医療機関において受け付けられた医療関連行為の予約情報が保存された予約情報保存部と
を備え、
前記発注情報編集受付部が、前記予約情報保存部に保存された、予約済みの医療関連行為に必要な医薬品の種類及び量を前記医療関連行為データベースに基づいて特定し、それに対して前記発注情報に含まれる医薬品の種類及び量が不足している場合に、該医薬品の種類及び量を充足させるように該発注情報を修正する。
【0072】
第4項に係る医薬品管理装置では、使用者の作業を要することなく予約済みの医療関連行為に必要な医薬品の種類及び量を確実に発注することができる。
【0073】
(第5項)
第5項に係る医薬品管理装置は、第1項から第4項のいずれかに係る医薬品管理装置において、さらに、
前記学習モデルに、前記医療関連行為において使用された医薬品の種類及び量の情報を含む教師データを用いた追加の機械学習を行わせることにより学習モデルを更新し、更新した学習モデルにより新たな識別器を構築する学習モデル作成部
を備える。
【0074】
第5項に係る医薬品管理装置では、医療機関に勤務する医療従事者に変更が生じた場合でも変更後のパターンに基づいてより正確な医薬品の発注情報を推定することが可能になる。
【符号の説明】
【0075】
1…医薬品管理システム
10…医療機関システム
11…医療機関サーバ
12…記憶部
121…患者情報記憶部
122…医療従事者情報記憶部
123…実績情報記憶部
124…予約情報記憶部
125…医療関連行為データベース
13…識別器
141…学習モデル作成部
142…日程入力受付部
143…発注情報作成部
144…表示制御部
145…発注情報編集受付部
146…発注実行部
147…受注済データ取得部
148…履歴データ取得部
149…分析処理部
18…入力部
19…表示部
21…診療科端末
22…記憶部
221…患者情報記憶部
222…医療従事者情報記憶部
231…予約情報受付部
232…情報送信部
28…入力部
29…表示部
31…受注者装置