(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058906
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】インサート構造体及び地山補強工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166311
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】591140813
【氏名又は名称】株式会社カテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】浅井 勉
(72)【発明者】
【氏名】永田 潤一
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AA06
2D040AB01
2D040CA01
2D040CA02
2D040CA10
2D040CB03
2D040DC02
(57)【要約】
【課題】長尺鋼管の全長にわたって均一な改良体を形成することができるインサート構造体及び地山補強工法を提供する。
【解決手段】本インサート構造体1は、長尺鋼管P内に無機系の地山改良材を注入するための注入用チューブ2と、鋼管内から空気を排気するための排気用チューブ3と、注入用及び排気用チューブに固定され、鋼管内を長手方向に複数の注入区間R1~R4に仕切るためのパッカー4と、を備える。さらに、注入用チューブは、鋼管内に挿入したときに、その挿入先端が鋼管の先端部まで達する長さLであり、注入用チューブには、注入区間毎に開口する吐出孔7a~7dが長手方向に複数設けられており、注入区間毎の吐出孔の開口面積は、注入用チューブの挿入端側から末端側にかけて小さくなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル未掘削地山に打設した長尺鋼管内に挿入されるインサート構造体であって、
前記長尺鋼管内に無機系の地山改良材を注入するための注入用チューブと、
前記長尺鋼管内から空気を排気するための排気用チューブと、
前記注入用チューブ及び前記排気用チューブに固定され、前記長尺鋼管内を長手方向に複数の注入区間に仕切るためのパッカーと、を備え、
前記注入用チューブは、前記長尺鋼管内に挿入したときに、その挿入先端が前記長尺鋼管の先端部まで達する長さであり、
前記注入用チューブには、前記注入区間毎に開口する吐出孔が長手方向に複数設けられており、
前記注入区間毎の前記吐出孔の開口面積は、前記注入用チューブの挿入端側から末端側にかけて小さくなっていることを特徴とするインサート構造体。
【請求項2】
前記吐出孔は、前記注入区間毎に1つずつ開口するように配置されている請求項1に記載のインサート構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインサート構造体を用いる地山補強工法であって、
トンネル未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設し、前記長尺鋼管内に前記インサート構造体を挿入して、前記注入用チューブの各前記吐出孔から前記パッカーで仕切られた各前記注入区間に無機系の地山改良材を注入し、前記長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔を通じて地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させることを特徴とする地山補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル未掘削地山に打設した長尺鋼管内に挿入されるインサート構造体及びこれを用いる地山補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削に際し、トンネルの周囲の前方地山に長尺鋼管を打設し、長尺鋼管内から地山改良材を注入して地山を改良する、いわゆる長尺鋼管フォアパイリングが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記長尺鋼管は3m程度の複数本の鋼管を接続することで10~20m程度の長尺鋼管をトンネル外周に複数本打設し、長尺鋼管内に挿入した注入用チューブから長尺鋼管内に地山改良材を注入する。地山改良材としてはウレタン系と無機系(セメント系・水ガラス系)があり、無機系の地山改良材を注入する場合、注入用資材101は1本の注入用チューブ102と1本の排気用チューブ103を備え、注入用チューブ102は排気用チューブ103より短くなっている(
図6(a)参照)。
【0004】
このような注入用資材101を用いた注入作業は、以下の手順によって行われる。先ず鋼管P打設後に注入資材101を鋼管P内に挿入し、鋼管P口元を注入資材101の末端に設けた逆止弁105で閉塞する(
図6(b)参照)。その後注入用チューブ102の末端部に設けられた注入アダプター108と地山改良材を圧送するポンプから伸びる注入ホース(図示せず)を接続し、地山改良材の注入を開始する。地山改良材は注入用チューブ102内を通過して注入用チューブ102の先端開口102aから鋼管P内に流入する。鋼管P内に流入した地山改良材は鋼管P内を充填しながら鋼管P外周に設けられた吐出孔から鋼管P周辺の地山Gの亀裂に充填される。鋼管P内に流入した地山改良材が鋼管P内の先端に達すると、排気用チューブ103を通じて鋼管Pの末端部まで流れ、逆止弁105から突出した排気用チューブ103の末端から流出する。地山改良材が排気用チューブ103の末端から流出することを確認後、排気用チューブ103を折り曲げるなどして閉塞して注入を続行し、所定の注入量もしくは所定の注入圧力に達したら注入を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の地山補強工法で使用する注入用チューブ102は地山改良材の吐出箇所が注入用チューブ102の先端開口102aの1箇所のみとなっており、長尺鋼管Pは仰角を持って打設され、かつ地山改良材である無機系の注入材は比重が約1.5と大きいため、鋼管Pの口元に注入材が滞留しやすい。そのため、空隙の大きな地山では鋼管先端部まで注入材が充填できない場合があり、鋼管の全長にわたって均一な改良体が形成できず地山改良効果が得られにくくなっている。
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、長尺鋼管の全長にわたって均一な改良体を形成することができるインサート構造体及び地山補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の通りである。
1.トンネル未掘削地山に打設した長尺鋼管内に挿入されるインサート構造体であって、
前記長尺鋼管内に無機系の地山改良材を注入するための注入用チューブと、
前記長尺鋼管内から空気を排気するための排気用チューブと、
前記注入用チューブ及び前記排気用チューブに固定され、前記長尺鋼管内を長手方向に複数の注入区間に仕切るためのパッカーと、を備え、
前記注入用チューブは、前記長尺鋼管内に挿入したときに、その挿入先端が前記長尺鋼管の先端部まで達する長さであり、
前記注入用チューブには、前記注入区間毎に開口する吐出孔が長手方向に複数設けられており、
前記注入区間毎の前記吐出孔の開口面積は、前記注入用チューブの挿入端側から末端側にかけて小さくなっていることを特徴とするインサート構造体。
2.前記吐出孔は、前記注入区間毎に1つずつ開口するように配置されている上記1.に記載のインサート構造体。
3.上記1.又は2.に記載のインサート構造体を用いる地山補強工法であって、
トンネル未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設し、前記長尺鋼管内に前記インサート構造体を挿入して、前記注入用チューブの各前記吐出孔から前記パッカーで仕切られた各前記注入区間に無機系の地山改良材を注入し、前記長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔を通じて地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させることを特徴とする地山補強工法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トンネル掘削時の先行地山補強に際し、トンネル未掘削地山に長尺鋼管を打設し、長尺鋼管内にインサート構造体を挿入して、注入用チューブの各吐出孔からパッカーで仕切られた各注入区間に無機系の地山改良材を注入し、長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔を通じて地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させる。これにより、空隙の大きな地山であっても長尺鋼管の先端部まで無機系の地山改良材を充填でき、長尺鋼管の全長にわたって均一な改良体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部材を示す。
【
図1】実施形態に係るインサート構造体の説明図であり、(a)は組付状態を示し、(b)は分解状態を示す。
【
図2】実施形態に係るパッカーの説明図であり、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示す。
【
図3】実施形態に係る逆止弁の説明図であり、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示す。
【
図4】実施形態に係る地山補強工法(鋼管打設工程)の説明図であり、(a)はトンネルの軸方向に沿う縦断面を示し、(b)はトンネルの軸方向に直交する横断面を示す。
【
図5】実施形態に係る地山補強工法(改良材注入工程)の説明図であり、(a)は鋼管内にインサート構造体を挿入した状態を示し、(b)は鋼管の全長にわたって改良体が形成された状態を示す。
【
図6】従来の地山補強工法の説明図であり、(a)は注入資材を示し、(b)は注入資材を挿入した鋼管の口元側の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
以下、図面を用いて実施形態により本発明を具体的に説明する。
【0013】
本実施形態のインサート構造体1は、
図1に示すように、長尺鋼管P内に無機系の地山改良材を注入するための1本の注入用チューブ2と、長尺鋼管P内から空気を排気するための1本の排気用チューブ3と、注入用チューブ2及び排気用チューブ3に固定され、長尺鋼管P内を長手方向(軸方向)に複数の注入区間R1~R4に仕切るための複数のパッカー4と、を備えている。さらに、インサート構造体1は、注入用チューブ2及び排気用チューブ3の末端側(手前側)に設けられる逆止弁5を備えている。
【0014】
なお、無機系の地山改良材としては、例えばセメント系(セメントミルク、セメント+急結剤等)、水ガラス系(水ガラス+セメント、水ガラス+酸性反応剤等)、特殊シリカ系などの無機系注入材が用いられる。無機系注入材は、一般にウレタン系注入材と比べて粘性が低く硬化までに時間がかかり、比重が大きい。さらにリサイクル性が高く環境負荷が小さい。
【0015】
注入用チューブ2は、軟質材料(例えば軟質樹脂、ゴムなど)により形成されており、可撓性を有している。また、注入用チューブ2は、インサート構造体1を長尺鋼管P内に挿入したときに、その挿入先端が長尺鋼管Pの先端部まで達する長さを有している。言い替えると、注入用チューブ2の長尺鋼管P内への挿入長さLは、長尺鋼管Pの全長の70%(好ましくは80%)以上である。
【0016】
注入用チューブ2には、注入区間R1~R4毎に開口する吐出孔7a~7dが長手方向(軸方向)に複数設けられている。吐出孔7a~7dは、注入区間R1~R4毎に1つずつ開口するように配置されている。また、吐出孔7a~7dは平面円形に形成されている。注入区間R1~R4毎の吐出孔7a~7dの開口面積(即ち吐出孔7a~7dの直径)は、注入用チューブ2の挿入端側(先端側)から末端側(手前側)に向かうに連れて小さくなっている。言い替えると、注入用チューブ2には、軸方向の先端部と中間部に複数の吐出孔7a~7dが設けられており、複数の吐出孔7a~7dはそれぞれ異なる径となっており、注入用チューブ2の挿入端側から末端側にかけて小さくなっている。また、注入用チューブ2の隣り合う吐出孔7a~7dの間にはパッカー4が配置されている。さらに、注入用チューブ2の後端側には、注入アダプター8が接続されている。注入アダプター8には、注入ポンプ(図示せず)が配管接続される。さらに、注入用チューブ2の先端開口はゴム栓9により閉鎖されている。
【0017】
なお、本実施形態では、吐出孔7aの直径が8mm、吐出孔7bの直径が7mm、吐出孔7cの直径が6mm、吐出孔7dの直径が5mmであるものを採用する。ただし、吐出孔7a~7dの開口面積の減少比率などは特に限定されず、例えば鋼管Pの打設角度や注入区間R1~R4の長さなどに応じて適宜選択される。さらに、吐出孔7a~7dの平面形状は特に限定されず、例えば平面多角形の吐出孔7a~7dを採用してもよい。
【0018】
排気用チューブ3は、軟質材料(例えば軟質樹脂、ゴムなど)により形成されており、可撓性を有している。また、排気用チューブ3の長尺鋼管P内への挿入長さは、注入用チューブ2の長尺鋼管P内への挿入長さLより長くなっている。さらに、排気用チューブ3には、その挿入端側(先端側)に排気孔11が形成されている。排気孔11は、インサート構造体1を長尺鋼管P内に挿入したときに、長尺鋼管Pの最奥端側の区画領域R1に位置するように配置されている。なお、排気用チューブ3の先端部にミキサーを備えるようにしてもよい。
【0019】
パッカー4は、隣り合う注入区間R1~R4の間での地山改良材の流れ(漏れ)を規制し且つ空気の流れ(漏れ)を許容するものである。また、パッカー4は、弾性材料(スポンジ、軟質ゴムなど)により形成されている。また、パッカー4には、各チューブ2、3を支持する支持孔13が形成されているとともに、その外周から支持孔13まで延びるスリット14が形成されている(
図2参照)。スリット14を介してパッカー4の外周側から各チューブ2、3が支持孔13内に入れ込まれる。さらに、パッカー4はテープ止め、接着等により各チューブ2、3に固定される。なお、パッカー4としては、ソフトテープなどの粘着帯材(弾性材料)を各チューブ2、3に巻き付けて構成されるものを採用してもよい。さらに、パッカー4による地山改良材の流れの規制とは、完全な流れの規制の他に極少量の漏れを伴う流れの規制を含むものとする。
【0020】
なお、本実施形態では、全長12mの長尺鋼管Pを4つの注入区間R1~R4に仕切る形態(即ち3つのパッカー4を備える形態)を採用する。ただし、注入区間R1~R4やパッカー4の個数は特に限定されず、例えば長尺鋼管Pの全長などに応じて適宜選択される。さらに、本実施形態では、注入区間R1の長さを3500mmとし、注入区間R2~R4の長さを3000mmとする形態を採用する。ただし、注入区間R1~R4の長さ形態は特に限定されず、例えば同じ長さの複数の注入区間とそれらと異なる長さの1つ又は2以上の注入区間とを含む形態を採用してもよいし、全ての注入区間の長さが同じ又は異なる形態を採用してもよい。
【0021】
逆止弁5は、長尺鋼管Pの末端側からの地山改良材の逆流を規制するものである。また、逆止弁5は弾性材料(ゴムなど)により形成されている。また、逆止弁5には、各チューブ2、3が挿通可能な挿通孔16が形成されている(
図3参照)。さらに、逆止弁5はテープ止め、接着等により各チューブ2、3に固定される。
【0022】
次に、上記構成のインサート構造体1を用いる地山補強工法について説明する。本地山補強工法では、トンネル未掘削地山Gに複数の長尺鋼管Pを打設し(
図4参照)、長尺鋼管P内にインサート構造体1を挿入する(
図5参照)。そして、注入用チューブ2の各吐出孔7a~7dからパッカー4で仕切られた各注入区間R1~R4に無機系の地山改良材を注入し、長尺鋼管Pの外周に設けられた吐出孔21を通じて地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させる。この場合、地山改良材が地山に注入されて硬化して改良体Aを形成することでトンネル周辺の地山Gが改良される。なお、吐出孔21は鋼管Pの全長にわたって複数設けられている。
【0023】
具体的には、まず、トンネルの外周方向の未掘削地山Gに複数の長尺鋼管Pを既知の方法によって打設する。トンネルの周囲の前方地山に打設された複数の鋼管Pは、トンネル軸に対して斜め且つ直線状に延びるとともに、トンネルのアーチ部の周方向に間隔を置いて配置される。
【0024】
次に鋼管Pの内部にインサート構造体1を挿入し、逆止弁5をストッパー(図示せず)で固定する。そして注入ポンプを所定の注入条件に応じて制御することで、注入用チューブ2の各吐出孔7a~7dから長尺鋼管P内の各注入区間R1~R4に地山改良材を注入する。これら各注入区間R1~R4に注入された地山改良材は、長尺鋼管Pの外周に設けられた複数の吐出孔21を通じて長尺鋼管P周辺の地山Gの空隙や亀裂に浸透し、固結して改良体Aを形成することで、地山Gを補強する。
【0025】
各注入区間R1~R4への地山改良材の注入の際には、各注入区間R1~R4内の空気は、注入区間R1~R4において長尺鋼管Pの末端側から奥端側に順に漏れ、最奥端側の注入区間R1において排気孔11から排気用チューブ3を通じて鋼管Pの外部へ排気される。さらに、最奥端側の注入区間R1に充填される地山改良材が排気孔11から排気用チューブ3を通じて鋼管Pの末端部まで流れ、逆止弁5から突出した排気用チューブ3の末端から流出することを確認後、排気用チューブ3を折り曲げるなどして閉塞して注入を続行し、所定の注入量もしくは所定の注入圧力に達したら注入を終了する。
【0026】
以上より、本実施形態によると、インサート構造体1は、長尺鋼管P内に無機系の地山改良材を注入するための注入用チューブ2と、長尺鋼管P内から空気を排気するための排気用チューブ3と、注入用チューブ2及び排気用チューブ3に固定され、長尺鋼管P内を長手方向に複数の注入区間R1~R4に仕切るためのパッカー4と、を備える。さらに、注入用チューブ2は、長尺鋼管P内に挿入したときに、その挿入先端が長尺鋼管Pの先端部まで達する長さLであり、注入用チューブ2には、注入区間R1~R4毎に開口する吐出孔7a~7dが長手方向に複数設けられており、注入区間R1~R4毎の吐出孔7a~7dの直径は、注入用チューブ2の挿入端側から末端側にかけて小さくなっている。そして、トンネル掘削時の先行地山補強に際し、トンネル未掘削地山Gに長尺鋼管Pを打設し、長尺鋼管P内にインサート構造体1を挿入して、注入用チューブ2の各吐出孔7a~7dからパッカー4で仕切られた各注入区間R1~R4に無機系の地山改良材を注入し、長尺鋼管Pの外周に設けられた吐出孔21を通じて地山改良材を周辺地山Gの亀裂に浸透させる。その結果、空隙の大きな地山Gであっても長尺鋼管Pの先端部まで無機系の地山改良材を充填でき、長尺鋼管Pの全長にわたって均一な改良体Aを形成することができる。特に地山改良材である無機系注入材の比重が大きい場合においても、鋼管Pの口元に注入材が滞留することがなく、鋼管Pの全長に渡る均一な改良が可能となり、改良効果を高めることができる。
【0027】
また、本実施形態では、1本の注入用チューブ2の複数の吐出孔7a~7dから各注入区間R1~R4に地山改良材を注入するため、小型の注入機で対応することができる。これに対して、複数の注入用チューブの各吐出孔から各注入区間に地山改良材を注入する形態では、大型の注入機を用いる必要がある。
【0028】
さらに、本実施形態では、吐出孔7a~7dは、注入区間R1~R4毎に1つずつ開口するように配置されている。これにより、各吐出孔7a~7dの直径を大きくでき、吐出孔7a~7dでの地山改良材の詰りを抑制できる。
【0029】
ここで、注入用チューブ2の吐出試験について説明する。本吐出試験では、実験例の注入用チューブ2として、吐出孔7aの直径が8mm、吐出孔7bの直径が7mm、吐出孔7cの直径が6mm、吐出孔7dの直径が5mmであるものを採用した。一方、比較例の注入用チューブ2として、全ての吐出孔7a~7dの直径が8mmであるものを採用した。そして、水平に対して3度傾斜した状態で注入用チューブ2に末端側から15リットル/分で水を送り、各吐出孔7a~7dからの吐出量を測定した。なお、注入チューブ2において、吐出孔7a、7bの間隔を2100mmとし、吐出孔7b、7cの間隔を3000mmとし、吐出孔7c、7dの間隔を3000mmとした。
【0030】
その結果、実験例の注入用チューブ2では、吐出孔7dからの吐出量が3.5kg、吐出孔7cからの吐出量が3.5kg、吐出孔7bからの吐出量が3.6kg、吐出孔7aからの吐出量が3.9kgであり、各吐出孔7a~7dからの吐出量がほぼ同一となった。なお、先端の吐出孔7aからの吐出量が若干多めとなっているが、これは先端部の改良長を3.5m、他の改良長を3.0mと設定したためである。
【0031】
これに対して、比較例の注入用チューブ2では、吐出孔7dからの吐出量が11kg、吐出孔7cからの吐出量が3kg、吐出孔7bからの吐出量が1kg、吐出孔7aからの吐出量が0kg(即ち吐出孔7aに水が到達しない)であった。
【0032】
尚、本発明においては、実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更することができる。すなわち、上記実施形態では、注入区間R1~R4毎に吐出孔7a~7dを1つずつ開口させる形態を例示したが、これに限定されず、複数の注入区間R1~R4のうちの少なくとも1つの注入区間において複数の吐出孔を開口させる形態を採用してもよい。
【0033】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明はトンネル掘削時の先行地山補強工の無機系の地山改良材の注入に関する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0035】
1;インサート構造体、2;注入用チューブ、3;排気用チューブ、4;パッカー、7a~7d;吐出孔、P;長尺鋼管、R1~R4;注入領域、L;注入用チューブの挿入長さ。