(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058907
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】移動体の状態監視装置、移動体の状態監視方法、及び移動体の状態監視プログラム
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20240422BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240422BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240422BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B61L25/02 Z
G08G1/00 D
B60L3/00 B
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166312
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】湯下 篤
(72)【発明者】
【氏名】林 利和
(72)【発明者】
【氏名】若狭 強志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幹人
(72)【発明者】
【氏名】池見 健
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
5H181
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125BA00
5H125EE02
5H125EE03
5H125EE06
5H125EE07
5H125EE51
5H125EE55
5H125EE57
5H125FF01
5H161AA01
5H161BB02
5H161BB20
5H161DD07
5H161DD21
5H161FF07
5H181AA01
5H181AA20
5H181AA25
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB17
5H181BB20
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF10
(57)【要約】
【課題】的確に移動体の移動経路や移動体の異常を検出することができる移動体の状態監視装置、移動体の状態監視方法、及び移動体の状態監視プログラムを提供すること。
【解決手段】本開示に係る移動体の状態監視装置は、磁気ギアドモータを含む移動体の移動経路、磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定する移動体の状態監視装置であって、磁気ギアドモータの低速ロータの位相角と、磁気ギアドモータの高速ロータの位相角とを取得する位相角取得部と、入力動力を基準として推定された低速ロータと高速ロータの位相差に対する位相角取得部が取得した低速ロータと高速ロータの位相差との差分の積分値を示す位相差積分値に基づいて移動体の移動経路、磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定する異常判定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ギアドモータを含む移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、前記移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定する移動体の状態監視装置であって、
前記磁気ギアドモータの低速ロータの位相角と、前記磁気ギアドモータの高速ロータの位相角とを取得する位相角取得部と、
入力動力を基準として推定された前記低速ロータと前記高速ロータの位相差に対する前記位相角取得部が取得した前記低速ロータと前記高速ロータの位相差との差分の積分値を示す位相差積分値に基づいて移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定する異常判定部と、を備える、
移動体の状態監視装置。
【請求項2】
軸受け温度、磁気ギアドモータの電流、磁気ギアドモータの電圧のうちの少なくとも一つを含む状態情報を取得する状態情報取得部と、
前記移動体の乗客数を取得する乗客数取得部と、
前記位相差積分値、前記状態情報、及び前記乗客数に基づいて、前記磁気ギアドモータの性能低下量を推定する性能推定部と、をさらに備える、
請求項1に記載の移動体の状態監視装置。
【請求項3】
前記軸受け温度、磁気ギアドモータの電流、磁気ギアドモータの電圧の情報から性能低下要因を推定する要因推定部と、をさらに備える、
請求項2に記載の移動体の状態監視装置。
【請求項4】
前記移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位相差積分値が異常と判定したときの前記位置情報に基づいて、移動体の移動経路の異常箇所を特定する異常箇所特定部と、をさらに備える、
請求項2に記載の移動体の状態監視装置。
【請求項5】
前記位相角取得部は、前記移動体に設けられる複数の磁気ギアドモータの低速ロータの位相角と、磁気ギアドモータの高速ロータの位相角を取得し、
前記異常判定部は、複数の磁気ギアドモータの前記位相差積分値に基づいて、前記移動体の異常部位を判定する、
請求項1に記載の移動体の状態監視装置。
【請求項6】
磁気ギアドモータを含む移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定する移動体の状態監視方法であって、
前記磁気ギアドモータの低速ロータの位相角と、高速ロータの位相角とを取得するステップと、
入力動力を基準として推定された前記低速ロータと前記高速ロータの位相差に対する前記取得するステップにおいて取得した前記低速ロータと前記高速ロータの位相差との差分の積分値を示す位相差積分値に基づいて移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定するステップと、を含む、
移動体の状態監視方法。
【請求項7】
磁気ギアドモータを含む移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定する移動体の状態監視プログラムであって、
前記磁気ギアドモータの低速ロータの位相角と、高速ロータの位相角とを取得するステップと、
入力動力を基準として推定された前記低速ロータと前記高速ロータの位相差に対する前記取得するステップにおいて取得した前記低速ロータと前記高速ロータのの位相差との差分の積分値を示す位相差積分値に基づいて移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定するステップと、
をコンピュータに実行させる移動体の状態監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体の状態監視装置、移動体の状態監視方法、及び移動体の状態監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
保守点検業務の効率化や、予見可能性を上げるために移動体の移動経路や移動体の状態を監視する技術が求められている。保守点検業務の効率化や、予見可能性を上げることができれば、異常が発生する前に保守サービスを提供することができる。例えば、鉄道車両が通る軌道や、鉄道車両の状態監視を行う技術が知られている。下記の特許文献1では、カメラの撮像データの画像処理に基づいた変位情報や加速度情報を用いて軌道の状態監視を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の鉄道車両の走行状態特定システムは、車輪速センサや画像処理装置などのセンサやシステムが必要であるが、同センサやシステムが故障した場合は状態監視ができなくなる。そのため、的確に移動体の移動経路や移動体の異常を検出することができる移動体の状態監視装置、移動体の状態監視方法、及び移動体の状態監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る移動体の状態監視装置は、磁気ギアドモータを含む移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、前記移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定する移動体の状態監視装置であって、前記磁気ギアドモータの低速ロータの位相角と、前記磁気ギアドモータの高速ロータの位相角とを取得する位相角取得部と、入力動力を基準として推定された前記低速ロータと前記高速ロータの位相差に対する前記位相角取得部が取得した前記低速ロータと前記高速ロータの位相差との差分の積分値を示す位相差積分値に基づいて移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定する異常判定部と、を備える。
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る移動体の状態監視方法は、磁気ギアドモータを含む移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定する移動体の状態監視方法であって、前記磁気ギアドモータの低速ロータの位相角と、高速ロータの位相角とを取得するステップと、入力動力を基準として推定された前記低速ロータと前記高速ロータの位相差に対する前記取得部が取得した前記低速ロータと前記高速ロータの位相差との差分の積分値を示す位相差積分値に基づいて移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定するステップと、を含む。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る移動体の状態監視プログラムは、磁気ギアドモータを含む移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定する移動体の状態監視プログラムであって、前記磁気ギアドモータの低速ロータの位相角と、高速ロータの位相角とを取得するステップと、入力動力を基準として推定された前記低速ロータと前記高速ロータの位相差に対する前記取得部が取得した前記低速ロータと前記高速ロータの位相差との差分の積分値を示す位相差積分値に基づいて移動体の移動経路、前記磁気ギアドモータ、移動体のうちの少なくとも一つの異常を判定するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、的確に移動体の移動経路や移動体の異常を検出することができる移動体の状態監視装置、移動体の状態監視方法、及び移動体の状態監視プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示に係る移動体の状態監視システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示に係る移動体の状態監視装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示に係る状態情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示に係る位相情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示に係る位置情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示に係る低速ロータ位相角の推測値と計測値の第一の例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示に係る低速ロータ位相角の推測値と計測値の第二の例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示に係る異常判定部の処理の一例を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、本開示に係る性能推定部の処理の一例を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、本開示に係る異常箇所特定部の処理の一例を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、本開示に係る移動体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0011】
(移動体の状態監視システムの構成)
図1は、本開示に係る移動体の状態監視システムの構成例を示す図である。
図1に示すように、本開示に係る移動体の状態監視システム1は、状態監視装置100と、移動体200と、ネットワークNを備える。
【0012】
状態監視装置100は、移動体200とネットワークNを介して接続され、移動体200の状態を監視する情報処理装置である。状態監視装置100は、例えば、移動体200を監視して、移動体200に対して指令を発する中央制御室に設けられる情報処理装置であってよい。
【0013】
移動体200は、磁気ギアドモータ240により駆動されて移動する。磁気ギアドモータ240の詳細については後述するが、磁気ギアドモータ240は、従来の機械式減速機による減速、及びトルク伝達を磁気力によるトルク伝達に置き換えたものである。移動体200は、例えば、鉄道車両、自動車、AGV(Automatic Guided Vehicle)、AGT(Automated Guideway Transit)、船舶、ロボットアクチュエータなどであってよい。なお、移動体200は、複数の磁気ギアドモータ240を備えてよい。
【0014】
ネットワークNは、有線、又は無線により状態監視装置100と移動体200を相互に通信可能に接続する。ネットワークNは、各種の専用の有線回線や、セキュリティ対策が施された無線通信により実現されてよい。
【0015】
このように本開示に係る移動体の状態監視システム1は、移動体200の状態を監視し、移動体の移動経路、又は移動体の異常を判定する。なお、
図1においては、状態監視装置100が移動体200とは別の装置として描かれているが、状態監視装置100と移動体200が一体として設けられてもよい。
【0016】
(状態監視装置の構成)
図2は、本開示に係る移動体の状態監視装置の構成例を示す図である。
図2に示すように、本開示に係る状態監視装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130と、を備える。
【0017】
通信部110は、状態監視装置100の内部と外部を相互に通信可能に接続し、状態監視装置100の内部と外部との間で相互に情報を送受信する。通信部110は、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線LAN(Local Area Network)カード、アンテナ等によって実現されてよい。
【0018】
記憶部120は、各種の情報を記憶する記憶装置である。記憶部120は、主記憶装置と補助記憶装置により実現されてよい。主記憶装置は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等のような半導体メモリ素子によって実現されてよい。また、補助記憶装置は、例えばハードディスクやSSD(Solid State Drive)等によって実現されてよい。
【0019】
図2に示すように、記憶部120は、状態情報記憶部121と、位相情報記憶部122と、位置情報記憶部123を備える。以下、これらの構成について順を追って説明する。
【0020】
(状態情報記憶部について)
状態情報記憶部121は、磁気ギアドモータ240の状態に関する情報を記憶する。ここで、
図3を用いて、状態情報記憶部121が記憶する情報の一例を説明する。
図3は、本開示に係る状態情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【0021】
図3に示す例において、状態情報記憶部121は、「磁気ギアドモータID」、「計測日時」、「軸受け温度」、「電圧」、「電流」という項目に係る情報を紐付けて記憶する。
【0022】
「磁気ギアドモータID」は、磁気ギアドモータ240を識別する識別子であり、文字列や番号などによって表される。「計測日時」は、軸受け温度や電圧、電流を計測した日時を示している。「軸受け温度」は、磁気ギアドモータ240に接続される軸受けの温度の計測値を示す。「電圧」は、磁気ギアドモータ240に供給される電力の電圧値を示す。「電流」は、磁気ギアドモータ240に供給される電力の電流値を示す。
【0023】
すなわち、
図3においては、磁気ギアドモータID「MGMID#1」により識別される磁気ギアドモータ240について、計測日時「TM#1-1」に計測された当該の磁気ギアドモータ240に接続される軸受けの軸受け温度が「BT#1-1」であり、磁気ギアドモータ240に供給される電力の電圧が「VL#1-1」であり、磁気ギアドモータ240に供給される電力の電流が「CR#1-1」であることが示されている。
【0024】
なお、状態情報記憶部121に記憶される情報は、「磁気ギアドモータID」、「計測日時」、「軸受け温度」、「電圧」、「電流」という項目に係る情報に限定されるものではなく、その他の任意の磁気ギアドモータ240の状態に関係する情報が記憶されてよい。
【0025】
(位相情報記憶部について)
位相情報記憶部122は、磁気ギアドモータ240の位相角に関する情報を記憶する。ここで、
図4を用いて、位相情報記憶部122が記憶する情報の一例を説明する。
図4は、本開示に係る位相情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【0026】
図4に示す例において、位相情報記憶部122は、「磁気ギアドモータID」、「計測日時」、「低速ロータ位相角」、「高速ロータ位相角」という項目に係る情報を紐付けて記憶する。
【0027】
「磁気ギアドモータID」は、磁気ギアドモータ240を識別する識別子であり、文字列や番号などによって表される。「計測日時」は、低速ロータの位相角や高速ロータの位相角を計測した日時を示している。「低速ロータ位相角」は、磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角を示す。「高速ロータ位相角」は、磁気ギアドモータ240の高速ロータの位相角を示す。
【0028】
すなわち、
図4においては、磁気ギアドモータID「MGMID#1」により識別される磁気ギアドモータ240について、計測日時「TM#1-1」に計測された低速ロータの位相角が「PPRPA#1-1」であり、高速ロータの位相角が「HSRPA#1-1」であることが示されている。
【0029】
なお、位相情報記憶部122に記憶される情報は、「磁気ギアドモータID」、「計測日時」、「低速ロータ位相角」、「高速ロータ位相角」という項目に係る情報に限定されるものではなく、その他の任意の磁気ギアドモータ240の位相角に関係する情報が記憶されてよい。
【0030】
(位置情報記憶部について)
位置情報記憶部123は、移動体200の位置に関する情報を記憶する。ここで、
図5を用いて、位置情報記憶部123が記憶する情報の一例を説明する。
図5は、本開示に係る位置情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【0031】
図5に示す例において、位置情報記憶部123は、「移動体ID」、「計測日時」、「位置情報」という項目に係る情報を紐付けて記憶する。
【0032】
「移動体ID」は、移動体200を識別する識別子であり、文字列や番号などによって表される。「計測日時」は、位置情報を計測した日時を示している。「位置情報」は、移動体200の位置情報、すなわち、緯度、及び経度を示す。
【0033】
すなわち、
図5においては、移動体ID「ID#1」により識別される移動体200について、計測日時「TM#1-1」に計測された位置情報が「LC#1」であることが示されている。
【0034】
なお、位置情報記憶部123に記憶される情報は、「移動体ID」、「計測日時」、「位置情報」という項目に係る情報に限定されるものではなく、その他の任意の移動体200の位置情報に関係する情報が記憶されてよい。
【0035】
(制御部について)
次に、
図2に戻って、制御部130について説明する。制御部130は、状態監視装置100を司り、制御するコントローラ(Controller)である。制御部130は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって、記憶部120に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等の集積回路により実現されてもよい。
【0036】
図2に示すように、制御部130は、位相角取得部131と、異常判定部132と、状態情報取得部133と、乗客数取得部134と、性能推定部135と、要因推定部136と、位置情報取得部137と、異常箇所特定部138と、を備える。制御部130は、記憶部120からプログラムを読み出して実行することで、これらの構成を実現して、これらの処理を実行する。なお、制御部130は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、複数のCPUで、これらの処理を並列に実行してもよい。以下、これらの構成について順に説明する。
【0037】
位相角取得部131は、磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角と、磁気ギアドモータ240の高速ロータの位相角とを取得する。すなわち、位相角取得部131は、通信部110を介して、ネットワークNに接続された移動体200の磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角の計測値と、高速ロータの位相角の計測値を取得する。位相角取得部131は、低速ロータの位相角の計測値と、高速ロータの位相角の計測値を取得したら、取得した低速ロータの位相角の計測値と、高速ロータの位相角の計測値の情報を、位相情報記憶部122に記憶する。なお、位相角取得部131は、磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角と、磁気ギアドモータ240の高速ロータの位相角とを取得したら、低速ロータと高速ロータの位相差を算出して、算出した位相差を位相情報記憶部122に記憶してもよい。
【0038】
位相角取得部131は、移動体200に設けられる複数の磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角と、磁気ギアドモータ240の高速ロータの位相角を取得する。すなわち、位相角取得部131は、移動体200が複数の磁気ギアドモータ240を備える場合、複数の磁気ギアドモータ240ごとに低速ロータの位相角と、高速ロータの位相角を取得する。位相角取得部131は、磁気ギアドモータ240ごとに低速ロータの位相角の計測値と、高速ロータの位相角の計測値を取得したら、取得した低速ロータの位相角の計測値と、高速ロータの位相角の計測値の情報を、取得元の磁気ギアドモータ240の識別子に紐付けて位相情報記憶部122に記憶する。なお、位相角取得部131は、複数の磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角と、磁気ギアドモータ240の高速ロータの位相角とを取得したら、磁気ギアドモータ240ごとに低速ロータと高速ロータの位相差を算出して、算出した位相差を位相情報記憶部122に記憶してもよい。
【0039】
異常判定部132は、入力トルクを基準として推定された低速ロータと高速ロータの位相差に対する位相角取得部131が取得した低速ロータの位相角と高速ロータの位相角の差との差分の積分値を示す位相差積分値に基づいて移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定する。すなわち、まず、異常判定部132は、移動体200の作動制御部232から入力トルクを取得する。そして、異常判定部132は、入力トルクと低速ロータと高速ロータの位相差の関係に関するデータ、ないし数式モデルを用いて、入力トルクから低速ロータと高速ロータの位相差を求める。そして、異常判定部132は、位相角取得部131が取得した低速ロータの位相角と高速ロータの位相角の差を求める。そして、異常判定部132は、入力トルクを基準として推定された低速ロータと高速ロータの位相差に対する位相角取得部131が取得した低速ロータの位相角と高速ロータの位相角の差との差分(以下、これを位相差と呼ぶ)を時間ごとに求める。そして、異常判定部132は、前述の位相差の時間積分値(以下、これを位相差積分値と呼ぶ)を求める。そして、異常判定部132は、移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定する。異常判定部132は、例えば、位相差積分値と、移動体200の移動経路の異常や、磁気ギアドモータ240の異常、移動体200の異常との関係を学習した学習済みモデルを用いて、移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定してよい。この場合の学習用のモデルには、例えば、ニューラルネットワークなどを用いてよい。
【0040】
なお、低速ロータの位相角の推測値と、低速ロータの位相角の計測値の例を、
図6を用いて説明する。
図6は、本開示に係る低速ロータ位相角の推測値と計測値の第一の例を示す図である。
図6に示されるグラフの横軸は、時間を示している。
図6に示されるグラフの縦軸は、低速ロータ位相角を示している。
図6に示すように、低速ロータ位相角の計測値と推測値の差が所定の値以下である場合は、位相差無しとしてよく、それから導かれる結論として異常判定部132は、移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200の異常無しとしてよい。
【0041】
図7は、本開示に係る低速ロータ位相角の推測値と計測値の第二の例を示す図である。
図7に示されるグラフの横軸は、時間を示している。
図7に示されるグラフの縦軸は、低速ロータ位相角を示している。
図7に示すように、低速ロータ位相角の計測値と推測値の差が所定の値以上に拡大した場合は、位相差ありとしてよく、それから導かれる結論として異常判定部132は、移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つを異常有りとしてよい。
【0042】
異常判定部132は、複数の磁気ギアドモータ240の位相差積分値に基づいて、移動体200の異常部位を判定してもよい。この場合の異常判定部132の処理を、
図8を用いて説明する。
図8は、本開示に係る異常判定部の処理を模式的に示す図である。
図8には、移動体200の一例として鉄道車両CA,CB,CCが描かれており、鉄道車両CA,CB,CCの車輪WHAA、WHAB、WHBA、WHBB、WHCA、WHCBを駆動する磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角の推測値と計測値のグラフGA1,GB1,GC1が示されている。
図8のグラフGB1に示すように、低速ロータの位相角の推測値と計測値の差が大きい場合は、磁気ギアドモータ240に異常が発生している可能性が高い。そのため、このような場合、異常判定部132は、複数の磁気ギアドモータ240のうち、低速ロータの位相角の推測値と計測値の差が大きい車輪WHBAに設けられる磁気ギアドモータ240を異常と判定する。
【0043】
状態情報取得部133は、軸受け温度、磁気ギアドモータ240の電流、磁気ギアドモータ240の電圧のうちの少なくとも一つを含む状態情報を取得する。すなわち、状態情報取得部133は、通信部110を介して、移動体200が備える記憶部220から状態情報を取得する。状態情報取得部133は、移動体200が備える記憶部220から状態情報を取得したら、取得した状態情報を、取得元の移動体200の識別子に紐付けて状態情報記憶部121に記憶する。
【0044】
乗客数取得部134は、移動体200の乗客数に関する情報を取得する。すなわち、乗客数取得部134は、移動体200が備える乗客数計測器(例えば、カメラの撮像データを用いた画像認識技術による人数計測)が計測した乗客数に関する情報を、通信部110を介して、ネットワークNを経由して取得する。乗客数取得部134は、移動体200が備える乗客数計測器が計測した乗客数に関する情報を取得したら、取得した乗客数に関する情報を、取得元の移動体200の識別子に紐付けて記憶部120に記憶する。
【0045】
性能推定部135は、位相差積分値、状態情報、及び乗客数に基づいて、磁気ギアドモータ240の性能低下量を推定する。例えば、性能推定部135は、位相差積分値、状態情報、及び乗客数と、磁気ギアドモータ240の性能との関係を学習した学習済みモデルを用いて、位相差積分値、状態情報、及び乗客数に基づいて、磁気ギアドモータ240の性能低下量を推定してよい。この場合の、学習用のモデルには、例えば、ニューラルネットワークや、重回帰モデル、サポートベクターマシーンなどを用いてよい。
【0046】
図9は、本開示に係る性能推定部の処理を模式的に示す図である。
図9に示すように、性能推定部135は、位相差積分値、状態情報、及び乗客数に基づいて、磁気ギアドモータ240の性能低下量を推定する。
図9に示すように、所定の時間間隔ごとに位相差積分値、状態情報、及び乗客数をモデルに入力して、性能低下量を推定することにより、時間経過による磁気ギアドモータ240の性能の推移をグラフとして出力してもよい。
【0047】
要因推定部136は、軸受け温度、磁気ギアドモータ240の電流、磁気ギアドモータ240の電圧の情報から性能低下要因を推定する。例えば、性能推定部135が推定した軸受け温度による性能低下量、磁気ギアドモータ240の電流による性能低下量、磁気ギアドモータ240の電圧に性能低下量を比較し、最も性能低下量が大きいパラメータを特定する。そして、要因推定部136は、最も性能低下量が大きいパラメータが軸受け温度であった場合は、例えば、軸受け抵抗増が性能低下要因と推定する。また、要因推定部136は、最も性能低下量が大きいパラメータが磁気ギアドモータ240の電流であった場合は、コイル巻き線の部分短絡と推定する。また、要因推定部136は、最も性能低下量が大きいパラメータが磁気ギアドモータ240の電圧であった場合は、永久磁石の磁力低下と推定する。なお、要因推定部136は、軸受け温度、磁気ギアドモータ240の電流、及び磁気ギアドモータ240の電圧と、磁気ギアドモータ240の性能低下要因との関係を学習した学習済みモデルによって性能低下要因を推定してもよい。すなわち、磁気ギアドモータ240の運転データを蓄積して、磁気ギアドモータ240の性能低下要因ごとのラベルと、軸受け温度、磁気ギアドモータ240の電流、及び磁気ギアドモータ240の電圧との関係を学習させることによって、学習済みモデルを生成してよい。
【0048】
位置情報取得部137は、移動体200の位置情報を取得する。すなわち、位置情報取得部137は、通信部110を介して、移動体200が備えるGNSS受信部250が計測した位置情報を取得する。位置情報取得部137は、移動体200が備えるGNSS受信部250が計測した位置情報を取得したら、取得した位置情報を、取得元の移動体200の識別子に紐付けて位置情報記憶部123に記憶する。
【0049】
異常箇所特定部138は、位相差積分値が異常と判定したときの位置情報に基づいて、移動体200の移動経路の異常箇所を特定する。異常箇所特定部138の処理について、
図10を用いて説明する。
図10は、本開示に係る異常箇所特定部の処理を模式的に示す図である。
【0050】
図10には、移動体200の一例として鉄道車両の車輪WH、及び移動体200の移動経路の一例として、鉄道車両の軌道TJが描かれている。また、
図10には、軌道TJを鉄道車両のGNSS受信部250を備えた車輪WHが通過する様子が描かれている。そして、鉄道車両の車輪WHが軌道TJの位置LCA,LCB、LCCを通過する際の低速ロータの位相角の推測値と計測値の時間推移のグラフが、それぞれグラフGA2,GB2,GC2として描かれている。すなわち、鉄道車両の車輪WHは、軌道TJを位置LCC,LCB,LCAの順に通過した際に、位置LCBを通過した際の低速ロータの位相角の推測値と計測値の差が大きいことが分かる。このような場合、異常判定部132は、低速ロータの位相角の推測値と計測値との差が大きい時の位置情報を照合して、軌道TJの位置LCBを異常箇所として特定する。
【0051】
(移動体の構成)
次に、
図6を用いて移動体200の構成について説明する。
図6に示すように、移動体200は、通信部210と、記憶部220と、制御部230と、磁気ギアドモータ240と、GNSS受信部250を備える。
【0052】
通信部210は、ネットワークNと有線又は無線で接続され、ネットワークNを介して、状態監視装置100との間で各種の情報の送受信を行う。通信部210は、例えば、NIC等によって実現される。
【0053】
記憶部220は、各種の情報を記憶する記憶装置である。記憶部120は、主記憶装置と補助記憶装置により実現されてよい。主記憶装置は、例えばRAM、ROM、フラッシュメモリ等のような半導体メモリ素子によって実現されてよい。また、補助記憶装置は、例えばハードディスクやSSD等によって実現されてよい。
【0054】
制御部230は、移動体200を司り、制御するコントローラである。制御部230は、CPUやMPU等によって、記憶部220に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部230は、例えばASICやFPGA等の集積回路により実現されてもよい。
【0055】
図6に示すように、制御部230は、検出部231と、作動制御部232を備える。制御部230は、記憶部220からプログラムを読み出して実行することで、これらの構成を実現して、これらの処理を実行する。なお、制御部230は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、複数のCPUで、これらの処理を並列に実行してもよい。以下、これらの構成について順に説明する。
【0056】
検出部231は、磁気ギアドモータ240の状態に関する情報を検出する。例えば、検出部231は、磁気ギアドモータ240に接続される軸受けの軸受け温度、磁気ギアドモータ240の電流、磁気ギアドモータ240の電圧のうちの少なくとも一つを含む状態情報を検出する。軸受けの軸受け温度は、熱電対により計測されてよい。また、磁気ギアドモータ240の電流は、インバータに流入する電流を例えば、シャント抵抗により計測することにより計測されてよい。また、磁気ギアドモータ240の電圧は、インバータの流入前後の電圧を電圧計により計測することにより計測されてよい。検出部231は、軸受けの軸受け温度、磁気ギアドモータ240の電流、磁気ギアドモータ240の電圧を検出したら、これらの情報を記憶部220に記憶する。
【0057】
作動制御部232は、磁気ギアドモータ240の作動を制御する。磁気ギアドモータ240の作動制御の方式は、例えば、ベクトル制御により実現されてよい。ベクトル制御は、回転速度指令が与えられると、計測した回転速度との差分に基づいてトルク電流指令を生成する。各相電流から3相2相変換を行った後に、ロータ回転角を用いて回転座標変換を行うことで、トルク電流と励磁電流を計算する。トルク電流指令とトルク電流の差分に対してPI(Proportional-Integral)制御演算を行い、電圧指令を生成する。励磁電流についても同様に処理して電圧指令を生成する。生成された電圧指令に対して、ロータ回転角を用いて固定座標変換した後に、空間ベクトル変換を行うことで、各相電圧に変換する。この各相電圧から各相デューティ比を決定する。各相デューティ比と搬送波とのレベルを比較することで、制御信号を生成し、制御信号を駆動回路に出力する。
【0058】
磁気ギアドモータ240は、減速機(歯車機構)と、モータが一体化している。磁気ギアドモータ240は、低速ロータと、高速ロータと、ステータを備える。ステータは、コイルを備えて、起磁力により高速ロータを回転させる。高速ロータは、例えば、円柱形状のロータの外周に永久磁石を備える。なお、永久磁石は、高速ロータの外周に複数の極対が形成されるように並べられてよい。低速ロータは、電磁鋼板などの磁性体により形成される。低速ロータは、高速ロータの外周を覆うように設けられ、例えば、内周側から外周側に向かって伸びる角柱が円周状に並べて形成される。
【0059】
磁気ギアドモータ240は、ステータが備えるコイルに電力を印加することにより、生じる起磁力により、高速ロータを回転させる。高速ロータが回転することにより、低速ロータが減速比にしたがって回転する。磁気ギアドモータ240は、機械式減速機を用いることなく、減速された出力を得ることができることから、機械式減速機を構成する歯車などへの潤滑油の供給が不要となる。また、機械式減速機を構成する歯車に対する歯当たり調整が不要となる。また、磁気ギアドモータ240は、機械式減速機を用いないことから、機械式減速機を構成する歯車の波面の摩耗・疲労が発生しないなどの多くのメリットが存在する。
【0060】
また、磁気ギアドモータ240は、ロータ位置計測器を備えて低速ロータ、及び高速ロータの位相角を検出する。ロータ位置計測器は、例えば、ホールセンサであってよい。ホールセンサは、ホール素子とオペアンプを一つの素子として纏めた集積回路である。ホール素子は、半導体によって形成された磁気反応薄膜固体である。ホール素子に電流を流した状態で、電流に対して直角に磁束が近づくと、ローレンツ力の影響により電流と磁束の直角の方向にホール電圧が発生する。このため、ホールセンサはこの電圧を出力する。なお、ホール素子のホール電圧の出力は小さい為、オペアンプによって増幅する。ロータ位置計測器は、ホール電圧から低速ロータ、及び高速ロータの位相角を検出する。
【0061】
ロータ位置計測器は、レゾルバであってもよい。レゾルバは、トランスの原理を利用した回転角検出器である。レゾルバは、一次コイルを備えたステータと、ロータ位置計測対象と一体に回転し、二次コイルを備えるロータを備える。レゾルバは、ロータ位置計測対象と一体に回転するロータの回転に伴う、ステータの一次コイルのリアクタンス変化により発生する電気信号の変化を用いて、ロータの位相角を検出する。レゾルバは、高い耐環境性を備え、高精度に低速ロータ、及び高速ロータの位相角を検出することが可能である。
【0062】
GNSS受信部250は、位置情報を計測する。GNSS受信部150は、GNSS受信機を備え、GPS(Global Positioning System)衛星、欧州のGalileo衛星、ロシアのGLONASS(Global Navigation Satellite System)衛星、中国のBeiDou衛星などから送信される電波を受信する。GNSS受信機は、これらの複数のGPS衛星などから送信される電波を受信し、電波を受信した時刻と、GPS衛星などが電波を発信した時刻との差を用いて、GPS衛星などからGNSS受信機までの距離を算出することによって、位置情報(例えば、緯度、及び経度)を計測する。
【0063】
(構成と効果)
本開示に係る移動体200の状態監視装置100の第1の態様は、磁気ギアドモータ240を含む移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定する移動体200の状態監視装置100であって、磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角と、磁気ギアドモータ240の高速ロータの位相角とを取得する位相角取得部131と、入力動力を基準として推定された低速ロータと高速ロータの位相差に対する位相角取得部131が取得した低速ロータの位相角と高速ロータの位相角の差との差分の積分値を示す位相差積分値に基づいて移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定する異常判定部132と、を備える。
【0064】
この構成によれば、磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角と、高速ロータの位相角の推測値と、計測値との差分の積分値に基づいて、移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定することができる。そのため、的確に移動体200の移動経路や、移動体200の異常を検出することができる移動体200の状態監視装置100を提供することができる。
【0065】
本開示に係る移動体200の状態監視装置100の第2の態様は、第1の態様の状態監視装置において、軸受け温度、磁気ギアドモータ240の電流、磁気ギアドモータ240の電圧のうちの少なくとも一つを含む状態情報を検出する状態情報取得部133と、移動体200の乗客数に関する情報を取得する乗客数取得部134と、位相差積分値、状態情報、及び乗客数に基づいて、磁気ギアドモータ240の性能低下量を推定する性能推定部135と、をさらに備える。
【0066】
この構成によれば、位相差積分値、状態情報、及び乗客数に基づいて、磁気ギアドモータ240の性能低下量を推定することができる。そのため、磁気ギアドモータ240に格段の性能低下が生じる異常が発生する前に、磁気ギアドモータ240の保守点検を実施することが可能となる。
【0067】
本開示に係る移動体200の状態監視装置100の第3の態様は、第1の態様または第2の態様の状態監視装置において、軸受け温度、磁気ギアドモータ240の電流、磁気ギアドモータ240の電圧の情報から性能低下要因を推定する要因推定部136と、をさらに備える。
【0068】
この構成によれば、軸受け温度、磁気ギアドモータ240の電流、磁気ギアドモータ240の電圧の情報から性能低下要因を推定することができる。そのため、磁気ギアドモータ240の保守点検業務において、重点的に点検するべき部位を特定したうえで、保守点検業務を行うことができることから、磁気ギアドモータ240の保守点検業務を効率化することができる。
【0069】
本開示に係る移動体200の状態監視装置100の第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれかの状態監視装置において、移動体200の位置情報を取得する位置情報取得部137と、位相差積分値が異常と判定したときの位置情報に基づいて、移動体200の移動経路の異常箇所を特定する異常箇所特定部138と、をさらに備える。
【0070】
この構成によれば、位相差積分値が異常と判定したときの位置情報に基づいて、移動体200の移動経路の異常箇所を特定することができる。そのため、移動体200の移動経路の保守点検業務において、重点的に点検するべき箇所を特定したうえで、保守点検業務を行うことができることから、移動体200の移動経路の保守点検業務を効率化することが可能となる。
【0071】
本開示に係る移動体200の状態監視装置100の第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれかの状態監視装置において、位相角取得部131は、移動体200に設けられる複数の磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角と、磁気ギアドモータ240の高速ロータの位相角を取得し、異常判定部132は、複数の磁気ギアドモータ240の位相差積分値に基づいて、移動体200の異常部位を判定する。
【0072】
この構成によれば、複数の磁気ギアドモータ240のうち、位相差積分値が異常と判定された磁気ギアドモータ240を特定することにより、移動体200の異常部位を特定することができる。そのため、移動体200の保守点検業務において、重点的に点検するべき部位を特定したうえで、保守点検業務を行うことができることから、移動体200の保守点検業務を効率化することができる。
【0073】
本開示に係る移動体200の状態監視方法は、磁気ギアドモータ240を含む移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定する移動体200の状態監視方法であって、磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角と、高速ロータの位相角とを取得するステップと、入力動力を基準として推定された低速ロータと高速ロータの位相差に対する取得するステップにおいて取得した低速ロータの位相角と高速ロータの位相角の差との差分の積分値を示す位相差積分値に基づいて移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定するステップと、を含む。
【0074】
この構成によれば、磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角と、高速ロータの位相角の推測値と、計測値との差分の積分値に基づいて、移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定することができる。そのため、的確に移動体200の移動経路や、移動体200の異常を検出することができる移動体200の状態監視方法を提供することができる。
【0075】
本開示に係る移動体200の状態監視プログラムは、磁気ギアドモータ240を含む移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定する移動体200の状態監視プログラムであって、磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角と、高速ロータの位相角とを取得するステップと、入力動力を基準として推定された低速ロータと高速ロータの位相差に対する取得するステップにおいて取得した低速ロータの位相角と高速ロータの位相角の差との差分の積分値を示す位相差積分値に基づいて移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0076】
この構成によれば、磁気ギアドモータ240の低速ロータの位相角と、高速ロータの位相角の推測値と、計測値との差分の積分値に基づいて、移動体200の移動経路、磁気ギアドモータ240、移動体200のうちの少なくとも一つの異常を判定することができる。そのため、的確に移動体200の移動経路や、移動体200の異常を検出することができる移動体200の状態監視プログラムを提供することができる。
【0077】
以上、本開示に係る実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
1 状態監視システム
100 状態監視装置
110 通信部
120 記憶部
130 制御部
131 位相角取得部
132 異常判定部
133 状態情報取得部
134 乗客数取得部
135 性能推定部
136 要因推定部
137 位置情報取得部
138 異常箇所特定部
200 移動体
210 通信部
220 記憶部
230 制御部
231 検出部
232 作動制御部
240 磁気ギアドモータ
250 GNSS受信部
N ネットワーク