(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005893
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】船舶推進装置、及び船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 5/14 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B63H5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106332
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】川淵 信
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓慶
(72)【発明者】
【氏名】岩切 水樹
(57)【要約】
【課題】推進性能を向上させることができる船舶推進装置、及び船舶を提供する。
【解決手段】船舶推進装置は、船体の船底に設けられ、船体の前後方向に交差する幅方向に並ぶ複数のダクトと、ダクトのそれぞれの内部に回転可能に配置され、ダクト内に前後方向の流れを発生させるプロペラと、ダクト間の前側及び後側の少なくとも一方に設けられ、互いに隣り合うダクトの内面とそれぞれ連続するとともにダクトから前後方向に突出する一対の案内面を有するフェアリング材と、を備え、フェアリング材の幅方向の寸法は、ダクトから前後方向に離間するにしたがって小さくなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の船底に設けられ、前記船体の前後方向に交差する幅方向に並ぶ複数のダクトと、
前記ダクトのそれぞれの内部に回転可能に配置され、前記ダクト内に前記前後方向の流れを発生させるプロペラと、
前記ダクト間の前側及び後側の少なくとも一方に設けられ、互いに隣り合う前記ダクトの内面とそれぞれ連続するとともに前記ダクトから前記前後方向に突出する一対の案内面を有するフェアリング材と、
を備え、
前記フェアリング材の前記幅方向の寸法は、前記ダクトから前記前後方向に離間するにしたがって小さくなる、
船舶推進装置。
【請求項2】
前記フェアリング材は、前記ダクト間の前側及び後側の両方に設けられている、
請求項1に記載の船舶推進装置。
【請求項3】
前記案内面は、前記ダクトの内面と滑らかに接続されている、
請求項1又は2に記載の船舶推進装置。
【請求項4】
前記案内面の曲率は、前記ダクトの内面の曲率と等しい、
請求項3に記載の船舶推進装置。
【請求項5】
前記ダクトの外面の下面は、前記前後方向の中間部で下方に張り出すように湾曲しながら前記前後方向に延びており、
前記フェアリング材の下面は、前記ダクトの外面の下面に滑らかに接続されている、
請求項1又は2に記載の船舶推進装置。
【請求項6】
前記フェアリング材の前記前後方向の寸法は、上下方向に変化し、前記ダクト間の隙間の前記幅方向の寸法が大きいほど大きくなる、
請求項1又は2に記載の船舶推進装置。
【請求項7】
前記フェアリング材は、大きさの異なる前記ダクト間に設けられている、
請求項1又は2に記載の船舶推進装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の船舶推進装置と、
前記船体と、
を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶推進装置、及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の翼を備えたロータ(プロペラ)を有する船舶推進装置が開示されている。プロペラは、ノズル(ダクト)内に回転可能に配置されている。このプロペラは、航行時に船尾側の船底で発生する境界層の流れを回収することで、推進性能を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダクト内にプロペラが配置される船舶推進装置を船尾側に複数並べて配置すると、ダクト間に隙間が生じる場合がある。ダクト間の隙間に流れが流入すると、抵抗が増大して推進性能が低下する。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、推進性能を向上させることができる船舶推進装置、及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶推進装置は、船体の船底に設けられ、前記船体の前後方向に交差する幅方向に並ぶ複数のダクトと、前記ダクトのそれぞれの内部に回転可能に配置され、前記ダクト内に前記前後方向の流れを発生させるプロペラと、前記ダクト間の前側及び後側の少なくとも一方に設けられ、互いに隣り合う前記ダクトの内面とそれぞれ連続するとともに前記ダクトから前記前後方向に突出する一対の案内面を有するフェアリング材と、を備え、前記フェアリング材の前記幅方向の寸法は、前記ダクトから前記前後方向に離間するにしたがって小さくなる。
【0007】
本開示に係る船舶は、上記の船舶推進装置と、前記船体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の船舶推進装置、及び船舶によれば、推進性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る船舶を幅方向から見た模式図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係る船舶推進装置を後側から見た模式図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係るダクト及びフェアリング材を幅方向から見た模式図である。
【
図4】本開示の第一実施形態に係る、隣り合う2つのダクト及びこれらのダクト間に設けられたフェアリング材を下側から見た模式図である。
【
図5】本開示の第一実施形態の変形例に係る、隣り合う2つのダクト及びこれらのダクト間に設けられたフェアリング材を下側から見た模式図である。
【
図6】本開示の第二実施形態に係るダクト及びフェアリング材を幅方向から見た模式図である。
【
図7】本開示の第二実施形態に係る、隣り合う2つのダクト及びこれらのダクト間に設けられたフェアリング材を下側から見た模式図である。
【
図8】本開示の第三実施形態に係るダクト及びフェアリング材を後側から見た模式図である。
【
図9】本開示の第三実施形態に係るダクト及びフェアリング材を幅方向から見た模式図である。
【
図10】本開示の第三実施形態に係る、隣り合う2つのダクト及びこれらのダクト間に設けられたフェアリング材を下側から見た模式図である。
【
図11】本開示の第四実施形態に係るダクト及びフェアリング材を後側から見た模式図である。
【
図12】本開示の第四実施形態に係る、隣り合う2つのダクト及びこれらのダクト間に設けられたフェアリング材を下側から見た模式図である。
【
図13】本開示の第四実施形態の第一変形例に係る、隣り合う2つのダクト及びこれらのダクト間に設けられたフェアリング材を下側から見た模式図である。
【
図14】本開示の第四実施形態の第二変形例に係る、隣り合う2つのダクト及びこれらのダクト間に設けられたフェアリング材を下側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
(船舶)
以下、本開示の第一実施形態に係る船舶1、及び船舶推進装置10について、
図1から
図4を参照して説明する。
図1に示すように、船舶1は、船体2と、船舶推進装置10と、を備える。
【0011】
(船体)
船体2は、水上に浮かぶように箱型に形成された構造体である。船体2は、水平面に沿う一方向に延びている。船体2は、船首3と、船尾4と、船底5と、を有する。船首3は、船体2の長手方向一方側の部分である。船尾4は、船体2の長手方向の他方側の部分である。
【0012】
以下では、船舶1の長手方向を、船舶1の前後方向D、又は単に「前後方向D」と称して説明する場合がある。また、前後方向Dのうち、船首3側を「前側Df」と称し、船尾4側を「後側Da」と称して説明する場合がある。また、水平方向のうち前後方向Dに交差する方向を、船体2の幅方向W、又は単に「幅方向W」と称して説明する場合がある。また、水平面に交差する鉛直上下方向を、単に「上下方向」と称して説明する場合がある。
【0013】
船底5は、船体2の下側の底部を構成している。船底5は、前後方向Dに延びて船首3と船尾4とを接続している。船底5の後側Daには、センタースケグ6が設けられている。センタースケグ6は、船底5の幅方向W中央(センターライン上)に配置されている。センタースケグ6は、前後方向Dに延びている。
【0014】
(船舶推進装置)
船舶推進装置10は、船底5の後側Daの下面に設置されている。
図2に示すように、船舶推進装置10が設置される船底5の下面は、水平面に沿っている。船舶推進装置10は、センタースケグ6を挟んで幅方向W両側に1つずつ設けられている。この2つの船舶推進装置10は、センタースケグ6を挟んで対称に設けられている。船舶推進装置10は、航行時に船尾4側の船底5で発生する境界層X内に位置するように設置される。船舶推進装置10は、ダクト20と、プロペラ30と、接続材40(
図4参照)と、フェアリング材50と、を備える。
【0015】
(ダクト)
ダクト20は、船体2の船底5に設けられている。ダクト20は、幅方向Wに複数並んでいる。本実施形態では、幅方向Wに並ぶ複数のダクト20は、全て前後方向Dで同じ位置に配置されている。また、1つの船舶推進装置10につき、ダクト20は、4つ設けられている。4つのダクト20は、全て同一形状に形成されている。なお、ここでいう同一形状とは、厳密に同一な形状だけでなく、寸法誤差がある形状も含むものとする。
【0016】
図3に示すように、ダクト20は、前後方向Dに延びる筒状に形成されている。本実施形態では、ダクト20は、前後方向D両側に開口する四角形筒状に形成されている。ダクト20内には、前側Dfから後側Daに向けて境界層Xの流れFが流入する。以下では、流れFが流入するダクト20の前側Dfの開口を入口21と称し、流れFが流出するダクト20の後側Daの開口を出口22と称して説明する場合がある。ダクト20の材質は、ステンレスである。
ダクト20のそれぞれの内部には、プロペラ30が配置されている。
【0017】
(プロペラ)
プロペラ30は、ダクト20内で回転可能に配置されている。プロペラ30は、ダクト20内に前後方向Dの流れを発生させる。これにより、プロペラ30は、前後方向Dの推進力を船舶1に発生させる。これにより、船舶1は前側Dfに向けて航行を開始する。プロペラ30は、プロペラ軸31と、プロペラ翼32と、を有する。プロペラ軸31は、前後方向Dに延びている。
【0018】
プロペラ軸31の前端は曲面状に形成されている。プロペラ軸31の後端は、プロペラ軸31の前端よりも前後方向Dに長く形成されている。プロペラ軸31の外周面には、軸受(不図示)が設けられている。このプロペラ軸31の軸受に、リング状に形成されたリム(不図示)を介してプロペラ翼32が取り付けられている。このリムは、船底5に設けられた不図示の駆動源に接続されている。リムは、駆動源から伝達された駆動力によって前後方向D回りに回転する。
【0019】
プロペラ翼32は、プロペラ軸31の前後方向D中間部に設けられている。プロペラ翼32は、プロペラ軸31の周方向に等間隔に並んで複数設けられている。プロペラ翼32は、リムの回転駆動によってプロペラ軸31回りに回転する(外周駆動)。これにより、ダクト20内に前後方向Dの流れが発生する。
なお、プロペラ軸31が駆動源に接続され、プロペラ翼32の端部がプロペラ軸31に固定されていてもよい。この場合、プロペラ軸31が駆動源からの駆動力によって回転し、プロペラ翼32もプロペラ軸31と一体に回転する(中心軸駆動)。
【0020】
(接続材)
図4に示すように、接続材40は、ダクト20間の隙間に設けられている。接続材40は、幅方向Wに並ぶ複数のダクト20同士を接続している。接続材40の下面41は、ダクト20間の隙間を下方から閉塞している。接続材40の下面41は、ダクト20の外面24の下面25と面一で、滑らかに接続されている。接続材40の材質は、ダクト20と同様のステンレスである。接続材40は、溶接によって接合されている。本実施形態では、接続材40の内部は、空洞となっている。接続材40内の空洞には、複数のフレームによって形成された、不図示の構造体が設けられている。接続材40の前側Df及び後側Daには、フェアリング材50が設けられている。
【0021】
(フェアリング材)
フェアリング材50は、ダクト20間の前側Df及び後側Daの両方に設けられている。フェアリング材50は、ダクト20間の全ての隙間に設けられている。フェアリング材50は、ダクト20間の隙間を前後方向Dから閉塞するように設けられている。フェアリング材50は、上下方向から見て、先細り形状に形成されている。具体的には、フェアリング材50の幅方向Wの寸法は、ダクト20から前後方向Dに離間するにしたがって小さくなっている。フェアリング材50の内部は、空洞となっている。フェアリング材50の下面52は、接続材40の下面41を介して、ダクト20の外面24の下面25と滑らかに接続されている。より具体的には、フェアリング材50の下面52は、ダクト20の外面24の下面25と面一となっている。フェアリング材50は、互いに隣り合うダクト20の内面23とそれぞれ連続する一対の案内面51を有する。案内面51は、ダクト20の内面23と滑らかに接続されている。一対の案内面51は、ダクト20から前後方向Dに突出している。すなわち、一対の案内面51は、幅方向Wに対向するように設けられている。フェアリング材50の材質は、ダクト20と同様のステンレスである。フェアリング材50は、ダクト20及び接続材40と溶接によって接合されている。
【0022】
以下では、ダクト20間の隙間に対して前側Dfのフェアリング材50を「前側フェアリング材50f」と称し、後側Daのフェアリング材50を「後側フェアリング材50a」と称して説明する場合がある。また、ダクト20間の隙間の幅方向W中央を通り、前後方向Dに延びる直線を「ダクト間中央線C」と称して説明する場合がある。
【0023】
本実施形態では、前側フェアリング材50f及び後側フェアリング材50aは、同一形状に形成され、前後方向Dで対称に配置されている。案内面51は、ダクト間中央線Cを挟んで幅方向W両側に設けられている。前側フェアリング材50fの前端53及び後側フェアリング材50aの後端54は、ともにダクト間中央線C上に位置している。前側フェアリング材50fでは、一対の案内面51は、前側Dfに向かうにしたがって、幅方向W外側に張り出すように湾曲しながら互いに接近し、前端53で交差するように形成されている。後側フェアリング材50aでは、一対の案内面51は、後側Daに向かうにしたがって、幅方向W外側に張り出すように湾曲しながら互いに接近し、後端54で交差するように形成されている。
【0024】
(作用効果)
以下、本実施形態の船舶推進装置10の作用効果について説明する。
図1に示すように、船舶1が水上を航行する際、船尾4側の船底5にはレイノルズ数に応じて流速が遅い境界層Xが発生する。境界層Xは、後側Da(後流)にいくほど厚くなる(境界層Xの発達)。この境界層Xの発達に伴って流速の遅い領域が拡大し、運動量が損失する。すなわち、境界層Xの発達が船舶1の推進性能低下の要因となっている。本実施形態では、運動量損失がある境界層Xの流れFが、ダクト20内に流入し、プロペラ30によって増速される。これにより、運動量損失分が回復され、船舶1の推進性能の向上につながる。
【0025】
しかしながら、隣り合うダクト20間に隙間が存在する場合、この隙間に流れFが流入し、抵抗が増加することが考えられる。そのため、この隙間を閉塞することが求められるが、単に板状の部材でこの隙間を閉塞した場合、前側Dfの閉塞箇所では広い範囲で淀み点が発生し、後側Daの閉塞箇所では流れFが剥離し易くなり、抵抗が増加することとなる。
【0026】
これに対し、本実施形態では、船舶推進装置10は、ダクト20間の前側Df及び後側Daの両方に設けられたフェアリング材50を備える。フェアリング材50は、互いに隣り合うダクト20の内面23とそれぞれ連続するとともにダクト20から前後方向Dに突出する一対の案内面51を有する。これにより、ダクト20間の隙間への流れFの流入が抑制される。
【0027】
さらに、フェアリング材50の幅方向Wの寸法は、ダクト20から前後方向Dに離間するにしたがって小さくなる。
【0028】
このため、ダクト20間の前側Dfに設けられた前側フェアリング材50fは、フェアリング材50に衝突した流れFをスムーズにダクト20に導くことができる。換言すると、前側フェアリング材50fの前側Dfの先端部分が細くなっているため、前側フェアリング材50fの流体抵抗が低減される。さらに、ダクト20間の後側Daに設けられた後側フェアリング材50aは、ダクト20から出た流れFをスムーズに合流させることができる。これにより、流れFの乱れが抑制される。したがって、本実施形態の船舶推進装置10によれば、前側フェアリング材50fの抵抗を低減しつつ、後側フェアリング材50aで流れFの乱れを抑制することができる。このようにして、推進性能が向上される。
【0029】
また、本実施形態では、案内面51は、ダクト20の内面23と滑らかに接続されている。
【0030】
これにより、船舶推進装置10は、ダクト20の内面23とフェアリング材50の案内面51との境界付近の流れFをスムーズにすることができる。したがって、段差や急な曲がり部において生じる流れFの剥離やそれに伴う渦の発生が抑制されて、推進性能が向上される。
【0031】
また、本実施形態では、船舶推進装置10を構成する複数のダクト20は、全て同一形状に形成されている。
【0032】
これにより、各ダクト20の形状が異なる場合と比較して、船舶推進装置10の製造コストを抑えることができる。
【0033】
また、本実施形態では、フェアリング材50がダクト20間の隙間を閉塞している。
【0034】
これにより、ダクト20間の隙間の調整が容易となり、ダクト20及びプロペラ30の配置の自由度が向上する。
【0035】
また、本実施形態では、フェアリング材50は空洞となっている。
【0036】
これにより、船舶推進装置10を軽量化することができる。
【0037】
続いて、第一実施形態の変形例について、
図5を参照して説明する。
図5に示すように、前側フェアリング材50f及び後側フェアリング材50aは、異なる形状に形成されていてもよい。本変形例では、前側フェアリング材50fの前面53fは、半円状に形成され、後側フェアリング材50aの後面54aは、後方に向かって、前側フェアリング材50fの前面53fよりも長く突出するように形成されている。前後方向D両側のフェアリング材50と、ダクト20の内面23とを合わせて、全体として、上下方向から見て前後方向Dにのびる流線形状となるように、前後方向D両側のフェアリング材50が設けられている。
【0038】
本変形例によれば、後側フェアリング材50aの前後方向Dの寸法を大きくすることができるため、隣り合うダクト20を通過した流れFをスムーズに合流させることができる。これにより、流れFの剥離が抑制されるので、流れFの剥離に伴う抵抗増加が抑制される。
【0039】
<第二実施形態>
以下、本開示の第二実施形態に係る船舶推進装置210について、
図6、
図7を参照して説明する。前述した第一実施形態と同様の構成については、同一の名称及び同一の符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0040】
図6に示すように、本実施形態では、ダクト220の外面224の下面225は、前後方向Dの中間部で下方に張り出すように湾曲しながら前後方向Dに延びている。ダクト220の前側Dfの下面225は、前側Dfに向かうにしたがって上方に位置するように僅かに湾曲している。さらに、ダクト220の後側Daの下面225は、後側Daに向かうにしたがって上方に位置するように湾曲している。ダクト220の後側Daの出口222は、ダクト220の前側Dfの入口221よりも開口面積が小さくなっている。
【0041】
また、
図7に示すように、ダクト220の内面のうち幅方向Wに対向する一対の内面223は、前後方向Dの中間部でダクト220の内側に張り出すような凸形状に形成されている。
【0042】
図6に示すように、フェアリング材250の下面252は、ダクト220の外面224の下面225にあわせて湾曲し、接続材40の下面41を介して、ダクト220の外面224の下面225に滑らかに接続されている。前側フェアリング材250fの下面252は、ダクト220の前側Dfの下面225から、前側Dfに向かうにしたがって上方に位置するように僅かに湾曲している。後側フェアリング材250aの下面252は、ダクト220の後側Daの下面225から、後側Daに向かうにしたがって上方に位置するように湾曲している。
【0043】
図7に示すように、フェアリング材250の案内面251は、ダクト220の内面223と滑らかに接続されている。さらに、案内面251の曲率がダクト220の内面223の曲率と等しくなるように、案内面251が形成されている。
【0044】
以下、本実施形態の船舶推進装置210の作用効果について説明する。
本実施形態では、案内面251の曲率は、ダクト220の内面223の曲率と等しい。
【0045】
これにより、船舶推進装置210は、ダクト220の内面223とフェアリング材250の案内面251との境界付近の流れFをより一層スムーズにすることができる。したがって、段差や急な曲がり部において生じる流れFの剥離やそれに伴う渦の発生がより一層抑制されて、推進性能がより一層向上される。
【0046】
また、本実施形態では、ダクト220の外面224の下面225は、前後方向Dの中間部で下方に張り出すように湾曲しながら前後方向Dに延びており、フェアリング材250の下面252は、ダクト220の外面224の下面225に滑らかに接続されている。
【0047】
これにより、船舶推進装置210は、ダクト220下の流れFをスムーズにすることができる。さらに、ダクト220下の流れFがダクト220とフェアリング材250との境界を通過する際に、段差や急な曲がり部において生じる流れFの剥離やそれに伴う渦の発生が抑制される。したがって、ダクト220及びフェアリング材250における抵抗増加が抑制されるので、推進性能がより一層向上される。
【0048】
<第三実施形態>
以下、本開示の第三実施形態に係る船舶推進装置310について、
図8から
図10を参照して説明する。前述した第一実施形態と同様の構成については、同一の名称及び同一の符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0049】
図8に示すように、船舶推進装置310が設置される船底5の下面が、水平面に対して傾斜するように湾曲している。具体的には、船舶推進装置310が設置される船底5の下面は、幅方向W内側に向かうにしたがって、上下方向の位置が変化するように湾曲している。このため、船底5の下面に設置される各ダクト20は、互いに傾いて配置される。本実施形態では、2つのダクト20間の隙間の幅方向Wの寸法は、下方に向かうにしたがって漸次小さくなっている。このため、前後方向Dから見て、フェアリング材350は下方に向けて先細る台形状となる。本実施形態でも、1つの船舶推進装置310を構成する複数のダクト20は、全て同一の四角形筒状に形成されている。
【0050】
フェアリング材350の幅方向Wの寸法は、ダクト20間の隙間の幅方向Wの寸法に合わせて、上下方向に変化する。例えば、フェアリング材350の幅方向Wの寸法は、ダクト20間の隙間にあわせて、下方に向かうにしたがって漸次小さくなっている。
【0051】
図9、
図10に示すように、フェアリング材350の前後方向Dの寸法は、上下方向に変化し、ダクト20間の隙間の幅方向Wの寸法が大きいほど大きくなっている。すなわち、フェアリング材350の前後方向Dの寸法は、ダクト20間の隙間にあわせて、下方に向かうにしたがって漸次小さくなっている。このため、フェアリング材350の各案内面351は、幅方向Wから見て台形状に形成されており、案内面351の前後方向Dの寸法は、下方に向かうにしたがって漸次小さくなっている。
なお、
図10は、ダクト20及びフェアリング材350を、
図8に示す矢印A下側から見た図である。
【0052】
また、フェアリング材350の下面352とフェアリング材350の上面355とは、ともに半楕円形状に形成されている。フェアリング材350の下面352とフェアリング材350の上面355とは、相似関係にあり、フェアリング材350の上面355の方がフェアリング材350の下面352よりも大きい。
【0053】
また、前側フェアリング材350fでは、前端353が下方に向かうにしたがって漸次後側Daに位置している。また、後側フェアリング材350aでは、後端354が下方に向かうにしたがって漸次前側Dfに位置している。
【0054】
以下、本実施形態の船舶推進装置310の作用効果について説明する。
船舶推進装置310が設置される船底5の下面が湾曲している場合、各ダクト20の形状が異なると、船舶推進装置310の製作時に手間を要し、コストアップに繋がることが懸念される。一方で、ダクト20の形状を全て同一にすると製造コストを抑えることができるが、隣り合うダクト20間に隙間が生じやすくなる。また、ダクト20間の隙間の幅方向Wの寸法が上下方向で変化するので、ダクト20間の隙間を塞ぐのが難しい。
【0055】
これに対し、本実施形態では、フェアリング材350の幅方向Wの寸法がダクト20間の隙間の幅方向Wの寸法に合わせて上下方向に変化するように、フェアリング材350が形成されている。
【0056】
これにより、傾斜面に同一形状のダクト20が設置されて、ダクト20間の隙間の幅方向Wの隙間が上下方向で変化する場合であっても、フェアリング材350でダクト20間の隙間だけを十分に塞ぐことが可能となる。したがって、同一形状のダクト20を用いて製造コストを抑えつつ、ダクト20間の隙間を閉塞して推進性能の低下を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、フェアリング材350の前後方向Dの寸法は、上下方向に変化し、ダクト20間の隙間の幅方向Wの寸法が大きいほど大きくなる。
【0058】
これにより、ダクト20間の隙間の幅方向Wの寸法が大きい箇所では、案内面351が前後方向Dに長くなり、流れFがフェアリング材350を通過する際に剥離することを抑制できる。これにより、船舶推進装置310は、流れFの剥離に起因する抵抗増加を回避することができる。さらに、ダクト20間の隙間の幅方向Wの寸法が小さい箇所では、案内面351が前後方向Dに短くなり、流れFがフェアリング材350を通過する際に生じる抵抗が低減される。
【0059】
<第四実施形態>
以下、本開示の第四実施形態に係る船舶推進装置410について、
図11、
図12を参照して説明する。前述した第一実施形態と同様の構成については、同一の名称及び同一の符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0060】
図11、
図12に示すように、フェアリング材450は、大きさの異なるダクト20間に設けられている。例えば、幅方向Wに隣り合う2つのダクト20のうち、センタースケグ6を基準として、幅方向W外側のダクト20が、幅方向W内側のダクト20よりも、上下方向及び幅方向Wの寸法が小さい場合について説明する。但し、本実施形態では、これら2つのダクト20は、前後方向Dの寸法が等しい。
【0061】
プロペラ30は、ダクト20の大きさに応じて、適切な大きさの物が配置される。大きいダクト20には、比較的大きなプロペラ30が配置され、小さいダクト20には、比較的小さなプロペラ30が配置される。
【0062】
接続材440の下面441及び、フェアリング材450の下面452は、幅方向W外側に向かうにしたがって、上方に位置するように傾斜している。これにより、フェアリング材450の下面452は、接続材440の下面441を介して、大きさの異なる2つのダクト20の外面24の下面25と接続される。さらに、フェアリング材450の2つの案内面451のうち、ダクト間中央線Cを挟んで幅方向W外側の案内面451が、幅方向W内側の案内面451よりも小さくなる。
【0063】
また、前側フェアリング材450fの前端453と後側フェアリング材450aの後端454とは、ともにダクト間中央線C上に位置している。
【0064】
以下、本実施形態の船舶推進装置410の作用効果について説明する。
本実施形態では、フェアリング材450は、大きさの異なるダクト20間に設けられている。
【0065】
船尾4側の船底5に発生する境界層Xの厚さに応じて、大きさの異なる複数のダクト20が使用されることが想定される。本実施形態によれば、大きさの異なるダクト20同士が隣り合う場合であっても、これらのダクト20間にフェアリング材450を設けることにより、ダクト20の内面23とフェアリング材450の案内面451との境界付近の流れFをスムーズにすることができる。したがって、このような場合でも、船舶推進装置410は、境界層Xの流れFをダクト20内に回収し易くなり、船舶推進装置410の推進性能が向上される。
【0066】
続いて、第四実施形態の変形例について、
図13、
図14を参照して説明する。
図13に示すように、前側フェアリング材450fの前端453と後側フェアリング材450aの後端454とは、ともにダクト間中央線C上よりも、小さいダクト20側に位置してもよい。
【0067】
また、
図14に示すように、互いに大きさの異なる2つのダクト20は、相似形状に形成されていてもよい。この場合、小さいダクト20の幅方向W、上下方向、及び前後方向Dの寸法は、大きいダクト20の幅方向W、上下方向、及び前後方向Dの寸法よりも小さくなる。さらに、フェアリング材450の2つの案内面451のうち、小さいダクト20側の案内面451が、大きいダクト20側の案内面451よりも前後方向Dに長くなる。この場合、前側フェアリング材450fの前端453と後側フェアリング材450aの後端454とは、ともにダクト間中央線C上よりも、小さいダクト20側に位置してもよく、大きいダクト20側に位置してもよい。
【0068】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0069】
なお、上記実施形態では、接続材40、440の内部は空洞となっているとしたが、これに限るものではない。接続材40、440は、中実に形成されていてもよい。また、接続材40、440内の空洞には、複数のフレームによって形成された構造体が設けられているとしたが、接続材40、440内の空洞には、このような構造体等が設けられていなくてもよい。また、接続材40、440は、幅方向Wで隣り合うダクト20、220同士の下側のみを接続する板状に形成されていてもよい。また、隣り合うダクト20、220間に接続材40、440が設けられていなくてもよい。
【0070】
なお、上記実施形態では、ダクト20、220間の全ての隙間にフェアリング材50、250、350、450が設けられているとしたが、これに限るものではない。ダクト20、220間の全ての隙間にフェアリング材50、250、350、450が設けられていることが好ましいが、一部のダクト20、220間の隙間にのみ、フェアリング材50、250、350、450が設けられていてもよい。
【0071】
なお、上記実施形態では、フェアリング材50、250、350、450は、ダクト20、220間の前側Df及び後側Daの両方に設けられているとしたが、これに限るものではない。例えばダクト20、220が前後方向Dに対して傾いて配置される場合には、フェアリング材50、250、350、450は、ダクト20、220間の前側Df及び後側Daの一方にのみ設けられていてもよい。
【0072】
なお、上記実施形態では、フェアリング材50、250、350、450の内部は、空洞となっているとしたが、これに限るものではない。フェアリング材50、250、350、450は、中実に形成されていてもよい。
【0073】
なお、上記実施形態では、フェアリング材50、250、350、450の材質は、ステンレスであるとしたが、これに限られない。フェアリング材50、250、350、450の材質は、例えばステンレス以外の鋼材や複合材(FRP;Fiber Reinforced Plastics)であってもよい。
【0074】
なお、上記実施形態では、幅方向Wに並ぶ複数のダクト20、220は、全て前後方向Dで同じ位置に配置されているとしたが、これに限るものではない。幅方向Wに並ぶ複数のダクト20、220は、幅方向Wに重なっていれば、前後方向Dの位置が互いにずれていてもよい。
【0075】
<付記>
各実施形態に記載の船舶推進装置10、210、310、410、及び船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0076】
(1)第1の態様に係る船舶推進装置10、210、310、410は、船体2の船底5に設けられ、前記船体2の前後方向Dに交差する幅方向Wに並ぶ複数のダクト20、220と、前記ダクト20、220のそれぞれの内部に回転可能に配置され、前記ダクト20、220内に前記前後方向Dの流れを発生させるプロペラ30と、前記ダクト20、220間の前側Df及び後側Daの少なくとも一方に設けられ、互いに隣り合う前記ダクト20、220の内面23、223とそれぞれ連続するとともに前記ダクト20、220から前記前後方向Dに突出する一対の案内面51、251、351、451を有するフェアリング材50、250、350、450と、を備え、前記フェアリング材50、250、350、450の前記幅方向Wの寸法は、前記ダクト20、220から前記前後方向Dに離間するにしたがって小さくなる。
【0077】
ダクト20、220間の前側Dfに設けられたフェアリング材50、250、350、450は、フェアリング材50、250、350、450に衝突した流れFをスムーズにダクト20、220に導くことができる。また、ダクト20、220間の後側Daに設けられたフェアリング材50、250、350、450は、ダクト20、220から出た流れFをスムーズに合流させることができる。
【0078】
(2)第2の態様の船舶推進装置10、210、310、410は、(1)の船舶推進装置10、210、310、410であって、前記フェアリング材50、250、350、450は、前記ダクト20、220間の前側Df及び後側Daの両方に設けられていてもよい。
【0079】
これにより、フェアリング材50、250、350、450に衝突した流れFをスムーズにダクト20、220に導きつつ、ダクト20、220から出た流れFをスムーズに合流させることができる。
【0080】
(3)第3の態様の船舶推進装置10、210、310、410は、(1)又は(2)の船舶推進装置10、210、310、410であって、前記案内面51、251、351、451は、前記ダクト20、220の内面23、223と滑らかに接続されていてもよい。
【0081】
これにより、船舶推進装置10、210、310、410は、ダクト20、220の内面23、223とフェアリング材50、250、350、450の案内面51、251、351、451との境界付近の流れFをスムーズにすることができる。
【0082】
(4)第4の態様の船舶推進装置210は、(3)の船舶推進装置210であって、前記案内面251の曲率は、前記ダクト220の内面223の曲率と等しくてもよい。
【0083】
これにより、船舶推進装置210は、ダクト220の内面223とフェアリング材250の案内面251との境界付近の流れFをより一層スムーズにすることができる。
【0084】
(5)第5の態様の船舶推進装置210は、(1)から(4)のいずれかの船舶推進装置210であって、前記ダクト220の外面224の下面225は、前記前後方向Dの中間部で下方に張り出すように湾曲しながら前記前後方向Dに延びており、前記フェアリング材250の下面252は、前記ダクト220の外面224の下面225に滑らかに接続されていてもよい。
【0085】
これにより、船舶推進装置210は、ダクト220下の流れFをスムーズにすることができる。さらに、ダクト220下の流れFがダクト220とフェアリング材250との境界を通過する際に、段差や急な曲がり部において生じる流れFの剥離やそれに伴う渦の発生が抑制される。
【0086】
(6)第6の態様の船舶推進装置310は、(1)から(5)のいずれかの船舶推進装置310であって、前記フェアリング材350の前記前後方向Dの寸法は、上下方向に変化し、前記ダクト20間の隙間の前記幅方向Wの寸法が大きいほど大きくなってもよい。
【0087】
これにより、ダクト20間の隙間の幅方向Wの寸法が大きい箇所では、案内面351が前後方向Dに長くなり、流れFがフェアリング材350を通過する際に剥離することを抑制できる。
【0088】
(7)第7の態様の船舶推進装置410は、(1)から(6)のいずれかの船舶推進装置410であって、前記フェアリング材450は、大きさの異なる前記ダクト20間に設けられていてもよい。
【0089】
船尾4側の船底5に発生する境界層Xの厚さに応じて、大きさの異なる複数のダクト20が使用されることが想定される。本態様によれば、大きさの異なるダクト20同士が隣り合う場合であっても、これらのダクト20間にフェアリング材450を設けることにより、ダクト20の内面23とフェアリング材450の案内面451との境界付近の流れFをスムーズにすることができる。
【0090】
(8)第8の態様に係る船舶1は、(1)から(7)のいずれかの船舶推進装置10、210、310、410と、前記船体2と、を備える。
【符号の説明】
【0091】
1…船舶 2…船体 3…船首 4…船尾 5…船底 6…センタースケグ 10…船舶推進装置 20…ダクト 21…入口 22…出口 23…内面 24…外面 25…下面 30…プロペラ 31…プロペラ軸 32…プロペラ翼 40…接続材 41…下面 50…フェアリング材 50f…前側フェアリング材 50a…後側フェアリング材 51…案内面 52…下面 53…前端 53f…前面 54…後端 54a…後面 210…船舶推進装置 220…ダクト 221…入口 222…出口 223…内面 224…外面 225…下面 250…フェアリング材 250f…前側フェアリング材 250a…後側フェアリング材 251…案内面 252…下面 310…船舶推進装置 350…フェアリング材 350f…前側フェアリング材 350a…後側フェアリング材 351…案内面 352…下面 353…前端 354…後端 355…上面 410…船舶推進装置 440…接続材 441…下面 450…フェアリング材 450f…前側フェアリング材 450a…後側フェアリング材 451…案内面 452…下面 453…前端 454…後端 C…ダクト間中央線 D…前後方向 Df…前側 Da…後側 F…流れ W…幅方向 X…境界層