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特開2024-58936フィルム型力覚センサーを用いた入力装置及びその荷重検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058936
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】フィルム型力覚センサーを用いた入力装置及びその荷重検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 25/00 20060101AFI20240422BHJP
   G06F 3/0354 20130101ALI20240422BHJP
   G01L 1/14 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G01L25/00 B
G06F3/0354 450
G01L1/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166360
(22)【出願日】2022-10-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 真憂弥
(72)【発明者】
【氏名】渡津 裕次
(72)【発明者】
【氏名】土谷 真一
(72)【発明者】
【氏名】福田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】大場 芙美
(72)【発明者】
【氏名】三浦 農
(72)【発明者】
【氏名】繁成 拓渡
【テーマコード(参考)】
5B087
【Fターム(参考)】
5B087AA02
5B087AB02
5B087AC05
5B087BC12
5B087BC34
5B087DD03
(57)【要約】
【課題】 更新されたベースライン値を適切なタイミングで取得することができ、それによって正確な荷重検出を行なうことのできる、フィルム型力覚センサーを用いた入力装置及びその荷重検出方法を提供する。
【解決手段】 本発明の入力装置は、フィルム型力覚センサーと制御回路とを備えている。制御回路は、測定データ取得部、移動平均データ算出部、荷重データ算出部、荷重データ補正部、標準偏差値算出部、判定部及びベースライン更新部、記憶部を備えている。判定部は、標準偏差値が閾値以下の場合にフィルム型力覚センサーに対して荷重なしと判定する。ベースライン更新部は、荷重データの荷重なし判定時の値にベースライン値を置き換えることにより、ベースライン値を更新する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の表面に配置され、指で加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出するフィルム型力覚センサーと、
前記フィルム型力覚センサーと電気的に接続され、前記筐体の内部に収納された制御回路とを備え、
前記制御回路が、
前記フィルム型力覚センサーにて検出された静電容量変化量の時系列からなる測定データを取得する測定データ取得部と、
前記測定データの微小変動を任意の項数で平滑化して移動平均データを算出する移動平均データ算出部と、
前記移動平均データの各値に前記フィルム型力覚センサーの感度を示す任意の係数を掛け合わせて荷重データを算出する荷重データ算出部と、
前記荷重データの各値からベースライン値を引き算して前記荷重データを補正する荷重データ補正部と、
前記荷重データの各時刻について、当該時刻から任意の範囲の時間における標準偏差値を算出する標準偏差値算出部と
前記標準偏差値が任意の閾値よりも大きい場合に前記フィルム型力覚センサーに対して荷重ありと判定し、前記標準偏差値が前記閾値以下の場合に前記フィルム型力覚センサーに対して荷重なしと判定する判定部と、
前記荷重なしと判定された場合、前記荷重データの前記荷重なし判定時の値に前記ベースライン値を置き換えることにより、前記ベースライン値を更新するベースライン更新部と、
取得、算出、更新、補正した前記各値を記憶する記憶部と
を備える、フィルム型力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項2】
前記ベースライン更新部が、前記荷重なしと判定されてから再び前記荷重ありと判定されるまでの間の無荷重状態の都度、前記ベースライン値を更新する、請求項1記載のフィルム型力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項3】
前記ベースライン更新部が、前記測定データの取得開始後から一定時間置きに、前記荷重データの前記荷重なし判定時の最新値に、前記ベースライン値を更新する、請求項1記載のフィルム型力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項4】
前記フィルム型力覚センサーが、XYZの3軸に加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出するフィルム型3軸力覚センサーである、請求項1記載のフィルム型力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項5】
筐体の表面に配置され、指で加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出するフィルム型力覚センサーと、前記フィルム型力覚センサーと電気的に接続され、前記筐体の内部に収納された制御回路とを備えた入力装置の荷重検出方法であって、
前記フィルム型力覚センサーにて検出された静電容量変化量の時系列からなる測定データを取得する測定データ取得ステップと、
前記測定データの微小変動を任意の項数で平滑化して移動平均データを算出する移動平均データ算出ステップと、
前記移動平均データの各値に前記フィルム型力覚センサーの感度を示す任意の係数を掛け合わせて荷重データを算出する荷重データ算出ステップと、
前記荷重データの各値からベースライン値を引き算して前記荷重データを補正する荷重データ補正ステップと、
前記荷重データの各時刻について、当該時刻から任意の範囲の時間における標準偏差値を算出する標準偏差値算出ステップと
前記標準偏差値が任意の閾値よりも大きい場合に前記フィルム型力覚センサーに対して荷重ありと判定し、前記標準偏差値が前記閾値以下の場合に前記フィルム型力覚センサーに対して荷重なしと判定する判定ステップと、
前記荷重なしと判定された場合、前記荷重データの前記荷重なし判定時の値に前記ベースライン値を置き換えることにより、前記ベースライン値を更新するベースライン更新ステップと、
前記各値を取得、算出、更新、補正したときに前記各値を記憶する記憶ステップと
を含む、フィルム型力覚センサーを用いた入力装置の荷重検出方法。
【請求項6】
前記ベースライン更新ステップが、前記荷重なしと判定されてから再び前記荷重ありと判定されるまでの間の無荷重状態の都度、前記ベースライン値を更新する、請求項5記載のフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の荷重検出方法。
【請求項7】
前記ベースライン更新ステップが、前記測定データの取得開始後から一定時間置きに、前記荷重データの前記荷重なし判定時の最新値に、前記ベースライン値を更新する、請求項5記載のフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の荷重検出方法。
【請求項8】
前記フィルム型力覚センサーが、XYZの3軸に加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出するフィルム型3軸力覚センサーである、請求項5記載のフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の荷重検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正確な荷重検出を行なうことのできる、フィルム型力覚センサーを用いた入力装置及びその荷重検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ジョイスティック、十字キー、マウスやタッチパネルでは実現できない新しいアイデアをユーザーインタフェース(UI)の開発現場に提供するものとして、フィルム型3軸力覚センサーが知られている。
フィルム型3軸力覚センサーは、3軸(XYZ軸)方向の力を接触点で測定することで、押す力(圧力)や滑りかけの状態、滑っている状態などを検知することができ、ねじる、回す、ずらすなど、従来のコントローラーでは制御できなかった動作を指1点で入力することが可能である。on/off判定にとどまらない力量(ボリューム)測定が可能なので、スピードや移動量などのコントロールにも対応できる。ジョイスティックや十字キーに比べて、ほんのわずかの指の動きで方向と移動量を同時に入力することができる。また、薄くて軽いフィルム型のセンサーなので、曲面にも実装できる。なお、3軸方向の力をすべて測定しなくてもよく、例えば、XY軸方向の力だけを測定するセンサーもあり得る。
【0003】
上記したようなフィルム型力覚センサーとしては、空気層又は弾性層を間に挟んで上部電極と下部電極とを対向する形で配置し、力(以下、荷重に統一)を加えたときに電極間の距離が変動することによって発生する静電容量値の変化を利用して、加えられた荷重の値を算出する静電容量方式のものが挙げられる(特許文献1,2参照)。
【0004】
ところで、この静電容量方式のフィルム型力覚センサー2を用いた荷重検出を行なう際には、測定した静電容量変化量に基づく荷重算定値(図6に示す例では、Z軸方向について算定された値K ave)からベースライン値(図6に示す例ではF BLとして太い破線で描かれた部分)を引き算して補正する必要がある(図5参照)。ここで、ベースライン値とは、フィルム型力覚センサーに荷重を加えていない状態で算出される荷重データである。
しかしながら、静電容量方式のフィルム型力覚センサー2を用いた荷重検出は、復元性の影響を受けるという問題を有する。すなわち、荷重を加えてフィルム型力覚センサー2を変形した後(図7参照)に荷重を開放したときに、フィルム型力覚センサーが変形したまで直ぐには荷重を加える前の形状に戻らず、無荷重状態でも静電容量変化量が当初より増加してしまう。その結果、静電容量変化量から算出される荷重算定値も、無荷重状態でベースライン値まで戻りきらないのである(図6中右側の黒い矢印部分)。
したがって、復元性の影響を受けて無荷重状態の静電容量変化量がその時々で遷移するため、その遷移に合わせてベースライン値も更新を行なう必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/059766号
【特許文献2】特開2017-156126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この更新すべきベースライン値の取得は、フィルム型力覚センサーに荷重を加えていないときに算出される荷重算定値(図8に示す例では、Z軸方向について算定された値K ave)のデータに基づいて行われるが、荷重算定値が再び急激に減少した部分(図8に示す破線で囲まれた部分)の荷重データがこのフィルム型力覚センサーに荷重が加わっているのか、それとも復元性の影響を受けているのかを荷重データから正解に判断することは困難であった。つまり、ベースライン値の更新が容易でない。
【0007】
したがって、本発明は、上記の課題を解決し、更新されたベースライン値を適切なタイミングで取得することができ、それによって正確な荷重検出を行なうことのできる、フィルム型力覚センサーを用いた入力装置及びその荷重検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る入力装置は、フィルム型力覚センサーと制御回路とを備えている。フィルム型力覚センサーは、筐体の表面に配置され、指で加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出するものである。制御回路は、フィルム型力覚センサーと電気的に接続され、筐体の内部に収納されている。
このような入力装置の制御回路は、測定データ取得部、移動平均データ算出部、荷重データ算出部、荷重データ補正部、標準偏差値算出部、判定部及びベースライン更新部、記憶部を備えている。
測定データ取得部は、フィルム型力覚センサーにて検出された静電容量変化量の時系列からなる測定データを取得するものである。移動平均データ算出部は、測定データの微小変動を任意の項数で平滑化して移動平均データを算出するものである。荷重データ算出部は、移動平均データの各値にフィルム型力覚センサーの感度を示す任意の係数を掛け合わせて荷重データを算出するものである。荷重データ補正部は、荷重データの各値からベースライン値を引き算して荷重データを補正するものである。標準偏差値算出部は、荷重データの各時刻について、当該時刻から任意の範囲の時間における標準偏差値を算出するものである。判定部は、標準偏差値が任意の閾値よりも大きい場合にフィルム型力覚センサーに対して荷重ありと判定し、標準偏差値が閾値以下の場合にフィルム型力覚センサーに対して荷重なしと判定するものである。ベースライン更新部は、荷重なしと判定された場合、荷重データの荷重なし判定時の値にベースライン値を置き換えることにより、ベースライン値を更新するものである。記憶部は、取得、算出、更新、補正した各値を記憶するものである。
【0009】
上記の入力装置において、ベースライン更新部が、荷重なしと判定されてから再び荷重ありと判定されるまでの間の無荷重状態の都度、ベースライン値を更新するものであってもよい。
【0010】
上記の入力装置において、ベースライン更新部が、測定データの取得開始後から一定時間置きに、荷重データの荷重なし判定時の最新値に、ベースライン値を更新するものであってもよい。
【0011】
上記の入力装置において、フィルム型力覚センサーが、XYZの3軸に加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出するフィルム型3軸力覚センサーであってもよい。
【0012】
本発明の一見地に係る入力装置の荷重検出方法は、フィルム型力覚センサーと制御回路とを備えた入力装置の荷重検出方法である。フィルム型力覚センサーは、筐体の表面に配置され、指で加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出するものである。制御回路は、フィルム型力覚センサーと電気的に接続され、筐体内部に収納されている。
このような入力装置の荷重検出方法は、測定データ取得ステップ、移動平均データ算出ステップ、荷重データ算出ステップ、荷重データ補正ステップ、標準偏差値算出ステップ、判定ステップ及びベースライン更新ステップ、記憶ステップを含んでいる。
測定データ取得ステップでは、フィルム型力覚センサーにて検出された静電容量変化量の時系列からなる測定データを取得する。移動平均データ算出ステップでは、測定データの微小変動を任意の項数で平滑化して移動平均データを算出する。荷重データ算出ステップでは、移動平均データの各値にフィルム型力覚センサーの感度を示す任意の係数を掛け合わせて荷重データを算出する。荷重データ補正ステップでは、荷重データの各値からベースライン値を引き算して荷重データを補正する。標準偏差値算出ステップでは、荷重データの各時刻について、当該時刻から任意の範囲の時間における標準偏差値を算出する。判定ステップでは、標準偏差値が任意の閾値よりも大きい場合にフィルム型力覚センサーに対して荷重ありと判定し、標準偏差値が閾値以下の場合にフィルム型力覚センサーに対して荷重なしと判定するも。ベースライン更新ステップでは、荷重なしと判定された場合、荷重データの荷重なし判定時の値にベースライン値を置き換えることにより、ベースライン値を更新する。記憶ステップは、各値を取得、算出、更新、補正したときに各値を記憶する。
【0013】
上記の入力装置の荷重検出方法において、ベースライン更新ステップで、荷重なしと判定されてから再び荷重ありと判定されるまでの間の無荷重状態の都度、ベースライン値を更新してもよい。
【0014】
上記の入力装置の荷重検出方法において、ベースライン更新ステップで、測定データの取得開始後から一定時間置きに、荷重データの荷重なし判定時の最新値に、ベースライン値を更新してもよい。
【0015】
上記の入力装置の荷重検出方法において、フィルム型力覚センサーが、XYZの3軸に加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出するフィルム型3軸力覚センサーであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフィルム型力覚センサーを用いた入力装置及びその荷重検出方法によれば、更新されたベースライン値を適切なタイミングで取得することができ、それによって正確な荷重検出を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の一例であるコントローラーの模式図である。
図2】本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の構成図である。
図3】本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の荷重検出方法における、ベースライン値の更新をする場合のZ軸の荷重算出値(K ave)の時系列とベースライン値(F BL)との関係を示すイメージ図である(X軸、Y軸についても同様)。
図4】本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の荷重検出過程の一例を示すフローチャートである。
図5】補正済み荷重F,F,Fの算出式である。
図6】ベースライン値の更新をしない場合のZ軸の荷重算出値(K ave)の時系列とベースライン(F BL)との関係を示すイメージ図である(X軸、Y軸についても同様)。
図7】静電容量方式のフィルム型力覚センサーの原理を示す模式図である。
図8】ベースライン値の更新のタイミングの問題を説明するイメージ図である(X軸、Y軸についても同様)。
図9】本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の別の構成図である。
図10】本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の荷重検出過程の別の例を示すフローチャートである。
図11】静電容量方式のフィルム型3軸力覚センサーの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、図面に基づき説明する。
(1) 入力装置の全体構造
まず、本発明の一実施形態に係る入力装置1の全体構造について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の一例であるコントローラーの模式図である。図2は、本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の構成図である。
【0019】
入力装置1は、筐体10、フィルム型力覚センサー2、制御回路3、通信部4及び電池5を備えている(図1及び図2参照)。
フィルム型力覚センサー2は、筐体10の表面に配置され、指11で加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出するものである
制御回路3は、フィルム型力覚センサー2と電気的に接続され、筐体10の内部に収納されている。制御回路3は、フィルム型力覚センサー2を制御すると共に, フィルム型力覚センサー2からの検出信号について各種データの取得、算出、更新、補正を行なう。
通信部4は、筐体10の内部に収容され、制御回路3に電気的に接続されて図示しない外部電子デバイスと通信するように構成されている。
電池5は、筐体10の内部に収容され、制御回路3に電力を供給している。
以下、上記した各構成の機能は、さらに詳細に説明する。
【0020】
(2)筐体
筐体10の材料としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。
【0021】
(3)フィルム型力覚センサー
フィルム型力覚センサー2としては、一般に静電容量式、圧電式やひずみゲージ式などが知られている。図7に示す本実施形態では、ユーザーの指11によってX軸方向及びZ軸方向からなる斜め下方向に加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出するセンサーである。
このフィルム型力覚センサー2は、上部支持体22上にY軸方向に伸びた線状パターンでX軸方向に並んで形成された複数の電極23a,23b,・・・からなる上部電極23を有する上部電極部材24と、上部電極部材24と対向する形で配置され、下部支持体25上にY軸方向に伸びた線状パターンでX軸方向に並んで形成された複数の電極26a,26b,・・・からなる下部電極26を有する下部電極部材27と、上部電極部材24と下部電極部材27との間に挟まれる空気層又は弾性層21とを備えている。また、図7に示す例では、上部電極部材24の上部電極23を形成した面と下部電極部材27の下部電極26が形成した面が対向しており、上部電極部材24の上部支持体22が上部電極23を保護する保護層の役割も兼ねている。
【0022】
このような構成のフィルム型力覚センサー2は、荷重(X軸方向及びZ軸方向の分力はそれぞれF,F)を加えたときに電極間の距離が変動することによって発生する静電容量値の変化を利用して、加えられた荷重F,Fの値を算出する。
つまり、上部電極23がフィルム型力覚センサー2の表面に対して指11によって斜め下方向に荷重が加わると、弾性層21が変形し、その荷重の強度に応じて上部電極部材24の上部電極23のうちの一つの電極23aが水平方向(X軸方向)及び垂直方向(Z軸方向)に移動し、その斜め下にある下部電極26のうちの一つ電極26aだけでなく、隣接する電極26bとの間の距離も変化する。したがって、上部電極23aと下部電極26aとの間の静電容量値の変化と上部電極23aと下部電極26bとの間の静電容量値の変化を測定すれば、垂直方向(Z軸方向)の荷重(圧力)だけでなく、水平方向(X軸方向)の荷重(せん断力とも呼ぶ)の強度も測定できる。
【0023】
上部支持体22及び下部支持体25を構成する材料としては、アクリル、ウレタン、フッ素、ポリエステル。ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、オレフィン等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂シートのほか、シアノアクリレート等の紫外線硬化型樹脂シート等が挙げられるが、とくに限定されない。このような上部支持体22及び下部支持体25からなるフィルム型力覚センサー2は、筐体10の形状に沿って配置できるので、例えば柱面などにも実装が可能である。
【0024】
上部電極23及び下部電極26は、導電性を有する材料により構成できる。導電性を有する材料としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ロジウム等の金属膜のほか、これらの金属粒子や金属ナノファイバー、カーボンナノチューブなどの導電材料を樹脂バインダーに分散させた導電ペースト膜等が挙げられるが、特に限定されない。形成方法は、金属膜の場合は、メッキ法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等で導電膜を全面形成した後にエッチングによりパターニングする方法が挙げられ、導電ペースト膜の場合は、スクリーン、グラビア、オフセット等の印刷法で直接パターン形成する方法が挙げられる。
【0025】
弾性層21としては、例えば、シリコーン、フッ素、ウレタン、エポキシ、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ブタジエンゴムなどの弾力性を有する合成樹脂シートや伸縮性のある不織布シートなどが挙げられる。とくにシリコーンゲル、シリコーンエラストマーなどのシリコーン樹脂系の弾性体シートは、低温から高温までの幅広い温度域で耐久性に優れ、かつ弾力性にも優れていうので、より好ましい。なお、弾性層21は押し出し成形などの一般的なシート成形法によりシート化されたものに限定されず、印刷やコーターなどによって形成されたコーティング層であってもよい。
また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの樹脂を弾性層21の材料として選択する場合は、これらの合成樹脂単体では弾力性が低いので、合成樹脂中にガスを細かく分散させ、発泡体の状態にしておくことが好ましい。
【0026】
(4)制御回路
制御部3は、図示しないが、例えば、基板と、基板に搭載されたCPU、RAM、ROM、その他電子部品とを有する。また、制御部3は、CPU(CentralProcessingUnit)及びメモリからなるハードウェアとソフトウェアに基づいて、他の装置を制御するための装置である。
本発明の特徴である正確な荷重検出を達成するために、制御回路3は、少なくとも測定データ取得部31、移動平均データ算出部32、荷重データ算出部33、荷重データ補正部34、標準偏差値算出部35、判定部36、ベースライン更新部37、記憶部38を備えている(図2参照)。
【0027】
測定データ取得部31は、フィルム型力覚センサー2にて検出された静電容量変化量の時系列からなる測定データを取得する。この取得には、フィルム型力覚センサー2の駆動制御が含まれる。取得された静電容量変化量(例えば、Z方向への荷重Fが加えられたときの静電容量変化量F measとして測定される)の測定データは、記憶部38に送信されて保存され、また移動平均データ算出部32にも送信される。取得される測定データの数は、例えば、10ミリ秒あたり1個である。
【0028】
移動平均データ算出部32は、測定データの微小変動を任意の項数で平滑化して移動平均データを算出するものである(例えば、測定データの静電容量変化量F measは、平滑化された移動平均値F aveとして算出される)。平滑化により、測定データからゆっくりした傾向変動を取り出すことができ、ノイズの影響を抑えることが可能である。算出された移動平均データは、記憶部38に送信されて保存され、また荷重データ算出部33にも送信される。測定データの平均化の対象となる項数は、例えば、10個である。
【0029】
荷重データ算出部33は、移動平均データの各値にフィルム型力覚センサー2の感度を示す任意の係数(例えば、平滑化された移動平均値F aveに対しては係数K)を掛け合わせて荷重データ(例えば、荷重値K aveとして算出される)を算出するものである(図5参照)。算出された荷重データは、記憶部38に送信されて保存され、また標準偏差値算出部35にも送信される。センサーの感度を示す係数は、例えば、1000~6000である。
【0030】
荷重データ補正部34は、荷重データの各値(例えば荷重値K ave)からベースライン値(例えば、ベースライン値F BL)を引き算して荷重データを補正するものである。ベースライン値とは、フィルム型力覚センサーに荷重を加えていない状態で算出される荷重データであるため、その分を荷重データから取り除く必要がある。補正された荷重データは、記憶部38に送信されて保存される。
【0031】
但し、前述の通り、静電容量方式のフィルム型力覚センサー2を用いた荷重検出は、復元性の影響を受けるという問題を有する。すなわち、荷重を加えてフィルム型力覚センサー2を変形した後(図7参照)に荷重を開放したときに、フィルム型力覚センサー2が変形したままで直ぐには荷重を加える前の形状に戻らず、無荷重状態でも静電容量値が当初より増加してしまう。その結果、静電容量値から算出される荷重算定値も、無荷重状態でベースライン値まで戻りきらないのである(図6参照)。したがって、復元性の影響を受けて無荷重状態の静電容量値がその時々で遷移するため、その遷移に合わせてベースライン値も更新を行なう必要がある。
さらに、この更新すべきベースライン値の取得は、フィルム型力覚センサー2に荷重を加えていないときに算出される荷重算定値(図6に示す例では、Z軸方向について算定された値K ave)のデータに基づいて行われるが、このフィルム型力覚センサー2に荷重が加わっているのか、それとも復元性の影響を受けているのかを荷重データから正解に判断することは従来、困難であった(図8参照)。つまり、ベースライン値の更新が容易でない。
そこで、本発明においては、制御部3に、標準偏差値算出部35、判定部36を備えさせることによって、更新されたベースライン値を適切なタイミングで取得することができるようにしている。
【0032】
標準偏差値算出部35は、荷重データの各時刻について、当該時刻から任意の範囲の時間における標準偏差値を算出するものである。算出された標準偏差値は、記憶部38に送信されて保存され、また判定部36にも送信される。標準偏差値の算出対象となる時間の範囲は、例えば、1000msecである。
標準偏差値は、データのばらつきの大きさを表す指標である。データが平均値の近くに集中していれば標準偏差は小さくなり、逆に平均から広がっていれば標準偏差は大きくなる。フィルム型力覚センサー2の表面に対してユーザーの指11によって荷重が加わっている場合、人間の体表面は呼吸や血流等によって目に見えない微かな動きをしているため、荷重のかかり方のばらつきが大きくなる。つまり、ユーザーの指11がフィルム型力覚センサー2の表面に触れているか否かの差異は、荷重データのばらつき度合いに現れる。
なお、標準偏差値を算出する際に対象とするデータは、上記した荷重データの各時刻について、当該時刻を開始時刻、中間時刻又は終了時刻のいずれかでも設定できる。
【0033】
判定部36は、標準偏差値が任意の閾値よりも大きい場合にフィルム型力覚センサーに対して荷重ありと判定し、標準偏差値が閾値以下の場合にフィルム型力覚センサーに対して荷重なしと判定するものである。閾値は、例えば、0.1N相当である。
【0034】
ベースライン更新部37は、荷重なしと判定された場合、荷重データの荷重なし判定時の値にベースライン値を置き換えることにより、ベースライン値を更新するものである。更新されたベースライン値は、記憶部38に送信されて保存される。なお、本明細書においては、「更新」を新たなベースライン値の指定と定義し、更新された値の「記憶」とは分けている。
また、本実施形態においては、ベースライン更新部37は、荷重なしと判定されてから再び荷重ありと判定されるまでの間の無荷重状態の都度、ベースライン値を1回更新する。ここで、ベースライン値の更新は、更新後の数値が更新前の数値と同じになる場合も含む。
【0035】
(5)通信部
通信部4は、WI-FI(登録商標)、BLUETOOTH(登録商標)、NFC、などの無線LANを介して外部電子デバイスと通信する。通信部4は、一方向又は双方向で通信することができる。なお、本実施形態の入力装置1であるコントローラーは、同時又は個々のいずれかで、複数の外部電子デバイスを制御することもできる。
通信する外部電子デバイスとしては、例えば、xRで使用するヘッドマウントディスプレイやスマートグラスのほか、スマートテレビ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、自動車のオーディオシステム、家庭用、仕事用、若しくは環境用自動制御装置、又は任意の他のそのようなデバイス若しくはシステムとすることができるが、これらに限定されない。
【0036】
(6)電池
電池5としては、リチウム電池などの再充電式電池を用いることができる。再充電式電池の場合、ユーザーはUSBを通じて、あるいは入力装置1を充電パッドの上に置くだけで、充電することができる。また、電池9として非充電式電池を用い、筐体10の内部より取り出し交換するようにしてもよい。
【0037】
(7)荷重検出方法
上記構成からなるフィルム型力覚センサーを用いた入力装置1について、図4を用いて、制御部3による荷重検出方法を説明する。図4は、本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の荷重検出過程の一例を示すフローチャートである。図4に示すフローチャート中のステップS1~S7について、以下に説明する。
最初、図4のステップS1では、制御部3の測定データ取得部31が、フィルム型力覚センサー2にて検出された静電容量変化量の時系列からなる測定データを取得する。取得された静電容量変化量(例えば、Z軸方向への荷重Fが加えられたときの静電容量変化量F measとして測定される)の測定データは記憶部38に送信されて保存され(フローチャートにステップとして図示しない)、プロセスはステップS2に移行する。
【0038】
ステップS2では、制御部3の移動平均データ算出部32が、記憶部38から呼び出した測定データの微小変動を任意の項数で平滑化して移動平均データを算出する。算出された移動平均データは記憶部38に送信されて保存され(フローチャートにステップとして図示しない)、プロセスはステップS3に移行する。
【0039】
ステップS3では、制御部3の荷重データ算出部33が、記憶部38から呼び出した移動平均データの各値にフィルム型力覚センサーの感度を示す任意の係数を掛け合わせて荷重データを算出する。算出された荷重データは記憶部38に送信されて保存され(フローチャートにステップとして図示しない)プロセスはステップS4に移行する。
【0040】
ステップS4では、制御部3の標準偏差値算出部35が、記憶部38から呼び出した荷重データの各時刻について、当該時刻から任意の範囲の時間における標準偏差値を算出する。算出された標準偏差値は記憶部38に送信されて保存され(フローチャートにステップとして図示しない)、プロセスはステップS5に移行する。
【0041】
ステップS5では、制御部3の判定部36が、記憶部38から呼び出した標準偏差値が任意の閾値よりも大きい場合(ステップS5の「ばらつきが範囲内か?」の条件に対しNo)にフィルム型力覚センサーに対して荷重ありと判定し、標準偏差値が閾値以下の場合(ステップS5の「ばらつきが範囲内か?」の条件に対しYes)にフィルム型力覚センサーに対して荷重なしと判定する。荷重ありと判定されれば、ベースライン値を未更新のままプロセスはステップS7に移行する。一方、荷重なしと判定されればプロセスはステップS6に移行する。
【0042】
ステップS6では、ベースライン更新部37が、荷重データの荷重なし判定時の値にベースライン値を置き換えることにより、ベースライン値を更新する。更新されたベースライン値は記憶部38に送信されて保存され(フローチャートにステップとして図示しない)プロセスはステップS7に移行する。
図3は、本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の荷重検出方法における、ベースライン値の更新をする場合のZ軸の荷重算出値(K ave)の時系列とベースライン値(F BL)との関係を示すイメージ図である(X軸、Y軸についても同様)。
また、本実施形態においては、ステップS6は、荷重なしと判定されてから再び荷重ありと判定されるまでの間の無荷重状態の都度、ベースライン値を1回更新する。
【0043】
ステップS7では、荷重データ補正部34が、記憶部38から呼び出した荷重データの各値(例えば荷重値K ave)からベースライン値(例えば、ベースライン値F BL)を引き算して荷重データを補正する。このとき、ステップS5からステップS6を経ずにステップS7に至った場合は、記憶部38から呼び出すベースライン値は更新していない値である。また、このとき、ステップS5からステップS6を経てステップS7に至った場合は、記憶部38から呼び出すベースライン値は更新された値である。補正された荷重データは、記憶部38に送信されて保存される(フローチャートにステップとして図示しない)。
【0044】
上述のように、本発明のフィルム型力覚センサー2を用いた入力装置1の荷重検出方法は、荷重データのばらつき度合い(標準偏差値)を算出して閾値と比較することにより、ユーザーの指11がフィルム型力覚センサー2の表面に触れているか否か判定し、更新されたベースライン値を適切なタイミングで取得することができるようにしている(図3参照)。それによって正確な荷重検出を行なうことができる。
【0045】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を、図面に基づき説明する。
図9は、本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の別の構成図である。図10は、本発明に係るフィルム型力覚センサーを用いた入力装置の荷重検出過程の別の例を示すフローチャートである。
第1実施形態では、制御部3のベースライン更新部37は、荷重なしと判定されてから再び荷重ありと判定されるまでの間の無荷重状態の都度ベースライン値を1回更新していたが、本発明の入力装置及びその荷重検出方法はこれに限定されない。例えば、ベースライン更新部37が、測定データの取得開始後から一定時間置きに、荷重データの荷重なし判定時の最新値に、ベースライン値を更新するようにしてもよい(図10参照)。
【0046】
具体的には、制御回路3がベースライン更新部37の一部として又はベースライン更新部37とは別に(図9参照)、測定データの取得開始後の経過時間を計時するタイマー部39を備え、このタイマー部39によって計時した測定データの取得後経過時間が所定の時間に達した場合に、ベースライン更新部37がベースライン値を更新するようにする。
このように構成することで、都度更新するときに比べデータの受信・処理効率を上げる事ができるというメリットがある。
【0047】
この場合、入力装置の荷重検出過程を示すフローチャートは、第1実施形態(図4参照)とは異なり、図10に示すように、ステップS5とステップS6の間にステップS8が存在する。
ステップS8では、制御部3のタイマー部39で計測されていた測定データの取得開始後の経過時間が一定時間置きの更新時間を経過していない場合(ステップS8の「更新時間を経過したか?」の条件に対しNo)にはベースライン値を未更新のままプロセスはステップS7に移行する。測定データの取得開始後の経過時間が一定時間置きの更新時間を経過している場合(ステップS8の「更新時間を経過したか?」の条件に対しYes)にはプロセスはステップS6に移行する。
【0048】
その他の構成については、第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0049】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を、図面に基づき説明する。
図11は、静電容量方式のフィルム型3軸力覚センサーの構成例を示す模式図である。
第1実施形態では、フィルム型力覚センサー2は、ユーザーの指11によってX軸方向及びZ軸方向からなる斜め下方向に加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出する、いわゆる2軸力覚センサーであったが、本発明の入力装置はこれに限定されない。例えば、フィルム型力覚センサー2は、XYZの3軸に加えられた荷重に応じてそれぞれ変化する静電容量値を検出するフィルム型3軸力覚センサーであってもよい。
【0050】
フィルム型3軸力覚センサーとしては、例えば、下部電極部材27の下部電極26が島状パターンからなり、上部電極部材24の上部電極23が上部支持体22の両面に別々に形成された表側上部電極231と裏側上部電極232の二層からなり(図11(a)参照)、かつ表側上部電極231と裏側上部電極232とが平面視において交差する複数本の線状パターンからなり(図11(b)参照)、下部電極26が島状パターンの一部が表側上部電極231のパターンの一部及び裏側上部電極232のパターンの一部と」平面視においてそれぞれ重なるパターンとすることができる。この場合、図11(a)に示すように、上部電極部材24の表側上部電極231を保護するために、上部電極部材24の弾性層21とは反対側の面に保護層28を設けるのが好ましい。
表側上部電極231と裏側上部電極232との交差する角度は、図11(b)に示す例では、表側上部電極231の線状パターンがX軸方向に伸びてY軸方向に並び、裏側上部電極232の線状パターンがY軸方向に伸びたX軸方向に並ぶように90°(すなわち直交)となっているが、これに限定されない。交差する角度が直交する場合、下部電極26のパターンは長方形状の碁盤目になり、交差する角度が直交しない場合、下部電極26のパターンは平行四辺形状の碁盤目になる。
【0051】
このような構成のフィルム型力覚センサー2は、荷重(X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向の分力はそれぞれF,F,F)を加えたときに電極間の距離が変動することによって発生する静電容量値の変化を利用して、加えられた荷重F,F,Fの値を算出する。
つまり、上部電極23がフィルム型力覚センサー2の表面に対して指11によって斜め下方向に荷重が加わると、弾性層21が変形し、その荷重の強度に応じて上部電極部材24の表側上部電極231及び裏側上部電極232が水平方向(XY軸方向)及び垂直方向(Z軸方向)に移動し、島状パターンの下部電極26と表側上部電極231との間、島状パターンの下部電極26と裏側上部電極232との間の距離及び重なり面積が変化し、その結果として電極間の静電容量値がそれぞれ変化する。したがって、それぞれの静電容量値の変化を測定すれば、垂直方向の荷重(Z軸方向の分力F)だけでなく、水平方向の荷重(表側上部電極231の線状パターンが並ぶY軸方向の分力F、裏側上部電極232の線状パターンが並ぶX軸方向の分力F)の強度も測定できる。
【0052】
表側上部電極231及び裏側上部電極232の材料は、第1実施形態の上部電極23及び下部電極26を構成する材料と同様のものを用いることができる。
また、保護層28の材料は、第1実施形態の上部支持体22及び下部支持体25を構成する材料と同様のものを用いることができる。また、保護層28として意匠シートやレザー、ゴム、布などを貼り合わせることで、デザイン性を付与することもできる。
【0053】
その他の構成については、第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
なお、本発明で使用するフィルム型力覚センサー2は、第1実施形態及び本実施形態で記載したものに限定されず、公知の静電容量方式のフィルム型力覚センサー2を採用することができる。例えば、前述の特許文献1及び特許文献2中に記載の各実施形態や変形例を適用できる。
【0054】
[変化例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0055】
(a)上記各実施形態では、入力装置1が、最終的に算出及び補正された荷重(例えばF,F,F)の値をそのまま外部電子デバイスに送信している例について説明しているが、本発明の入力装置1はこれに限定されない。例えば、制御部3が、荷重の値からイベントを検出するイベント検出部を備え、検出されたイベント情報を外部電子デバイスに送信してもよい。
【0056】
(b)上記各実施形態では、入力装置1が外部電子デバイスを通信で操作するコントローラーである例について説明しているが、本発明の入力装置1はこのようなコントローラーに限定されない。例えば、入力装置1が、前述のxRで使用するヘッドマウントディスプレイやスマートグラスのほか、スマートテレビ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、自動車のオーディオシステム、家庭用、仕事用、若しくは環境用自動制御装置、又は任意の他のそのようなデバイスと一体であってもよい。この場合、通信部4は不要である。また、電池5を省略してもよい。さらにLCD等の表示装置やマイク、スピーカー等を備えていてもよい。
また、入力装置1は、外部電子デバイスをUSBケーブル等の有線で操作するコントローラーであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 入力装置(コントローラー)
2 フィルム型力覚センサー
21 弾性層
22 上部支持体
23,23a 上部電極
231 表側上部電極
232 裏側上部電極
24 上部電極部材
25 下部支持体
26,26a,26b,下部電極
27 下部電極部材
28 保護層
3 制御部
31 測定データ取得部
32 移動平均データ算出部
33 荷重データ算出部
34 荷重データ補正部
35 標準偏差値算出部
36 判定部
37 ベースライン更新部
38 記憶部
39 タイマー部
4 通信部
5 電池
10 筐体
11 指
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11