(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005895
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】測定装置及び照射装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240110BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01S7/481
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106334
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本橋 和也
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA03
2F112CA12
2F112DA05
2F112DA25
2F112DA32
2F112EA05
2F112FA03
2F112FA07
2F112FA21
2F112FA45
2F112GA03
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA07
5J084BA40
5J084BB02
5J084CA03
5J084EA04
5J084EA07
(57)【要約】
【課題】光を照射できない領域が生じることを抑制すること。
【解決手段】本開示に係る測定装置は、間隔をあけて配置された複数の発光素子を有する発光部と、光軸をシフトさせた複数のメタレンズを有し、或る前記メタレンズを介して照射される複数の前記発光素子の光の間に、別の前記メタレンズを介して前記発光素子からの光を照射する光学系と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて配置された複数の発光素子を有する発光部と、
光軸をシフトさせた複数のメタレンズを有し、或る前記メタレンズを介して照射される複数の前記発光素子の光の間に、別の前記メタレンズを介して前記発光素子からの光を照射する光学系と
を備える、測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
複数の前記メタレンズは、共通の平面上に設けられている、測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
所定方向に隣接する2つの前記メタレンズによって形成された或る前記発光素子の発光点の像の一部が重なり合う、測定装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
前記発光素子の発光点の直径をD、
所定方向に並ぶ前記メタレンズの間隔をt、
としたとき、
t<Dの条件を満たす、測定装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
所定方向に隣接する2つの前記発光素子の発光点から照射され複数の前記メタレンズによって形成された像の一部が重なり合う、測定装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
前記メタレンズの焦点距離をf、
前記発光素子の発光点の直径をD、
所定方向に並ぶ前記発光素子の間隔をP、
前記所定方向に並ぶ前記メタレンズの間隔をt、
前記所定方向に並ぶ前記メタレンズの数をN、
としたとき、
の条件を満たす、測定装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
前記メタレンズの焦点距離をf、
前記発光素子の発光点の直径をD、
所定方向に並ぶ前記発光素子の間隔をP、
前記所定方向に並ぶ前記メタレンズの間隔をt、
前記所定方向に並ぶ前記メタレンズの数をN、
としたとき、
t<D
且つ
の条件を満たす、測定装置。
【請求項8】
間隔をあけて配置された複数の発光素子を有する発光部と、
光軸をシフトさせた複数のメタレンズを有し、或る前記メタレンズを介して照射される複数の前記発光素子の光の間に、別の前記メタレンズを介して前記発光素子からの光を照射する光学系と
を備える、照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置及び照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パルス光を射出してから反射光を受光するまでの光の飛行時間に基づいて、反射物までの距離を測定する測距装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子となるVCSELを2次元配置して発光部(光源)を構成する場合、エミッタ間の隙間によって、複数の発光素子が間隔をあけて配置される。この結果、測定エリアに照射される光に隙間があいてしまい、測定できない領域が生じてしまう。
【0005】
本発明は、光を照射できない領域が生じることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一形態は、間隔をあけて配置された複数の発光素子を有する発光部と、光軸をシフトさせた複数のメタレンズを有し、或る前記メタレンズを介して照射される複数の前記発光素子の光の間に、別の前記メタレンズを介して前記発光素子からの光を照射する光学系とを備える、測定装置である。
【0007】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光を照射できない領域が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、測定装置1の全体構成の説明図である。
【
図3】
図3は、測定方法の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】
図4Aは、発光部12の発光素子121の配置の説明図である。
図4Bは、測定エリア50に照射される光の参考説明図である。
図4Cは、本実施形態における測定エリア50に照射される光の説明図である。
【
図5】
図5は、レンズユニット15の説明図である。
【
図6】
図6Aは、1つのメタレンズ16によって形成された発光素子121の発光点の像(照射スポット)の説明図である。
図6Bは、複数のメタレンズ16によって形成された発光素子121の発光点の像(照射スポット群)の説明図である。
図6Cは、複数のメタレンズ16によって形成された複数の発光素子121の発光点の像(複数の照射スポット群)の説明図である。
【
図7】
図7は、所定方向に隣り合う2つの照射スポットの一部が重なるための光学条件の説明図である。
【
図8】
図8は、所定方向に隣接する2つの照射スポット群の一部が重なるための光学条件の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一の又は類似する構成について共通の符号を付して重複した説明を省略することがある。
【0011】
<全体構成>
図1は、測定装置1の全体構成の説明図である。
図2は、測定装置1の概略説明図である。
【0012】
以下の説明では、
図2に示すように各方向を定めている。Z方向は、投光用光学系14の光軸に沿った方向である。なお、測定装置1の測定対象となる対象物90は、測定装置1に対してZ方向に離れていることになる。また、X方向及びY方向は、Z方向に対して垂直な方向である。なお、発光部12を構成する複数の発光素子121は、X方向及びY方向に沿って2次元配置されている(後述;
図4参照)。受光部20の複数の画素221も、X方向及びY方向に沿って2次元配置されている。
【0013】
測定装置1は、対象物90までの距離を測定する装置である。測定装置1は、いわゆるLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)としての機能を有する装置である。測定装置1は、測定光を出射し、対象物90の表面で反射した反射光を検出し、測定光を出射してから反射光を受光するまでの時間を計測することによって、対象物90までの距離をTOF方式(Time of flight)で測定する。測定装置1は、照射部10と、受光部20と、制御部30とを有する。
【0014】
照射部10は、対象物90に向かって測定光を照射する照射装置である。照射部10は、所定の画角で測定エリア50(
図2参照)に測定光を照射することになる。照射部10は、発光部12と、投光用光学系14とを有する。発光部12は、光を出射する部材(光源)である。例えば、発光部12は、面発光レーザー(VCSEL)アレイチップで構成されている。投光用光学系14は、発光部12から出射された光を測定エリア50に照射する光学系である。照射部10の詳しい構成については、後述する。
【0015】
受光部20は、対象物90からの反射光を受光する。受光部20は、測定エリア50(
図2参照)からの反射光を受光することになる。受光部20は、受光センサ22と、受光用光学系24とを有する。受光センサ22は、2次元配置された複数の画素221を有する。例えば、VGAの受光センサ22の場合、480×640の画素221が2次元配置されている。各画素221は、受光素子を有しており、受光素子は、受光量に応じた信号を出力する。受光用光学系24は、測定エリア50からの反射光を受光部20に受光させる光学系である。受光用光学系24は、測定エリア50の像を受光センサ22の受光面で結像させる。
【0016】
制御部30は、測定装置1の制御を司る。制御部30は、照射部10を制御し、照射部10から照射させる光を制御する。また、制御部30は、受光部20の出力結果に基づいて、対象物90までの距離をTOF方式(Time of flight)で測定する。制御部30は、不図示の演算装置及び記憶装置を有する。演算装置は、例えばCPU、GPUなどの演算処理装置である。演算装置の一部がアナログ演算回路で構成されても良い。記憶装置は、主記憶装置と補助記憶装置とにより構成され、プログラムやデータを記憶する装置である。記憶装置に記憶されているプログラムを演算装置が実行することにより、対象物90までの距離を測定するための各種処理が実行される。
図1には、各種処理の機能ブロックが示されている。
【0017】
制御部30は、設定部32と、タイミング制御部34と、測距部36とを有する。設定部32は、各種設定を行う。タイミング制御部34は、各部の処理タイミングを制御する。例えば、タイミング制御部34は、発光部12から光を射出させるタイミングなどを制御する。測距部36は、対象物90までの距離を測定する。測距部36は、信号処理部362と、時間検出部364と、距離算出部366とを有する。信号処理部362は、受光センサ22の出力信号を処理する。時間検出部364は、光の飛行時間(光を照射してから反射光が到達するまでの時間)を検出する。距離算出部366は、対象物90までの距離を算出する。
【0018】
図3は、測定方法の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【0019】
制御部30(タイミング制御部34)は、照射部10の発光部12に所定の周期でパルス光を出射させる。
図3の上側には、発光部12がパルス光を出射するタイミング(出射タイミング)が示されている。発光部12から出射された光は、投光用光学系14を介して測定エリア50に照射される。測定エリア50内の対象物90の表面で反射した光は、受光用光学系24を介して受光センサ22に受光される。受光センサ22の各画素221は、パルス状の反射光を受光することになる。
図3の中央には、パルス状の反射光が到達するタイミング(到達タイミング)が示されている。
図3の下側には、受光センサ22の或る画素221の出力信号が示されている。受光センサ22の各画素221は、受光量に応じた信号を出力する。
【0020】
制御部30(タイミング制御部34)は、発光部12の全ての発光素子121から光を出射させて測定エリア50の全体に光を一括して照射しても良いし、発光部12の一部の発光素子121(例えば1つの発光素子121)から光を出射させて測定エリア50の所定の領域のみに光を照射しても良い。発光部12の一部の発光素子121(例えば1つの発光素子121)から光を出射させる場合、制御部30は、発光させる発光部12に対応する画素221から出力される信号を取得する(発光させる発光部12に対応していない画素221の信号は処理しない)。本実施形態の照射部10は、発光部12の一部の発光素子121(例えば1つの発光素子121)から光を出射して、測定エリア50の所定の領域(後述する照射スポット群に相当)に光を照射することが可能である。
【0021】
制御部30の測距部36(信号処理部362)は、各画素221の出力信号に基づいて、反射光の到達タイミングを検出する。例えば、信号処理部362は、各画素221の出力信号のピークのタイミングに基づいて、反射光の到達タイミングを検出する。なお、信号処理部362は、外乱光(例えば太陽光)の影響を除去するため、画素221の出力信号のDC成分をカットした信号のピークに基づいて、反射光の到達タイミングを求めても良い。
測距部36(時間検出部364)は、光の出射タイミングと、光の到達タイミングとに基づいて、光を照射してから反射光が到達するまでの時間Tfを検出する。時間Tfは、測定装置1と対象物90との間を光が往復する時間に相当する。そして、測距部36(距離算出部366)は、時間Tfに基づいて、対象物90までの距離Lを算出する。なお、光を照射してから反射光が到達するまでの時間をTfとし、光の速度をCとしたとき、距離Lは、L=C×Tf/2となる。制御部30は、受光部20の画素221ごとに検出した時間Tfに基づいて、画素221ごとに対象物90までの距離を算出することによって、距離画像を生成する。
【0022】
<照射部10について>
図4Aは、発光部12の発光素子121の配置の説明図である。
発光部12は、例えば面発光レーザー(VCSEL)アレイチップで構成されている。発光部12は、発光素子121(例えば面発光レーザー;VCSEL)を複数有しており、複数の発光素子121は2次元配置されている。複数の発光素子121は、X方向及びY方向に間隔をあけて、配置されている。このように、発光素子121となるVCSELを2次元配置した場合、エミッタ間の隙間によって、複数の発光素子121が間隔をあけて配置される。図中には、発光素子121がX方向及びY方向にそれぞれ3個ずつ配置されているが、実際には、3以上の発光素子121がX方向及びY方向に沿って配置されている。
【0023】
図4Bは、測定エリア50に照射される光の参考説明図である。図中の1つの丸印は、或る発光素子121(1つの発光素子121)から出射した光が1つのレンズを介して測定エリア50に照射される範囲を示している。図中の1つの丸印は、1つの発光素子121の発光点の像に相当する。
図4Aに示すように複数の発光素子121が間隔をあけて配置されている場合、投光用光学系14が発光素子121の発光点の像をそのまま測定エリア50に投影すると、
図4Bに示すように、測定エリア50に照射される光に隙間があくことがある。この結果、測定エリア50上に光を照射できない領域が生じてしまい、測定エリア50上に測定できない領域が生じてしまう。
【0024】
図4Cは、本実施形態における測定エリア50に照射される光の説明図である。
本実施形態の投光用光学系14は、所定方向(X方向及びY方向)に光軸をシフトさせた複数のレンズを有している。これにより、
図4Cに示すように、測定エリア50上に光を照射できない領域が生じることを抑制している。以下、この点について説明する。
【0025】
図5は、レンズユニット15の説明図である。
投光用光学系14は、複数のレンズエレメントを有するレンズユニット15を有する。本実施形態では、レンズエレメントはメタレンズ16で構成されており、レンズユニット15は、複数のメタレンズ16を有する(投光用光学系14は、複数のメタレンズ16を有する)。メタレンズ16は、光の波長よりも小さい微小構造体を所定のパターンで配置することによって光の透過強度や位相を変化させ、レンズ(ここでは凸レンズ)として機能する光学エレメントである。
図中には、複数のメタレンズ16を構成する微小構造体の配置パターンが示されている。メタレンズ16を構成する微小構造体は、X方向及びY方向に平行な平面(XY平面)上に配置されている。本実施形態のメタレンズ16は、基板(例えばガラス基板)の表面に設けられた微小構造体で構成されている。つまり、本実施形態のメタレンズ16は、メタサーフェスにより構成されている。但し、メタレンズ16は、メタサーフェスに限られるものではなく、微小構造体を3次元配置させたメタマテリアルにより構成されても良い。
【0026】
レンズユニット15には、X方向及びY方向に沿ってそれぞれ複数個のメタレンズ16が配置されている。図中には、X方向に沿って2個のメタレンズ16が並んで配置されており、Y方向に沿って2個のメタレンズ16が並んで配置されている。但し、X方向又はY方向に並ぶメタレンズ16の数は、2以上でも良い。
【0027】
複数のメタレンズ16は、X方向及びY方向に光軸をずらして配置されている。図中には、メタレンズ16がX方向及びY方向に間隔tをあけて配置されていることが示されている。それぞれのメタレンズ16の光軸は、Z方向に平行である。
【0028】
本実施形態では、共通の平面上(例えば同じガラス基板上)に微小構造体が配置されることによって、複数のメタレンズ16が共通の平面上に配置されている。なお、仮に複数の凸レンズが2次元配置された場合、凸レンズは光軸からの距離に応じて厚さが異なる形状であるために、隣接する凸レンズの境界部に筋状の凹部が形成されてしまい、この筋状の凹部の影響によって測定エリア50に影が形成されるおそれがある。これに対し、本実施形態のように複数のメタレンズ16を共通の平面上に設けた場合には、レンズの境界部を平坦にすることができるため、測定エリア50に影が形成されることを防止できる。なお、メタレンズ16を用いることによって、レンズの直径を小さく設定したり、レンズの光軸のシフト量を小さく設定したりすることが可能である。例えば、図中の光軸間距離tを小さく設定することが可能である。
【0029】
図6Aは、1つのメタレンズ16によって形成された発光素子121の発光点の像の説明図である。図中の丸印は、或る発光素子121(1つの発光素子121)が或るメタレンズ16(1つのメタレンズ16)を介して測定エリア50に光を照射する範囲を示している。以下の説明では、或る発光素子121(1つの発光素子121)が或るメタレンズ16(1つのメタレンズ16)を介して測定エリア50に光を照射する範囲(図中の1つの丸印に相当する範囲)のことを「照射スポット」と呼ぶ。
図6Aに示すように、1つの発光素子121の発光点は、1つのメタレンズ16を介して、測定エリア50に1つの像(照射スポット)を形成する。
【0030】
図6Bは、複数のメタレンズ16によって形成された発光素子121の発光点の像の説明図である。
図6Bに示すように、1つの発光素子121の発光点は、複数のメタレンズ16を介して、測定エリア50に複数の像(照射スポット)を形成する。以下の説明では、或る発光素子121(1つの発光素子121)が複数のメタレンズ16を介して形成した複数の像(照射スポット)のことを照射スポット群と呼ぶ。
図5に示すように、X方向に沿って2個のメタレンズ16が並んで配置され、Y方向に沿って2個のメタレンズ16が並んで配置される場合、或る発光素子121の発光点は、測定エリア50上でX方向に2つ並び、Y方向に2つ並ぶ複数の像(照射スポット群)を形成する。つまり、この場合の照射スポット群は、2×2で配置された複数の照射スポットにより構成される。なお、複数のメタレンズ16がX方向及びY方向にN個ずつ並んで配置される場合には、或る発光素子121(1つの発光素子121)は、測定エリア50上でX方向及びY方向にN個ずつ並ぶ像(照射スポット群)を形成する。つまり、この場合の照射スポット群は、N×Nで配置された複数の照射スポットにより構成される。
【0031】
図6Bに示すように、X方向及びY方向に隣り合う2つの照射スポット(所定方向に隣接する2つのメタレンズ16によって形成された或る発光素子121の発光点の2つの像)は、一部が重なり合う。隣接する照射スポットが重なることによって、隣り合う2つの照射スポットの間に隙間が形成されることを抑制でき、測定エリア50上に光を照射できない領域が生じることを抑制できる。
【0032】
図7は、所定方向(X方向又はY方向)に隣り合う2つの照射スポット(所定方向に隣接する2つのメタレンズ16によって形成された或る発光素子121の発光点の像)の一部が重なるための光学条件の説明図である。図中には、同じ照射スポット群に属する2つの照射スポットの一部が重なる様子が描かれている。
【0033】
図中のS1は、或る発光素子121の発光点を示している(説明のため、発光点が紙面垂直方向に向かって描かれているが、発光点はZ方向に垂直である)。また、図中のL1,L2は、所定方向(X方向又はY方向)に隣接する2つのメタレンズ16を示している(説明のため、メタレンズが凸レンズ形状に描かれている)。以下の説明では、この2つのメタレンズのことを第1メタレンズL1及び第2メタレンズL2と呼ぶことがある。図中のIは、メタレンズ16を介して測定エリア50に形成される像(照射スポット)を示している(説明のため、像が紙面垂直方向に向かって描かれているが、像はZ方向に垂直である)。以下の説明では、第1メタレンズL1による発光点S1の像(照射スポット)のことを像I11と呼び、第1メタレンズL2による発光点S1の像(照射スポット)のことを像I12と呼ぶことがある。
【0034】
ここでは、メタレンズ16の焦点距離をfとし、発光素子121の発光点の直径をDとし、所定方向(X方向又はY方向)に並ぶメタレンズ16の間隔(光軸間の距離)をtとする。
【0035】
図中のθ1は、第1メタレンズL1の中心と像I11の中心とを結ぶ線(図中の一点鎖線)と、第1メタレンズL1の中心と像I11の上端(隣接する像I12の側の端部)とを結ぶ線とのなす角度である。なお、第1メタレンズL1の中心と像I11の中心とを結ぶ線(図中の一点鎖線)は、発光点S1の中心と第1メタレンズL1の中心とを結ぶ線の延長線上にある。また、第1メタレンズL1の中心と像I11の上端とを結ぶ線は、発光点S1の下端と第1メタレンズL1の中心とを結ぶ線の延長線上にある。角度θ1は、照射スポットの画角の半分に相当する。角度θ1は次式のように示すことができる。
【0036】
【0037】
また、図中のθ2は、第1メタレンズL1の中心と像I11の中心とを結ぶ線(図中の一点鎖線)と、第2メタレンズL2の中心と像I12の下端(隣接する像I11の側の端部)とを結ぶ線とのなす角度である。なお、第2メタレンズL2の中心と像I12の下端とを結ぶ線は、発光点S1の上端と第2メタレンズL2の中心とを結ぶ線の延長線上にある。角度θ2は次式のように示すことができる。
【0038】
【0039】
角度θ2が角度θ1よりも小さいとき(θ2<θ1)、像I11と像I12の一部が重なり合う。このため、像I11と像I12の一部が重なり合うための条件は、次の通りである。
【0040】
【0041】
なお、上式の括弧内の大小関係に基づいて(2t-D)/2f<D/2fになるため、像I11と像I12の一部が重なり合うための条件は、t<Dと表すこともできる。
【0042】
上式の条件(又はt<D)を満たすことによって、隣接する2つの照射スポット(同じ照射スポット群に属する2つの照射スポット)の一部が重なり合う。これにより、隣り合う2つの照射スポットの間に隙間が形成されることを抑制でき、測定エリア50上に光を照射できない領域が生じることを抑制できる。このため、上式の条件を満たすことが望ましい。なお、本実施形態では、メタレンズ16を用いることによって、レンズの直径を小さく設定したり、レンズの光軸のシフト量を小さく設定したりすることが可能であるため、発光素子121の発光点の直径Dが小さくても、上式の条件を満たす投光用光学系14を実現することが容易となる。
【0043】
図6Cは、複数のメタレンズ16によって形成された複数の発光素子121の発光点の像(複数の照射スポット群)の説明図である。図中の多数の円形状の像(照射スポット)は、
図4Cに示す像と同様である。
また、
図6Cの太線で囲まれた領域は、複数のメタレンズ16によって形成された或る発光点(1つの発光点)の像であり、照射スポット群を示している。図中の太線で囲んだ領域は、
図6Bに示す照射スポット群と同様である。ここでは、メタレンズ16がX方向及びY方向に2個ずつ並んで配置されるため、図中の太線で囲まれた領域には、X方向及びY方向に2個ずつ照射スポットが並んで配置されている。なお、メタレンズ16がX方向及びY方向にN個ずつ並んで配置される場合には、図中の太線で囲まれた領域には、X方向及びY方向にN個ずつ照射スポットが並んで配置されることになる。
図4Aに示すように、複数の発光素子121がX方向及びY方向に沿って2次元配置されているため、複数の照射スポット群(
図6Cの太線で囲んだ領域)もX方向及びY方向に沿って2次元配置されることになる。
また、
図6Cのハッチングの施された複数の像(間隔をあけて配置された複数の照射スポット)は、或るメタレンズ16(1つのメタレンズ16)によって形成された複数の発光素子121の発光点のそれぞれの像(照射スポット)である。ハッチングで示された像は、
図4Bに示す像と同様である。ハッチングで示された像の間には、白丸で示された像(照射スポット)が配置されている。ここでは、メタレンズ16がX方向及びY方向に2個ずつ並んで配置されるため、ハッチングで示された2つの像の間には、1つの白丸で示された像が配置されている。なお、メタレンズ16がX方向及びY方向にN個ずつ並んで配置される場合には、ハッチングで示された2つの像の間には、N-1個の像(白丸で示される像)が配置されることになる。
【0044】
図6Cに示すように、X方向及びY方向に隣り合う2つの照射スポット群(太線で囲まれた領域)は、一部が重なり合う。隣接する照射スポット群が重なることによって、隣接する2つの照射スポット群の間に隙間が形成されることを抑制でき、測定エリア50上に光を照射できない領域が生じることを抑制できる。
【0045】
図8は、所定方向(X方向又はY方向)に隣接する2つの照射スポット群の一部が重なるための光学条件の説明図である。
【0046】
図中のS2は、発光点S1と所定方向(X方向又はY方向)に隣接する発光点を示している。ここでは、所定方向に隣接する発光素子121の距離(発光点同士の中心間距離)をPとする。図中のL1、LNは、所定方向の端部に位置するメタレンズ16を示している(Nは、所定方向に並ぶメタレンズ16の数を示している。図中には、説明の簡略化のため、N=2として第2メタレンズL2が描かれている)。以下の説明では、LNで示されたメタレンズのことを第Nメタレンズと呼ぶ。図中のI1Nは、第NメタレンズLNによる発光点S1の像を示している。また、図中のI21は、第1メタレンズL1による発光点S2の像を示している。像I11~像I1Nは、同じ照射スポット群に属しており、像I21は、像I11~像I1Nの照射スポット群と隣接する照射スポット群に属している。
【0047】
図中のθ3は、第1メタレンズL1の中心と像I11の中心とを結ぶ線(図中の一点鎖線)と、第NメタレンズLN(第2メタレンズL2)の中心と像I1N(I12)の上端(隣接する像I21の側の端部)とを結ぶ線とのなす角度である。なお、第NメタレンズLNの中心と像I1N(I12)の上端とを結ぶ線は、発光点S1の下端と第NメタレンズLN(第2メタレンズL2)の中心とを結ぶ線の延長線上にある。角度θ3は、照射スポット群の画角の半分に相当する。角度θ3は、次式のように示すことができる(上式は、N=2の場合の角度θ3を示す式であり、上式の右辺第1項は、レンズ1個分の像中心のズレ量を示している)。
【0048】
【0049】
また、図中のθ4は、第1メタレンズL1の中心と像I11の中心とを結ぶ線と、第1メタレンズL1の中心と像I21の下端(隣接する像I1Nの側の端部)とを結ぶ線とのなす角度である。なお、第1メタレンズL1の中心と像I21の下端とを結ぶ線は、発光点S2の上端と第1メタレンズL1の中心とを結ぶ線の延長線上である。角度θ4は、次式のように示すことができる。
【0050】
【0051】
角度θ4が角度θ3よりも小さいとき(θ4<θ3)、像I1Nと像I21とが重なり合う。このため、像I1Nと像I21の一部が重なり合うための条件は、次の通りである(なお、次式では、右辺にtの項を残すように変形している)。
【0052】
【数6】
上式の条件を満たすことによって、隣接する2つの照射スポット群の一部が重なり合う。これにより、隣り合う2つの照射スポット群の間に隙間が形成されることを抑制でき、測定エリア50上に光を照射できない領域が生じることを抑制できる。このため、上式の条件を満たすことが望ましい。なお、前述の数式3に示す条件(又はt<D)はtの上限を規定しているのに対し、上記の数式6に示す条件は、tの下限を規定している。
【0053】
===小括===
本実施形態の測定装置1は、発光部12と、発光部12の光を測定エリア50に照射する投光用光学系14とを備えている。発光部12は、
図4に示すように、間隔をあけて配置された複数の発光素子121を有する。投光用光学系14は、光軸をシフトさせた複数のメタレンズ16を有する。本実施形態の投光用光学系14は、或るメタレンズ16を介して照射される複数の発光素子121の光の間に、別のメタレンズ16を介して発光素子121からの光を照射する。すなわち、本実施形態の投光用光学系14は、或るメタレンズ16を介して複数の発光素子121のそれぞれから出射される光によって間隔をあけて複数の照射スポット(
図6Cのハッチングを施した照射スポット)を形成するとともに、この複数の照射スポットの間に、別のメタレンズ16を介して発光素子121から照射される光によって照射スポット(
図6Cの白丸に示す照射スポット)を形成する。これにより、
図4Bに示す場合と比べて、光を照射できない領域が生じることを抑制できる。
【0054】
本実施形態では、複数のメタレンズ16は、共通の平面上に設けられている。これにより、測定エリア50に影が形成されることを抑制できる。
【0055】
本実施形態では、所定方向に隣接する2つのメタレンズ16によって形成された或る発光素子121(1つの発光素子121)の発光点の像の一部が重なり合う。つまり、本実施形態では、
図6Bに示す照射スポットの一部が重なり合う。これにより、光を照射できない領域が生じることを更に抑制できる。なお、所定方向に隣接する2つのメタレンズ16によって形成された或る発光素子121(1つの発光素子121)の発光点の像(照射スポット)が重なり合わない場合であっても、或るメタレンズ16を介して照射される複数の発光素子121の光(
図6Cのハッチングを施した照射スポット)の間に、別のメタレンズ16を介して発光素子121からの光(
図6Cの白丸に示す照射スポット)を照射することができれば、
図4Bに示す場合と比べて、光を照射できない領域が生じることを抑制できる。
【0056】
本実施形態では、発光部12及び投光用光学系14は、前述の数式3(又はt<D)に示す条件を満たしている(
図7参照)。これにより、所定方向に隣接する2つのメタレンズ16によって形成された或る発光素子121(1つの発光素子121)の発光点の像(照射スポット)の一部を重なり合わせることができ、光を照射できない領域が生じることを抑制できる。
【0057】
本実施形態では、所定方向に隣接する2つの発光素子121の発光点から照射され複数のメタレンズ16によって形成された像の一部が重なり合う。つまり、本実施形態では、
図6Cに示す照射スポット群の一部が重なり合う。これにより、光を照射できない領域が生じることを更に抑制できる。なお、所定方向に隣接する2つの発光素子121の発光点から照射され複数のメタレンズ16によって形成された像(照射スポット群)が重なり合わない場合であっても、或るメタレンズ16を介して照射される複数の発光素子121の光(
図6Cのハッチングを施した照射スポット参照)の間に、別のメタレンズ16を介して発光素子121からの光(
図6Cの白丸に示す照射スポット参照)を照射することができれば、
図4Bに示す場合と比べて、光を照射できない領域が生じることを抑制できる。
【0058】
本実施形態では、発光部12及び投光用光学系14は、前述の数式6に示す条件を満たしている(
図8参照)。これにより、所定方向に隣接する2つの発光素子121の発光点から照射され複数のメタレンズ16によって形成された像(照射スポット群)の一部を重なり合わせることができ、光を照射できない領域が生じることを抑制できる。
【0059】
本実施形態では、発光部12及び投光用光学系14は、前述の数式3(又はt<D)及び数式6に示す条件を両方とも満たしている(
図7及び
図8参照)。これにより、同じ照射スポット群における照射スポットが重なり合うとともに、隣接する照射スポット群の間においても照射スポット照射スポットが重なり合うことができ、光を照射できない領域が生じることを抑制できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態につき詳述したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 測定装置、10 照射部、
12 発光部、121 発光素子、
14 投光用光学系、15 レンズユニット、16 メタレンズ、
20 受光部、22 受光センサ、221 画素、
24 受光用光学系、
30 制御部、32 設定部、
34 タイミング制御部、36 測距部、
362 信号処理部、364 時間検出部、366 距離算出部、
50 測定エリア、90 対象物